内需と雇用は加速中と見る:今週の米国主要経済指標

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今週の主要米国経済指標である2012年第4四半期GDP統計と2013年1月雇用統計では、雇用と消費の堅調さが示唆される結果になりそうだ。第4四半期成長率は1%台半ば、1月の非農業部門雇用者数は前月比+150千人の増加を見込む。

年末商戦で個人消費が加速した

30日公表予定の米国2012年第4四半期(10-12月期)の実質GDP成長率は前期比年率+1%半ばと予想する([第1図]参照)。個人消費・住宅投資などの内需は前期に比べて伸びが加速したが、輸出の減少と輸入の増加で純輸出項目が成長を押し下げているものと見る。

個人消費は、前期比に比べ伸びが加速した模様だ。昨年第4四半期の実質個人消費は、10月こそ前月比-0.2%の減少だったものの、11月に同+0.6%と大幅に増加した。公表済の12月小売売上高統計によれば自動車・ガソリン・レストランを除く売上高は前月比+0.4%と強めの伸びとなっている。ただ、12月の新車販売台数(自動車と軽トラック合計)は年率15.3百万台と前月の15.5百万台を下回った。

しかし、総じて12月までの個人消費は前の四半期に比べて加速している。年末のホリデー商戦の好調さが個人消費の数字を大きく押し上げた形だ。10-12月期の実質個人消費は前期比年率+2.7%の伸びで、前期の同+1.6%を大きく上回ったと見る。

[第1図]
20130128図1

住宅着工件数はリーマンショック以降最大の伸び

住宅投資は更に伸びを加速させた模様だ。先行指標である住宅着工件数の10-12月の平均は年率898千件で、これは7-9月平均の774千件にくらべ+16.1%の伸びである。これはリーマンショック以降で最大の増加率だ。GDP統計上の10-12月期の住宅投資は前期に続き2ケタの伸び、それも大きく加速して前期比年率+20%を超える伸びになったと見る。

設備投資はほぼ横ばいと見る。先行指標となる非国防資本財出荷の動きからは機器ソフトウエア投資は何とか小幅なプラスの伸びに回復したと見る。一方、構造物投資は先行指標となる建設支出統計の民間非住宅項目の伸びが11月までで前期よりやや減少している。結果設備投資は前期比ほぼゼロの伸びにとどまったとみる。

輸出不振で貿易赤字拡大が成長を押し下げていると見る

成長を押し下げると思われるのが純輸出項目だ。海外の景気減速が輸出の伸びを継続的に押し下げている一方、内需は概ね堅調で輸入はほぼ堅調なペースで伸びている。

11月までの貿易収支統計によれば、実質ベースの財の輸出は引き続き減少傾向がやまない状態だ([第2図]参照)。一方財の輸入は10月に一時的に落ち込んだものの11月には大幅に回復し、前年比で概ねプラスの伸びを維持している。実質ベースの財の貿易収支は2011年1-3月期以来の規模に拡大したと見る。

以上を併せ、2012年10-12月期の米国実質GDP成長率は、前期比年率+1%台半ばの伸びにとどまったと見る。しかし成長を押し下げるのは主に外需と設備投資であり、引き続き雇用の伸びを背景に消費が成長を底支えする形になっているはずだ。

[第2図]
20130128図2

雇用統計予想:1月も雇用者数は150千人レベルの増加を見込む

来週は2月1日に1月分雇用統計も公表予定である。非農業部門雇用者数は過去半年の間前月比+100~+200千人の間でほぼ安定した増加を続けている。1月も150千人レベルの増加が期待できる。

先行指標となる新規失業保険申請件数は1月19日〆週で330千件、同4週移動平均は351.75千件と300千件台前半~半ばの低位で推移している。過去10年間の統計によれば、新規失業保険申請件数が400千件を下回ると非農業部門雇用者数が前月比で増加に転じる傾向がある([第3図参照])。筆者は雇用が安定的に増加する水準に相当する新規失業保険申請件数を約370千件以下と見ている。

ISM非製造業指数の雇用DIも直近の12月指標では52.7%と景気判断の分かれ目である50%を上回っている。これらの指標は1月にも堅調な雇用増加が継続していたことを示唆している。

[第3図]
20130128図3

失業率の低下余地は限定的

一方失業率(直近12月は7.8%)は今後あまり急激には下がりそうにない。リーマンショック以後の失業率は、過去の景気後退期に比べ相対的に高目に上昇したことがしばしば指摘されている。その反動で、失業率ピークアウト後は想定以上に失業率の低下が加速している。需給ギャップとの相関から推計した失業率の水準は2012年第4四半期時点で約8%。これに対し12月時点の失業率は7.8%まで下がっている([第4図]参照)。これは経済の実態に比して失業率がやや下がりすぎである可能性を示唆している。

更に、今後雇用市場が更に好転すれば労働市場に人材が流入して労働参加率が上昇することが考えられる。そうなると、労働市場参入してから職に就くまでの間の期間その人口が失業者にカウントされるため、失業率はむしろ一時的に上昇することも考えられる。1月単月では更に失業率の低下がありうる。しかし今後1年間でマイナスの需給ギャップはほとんど縮小しない計算になる。従って失業率の低下は限定的なはずで、今年を通じては7%台半ばまでの低下が精々ではないだろうか。

[第4図]
20130128図4

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「持続的」を強調: 日銀、2%の物価目標設定

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日銀によるインフレ目標設定と、政府・日銀の共同声明の内容は、概ね当レポートで期待していたものに近い。持続的成長という最終目標をブラさず、かつ現状の日本経済事情を勘案したものと考える。

2%のインフレ目標と期限を定めない資産買入を決定

日本銀行は22日、金融政策決定会合後に「『物価安定の目標』と『期限を定めない資産買入れ方式』の導入について」および「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」を公表した([第1表]参照)。

インフレ目標は消費者物価の前年比上昇率で2%と設定され、その実現時期は「できるだけ早期に」とされた。また金融緩和の強化のため「期限を定めない資産買入れ方式」として、2014年初から毎月、長期国債2兆円を含む13兆円程度の金融資産の買入れを行うこととした。

1月21日付当レポートで論じた、期待される政府・中銀の協力のあり方に照らしてみると、今回の決定内容ほぼこれに沿ったものとなっている。以下注目すべきいくつかのポイントを指摘してみよう。

[第1表]
20130123第1表


実現時期は「できるだけ早期に」だが、同時に「持続的なものでなければならない」と明記

まず、物価安定目標の実現時期を「できるだけ早期に」としたこと。21日付レポートでは、インフレ目標は長期的か期限を定めない目標とするのが合理的理的と指摘した。短期的な物価目標は、持続的な成長という最終目標への道筋をゆがめる虞や、金融政策の政治利用の虞があるからだ。その意味では今回の決定は金融政策目標が短期化するリスクなしとしない。

しかしこのリスク対し日銀は「金融政策の効果波及には相応の時間を要する」「持続的な成長..の観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく」と述べてそのリスクを払拭するスタンスを示している。あくまで最終目標は持続的な成長にあることを明言して、短期的な社会利益追求ではないことを断っている。

また物価安定はも「持続的な」ものでなければならないと述べている。これは2%のインフレ率を恒常的に維持することが経済の持続的成長や金融政策手段の維持のために望ましい状態であって、この目標を短期で無理に達成することが持続的成長に資するものではないことを明言している。

無制限の量的拡大には歯止めをかけた

次に、「期限を定めない資産買入れ方式」が、保有国債の期落ちを勘案し2014年以降基金の残高が一定に維持されるように設計されていること。つまり期限は定めないが量の拡大には一定の歯止めがかかる仕組みで、無制限の国債買入によるマネタイゼーションを回避できる仕組みとなっている。

この資産買入の開始は直ちにではなく、12月会合までで決定した資産買入等が終了する翌年の2014年初からとしている。また、2014年1年間の残高増加額は10兆円と見積もられている。この増加額は既に決定済みの「資産買入等の基金」の今年1年の増加見込み額36兆円(2012年末65兆円→2013年末101兆円)に比べてかなり控えめである。これは将来の追加緩和の余地を残す設計だといえる。

政府の役割である構造改革を明記した

さらに、政府・日銀の共同声明では、政府の果たす役割をこれまでより具体的に書き込んでいる。共同声明では政府の役割は「革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図る」とされた。これは昨年10月会合後に公表されたいわゆる共同文書の表現よりもかなり具体的に踏み込んでいる。

これは、既にゼロ金利と量的緩和を相当に進めた現状では、デフレ脱却に対する金融政策の限界的な寄与はかなり限られていることを認識したものといえる。また、日本のデフレが単に循環的なものではなく、政府による技術革新支援や規制改革などの改革を要する構造的なものであることを政府・日銀が認識し、責任分担を定めたものといえる。その進展のモニタリングは経済財政諮問会議で行うことも明記され、説明責任の明確化も図られていると言えるだろう。

今年の成長率予想への影響はなし、市場は材料出尽くしで一旦調整へ

総じて、インフレ目標を導入して強力な緩和を推進しつつ、量の無制限な拡大には歯止めをかけ、短期的視野の金融政策に陥らないスタンスを維持した決定だ。今後は政府による構造改革、規制・制度改革等の実行にも期待できる。

なお、本日の日銀の決定は、今年の日本のGDP成長率見通しへの影響は特にない。また市場はSell on Fact で、株価、ドル円いずれも一旦下方への調整局面に入ると考える。


中銀の独立、インフレ目標、アコード

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各種報道によれば、政府と日銀は明日22日の日銀金融政策決定会合後の公表にむけて、2%のインフレ目標を含む共同文書の調整を行っているとのことだ。この動きに関わる論点である「中銀の独立」「インフレ目標」そして政府・中銀の「アコード」につき直前ながら整理する。

(なお、ここで「アコード」とは協定・共同声明・共同文書等の形態を問わず、政府と中銀が共通の目標について政策協調するとりきめをさす)

中銀の独立が必要なわけ

「中銀の独立性」の目的は、金融政策の政治利用を防ぎ適切な金融政策運営を担保することである。歴史的には、政府は国民の人気を得るために緩和的金融政策を選好しやすく、これが繰り返されると過度なインフレを起こす恐れがある。これを未然に防ぐことが中銀の独立の意義である。

一方、中央銀行は議会制定の法律(日本では日銀法)に基づき設立され金融政策を行うわけだから、政府や議会の意向を全く無視して金融政策ができるわけではもちろんない。日銀法は日銀の金融政策の「理念」(最終目標)として「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を定めている。中央銀行はこうした最終目標の達成のための金融政策を行う必要がある。

この考え方からは、中銀の金融政策の最終目標や中間目標(たとえばインフレ目標)を政府や議会が設定してもそれ自体が中銀の独立を侵すことにはならない。最終目標や中間目標が国民経済の健全な発展に等しく恒常的に寄与する形で設定される限りにおいては、これらの目標を政府が定め事自体に問題はないといえる。

政府の定める目標が中銀の独立を侵す虞があると考えられる例には以下のようなものが考えられる。まず、目標がマクロの国民経済の健全な発展に資さない、または政権政党の支持基盤など特定セクターだけを利するものであるケース。次に、目標が短期的かつ環境に応じ頻繁に変動させることができるようなケースである。これらのケースは、政治家が選挙前など状況に応じ人気の取りやすい目標を設定して金融政策をゆがめる虞がでてくる。

また、政府は中銀の政策手段(金融調節のためのオペなど)や操作目標(政策金利や日銀当座預金残高)に対して政府が関与することは中銀の独立の観点から疑念があるといえそうだ。政策手段や操作目標は極めて短期的な手段・目標である。これらを政治的に操作することによって短期的に国民の人気をとろうとする政治家が仮にいた場合、金融政策の最終目標への道筋を誤らせる可能性があるからだ。

インフレ目標設定の仕方

インフレ目標の設定は、それを中銀独自で設定しても政府・中銀の協議でも、また政府が設定してもそれ自体は中銀の独立を侵さない。物価の安定は国民が等しく求める福利だからである。

しかし、設定するインフレ目標は恒常的に国民経済の健全な成長に資する水準でありかつそれは「長期的」な目標であることが必要といえる。インフレ目標が専ら短期的にインフレ率を上下に動かすことを目的とすると、国民経済の健全な発展という最終目標に向けた金融政策にゆがみが生じる可能性がある。

目標達成についての中銀の責任はどうか。目標を設定する限り設定者に対する「説明責任」があると考えるのは自然である。しかし、目標達成の「結果責任」となると状況に応じ微妙だ。インフレ率の決定要因が中銀の金融政策のコントロール外のものがある場合は、目標未達の際の結果責任を中銀のみに負わせるのは合理的ではない。

2%のインフレ目標がよいわけ

インフレ目標を採用する各国中銀は、目標値として2%もしくはその前後のレンジを設定しているところが多い。2%のインフレ目標つまりいわゆるマイルドなインフレの持続が望ましいとされるのは以下の理由からである。

まず、インフレ率が2%で推移していれば市中金利を概ね3~5%の心地よい水準に維持し、景気悪化の際に利下げを行うことができる。金利は通常インフレ率と成長率で決定されるとされる。ある国の持続可能な成長率3%、持続的なインフレ率が2%とした場合、金利はこの合計である5%と決定される。景気が悪くなったときには政策金利を引き下げることで金利を4%なり3%なりに引き下げて景気を刺激することができる。国民生活のためにはインフレ率ゼロがよいようにも見えるが、その場合金利がわずか3%になってしまい、景気悪化の時の利下げの余地が狭くなるという不都合がある。

次に、マイルドなインフレの持続は消費者や企業に財・サービスの購入を前倒しにするインセンティブを与え、経済のスパイラル的拡大をもたらす。持続的なインフレ状態では、家計や企業に「将来も物価が上がる」というインフレ期待がある。すると彼らは物価が上がる前に財・サービスを購入しようとするだろう。一方インフレ率が低すぎたりマイナスだと、将来の物価下落を見込んで家計や企業が財・サービスの購入を先延ばしする傾向が出てくる。これが経済の停滞や更なるデフレスパイラルを生み出す虞がでてくる。

こうしたことから2%レベルのインフレ目標は経済的にも正当化される水準だと言えるだろう。

景気のサイクルとトレンド

ここで留意すべき点がある。金融政策や財政政策は主として景気のサイクル(循環)をならすために用いるものであって、それだけで景気のトレンド(趨勢)や経済の構造要因を変えることはできないということだ。

景気のサイクルとは、周期的に景気が拡大と後退を繰り返すことをいう。景気拡大期には中銀は金融引き締めを行い政府は財政支出を抑制して景気の過熱を防止する。景気後退期には中銀は金融緩和を行い政府は財政支出を拡大して景気拡大への転換を促す。これで景気のサイクルをできるだけ均して景気変動を抑えようとするわけだ。

ところが、景気の長期トレンドはこれとは違う。景気の長期トレンドとは、その国が長期的に維持可能な成長のペースのことだ。通常ある国の景気は、上記のサイクルで上下しながら長期的にはほぼ一定のペースで拡大しているはずだ。ところが国の経済構造が大きく変動するとこの持続的成長ペースがある時点で大きく変わることもある。ある経済の持続的な成長ペースのことを潜在成長率という。潜在成長率は一般には、労働投入量、資本蓄積、全要素生産性で決定されるとされている。これらの要因は金融政策や財政政策でコントロールできるものではなく、より広く産業政策・雇用政策・技術革新などが必要な構造要因である。

「デフレ脱却」と言った場合に、これが単に物価変動サイクルがデフレ領域にあるのをインフレに持っていくことか、それとも構造的なデフレを解消しようとするものかで対応が変わってくる。

今の日本経済の固有の事情

以上が一般論である。ここで現在の日本経済固有の事情を2点考える。

第1に、現在日本はゼロ金利の状態にありかつ量的緩和を相当程度進めていることだ。これは、インフレ目標の達成に対して金融政策が貢献しうる余地がかなり制約されていることを示唆している。インフレ目標の達成には金融政策に加えた他の政策とのパッケージが必要だ。

第2に、日本は物価下落が長期間つづいていて、これはもはや循環要因とは呼びにくいことだ。循環的なインフレ率低下かつ相応の金利水準であれば、金利引き下げや市場へのマネー供給でインフレ率上昇サイクルへの転換を促すことも可能ではある。しかし、人口減少など構造的要因に根ざすと思われるデフレからの脱却はもはや一時的な金融政策や財政政策だけでは達成困難であろう。

期待される政府・中銀の協力のあり方

以上から、期待されるインフレ目標の設定の仕方と政府との関係を整理してみる。

第1に、2%インフレ目標は達成時期を定めないもしくは長期的目標とするのが合理的だ。2%というインフレ率は長期的に持続的な成長を続けるために最適なインフレ率であって、この目標は短期的な利益追求のためのものではないからだ。短期的インフレ目標は中銀の最終目標の達成をゆがめる可能性や金融政策の政治利用につながる懸念をはらむものと考える。

第2に、インフレ目標設定は政府と中銀が共同で行うのが効果的である。本来インフレ目標は上記のとおり中銀が設定しても政府が設定してもよい。しかし、ゼロ金利状態かつデフレが構造要因に起因すると考えられる現在の日本経済の固有事情を勘案すれば、政府・中銀の目標共有と責任分担ができる方法が効果的だ。

第3に、共同で設定したインフレ目標の達成に双方が一定の責任を負うことになる仕組みが効果的であろう。また目標に対する結果責任はその主体がコントロールできる範囲内にとどめるか、そうでない場合は説明責任にとどめるべきである。これは政府・中銀のいずれについても同じである。


(参照文献)
伊藤隆敏 2001年「インフレ・ターゲティング」日本経済新聞社
Ben S. Bernanke, et al. 1999. “Inflation Targeting” Princeton University Press
日本銀行ホームページ
各種報道等

経済対策効果は1.2%:2013年日本成長率予想

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政府の緊急経済対策と平成24年度補正予算が11日と15日に閣議決定された。これらを踏まえた筆者個人の日本の2013年の成長率予想を前年比+0.8%とする。経済対策実施前のベースライン成長率は2013年にマイナスになる計算だが、経済対策による押上げ効果で+0.8%のプラス成長が可能、また年度ベースでは来年初に消費税引上げ前駆込み需要による押上げもあり約2%の成長が可能だろう。

経済対策財政支出は10.3兆円

政府の緊急経済対策(1月11日閣議決定)及び平成24年度補正予算(15日閣議決定)の概要は[第1表]の通り。ほぼ前評判通り、経済対策に関する政府財政支出は約10.3兆円、事業規模は約20.2兆円となった。真水の政府財政支出増は「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域活性化」の3大項目からなっている。

事業規模全体の20.2兆円と政府財政支出の10.3兆円は日本の名目GDP(2011年約471兆円)のそれぞれ約4.3%、2.2%に相当する。政府は「実質GDP押し上げ効果は概ね2%程度、雇用創出効果は60万人程度」と見積もっている。

しかしこの見通しはやや楽観的なようだ。緊急経済対策の中身を見てみると必ずしも支出が確定したものばかりではない。また、政府財政支出の拡大はその分民間支出をクラウドアウトする可能性がある。従ってこの経済対策の効果は表面の数字よりかなり保守的に見ておく必要があるだろう。

[第1表]
20130120第1表


2013暦年成長率への寄与は約1.2%と見る

ここでは、事業規模のうち政府財政支出以外の部分は財政出動に拘わらず存在する需要と考えて、経済成長押し上げ効果を政府財政支出部分に限ってみてみる。

平成24年度補正予算の概要によれば、政府財政支出は「Ⅰ.復興・防災対策」3兆7889億円の中にインフラ整備関連の公共事業が集中している。これらの公共事業は環境さえ整えば実際の支出が予算通りに執行される可能性が高いと言える。一方それ以外の「Ⅱ. 成長による富の創出」3兆1373億円と「暮らしの安心・地域活性化」3兆1024億円は、民間設備投資の支援、研究開発、医療等の人材確保など、民間需要の増加を前提とした項目が多く、実際の支出の可能性が相対的に低いものと言える。

ここでは、10.2兆円の政府財政支出のうちインフラ関連公共事業中心に全体の約4分の3が予算通り執行されさらにその4分の3が2013年(暦年)の経済成長に寄与すると想定した。すると結果、2013通年で成長率を約+1.2%、2013年度ベースでは約+1.5%押し上げるとの結果になった。

下向きの経済に底入れの兆し

さて、日本経済のベースラインはどのような状況か。経済全体はまだ後退局面にある。成長率は、2012年4-6月期が前期比年率-0.1%、7-9月期が同-3.5%と、すでに2四半期連続のマイナス成長つまり実質的にはリセッションのさなかだ。マイナス成長が2四半期以上続くのは、リーマンショックを挟む2008年と、東日本大震災を挟む2010~2011年とに続き、過去5年間で既に3回目である。

10-12月期の経済統計の状況も芳しくなくマイナス成長となりそうだ。内閣府の景気一致指数は4月から11月まで8カ月連続低下している(第1図参照)。同指数の10-11月平均は7-9月平均に比べ年率で-2.5%の低下となっている。これは10月以降も経済活動が回復せず、10-12月期のGDP成長率も前期比年率-2%を超えるマイナスである可能性を示唆している。

特に企業部門の指標が思わしくない。鉱工業生産指数は11月まで5ヶ月のうち4ヶ月で低下、10月には一時的には持ち直したものの、11月時点で7-9月期の水準を取り戻すに至っていない。

また、鉱工業の生産者在庫率の上昇が著しく、11月現在でなお震災直後の在庫率を上回る水準にある。欧州やアジアなど海外の需要減速による在庫の積上がりで、この在庫調整にはしばらく時間がかかりそうだ。経済産業省の鉱工業生産指数統計のうちの生産者在庫指数は11月までで4ヶ月連続の低下をしめしており、GDP統計上の民間在庫品が10-12月期のGDPに大幅マイナス寄与することを示唆している。

外需も低迷がつづいている。輸出の減少が止まらず、財務省統計によれば輸出数量は9月以降も11月まで連続して減少している。財・サービス収支は10月も前年同期比で赤字が拡大している。もっとも輸入数量が一時的に10月に大幅減少しており、10-12月期のGDP統計では純輸出が一時的に成長にプラス寄与する可能性なしとせず、これは成長率の上方リスク要因である。

しかし、消費は減少から横ばいに転じる兆しがみられる。内閣府消費総合指数は7-9月期平均が105.9、10-11月期平均が106.9と、このペースなら10-12月期に家計消費は前期比年率で約1%ほど増加する計算になる。
これらより、昨年2012年10-12月期の実質GDP成長率は3期連続となるマイナス成長、また2012年通年(暦年)の成長率は前年比+2%に着地したと見る。

一方今後を占う景気の先行きを表す経済指標には底入れの兆しがみられる。内閣府の景気先行指数は8月以降11月まで4カ月中2カ月で前月比プラスの動きになっている([第1図]参照)。また、米国の「財政の崖」回避や、日本の安倍新政権の政策(いわゆるアベノミクス)への期待で市場で今年の金融市場は円安株高ではじまっていて、市場センチメントや景況感は好転の方向にあると推察できる。

総合的には、日本経済は昨年末時点でまだ後退状況にあるが、2013年からは徐々に持ち直しに向かう、というのがベースラインのシナリオと言ってよさそうだ。

[第1図]
20130120第1図


経済対策で2013年は0.8%成長と見る

ただその場合でも、昨年後半のマイナス成長のせいで、経済対策前のベースラインでは2013年通年の成長率は前年比でわずかにマイナスになる計算になる。

ここに上記の経済対策効果+1.2%を勘案し、筆者個人の2013年通年の実質GDP成長率予想を前年比+0.8%とする([第2図]および1月13日付当レポートの[第1表]参照)。前年比+0.8%の成長率は前年の2%成長(予想)からは見かけ上大幅な減速になるが、すくなくとも景気の谷を昨年末か今年初に終了して三たび経済が拡大期に入る重要な転換点の時期になる。

2013年度(2013年4月~2014年3月)ベースの成長率は、経済対策の残りの予算執行を1-3月期に織り込むと、前年度比で約+1.7%の伸びになる計算になる。

ここに2014年4月に予定されている消費税引上げ前の駆け込み需要が1-3月期に上載せになる。内閣府の「短期日本経済マクロ計量モデル(2011度版)の構造と乗数分析」によれば、消費税率の1%の引上げは1年目の実質GDP成長率を-0.32%抑制するとされている。ここでは、消費税引上げ後の1年目の成長抑制と同額の駆け込み需要が引上げ前の2四半期に起きると想定する。消費税引上げ幅の3%(5%→8%)に相当する実質GDPの抑制が2014年4-6月期以降に起きるとして、それと同額の駆け込み需要を、2013年7-9月期に3分の1、同10-12月期に3分の2配分した。結果、2014年1-3月期の成長押し上げ効果が寄与して2013年度の成長率を約+0.3%押し上げ、前年度比+2.0%の成長が可能との結果になった。

[第2図]
20130120第2図


駆け込み需要前提に年度で2%成長は可能

ここで課題になるのが現実の消費税引上げの有無である。1月に発足した安倍新政権は2014年4月からの消費税引上げには慎重なスタンスを示している。また、消費税引上げ法(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律)では、「平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度」の見通しが立つことが事実上の税率引上げの条件になっている。一時的な財政出動を上乗せしてもなお上記の成長率(2013年+0.8%、2014年+1.7%)では客観的には2014年4月の消費税引上げの条件を満たせるとは言いにくいだろう。そうなると駆け込み需要は見込めず、年度ベースで2%成長は困難になる。ただ一方で、消費税引上げの延期が早期に決定した場合はこれを好感した金融市場や消費者センチメントの好転で経済のベースラインの成長が上方シフトすることも考えられる。

総合的に消費税引上げを前提に2013年度の2%成長を筆者個人の予想とするが、引上げ見送りのお場合は1.7%レベルへの下方リスクシナリオに移行することとしたい。

リスクは上方・下方双方にあり

リスク要因は上下双方にある。まず、2012年10-12月期の成長率は上ブレの可能性がある(1次速報は2月14日公表予定)。中でも民間消費支出と純輸出は上ブレの可能性のある需要項目だ。この場合2013年の成長率を最大+0.6%上方修正する可能性がある。 一方、消費税率引き上げが見送られると前の駆け込み需要による押し上げ分要因がなくなることで、年度の成長率を最大-0.3%下方修正することになる。


商戦売上は弱めだったが。。:底堅い米国の消費

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1月15日に公表された米12月小売売上高統計で、昨年2012年末の米ホリデー商戦(クリスマス商戦)の結果が明らかになった(速報値)。2012年ホリデー商戦売上高は前年比+3.3%の伸び。これは前年2011年の実績(同+5.7%)を大きく下回り、また筆者個人の11月時点のの予想(同+4%弱)をも下回った。しかしながら、月次の統計からは雇用の堅調な増加で個人消費は底堅く推移している様子が読み取れる。

ホリデー商戦売上高は予想を下回る3.3%

米12月小売売上高は前月比+0.5%と比較的強めの伸びだった。前月11月分も同+0.4%に上方改訂された。これらには主に自動車・同部品ディーラーとレストランの売上増が寄与している。一方で、10月分の家電店、衣服店、玩具店など、ホリデー商戦の目玉となる業種の売上は軒並み下方改訂されている。

結果、2012年のホリデー商戦売上(自動車・同部品ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く小売売上の11月・12月合計額)の前年比の伸びは、筆者予想(前年比+4%弱)を下回る前年比+3.3%にとどまった。これは2011年の同+5.7%から大幅に減速、過去3年間で最低の伸びである。

減速の理由は、10月末のハリケーン・サンディによる売上減を11月以降完全には取り戻せなかったこと、また年末にかけての「財政の崖」をめぐる議会交渉が長引き、消費者センチメントを悪化させた点だと考える。

【第1図】
20130117図1


月次でみると小売売上は堅調と言える

しかし、このホリデー商戦の減速をもって米国個人消費が悪化していると見る必要はない。

上記のとおり、自動車やレストランを含む小売売上高は順調にのびている。また、自動車、ガソリンスタンド、レストランを除くいわゆるコアの小売売上高も同様に堅調といえる。

それぞれの売上高の前年比の伸びの推移を月次でみてみると、ハリケーンのあった10月で一旦弱含んだ後再び元のペースに戻っている。前年比の売上の伸びは自動車・ガソリンスタンド・レストランを除くコアベースで+3.6%。これは好景気時の6~7%の伸びには及ばないものの、まず持続的なペースを保っているといえる。雇用の堅調な増加を背景に消費は底堅く推移するという筆者の見方を支持する推移だ。

当面のリスク要因は、引き続き米国の財政の崖問題の延長戦である。まずは2月までに公的債務上限の引上げができない場合、消費者センチメントを通じた消費への悪影響が顕在化するリスクは引き続きみておきたい。

【第2図】
20130117図2


米小売業界の評価

なお、昨年末ホリデー商戦については米国の小売業界もほぼ同様の評価をしている。全米小売業連盟(NRF)は15日のプレスリリース注1)で「ホリデー小売売上はNRFの予想+4.1%を下回る+3%の増加だった注2)」「過去6ヶ月間NRFは財政の崖と経済の不確実性がホリデー商戦に悪影響を与えるとのべてきた」「この数字が示すように、これらの問題はホリデーシーズンの個人消費に明らかな悪影響を与えた」と述べている。また、国際ショッピングセンター評議会(ICSC)は4日のプレスリリース注3)で「11月、12月のホリデー期間の既存店売上高(ドラッグストアを除く)はICSCの9月の予想通り3.1%の伸びだった」「予想通り過去2年間よりは減速したが総じて全体では相対的に堅調だ」と述べている。低めの結果だが相対的に堅調、との評価が実態をよくあらわしていると推測する。

注1)NRF ”Holiday Retail Sales Up 3.0 Percent to $579.8 Billion” January 15, 2013
注2)公表元によりホリデー商戦売上の定義が異なり、数字は必ずしも一致しない
注3)ICSC “Chain Store Sales Trends” January 4, 2013



堅調な成長で坂を克服:2013年米国成長率予想

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2013年の米国経済成長率は前年比+1.8%を予想する。富裕層増税と給与税減税終了とが成長を押し下げることになるが、堅調な雇用増加と住宅投資の回復がこれを克復し堅調な成長を見込める。当面のリスク要因は連邦政府の債務上限問題である。

先行指標は低位ながら安定成長を示唆している

米国の経済成長の先行指標となるいくつかの指標をみると、米国経済が今年一杯程度低位ながら安定成長を続けることが示唆されている。

ISM製造業指数は見かけはさえない。2012年は12ヶ月中4ヶ月で景気判断の分かれ目である50%を割り込み、直近の12月も50.7%とギリギリのラインだ。しかし指数の内訳をみると、同指数を構成するDIのうち過去3カ月の指数を押し下げているのは主に在庫DIである。先行性の高い新規受注DIは12月まで4ヶ月連続で50%を上回っている。ここからは、企業の在庫調整が進み新たな受注が増加していることで、今後製造業の生産が継続的に上向いてくることが予想できる。なお、ISM製造業指数は昨年2013年の年間平均で51.7%、これはGDPにして前年比約+2.5%の成長に相当する。今後企業景況感がISM製造業指数にして50~52%レベルを維持できれば、米国経済は2%強の成長が可能な状況にあるといえる。

カンファレンスボードが集計する景気先行指数は、2012年12月現在で6カ月前対比の伸びがゼロにまで低下した。カンファレンスボードによればこれは、今後米国の成長が鈍化してくことを示唆しているとされる。しかし、より中期的なトレンドを示す同指数の前年比の伸びは+1.8%となんとかプラスを保っている。この景気先行指数が前年比マイナスになるとその後リセッションになることが多いというのは経験則だか、現在は2013年に米国経済がリセッションになる兆しは見られない。

総じて米国経済は低位ながら底堅い成長を今年も続けるとみてよい。

【第1図】
20130113図1


堅調な雇用と個人消費が景気を下支えする

堅調な米国経済を底支えするのは雇用と個人消費になろう。米国の雇用は堅調な増加を続けている。米雇用統計によれば、非農業部門雇用者数の伸びはここ2年間ほどほぼ前年比+1.4%で安定推移している。米労働省の求人労働移動調査(JOLTS)によれば、非農業部門の求人比率(=求人数/〔雇用者数+求人数〕)は2012年12月時点で2.7%、年間平均では2.6%と3年連続上昇している。好況期の求人比率は3%強が通常だから、労働市場の需給はまだ十分にタイトとはいえない。しかし少なくとも現状のペースの雇用増加は2013年中も十分に見込める。

今後の雇用に関する企業サーベイも好転を続けている。米マンパワー社のEmployment Outlook Surveyによれば、調査対象となった約18,000社の米国企業のうち、2013年第1四半期に雇用を増やすとの回答が17%、減らすとの回答が8%だった。季節調整後の雇用見通しDIは12%で前期比+1%の上昇、過去5四半期中4四半期で上昇している。好況期には本DIは20%を超えるのが通常だから、企業雇用意欲もまだ強くはない。しかし、2013年も昨年並みの雇用増加ペースである前年比1.4%は確保できそうだ。

雇用と並び個人所得を決定する時間当たり賃金の伸び率は低下傾向にある。時間当たり賃金の伸びは昨年12月時点で前年比+1.7%、昨年平均で同+1.5%と、一昨年の同+2.0%を下回っている。しかし、賃金上昇は失業率低下に遅行する傾向がある。失業率はピークの9%台後半から低下して現在7%台後半にある。失業率と時間当たり賃金の前年比伸び率によるシンプルなフィリップス曲線は、時間当たり賃金伸び率が2013年中に2%台に上昇する可能性を示唆している。

雇用の伸びを+1.5%、賃金上昇率を+1.5%、インフレ率を+2%弱とすれば、物価を調整した実質ベースの個人所得は前年比+1%強の伸びと見積もれる。

株価と住宅価格の上昇による資産効果も今年の個人消費押し上げ要因となるだろう。筆者は実質個人消費の株価と住宅価格に対する弾性値をそれぞれ0.1、0.14と見ている。今年の株価上昇率を約8%(2012年のNYダウ年間平均価格は約13000ドル、2013年の年間平均を14000ドルとする)、また今年の住宅価格の上昇率を5%とすると、これらの資産効果で個人消費を約+1.5%押し上げることになる。

これらをあわせ、今年の実質個人消費は、増税による抑制効果前のベースラインで概ね前年比+2.5%の伸び率になると見込む。

【第2図】
20130113図2

所得税増税と給与税減税廃止が消費を約1%押し下げる

これに対し、消費の伸びを抑制するのが連邦個人所得税増税と給与税減税廃止である。年初に成立した「財政の崖」回避法American Taxpayer Relief Act of 2012では、所得450千ドルを超える世帯の所得税減税を終了し最高税率を35%から39.6%に引上げることがきめられた(いわゆるブッシュ減税の一部の終了)。一方、給与税の2%減税(いわゆるオバマ減税の一部)は2012年末で失効となり延長はされなかった。こうした個人に対する実質増税が今年の個人消費を上記ベースライン対比押し下げることになる。

米議会予算局CBOによれば給与税減税終了による政府の税収増つまり個人の税負担増は約950億ドル(2012年5月CBO)とされている。1月1日付CBOのコスト見積もりを基に給与税以外の増税額を筆者にて試算したところ、2013年通年で約2640億ドルとの結果になった(本稿で使用したCBO資料は以下:2012年3月・8月 “Budget Outlook”、2012年5月“Economic Effects of Reducing the Fiscal Restraint That Is Scheduled to Occur in 2013”、2013年1月“Estimate of the Budgetary Effects of H.R.8, the American Taxpayer Relief Act of 2012, as passed by the Senate on January 1, 2013”)。

給与税増税は給与所得者全体に対する増税であるから、増税の消費抑制効果は概ね米国の個人全体の限界消費性向になる。富裕層の限界消費性向はそれより低いといえるから増税による消費抑制効果も低めにみつもれる。そこで、給与税増税による消費抑制効果を増税額の80%、その他増税(主に富裕層増税)の消費抑制効果を増税額の50%としてみると、通年の消費抑制効果は1610億ドル、個人消費の約1.2%(GDPの約1%)になる。つまり、上記のベースラインの個人消費の伸び2.5%が、増税による抑制効果により1%台半ばに押し下げられることになる。

以上より、今年の実質個人消費の伸び率は前年比+1%台半ばになると見込む。

【第3図】
20130113図3

住宅投資は加速する

住宅販売と住宅価格の回復がかなり鮮明になっている。中古住宅販売戸数は昨年11月にほぼ2年半ぶりの年率5百万戸を回復した。住宅価格と住宅建設の先行指標となる中古住宅在庫期間は2005年以来実に7年ぶりに5ヶ月を割り込むところまで低下している。2005 年の住宅バブル崩壊以来の住宅市場の調整は漸く終了したといえる。GDP統計上の住宅投資も2012年は2ケタの伸びに着地しそうな勢いだ。住宅販売在庫率が相当に低下してきたことから今年も住宅販売と建設は好調に回復すると見る。2012年同様にGDP統計上の住宅投資は前年比+13%に近い伸びを予想する。

【第4図】
20130113図4

設備投資は弱めの伸びが続く

一方で企業設備投資は2012年後半に大きく減速した。2012年第3四半期の設備投資は6四半期ぶりのマイナス成長となった。直近の統計では非国防資本財出荷(航空機関連を除く)が10月以降ようやく持ち直していて、第4四半期のGDP統計上の設備投資は2四半期ぶりのプラス成長に戻った模様である。だが、出荷の先行指標となる非国防資本財受注は10月以降も低迷が続いていて、前年比でマイナスの伸びが続いている。

企業設備投資の減速は主に中国や欧州など海外経済見通しの不透明感と「財政の崖」に伴う米国内財政経済の不透明感が主因と思われる。ギリシャ支援継続と「財政の崖」回避で不透明感が後退していることから、今年の設備投資は第2四半期頃から本格的に持ち直すと見る。しかし欧州財政問題も完全解決には程遠く、また米国の政府債務上限問題や歳出削減問題は今後も続くことから、企業の設備投資マインドが急激に好転することは考えにくい。今年のGDP統計上の実質設備投資は前年比+4%程度の弱い伸びにとどまると見る。

【第5図】
20130113図5

「財政の崖」交渉結果の影響

「財政の崖」回避法では、個人所得税の一部増税とともに歳出自動削減の2月までの凍結がきめられた。歳出自動削減は2011年財政管理法Budget Control Act of 2011に基づくものである。同法の成立は2011年8月で、当時米国連邦政府の債務残高が上限に達し政府閉鎖に追い込まれる寸前の事態で、債務上限引上げの代わりに将来の連邦債務削減を条件としたものだ。同法に基づき発足した超党派の合同財政赤字削減委員会が2011年内に削減案合意に達さなかったため2013年より自動歳出削減が発動されることとなっていた。

「財政の崖」回避法ではこの自動歳出削減を2カ月に限り凍結することになった。財政管理法による歳出自動削減額は2012、2013財政年度を併せて650億ドル(CBO2012年5月)でGDPの約0.5%にすぎず、増税に比べればその影響は相対的には小さいといえる。

CBO資料を基に筆者が試算したところでは、2013年(暦年)の財政支出はこれにより約740億ドル増加し、GDPを約+0.6%押し上げるとの結果になった。上記個人増税による-1%強の押し下げと合わせ、財政の崖回避法による成長押し下げ効果は約-0.5%という計算になる。

2013年経済金融市場予想

結果、2013年通年の米国GDP成長率は前年比+1.8%と予想する。これは2012年の見込みである同+2.3%に比べやや減速となる。ただ経済のベースは堅調で、実力では2%半ばの成長を十分に達成できるところまで米国経済は回復している。

この予想に対するリスク要因としては、まず財政問題の今後の帰趨がある。少なくとも「崖」は回避されたが「坂」は残っている。連邦債務上限問題が当面の課題だ。

米連邦政府債務上限は現在16兆3940億ドルと定められている。米財務省公表によれば、1月10日現在でこの上限に服する連邦債務額は16兆3939.75億ドルと、ほぼ上限ぎりぎりに達している。昨年11月時点のCBO試算では、今後1月半ばに個人所得税納付の資金流入が見込まれるなどで米連邦政府は2月半ばまで現状の債務上限でやりくりできるとしていた。しかし、連邦政府資金繰りが予定通りいかないと、2月末の歳出削減凍結期間終了を待たずに歳出凍結や政府閉鎖の可能性がでてくる。

この債務上限引き上げには議会の承認が必要だ。しかし報道等によれば共和党を中心に財政赤字削減派からの強硬な反対あるほか、民主党は議会承認を経ず債務上限を引き上げる措置を大統領に要請するもオバマ大統領はこれを拒否している模様だ。2月にかけての米連邦財政をめぐる動向は当面注視すべきリスク要因だ。

【第1表】
20130113表1