FC2ブログ

堅調な成長で坂を克服:2013年米国成長率予想

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
2013年の米国経済成長率は前年比+1.8%を予想する。富裕層増税と給与税減税終了とが成長を押し下げることになるが、堅調な雇用増加と住宅投資の回復がこれを克復し堅調な成長を見込める。当面のリスク要因は連邦政府の債務上限問題である。

先行指標は低位ながら安定成長を示唆している

米国の経済成長の先行指標となるいくつかの指標をみると、米国経済が今年一杯程度低位ながら安定成長を続けることが示唆されている。

ISM製造業指数は見かけはさえない。2012年は12ヶ月中4ヶ月で景気判断の分かれ目である50%を割り込み、直近の12月も50.7%とギリギリのラインだ。しかし指数の内訳をみると、同指数を構成するDIのうち過去3カ月の指数を押し下げているのは主に在庫DIである。先行性の高い新規受注DIは12月まで4ヶ月連続で50%を上回っている。ここからは、企業の在庫調整が進み新たな受注が増加していることで、今後製造業の生産が継続的に上向いてくることが予想できる。なお、ISM製造業指数は昨年2013年の年間平均で51.7%、これはGDPにして前年比約+2.5%の成長に相当する。今後企業景況感がISM製造業指数にして50~52%レベルを維持できれば、米国経済は2%強の成長が可能な状況にあるといえる。

カンファレンスボードが集計する景気先行指数は、2012年12月現在で6カ月前対比の伸びがゼロにまで低下した。カンファレンスボードによればこれは、今後米国の成長が鈍化してくことを示唆しているとされる。しかし、より中期的なトレンドを示す同指数の前年比の伸びは+1.8%となんとかプラスを保っている。この景気先行指数が前年比マイナスになるとその後リセッションになることが多いというのは経験則だか、現在は2013年に米国経済がリセッションになる兆しは見られない。

総じて米国経済は低位ながら底堅い成長を今年も続けるとみてよい。

【第1図】
20130113図1


堅調な雇用と個人消費が景気を下支えする

堅調な米国経済を底支えするのは雇用と個人消費になろう。米国の雇用は堅調な増加を続けている。米雇用統計によれば、非農業部門雇用者数の伸びはここ2年間ほどほぼ前年比+1.4%で安定推移している。米労働省の求人労働移動調査(JOLTS)によれば、非農業部門の求人比率(=求人数/〔雇用者数+求人数〕)は2012年12月時点で2.7%、年間平均では2.6%と3年連続上昇している。好況期の求人比率は3%強が通常だから、労働市場の需給はまだ十分にタイトとはいえない。しかし少なくとも現状のペースの雇用増加は2013年中も十分に見込める。

今後の雇用に関する企業サーベイも好転を続けている。米マンパワー社のEmployment Outlook Surveyによれば、調査対象となった約18,000社の米国企業のうち、2013年第1四半期に雇用を増やすとの回答が17%、減らすとの回答が8%だった。季節調整後の雇用見通しDIは12%で前期比+1%の上昇、過去5四半期中4四半期で上昇している。好況期には本DIは20%を超えるのが通常だから、企業雇用意欲もまだ強くはない。しかし、2013年も昨年並みの雇用増加ペースである前年比1.4%は確保できそうだ。

雇用と並び個人所得を決定する時間当たり賃金の伸び率は低下傾向にある。時間当たり賃金の伸びは昨年12月時点で前年比+1.7%、昨年平均で同+1.5%と、一昨年の同+2.0%を下回っている。しかし、賃金上昇は失業率低下に遅行する傾向がある。失業率はピークの9%台後半から低下して現在7%台後半にある。失業率と時間当たり賃金の前年比伸び率によるシンプルなフィリップス曲線は、時間当たり賃金伸び率が2013年中に2%台に上昇する可能性を示唆している。

雇用の伸びを+1.5%、賃金上昇率を+1.5%、インフレ率を+2%弱とすれば、物価を調整した実質ベースの個人所得は前年比+1%強の伸びと見積もれる。

株価と住宅価格の上昇による資産効果も今年の個人消費押し上げ要因となるだろう。筆者は実質個人消費の株価と住宅価格に対する弾性値をそれぞれ0.1、0.14と見ている。今年の株価上昇率を約8%(2012年のNYダウ年間平均価格は約13000ドル、2013年の年間平均を14000ドルとする)、また今年の住宅価格の上昇率を5%とすると、これらの資産効果で個人消費を約+1.5%押し上げることになる。

これらをあわせ、今年の実質個人消費は、増税による抑制効果前のベースラインで概ね前年比+2.5%の伸び率になると見込む。

【第2図】
20130113図2

所得税増税と給与税減税廃止が消費を約1%押し下げる

これに対し、消費の伸びを抑制するのが連邦個人所得税増税と給与税減税廃止である。年初に成立した「財政の崖」回避法American Taxpayer Relief Act of 2012では、所得450千ドルを超える世帯の所得税減税を終了し最高税率を35%から39.6%に引上げることがきめられた(いわゆるブッシュ減税の一部の終了)。一方、給与税の2%減税(いわゆるオバマ減税の一部)は2012年末で失効となり延長はされなかった。こうした個人に対する実質増税が今年の個人消費を上記ベースライン対比押し下げることになる。

米議会予算局CBOによれば給与税減税終了による政府の税収増つまり個人の税負担増は約950億ドル(2012年5月CBO)とされている。1月1日付CBOのコスト見積もりを基に給与税以外の増税額を筆者にて試算したところ、2013年通年で約2640億ドルとの結果になった(本稿で使用したCBO資料は以下:2012年3月・8月 “Budget Outlook”、2012年5月“Economic Effects of Reducing the Fiscal Restraint That Is Scheduled to Occur in 2013”、2013年1月“Estimate of the Budgetary Effects of H.R.8, the American Taxpayer Relief Act of 2012, as passed by the Senate on January 1, 2013”)。

給与税増税は給与所得者全体に対する増税であるから、増税の消費抑制効果は概ね米国の個人全体の限界消費性向になる。富裕層の限界消費性向はそれより低いといえるから増税による消費抑制効果も低めにみつもれる。そこで、給与税増税による消費抑制効果を増税額の80%、その他増税(主に富裕層増税)の消費抑制効果を増税額の50%としてみると、通年の消費抑制効果は1610億ドル、個人消費の約1.2%(GDPの約1%)になる。つまり、上記のベースラインの個人消費の伸び2.5%が、増税による抑制効果により1%台半ばに押し下げられることになる。

以上より、今年の実質個人消費の伸び率は前年比+1%台半ばになると見込む。

【第3図】
20130113図3

住宅投資は加速する

住宅販売と住宅価格の回復がかなり鮮明になっている。中古住宅販売戸数は昨年11月にほぼ2年半ぶりの年率5百万戸を回復した。住宅価格と住宅建設の先行指標となる中古住宅在庫期間は2005年以来実に7年ぶりに5ヶ月を割り込むところまで低下している。2005 年の住宅バブル崩壊以来の住宅市場の調整は漸く終了したといえる。GDP統計上の住宅投資も2012年は2ケタの伸びに着地しそうな勢いだ。住宅販売在庫率が相当に低下してきたことから今年も住宅販売と建設は好調に回復すると見る。2012年同様にGDP統計上の住宅投資は前年比+13%に近い伸びを予想する。

【第4図】
20130113図4

設備投資は弱めの伸びが続く

一方で企業設備投資は2012年後半に大きく減速した。2012年第3四半期の設備投資は6四半期ぶりのマイナス成長となった。直近の統計では非国防資本財出荷(航空機関連を除く)が10月以降ようやく持ち直していて、第4四半期のGDP統計上の設備投資は2四半期ぶりのプラス成長に戻った模様である。だが、出荷の先行指標となる非国防資本財受注は10月以降も低迷が続いていて、前年比でマイナスの伸びが続いている。

企業設備投資の減速は主に中国や欧州など海外経済見通しの不透明感と「財政の崖」に伴う米国内財政経済の不透明感が主因と思われる。ギリシャ支援継続と「財政の崖」回避で不透明感が後退していることから、今年の設備投資は第2四半期頃から本格的に持ち直すと見る。しかし欧州財政問題も完全解決には程遠く、また米国の政府債務上限問題や歳出削減問題は今後も続くことから、企業の設備投資マインドが急激に好転することは考えにくい。今年のGDP統計上の実質設備投資は前年比+4%程度の弱い伸びにとどまると見る。

【第5図】
20130113図5

「財政の崖」交渉結果の影響

「財政の崖」回避法では、個人所得税の一部増税とともに歳出自動削減の2月までの凍結がきめられた。歳出自動削減は2011年財政管理法Budget Control Act of 2011に基づくものである。同法の成立は2011年8月で、当時米国連邦政府の債務残高が上限に達し政府閉鎖に追い込まれる寸前の事態で、債務上限引上げの代わりに将来の連邦債務削減を条件としたものだ。同法に基づき発足した超党派の合同財政赤字削減委員会が2011年内に削減案合意に達さなかったため2013年より自動歳出削減が発動されることとなっていた。

「財政の崖」回避法ではこの自動歳出削減を2カ月に限り凍結することになった。財政管理法による歳出自動削減額は2012、2013財政年度を併せて650億ドル(CBO2012年5月)でGDPの約0.5%にすぎず、増税に比べればその影響は相対的には小さいといえる。

CBO資料を基に筆者が試算したところでは、2013年(暦年)の財政支出はこれにより約740億ドル増加し、GDPを約+0.6%押し上げるとの結果になった。上記個人増税による-1%強の押し下げと合わせ、財政の崖回避法による成長押し下げ効果は約-0.5%という計算になる。

2013年経済金融市場予想

結果、2013年通年の米国GDP成長率は前年比+1.8%と予想する。これは2012年の見込みである同+2.3%に比べやや減速となる。ただ経済のベースは堅調で、実力では2%半ばの成長を十分に達成できるところまで米国経済は回復している。

この予想に対するリスク要因としては、まず財政問題の今後の帰趨がある。少なくとも「崖」は回避されたが「坂」は残っている。連邦債務上限問題が当面の課題だ。

米連邦政府債務上限は現在16兆3940億ドルと定められている。米財務省公表によれば、1月10日現在でこの上限に服する連邦債務額は16兆3939.75億ドルと、ほぼ上限ぎりぎりに達している。昨年11月時点のCBO試算では、今後1月半ばに個人所得税納付の資金流入が見込まれるなどで米連邦政府は2月半ばまで現状の債務上限でやりくりできるとしていた。しかし、連邦政府資金繰りが予定通りいかないと、2月末の歳出削減凍結期間終了を待たずに歳出凍結や政府閉鎖の可能性がでてくる。

この債務上限引き上げには議会の承認が必要だ。しかし報道等によれば共和党を中心に財政赤字削減派からの強硬な反対あるほか、民主党は議会承認を経ず債務上限を引き上げる措置を大統領に要請するもオバマ大統領はこれを拒否している模様だ。2月にかけての米連邦財政をめぐる動向は当面注視すべきリスク要因だ。

【第1表】
20130113表1

スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。