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出口を探して~1月FOMC議事要旨

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1月分FOMCの議事要旨からは、量的緩和終了時期の前倒しを主張する委員が増加していたことが読み取れる。全体に前回12月会合よりややタカ派な内容だったと見たい。量的緩和終了時期は早くて2014年前半、ゼロ金利解除時期は2015年頃と見る。

QE終期をめぐる議論が活発化

1月30日のFOMCでは、毎月400億ドルのMBS購入と毎月450億ドルの長期米国債の購入による量的緩和政策(いわゆるQE4)の継続が決定されていた。20日に公表された議事要旨には量的緩和の効果と期間などについて前回以上に様々な意見がみられる。主なタカ派意見、ハト派意見は以下の通りである(「数人several」「多く a number of」「多数many」による意見)。

【タカ派意見】
「数人の参加者は、潜在的な過度なリスクテイキングと、金融安定に対する悪影響を懸念した」
「多数の参加者は、更なる資産購入からくる潜在的なコストとリスクにいくらかの懸念を示した」
「数人の参加者は、追加的な資産購入が最終的な緩和政策解除を複雑にすると述べた」
「数人の参加者は、極めて大規模な長期資産ポートフォリオは…FRBに著しい損失をもたらしうると述べた」
「数人の参加者は、経済見通しの変化に応じて、あるいは資産購入の効果とコストの評価の変動に応じて、委員会は資産購入のペースを変える準備をするべきだと強調した」
「多くの参加者は、資産購入の効果・コスト・リスクについて継続中の評価の結果委員会は労働市場の見通しの本質的な改善があったと判断する前に資産購入を減速もしくは終了させることに十分になりうると述べた」

【ハト派発言】
「数人の参加者は、高失業率の経済社会的コストを強調した」
「多くの参加者は、委員会の出口原則での想定よりも長期間証券を保有することによる金融緩和を、資産購入と補完的または代替として行う可能性を論じた」
(他に、「2-3人a couple of」「いくらかsome」 「何人かa few」によるハト派意見あり)

量的拡大の副作用を認識:前回よりタカ派な内容と見る

全体的には、資産購入による量的緩和のリスク・コスト・期間についてはタカ派意見がやや優勢だった模様である。特に「多くのa number of」参加者が「労働市場見通しの著しい改善」以前に資産購入を終了する可能性を論じたことは注目に値する。前回12月会合の議事要旨では「数人のseveral」メンバーが「2013年末以前に(資産)購入を減速または終了することが適切と」述べたとされていたが、今回は資産購入の早期終了を論じる委員の数が前回より増えたことになる。

1月会合議事要旨の意見には「2013年末以前」のような終了時期の明示は見られない。しかし、現在FRBは声明文で量的緩和を「労働市場の見通しが本質的に改善しないかぎり」継続すると明言している。1月会合の議論は、この条件を緩和して労働市場見通しの本質的改善以前に量的緩和解除に踏み切る可能性を示唆したものとして、重要な転換の契機となる可能性がある。1月会合の議事要旨は12月会合よりややタカ派色が強まったと見たい。

資産購入終了時期の議論が大きくなったのは、資産購入による長期金利抑制などの効果に対して、資産購入によるリスクをより明瞭に認識しはじめたためだろう。今回決定に反対したカンサスシティ連銀ジョージ総裁は①長期的なインフレ期待の上昇リスクを明言した(同総裁は1月会合より投票メンバー、なお12月まで投票メンバーだったリッチモンド連銀ラッカー総裁もインフレリスクを理由の一つとして量的緩和に反対していた)。議事要旨ではさらに資産購入のリスクとして②過度なリスクテイクを助長する、③大規模なFRBのポートフォリオがFRBに損失をもたらす、④緩和解除を困難にする、という懸念が挙げられている。こうした資産購入のリスクがメリットを上回ると判断されるようになった場合には、量的緩和の早期終了もありえよう。

資産購入終了は早くて2014年前半、ゼロ金利解除は2015年頃とみる

前回12月議事要旨では数人の委員が2013年末を資産購入終了目途として提示していた。しかし、2013年は今後も連邦政府の自動歳出削減発動や連邦政府債務上限問題などのリスクがあり、これらが顕現した場合経済成長が1%台前半にまで抑制される可能性がある。従って2013年中には米国経済のマイナスの需給ギャップが大幅縮小する可能性は低く、したがって失業率も大幅低下は望めないだろう。一方で、非農業部門雇用者数は毎月200千人程度のペースで今後も増加する可能性が高い。そうすると、雇用増加の継続と失業率低下の双方が再び確認できるのは2014年になってからということになる。労働市場の改善がある程度見える時期として資産購入終了が前倒しされた場合でもその実施は2014年前半頃となりそうだ。

一方ゼロ金利政策解除は、FOMC委員の多数が予測しているとおり(2012年12月FOMC時点での委員の経済予測)2015年頃になりそうだ。現在FOMCはゼロ金利政策について「フェデラルファンドレートのこの例外的な低いレンジは少なくとも失業率は6.5%を上回っている限り」適切だとしている。筆者の試算によれば、今後米国経済が毎四半期3%成長をつづけたとしても、失業率が6.5%になるのは2015年の事になる(GDPギャップと失業率の相関による筆者試算)。

なお1月会合から、輪番制の地区連銀総裁投票メンバーが交代している。ハト派ではサンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁が投票メンバーからはずれ、シカゴ連銀エバンス総裁、ボストン連銀ローゼングレン総裁がメンバーとなった。タカ派ではリッチモンド連銀ラッカー総裁がはずれカンサスシティ連銀ジョージ総裁がメンバーとなった。全体のハト・タカ分布は昨年にくらべややハト派が増えていることになる。それでもなお「多くの」参加者が量的緩和の副作用を認識してその終了時期を論じはじめた。量的緩和の出口探しのための判断基準(メリットとデメリット)がFOMC内でも徐々に明らかになってきたといえる。

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通貨安競争回避と波及効果モニター~モスクワG20声明

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モスクワのG20は通貨安競争回避を盛り込んだ共同声明を公表して終了した。通貨安競争回避自体は過去の文言踏襲にすぎない。一方で金融政策の他国への波及効果モニターなど新たな枠組みが提示されている。日本の金融緩和に対する名指し牽制は回避したが、当面円高方向への調整との見方への支持材料とみたい。

特定国言及はなかったが「波及効果モニター」を表明

2月15-16日に開催されたモスクワG20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明では、いわゆる通貨安競争の回避が謳われた。声明のうち、金融政策や為替に関する記述は[第1表]の通りである(財務省の仮訳による)。

[第1表]
20130217表1

まず注目すべきは、金融政策について「国内目的のために実施される政策が他の国々に与える負の波及効果をモニターし、最小化する」ことがコミットされている点である。これは、去る12日にG7声明として公表された文書を引用した「金融政策は各々の万デートに従って国内の物価安定….経済の回復を支援するべき」という文言に続いて新たに挿入されている。

これは、特定国の国内経済回復目的の金融政策への直接的牽制を避けつつも、結果的にそれが他の国への悪影響がある場合はそれを相互に監視するという新たな枠組みである。

為替については「我々は、競争力のために為替レートを目的とはせず、あらゆる形態の保護主義に対抗し、我々の開かれた市場を維持する」の箇所が、去る12日のG7声明を反映して挿入されている。それ以外の文言、たとえば「通貨の競争的な切り下げを回避」などの文言は概ね過去の声明を踏襲している。

円安に対する言及如何が注目されていた

為替市場では、G20前に大幅な円安が進んでいた。12月16日の総選挙で自民党が勝利した後、同月下旬にドル円は1ドル=85円を上抜けた。その後もいわゆるアベノミクスによる円安政策期待から円安が急激に進み、約2ヶ月でドル円は約10円も上昇、2月初には一時1ドル=94円台をつけた。

2月12日には、G7が「通貨の競争的な切り下げを回避する」との声明を公表した。この声明の解釈をめぐり市場の思惑は一時交錯した。麻生財務大臣は「(円安誘導など)そういったことはないということを、各国から正しく認識された点においては意味があった」と述べたと報道された(2月12日付日本経済新聞電子版)。一方、G7高官が「G7声明は円の過度な動きに対する懸念を表明したもの」と発言したとの報道もされていた(同日付ロイター社報道)。

通貨安競争回避文言と「波及効果」モニターで参加国全体を牽制した

モスクワG20の声明文は結果的に、通貨安競争の回避を明言したものの具体的な国の政策に踏み込むことを避けて一般的な表現にとどめた。利害の対立する特定国の名指しを避け、協調して通貨安競争を回避する表現をとるというG20の慣行を維持したものといえる。

日本にとっては、金融緩和拡大自体への制約は回避したといえるだろう。本来、金融緩和政策を通貨安誘導政策とみなすことにはやや無理がある。政府による為替介入は場合によっては為替操作とみなせる場合もあるが、内需拡大のための金融緩和が自国通貨安誘導であるとの立証はそもそも困難である。

しかし声明では「我々は、国内目的のために実施される政策が他の国々に与える負の波及効果をモニターし、最小化することにコミットする」「我々はフレームワーク作業部会における波及効果に関する現在進行中の作業の結果に期待する」とされ、金融緩和政策の「波及効果」として円安や他国通貨高という影響が検証されうる可能性に言及している。

また、結果的に今後さらに円安が進行した場合、一般的な「為替レートの無秩序な動き」とみなされて、G20各国による口頭での懸念表明などいわば分散的な牽制が働くことを許容した文言とも解釈できる。

同時にこの声明は、G20構成国全てに対し同様の牽制をかけたものといえる。最近自国通貨高が顕著な国として、韓国・ブラジル・メキシコなどのG20新興国がある。また先進国ではフランス・イタリアなどがユーロ高による輸出への影響を表明している。現在の通貨高国から通貨安国に対しての暗黙の牽制がこの文言から推測できる。のみならず逆に現在の通貨高国が通貨安政策を新たに採用した場合も「波及効果」「競争力のために為替レートを目標とせず」に照らした牽制の対象となりえよう。

今回の声明では、通貨安競争自体を全体として抑止することで、無用の非難中傷合戦を回避する紳士的申し合わせを表現したものと言える。

「通貨安戦争回避」表明自体は2010年ソウルに遡る

先進国で構成するG7やG8の財務相・中央銀行総裁会議声明や首脳会議(サミット)宣言声明では、中国に対して人民元改革を促すなどG7以外の特定国の為替に言及することが過去にしばしばあった。しかし参加国を新興国に拡大したG20においては、特定の参加国の為替政策について明示的に言及することはまれである。

たとえば、管理フロート制を採用する中国人民元の制度改革について「人民元の変動決定に市場要因がより広い役割を果たすことを許容する中国のコミットメントを歓迎する」と個別国名を声明に明記したケースがあった(2012年6月18-19日メキシコ・ロスカボスG20サミット共同宣言)。また、国名は明記せずとも「大きな経常黒字をもつ国々は、内需拡大と為替の更なる柔軟性拡大のための改革にコミットする」といった表現で個別国名を暗に想定しているケースがあった(2011年11月4日カンヌG20サミット共同宣言)。

「通貨安競争」「通貨戦争」という言葉が広まるきっかけとなったのは、2010年のソウルG20前後の最初の所謂Currency Warである。当時はブラジルなど新興国が米国の金融緩和をドル安誘導政策と批判、一方米国は中国の人民元改革の遅れを批判するという複雑な「通貨戦争」の様相を呈していた。

ソウルG20の共同声明・共同宣言では「根底にある経済ファンダメンタルズを反映した、より市場が決定する為替レートシステムをめざし」「通貨の競争的な切り下げを回避する」と、いわゆる通貨安競争回避の文言が採用された。また「外貨準備を持つ国を含む先進国は為替レートの過度な変動と無秩序な動きを警戒する」「こうしたアクションはいくつかの新興国が直面する資本フローの過度な変動のリスクを軽減する」とされ、自国通貨高の影響を受けていた新興国への配慮がなされた(2010年10月23日ソウルG20財務相・中央銀行総裁会合共同声明、同11月11-12日ソウルサミット共同宣言)。

今回のモスクワG20財務相・中央銀行総裁会合の声明でも、かかる先進国対新興国の対立も舞台裏にはあったと憶測できるが、少なくとも声明文の文面に明記されなかった。

円高への調整継続との見方を維持する

これまでの慣例で一般的な表現にとどめた声明では現実の通貨安をめぐる各国の利害が調整できた可能性は低く、今後も為替をめぐる各国要人同士の牽制発言は続く可能性が高い。

日本の金融緩和自体を牽制することはこの声明からは正当化できず、従って金融緩和の継続について日本は各国の理解を得たとの主張が可能だ。しかし金融効果の「波及効果」として円安の他国への悪影響の検証がされうる可能性が声明から読み取れる。また、結果的に今後さらに円安が進んだ場合、これに対する分散的牽制を正当化しうる声明であることも確かだ。

従って今回の声明は、筆者個人の為替見通しを変更する新たな材料にはなりにくい。ドル円についていえば、1ドル=95円を超えてドル高円安が続くことはなく、3月にかけてドル安円高方向への調整があるとの筆者個人の見方(1月13日付当レポート参照)を維持する。むろん、週明けの市場で声明解釈をめぐり当初一時的に為替が大きな値動きをする可能性は想定の範囲内である。

リスクシナリオとして、仮に1ドル=95円を大きく超えてドル高円安が進行した場合には、今年のレンジ上限を1ドル=100円に引き上げる方向で予想修正の可能性を考慮しておくことにする。


景気底入れへ~日本の10-12月期GDP統計

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日本の実質GDP成長率は10-12月期まで3四半期連続のマイナス成長となったが、今年の1-3月期からはプラス成長に戻れそうだ。ただ消費回復などは一時的なセンチメント好転に支えられている可能性もあり、ベースラインの実体経済の回復は緩やかなものと見ておきたい。

日本は3四半期連続のマイナス成長

14日に公表された日本の10-12月期実質GDP成長率は前期比年率-0.4%(前期比-0.1%)と3四半期連続のマイナス成長だった。

需要項目別内訳をみると、成長率を押し上げたのが民間最終消費支出(前期比年率+1.8%)、民間住宅(同+14.7%)、公的需要(同+2.9%)。成長率を押し下げたのが民間企業設備(同-9.9%)、民間在庫品増加(寄与度-0.6%)、純輸出(同-1.0%)だった([第1図]参照)。個人消費と政府支出が成長を押し上げたが、企業部門と輸出の減少が大きく成長を押し下げた形である。結果、日本の実質GDP成長率は3四半期連続のマイナス成長になり、10-12月期時点で依然として事実上の景気後退が継続していることが判明した。

[第1図]
20130216図1

アベノミクス期待と株価上昇で家計消費がプラスに回復した

だが、今後の見通しは暗くはない。3四半期連続のマイナス成長となったがマイナス幅は大幅に縮小した。なかでも家計最終消費支出が3四半期ぶりにプラス成長に転じたのは心強い。総選挙前の12月ころからいわゆるアベノミクスへの期待から株価が上昇基調に入った。1月以降は新政権の発足で消費者センチメントが大幅に好転している。内閣府の消費者態度指数は今年1月に大幅に好転し、2007年9月以来の水準に上昇した。このセンチメントが持続するならば、1-3月期の家計消費もプラスの伸び継続が期待できる([第2図]参照)。

[第2図]
20130216図2

センチメントだけの持続性は疑問:実体経済回復は緩やかに

しかし一方で、家計消費を構成する実体経済にはまだ大きな変化は見られない。総務省労働力調査によれば、12月時点の就業者数は2ヶ月連続の減少となる前年同月比-380千人。完全失業率も4.2%で前月比+0.1%の上昇だった。いずれもが雇用市場やこれにリンクする家計所得が、消費者センチメントほどには好転していないことを示している。

昨年末の家計消費の回復が、政策期待や株価上昇による一時的なセンチメント好転によるものである可能性は排除できない。そうだとすると、10-12月期の家計消費の伸びの持続性には疑問がでてくる。規制改革や賃金引上げなどの効果が家計に波及するには自然体では政策発動から1年以上かかるのが通常だ。雇用と賃金上昇が内需拡大を伴う経済回復の鍵である。だが企業への政治圧力ではなく、企業減税など構造的な適正化を伴う対応が必要であろう。従って、今後のベースラインの消費の加速に対してはやや慎重に見ておきたい。

企業部門は出遅れたが受注増で持ち直しへ

家計消費が少なくとも数字上は回復しているのに対し、出遅れ感があるのが企業部門である。10-12月期GDP統計では民間企業設備が4四半期連続となる大幅なマイナス成長になっている。

しかし今後は企業設備投資にも持ち直しが見込める。先行指標となる機械受注統計によれば、昨年10-12月期に機械受注は底入れし増加に転じている([第3図]参照)。また、12月の日銀短観によれば、2012年度の設備投資計画(全産業)が大企業・中小企業ともにプラスとなっている。特に中小企業の12年設備投資計画は06年度以来のプラス圏に回復してきている。アベノミクスへの期待や円安も、企業の設備投資意欲を押し上げる材料になるだろう。もっとも、設備稼働率が必ずしも高くないこと、企業の在庫率がまだ高水準で在庫調整が暫く続くであろうことから、設備投資の回復も消費同様に緩やかにとどまると見る。

[第3図]
20130216図3

円安・海外景況感の安定化で輸出増にも望みあり

純輸出は3四半期連続、過去8四半期中6四半期で成長にマイナス寄与した。主に輸出の減少が日本の成長の足を引っ張っている状況が継続中だ。しかし、輸出増加を支援する材料が昨年末から続いていることで、輸出の低迷もそろそろ終了してもいい。ひとつは昨年末以来の為替市場での円安基調、もうひとつは海外経済の見通しが悪化から安定に移行しつつあることだ。筆者は今年のドル円のレンジを85円-95円と見ているから、ここから円安が加速することは見込まない。しかし米ドルやユーロのみならず、輸出競争相手となる他のアジアの通貨に対する円安は日本の輸出にとって支援材料になろう。

財政出動効果もあり今年は1%前後の成長が可能と見る

さらに、今年は政府の財政出動が2013暦年のGDPを約+1.2%押し上げる見込みだ(1月20日付当レポート参照)。結果、今年の1-3月期には、GDP成長率は4四半期ぶりのプラス成長に回帰すると予想している。過去5年間で3回目の事実上の景気後退(2四半期以上連続のマイナス成長)は10-12月期で終了とみる。

2012年通年の実質GDP成長率は結果、前年比+1.9%に着地した。2013年通年(暦年)の成長率について、筆者は前年比+0.8%を予想している(1月13日付当レポート参照)。10-12月期成長率は概ねこれに沿っているが、予想作成時よりマイナス幅がかなり小さい結果になった。そのため計算上は13年の成長率は1%を超えることも可能な状況だ。
一方で、株価上昇の一服感が今後でてくるはずで(筆者は今年前半の日経平均のレンジ上限を11500円と見ている)、4-6月期頃には政策期待からくる景況感に息切れ感がでる可能性があると見る。今年の通年の成長率はやや上ブレの可能性がある。今後の金融環境や経済指標次第で上方修正を考慮する。

[第4図]
20130216図4




平行線は継続~オバマ大統領一般教書演説の経済政策

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オバマ米大統領の一般教書演説で示された経済・雇用政策には特段のサプライズはなかった。従前通り民主党・共和党の主張は平行線である。今月は引続き自動赤字削減の回避如何に注目する。

経済・雇用に重点、これまでのオバマ大統領の政策の延長

12日に行われたオバマ米大統領の一般教書演説は、ほぼ市場の予想通り経済・雇用対策に重点をおいたものになった。大統領が演説で主張した主な経済・雇用政策は以下の5つである。
1. 自動歳出削減回避のための税制改正実施
2. 雇用拡大のための米国雇用法案の完全立法
3. 持家保有者の住宅ローン借換促進
4. 連邦政府の定める最低賃金引上げ
5. 企業の新規雇用と設備投資に対する税還付実施

歳出自動削減回避のための税制改正をあらためて主張

オバマ大統領は、具体的政策の冒頭に連邦政府自動歳出削減回避をおいた。3月1日から発動予定の自動歳出削減sequesterを”悪いアイディアreally a bad idea“と評した。さらには「議会の一部の人々が、防衛費の削減を回避して、教育・職業訓練・メディケア・社会保障費などの費目を大幅削減をしようとしている」ことは「なおさら悪い」と、共和党の財政主張を事実上の名指しで批判した。

自動歳出削減に代わる財政赤字削減策として「富裕層やコネのある人のための税の抜け穴や優遇措置の廃止」を主張した。これは去る5日に大統領が表明した提案と同内容である。

これに対し共和党ベイナー下院議長は、演説後直ちに他のいくつかの論点とともにホームページで反論を展開した。まず大統領が”bad idea”と呼んだ自動歳出削減(2011年予算管理法)はそもそも民主党の提案であると反論。さらに、共和党は自動歳出削減の代替案として、政府歳出の無駄の削減を中心に据えた法案を共和党多数の下院ですでに2本可決した実績をアピールし、オバマ大統領の事実上の名指し批判を反批判している。

党派色の強い米国雇用法案の完全立法を要請

次に雇用対策として、大統領米国雇用法案American Jobs Actの完全立法化を議会に要請した。米国雇用法案とは、オバマ大統領が2011年9月に提案した一連の雇用創出政策である。

当時は欧州財政懸念で景況感が急速に悪化し、かつオバマ大統領が再選をめざす大統領選挙の1年2ヶ月前だった。オバマ大統領は当時同法案と同時にいわゆる「バフェット増税」を提案し、選挙戦開始を意識してか急速にリベラルな党派色を全面に打ち出したことで知られている。

同法案の中からは、給与税減税や拡大失業保険給付の延長など一部が立法化された。12日の一般教書演説ではこれらの完全実施を議会に要請したが、現実にはこうした党派色の強い法案がねじれ状態の議会で完全成立する可能性は低いといえるだろう。

住宅ローン借換促進策にはリスクもある

持家保有者対策として大統領は、住宅ローン借換条件を緩和し持家保有者が現在の低金利のメリットを享受できる法案の採決を議会に要請した。住宅価格がローン残高を下回る状態、いわゆるunder waterの住宅ローン債務者に対して住宅ローン借換を許容することで、債務者の返済負担を軽減しかつ数年後にはunder waterを解消できる仕組みだ。これは2012年2月に大統領が提案した法案である。

過去に高金利で借り入れた住宅ローンを現在の低金利で借り換えることで、持家保有者は一人当たり年平均3000ドルの借り入れコスト削減になると大統領はのべている。住宅価格がローン残高を下回る状態のため借換ができず、低金利のメリットを享受できない持家保有者を救済する政策だ。

既にリーマンショック以降、住宅公社の保証対象のローンを中心に住宅ローン借換条件(特にLTV=住宅ローン残高/住宅価格比率)の緩和はいくたびか行われており、この政策もその延長線上のものといえる。しかし、借り入れ条件の度重なる緩和は、損失発生の場合住宅公社ひいては政府の負担を増大するリスクもあることは留意するべきである。

最低賃金の9ドルへの引上げは政治的には困難

また大統領は、連邦政府の定める時間当たり最低賃金を現在の7.25ドルから9.00ドルに引上げることを提案した。過去オバマ政権下の2009年に連邦最低賃金は6.55ドルから7.25ドルに引き上げられた。今回はこれを更に9.00ドルに引上げようとの提案だ。

この引上げにはかなりインパクトがある。米国では連邦政府の定める最低賃金と各州の定める最低賃金があり、原則両者のうち高い方が適用される。前回の連邦最低賃金引上げ時には、実際にそれに合わせて最低賃金の引上げが必要になった州は一部だった。現在でも、州最低賃金が連邦最低賃金7.25ドルを上回っている州が19州ある。

しかし、現在最低賃金を9.00ドル以上に定めている州は1州もない。つまり連邦最低賃金が9.00ドルに引き上げられれば、全ての州で最低賃金の引上げが発生することになる。これは企業の反発などを考慮すれば政治的にはかなりの困難が予想される引上げである。

雇用に対する法人税還付の実効性は疑問

経済政策の5番目として大統領は、新規雇用や設備投資をおこなった企業に対する税還付を主張した。雇用を増やした企業に法人税還付をすることはオバマ大統領が常々主張してきた政策だ。しかし現実には、企業にとって税還付を受けるために必要以上の雇用を行うインセンティブはうすく、効果のほどは疑問といえるだろう。

自動歳出削減回避の両党妥協がメインシナリオ

総じて一般教書演説での経済・雇用政策には目新しいものはなく、大統領の従来の政策を確認した結果になった。共和党はその多くに反対を表明しているが、共和党側のほうも増税反対に固執するあまり実効性のある対案を示しているとは言い難い。

当面は3月初からの自動歳出削減回避の如何に注目したい。何らかの妥協案や先延ばし策が議会で合意されると個人的には憶測している。その場合は今年の米国経済への影響は軽微にとどまるだろう。一方、自動削減完全実施の場合は今年の成長率が約-0.5%押し下げられて+1%台前半になる計算であることは2月10日付当レポートで見たとおりである。


綱引きの行方に注目~米政府自動歳出削減の影響

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米国の連邦政府歳出の自動削減実施が迫っている。経済への悪影響を抑制するための方策が2月中に米議会で合意されるとの見方をメインシナリオとして維持する。しかし仮に削減が完全実施された場合には、これが今年の成長率予想を-0.5%引き下げる可能性がある。民主党・共和党の対立と交渉状況に今月一杯留意したい。

終わりなきTug Of War

米財政管理法Budget Control Act of 2011に基づく米連邦政府の自動歳出削減sequesterの暫定凍結期間は2月末で終了する。この自動歳出削減の今後の取り扱いをめぐり米政府・議会では民主・共和両党の対立がまたも激化している模様だ。

オバマ大統領は5日、歳出削減と税制改正を伴う新たな立法により自動歳出削減を再延期することを議会に要請した。同日大統領は演説で「財政の崖解決の手続が長引いたことが消費者信頼感を悪化させた」「大規模な歳出削減の懸念はすでに企業の経営判断に悪影響を与えている」として「ほとんどの米国民が活用できない税の抜け穴や減税措置を、最富裕の個人や企業が享受できなくする税制改正が必要」とした。その上で、今年の初めに成立した富裕層増税と自動赤字削減凍結法案と「同様でやや小規模な歳出削減と税制改正の法案を議会は成立させ、自動赤字削減の経済的悪影響をあと数ヶ月遅らせる」べきだと主張した。

これに対し、共和党のベイナー下院議長は「米国民は、増税をもって必要な歳出削減に代えることを支持しない」と述べ、引き続き増税に反対の旨を表明した注1)。財政をめぐる民主・共和両党の綱引きTug Of Warがまたも繰り返されている。

自動赤字削減の根拠法は2011年財政管理法

米連邦政府の自動歳出削減の根拠は2011年8月2日に成立した2011年財政管理法Budget Control Act of 2011にある。その背景はさらに2010年12月のいわゆるオバマ減税の時期に遡る([第1表]参照)。

2011年夏に、米連邦政府の公的債務残高が議会の定める債務上限(当時14.3兆ドル)に達した。米財務省は、この債務上限を8月2日までに議会が引き上げねば連邦政府閉鎖に至る虞れがあると懸念を表明していた。民主党は債務上限引上げを主張、一方財政緊縮と小さな政府を唱える共和党が反対、との対立が期限ぎりぎりまで続いた。

結果、同年8月2日に成立した財政管理法では、2.1兆ドルの政府債務上限引き上げを認めると同時に、裁量支出の上限(キャップ)引下げにより2021年までに9170億ドルの財政赤字削減をすること、加えて超党派議員による赤字削減委員会を設立し追加で1.2~1.5兆ドルの財政赤字削減を2021年までに実現すべきことが定められた。同委員会は報告書を11月23日までに議会に提出し議会はこれに基づく赤字削減法案を12月23日までに可決することとされた。最低1.2兆ドルの赤字削減法が成立しなかった場合、同額の赤字削減実現のため、連邦政府の自動歳出削減が2013年1月より実施されると定められた注2) 。しかし、超党派赤字削減委員会は財政赤字削減報告書を期限の11月23日までに議会に提出することができず、ここで2013年1月からの歳出自動削減条項の適用が決定した。

2012年には、延長ブッシュ減税・給与税減税・延長失業保険給付の期限が年末に同時に到来するいわゆる「財政の崖」注3)が深刻な問題となった。また、米連邦政府債務は2011年の上限引上げ後も増加を続け、2012年末には上記財政管理法に基づき引き上げられた16.4兆ドルにも到達した注4)

財政の崖問題は、2013年1月にいわゆる財政の崖回避法American Taxpayer Relief Act of 2012で、富裕層に対するブッシュ減税の一部終了と給与税減税廃止などで一旦決着した。同時に同法では、予算管理法に基づく自動歳出削減の実施を2ヶ月に限り凍結することが決定した。債務上限問題は、2013年1月に成立したNo Budget, No Pay Act of 2012で、5月18日までの債務増加分に等しい金額債務上限の引上げを認めることが決定した。

[第1表]
20130210表1

国防費など裁量的支出が大幅に削減される

予算管理法による財政赤字削減策は2つの方法によっている。ひとつは会計年度ごとの裁量的支出の上限(キャップ)引下げ、もうひとつは義務的支出と裁量的支出についての自動歳出削減sequestrationである。米連邦政府の歳出は大きく義務的支出と裁量的支出に分かれる。義務的支出には法令で定められた社会保障費やメディケア等医療制度関連支出が含まれる。裁量的支出には国防費およびその他の政府支出が含まれる。予算管理法では主に裁量的支出に自動削減を設けているほか、義務的支出に含まれるメディケア支出に一定の削減を求めている。

1月2日に成立した財政の崖回避法により、自動歳出削減の実施は3月初まで延期された。2013会計年度(2012年10月~2013年9月)予算における、実施延期前と延期後の歳出削減額の比較が[第2表]である。現状のまま自動歳出削減が実施されると、2013会計年度の歳出削減額は約853億ドル、2012年名目GDP比約-0.5%の歳出削減が実施される計算になる。これを暦年ベースに直してみると、歳出削減額の2013暦年の名目GDP比率は概ね-0.3%程度となる。

[第2表]
20130210表2

また、米議会予算局CBOは5日の「財政経済見通し」注5)で、財政の崖回避法の施行と3月からの自動歳出削減を前提とした財政見通しを公表している([第3表][第1図]参照)。CBOの見通しによれば、2013会計年度の歳出総額は前年度比+0.4%の増加にとどまる。内訳は、義務的支出が前年度比約+4%増加するものの、裁量的支出に対するキャップと自動削減がこれをほぼ同じ-4%減少させるという結果になっている。CBOによる歳出見通しを暦年ベースに直してみると、2013暦年の歳出総額は前年比約+0.8%の増加にとどまる計算になる。

[第3表]
20130210表3

[第1図]
20130210図1

完全実施なら成長率予想を約-0.5%押し下げ

筆者は、2013年の政府支出(連邦政府・州地方政府合計)が実質ベースで前年比約+1.4%増加すること、つまり歳出自動削減が全面実施はされないことを前提に、通年の実質GDP成長率を前年比+1.8%と予想している。仮に、自動歳出削減がCBO見通しの前提通りに完全実施された場合の影響を実質ベースで勘案してみると、自動歳出削減は2013年の実質GDPを約-0.5%押し下げ、通年の成長率は前年比+1.2%に下方シフトするとの試算になった。

なお、CBOは上記の2月財政経済見通しにおいて2013年の実質GDP成長率見通しを前年比+1.4%(第4四半期の前年同期比)としている。これは年初の財政の崖回避を反映して、昨年8月時点の見通しである同-0.5%から大幅に上方改訂したものだ。因みに筆者の試算である上記の通年+1.2%を第4四半期の前年同期比に換算するとこれも同じ+1.4%となる。

議会での決着がつくまで現状の成長予想を維持する

自動歳出削減の成長への悪影響は、乗数効果も勘案すれば理論的には-0.5%よりも少し大きい可能性がある。一方で、自動歳出削減の3月実施の如何は極めて政治的な力学に依存する。米議会についての過去の経験則からは、2月に何らかの妥協が成立して財政管理法通りの歳出削減は回避され、実際の歳出額への影響はCBO試算より穏当となる可能性が高いとみる。従って現状は通年成長率予想を+1.8%に維持する。議会での民主・共和両党の対立と交渉状況を見守りつつ、仮に3月からの削減完全発動が現実的になった場合には成長率予想の下方改訂を考慮することとしたい。


注1)Wall Street Journal, February 6, 2013
注2)Congressional Research Service “The Budget Control Act of 2011”, October 5 2011
注3) 2010年のいわゆるオバマ減税法Tax Relief, Unemployment Insurance Reauthorization, and Job Creation Act of 2010は、ブッシュ減税の当初期限2010年末を2012年末まで延長すること、給与税を2011年末まで2%減税すること、拡大失業保険給付を2011年末まで延長することが定められた。その後給与税と拡大失業保険給付は2011年12月のTemporary Payroll Tax Cut Continuation Act of 2011により2ヶ月暫定延長され、2012年2月のMiddle Class Tax Relief and Job Creation Act of 2012により2012年末まで延長された。
注4) 米連邦政府の債務上限は、政府債務増加に伴いほぼ継続的に引き上げられている。1993年4月に4.4兆ドルへの上限引上げから数えて、2011年の引上げは17回目である(Congressional Research Service “The Debt Limit: History and Recent Increases”, January 31, 2013)。
注5) Budget and Economic Outlook: Fiscal Years 2013 to 2023, February 5, 2013


よいマイナス成長: 4Q12米国GDP統計

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12年10-12月期の米国GDP成長率は予想外のマイナス成長だった。しかし、成長を押し下げているのは一時要因にすぎず、個人消費などの経済のコア部分はむしろ加速していて「よいマイナス成長」といえる。その後公表された雇用統計、ISM製造業指数も景気拡大が堅調から加速に移りつつあることを示唆している。2013年通年の成長率約+1.8%という筆者個人の見通しは維持する。

成長を押し下げたのは一時要因

1月30日に公表された米国の2012年第4四半期(10-12月期)実質GDP成長率は、前期比年率-0.1%と予想外のマイナス成長となった。筆者個人の予想(1月28日付当レポート参照)は+1%台半ばだったから、結果は大幅な下ブレである。また、四半期の成長率がマイナスになるのは2009年第2四半期以来のことだ。

しかし内容を見てみると、この指標は見かけほど悪いものではない。表面の成長率を押し下げたのは、在庫や政府支出の一時的なマイナス要因にすぎない。むしろ個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内民間最終需要部分は伸びが加速している。米国実体経済は堅調な成長がつづいているといっていいだろう([第1図]参照)。

[第1図]
20130203図1

政府国防支出の大幅減少は支出時期ブレの可能性

成長がマイナスになった主因は、政府支出の大幅な減少と企業在庫増加ペースの大幅な減速である。この2項目で成長率がそれぞれ-1.33%、-1.27%、あわせて実に-2.6%押し下げられている。

政府支出の大幅減少の要因は、連邦政府の国防支出の減少(前期比年率-22.2%)だ。国防支出の減少理由は定かではない。ひとつには単純な支出時期のずれが原因と考えられる。国防支出は前7-9月期に同+12.9%増加している。10-12月期はその反動で見かけの支出が減少した可能性がある。

一方で、オバマ政権の政策から国防費の抑制が継続的になされているという構造要因である可能性も否定できない。イラク、アフガニスタンから軍事撤退により国防支出は2011年に-2.6%、2012年に-3.1%減少している([第2図]参照)。

さらに、「財政の崖」と連邦政府債務上限問題が国防支出減少の原因だった可能性がある。富裕層増税等とともに予算管理法 1)による歳出自動削減を2カ月凍結する法律2) が年初に成立し、「財政の崖」問題は一旦2末まで先送りとなった。また1月31日には、連邦議会上院が政府債務上限の暫定撤廃を5月18日まで認める法案3)を可決し(下院は1月23日に可決済み)連邦政府債務上限問題のリスク顕現も先送りとなった。しかし、3月以降予算管理法に基づく歳出自動削減が実施される可能性はまだ残っている。すると国防支出(裁量支出)は年間約425億ドル(約-7.3%)削減されることになる4)。昨年10-12月期時点ではこれらの事態の先行きが不透明であったことから、国防省には支出抑制の圧力がかかっていたとも報道されている(1月30日付WSJ紙)。

しかしながら、いずれの要因にせよ年率-20%を超える国防支出の減少がこのペースで継続することは考えにくい。今後連邦政府支出には引き続き抑制圧力がかかるものの、10-12月期の大幅減少は一時的な要因と見たい。

[第2図]
20130203図2

企業の在庫調整も一時要因と見る

企業在庫は10-12月期に増加ペースが大幅に減速し、政府支出とともに成長率を予想外に大きく押し下げる需要項目になった。現在の米国の企業在庫の水準をみると、在庫調整局面に入りつつあることは確かだ。ます、2012年11月時点の在庫売上高比率は1.28である。米国の在庫売上高比率は通常1.25~1.30の間で推移する。従って現在の企業在庫は、景気悪化時にみられる過剰感はないものの、通常の在庫調整局面にはあるといえる([第3図参照])。次に在庫循環図によれば、企業在庫は現在「意図せざる在庫増」局面にあり、次の「在庫削減」局面への移行時期にあることが分かる([第4図])。これらより、今後も当面米国では在庫調整が続くと考えられる。

しかし今後の在庫調整は、厳しい在庫削減をともなうものにはならないだろう。過去約半年間の在庫積上がりの背景は、海外経済減速による輸出減少、10-11月のハリケーンの影響などが考えられる。海外経済には概ね底入れ観が出てきているうえ、小売売上高などに表れる企業売上は好調に伸びている。また上記の在庫売上高比率からわかるように、在庫水準自体が通常の在庫循環の域を出ない。さらに最新11月分の在庫統計をみると、11月末時点の企業在庫残高は9月に比べ増加していることになっている。GDP統計上の在庫項目は上方修正の可能性もある。

こうしたことから、10-12月期の在庫大幅減少も一時要因であり、今後の在庫増加ペースはやや減速するものの、大きく成長を押し下げる要因にはならないと見る。

[第3図]
20130203図3

[第4図]
20130203図4

個人消費・設備投資・住宅投資の成長は加速した

一方、米国経済の中心をなす内需項目は拡大が加速した。個人消費は前期比年率+2.2%、設備投資が同+8.4%、住宅投資が同 +15.3%といずれも7-9月期を上回る成長だった。これらの3項目の合計(国内民間最終需要)は前期比年率+3.7%と2012年1-3月期以来の高い伸びになり、成長率を+3.2%押し上げた。米国経済のコア部分である内需は堅調から加速に転じつつあるといっていいだろう。

特に設備投資は、筆者個人の予想(前期比横ばい)を大きく上回る好調な伸びだった。構造物投資(建物など)は予想通り同-1.1%のマイナス成長だった。しかし機器ソフトウエア投資が同+12.4%と、7-9月期の同-1.8%から大きく反発している。基礎統計である非国防資本財出荷の動きからはやや上ブレしている数字ではある。今後設備投資はやや減速しながら年率4~5%の伸びを続けると見る。

個人消費は筆者予想よりやや弱めだったがそれでも同+2.2%の伸びを確保した。堅調な雇用の伸びが個人消費を支えていたことが明らかになった。1日に公表された1月の雇用統計でも非農業部雇用者数は前月比+157千人の増加を見せたほか、年次改訂で2012年分の雇用者数が大幅に上方改訂されている。

確かに今後は今年はブッシュ減税の一部終了と給与税増税が個人消費を抑制するだろう。さらに消費者信頼感指数をやや押し下げているという事実もある。しかしながら一方で、株価の上昇は想定を上回るペースだ。1日にNYダウは2007年10月以来の14000ドル台まで上昇して引けた。こうした環境からは、今後の消費者センチメントの低下は限定的で、引き続き消費も堅調な伸びを続けると見る。

「よいマイナス成長」2013年通年成長率は1.8%予想を維持する

こうしたことから、今回のマイナス成長は表面の数字は悪いが内容は好調で、米国経済が堅調から成長加速に向かいつつあることを示唆している。いわば「よいマイナス成長」だといえる4)

本指標公表の結果、2012年通年のGDP成長率は前年比+2.2%に着地した。これは前年2011年の同+1.8%からやや加速した伸びだ。今後は、10-12月期のマイナス成長がほぼ一時要因として、在庫と政府支出には1-3月期に反動増があるものと見る。したがって2013年通年で前年比+1.8%の成長との予想を維持することができる([第5図])。

上記の雇用統計のほか、1日に公表された1月分ISM製造業指数もこの見方を支持している。同指数は1月に53.1%と、昨年5月以来の水準に上昇した。このレベルはGDP成長率でいえば3%近い成長に相当する。同指数を構成する5つのDIはいずれも50%以上を維持して上昇。うち雇用DIは5つのDIのうち最も高い54%に達していて、今後も雇用市場が堅調な拡大を続けることを示唆している([第6図])。

[第5図]
20130203図5

[第6図]
20130203図6

1)Budget Control Act of 2011
2) H.R.8, The American Taxpayer Relief Act of 2012
3) H.R. 325, No Budget, No Pay Act of 2013
4) Center on Budget and Policy Priorities, “Here’s How the March 1 Sequester Would Work” January 22, 2013
5) 調査会社Global EconomicsはこのGDP統計を”the best-looking contraction in the U.S. GDP you’ll ever see”と評している(The Wall Street Journal, January 30, 2013)。