米国の1-3月期成長率は+2.5%と好調な結果だった。個人消費が2年ぶりに3%成長で経済を牽引した。一方で、政府支出減少が大きく成長を押し下げている上、企業設備投資も減速中だ。3月指標からは雇用の減速が見てとれるため、牽引役の個人消費も今後軟化すると見る。通年では1.8%成長という個人予想を維持する。
実質増税にも拘わらず個人消費は加速した26日に公表された米国1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率+2.5%と好調な数字だった。需要項目別内訳をみると、成長率を押し上げたのが個人消費(寄与度+2.24%)、設備投資(同+0.22%)、住宅投資(同+0.31%)、企業在庫(同+1.03%)。成長率を押し下げたのが純輸出(同-0.50%)、政府支出(同-0.80%)だった([第1図]参照)。
前期の成長率同+0.4%と比較すると大幅な加速になるが、実体的には成長は安定しているといえる。前期は企業在庫が予想外に大幅マイナス成長となり成長を約-1.5%押し下げたという要因があった。企業在庫を除いた成長率は前期・今期とも約1.5%となる計算だ。因みに、企業在庫・純輸出・政府支出を除く国内民間最終需要の伸びは前期比年率+3.6%と前期につづき極めて高い伸びになっている([第2図]参照)。
特に個人消費は、前期比年率+3.2%の強い伸びで成長率を約2%以上押し上げる牽引役となった。1月に給与税減税廃止と富裕層個人所得増税が実施されたにも拘わらず、個人消費はむしろ加速した。個人消費が3%台の伸びを見せるのは2011年1-3月期以来2年ぶりとなる。株価上昇、住宅価格上昇による消費者センチメントの好転が個人消費を加速したといえる。
[第1図]

[第2図]
民間設備投資・政府支出が成長を抑制する構図は不変逆に減速が目立つのが民間設備投資だ。民間設備投資は前期比年率+2.1%の伸びにとどまり、前期の同+13.2%から大幅に減速した。設備投資の内訳は、構造物投資が同-0.3%のマイナス成長、機器ソフトウエア投資が同+3.0%の低成長となっている。株価回復やFRBの量的緩和継続で消費者センチメントが回復している一方で、欧州財政問題・アジアの経済減速、そして米連邦政府財政問題などの不透明要因が企業の設備投資を抑制している構造だといえる。
政府支出は引続き成長の押し下げ要因になっている。政府支出は前期比年率-4.1%の減少で、2010年以来12四半期のうち10四半期で減少している。うち、州・地方政府支出は景気の回復とともにマイナスの伸びが徐々に縮小しているのに対し、連邦政府支出は引続き大幅な減少が続いている([第3図]参照)。連邦政府支出の減少の要因は、2009年以降のオバマ政権の外交政策が主にイラク等からの撤退を原則としてきたこと、また3月1日の予算管理法執行決定以前から歳出強制削減を見越した連邦支出削減が行われてきたことだといえる。
全般にこれまで同様、米国経済は個人消費が安定した伸びを続ける一方で、企業の設備投資と政府支出が成長を抑制する構造になっている([第4図]参照)。
[第3図]

[第4図]
今年の成長予想は+1.8%に据え置く筆者は、給与税減税終了と富裕層増税による個人消費への影響を約-1%と見て、通年の実質個人消費の伸びを前年比約+1.5%と個人的に予想していた(
1月13日付当レポート参照)。しかし、1-3月期までの走りがこの予想を大きく上回っていることから、個人消費の伸び予想を前年比+2%程度に引き上げる。
一方で、財政の崖回避法で政府歳出の自動削減が1-2月の間凍結されたにも拘わらず、連邦政府支出は大幅に減少した。この政府支出減少は筆者の予想以上のものである。
そこで個人消費予想引上げとともに、政府支出の成長へのマイナス影響予想を拡大することとする。結果、筆者個人の2013年通年の米国成長率予想は前年比+1.8%に据え置く。
個人消費は夏にかけ減速と見る個人消費の通年の伸び予想は引き上げたものの、4月以降夏にかけては個人消費の伸びは減速すると見たい。
その理由はまず、消費に関連する経済指標が3月以降目立って悪化していることだ。ミシガン大学消費者センチメント指数は4月に76.4ポイントと前月比-2.2ポイント低下した。3月小売売上高は前月比-0.4%との2012年1月以来の大幅減少となった、3月非農業部門雇用者数は前月比+88千人の増加にとどまった。非農業部門雇用者数の伸びが+100千人を下回るのは昨年6月以来のことである([第5図])。ちょうど昨年6月は、ギリシャ救済資金受け入れ是非を問う総選挙実施などで経済の不透明感が極めて高かった時期である。米国の成長率も4-6月期には1%台に減速した。
次に、株価に頭打ちの兆しが見えてきていることがある。筆者個人的には今年のNYダウのレンジ上限を15000ドルレベルと見ているが、現在の株価はほぼその水準に達してきている。ちなみに、年初来のS&P500指数のセクター別の上昇率を見ると、上昇率上位をヘルスケア・生活必需需品・公益事業などのディフェンシブセクターが占めている。景気敏感セクターである情報通信や資本財などのパフォーマンスは相対的にさえない。これは今後消費者センチメントが徐々に頭打ちになる可能性を示唆している。
1-3月期の3%台の個人消費の伸びに対して、4-6月期、7-9月期はいずれも1%台の伸びに減速すると見ておきたい。
[第5図]
イースターシフトの統計への影響を4月統計で見極めたいもっとも、これに対する上方リスクシナリオがある。3月の経済指標悪化が、主にイースター休日のシフトによる統計の歪みである場合だ。今年はイースター休日が2008年以来5年ぶりに3月に前倒しとなった。この影響が3月の消費や雇用の減速の要因である可能性がある。
4月の統計で小売や雇用に反動増が見られた場合は、3月の景気減速は統計のゆがみとして一部緩和される。この場合は通年成長率予想を2%台に引き上げることも考慮する。