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過熱ないが目先は減速~米国住宅市場動向

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米国の住宅建設・販売・価格は好調な回復を見せている。現在の住宅供給は歴史的にみるとまだ低水準にあり、バブルの様相はない。しかし、直近の経済指標および金利上昇から、短期的には住宅市場は一旦減速に向かうと見ておきたい。これは米国全体の成長にとっても下方リスク要因である。

米住宅は順調に回復している

米国の住宅市場は順調に回復している。GDP統計上の実質住宅投資は、2011年第2四半期以来8四半期連続でプラス成長、うち5四半期は前期比年率で2ケタの成長だ([第1図])。

住宅販売市場の大半を占める中古住宅の販売戸数は、5月に約2年半ぶりの年率5百万戸台に増加、住宅バブル前の2000年頃の巡航速度にまでほぼ回復した([第2図])。住宅価格も上昇している。S&Pケースシラー住宅価格指数(20都市)は4月に前年比+12.1%と大幅に上昇し、2006年以来の2ヶ月以上連続2ケタ上昇となった([第3図])。

[第1図]
20130630図1

[第2図]
20130630図2

[第3図]
20130630図3


住宅投資のGDP比率は歴史的にはまだ低水準にある

中長期的には、住宅市場は今後も拡大が期待できる。[第4図]は、米国GDP統計上の名目住宅投資(フローベース)の名目GDP全体に占める割合の推移である。これによれば、住宅バブルの起きる2000年代以前には住宅投資のGDPに占める割合は概ね4~5%の間で循環しつつ推移していた(20四半期移動平均参照)。住宅バブルの2000年代半ばにはこの比率が6%近くにまで上昇したのち、バブル崩壊で住宅投資が急減速して同比率は一気に2%台前半にまで低下した。

現状では同比率は底入れしており、直近の2013年1-3月期の統計によればこの比率は2.7%となっている。2000年代後半以来下降を続けていた中期トレンドライン(20四半期移動平均線)もここもと漸く上向きに転じている。長期的には住宅投資は上昇トレンドに入っていくといえる。

[第4図]
20130630図4


住宅のストックもまだ過剰ではない

住宅投資のストックベースの残高はどうか。米商務省の統計による住宅投資ストック額(名目)の1965年から2011年までの年次データと、これをHPフィルターで平滑化して長期トレンドを取り出したものが[第5図]、[第6図]である。

これによれば、2011年時点で住宅投資ストックは長期トレンドを下回る位置にある。2012年時点でも、GDP統計の名目住宅投資の増加と減価償却額を勘案すれば、まだトレンドをやや下回る位置にあると推測できる。

つまりトレンドで見る限りは現在の米国の住宅は過剰な投資額にあるとはいえず、引続き長期トレンドに沿った持続的な成長が見込まれるということになる。

[第5図]
20130630図5

[第6図]
20130630図6


住宅価格上昇はバブルではない

こうした証跡からは、現在の米国の住宅市場がバブルであるとはいいにくいだろう。確かに住宅価格の10%以上の上昇は、2002年頃の水準に相当し、今後の住宅バブルの兆候を思わせるものがなくはない。ただ、上記で見たように、住宅販売戸数が2002年時点に比べてまだ低水準であり、住宅購入に過熱感は見られない。

また現在の住宅価格上昇率は住宅販売在庫期間の短期化にともなう上昇率理論値にほぼ近い([第7図])。中古住宅の販売在庫期間は概ね6ヶ月程度が標準とされている。住宅バブル期にはこれが3ヶ月台にまで縮小、バブル崩壊後の住宅価格下落時には一時11ヶ月を超えるにまで長期化した。その後長い住宅在庫調整を経て同期間は今年の1月に4.3ヶ月にまで縮小、その後やや拡大して5月現在では5.1ヶ月となっている。現在の住宅価格上昇率はほぼこの在庫期間短縮に沿ったものである。

現在の住宅価格上昇は実需を超えた需要によるものではなく、一時的な供給のタイト化によるものと見るのが妥当であろう。

[第7図]
20130630図7


短期的には減速を見込む

しかし、短期的には住宅投資・住宅市場に以下のとおり減速の兆しがみえている。もっともこれは極めて短期サイクルの循環的な減速であって、趨勢的・構造的な要因ではないと現状はみておきたい。

まず、住宅着工件数がここもと頭打ちになってきている。月次の住宅着工件数は今年3月に年率1,005千件のピークを付けたのち、4月以降は軟化している。4、5月の平均着工件数は、1-3月期のそれを下回っており、このペースだと4-6月期の住宅着工件数は8四半期ぶりに前期を下回る計算になる([第8図])。住宅着工件数を基礎統計とするGDP統計で、4-6月期の実質住宅投資が9四半期ぶりにマイナス成長となる可能性が高まっている。

次に住宅ローン金利の上昇である。FRBのQE3年内縮小観測から長期金利が上昇している。10年物米国債利回りは28日時点で約2.5%、30年物固定住宅ローン金利は6月平均で4%台(Freddie Macによる)といずれも2011年以来の水準に上昇している。これらの金利上昇が住宅市場の拡大のマイナス材料になる可能性はある。

住宅投資の減速は今年の成長率予想にとっても下ブレ要因である。筆者は、住宅投資、設備投資ともに4-6月期のプラス成長を見込んで通年の米成長率を前年比+1.9%と個人的に予想している。しかし、26日の1-3月期GDPの下方改訂、非国防資本財出荷の低迷、そしてこの住宅着工の減速は、この個人見通しの下方リスクを拡大させている。

[第8図]
20130630図8



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年内QE縮小開始予想を維持~6月FOMCと議長発言

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19日FOMC後の記者会見で、バーナンキ議長が年内QE縮小の可能性に言及した。FOMC委員の経済予測に照らせばこの見通しは必然的帰結である。経済予測にやや楽観的な部分はあるものの、年内QE縮小開始との個人の予想を維持する。

6月FOMCは政策維持、議長は年内のQE縮小の可能性を示唆

19日に公表された6月18-19日FOMCの声明文では、現状の金融政策いわゆるQE3の維持(月間850億ドルの資産購入継続)が決定された旨が公表された。同時に公表されたFOMC委員の経済予測では、経済成長率・失業率いずれもが3月時点の予測よりやや好転した。さらに、FOMC後の記者会見でバーナンキFRB議長は、年内の資産購入縮小開始と来年央の資産購入終了の可能性を示唆する発言を行った。これを受けて19日以降株価指数は下落、長期金利は上昇を加速している。

19日の記者会見で議長は、準備された発言テキストに基づく冒頭発言で「入手されるデータがこの
[FOMC委員経済]予測に概ね整合的ならば、年後半に[資産]購入のペースを減速させるのが適切だろうと委員会は現在予想している」「そしてその後のデータが概ね現状の我々の経済への期待に一致し続けるならば、我々は購入ペースを来年前半にかけ慎重な段取りで減速継続し、年央辺りで終了するだろう」と述べた。

今回の議長発言はFOMCを代表した公式見通し

5月22日にもバーナンキ議長は、米議会合同経済委員会で、「継続的な[経済の]改善とそれが持続的であるとの確信がもてれば今後数回の会合で資産購入のペースを落とすことはありうる」と証言している(5月28日付当レポート参照)。

5月の議会での発言と今回のFOMC後記者会見との違いは2点ある。ひとつは5月議会証言が議員の質問に答えての発言だったのに対し、今回の発言は予め準備された発言テキストで用意されたものだったこと。もうひとつは、今回の発言は6月に改訂されたFOMC委員の経済予測に基づくものであることだ。これらの状況から、年内のQE縮小開始、来年半ばのQE終了は、もはやFOMCとしての公式見通しになっていると言える。

FOMCの中間目標は失業率6.5%

FOMCが定めている金融緩和解除への条件をおさらいしよう。FOMCは2012年12月12日の会合で、月間850億ドルの資産購入所謂QE3およびゼロ金利継続の新たな中間目標を定めた。同日の声明文でFOMCは「この例外的なFFレートのレンジ[0%-0.25%]は、少なくとも失業率が6.5%を超えていて1-2年間のインフレ予想が2%の長期目標を0.5%以上超えない限り妥当」としている。

なお、資産購入との関係につき従前より声明文は「極めて緩和的な金融政策スタンスは資産購入プログラムが終了し経済回復が強まったあと相当の期間適切であり続ける」としている。

失業率が6.5%を下回る時点でFOMCは利上げ開始を考慮、資産購入終了は利上げよりも「相当の期間」前に実施される、ということがFOMC緩和解除のステップということになる。

FOMC委員経済予測は上方シフトした

今回の6月FOMCで改訂された委員の経済予測は[第1表]の通りである。まず、成長率予測の中心傾向は2013年が2.3%‐2.6%と3月時点の予測比ほぼ不変。2014年については3.0%‐3.5%と3月時点から約+0.1%上方シフトしている。

金融政策の中間目標であり利上げの目途となる失業率予測の中心傾向は、2013年が7.2%‐7.3%、2014年が6.5%‐6.8%といずれも3月時点の予測より好転方向にシフトしている。特に2014年については3月時点より上限、下限とも約-0.2%改善し、予想の中心傾向の下限は利上げの目途となる6.5%にまで低下している。

一方でインフレ率(PCEデフレーター)予測は、2014年で1.4%‐2.0%と3月時点の予測からほぼ不変。FOMCが定めるインフレ率の中間目標である2%注1)の近辺にある。

また、適切な利上げ時期については、2015年の利上げを適切とする委員が1名増えて14名となった。これはおそらく3月時点まで2014年の利上げを見ていた委員がその見通しを後ろ倒ししたものと思われる。

[第1表]
20130623表1


議長発言はFOMC経済予測に則ったもの

この経済予測に照らせば、バーナンキ議長の「QEの年内縮小、来年央終了」発言は、FOMCの予測に沿った必然的帰結ともいえる。

FOMCは失業率が6.5%を上回っている間はゼロ金利を継続、言い換えれば失業率が6.5%を下回れば利上げの一つの判断材料になるとしている。さらにQE終了から利上げまでには「相当の期間」を置くとしている。

失業率が6.5%を本格的に下回るとFOMCが見る2015年を利上げの時期とするならば、その前に相当の期間を置くためには2014年半ばにはQE終了が必要、さらにQE縮小開始は2013年内とおくのは極めて自然である。

ハードルあるが年内QE縮小予想維持

ついては、FRBの金融政策に関する個人の予想を「2013年内QE縮小開始、2014年半ばQE終了、2015年利上げ開始」に維持する。

ただしこれに対するリスク要因はまだ残っている。まず、FOMCの成長率と失業率の予測がやや楽観的に見えることである。筆者個人の2013年の成長予想は2.1%(第4四半期前年同期比)、失業率は7.6%(第4四半期平均)で、いずれもFOMC予測の中心傾向よりも弱気に見ている(5月21日付当レポート参照)。政府支出の減少と株価減速による個人消費の減速が今後成長率の頭を抑える要因になる可能性が高い。最近の失業率は需給ギャップと失業率の相関からみた推計失業率を下回って低下していて、今後は失業率低下ペースが減速する可能性が高い。2014年に失業率は6.5%にまで低下する可能性は低いと個人的には見ている。

次に、FOMC内では今後も利上げに慎重なハト派委員が潜在的には過半数を占めていると考えられることである。5月FOMCの議事要旨からは、資産購入縮小の前に「労働市場の継続的改善、見通しへの確信、下方リスクの後退が必要」と述べた参加者が多数manyいたことが分かっている。この勢力図に変化があったかどうかは6月会合の議事要旨で確認したい。

このように、数値的・状況証拠的ハードルはあるものの、現実的にはQE継続に伴うコストと実効性低減の観点から、年内に少なくともQE縮小にFOMCが踏み切ると見たい。QE継続にともなうコストとは、市場が過度なリスクテイクに走る可能性、また住宅市場に見られる始めた需給のひっ迫の可能性である。また、追加的資産購入が実体経済に及ぼす影響はかなり低減してきている。

金融市場への影響

19日のバーナンキ議長発言に金融市場は大きく反応した。18日に15318ドルだったNYダウは19日に‐200ドル以上、翌20日には更に-300ドル以上の下げとなり、21日の終値は14799.40ドルだった。10年物米国債利回りは18日の2.19%から21日には2.53%と約2年ぶりに2.5%を超えている。5月21付当レポートの筆者個人の予想に照らすと、株価下落ペースはほぼ予想通り、金利上昇ペースは予想よりかなり早い。株価については今後年後半にかけ弱含み揉み合いとなり年末14500ドルとの見方を維持する。金利については2.5%がひとつのテクニカルかつ心理的節目であることから年末に2.5%と見るが、個人予想の「年間レンジ」に示すとおり、一時的に3%までの上昇の可能性を引続き見ておく必要があるだろう。

注1)2012年1月25日FOMC声明文公表時に「インフレ率の長期目標」として設定されたもの。