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来年にかけ心地よい水準へ~米国インフレ率低下事情

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現在の米国のインフレ率低下は、FRBの目標値や理論上の推計値から大幅に下方乖離している。これは主に一時要因によるもので、今後1年間にインフレ率1.5%~2%に上昇すると見る。FOMC内にはインフレ率低下に懸念の声もあるが、年内QE3縮小開始への致命的ハードルにはならないと見る。

米国のPCEインフレ率はFOMCの目標から大幅下方乖離中

FOMCによる量的緩和(QE3)縮小が年内に始まると筆者は予想している。しかし、米国のインフレ率がFOMCの長期目標である2%から下方に乖離していることは、この予想に対するリスク要因である。

FOMCは2012年より2%のインフレ率を金融政策目標として正式に採用している。FOMCは、2012年1月25日の会合後声明文公表と同時に、「委員会は、個人消費支出価格指数の前年比で計測したインフレ率の2%がFRBの法的使命に長期的に最も整合的であると判断する」とする公表分で、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比2%を長期目標longer-run goalとすることを定めた。

しかし、PCEデフレーターの前年同月比の伸び率(PCEインフレ率)は過去1~2年の間総じて低下傾向にある。今年5月時点のPCEインフレ率は+1.0%と、FOMCの目標から大幅に下方乖離している([第1図]参照)。6月のFOMC委員による経済予測では、2013年のPCEインフレ率予想の中心傾向は+0.8%~+1.2%(第4四半期の前年同期比)で、3月時点の同予測(+1.3%~+1.7%)から大幅に下方シフトした。

[第1図]
20130728図1


FOMC内でもインフレ率低下に懸念の声

6月FOMC会合の議事要旨によれば、「殆どのmost参加者は、経済活動が強まるにつれインフレ率が今後1年間に上昇を始めると予想した、しかし多数のmany参加者は幾分かの間インフレ率は委員会の2%目標以下にとどまると予想した」とされている。また同会合の金融政策に関する議論においては「1人のメンバーは、(金融政策についての)かかる決定はインフレ率が委員会の2%目標に回帰するという証左に依拠することが重要で、委員会がインフレ率を目標に戻すために行動することを明示的に述べるよう委員会後の声明文を変更すること」を強調した(このメンバーはおそらく6月会合で声明文に反対票を投じたセントルイス連銀ブラード総裁)。

さらに「他の2~3人のa couple of メンバーはインフレ率の下方リスクが増大したことに懸念をもち、うち1名は、声明文がこのリスクを更に明示的に反映するべきと述べた」とされている。12人の投票メンバーのうち少なくとも3人がインフレ率の低下に懸念を持っていることになる。

食品・エネルギーを除くコアインフレ率も低下している

PCEインフレ率低下の要因を同指数構成品目別に見てみよう。まず、過去2年間に食品・飲料や、ガソリン・燃料等エネルギー価格の上昇率が低下したことが総合PCEインフレ率の低下要因である。([第2図])。しかし、食品・エネルギーを除くコアPCEインフレ率も総合インフレ率にやや遅行しつつ同様に低下している(上記[第1図])。インフレ率低下は直接的なエネルギー価格低下だけが要因ではなさそうだ。

PCEデフレーターは大きく耐久消費財・非耐久消費財・サービスの3費目に分かれる。うち、恒常的にマイナスの伸びが続いているのが耐久消費財である。耐久消費財には継続的に価格が低下するテレビ・ビデオ・コンピューター等が含まれていて、90年代後半のIT革命以降価格下落が続いている。非耐久消費財には商品価格の変動の影響を受けるガソリンや燃料などが含まれていて、他の品目に比べて価格変動が大きい。サービス価格上昇率は他の2品目に比べ安定的で、常に概ね約2~3%の範囲内を維持する傾向がある([第3図]参照)。

[第2図]
20130728図2

[第3図]
20130728図3


中古車・衣服・輸送関連品目の価格低下が目立つ

しかし、詳細を見ると、食品・エネルギー以外のいくつかの品目の価格上昇率が過去2年間に目立って低下していることが分かる([第4図])。まず、中古車価格が2011年以来伸びを低下させ、過去2年間は価格下落が続いている。中古車価格が頭打ちになっている要因は、主に金融危機の時期から蓄積した自動車の買い替え需要が景気底入れと共に示現し、中古車市場への供給が増加しているためとも考えられる。ただし、全米自動車ディーラー協会NADAは、今年の初めの中古車価格の下落は主に給与税減税終了による一時要因によるもので、今後は再び安定的な価格上昇が見込めるとしている(NADA Used Car Guide Industry Update, July 2013)。

次に、衣服の価格上昇率が過去1年で大幅に低下している。これは過去1年間原材料となる商品価格が概ね安定または低下傾向にあったことと関連していると考えられる。更に、サービス価格の中では輸送サービス価格の伸び率が継続に低下している。これもガソリンや燃料価格上昇率が過去2年間継続低下してきたことと関連がある。

以上から、過去1~2年のコアPCEインフレ率低下は、主に税制変更やエネルギー価格変動等の一時要因によるものだといえそうだ。

[第4図]
20130728図4


現在のインフレ率はフィリップス曲線から大幅下方乖離している

次に、需給ギャップとインフレ期待というより中長期的なインフレ率決定要因を見てみよう。[第5図]は、縦軸にコアPCEデフレーターの伸び率、横軸に失業率をとった物価版フィリップス曲線である。失業率は需給ギャップを表象する指標である。これによれば、2013年第医2四半期時点のコアPCEデフレーターの伸び率約1%は、回帰曲線からかなり下方に乖離した位置にある。つまり現在のコアPCEインフレ率は、失業率(需給ギャップ)との逆相関から求められるインフレ率に比べてかなり低めであることになる。

次に、失業率とインフレ期待を説明変数、コアPCEインフレ率を被説明変数とする重回帰分析を行う。インフレ期待には、ミシガン大学消費者センチメント調査における期待インフレ率(12ヶ月後)を用いた。観測期間は2003年第1四半期~2012年第4四半期の40四半期とした。結果、[第1表]の通り、失業率とインフレ期待のいずれもが統計的に有意な推計式が得られた。

この推計式に基づくコアPCEインフレ率推計値と、実際のコアPCEインフレ率を比較したのが[第6図]である。このグラフによれば、2012年第3四半期から実際のコアPCEインフレ率が推計値に対して下方に乖離を始め、現在では推計値+1.7%に対して実績値+1.0%と、実に-0.7%の下方乖離状態にあることが分かる。

[第5図]
20130728図5

[第1表]
20130728表1


[第6図]
20130728図6


1年の間にインフレ率は心地よい水準に回帰すると見る

以上より、現在のPCEインフレ率は需給ギャップとインフレ期待から導かれる水準をかなり下回る水準に低下しているといえる。また、この下方乖離はエネルギー価格や税制など主に一時要因によるものであると推測できる。従って今後中期的には、PCEインフレ率は現時点での推計値である約+1.7%の水準に回帰していくと見たい。

筆者は、現在の米国の失業率も、需給ギャップから推計される水準をかなり下回っていて、今後年内は7%台で推移すると見ている。従ってPCEインフレ率もFOMCの目標である2%を大きく上回る水準には上昇しないと見る。結果、今後約1年間のPCEインフレ率は、1.5%~2%というFOMCにとって「心地よい」水準に戻ると考える。

結果、現在のインフレ率低下はQE3縮小に対する決定的なハードルにはならないはずだ。多数のFOMC委員が予測するように、来年にはPCEインフレ率が上昇する可能性が高い。インフレについてはこの予測を根拠に年内にQE3縮小開始されると予想する。

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年内縮小シナリオへのリスク~バーナンキ議長議会証言

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QE3の年内縮小開始を巡るFOMC内の議論は引続き微妙なバランスにある。一方で成長率、インフレ率というマクロ経済指標はタカ派にとって悪材料になりつつある。年内QE3縮小予想は維持するも、リスク要因が高まっていることには留意したい。

バーナンキ議長議会証言では年内QE縮小を改めて示唆

17日に行われた米議会下院金融サービス委員会でのバーナンキFRB議長証言(半期金融政策報告)は、FRBによる月間850億ドルの資産購入(いわゆるQE3)の縮小開始時期についての新たな示唆があるかが注目されていた。

バーナンキ議長は議会証言で、準備されたテキストに基づき「入手されるデータがこれら[FOMC委員の経済]予測と整合的ならば、今年後半に資産購入のペースを縮小」し「来年前半にかけ縮小継続し、来年央頃に終了する」と述べた。これは6月12日のFOMC後の記者会見における発言(発言原稿に基づくもの)とほぼ同内容である(5月以降のバーナンキ議長による主な発言は[第1表]参照)。

[第1表]
20130722表1

文言はFOMCで詳細に議論されたもの

この議長発言の文言は、6月のFOMC会合での詳細な議論に基づくものだったことが議事要旨から読み取れる。6月FOMC議事要旨によれば、「ほとんどの most 参加者は、議長が声明文公表後の記者会見において、経済が概ね委員会の期待に沿うとの条件付きでの今後数四半期における資産購入についての可能性の高い道筋を述べるべきだと考えた」「加えて、議長は資産購入や他の金融政策手段についての決定は引続き委員会の経済見通しに依存することを明言する」「議長は、資産購入終了とFF金利誘導目標引上げが適切になる時期との間には相当の期間considerable time があると委員会が考えていることを述べることで、資産購入と、FF金利誘導目標についてのフォワードガイダンスを区別すること」が議論されている。

つまり、6月12日、7月17日の議長発言はいずれも、事前にFOMC内で議論の上決定された文言であり委員の殆どが支持した内容である。したがって、年内のQE3縮小と来年央のQE3縮小は(経済がFOMC委員予測に沿うとの条件付きで)FOMC内のコンセンサスに近いと考えてよい。

「極めて緩和的な金融政策」はゼロ金利政策を指す

一方、議長の17日議会証言には「当分の間foreseeable future極めて緩和的な金融政策が適切であり続けるだろう」との文言がある。これは10日に行われた講演における議長の発言とほぼ同じ文言である。10日講演ではこの発言がハト派と受け止められ、NY株価指数の反発とその後の史上最高値更新のきっかけとなった。

しかし、この発言をいちがいにハト派と受け取るべきではないだろう。FOMC声明文では「極めて緩和的な金融政策」とはゼロ金利政策を指す文言であって資産購入QE3 を指すのではない。QE3と、その後も相当の期間継続するべきゼロ金利政策とを明確に区別すべきことは上記の6月議事録でも明確に議論されている。つまり、バーナンキ議長が「当分の間極めて緩和的な金融政策が適切」と述べたのはゼロ金利政策が当分の間適切ということであって、QE3を当分の間継続するという意味ではない。

年内QE3縮小予想へのリスク:成長率は下振れ方向

以上より、17日の議長証言では、QE3縮小時期に関する新たな情報はなく、引続き年内QE3縮小開始、来年半ばにQE3終了との筆者個人の予想を維持する。

ただし、この予想に対するリスクがやや高まりつつあるのも事実である。第1に、議長証言にある年内縮小開始は、今後の経済実績がFOMC 委員予測に沿っていることが条件になっている。しかるに、6月FOMC声明文と同時に公表された6月時点のFOMC委員の成長率予測はかなり楽観的と言わざるを得ない(6月23日付当レポート参照)。FOMC委員の2013年成長率予測(第4四半期前年同期比)の中心傾向は+2.3~2.6%だ。しかし実際の成長率はこれよりも下ぶれる可能性が高いと筆者は見ている(筆者個人は同期間の成長率を+1.7%程度と見ている)。IMFも7月に公表した世界経済見通しで、同期間の米国の成長予想を4月時点の+2.2%から+2.0%に引き下げている。

FOMC内のハト・タカのバランスは微妙

第2に、FOMC内でのQE3早期縮小派と慎重派のバランスは依然として微妙である。6月FOMC議事要旨によれば、多数のmanyメンバーが「資産購入ペース縮小が適切になる前に、労働市場見通しの更なる改善が必要」と述べており、これは「資産購入縮小は間もなく正当化されるだろう」と述べた数人のseveralメンバーを数の上で上回っている。5月会合時点との比較でもハト派がタカ派に対する差を広げている([第2表])。

6月議事要旨と同時に公表された6月FOMC委員経済予測サマリーによれば「約半数の参加者が年後半に資産購入を終了するのが適切と述べた」とされていることからは、タカ派勢力が半数を占めているとも読める。しかし、この「半数」とはFOMC「参加者」全体に対する比率である。上記のとおりFOMCの決定に投票権をもつ「メンバー」の多数は資産購入縮小に慎重である。これはFOMC内のハト・タカ分布の特徴を表している。投票権をもつFRB理事はイエレン副総裁をはじめとするハト派が多数を占めている。また今年の投票権をもつ地区連銀総裁にも、シカゴ連銀エバンス総裁、サンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁などハト派が目立つ。投票メンバーである地区連銀総裁で本来的なタカ派と言えるのはカンサスシティ連銀ジョージ総裁(今年に入り全ての会合で緩和継続に反対)一人といっていい。

[第2表]
20130722表2



予想は維持しつつFOMC内議論の状況には留意したい

第3に、インフレ率が低下を続けている。FOMCがインフレ指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比の伸び率は5月現在で+1.0%と、FOMCが目標とする2%から大きく下ぶれている。PCEデフレーターを構成する品目の内訳を見ると、今年に入ってから原油等のエネルギー価格が下落し、また耐久消費財の代表である中古車や家具、非耐久消費財の代表である衣服の価格の伸び率が大幅に低下している。

状況証拠からは年内QE3縮小開始予想に対するリスク要因は徐々に増えつつある。しかしQE3やゼロ金利政策の長期化がもたらしうる「過度なリスクテイク」による悪影響の可能性も看破し得ないだろう。FOMCは成長見通しのみならず将来の金融市場に対するリスクをも踏まえた判断を年内に行うと考える。年内QE3縮小開始予想は維持しつつも、FOMC内の議論状況は引続き注意したい。

消費と経済対策が牽引する~日本成長予想引上げ

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筆者個人の2013年(暦年)の日本の成長率予想を引上げ、前年比+1.9%とする。好調な家計消費に加え、今後は緊急経済対策による公共事業等が成長を押し上げるだろう。政府支出による成長押し上げは持続的とはいえないが、2014年4月からの消費税引上げはより現実的になってきていると見たい。

今年の日本の成長予想を+1.9%に引き上げる

日本経済は、昨年の7-9月期に一時マイナス成長に転化していたことから、年初時点では今年の成長率は昨年を下回る1%台にとどまると予想していた。しかし、その後の日本経済は年初想定以上のペースで拡大している。1-3月期の実質GDPは前期比年率+4.1%という大幅な伸びを見せた。5月に公表された1次速報値は同+3.5%と予想以上の伸びだったが、6月公表の2次速報値では更に同+4.1%に上方改訂された。

1-3月期までの成長加速を牽引したのは家計消費だ。GDP統計上の家計最終消費支出は昨年10-12月期、今年1-3月期にそれぞれ実質GDPを約+1.0%、+2.1%押し上げた。今後は、消費に加え政府の緊急経済対策に基づく財政支出が更に成長を押し上げると見る。さらに、企業設備投資にも漸く底入れの兆しが見える。7-9月期は、4-6月期を更に上回る前期比年率+5%台の成長を見込む([第1図])。

結果、筆者個人の2013年(暦年)の日本の実質GDP成長率予想を従来の前年比+1.7%から同+1.9%に引き上げる。今年の成長率は昨年と同ペースを維持する見込みになる([第2図])。なお、年度ベースでは、2013年度の成長率予想を前年度比+2.4%とする(7月13日付当レポート[第1表]参照)。

[第1図]
20130715図1

[第2図]
20130715図2

金融市場好転が家計消費を押し上げている

1-3月期は家計最終消費支出が同+3.5%の強い伸びでGDPを約+2%押し上げた。4-6月期もこれとほぼ同水準の伸びを見込む。内閣府の消費総合指数は4月に前月比+0.2%、5月に同+0.6%の伸びを見せた。6月が仮に5月比横ばいとしても4-6月期の前期比年率の伸びは+3.1%を確保できる水準だ。

家計消費拡大の要因は強い消費者センチメントだ。内閣府の消費者態度指数は、4月以降やや上昇ペースが鈍ったものの、4-6月期平均では前期比+12.1%と2四半期連続で2ケタの伸びで、その水準は2007年以来の高水準だ([第3図])。政府の緊急経済対策や日銀の量的・質的緩和のアナウンスメント効果、及びこれに伴う株価上昇等が消費者センチメントを押し上げていると考えられる。

賃金も家計消費の追い風になりつつある。現金給与総額は、2011年度、2012年度とも年間平均で前年度を下回っていた。しかし、今年に入り4月、5月時点でそれぞれ前年比横ばいに回帰している(厚生労働省毎月勤労統計調査による)。アベノミクスが目指す賃金上昇は徐々に実現しつつあり、家計消費による経済牽引を後押しする可能性が高い。

[第3図]
20130715図3

設備投資は低迷も機械受注に回復の兆し

好調な家計消費に対し、企業設備投資は低迷している。GDP統計上の民間企業設備は2012年1-3月期以来5四半期連続でマイナス成長になっている。民間企業設備に先行する鉱工業出荷指数の4-5月平均は1-3月平均を下回っている([第4図])ことから、民間企業設備は4-6月期もマイナス成長の可能性が高い。

しかし、他の経済指標からは企業設備投資にも明りが見え始めている。まず、大企業の景況感が大幅に好転している。日銀短観(6月調査)における大企業・製造業の業況判断DIは+4と、3月調査の-8から大幅に好転した。同DIがプラスに転じるのは2011年9月調査以来、またその水準は2011年3月調査以来である。

また機械受注がここもと急増している。内閣府の機械受注統計によれば、5月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+10.5%の大幅な伸びを見せ、4月の同-8.8%減を十分にとりかえした。4-5月の機械受注額平均は1-3月平均に比べ+6.0%増と、5四半期ぶりのプラスかつ大幅な伸びに転じている([第5図])。

家計消費に比べ企業設備投資が低迷しているのは米国と同じ傾向である。家計が株価上昇等に比較的反応しやすいのに対し、企業の設備投資計画は、グローバル経済成長減速というマクロ要因を勘案してより慎重になっていると考えられる。また日本の場合、製造工業の稼働率がいまだ東日本大震災前の水準に戻っていないため、持続的な受注増が見込めない限り設備拡大に踏み切りにくいという事情がある。

しかし、稼働率も水準は低いが継続的に改善していることや、昨年来の企業在庫調整もほぼ終了したと考えられることから、年後半にかけて民間企業設備もプラス成長に回帰していくと見る。

[第4図]
20130715図4

[第5図]
20130715図5

緊急経済対策の本格化も成長を押し上げよう

4-6月期以降は政府支出が家計消費とともに経済を牽引すると見る。10.3兆円の緊急経済対策のGDP押し上げ効果は2013年通年で約+1.2%と筆者はみている(1月20日付当レポート参照)。これらの支出が4月以降本格化していると考えられる。

公共工事請負金額は、1-3月期まで2四半期連続で減少し3兆円を割り込むまでになっていたが、4-6月期には4兆円台に急増している([第6図])。1-3月期には公的需要(政府最終消費支出・公的固定資本形成・公的在庫品増加の合計)の実質GDP成長率への寄与度は前期比年利率+0.4%にとどまった。しかし、4-6月期以降は公共事業の本格化等により、政府支出による成長押し上げが加速しよう。

[第6図]
20130715図6

消費税引上げ見通し

2013年の実質GDP成長率予想+1.9%(年度ベースで同+2.4%)は、アベノミクスが掲げる実質2%成長を初年度において達成することを意味する。しかしながら筆者予想では、+2.4%成長のうち約1.4%が政府支出に依存している。政府支出が押し上げた2%成長は持続的とはいえないだろう。従って単年度の2%成長達成だけでは、2014年4月からの消費税引上げについて消費税等改正法が定める「平成23年度~平成32年度の平均において名目3%、実質2%成長(同法附則第18条)」の目途が立ったことにはならないだろう。

一方で同条(いわゆる景気弾力条項)によれば、消費税引上げに当たっては「経済状況を好転させることを条件として実施する」とはしているものの、これらの数値を「目指した望ましい経済成長の在り方の早期に近づけるための総合的な施策の実施その他必要な措置を講ずる」としている(同法附則第18条)のみで、実質2%成長見通しを消費税引上げの直接の数値条件とはしていない。

更に、昨年6月の同法成立前に交わされたいわゆる3党合意では、附則第18条について「第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること」が明記されている。つまり、持続的な実質2%成長見通しが完全には立たなくとも技術的には2014年4月からの消費税引上げは可能である。

筆者は今後の成長予想に、2014年4月からの消費税引上げを前提とした事前駆け込み需要と事後の反動需要減を織り込んでいる。持続的成長の可否はともかく、年初の1%台から2%成長に成長見通しが好転したことは、同時に消費税引上げの仮定がより現実的に近くなりつつあることを意味する。

政府とマクロが重しになる~米国成長予想引下げ

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今年の米国の経済成長率個人予想を引き下げる。新たな成長予想は前年比+1.6%と、これまでの同+1.9%から大幅に下方修正する。株価上昇などで個人のセンチメントは好転しているものの、米政府財政支出削減、グローバルなマクロ経済環境への懸念から企業部門の回復が遅れそうだ。

4-6月期の成長率は大幅減速を予想する

4-6月期の米国実質GDP成長率(7月31日公表予定)の筆者個人予想を前期比年率+1.2%とする。これは前期の同+1.8%から大幅に減速する結果になる。これを中期的な趨勢を表す前年同期比の伸びになおすと前年比+1.6%となり、前期とほぼ横ばいの成長を維持していることになる。しかし、1.6%の成長率は米国の潜在成長率をやや下回る水準である 。成長ペースは底堅いながらも加速感は見られないといっていい([第1図]) 。

また、2013年通年の成長率についての予想を前年比+1.6%に引き下げる。これは5月時点の予想(5月21日付当レポート参照)である同+1.9%から‐0.3%の大幅下方修正となる。この下方修正の要因のひとつは、GDP統計上の1-3月期の成長率が4月の速報値2.4%から、6月の確報値にかけて1.8%と大幅に下方改訂されたことである。もうひとつの要因は、4月以降の個人消費、設備投資、住宅投資関連の経済指標が伸び悩んでいることである。

[第1図]
20130713図1


個人のサービス消費が減少するも自動車販売は好調

1-3月期まで米国の成長を安定的に牽引してきた個人消費にやや減速がみられる。月次の個人所得統計によれば、実質個人消費は4月に6四半期ぶりの前期比マイナス成長となった([第2図])。6月の実質個人消費の伸びをやや強めの前月比+0.3%としても、4-6月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+1.7%の伸びにとどまる計算になる。これは1-3月期の同+2.6%と比較すると大幅な減速になる。

しかし、個人消費の減速は一時的なもので、6月以降は再び堅調な増加を期待してよさそうだ。個人消費統計の詳細計数から個人消費減速の要因を見てみると、主にサービス消費、特に電力・ガスなどの公益サービス消費と娯楽・運輸サービス消費が4月、5月に減少している。一方で、自動自動車などの耐久財消費と、衣服などの非耐久財消費は4月に減少したものの5月には大幅に増加している。

特に新車販売台数は4月に年率14.9百万台と6ヶ月ぶりに15百万台台を割り込んだものの、その後反発して6月には同15.9百万台と、実に2007年11月以来約5年半ぶりの水準にまで増加している([第3図])。

消費に先行する指標の状況も悪くはない。消費者センチメントを表す指標としては、ミシガン大学消費者センチメント指数が7月まで3ヶ月連続で80ポイント台の高水準を維持している。金融市場ではNYダウが7月に入り史上最高値を更新している。

以上より、個人消費は4-6月期に一旦減速するものの、7-9月期以降は再び2%台の成長に回帰すると予想する。

[第2図]
20130713図2

[第3図]
20130713図3


増税による抑制効果をセンチメントと信用回復がカバー

富裕層を中心とした実質的な個人所得税増税と、給与税減税廃止が年初に実施された。筆者は当初これらにより今年の個人消費が約-1%押し下げられ、通年の個人消費は1%台半ばの伸びにとどまると見ていた(1月13日付当レポート参照)。しかしその後の個人消費は現在の一時的減速を除いて堅調に伸びている。現在では通年の実質個人消費は約2%の成長が可能とみている。

この原因は主に、金融市場の回復などによる消費者センチメントの回復にあるといってよい。その結果家計貯蓄率は5月時点で3.2%と、前年同月の3.9%から大幅に低下している。家計は収入のより多くの部分を消費に回すようになっている。消費者信用の伸びも堅調である。FRB統計による消費者信用残高(クレジットカード借入、自動車ローンなどの合計)は5月時点で前年比+5.8%と、前年同月の同+5.1%からこれも伸びを加速させている。

設備投資はマイナスに転化を見込む: 企業景況感には回復の兆し

企業設備投資も4-6月期は不振で、GDP統計上の実質設備投資は3四半期ぶりのマイナス成長になると見る。設備投資の基礎統計となる非国防資本財出荷は、5月までで1-3月期にくらべ前期比年率-1.2%の減少となっている([第4図])。米国歳出削減、欧州財政問題、アジアの景気減速といったマクロ要因が企業の設備投資を慎重にさせていると考えられる。

企業景況観を表す指標はまちまちである。ISM製造業指数は過去12ヶ月間で2回、いずれも一時的ながら50%を割り込んだ(直近では5月に49.0%に低下したのち6月に50.9%に回復した)。一方ISM非製造業指数は50%以上を維持しつつも3月以降は50%台前半にとどまっている。株価上昇などに比較的反応しやすい個人の景況感にくらべ、企業はより中期的な観点から景況感を完全には好転させていない。

しかし、企業設備投資にも明るい材料がある。企業設備投資に対する先行性が高いフィラデルフィア連銀の製造業景況感指数によれば、企業の6ヶ月先の設備投資DIは4月~6月の3ヶ月連続で上昇し、6月には2011年3月以来の水準となる27.3にまで上昇した。これを四半期ベースでみると。4-6月期の設備投資DI(6ヶ月先)はほぼ1年前の水準に回復している([第5図])。

従って、4-6月期に一旦マイナス成長を見込む企業設備投資も、7月期以降再び5~10%の底堅い伸びに回帰する可能性が高いと見る。

[第4図]
20130713図4

[第5図]
20130713図5


金利上昇が住宅投資の向かい風になる

住宅投資も設備投資と同じく4-6月期に一時的にマイナス成長になりそうだ。6月30日付当レポートで見たように、住宅着工件数が今年に入って頭打ちになっている。住宅着工統計によれば、4-5月の住宅着工件数平均は前期のそれを2年ぶりに下回っている。5月以降の住宅ローン金利の上昇は更に住宅投資には向かい風になる可能性がある。

しかし、現在住宅販売在庫はかなりタイトな状況にあり、潜在的な住宅需要に対する供給は今後も継続する可能性が高い。住宅投資も4-6月期に一旦マイナス成長になったあと7-9月期以降は5~10%の堅調な成長に回帰すると見る。

歳出自動削減と政府債務上限は政府支出を押し下げる

さらに、米予算管理法に基づく政府歳出自動削減と、政府債務上限が、政府支出を引続き減少させるだろう。2月末の一時凍結期限終了後3月以降連邦政府の歳出自動削減が適用されている。また政府債務上限も、5月19日までの暫定撤廃措置が終了後、その時点の債務残高である16.7兆ドルの上限が引続き適用されている。これらから、政府支出は4-6月期及びそれ以降もマイナスの伸びが続くと見る。

以上より、米国の実質GDP成長率予想を4-6月期につき前期比年率+1.2%、2013年通年につき前年比+1.6%とする。総じて米国経済は潜在成長率並のペースでの成長を維持しながらも、需給ギャップを縮小させるような成長加速は見られない。この原因は主に米国歳出削減や世界景気減速などのマクロ要因にあり、企業の景況観回復の足取りが重いことにある。引続き個人消費が景気を支えつつも、企業部門の景況感を回復させるに足りる世界経済ファンダメンタルズの回復が成長加速には必要だろう。

なお、筆者個人の米国を含む7月13日時点の経済・金融予想を以下の[第1表]にまとめる。

[第1表]
20130713表1

金利上昇がバブルを防ぐ~米住宅市場動向(2)

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米国の住宅ローン金利上昇は住宅価格上昇を抑制する要因になる。しかし今の環境下ではむしろバブル予防の効果があるだろう。米国の住宅価格・住宅建設いずれも目先は一旦減速したのち、中期的には住宅価格、実質住宅投資ともに10%程度の巡航速度で伸びると見る。

住宅価格決定要因を在庫期間から所得・金利に拡大してみる

6月30日付当レポートでは、現在の米国住宅市場の規模は歴史的にみるとまだ低水準であること、したがってここ1年間の住宅価格の上昇はバブルの兆候ではないことを論じた。特に、住宅価格は主に住宅販売在庫期間に2四半期ほど遅行して変動すること、昨今の住宅価格の2ケタ上昇も、住宅販売在庫のタイト化でほぼ説明がつくことを見た。

ところで、住宅価格の決定要因は住宅販売在庫だけではない。本レポートでは、住宅価格の決定要因として、在庫期間に個人所得と住宅ローンを加えてその影響と見通しを考察する。

QE縮小観測から住宅ローン金利は急上昇している

FRBの量的緩和(いわゆるQE3)縮小が年内に実施されるとの市場期待の高まりで、長期金利が急上昇している。きっかけはバーナンキ議長が5月22日の米議会合同経済委員会でQE縮小の可能性に言及したことで、その直後に10年物米国債利回りは2%を上抜けた。さらに6月19日FOMC後の記者会見で年内QE縮小可能性に言及したことをきっかけに同利回りは2.5%レベルに上昇した。直近では5日の雇用統計を受けて同利回りは2.7%に上昇している。

これに伴い住宅ローン金利も上昇に転じている。FRB統計によれば、30年物固定住宅ローン金利は6月末に2011年以来約2年ぶりの水準である4.5%に近付いた([第1図])。直近の長期金利の動向からはまもなく5%にまで上昇することが十分に考えられる。

[第1図]
20130707図1


住宅ローン金利1%の上昇は住宅価格を1.7%押し下げる

住宅価格は主に住宅販売在庫期間で決定されることは6月30日付レポートで見たとおりである。しかし一般には、住宅ローン金利は住宅ローンの需要を通じて住宅需要に影響し、さらに住宅価格にも影響をもたらすと考えられる。さらに個人所得の水準も住宅需要と住宅価格に影響を及ぼすと考えられる。

住宅価格上昇率と、住宅在庫販売期間・個人所得・住宅ローン金利の推移をグラフにしたのが[第2図]、さらに、住宅在庫販売期間・個人所得・住宅ローン金利を説明変数とし、住宅価格上昇率を被説明変数とする回帰分析の結果が[第1表]である。住宅価格はS&Pケースシラー住宅価格指数(20都市)の前年比上昇率、住宅在庫販売期間は全米不動産業協会の中古住宅販売在庫期間を2四半期先行させたもの、個人所得はGDP統計上の名目個人所得から移転所得を除いたものの前年同期比、住宅ローン金利はFRBが集計公表する月次の30年物固定モーゲージ金利を用いた。

この分析結果によれば、この3指標はいずれも統計的に有意な説明変数で、うち住宅在庫期間が住宅価格上昇率の85%以上を説明できるとの結果になった。

しかし、住宅ローン金利も住宅価格上昇率に相応の影響を与えている。分析結果によれば、住宅ローン金利1%の上昇は住宅価格上昇率を約‐1.7%押し下げるとの結果になっている。つまり、現在4%強の住宅ローン金利が5%台に上昇すれば、住宅価格の上昇率は再び1ケタ台に低下する計算になる。

[第2図]
20130707図2

[第1表]
20130707表1

金利上昇には住宅バブル予防の効果がある: 目先は一時的に減速へ

上記[第2図]からわかるように、10%の住宅価格上昇率は、概ね2002年~2003年の住宅価格上昇率の中央値あたりに相当する。この時期は米国経済がITバブル崩壊によるリセッションから脱却したあとの時期である。10%の住宅価格上昇はほぼ健全な景気拡大期の巡航速度のペースといっていいだろう。2004年以降住宅価格上昇率はさらに拡大し、2005年には15%を超えるペースになった。この時期は明らかに住宅市場がバブルになっていた時期である。

従って、今後住宅ローン金利の上昇で住宅価格上昇率が10%を挟んだレンジで推移するならば、この金利上昇はバブルをあらかじめ予防する機能を果たすといってよい。仮に長期金利が4月までの低い水準を保ったとした場合は、逆に住宅市場のバブルを今後誘発するリスク要因となる可能性があることになる。

住宅価格の観点からはこの辺りで長期金利の上昇を促して予防的にバブルを抑制することが妥当な政策であり、これはFOMC内で現在議論されている出口政策の方向とも一致する。

今後、住宅価格は概ね前年比+10%前後の上昇をつづけ、GDP統計上の実質住宅投資も前年比+10%前後の成長を継続すると見る。ただし目先は金利上昇の影響も含め住宅価格上昇率は一旦10%割れ、実質住宅投資は4-6月期に一旦マイナス成長になる可能性が高いと見る(6月30日付当レポート参照)。

金利上昇によるローン延滞増加は直接には説明しにくい

さて、住宅ローン金利上昇に伴う別の懸念要因は住宅ローン延滞の増加である。住宅ローン金利上昇により住宅ローン債務者の返済負担が増加し、住宅ローン延滞が再び増加する可能性は十分に考えられる。

しかし、中長期の経験値からは、住宅ローン金利と住宅ローン延滞率の間には相関関係は見られない。むしろ現実には、好況期には金利上昇・延滞率低下がおき、不況期にはその逆の現象が起きるため、住宅ローン金利と住宅ローン延滞率には逆相関関係がみられる。住宅ローン延滞率を説明する変数としては失業率が最も説明力が高く、これだけで延滞率の70%以上が説明できるというのが経験則である([第3図])

次に、家計の返済負担をより直接的に表す指標を見てみよう。FRBが集計公表するHome owner Financial Obligation Ratioは、持家保有者の可処分所得に対する返済等負担(住宅ローン、消費者ローン、自動車ローン、住宅保険料等を含む)の比率を表したものである。これによれば、持家保有者の返済負担率は金融危機にかけて持続的に上昇したのち、金融危機後低下し、現在は90年代を下回る水準にまで低下している。ただし、返済負担率と住宅ローン延滞率の間には有意な相関関係は見られなかった。

ここからは、金利上昇による返済負担の多少の増減はマクロでの延滞率には有意な影響を与える可能性は低いということが推測できそうだ。延滞率はマクロの失業率つまり所得の状況や、住宅ローン借換策・リストラクチャリング等の政策に左右されることが大きそうだといえる。

[第3図]
20130707図3

[第4図]
20130707図4

堅調な伸びがつづく~米6月雇用統計

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米国の6月雇用統計では雇用市場の堅調な拡大が確認された。企業景況感はまだまちまちで、雇用拡大ペースの急激な加速は望めない。しかし、消費が支える米経済の構造は不変、FRBの緩和縮小見通しにも支持材料である。

6月非農業部門雇用者数は195千人増加した

5日に公表された米国の6月非農業部門雇用者数は、前月比+195千人と200千人に迫る堅調な伸びだった。4月、5月分も上方改訂され、それぞれ同+199千人、+195千人となった([第1図])。内訳では小売業の増加(同+37.1千人)と娯楽・宿泊業(同+75千人)増加が目立ち、個人消費が6月も引き続き堅調に拡大していることを示唆しいている。

失業率は前月比横ばいの7.6%だった。就業者数、労働参加率ともにわずかながら増加・上昇しており、内容的にも悪くない結果だといえる([第2図])。

[第1図]
20130706図1


[第2図]
20130706図2


雇用増加ペースは回復しつつある

6月雇用統計と過去分の改訂からの示唆は大きく2点ある。第1に、雇用増加のペースが徐々に回復してきていることだ。非農業部門雇用者数の前月比の伸びが200千人を超えることが米国の雇用市場の好調さの一つの目安になる。3ヶ月連続で190千人台の増加をみせた米雇用は本来の増加ペースを取り戻しつつある。

また、非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は昨年12月以来の+1.7%に上昇した(上記[第1図])。これは、賃金上昇率がインフレ率をカバーした場合に実質個人消費が1.7%の伸びを確保できることを示唆している。景気拡大期の米雇用の伸びは概ね2%前後である。この意味でも、米雇用市場が本来の巡航速度に回帰しつつあると言える。

実質賃金の伸びがプラス圏を維持している

次に、賃金上昇率が底入れして上昇に転じている。時間当たり賃金(製造及び非監督職)の前年比の伸びは+2.0%と、過去6ヶ月間で最も高い水準を維持した。一方、消費者物価指数の前年比の伸びは5月時点で+1.4%にまで低下している。インフレ率低下により実質賃金上昇率(名目賃金
上昇率-インフレ率)がプラスを維持する状況が3月以降5月まで続いている。2011年以降約2年間、賃金上昇率がインフレ率をカバーできていない状況がつづいていたが、これが漸く解消されつつあるといえる([第3図])。

[第3図]
20130706図3


失業率低下に遅行して時間当たり賃金は上昇する

失業率と名目時間当たり賃金伸び率との関係を示すフィリップス曲線を、過去10年間の比較的短期につき四半期毎に作成したのが[第4図]である。これによれば、時間当たり賃金上昇率は失業率の低下に遅行して昨年末から漸く拡大を始めている。現在7.6%の失業率は今後やや低下ペースを落とすと見ているが、仮に現状の失業率水準を維持することができれば、今後時間当たり賃金は前年比で2%~2.5%の上昇になることが期待できる。

そうすれば、原油価格上昇などによる一時的インフレ率の上昇も、賃金上昇でカバーできることになる。そうすれば、米国の個人消費の伸びはより安定したものになるだろう。


[第4図]
20130706図4


今後も堅調ながら加速はなし

今後の雇用市場は、概ね現在のペースである月当たり160~200千人、前年比1.5%~2.0%のペースで年内拡大していくと見る。ただし、現状以上の拡大ペースの加速はないと見たい。

企業景況感は依然まちまちである。6月ISM指数は製造業が50.9%と前月の49.0%からやや回復した一方、非製造業は52.2%と前月の53.7%から低下した。それぞれの雇用DIも異なる方向の動きとなっている。製造業の雇用DIは実に4年以上ぶりの50%割れに低下、一方非製造業の雇用DIは大幅に改善している。

欧州や新興国をはじめとする世界の経済減速感は引続き企業の雇用センチメントに対する重しとなっている。家計に比べて企業は中期的視野から景況感の改善に時間がかかると言えるだろう。このため、雇用市場の拡大ペースは年内概ね現状ペースを保つと見たい。

[第5図]
20130706図5


年内のQE3縮小予想を維持する-長期金利予想は上方修正を考慮する

FRBの金融政策に対しては、この指標は年内のQE3(量的緩和)縮小予想を支持する内容である。FOMC委員による経済予測は筆者個人の予測よりも楽観的であり、今後下方シフトの可能性がある。しかし一方で量的緩和の継続によるコスト増大への配慮を優先してFOMCは年内に資産購入ペースを縮小し、来年半ばにQE終了との見方を維持する。

直近の経済指標によれば、実質個人消費は4-6月期にその伸び率を大幅に低下させた模様だ。GDP統計上の実質個人消費は1-3月期が前年同期比+2.4%だったのに対し、4-6月期は1%台半ばにまで減速したと筆者はみている。4-5月は財の消費が伸びたにも拘わらずサービス消費が減少したことが消費減速の要因になっている。また5月で株価上昇が一服したこともあり、消費者センチメントもここからの大きな改善は見込みづらい。

しかし、ベースとなる雇用と賃金が堅調な伸びを続けることで、米国経済を消費が底支えする構造は今年いっぱい継続すると見る。

なお、5日の雇用統計を受けて、市場では長期金利が急上昇した。10年物米国債利回りはこれまでひとつの節目と見てきた2.5%を大きく上抜けて2.7%台に上昇した。これは筆者の予想を上回るペースの上昇である。年内に3%レベルまでの長期金利上昇はもはやありうるといえる。今後年内の長期金利のレンジは概ね2.5%~3%レベルとする個人予想の修正を考慮中である。