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成長と期待が有効~日本の賃金上昇率

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日本のインフレ率は順調に上昇しているものの、まだ持続的とは言い切れない。一方で賃金上昇率は依然マイナス圏にある。インフレ率と賃金上昇率がスパイラル的に上昇するためには、マイナスの需給ギャップ解消に加え期待インフレ率の維持が有効である。

コアインフレ率押し上げはエネルギー関連が太宗

[第1図]は日本の消費者物価指数の前年比伸び率の推移である。日銀が4月に量的・質的緩和を開始してからインフレ率は順調に上昇に転じている。日銀がインフレ指標とする「生鮮食品を除く総合指数」の前年比伸び率(コアインフレ率)は9月現在で+0.7%だった。「2年で2%」の約3分の1を半年弱で達成したことになる。

もっともコアインフレ率の内訳をみると、変動の大きいエネルギー構成品目の寄与が大きい。9月のコアインフレ率上昇+0.7%のうち、エネルギーの寄与度が太宗の+0.64%、うち電気代の寄与度が+0.27%、ガソリンの寄与度が+0.23%である。国内主要電力会社が昨年9月から今秋にかけ電気料金の値上げを順次実施したこと、また原油価格が中東情勢悪化を背景に9月にかけ上昇したことがインフレ率上昇の主な要因である。電気料金値上げ要因は今後順次剥落していき、また原油価格も9月をピークに低下に転じていることから、エネルギーの物価押し上げ圧力は今後徐々に低下する可能性が高い。

「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数」の前年比の伸び率(コア・コアインフレ率)も同様に、今年に入り着実にマイナス幅を縮めている。しかしその水準は、9月現在で漸く前年比ゼロに達したばかりである。コア・コアインフレ率も間もなくプラスに転じると考えられるものの、持続的な2%コアインフレ率の達成には2年以上の時間を要するだろう(2%のコアインフレ率達成の条件について5月18日付当レポート参照)。

[第1図]
20131027図1

経済効果はまだ賃金に波及していない

デフレ脱却に関し別な観点から、賃金上昇率の状況を見てみよう。[第2図]は、現金給与総額と所定内給与額(残業代・賞与などを含まない現金給与額)の前年比伸び率の推移である。これによれば、所定内給与の前年比伸び率は依然マイナス圏にある。金融緩和と財政出動による効果は賃金にはまだ波及していない。

実務上、賃金のベースアップは物価を参照して決定される傾向があるため、賃金が失業率やインフレ率に遅行すること、経済対策効果の賃金への波及が他の経済指標に比べて遅いのは自然である。また、賞与・残業代を含む現金給与総額は賞与月などに一時的に増加する傾向がある。経済により早く反応する賞与・残業代が所定内賃金に先行して増加することが今後期待しうる。

[第2図]
20131027図2

失業率が4%以下なら賃金が上昇持続する

次に労働市場と賃金の関係を見る。昨今の成長回復により失業率が低下している。完全失業率は金融危機後2009年に5.5%のピークに上昇ののち低下に転じ、今年6、7月には一時4%を割りこんだ。8月現在では4.1%となっている。

所定内給与の前年比伸び率と失業率によるシンプルな賃金版フィリップス曲線を描いてみると、過去10年において両者の間には強い相関がみられる([第3図])。これによると、賃金上昇率がゼロ%になる失業率は約4.3%となる。つまり失業率が今後4.3%を持続的に下回れば所定内給与の伸び率がプラスを維持することをこの曲線は示唆している。現実的には、有意義な賃金上昇を実現する失業率の水準は4%以下といえる。

フィリップス曲線上で賃金上昇率をゼロにする失業率はいわば、賃金上昇を加速も減速もさせない均衡失業率だ。これに対し、労働市場の需給を均衡させる失業率(構造的失業率)はやや低いところにあるようだ。労働政策研究・研修機構は、雇用失業率と欠員率の関係(UV曲線)を用いて日本の構造的(完全)失業率を2012年10-12月期時点で3.62%と推計している(同機構「ユースフル労働統計2013年版」)。つまり4%を下回る失業率を持続することは、雇用市場がほぼ完全雇用を持続することを意味する。

[第3図]
20131027図3

持続的賃金上昇には完全雇用持続が必要

4%を下回る失業率の実現に必要な条件はなにか。成長率が潜在成長率を上回りマイナスの需給ギャップ(GDPギャップ)が解消されれば理論上完全雇用の実現は可能だ。内閣府は2013年4-6月期の日本のGDPギャップを‐1.5%のマイナスと推計している。これは、今後日本の成長率が潜在成長率を1年で1.5%上回ればマイナスの需給ギャップが解消される可能性を示唆している。

日本の潜在成長率を1%弱と仮定すると、向こう1年間で2%半ばの成長が実現できればマイナスの需給ギャップ解消は可能だ。筆者は2013年暦年ベースの成長率を約2%、年度ベースの成長率を2%台後半と予想している(10月13日付当レポート参照)。今後1年でのマイナスの需給ギャップ解消は現在の日本の成長ペースなら達成可能な目標だ。

しかし現実には、マイナスの需給ギャップ解消やその賃金への波及には更に時間がかかりそうだ。2014年4月には消費税率引上げが予定されていて、一時的な成長の鈍化が見込まれる。また、マイナスの需給ギャップの縮小が失業率低下に波及するには2四半期程度のラグがある([第4図]、[第5図])。計算上は賃金が安定的に上昇を始めるにはマイナス需給ギャップ解消後半年の期間、現実的には2年程度を要する計算になる。

[第4図]
20131027図4

[第5図]
20131027図5

フィリップス曲線上方シフトにインフレ期待は有効

賃金上昇を加速させるには、成長加速によりフィリップス曲線上の失業率(マイナス需給ギャップ)を低下させるか、曲線自体を上方にシフトさせるしかない。財政政策等で既に加速している成長の追加的加速には限界があるとすれば、曲線の上方シフトが考えられる手段である。上述のインフレ率上昇から賃金上昇へという波及経路からは、賃金上昇の加速にはインフレ率上昇が先に来るべきということになる。量的・質的緩和によりインフレ期待を高めることで実際のインフレ率が上昇し、このインフレ率を参照して賃金上昇が決定されるとすれば、これはフィリップス曲線が上方シフトしたことを意味する。賃金が上昇すればこれが再びインフレ率に波及するスパイラス形成が可能となる。

その意味で日本はデフレ脱却に向けて着実に前進している。ただし、2%の持続的インフレ率の達成には、需給ギャップ、期待インフレ率ともに現状から大幅な改善をみせる必要が計算上あることは5月18日付当レポートで見たとおりである。次の期待は、失業率が構造的失業率を下回った時点で上記のスパイラル効果によりフィリップス曲線がスティープ化することである。5月4日付当レポートでは、失業率が4%を下回ると物価版フィリップス曲線がスティープ化する様子を見た。失業率低下に伴い物価上昇が加速するならば、これもデフレ脱却を支持する要素と言える。


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デフォルト回避でも課題は残る~米債務上限交渉合意

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米政府債務上限引上げと暫定予算に関する民主・共和両党合意が成立し、米政府デフォルトは直前で回避された。ただし予算の期間は来年1月15日まで、債務上限引上げ期限は同2月7日までの暫定措置であり、今後合同予算委員会でのオバマケアや歳出削減に関する両党協議は続く。政府閉鎖は1ヶ月以内で終了したが10-12月期の成長予想は保守的に据置き、FRBの緩和縮小開始予想時期は来年に修正する。

債務上限交渉は直前まで二転三転した

10月13日付当レポート以降の経緯は次の通りである(各種報道による)。13日の民主党リード上院院内総務と共和党マコネル上院院内総務の協議は不調に終わった。焦点はオバマケアから歳出削減に移り、オバマケア停止要求スタンスをやや緩めた共和党に対し民主党が歳出自動削減の見直しを共和党に要求したとも報じられた。

14日には上院民主党が、債務上限の2月7日までの引上げとともに両院予算委員会で12月13日までに歳出自動削減案の代替案を策定する案を提示し、同案につきリード、マコネル両院内総務が「合意に楽観的」と述べたと報道され、市場にも楽観論が広がった。

しかし、共和党はこの民主党案にふたたびオバマケアの一部である医療機器課税の停止を付け加えた修正を加え、下院で15日採決する予定と報じられた。医良機器課税停止は9月29日の下院共和党案への回帰であり、再び議論を振出しに戻した感があった。ただ、政府デフォルト間際の強硬戦術につき共和党内でも賛否が分かれた模様で、結果15日の共和党修正案採決は見送られた。

民主党案で上院合意:下院共和党からは反対も

16日に交渉は急進展した。同日民主党が再度の提案すなわち①債務上限を2月7日まで引上げ、②政府機関を1月15日まで再開、③合同予算委員会で12月13日までに歳出自動削減の代替案報告、を行ったと報じられた。またベイナー下院議長は同案の下院での採決実施に同意したと報も報じられた。

さらにリード上院院内総務は同日「上院は債務上限引上げで両党が合意した」と述べ、再び合意への期待が高まった。共和党ベイナー下院議長は声明で「上院の合意案を阻止することは我々の戦術ではない」と事実上オバマケア阻止交渉における敗北を認め、デフォルト回避のため上院案に合意する意思を表明した。しかしベイナー議長の呼びかけにも拘わらず共和党下院議員内には依然妥協反対議員も存在した。

こうした中16日に、2014年歳出継続法案H.R.2775 Continuing Appropriations Act, 2014はまず上院にて81-18で可決された。続けて採決の行われた下院では144人の共和党議員が反対に回ったが結果285-144で可決された。同法案は即日オバマ大統領の署名を経て成立した。

2014年歳出継続法案成立:政府1月15日まで再開、債務上限2月7日まで引上げ

2014年歳出継続法は、①政府暫定予算を10月1日~2014年1月15日まで承認、②強制休暇職員に対する基準給与の遡及支払、③政府の公的債務上限を2014年2月7日まで不適用とし2月8日時点の公的債務残高を新たな上限とする、ことを定めている([第1表])。

うち職員の給与遡及支払は5日に下院で可決済のH.R.3223 Federal Employee Retroactive Pay Fairness Actを引き継いだもの。また債務上限を一定期間不適用とする方法は、2013年2月のNo Budget, No Pay Act of 2013で債務上限を同年5月18日まで不適用としたのと同じ手法である。

なお同法成立とともに、上下両院合同予算委員会Budget Conference Committeeが組成され、12月13日までに現在の歳出自動削減に代わる赤字削減案を報告する予定である。

[第1表]
20131020表1

オバマケア・歳出削減を巡る両党対立は続く:合同予算委員会で再び先鋭化も

歳出継続法の成立により、当面の米政府デフォルトは回避され、米政府機関も再開された。ただし、政府機関再開(暫定予算)、債務上限引上げいずれも来年1-2月までの暫定措置にすぎない。また、本合意はデフォルト回避のために共和党が民主党側にやむなく一時的に妥協した色彩が強い。

共和党ベイナー下院議長は16日の声明の中で「(オバマケアに対する)戦いは続ける」と明言している。12月13日を期限に新たな歳出削減案を協議する合同予算委員会の共同委員長となる共和党ライアン下院予算委員長は、2012年大統領選の共和党副大統領候補で、保守派の支持を受ける財政赤字削減推進派である。上院予算委員会のランキングメンバーである共和党セッションズ上院議員とともに、上記歳出継続法案に反対票を投じた議員である。

共和党としては、ベイナー下院議長の声明の通りデフォルトという最悪事態を回避することを優先したものの引続き歳出削減とオバマケア停止の意図は持っている。歳出継続法案の採決に当たり多数の共和党議員が反対票を投じた(上院18名、下院144名)ことからも、共和党内で民主党への妥協で党内をまとめることは困難であることが推測できる。

なお過去の例として、2011年財政管理法Budget Control Act of 2011に基づき設置された超党派財政赤字削減委員会は、同法で指示された10年間1.2兆ドルの財政赤字削減案を期限の2011年末までに合意できず、結果2013年からの歳出自動削減が発動されて現在に至っている。

経済成長は保守的予想を維持する

当レポートでは、政府閉鎖期間が1ヶ月の場合10-12月期の成長率(前期比年率)への影響を約‐1%とみて成長予想を引き下げた(10月13日付当レポート)。結果的に政府閉鎖期間は1ヶ月以内にとどまり、予算執行と政府職員給与支払いは10月1日に遡って実施されることになった。

しかしながら、上記のとおり引続き財政問題の不確実性は続いている。予算執行は政府閉鎖開始日である10月1日に遡って議会承認されたものの、実際には執行の遅れを即時取り戻すのは困難と推測できる。また観光客など民間部門のサービス提供は閉鎖期間分を今後取り戻すことが困難なものもある。従って経済予想については閉鎖期間1ヶ月を前提に策定したものを引続き維持することとしたい。

経済成長はFOMC予測から大きく下振れよう

金融政策につき当レポートでは年内のQE3縮小開始を予想してきたが、政府閉鎖の成長への悪影響を勘案、この予想を後倒し修正せざるを得ない。

9月FOMC声明文と同時に公表されたFOMC委員経済予測によれば、GDP成長率予測の中心傾向は6月時点予測に比べ大幅に下方シフトした。9月時点でGDP成長率予測は2013年が2.0-2.3%、2014年が2.9-3.1%となっている([第2表])。しかし、10月の政府一部閉鎖の影響を勘案すると9月時点のFOMC委員予測はまだ楽観的で、実際の成長率はこれよりも下振れする可能性が高い。因みに政府閉鎖勘案後の筆者個人の予想はFOMC委員予測の中心傾向下限に比べて2013年-0.8%、2014 年は-1.1%低めとなっている。

9月17-18日のFOMCでは予想外にQE3縮小開始が見送られた。その理由として声明文では「委員会は資産購入ペース調整の前にこの(経済活動と労市場改善の)進展が持続的であることの更なる証左を待つことを決定した」とされている。また同会合の議事要旨によれば、QE縮小開始に慎重な意見の参加者は「総じて入手された経済データが失望させるものであった」と、経済予測に対する実績値の下方乖離を理由に挙げている。

議事要旨によれば9月FOMC会合では多くのa number of参加者が「潜在的な政府閉鎖や債務上限議論に関わる制約を含む連邦政府財政政策の不確実性がもたらす経済見通しへの下方リスク」を指摘している。しかし、これはあくまでリスクシナリオであって、経済予測に実際の政府閉鎖が反映されているとは考えにくい。従って、経済成長の実績値は9月のFOMC委員予測よりも大幅に下ぶれる可能性が高く、これはQE縮小慎重派を支持する材料となるだろう。

QE3縮小開始予想は来年に持ち越しに修正

今後バーナンキ議長任期中にFOMC会合は10月、12月、2014年1月の3回予定されている。来年3月18-19日会合からイエレン新議長の下での会合となる([第3表])。まず、政府閉鎖解消直後かつ9月分経済指標が揃わない10月会合での縮小見送りは確実だろう。次に、12月会合で縮小を決定できる可能性は低い。経済指標がFOMC委員の予測に沿ったものに改善している可能性は12月時点では低いからだ。来年1月会合は上記の暫定予算期限の直後に該当する。ここで10-12月期の経済指標が委員の予測(おそらく12月会合時点で下方改訂されるもの)に沿ったものに改善し、かつ財政協議が歳出削減緩和方向に合意されていればここで縮小開始の決定がなされる可能性がある。筆者個人のQE3縮小開始時期を修正し、来年1-3月期に後倒しする。

ただし、この予想にもリスク要因がある。ひとつは1月時点で財政問題の協議が整わず再び財政危機に陥る場合である。次に、バーナンキ議長が任期最後の会合で大幅な政策変更に踏み切ることを見合わせる可能性である。さらに、3月会合でハト派のイエレン氏が議長としての初会合で緩和縮小を行うことを見合わせるリスクである。状況証拠からはQE3縮小開始は来年4-6月期に持ち越しのリスクシナリオも想定しておく必要がある。


[第2表]
20131020表2

[第1図]
20131020図1

[第3表]
20131020表3


差し引き上ブレの計算~日本経済定点観測

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アベノミクスのアナウンスメント効果が剥落し今年の日本経済の牽引役だった家計消費がやや減速している。今後は、消費税導入・5兆円経済対策・オリンピック需要などプラス、マイナス双方の材料がある。しめて差し引き日本経済は加速方向にあると見る。

アナウンスメント効果で個人消費が牽引した

2012年後半のマイナス成長から脱却して以来、今年の日本経済は個人消費が牽引してきた。これを財政出動による公的需要が下支えするという構造で成長が加速した。一方企業設備投資の回復は出遅れ、2012年以来5四半期連続のマイナス成長のあと漸く今年の4-6月期にプラス成長に回帰した([第1図])。

円高と海外経済の減速で輸出が伸び悩み、企業は世界経済の不透明感、低い設備稼働率、在庫調整のため新規設備投資を手控えてきた。これに対し、個人消費が今年に入り加速を始めた。この背景は主にいわゆるアベノミクスのアナウンスメント効果が消費者センチメントを押し上げたことにあると言える。

昨年末の総選挙で自民党は金融緩和・財政出動・成長戦略の所謂三本の矢を公約に掲げて大勝、選挙戦時よりこれへの期待から株価が上昇し、急激な円安が進んだ。これらが消費者のセンチメントを向上させ、その後1月に決定された10兆円の経済対策、4月の日銀量的・質的緩和で更にこれが加速した。結果今年第1-3月期に日本経済はプラス成長に回帰した。

しかし、個人消費の加速は多分にこれら政策のアナウンスメント効果によるところが大きかったと見る。ファンダメンタルズ的には現金給与はまださほどの伸びを示していず、失業率も年後半に漸く一時4%を割れたのみである。

[第1図]
20131015図1

効果剥落で消費は減速している

かかる背景から、アベノミクスのアナウンスメント効果が一旦消化された年後半から個人消費にやや減速が見られる。消費者態度指数は今年初めに急上昇したのち、5月にピークをつけて6~8月には連続低下した([第2図])。5月の同指数ピークは日経平均株価のピークとも一致しており、消費マインドの向上が主に株価など金融市場の好転によるものであった可能性が高い。

7-9月期の消費総合指数は、8月までで4-6月期比年率-1.0%の低下で、7-9月期のGDP統計上の家計最終消費が4半期ぶりのマイナス成長に陥る可能性が高いことを示唆している([第3図])。家計所得の構成要素をみても、失業率は7-8月に一時4%を割り込んだものの9月には再び4%台に上昇している。現金給与総額は1-3月平均で前年比‐0.6%のマイナスの伸び。4-6月平均では同+0.3%のプラスの伸びとなったが、7、8月は再び前年比マイナスの伸びに転化している。アベノミクスの意図する給与引上げ政策の実現は時期尚早のようだ。これらの状況からは今後個人消費が更に加速する要素はなく、一旦減速しているとみる。

もっとも、10-12月期からは、4月の消費税引上げ前の駆け込み需要が一時的に個人消費を加速するだろう。これについては後述する。

[第2図]
20131015図2

[第3図]
20131015図3

企業部門は在庫調整終了で回復、オリンピック需要先取りも好材料

これに対し、消費に遅れて成長が加速しつつあるのが企業部門である。GDP統計上の民間企業設備投資は2012年以来5四半期連続でマイナス成長が続いたが、今年の4-6月期にプラス成長に転じた。企業設備投資の先行指標となる機械受注は今年に入って急激な伸びを示している([第4図])。

企業部門の回復が遅れた理由は、アナウンスメント効果や株価などに影響されやすい消費者に比べ、企業はグローバル経済の実体面の見極めにより冷静だったことが考えられる。また、東日本大震災、欧州財政危機を通じて国内外の需要が大幅減退したことで、設備稼働率が大幅低下し在庫が積み上がっていた。その後2012年一杯かけて漸く在庫調整は終了して在庫積み上げ局面に入った([第5図])。設備稼働率も2012年の欧州財政危機前の水準に回復している([第6図])。在庫調整終了と稼働率改善で漸く企業部門も設備投資拡大に踏み出す条件が整ったといえる。更に今後は、2020年の東京オリンピックに向けた需要の先取りが企業部門の成長を加速させると考えられる。

[第4図]
20131015図4

[第5図]
20131015図5

[第6図]
20131015図6

消費税前駆け込み需要で2013年度は加速して終了しよう

今年度の終わりにかけて、消費税引上げ前の駆け込み需要が成長を加速させるだろう。消費税引上げの経済への影響については、引上げ後1年目の需要縮小と同額の駆け込み需要増加が引上げ前の年に発生すると想定する。

内閣府の短期マクロ計量モデル(2011年版)によれば、消費税1%の引上げは1年目の実質GDPを-0.15%縮小させる。そこで、4月に実施される消費税3%の引上げで-0.45%の実質GDP縮小が2014年4-6月期、7-9月期にそれぞれ2分の1ずつ発生し、それと同額の駆け込み需要が2013年10-12月期に3分の1、2014年1-3月期に3分の2発生すると想定した。すると、四半期の前期比年率の成長率は2014年1-3月期に4%台に加速し、その反動で4-6月期には一時的なマイナス成長が起きるとの結果になった。しかしその後は5兆円の経済対策実施が成長を底支えして2014年後半には再び成長は加速すると見る([第7図])。

結果暦年ベースでは2013年、2014年とも前年比+2%弱の成長、年度ベースでは2013年度は前年度比+2.7%の大幅な成長、2014年度は消費税駆け込みの反動需要減で同+1%程度の成長と個人的に予想する(10月13日付当レポート参照)。

[第7図]
20131015図7

物価は既に0.8%上昇だが、エネルギー要因が大きい

なお、デフレ脱却については引続き慎重に見ておきたい。消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は8月時点で前年比+0.8%と、量的・質的緩和開始後わずか4ヶ月で「2年で2%」の政府目標の半分を達成する勢いだ。しかし内容を見ると、同指数の上昇は電気代・ガソリン代などエネルギー価格の上昇の寄与が+0.78%と、全体の上昇率の殆どを占めている。食品及びエネルギーを除く指数の伸びは同-0.1%と依然マイナス圏にある。昨今のインフレ率上昇は一時的な要因によると見たい。5月4日付5月18日付当レポートで考察した通り、2%のインフレ率達成には相当のプラスの需給ギャップ拡大または相当の期待インフレ率の上昇が必要な計算になる。一時要因を除くインフレ率はまだプラス圏にはなく、持続的な2%インフレ達成にはまだ時間がかかると見ておきたい。

閉鎖の影響じわり~米国経済定点観測

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17日期限の米政府債務上限問題の解決の目途は未だ立たないが、少なくとも短期的妥協案で米国債デフォルトは回避できると憶測する。しかし一方で政府閉鎖は長期化の可能性が高まり、成長への影響が目に見えるレベルになっている。

閉鎖の悪影響はやや緩和:一部職員復帰と給与遡及支払法案

1日に米国政府一部閉鎖が開始されてからの主な動きは次の通りである。まず、9月30日に成立済のPay Our Military Act(H.R.3210)に基づき、米国防省は5日、同法に基づき給与支払いを受けられる職員(軍人)についての強制休暇を解除すると公表した。これにより職場に復帰する職員の数は約350千人とされる(各種報道による)。

当初約800千人(各種報道による)と見積もられていた強制休暇職員数は、国防省職員の職場復帰に伴い450千人に減少することになる。ただし同法で支払われるのは軍人の給与のみであり、国防省の予算執行が可能になったわけではない。米予算制度における国防費は裁量支出に属し、議会の議決による法令化が必要である。従って、この措置による経済へのマイナス効果縮小は350千人分の個人消費にとどまり、政府財政支出については引続きマイナス効果が継続することになる。

また、米共和党下院は5日、政府閉鎖により給与支払を凍結された職員につき閉鎖終了後速やかに同期間の基準給与の支払を受けることができるとする法案Federal Employee Retroactive Pay Fairness Act, H.R.3223を407‐0で可決し、上院に送付した。本法案が成立すれば、政府閉鎖解除後に給与支払いが過去に遡って行われることから、給与支払凍結に伴う個人消費へのマイナスの影響は政府閉鎖後に取り戻されることになる。

閉鎖に伴う政府部門のマイナス効果が徐々に緩和される一方で、民間部門へのマイナスの影響が徐々に波及していると考えられる。結果政府閉鎖のマイナス効果が大幅に縮小したとは言い難い。そこで、政府閉鎖の成長への影響は、10月6日付当レポートでの試算とほぼ同じく、1ヶ月で10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率で約-1%押し下げるとの想定を維持することとする。

債務上限引上げ協議は不調、両党上院院内総務会談へ

債務上限問題についてはまず9日、共和党議会下院が新たな歳出削減案策定を条件に債務上限を見直す法案Deficit Reduction and Economic Growth Working Group Act, H.R.3273を224-197の共和党議員中心の多数で可決した。これは上下両院議員から選出されたワーキンググループが2014年度の新たな裁量支出額と新たな公的債務上限額に関する報告書を法案成立後3日以内に議会に提出することを定めようとする法案で、いわば債務上限引上げの条件として更なる歳出削減策を求める共和党戦術の反映と言える。ただこの法案はその後上院での審議には付されずまた民主党多数の上院での可決の見込みは薄いといえる。

次に報道によれば共和党は10日、債務上限を11月22日まで暫定的に引き上げる案をオバマ大統領に提案した。債務上限引上げを認めることで経済・市場の混乱を回避しつつ、オバマケア停止の交換条件として(暫定)予算の審議には応じないとの共和党の戦術が読み取れる。共和党案につきホワイトハウスと共和党が協議を行ったが、これに付されたオバマケアや赤字削減に関する条件をオバマ大統領は拒否した模様で両者の協議は不調に終わった。

さらに民主党議会上院は12日、政府債務上限を2014年12月31日まで暫定不適用とする法案Default Prevention Act, S.1569を提出した。しかし同法案は審議打ち切りに必要な3分の2の賛成を得られず(53-45)事実上見送りとなった。この法案はほぼ無条件での債務上限1年以上不適用とする民主党の意向の反映された法案だが、上院で約半数を占める共和党の反対で成立できなかったものである。

政府閉鎖は継続も債務上限引上げ交渉には期待

17日の債務上限期限に向けた交渉は期限ぎりぎりまで続きそうだ。最新の報道では、民主党リード上院院内総務と共和党マコネル上院院内総務の会談が13日に予定されている。

なお世論調査によれば、ティーバーティなど一部の保守層を除き、債務上限問題を深刻に受け止める意見が多い模様だ。10月7-9日付のNBC/WSJ世論調査によれば、63%が「債務上限引上げ拒否は現実的で深刻な問題になる」と回答している。支持政党別では、民主党支持者の72%が「深刻な問題」と回答をしたのに対し、共和党支持者の同回答は57%にとどまっている。ただし共和党内でも意見が明瞭に分かれており、ティーパーティ支持者を除く共和党支持者で見ると71%が同回答をしている。

仮に政府債務上限の引上げがなされず仮に米国債元利払いが滞った際の経済・金融への影響は測り知れない。格付会社S&Pは米国債(現在の格付AA+)の元利払い遅延は「選択的債務不履行(SD)」に引下げられるとしている。仮にそうなれば、2012年12月に政府債務の一部民間負担実施が選択的債務不履行とみなされたギリシャ国債と同様の扱いになる。共和党もかかる混乱を招くことは本意ではなく、債務上限引上げにはなんとか応じると憶測しておきたい。

これらの状況からは、債務上限引上げにはまだ期待が残されている一方、政府一部閉鎖は長期化しそうな模様である。そこで、10月6日付当レポートでのリスクシナリオすなわち、17日までに債務上限引上げの合意がなされて米国債デフォルトは回避、ただし政府一部閉鎖は10月末まで継続する、ことを新たなメインシナリオとしたい。

個人消費は減速を予想

こうした不確定要素が多い中、米国経済ファンダメンタルズの定点観測を試みる。前提としては、債務上限引上げにより米国債デフォルトは回避するも政府一部閉鎖は1ヶ月程度継続するシナリオによることにする。結果米国成長率予想を引き下げることとする。

まず米国経済の中心である個人消費は減速しつつある。月次の実質個人消費の前年比の伸びは今年に入ってから8月まで前年比+1.7~2.0%の間でほぼ安定している。雇用の伸びも同じく前年比+1.5~1.7%の安定的な伸びである。しかし何れのペースも好景気時における2%台の伸びに比較すればまだ低位である。10-12月期にはこれに政府閉鎖の影響が加わると更に個人消費の伸びは減速することが予想できる。

個人消費の今後の減速を示唆する要因として消費者センチメントの陰りがあげられる。ミシガン大学消費者センチメント指数は7月にピークを付けたのち9月まで2カ月連続で大幅低下している([第1図])。そこで、7-9月期のGDP統計上の実質個人消費の伸びは前期比年率+1.4%程度と前期の同+1.8%から減速、また10-12月期には同+1%程度に減速すると見る。

[第1図]
20131013図1

企業設備投資は低迷している

次に企業の設備投資が低迷している。GDP統計上の機器ソフトウエア投資の基礎統計である非国防資本財出荷(航空機関連を除く)の7-9月期の伸びは、8月までで前期比年率-2.9%のマイナスの伸びとなっている([第2図])。GDP統計上の民間設備投資は2四半期ぶりにふたたびマイナス成長に転化しそうだ。

これと一見異なる動きをみせているのが企業景況感指数である。ISM製造業指数は7月に急伸したのち9月までほぼ高水準を保っている([第3図])。しかし、他の企業景況感指数はフィラデルフィア連銀指数のように9月に悪化を見せたものがあるなど、全体として方向感が見えにくい。更に政府閉鎖を反映した10月分では企業景況感の更なる悪化の可能性が高い。企業設備投資も今年後半は力強い伸びは期待しにくい。

以上より、筆者個人の7-9月期の実質GDP成長率予想を前期比年率+1.5%、10-12月期を同+1.0%に下方修正する([第4図])。2013年の通年成長率は前年比+1.5%の予想となる。

[第2図]
20131013図2

[第3図]
20131013図3

[第4図]
20131013図4


なお、米国を含む10月13日時点の筆者個人の経済・金融予想を以下の[第1表]にまとめる。

[第1表]
20131013表1


早期解決に期待~米国政府閉鎖と債務上限問題

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1日の米政府閉鎖開始から5日が経過、更に政府債務上限引上げの期限が17日に迫っている。17日までには債務上限引上げが合意されまた遅くとも10月中には政府閉鎖されれば市場混乱やリセッションは回避可能である。

1週間の閉鎖で4半期成長率は-0.2%低下

2014年度の米連邦政府予算が9月中に成立しなかったことで政府は予算の執行権限を失い、10月1日より政府一部閉鎖が開始された(米連邦政府の財政年度は前年10月から同年9月末)。政府一部閉鎖の経済への影響につき以下に概算を試みる([第1表])。

まず連邦政府支出への影響を試算する。各種報道によれば、政府一部閉鎖により約800千人の連邦政府職員が強制休暇を命じられるとされる。米労働省雇用統計における8月現在の連邦政府職員数は2,739千人、また2013年4-6月期GDP統計における連邦政府支出は1兆1680億ドル(実質年率)である。連邦政府職員の29.2%に当たる800千人の休暇が、連邦政府支出を同じ‐29.2%減少させると仮定すると、1週間の政府一部閉鎖で連邦政府支出は約‐66億ドル減少する計算になる。

次に個人消費への影響を試算する。各種報道によれば、給与支払を停止される連邦政府職員が1百万人単位で存在するとされる。そこで、連邦政府の給与支払停止により1百万人相当の消費者が消費を停止すると仮定する。1百万人は8月現在の非農業部門雇用者数(136.1百万人)の約0.7%に相当する。GDP統計上の個人消費がこれと同じ比率だけ減少すると仮定すると、1週間の給与支払停止により実質個人消費は-15億ドル減少する計算になる。

これらを合わせ、1週間の政府閉鎖により実質GDPは約‐81億ドル減少する。これは通年のGDPを-0.05%押し下げ、また10-12月期の実質GDP成長率を年率-0.21%ポイント押し下げる計算になる。

[第1表]
20131006表1

閉鎖が1ヶ月以内ならリセッションは回避できる

政府閉鎖が1ヶ月継続すると影響は相応に大きくなる。上記と同じ試算によれば、1ヶ月の政府閉鎖で連邦政府支出は‐282億ドル、個人消費支出は‐65億ドル、合計-347億ドル減少する。これは通年の実質GDPを約-0.22%押し下げ、10-12月期の成長率を年率‐0.88%ポイント押し下げる。

現実には、民間部門へのマイナスの波及効果(民間部門による政府向けの財・サービス提供停止など)が出る。また政府部門の支払事務の遅れにより予定以上の支出減少が考えられる。そのため、実際には1ヶ月の閉鎖は通年の成長率を-0.5%程度、10-12月期の成長率を年率-1%以上押し下げる可能性がある。因みに、米Moody’s Analytics社のチーフエコノミストであるマーク・ザンディ氏は、9月24日の上院予算委員会での証言テキストで「3~4週間の政府閉鎖は10-12月期の実質GDP成長率を年率-1.4%ポイント押し下げる」と推計している。

3月に開始された政府歳出自動削減が今年の米国の実質GDPを既に‐0.4%押し下げると筆者は見ている。従って、1ヶ月の政府一部閉鎖と歳出自動削減と合計で、本来の2013年の通年成長率を約‐0.6~-0.7%押し下げることになる。

現在筆者は、歳出自動削減勘案後の米国の今年の通年成長率を前年比+1.6%と見ている。ここに1ヶ月の政府閉鎖継続のマイナス効果が加わると、今年の成長率は+1%前半レベルにまで下がる計算になる。これは2012年の前年比+2.8%成長に比べ大幅な減速になる。10-12月期の成長率は、現在の筆者の見通しである+2%レベルから、+1%以下に低下する可能性がある。ただし、政府閉鎖が1ヶ月以内であれば成長率のマイナス転化やリセッション入りは回避できると言える。

17日に迫る政府債務上限問題

次に、政府閉鎖より深刻な問題である連邦政府債務上限問題を見てみる。現在、議会承認を得た連邦政府の公的債務上限は16.7兆ドルである。これは、2月4日に成立したNo Budget, No Pay Act of 2013で、当時16.4兆ドルだった債務上限を暫定的に5月18日まで不適用とし、5月18日時点の公的債務残高を翌日以降の新たな債務上限としたことに基づいている(2011年以降の「財政の崖」と「政府債務上限」に関する経緯は[第3表]参照)。

ルー米財務長官のベイナー下院議長宛9月25日付書簡によれば、米財務省の資金は10月17日に底を突くと見積もられている。同書簡では、財務省の資金残高は同日付で300億ドルとなり、ネット支払い額の600億ドルに満たなくなるとされている。3日付の米財務省Daily Treasury Statementによれば、すでに公的債務残高は16.7兆ドルと上限に達しており、また財務省の手元資金残高は244億ドルとなっている。なお、米財務省の通常の月間の支払日程は[第2表]の通りで、月末に国債利払い、月初に政府医療保険や年金などの支払いが集中する。

政府一部閉鎖による予算執行停止は必要不可欠でない業務に限られる。また、予算のうち防衛費など議会の可決を必要とする裁量支出の執行は停止されるが、年金支払など義務的支出は議会の可決を経ず執行できる。しかしながら、17日までに債務上限引上げが行われず政府資金が枯渇すると、義務的支出執行さらに米国債利払いに影響を及ぼす可能性がある。米国債の利払い停止の懸念は、米国債格下げや米国債デフォルト懸念でもある。

最近の他の債務上限引上げの例として、2011年8月の2011年財政管理法による引上げがある([第3表]参照)。同法では債務上限を14.3兆ドルから16.4兆ドルに引き上げて米国債デフォルトを回避する代わりに、10年間で9170億ドルの裁量歳出削減及び追加で10年間1.2兆ドルの歳出削減案策定が条件とされた(なお、S&P社は同法成立の数日後に米国債をAAAからAA+に格下げ、また同年内に歳出削減案が議会で合意されず2013年3月からの歳出自動削減の開始となった)。過去はこうして米国債デフォルトが何度か回避されてきたが、今回も17日までに何らかの債務上限引上げが議会で成立するかが注目となる。

[第2表]
20131006表2


政府閉鎖・債務上限問題の背景にイデオロギー対立

今回の政府閉鎖は、共和党多数の米議会下院、民主党多数の上院というねじれ議会の中で、オバマケア(医療保険制度改革)の廃止または延期を求める共和党と、オバマケアを目玉政策とする民主党の対立が要因となっている(オバマケアは、オバマ大統領が2011年3月23日に署名成立した医療保険制度改革法Affordable Care Act =ACAに基づき、全ての国民に医療保険加入を要請する制度)。いわば両党の本質的なイデオロギーの対立である。

今回の政府閉鎖の経緯を振り返ると次のようになる。10月からの2014財政年度の予算案につき、共和党下院は9月20日、オバマケア予算執行禁止を盛り込んだ12月15日までの暫定予算決議案(H.J.RES..59)を可決した。上院は同月27日、オバマケア禁止条件を削除する修正をこれに加えて可決し下院に送付した。下院は同29日、これをオバマケアの1年間停止を条件とする再修正案として決議した。下院はこの決議案を採決できず同決議は廃案となった。結果10月1日から政府予算が成立せず、政府一部閉鎖が実施された。

オバマケア実施停止や追加歳出削減を、予算執行や債務上限引上げの条件とする共和党の戦術は、世論の支持を得ているとは言い難い。NBC/WSJの9月5-8日付世論調査によれば、オバマケアに否定的な意見が45%と、肯定な的意見の23%を上回っていた。また債務上限引上げに否定的な意見が44%と、肯定的な意見22%を上回っていた。しかしながら、政府閉鎖開始後10月4日実施のCBS NEWSの世論調査では、オバマケアを巡る与野党対立による政府一部閉鎖について否定的な意見が72%で、肯定的な意見25%を大幅に上回っている。

共和党が政府閉鎖や米国債デフォルトのリスクを冒してもオバマケア停止と歳出削減に固執するのは、ティーパーティなど保守系の一部の支持者への配慮と考えられる。オバマケア実施に修正された暫定予算決議採決阻止のため、25日に19時間の長時間演説を行った共和党クルーズ上院議員(テキサス州選出)は、ティーパーティの支持で当選した議員の典型とされる。

しかし、長期間の政府閉鎖や、米国債デフォルトといった大きなリスク示現を国民が容認するとは到底考えられず、少なくとも債務上限引上げについては両党合意すると見るのが自然であろう。

早期の政治決着に期待

現状、政府閉鎖終了と債務上限引上げについての民主・共和両党の交渉は進展していない模様だ。報道によれば、4日共和党ベイナー下院議長はオバマケア実施停止に固執することを示唆、また債務上限引上げには(歳出削減などを)条件とし、「無条件の債務上限引上げ案は拒否する」と述べた。

議会内政治問題についての予想は困難だが、共和党が妥協して小幅な債務上限引上げで民主党と合意し、米国債デフォルトは回避される可能性が高いと個人的には考えている。米国債デフォルト容認は与野党いずれにも極めて代償の大きい選択である。政府閉鎖長期化と米国債デフォルトの回避のための妥協案として、共和党がオバマケアと追加的歳出削減の条件をやや緩めることで妥協し、債務上限引上げと短期間の暫定予算決議が17日までに議会で可決されることをメインシナリオとしておきたい。

次に考えられるシナリオは、影響の大きい債務上限引上げにつき17日までに合意成立するも、暫定予算は合意されず引続き共和党がオバマケア停止を民主党に迫るシナリオである。この場合デフォルトという事態は回避されるも、政府閉鎖による経済への悪影響が更に長引くことになる。しかし、経済への影響は世論への配慮から、遅くとも10月中には短期の暫定予算などの妥協案が成立し、米国のリセッション入りは回避できるものとみておきたい。

[第3表]
20131006表3