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資産価格が金利を凌駕~来年の米国個人消費見通し

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消費者センチメント回復で米国の個人消費が加速している。来年も雇用・賃金に加え住宅価格上昇が個人消費拡大を支えると見る。今後見込まれる金利上昇は下方要因だが、住宅価格上昇でカバー可能と試算できる。2014年の米実質個人消費の伸びは今年並の2%、GDP成長率は2%半ばへの加速を見込む。

年末にかけ米個人消費は急加速した: ホリデー商戦も前年並みの伸び

米国の個人消費拡大が加速している。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+2.0%と前期の同+1.8%から伸びを強めた。その後の月次個人消費統計でも、実質個人消費は10月に前月比+0.4%、11月に同+0.5%の強い伸びを見せた。前年同月比の伸び率は10~11月にかけ急上昇し、11月には2011年7月以来の前年比+2.6%となっている([第1図])。

ホリデー商戦売上もまずまずの出来のようだ。国際ショッピングセンター評議会ICSCの週次チェーンストアセールス売上指数によれば、既存店小売売上高の前年比の伸びは12月第1週に一旦軟化したものの、クリスマス前の2週間にかけ伸びを回復させている([第2図])。総じて今年の伸びは昨年を下回っているが、クリスマスにかけ昨年の伸びに近付いた。筆者は、今年のホリデー商戦売上高予想を当初の前年比+3.3%(11月3日付当レポート参照)から引上げ、現在では同+4.1%と2年連続減速ながらほぼ昨年並みの伸びを達成したと予想している([第3図])。

[第1図]
20131231図1
[第2図]
20131231図2
[第3図]
20131231図3

財政問題解決進展と消費者センチメント急回復が背景

こうした個人消費の急加速には短期的にはいくつかの要因が考えられる。まず、政府閉鎖の悪影響が予想以下だったことである。米連邦政府予算不成立により10月前半に2週間以上に亘る政府機関一部閉鎖が実施されたことで個人消費が抑制されると当レポートでは見ていたが、その影響は結果的に僅少だったことが判明した。

次に、政府財政問題の解決が進展したことである、12日に米議会で超党派予算法案が合意され18日に成立したことで2会計年度分の連邦政府予算が正式成立し、来年1月15日の暫定予算失効リスクが解消された。また、FOMCが12月17、18日の定例会合で1月からの資産購入縮小開始を決定したことも米経済見通しを好転させる契機となった。

更に、こうした背景から金融市場と消費者センチメントが好転したことである。12月に入り一時16000ドルを割り込んだNYダウ平均株価は、18日のFOMCを契機に再び急伸し30日には16504ドルと史上最高値を更新した。これらに伴い消費者センチメントが急回復した。ミシガン大学調査による消費者センチメント指数は10月の政府閉鎖時期に73.2ポイントに低下していたが、その後2ヶ月連続で上昇し12月には4ヶ月ぶりの80ポイント台となる82.5ポイントに上昇した([第4図])。

[第4図]
20131231図4

雇用と賃金で可処分所得は3~4%の伸びが来年も期待できる

中期的な個人消費の動向を占うため、個人消費の構造的な決定要因である所得の状況を見てみよう。名目可処分所得の伸び率は、今年の1-3月期をボトムに上昇に転じていて、7-9月期時点では前年比+3.8%の伸びになっている([第5図])。主な可処分所得押し上げ要因は雇用者報酬である。雇用者報酬の前年比の伸び率は7-9月期以降2四半期連続で3%台を維持している。これに加え政府給付金等の移転所得や金利配当所得の伸びが所得を支えていて、所得拡大に伴う税金支払い増加をカバーしている。

雇用統計によれば、非農業部門雇用者数の伸びは2013年を通じ前年比+1.5~+1.7%の伸びを維持している。また時間当たり賃金は失業率の低下にやや遅行して伸び率を高め、7-9月期には約2年ぶりに前年比+2%台に回復している。今後も雇用者数はほぼ今年と同じ伸びを維持し、時間当たり賃金は更に伸びを高めるとすれば、来年も可処分所得は前年比で3%台後半から4%の伸びが見込める。

米国の個人貯蓄率は現在5%前後で推移している。過去2005年~6年の好況期に貯蓄率は一時2%台に低下したが、金融危機を契機に上昇し2009年には6%台にまで上昇した。その後景気回復とともに貯蓄率は緩やかに低下傾向にある。来年も4~5%の間で貯蓄率は緩やかな低下傾向をたどると考えられる。

可処分所得を3%台後半~4%の伸びとしてインフレ率を1%台半ばとすれば、所得効果からは来年の実質ベースの個人消費は2%台半ばの伸びが期待できる。

[第5図]
20131231図5

住宅価格上昇が個人消費を押し上げ始めた: 資産価格を含めた要因分解

雇用と賃金に基づく所得効果に加え、資産効果も勘案した個人消費の動向を占うため、株価や住宅価格を決定要因に加えた要因分解を試みる。[第6図]は、実質個人消費の決定要因として雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格を変数とした回帰分析の結果である。各要因に対する実質個人消費の弾性値を[第1表]に示した。

これによれば、所得効果に加え2012年7-9月期以降住宅価格の上昇が実質個人消費の伸びにプラス寄与している事が分かる。S&Pケースシラー住宅価格指数(10都市)は2012年後半から前年比の伸び率がプラスに転じ、直近9月では前年比+13.3%の伸びとなっている([第7図])。[第1表]からは住宅価格1%の上昇は実質個人消費を約0.1%押し上げることになる。7-9月期においては住宅価格上昇が実質個人消費を約+1.2%押し上げている、

住宅価格の上昇は家計バランスシート構造を好転させている。FRBの資金循環統計によれば、7-9月期時点で家計の住宅に関する純資産比率=(住宅価格-住宅ローン残高)÷(住宅価格)は、7-9月期に5年ぶりに50%台に回復している。また住宅価格の上昇は住宅ローン借換を容易にすることで住宅ローン延滞を抑制する効果がある。現在中古住宅の在庫期間が5ヶ月と低水準であり住宅市場の需給はタイトである。住宅価格上昇ペースは今後も現状か更に加速する可能性が高い。

ただし、住宅価格上昇の個人消費への能動的な波及経路はまだ定かでない。住宅ローン全体の残高は金融危機以来減少が続いていたが7-9月期に22四半期ぶりにわずかながら前期比で増加に転じた。しかし、住宅価格上昇を利用した消費者ローンであるホームエクイティローンの残高は現在も減少を続けている。住宅価格上昇の資産効果は今のところ心理的なものまたはローン延滞回避という受動的効果にとどまっているようだ。

[第6図]
20131231図6
[第1表]
20131231表1
[第7図]
20131231図7

金利上昇がマイナス要因になるも住宅価格上昇でカバー可能

一方で上記[第6図]によれば、7-9月期に金利上昇が実質個人消費にマイナスの影響を与え始めたことが分かる。米長期金利は欧州財政危機による米国債への資金逃避で今年前半にボトムをつけ、その後リスク資産への資金回帰とFRBのQE縮小期待からじり高推移、12月時点で米国債10年物利回りは約3%、30年物モーゲージ(住宅ローン)金利は4%台に上昇した([第8図])。

金利の実質個人消費に与えるマイナス影響は意外に大きく、7-9月期には住宅ローン金利上昇(前年同期の3.5%から4.5%に上昇)が実質個人消費を約-0.9%押し下げた計算になる。今後FRBによる資産縮小が進み成長期待が高まると、住宅ローン金利の更なる上昇が見込まれる。

そこで今後4四半期につき、雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格の推移に前提をおいて実質個人消費の伸びを試算した(上記[第6図]の「試算」部分)。来年7-9月期まで雇用と賃金は現状の伸びを維持、物価上昇率は+1.7%まで上昇、住宅ローン金利は現状の4%台から6%に上昇、NYダウは17500ドルまで上昇、住宅価格の前年比伸び率は+15%まで加速と前提した。結果、今後住宅ローン金利が6%まで上昇(現状比約+1.5%ポイント)すると個人消費は-1%以上押し下げられるとの結果になった。しかし、住宅価格の上昇率が+15%レベルにまで加速すればこれはほぼ相殺され、実質個人消費は2%台の成長可能との試算になった。因みに株価の個人消費押し上げ効果は限定的で、前述の株価上昇前提でも来年の個人消費押し上げ効果は+0.3%程度にとどまっている。

[第8図]
20131231図8

来年の実質個人消費は2%の伸びを予想する

金利上昇のほか個人消費の押し下げ要因になるのが拡大失業保険給付の年内失効である。超党派予算法案で連邦政府予算が決定された際に、これまで何度か延長措置がされてきた拡大失業保険給付の延長は見送られた。これにより来年の個人消費は最大-0.3%押し下げられる計算になる(12月15日付当レポート参照)。

こうした下方要因も勘案し、筆者個人の2014年の実質個人消費の伸び率予想を今年並の前年比+2.0%とする。なお実質GDP成長率は今年の前年比+1.8%(予想)から加速して同+2.3%の伸びになると見ている。拡大失業保険給付再開の手当てがなされる可能性や企業部門の回復など、米経済見通しのリスクは総じて上方と見る。
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景気改善で早目の判断~FOMCがQE縮小開始決定

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FOMCは来年1月からの資産購入ペース縮小開始を決定した。縮小開始に合わせて利上げに関するフォワードガイダンスがインフレ条件と時間軸で強化された。2014年内の資産購入停止、2015年の利上げ開始予想を維持する。主に期待インフレ率の低下がリスク要因である。

850億ドル→750億ドルへの資産購入ペース縮小を決定

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)は17、18日の定例会合で、来年1月から資産購入ペース縮小を開始し、これまでの購入ペース月間850億ドルを、1月から月間750億ドルに縮小することを決定した。

18日に公表された声明文では、まず冒頭で「10月会合以降入手された情報は経済活動が緩やなペースで拡大していることを示唆してindicatesいる」として、前回声明文の「経済活動が緩やかなペースで拡大を続けたことを総じて示してgenerally suggestsいる」から基調判断が上方改訂された。また、経済見通しのリスクは「ほぼバランスしているに近くなった」とし、従前の「下方リスク」の文言が削除された。失業率は「低下したものの高いまま」と依然高水準としながらも失業率の低下を認識する文言が追加された。インフレについては「(委員会は)インフレ動向を、中期的に委員会の目標に回帰していく証蹟を求め注意深く監視している」として、前回の「中期的に委員会の目標に回帰していくと期待している」に比べ、低インフレ率についてのリスク認識をやや高めている。

その上で「委員会は、(資産購入開始からの)期間における経済活動の改善と労働市場条件がより広い経済の根底的な強さの拡大と整合的であると見ている」としたうえで「雇用最大化に向けた進展と労働市場条件の見通しの改善の累積に鑑み、委員会は資産購入のペースを穏当に縮小することを決定」した。

資産購入ペース縮小は来年1月から開始とされた。住宅ローン担保証券(MBS)は現在の毎月400億ドルから同350億ドルへ、長期米国債は現在の同450億ドルから400億ドルへ、それぞれ縮小され、合計の購入ペースは現在の同850億ドルから750億ドルに減額となる。MBSと米国債の縮小幅は同額となった。

9月会合では「何人かの参加者が」住宅市場回復支援のため当初ローン担保証券購入ペースは縮小せず長期米国債のみ縮小することを志向していた。10月会合では「多くの」参加者がMBSと長期米国債を概ね同じペースで削減することが適切と考え、「いくらかの」参加者がMBSよりも米国債購入ペース縮小を早くすべきと考えていた。結果的に、直前の10月会合での多数意見が採用されたことになる。

[第1表]
20131223表1

低インフレリスクに配慮し「十分な時間の経過」を追加:フォワードガイダンス

声明文では、資産購入ペース縮小開始と併せ、ゼロ金利政策に関するフォワードガイダンスを改訂した。声明文では「委員会はこれらの要素の評価に基づき、特にインフレ率予測が委員会の長期目標2%を下回り続けるならば、失業率が6.5%以下に低下して十分な時間が経過する間、現在のFF金利誘導レンジを維持することが適切である可能性が高いと今や予想している」とした。従前の「少なくとも失業率が6.5%を上回り続け、1~2年先のインフレ率が委員会の長期目標2%を0.5%以上上回ると予測されず、長期的インフレ期待がよく抑制され続けるかぎり」というフォワードガイダンスに比べると、インフレ率に関する条件が高インフレ率から低インフレ率に配慮したものになっているほか、「(失業率が6.5%を下回ってから)十分な時間」という時間軸が加わっている。

これは、資産購入ペース縮小開始が利上げ開始に直結するとの憶測を防ぐため、ゼロ金利政策のフォワードガイダンスを明確化・強化したものである(バーナンキFRB議長は声明文公表後の記者会見でフォワードガイダンスの「明確化clarify」「高度化enhance」と述べている)。10月会合では「FF金利に関するフォワードガイダンスを明確化もしくは強化する」いくつかの選択肢が議論されていた。同会合では「シンプルに失業率6.5%の閾値を引き下げる」「失業率が6.5%を下回ってもインフレ率が目標を下まわって推移すると予測される限りはFF金利目標を引上げない」などの案が出されていた。結果的には後者の案に近い文言が採用されたことになる。

なお、12月声明文の新たなフォワードガイダンスは、従前のガイダンスに新たに「2%のインフレ率目標」という経済指標条件と、「なお十分な時間」という時間軸を追加した手法だといえる。英イングランド銀行が8月のインフレーションレポートで示したフォワードガイダンス分類に照らすならば、失業率6.5%、インフレ率2%という「環境条件ガイダンス」に加えて、新たに「十分な時間」という「オープンエンドガイダンス」を加えた手法といえる(8月11日付当レポート参照)。

早期の縮小決定の背景は経済指標の急改善

筆者は、FOMCによる資産購入ペース縮小決定は来年1月または3月会合とみてきた。今回の12月会合での決定はその予想より前倒しだった。縮小決定が予想比早期になされた要因はまず、最近の米国経済指標の予想外の急改善である。7-9月期の実質GDP成長率は11月7日公表の速報値予想を上回る前期比年率+2.8%だった。その後改訂値、確報値でそれぞれ同+3.8%、同+4.1%と更に大幅に上方改訂がなされた。10月の政府閉鎖に至る前の米連邦政府債務・予算を巡る不透明感で消費者センチメントが低下していた時期だったにも拘らず、経済活動への悪影響は予想外に限定的だった。

失業率も8月時点の7.3%から、11月には7.0%に急低下し、FOMCのフォワードガイダンスの閾値である6.5%にかなり接近していた([第1図])。ゼロ金利政策解除を考慮し始める閾値まであと0.5%の水準は、前段階としての緩和ペース縮小開始には適切な水準である。

米議会の超党派予算法案が12月会合の約1週間前の12日に下院で可決されたこと(上院でもFOMC声明文と同日の18日に可決)、早期の資産購入ペース縮小決定を可能にした要素だといえる。来年1月15日期限の連邦政府暫定予算の行方は経済にとっても大きなリスク要因だったが、超党派予算の合意とその内容(歳出削減の緩和)は経済成長見通しの上ブレ要因になる(12月15日付当レポート参照)。

なお、インフレ率のみがFOMCの長期目標である2%を大きく下回って推移している([第2図])が、これに対しては前述のフォワードガイダンス強化で措置するとの判断がなされたと考えられる。声明文の文言や後述の経済予測からも、FOMC委員の多数は低インフレ率を著しいリスクとはみていないことがうかがえる。

なお筆者は、上記の要素に加えて今年の投票メンバーは相対的にハト派メンバーが多いこと、来年にはタカ派メンバーが増加することから、来年の方が資産購入ペース縮小をより決定しやすいはずとも考えていた。しかし経済指標と財政問題の改善はハト派メンバーをして資産購入ペース縮小に踏み切るに十分だった。反対票は従来通り、緩和政策によるインフレ期待上昇を懸念するタカ派のカンサスシティ連銀ジョージ総裁のみだった。

[第1図]
20131223図1

[第2図]
20131223図2

失業率6.5%は2014年: FOMC委員経済予測

12月会合の声明文と同時に、四半期毎に改訂されるFOM委員による経済予測(12月時点)が公表された。成長率予測の中心傾向は9月時点の予測とほぼ不変、失業率は2015年にかけて9月予測比やや下方シフト、PCEインフレ率は2014年にかけてやや下方シフトした。失業率は、2014年にゼロ金利解除の閾値である6.5%に近付くとの予測になっている。また適切な利上げ時期は前回同様2015年中との予測が12名と最も多い([第2表])。

FOMC委員の成長率予測の中心傾向は2013年が+2.2~+2.3%、2014年が+2.8~+3.2%(第4四半期前年同期比)と、来年にかけて成長加速を予測している。因みに筆者個人の暫定予想では、2013年の成長率は同+2.3%、2014年は同+2.4%と見ている(12月15日付当レポート参照)。この予想は、超党派予算案の成立による財政問題リスク後退と来年の政府支出削減緩和反映したものである。9月時点ではFOMC予測はかなり楽観的と筆者は見ていたが、直近の経済指標実績の予想外の急改善により2013年については実績がFOMC予測に近付いてきたため、今回の緩和縮小開始決定を十分に正当化できる結果になった。一方、2014年の予測についてはなお、筆者個人の予想比FOMC予測は相対的に楽観的である([第3図])。

FOMC委員の失業率予測(2014年に6.5%まで低下)は今や実現可能な水準である。筆者は現在の失業率低下ペースは実体経済に照らして早すぎるとみてきた。需給ギャップと失業率の相関からは今年の失業率は8%台が均衡水準であること(5月28日付当レポート参照)、また労働参加率の低下が失業率低下に寄与していることは、将来労働力人口への人口再流入の際の失業率再上昇の可能性を示唆していること、が主な理由である。しかし、失業率の実績値が筆者推計の8%を-1%下回る7%にまで低下したことで、閾値の6.5%まであと-0.5%の低下は来年中に実現可能と言わざるを得ない。また、労働参加率の低下は循環的要因のみならす構造要因もあって、今後労働参加率の大きな再上昇は見られない可能性もある(なおバーナンキFRB議長は、声明文公表後の記者会見で「労働参加率の低下は人口高齢化等長期影響のみならず、潜在的労働者の意欲喪失も反映している」とのべ、労働参加率低下には構造要因と循環要因の双方があるとの見方を示している)。

インフレ率については、委員会の長期目標2%は2014年には達成できず、2015年には中心傾向の上限が2%となる予測となっている。FOMC委員予測によれば2%のインフレ目標達成は早くて2015年ということになるが、むこう1~2年の「インフレ予測が2%を下回り続ける」状況は回避できている。筆者個人は、失業率と期待インフレ率を決定要因とする回帰分析から、今後約1年間にコアPCEインフレ率は前年比+1.7%の水準に回帰すると見ている(12月8日付当レポート参照)。従って新たなフォワードガイダンスに追加されたインフレ率条件により資産購入停止から利上げの期間が著しく長期化する可能性は低いと見たい。

なお、声明文公表後に行われたバーナンキFRB議長の記者会見発言のトーンは依然として慎重である。「経済環境が正常と判断されるまでには長い道程がある」「(労働市場の)回復は完全には遠いことが明らか」と、資産購入ペース縮小決定が経済正常化との判断に基づくものでないことを強調。またフォワードガイダンスに定められた失業率等の数値は「閾値であってトリガーではない」こと、資産購入縮小のプロセスは「思慮深くデータに依存する、資産購入は予め決められたコースpreset courseではない」と過去の議長発言同様の文言も用いて述べている。これは過去の議事要旨から読み取れるように、市場とのコミュニケーションにFOMCが極めて強い配慮をしていることの表れといえる。

[第2表]
20131223表2

[第3図]
20131223図3


来年半ばに資産購入停止、2015年に利上げ開始との予想を維持する

これらの要因から今後のFRBによる資産購入縮小のペースを予想してみる。バーナンキ議長は声明文公表後の記者会見で「入手される情報が委員会の目標に対する更なる進捗期待を支持するならば、委員会は更に毎月の購入ペースを慎重なステップmeasured stepsで縮小する可能性が高い」と述べ、慎重ながらも今後縮小を継続する意向を示唆している。筆者は従前より2014年前半に資産購入停止、2015年に利上げ開始と予想してきた(5月28日付当レポート参照)。この予想はFOMC委員の経済予測等に照らしても概ね妥当しうる。

現在の失業率低下ペースからは6.5%の失業率は2014年半ばにも達成可能である。12月会合での資産購入ペース縮小幅は100億ドルと小幅だった。2014年にFOMC定例会合は8回予定されているため、今後会合毎に100億ドルずつペース縮小すれば2014年内には購入停止が決定される。経済・市場の状況をみてこの縮小幅を広げれば、年半ば頃に購入停止も可能である。来年の経済見通しが上方リスクを孕んでいることからは、来年2回目の会合である3月会合から縮小幅を広げ、年半ばには資産購入を停止する可能性は十分にある。

FOMC委員の大半が適切な利上げ時期を2015年と予測していることもこの予想と整合している。因みにFOMC委員予測では2015年末のFF金利誘導目標の水準につき、3名が0.25%、3名が0.50%、4名が0.75%、2名が1.0%を予測している。一方1.0%を越える水準(予測の最大値は3.25%)を予測する委員は5名である。ここからは、2015年またはそれ以前の利上げ開始を予測する委員の大半は2015年内の利上げはたかだか1%までと見ていること、つまり利上げ開始は2015年の半ばかそれ以降と考えていることになる。

この予想に対するリスク要因は2つある。ひとつは成長率実績がFOMC委員のやや楽観的な予測を下回り続けること、もうひとつはインフレ率が同じく委員予測を下回り続けることである。前者については、FOMCが成長率をフォワードガイダンスの環境条件としていないことから致命的なリスクとは言いにくい。また、ISM指数など企業景況感指数が高水準にあることは、今後成長率予想の上方改訂は十分にありうる。後者のインフレ率については、筆者の見方はまだ下方リスクがあると言わざるを得ない。特に資産購入縮小ペースが消費者のインフレ期待の低下をもたらす可能性には留意が必要だろう。失業率が今後も低下傾向をたどるとすれば、インフレ期待の維持が今後の鍵になる。因みにミシガン大学消費者センチメント調査では、消費者期待インフレ率(12ヶ月)は2.9%~3.3%の間で安定推移しているが、11月時点で2.9%と約3年ぶりに3%を割り込んでいるのはリスクの前兆である可能性もある。

来年の成長に朗報~米議会超党派予算案合意

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米議会超党派予算案合意により来年の暫定予算失効リスクが後退、政府支出の増加により米国経済成長が予想比上ぶれる可能性が高まった。同予算案の成立を前提に、直近の経済指標上ブレも勘案して来年の筆者個人の成長予想を暫定的に引き上げる。下方リスク要因は、予算案の上院採決、拡大失業保険給付継続如何、来年2月7日の政府債務上限不適用期限などである。

議会下院が超党派予算案可決~予算期限延長と歳出削減緩和

米議会下院は12日、新たな予算法案である2013年超党派予算法案The Bipartisan Budget Act of 2013 HJ Res 59を332‐59で可決し上院に送付した。同法は、10月16日に2014年歳出継続法Continuing Appropriation Act , 2014による来年1月15日までの暫定予算成立ののち、ライアン下院予算委員長(共和党)とマレー上院予算委員長(民主党)らによる両院合同予算委員会Budget Conference-Committeeで合意された内容を反映したものである(10月20日付当レポート参照)。

この法案は、2014‐2015会計年度に亘る予算決議の形をとり、来年1月15日期限の現行暫定予算の期限切れを回避するとともに、2011年財政管理法Budget Control Act of 2011で定められた裁量的支出上限を2014‐2015会計年度に限り引き上げて歳出削減を一部緩和することが盛り込まれている。

法案成立には今後米議会上院での可決が必要だが、これが成立すれば、米財政問題に関わる不透明要因の一つであった来年1月15日の予算失効リスクは払拭される。また従前比の連邦政府歳出増加は来年の経済成長見通しを引き上げる要因になる。以下、同法案が成立するとの前提で、米連邦政府財政支出と米国経済見通しへの影響を考察する。

2013年超党派予算法案の内容

2011年財政管理法では、会計年度毎の裁量的支出の上限(キャップ)引下げと、義務的支出と裁量的支出についての自動歳出削減sequestrationが定められていた。同法では主に裁量的支出に自動削減を定めている他、義務的支出であるメディケア支出に一定の削減を求めていた(2月10日付当レポート参照)。同法によるキャップと歳出削減は、当初実施日の2013年1月から2ヶ月延期され、2013年3月1日より発効、実施されている(末尾[第6表]参照)。

2013年超党派予算法案の骨子は[第1表]の通り。今後2年間の裁量的支出のキャップを引き上げる代わりに、義務的支出の自動削減(メディケア支出等)の延長などの財政赤字削減策が示されている。しかし、赤字削減策の効果は10年に亘り850億ドルにとどまる(議会予算局のコスト試算による)もので、同法による追加的財政赤字削減効果は限定的である。同法は主に向こう2年間の財政支出の柔軟性を重視したものと言える。

[第1表]
20131215表1

裁量的支出増加は来年のGDPを約+0.2%押し上げる

2013年超党派予算法案の定める裁量的支出の上限(キャップ)一時引上げの内容は[第2表]の通りである。12月11日付議会予算局の同法案に関するコスト見積もりによれば、従来の財政管理法下でのベースライン財政見通しに比べ、2014会計年度に447億ドル、2015会計年度に184億ドルの裁量的支出予算の増加が見込まれる。これはそれぞれ2013年名目GDP(筆者見通し)の0.3%、0.1%に相当する。実際の歳出増加の見通しは、同じく議会予算局コスト見積もりによれば[第3表]のとおりで、2014会計年度の歳出増加は約263億ドル(名目GDP比約0.2%)、2015年度は約216億ドル(同約0.1%)と見積もられている。

超党派予算法案が成立すれば、こうした裁量的支出が当初見込みより増加することで、2014年の米実質GDP成長率見通しの上ブレ要因になる。上記の歳出増加見通しを暦年ベースに直し、さらに乗数効果を勘案すると、2014年暦年の実質GDP概ね+0.2%ほど押し上げる可能性が高いと見ておく。

なお、5月時点の議会予算局財政経済見通し”Updated Budget and Economic Outlook: Fiscal Years 2013 to 2023”によれば、一部メディケア支払いなどの自動削減にも拘らず義務的支出は2014会計年度に大幅増加する見通しとなっている。

[第2表]
20131215表2

[第3表]
20131215表3

拡大失業給付延長見送りはGDPを最大-0.3%押し下げの可能性

今回の超党派予算法案には、連邦政府による拡大失業保険給付の延長が盛り込まれていない。米国の失業保険給付は、州による失業保険給付regular UI(最大26週間)、連邦政府による緊急失業給付EUC(最大34週間)、連邦政府・州による延長失業給付EB(最大20週間)からなる。このうちEUCとEBを合わせた拡大失業保険給付は、2008年に成立した時限措置であるが、成立後何度か延長され、直近では1月2日に成立した財政の崖回避法American Taxpayer Relief Act of 2012において、2014年1月初まで1年間の延長がなされたものである。今回の予算措置で拡大失業保険給付の延長が見送られ、来年1月に同給付が停止された場合、個人消費への影響を通じて経済へのマイナスの影響も考えられる。

米労働省の報告書 ”The Economic Benefits of Extending Unemployment Insurance, December 2013” によれば、拡大失業保険給付の延長見送りにより今年の年末時点で1.3百万人が失業保険給付受給資格を喪失、2014年末にはその数が4.9百万人に増加すると試算されている。2014年の平均受給喪失者数をこれらの平均である約3.1百万人とし、一人当たりの受給額を6,681ドル(同報告書による)とすると、2014年の個人所得は約209億ドル減少、名目GDP比で約-0.12%の所得減少につながる計算になる。別の計算では、一人当たりの平均受給額を週当たり300ドル(Center on Budget and Policy Prioritiesによる)とし、年間(52週間)の受給額を15600ドルとすると、GDPへの影響は約-0.3%に拡大する計算になる([第4表])。

かように、拡大失業保険給付停止の経済へのマイナスの影響は相応に大きいといえる。しかし、同給付がこのまま停止されるとは考えにくい。国民感情への政治的配慮から引き続き同給付の延長措置が議会で成立すると見ておきたい。

[第4表]
20131215表4

直近の指標好転も勘案し来年の成長率予想を暫定的に2%台に引き上げる

超党派予算法案の成立を前提に、これまでの米経済統計の予想比上ブレも勘案して、筆者個人の2014年の米国実質GDP成長率予想を従前の前年比+1.8%(10月13日付当レポート参照)から同+2.3%に暫定的に引き上げる。今年の予想は同+1.5%から同+1.7%とする([第1図])。

上方修正の理由はまず、10月の政府一部閉鎖のマイナスの影響が予想以下だったことである。10月の予想では、7-9月期、10-12月期の成長率を政府一部閉鎖の影響もあり1%台にとどまると見ていた。しかし、7-9月期の成長率実績は、企業在庫増加要因等もあり前期比年率+3.6%と予想を大幅に上回る結果だった。10月の実質個人消費は前月比+0.3%と予想以上に強く、自動車販売台数も11月に年率16百万台台を回復するなど、政府閉鎖の個人消費への影響は10月予想時点での見方より僅少だったと考えられる。10-12月期の実質個人消費は3四半期ぶりの2%台成長が見込めるペースである。

次に、超党派予算法案が成立すれば財政問題の不透明感が解消し、さらに政府支出の従前予想比の増加が見込めることである。従前の予想では来年1月15日期限暫定予算延長の議会合意は13日の期限内になされないリスクが高いと見ていた。しかし今回の合意は予想以上のスピード感である。さらに裁量支出を中心に政府支出増が来年の成長を0.2%ほど押し上げると見込める。更に義務的支出の増加はさらに政府支出の経済への寄与を高めうる。

上記修正予想に対する下方リスクシナリオは次の通りである。まず、超党派予算法案が上院で可決されず再び来年1月15日の予算失効リスクが高まるケースである。次に、拡大失業保険給付の延長措置がこのまま見送られ、目先の経済成長に下方リスクをもたらすケースである。前者の場合は再び来年の成長率予想は1.8%程度に戻すこと、後者の場合は最大‐0.3%の下方修正を考慮することになる。さらに来年2月7日には、再び政府債務上限の不適用期限が到来することにも留意が必要である。

[第1図]
20131215図1

[第5表]
20131215表5

FOMC予測に追いついた~米国の成長率と失業率

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直近の経済指標によれば、米国の経済成長率と労働市場は予想以上の好転を見せている。統計からはQE3縮小開始へのハードルはかなり取り除かれた。FOMCが来年1月会合または3月会合でQE3縮小開始を決定するとの筆者個人の予想を維持する。

GDP成長率は3%台に大幅上方改訂された

5日に公表された米7-9月期GDP統計(改訂値)によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.6%と、予想を上回った速報値(同+2.8%)から更に大幅上方改訂となった。米国の成長率は3四半期連続の加速である[第1図])。上方改訂された需要項目は主に在庫投資で、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要はむしろ前期の同+2.7%から+2.1%に減速している。しかし、1%台の伸びにとどまると見ていた筆者個人予想(10月13日付当レポート参照)との比較では大幅な上ブレとなった。

10-12月期についても、直近の経済指標は筆者個人予想を上回る成長を示唆している。10月の実質個人消費は前期比年率+0.3%と、政府期間一部閉鎖実施にも拘わらず財消費中心に強い伸びとなった。11月の新車販売台数は年率16.3百万台と3ヶ月ぶりに16百万台台を回復、水準は2007年5月以来の高水準を記録している。このペースだと、10-12月期の実質個人消費は3四半期ぶりの2%成長が可能な計算になる。

以上より、10-12月期の実質GDP成長率の筆者個人予想を10月時点の前期比年率+1.0%から上方修正し、同+1.5%とする。

[第1図]
20131208図1


筆者個人の今年の成長予想はFOMC委員予測に追いついた

以下、FOMC委員の経済予測と直近経済指標との比較により、FOMCのQE3縮小開始の行方を占ってみよう。9月時点のFOMC委員経済予測における2013年成長率の中心傾向は2.0-2.3%(10-12月期前年同期比)だった([第1表])。上記の筆者個人の修正後予想は10-12月期の前年同期比では+2.2 %の水準に相当する。修正後の筆者個人予想は結果、FOMC委員による9月時点の経済予測における成長率予測の中心傾向の範囲内に入るまでに上昇したことになる([第2図])。

当レポートでは従前より、FOMC委員の成長予測が実態に比してかなり楽観的であることが、QE3縮小開始のハードルになると見てきた(10月20日付当レポート参照)。しかし直近のGDP統計からは、経済成長の実態はFOMC委員の予測に追い付いたと言える。成長率の観点からは「今後数ヶ月以内」のQE3縮小開始は可能ということになる。

10月30日FOMC会合議事要旨によれば「入手されたデータは2013年後半の成長が多くの参加者が予想していたより幾分弱めになるかも知れないことを示唆しているが、参加者は総じて経済活動のペースが加速すると引き続き予想した」とされており、その後のデータは少なくとも2013年についてはFOMC参加者の見方を裏付けるものと言える(10月会合は7-9月期GDP統計速報値公表直前)。

[第2図]
20131208図2

[第1表]
20131208表1

7%の失業率もQE3縮小開始の条件を満たしつつある

次にFOMC金融政策決定の重要要素である失業率を見る。6日に公表された米11月雇用統計によれば、11月の失業率は7.0%と前月の7.3%から‐0.3%の大幅低下、リーマンショック直後の2008年11月以来の低水準となった。9月時点のFOMC委員の失業率予測の中心傾向は7.1-7.3%(10-12月平均)で、10-11月実績はすでにこの予測の下限にある。FOMCは昨年12月以来声明文で「失業率が6.5%を上回っている限り」現在のゼロ金利政策を継続するとしている。失業率が7%にまで低下したことは、利上げに先立つ量的緩和縮小の開始時期が近いことを示唆している。

米国の失業率低下ペースは筆者個人の予想よりかなり早い。筆者は、需給ギャップと失業率の相関からは今年の失業率は8%レベルが均衡水準と見ていた(5月28日付当レポート参照)。また、米国の失業率の低下は労働参加率の低下つまり労働力人口からの人口の退出を伴ってきた。一旦労働力人口から退出した人口が景気回復時に再び労働力人口に流入すれば、失業率は再び上昇する可能性がある。

しかしながら、労働参加率の低下が既に5年に亘るトレンドになっていること([第3図])は、労働参加率低下が既に構造要因になっている可能性を示唆している(10月FOMC議事要旨によれば、何人かの参加者が「労働参加率の低下が労働人口からの引退の判断を反映したものならば、労働参加率の再上昇は考えにくい」と述べている)。

また、失業率低下の要因を生産年齢人口要因・労働参加率要因・就業者数要因に分解してみると、労働参加率低下とともに就業者数増加も失業率低下に相応に寄与していることが分かる([第4図])。特に11月は、労働参加率が63.0%と、昨年10月以来の上昇幅となる+0.2%の上昇をみせたにも拘らず、就業者数増加要因がこれを上回り失業率は大幅低下した。

10月FOMC会合議事要旨によれば「参加者は総じて、(今後の経済)データは労働市場条件の今後の改善にいついての委員会の見通しと整合的であること、そして今後数ヶ月以内に資産購入のペースを縮小することを正当化するだろう」と述べ、10月時点ですでに労働市場改善が見通し通りとの認識を持っている。11月統計も少なくとも数値上はQE3縮小開始の条件を満たしつつあると言っていいだろう。

[第3図]
20131208図3

[第4図]
20131208図4

インフレ率はFOMC目標を大幅に下回るが、いずれ上昇に転じよう

FOMC委員予測に比して大幅に下ブレ推移しているのがインフレ率である。FOMCが指標として用いる個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)10月時点で前年比+0.7%と、FOMCの目標である同+2%(2012年1月FOMC会合後に公表されたもの)を大幅に下回っている。9月時点のFOMC委員の2013年のPCEデフレーターの伸び率予測の中心傾向は+1.1~1.2%(10-12月期前年同期比)であり、直近の実績はこれも下回っている([第5図])。

FOMCは7月会合の声明文で「2%の目標を継続的に下回るインフレ率は経済実績にリスクをもたらしうる」との文言を追加して現在に至っている。2%を大幅に下回る現在のインフレ率は引続きFOMCの懸念事項でありQE3縮小開始のハードルとなりうる。しかしながら一方で、7月FOMC声明文では「委員会は中期的にインフレ率が目標値に向かって回帰すると期待している」との文言変更も実施、インフレ率低下を金融政策変更のハードルにしない配慮をしているようにも見える。

10月FOMC議事要旨によれば、インフレ率低下については多くの議論はなされていない。これは、低インフレ率が必ずしもQE3縮小開始の致命的なハードルではないことの示唆とも言えよう。

筆者個人は、米国のインフレ率は今後1年間で前年比+1.5~2%の伸びに回帰していくと見ている。7月28日付当レポートでは、「失業率」と「ミシガン大調査消費者インフレ期待(12ヶ月)」を説明変数としてコアPCEインフレ率を推計した。同じ回帰式で最新のデータを用いて推計を行ったところ、7-9月期のコアPCEインフレ率の推計値は約+1.7%との結果になった。同期のコアPCEインフレ率実績+1.2%は依然としてこれを大幅に下回っている([第6図][第2表])。

インフレ率実績値の推計値からの下方乖離は、税制や商品価格変動による一時的なものと筆者は見ている。FOMC委員も同様の見方をしているならば、インフレ率低下はQE3縮小開始の大きなハードルにはならないと言える。

[第5図]
20131208図5

[第6図]
20131208図6

[第2表]
20131208表2

1月または3月のQE3縮小開始予想を維持する

ついては、FOMCが来年1月会合または3月会合でQE3縮小開始を決定するとの筆者個人の予想を維持する(10月20日付当レポート参照)。直近の経済指標好転を勘案すれば、バーナンキ議長任期最後の会合である1月会合で政策変更を決定した上でイエレン新議長に引き継ぐ方法が政策の継続性維持の観点からは適切だと言える。

10月の政府閉鎖実施の経済への影響や、ハト派イエレン氏の次期FRB議長就任内定により、縮小開始が4月以降にずれ込むリスクも一時あった。しかし、10月政府閉鎖の悪影響は10月、11月の経済指標からは予想以下だったと言える。10月会合以降の経済指標は当時のFOMC委員の見通し以上に好転している。数値上の指標好転が見られればこれに沿って整斉と縮小開始を判断するのが市場との対話の観点からの適切と言える。

リスク要因はまず政府財政問題である。10月16日に成立した2014年歳出継続法で定められた連邦政府予算の期限が来年1月15日に、政府債務上限の一時不適用の期限が来年2月8日に到来する。また上下院合同予算委員会による新たな財政赤字削減案の策定期限は12月13日であるが、報道によれば先週までの間に特段の合意は為されていない模様だ。10月の政府閉鎖や、過去に遡る予算を巡る議会内対立の経験からは、財政問題が経済に与える悪影響は今や限定的ともいえる。ただし、株価が史上最高値を更新するなど市場に過熱感がある現状では、悪材料への反応も案外大きい可能性がある。