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景気改善で早目の判断~FOMCがQE縮小開始決定

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FOMCは来年1月からの資産購入ペース縮小開始を決定した。縮小開始に合わせて利上げに関するフォワードガイダンスがインフレ条件と時間軸で強化された。2014年内の資産購入停止、2015年の利上げ開始予想を維持する。主に期待インフレ率の低下がリスク要因である。

850億ドル→750億ドルへの資産購入ペース縮小を決定

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)は17、18日の定例会合で、来年1月から資産購入ペース縮小を開始し、これまでの購入ペース月間850億ドルを、1月から月間750億ドルに縮小することを決定した。

18日に公表された声明文では、まず冒頭で「10月会合以降入手された情報は経済活動が緩やなペースで拡大していることを示唆してindicatesいる」として、前回声明文の「経済活動が緩やかなペースで拡大を続けたことを総じて示してgenerally suggestsいる」から基調判断が上方改訂された。また、経済見通しのリスクは「ほぼバランスしているに近くなった」とし、従前の「下方リスク」の文言が削除された。失業率は「低下したものの高いまま」と依然高水準としながらも失業率の低下を認識する文言が追加された。インフレについては「(委員会は)インフレ動向を、中期的に委員会の目標に回帰していく証蹟を求め注意深く監視している」として、前回の「中期的に委員会の目標に回帰していくと期待している」に比べ、低インフレ率についてのリスク認識をやや高めている。

その上で「委員会は、(資産購入開始からの)期間における経済活動の改善と労働市場条件がより広い経済の根底的な強さの拡大と整合的であると見ている」としたうえで「雇用最大化に向けた進展と労働市場条件の見通しの改善の累積に鑑み、委員会は資産購入のペースを穏当に縮小することを決定」した。

資産購入ペース縮小は来年1月から開始とされた。住宅ローン担保証券(MBS)は現在の毎月400億ドルから同350億ドルへ、長期米国債は現在の同450億ドルから400億ドルへ、それぞれ縮小され、合計の購入ペースは現在の同850億ドルから750億ドルに減額となる。MBSと米国債の縮小幅は同額となった。

9月会合では「何人かの参加者が」住宅市場回復支援のため当初ローン担保証券購入ペースは縮小せず長期米国債のみ縮小することを志向していた。10月会合では「多くの」参加者がMBSと長期米国債を概ね同じペースで削減することが適切と考え、「いくらかの」参加者がMBSよりも米国債購入ペース縮小を早くすべきと考えていた。結果的に、直前の10月会合での多数意見が採用されたことになる。

[第1表]
20131223表1

低インフレリスクに配慮し「十分な時間の経過」を追加:フォワードガイダンス

声明文では、資産購入ペース縮小開始と併せ、ゼロ金利政策に関するフォワードガイダンスを改訂した。声明文では「委員会はこれらの要素の評価に基づき、特にインフレ率予測が委員会の長期目標2%を下回り続けるならば、失業率が6.5%以下に低下して十分な時間が経過する間、現在のFF金利誘導レンジを維持することが適切である可能性が高いと今や予想している」とした。従前の「少なくとも失業率が6.5%を上回り続け、1~2年先のインフレ率が委員会の長期目標2%を0.5%以上上回ると予測されず、長期的インフレ期待がよく抑制され続けるかぎり」というフォワードガイダンスに比べると、インフレ率に関する条件が高インフレ率から低インフレ率に配慮したものになっているほか、「(失業率が6.5%を下回ってから)十分な時間」という時間軸が加わっている。

これは、資産購入ペース縮小開始が利上げ開始に直結するとの憶測を防ぐため、ゼロ金利政策のフォワードガイダンスを明確化・強化したものである(バーナンキFRB議長は声明文公表後の記者会見でフォワードガイダンスの「明確化clarify」「高度化enhance」と述べている)。10月会合では「FF金利に関するフォワードガイダンスを明確化もしくは強化する」いくつかの選択肢が議論されていた。同会合では「シンプルに失業率6.5%の閾値を引き下げる」「失業率が6.5%を下回ってもインフレ率が目標を下まわって推移すると予測される限りはFF金利目標を引上げない」などの案が出されていた。結果的には後者の案に近い文言が採用されたことになる。

なお、12月声明文の新たなフォワードガイダンスは、従前のガイダンスに新たに「2%のインフレ率目標」という経済指標条件と、「なお十分な時間」という時間軸を追加した手法だといえる。英イングランド銀行が8月のインフレーションレポートで示したフォワードガイダンス分類に照らすならば、失業率6.5%、インフレ率2%という「環境条件ガイダンス」に加えて、新たに「十分な時間」という「オープンエンドガイダンス」を加えた手法といえる(8月11日付当レポート参照)。

早期の縮小決定の背景は経済指標の急改善

筆者は、FOMCによる資産購入ペース縮小決定は来年1月または3月会合とみてきた。今回の12月会合での決定はその予想より前倒しだった。縮小決定が予想比早期になされた要因はまず、最近の米国経済指標の予想外の急改善である。7-9月期の実質GDP成長率は11月7日公表の速報値予想を上回る前期比年率+2.8%だった。その後改訂値、確報値でそれぞれ同+3.8%、同+4.1%と更に大幅に上方改訂がなされた。10月の政府閉鎖に至る前の米連邦政府債務・予算を巡る不透明感で消費者センチメントが低下していた時期だったにも拘らず、経済活動への悪影響は予想外に限定的だった。

失業率も8月時点の7.3%から、11月には7.0%に急低下し、FOMCのフォワードガイダンスの閾値である6.5%にかなり接近していた([第1図])。ゼロ金利政策解除を考慮し始める閾値まであと0.5%の水準は、前段階としての緩和ペース縮小開始には適切な水準である。

米議会の超党派予算法案が12月会合の約1週間前の12日に下院で可決されたこと(上院でもFOMC声明文と同日の18日に可決)、早期の資産購入ペース縮小決定を可能にした要素だといえる。来年1月15日期限の連邦政府暫定予算の行方は経済にとっても大きなリスク要因だったが、超党派予算の合意とその内容(歳出削減の緩和)は経済成長見通しの上ブレ要因になる(12月15日付当レポート参照)。

なお、インフレ率のみがFOMCの長期目標である2%を大きく下回って推移している([第2図])が、これに対しては前述のフォワードガイダンス強化で措置するとの判断がなされたと考えられる。声明文の文言や後述の経済予測からも、FOMC委員の多数は低インフレ率を著しいリスクとはみていないことがうかがえる。

なお筆者は、上記の要素に加えて今年の投票メンバーは相対的にハト派メンバーが多いこと、来年にはタカ派メンバーが増加することから、来年の方が資産購入ペース縮小をより決定しやすいはずとも考えていた。しかし経済指標と財政問題の改善はハト派メンバーをして資産購入ペース縮小に踏み切るに十分だった。反対票は従来通り、緩和政策によるインフレ期待上昇を懸念するタカ派のカンサスシティ連銀ジョージ総裁のみだった。

[第1図]
20131223図1

[第2図]
20131223図2

失業率6.5%は2014年: FOMC委員経済予測

12月会合の声明文と同時に、四半期毎に改訂されるFOM委員による経済予測(12月時点)が公表された。成長率予測の中心傾向は9月時点の予測とほぼ不変、失業率は2015年にかけて9月予測比やや下方シフト、PCEインフレ率は2014年にかけてやや下方シフトした。失業率は、2014年にゼロ金利解除の閾値である6.5%に近付くとの予測になっている。また適切な利上げ時期は前回同様2015年中との予測が12名と最も多い([第2表])。

FOMC委員の成長率予測の中心傾向は2013年が+2.2~+2.3%、2014年が+2.8~+3.2%(第4四半期前年同期比)と、来年にかけて成長加速を予測している。因みに筆者個人の暫定予想では、2013年の成長率は同+2.3%、2014年は同+2.4%と見ている(12月15日付当レポート参照)。この予想は、超党派予算案の成立による財政問題リスク後退と来年の政府支出削減緩和反映したものである。9月時点ではFOMC予測はかなり楽観的と筆者は見ていたが、直近の経済指標実績の予想外の急改善により2013年については実績がFOMC予測に近付いてきたため、今回の緩和縮小開始決定を十分に正当化できる結果になった。一方、2014年の予測についてはなお、筆者個人の予想比FOMC予測は相対的に楽観的である([第3図])。

FOMC委員の失業率予測(2014年に6.5%まで低下)は今や実現可能な水準である。筆者は現在の失業率低下ペースは実体経済に照らして早すぎるとみてきた。需給ギャップと失業率の相関からは今年の失業率は8%台が均衡水準であること(5月28日付当レポート参照)、また労働参加率の低下が失業率低下に寄与していることは、将来労働力人口への人口再流入の際の失業率再上昇の可能性を示唆していること、が主な理由である。しかし、失業率の実績値が筆者推計の8%を-1%下回る7%にまで低下したことで、閾値の6.5%まであと-0.5%の低下は来年中に実現可能と言わざるを得ない。また、労働参加率の低下は循環的要因のみならす構造要因もあって、今後労働参加率の大きな再上昇は見られない可能性もある(なおバーナンキFRB議長は、声明文公表後の記者会見で「労働参加率の低下は人口高齢化等長期影響のみならず、潜在的労働者の意欲喪失も反映している」とのべ、労働参加率低下には構造要因と循環要因の双方があるとの見方を示している)。

インフレ率については、委員会の長期目標2%は2014年には達成できず、2015年には中心傾向の上限が2%となる予測となっている。FOMC委員予測によれば2%のインフレ目標達成は早くて2015年ということになるが、むこう1~2年の「インフレ予測が2%を下回り続ける」状況は回避できている。筆者個人は、失業率と期待インフレ率を決定要因とする回帰分析から、今後約1年間にコアPCEインフレ率は前年比+1.7%の水準に回帰すると見ている(12月8日付当レポート参照)。従って新たなフォワードガイダンスに追加されたインフレ率条件により資産購入停止から利上げの期間が著しく長期化する可能性は低いと見たい。

なお、声明文公表後に行われたバーナンキFRB議長の記者会見発言のトーンは依然として慎重である。「経済環境が正常と判断されるまでには長い道程がある」「(労働市場の)回復は完全には遠いことが明らか」と、資産購入ペース縮小決定が経済正常化との判断に基づくものでないことを強調。またフォワードガイダンスに定められた失業率等の数値は「閾値であってトリガーではない」こと、資産購入縮小のプロセスは「思慮深くデータに依存する、資産購入は予め決められたコースpreset courseではない」と過去の議長発言同様の文言も用いて述べている。これは過去の議事要旨から読み取れるように、市場とのコミュニケーションにFOMCが極めて強い配慮をしていることの表れといえる。

[第2表]
20131223表2

[第3図]
20131223図3


来年半ばに資産購入停止、2015年に利上げ開始との予想を維持する

これらの要因から今後のFRBによる資産購入縮小のペースを予想してみる。バーナンキ議長は声明文公表後の記者会見で「入手される情報が委員会の目標に対する更なる進捗期待を支持するならば、委員会は更に毎月の購入ペースを慎重なステップmeasured stepsで縮小する可能性が高い」と述べ、慎重ながらも今後縮小を継続する意向を示唆している。筆者は従前より2014年前半に資産購入停止、2015年に利上げ開始と予想してきた(5月28日付当レポート参照)。この予想はFOMC委員の経済予測等に照らしても概ね妥当しうる。

現在の失業率低下ペースからは6.5%の失業率は2014年半ばにも達成可能である。12月会合での資産購入ペース縮小幅は100億ドルと小幅だった。2014年にFOMC定例会合は8回予定されているため、今後会合毎に100億ドルずつペース縮小すれば2014年内には購入停止が決定される。経済・市場の状況をみてこの縮小幅を広げれば、年半ば頃に購入停止も可能である。来年の経済見通しが上方リスクを孕んでいることからは、来年2回目の会合である3月会合から縮小幅を広げ、年半ばには資産購入を停止する可能性は十分にある。

FOMC委員の大半が適切な利上げ時期を2015年と予測していることもこの予想と整合している。因みにFOMC委員予測では2015年末のFF金利誘導目標の水準につき、3名が0.25%、3名が0.50%、4名が0.75%、2名が1.0%を予測している。一方1.0%を越える水準(予測の最大値は3.25%)を予測する委員は5名である。ここからは、2015年またはそれ以前の利上げ開始を予測する委員の大半は2015年内の利上げはたかだか1%までと見ていること、つまり利上げ開始は2015年の半ばかそれ以降と考えていることになる。

この予想に対するリスク要因は2つある。ひとつは成長率実績がFOMC委員のやや楽観的な予測を下回り続けること、もうひとつはインフレ率が同じく委員予測を下回り続けることである。前者については、FOMCが成長率をフォワードガイダンスの環境条件としていないことから致命的なリスクとは言いにくい。また、ISM指数など企業景況感指数が高水準にあることは、今後成長率予想の上方改訂は十分にありうる。後者のインフレ率については、筆者の見方はまだ下方リスクがあると言わざるを得ない。特に資産購入縮小ペースが消費者のインフレ期待の低下をもたらす可能性には留意が必要だろう。失業率が今後も低下傾向をたどるとすれば、インフレ期待の維持が今後の鍵になる。因みにミシガン大学消費者センチメント調査では、消費者期待インフレ率(12ヶ月)は2.9%~3.3%の間で安定推移しているが、11月時点で2.9%と約3年ぶりに3%を割り込んでいるのはリスクの前兆である可能性もある。

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