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構造要因が相当を占める~米国の労働参加率低下

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米国では失業率低下とともに労働参加率が低下している。労働参加率の低下は今後失業率の再上昇を示唆するため良い傾向とは評価されにくい。一方で、10年以上に亘る労働参加率低下には景気循環以外の構造要因もあると見るべきである。ここでは、労働参加率の低下を構造要因と循環要因の双方から見ることで、将来の失業率再上昇のレベルを見通すことを試みる。

労働参加率低下を伴う失業率低下の評価

これまでの米国の失業率低下は労働参加率の低下を伴うものだったことから、必ずしも良い失業率低下ではないと評価されることがしばしばあった([第1図])。2013年12月時点で失業率は前年同月比-1.2%低下したが、これを要因分解すると、労働参加率要因が-1.2%、就業者要因が-0.9%、生産年齢人口要因が+0.9%となっている([第2図])。限界的な失業率低下は失業者の労働力人口からの退出で説明可能で、就業者増加は人口増加分を吸収しているのみとの見方もできる。

当レポートでもこれまでは、労働参加率低下を伴う失業率低下は良い内容ではないと見てきた。労働参加率低下が、景気悪化による労働力人口からの一時的人口流出(循環要因)であった場合、将来景気回復時に労働力人口に再流入することで失業率が再上昇する可能性があるからである。

しかし、これまで10年以上に亘り長期間の労働参加率低下が続いていることから、労働参加率低下はむしろ構造要因かつ人口動態等の構造要因に依存する部分が相応にある可能性が否定できなくなっている。以下この見方を検討していく。

[第1図]
20140113図1
[第2図]
20140113図2

男性の労働参加率は戦後一貫して低下、女性の参加率は2000年にピークアウトした

長期的な米国の労働参加率の推移を見てみよう。戦後労働参加率はほぼ一貫して上昇したのち、2000年にピークを付けたあと低下に転じ、現在に至るまでほぼ一貫して低下を続けている([第3図])。

2000年までの労働参加率上昇は戦後の経済拡大に加え医療や職場など社会環境の整備向上によるとされている。一方2000年以降の労働参加率低下は、ひとつにはITバブル崩壊により就業機会が大幅に低下しその後も大きな雇用を創出する技術革新がされていないという経済要因、また90年台後半からいわゆるベビーブーマー世代が引退を始めるなど高齢化という人口動態要因が指摘されている。これら長期的要因は構造要因といえる。

労働参加率の推移を男女別に見ると構造要因がより明瞭になる。男性の労働参加率は戦後現在まで一貫して低下しているのに対し、女性の労働参加率は戦後2000年にかけて上昇、その後低下に転じている([第4図])。男性の労働参加率が恒常的に低下している理由は主に高学歴化にあると考えられる。一方、女性の労働参加率は戦後2000年までは女性の社会進出拡大で継続上昇したが、2000年頃にそれが飽和点に達しその後ITバブル崩壊でピークアウトしたと考えられる。

[第3図]
20140113図3
[第4図]
20140113図4

若年層の参加率は低下、高齢層の参加率は上昇中

労働参加率を年齢層別に見ると、構造要因と循環要因の双方が見える。[第5図]は16~19歳(若年層、いわゆるティーンエイジャー)と、55歳以上(高齢層)の労働参加率の長期推移である。これによれば、若年層の労働参加率は70年代にかけて上昇したのちピークアウトしてその後現在に至るまでほぼ低下傾向をたどっている。高齢層の労働参加率は90年代にかけて低下のうち上昇に転じて現在までほぼ上昇を続けている。

ここから読み取れる構造要因は次の通りである。まず70年代以降の若年層の労働参加率低下は主に高学歴化によると考えられる。また90年代以降の高齢層の労働参加率上昇は、医療の進歩により高齢でも仕事を継続できる社会要因が寄与していると考えられる。

一方、循環要因も寄与していると考えられるのが、主に2000年代以降の若年層の参加率低下と高齢層の参加率上昇である。ITバブル崩壊と金融危機などにより景気が悪化すると、高齢層は収入確保のため通常の退職年齢以降も就業意欲が継続しやすい。一方不況期にはスキルに乏しい若年層の新規就業機会よりも熟練した高齢層の就業継続機会の方が高いと考えられる。結果若年層の労働参加率は低下し高齢層の参加率は上昇する。若年層と高齢層の労働参加率逆転は金融危機による景気悪化という循環要因である可能性が高い。

[第5図]
20140113図5

就業意欲ある非労働力人口の伸びは減速している

2008年の金融危機による景気悪化という循環要因が労働参加率低下に与えた影響を見てみよう。米労働省の雇用統計上、過去4週間求職活動を停止した人口は、労働力人口から退出したとみなされ「非労働力人口」に計上される。非労働力人口の中には景気悪化などにより一時的に求職活動を停止してもなお就業意欲がある人口が存在する。この「就業意欲のある非労働力人口not in labor force but want a job now」は、景気悪化という循環要因で一時的に労働力人口から退出したものの景気回復すれば求職を再開し労働力人口に復帰する可能性がある人口を含んでいることになる。

就業意欲のある非労働力人口の推移を見ると、2000年から金融危機まではほぼ横ばいだったのが、2008年金融危機を契機に急増し、その後2013年後半から減少の傾向が見られる。その内訳である縁辺労働力(「縁辺労働力marginally attached to labor force」や「求職意欲喪失者discouraged workers」は「就業意欲のある非労働力人口」に含まれる)も同様に金融危機以降急増したが、2011年をピークに緩やかに減少に転じている([第7図])。

就業意欲のある非労働力人口の増加率を非労働力人口全体の増加率と比較したのが[第8図]である。これによれば、金融危機以降就業意欲のある非労働力人口が非労働力人口全体の伸びを上回っていたが、直近2013年末には既にその伸びが全体の伸びにほぼ一致するまでに減速していることが分かる。就業意欲ある非労働力人口は金融危機後暫く非労働力人口増加の大きな要因であったが、景気回復とともにその伸びはマクロの人口増加にほぼ一致するまでに減速したことになる。

[第6図]
20140113図6
[第7図]
20140113図7

就業意欲ある非労働力人口の労働参加率低下への寄与はわずか

就業意欲のある非労働力人口の増加の労働参加率低下への寄与を試算したのが[第8図]である。2008年金融危機後約1年間は、就業意欲のある非労働力人口増加の労働参加率低下への寄与度が全体の労働参加率低下幅を上回っていたが、その後寄与度はほぼ横ばいから低下して現在は-0.2%となっている。一方労働参加率全体は一貫して低下を続けている。つまり、金融危機以降の労働参加率は金融危機による労働力人口からの一時退出という循環要因以外の要因で低下していることになる。[第8図]の就業意欲のある非労働力人口増の労働参加率低下への寄与度からは、今後景気回復が進んでも循環要因による労働参加率の上昇はたかだか+0.5%程度にとどまる計算になる。

循環要因以外の労働参加率低下要因は上記のとおり、高齢化による引退といった人口動態要因、高学歴化や女性社会進出の飽和化といった社会要因が考えられ、これらは構造要因とみなされうるものである。

なおこのほかに、雇用ミスマッチという構造要因が考えられる。産業構造の変化により職業スキルと労働需要がマッチしないことで労働力人口から退出した人口が相応にあると考えられる。スキル・教育不足により求職活動を停止した人口は統計上「求職意欲喪失者」に計上されることになっているが、アンケート調査形式による労働省統計ではその分別は定かではない。

[第8図]
20140113図8

労働参加率のうち循環要因は約1%にとどまる

次に純粋に統計的に労働参加率を構造要因(トレンド)と循環要因(サイクル)に分けることを試みる。[第9図]は、1983年以降の労働参加率の年次時系列データからトレンドを抽出したものである。これによれば、2010年から2013年の4年間の労働参加率実績はそのトレンドを下回っている。2013年の労働参加率実績(年平均)は63.2%で、同時期のトレンドである63.8%から‐0.6%下方乖離している([第10図])。なお、労働省月次統による12月末の労働参加率は62.8%にまで低下しており、これはトレンドから約-1%下方乖離していることになる。

ここからも、労働参加率変動のうちの循環要因は1%に満たず、今後労働人口への人口再流入があったとしても労働参加率の上昇余地はたかだか1%にとどまることになる。失業率が6.7%だった12月統計値からの試算では、労働参加率が+0.5%上昇して相当額の労働力人口と失業者が増加した場合、他の条件が同じとして失業率は約0.7%上昇して7.4%になる計算になる。今後労働参加率再上昇による失業率再上昇は7%台半ば(2013年半ば頃の水準)レベルまでを見込んでおけばよいことになる。実際には今後も継続的な就業者増加は失業率低下に寄与することから、現実的には失業率の一時的上昇があっても2014年末に6.5%までの失業率低下は十分可能と推測できる。

需給ギャップと失業率の相関からは、今後経済が3%成長しても失業率は2014年末時点で7%台半ばの高水準にとどまる計算になる。しかし、2012年を境に実際の失業率は需給ギャップからの推計値を下回り続けていて、下方乖離は拡大している(2013年5月28日付当レポート参照)。そこで、需給ギャップ以外に失業率を低下させる別要因があると考えざるを得ない。筆者個人予想においては、構造的な労働参加率低下の失業率への寄与の可能性を勘案し、2014年末時点の米国失業率予想を従前見通し比下方修正して6.5%とした(1月4日付当レポート参照)。

[第9図]
20140113図9
[第10図]
20140113図10

<参考文献>
本レポート作成に当たり以下の調査研究を参考とした。フィラデルフィア連銀とシカゴ連銀は最近の労働参加率低下を主に構造要因と、サンフランシスコ連銀は主に循環要因と見ている。なおバーナンキFRB議長は、資産購入ペース縮小を決定した昨年12月18日FOMC声明文後の記者会見で「労働参加率の低下は人口高齢化等長期影響のみならず、潜在的労働者の意欲喪失も反映している」と述べている。

Federal Reserve Bank of Philadelphia, “On the Causes of Declines in the Labor Force Participation Rate”, November 19, 2013.
Federal Reserve Bank of San Francisco, “Will Labor Force Participation Bounce Back?”, FRBSF Economic Letter, May 13, 2013.
Federal Reserve Bank of Chicago, “Explaining the decline in the U.S. labor force participation rate”, Chicago Fed Letter, March 2012.
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