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<経済指標コメント>米4月実質個人消費は‐0.3%減

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[日本]

実質家計消費支出(4月、2人以上の世帯)は前年比-4.6%
消費税率引き上げ後初の家計調査、4月の実質家計消費支出(2人以上の世帯)は前年比-4.6%と、駆け込み需要で増加した3月の同+7.2%から大幅反落した。季節調整済指数の前月比の伸び率は-13.3%と、3月の同+10.8%増を上回る落ち込み額となっている。実質消費支出が減少した主な品目は家具・家事用品(前月比-18.7%)、食料(同-6.9%)、被服及び履物(同-6.0%)など。一方名目ベースの消費支出は前年比‐0.7%と前月の同+9.3%から大幅反落したがその減少は実質ベースに比べ小幅にとどまっている。消費者は消費税引き上げ後も名目金額での消費はほとんど減らしていないといえる。実質ベースでは3月の支出増以上の反落となったが、買い溜め在庫縮小とともに消費支出は再び増加に転じると見る。
20140531図1

全国消費者物価指数(4月)は前年比3.4%、生鮮食品を除く総合指数は前年比+3.2%
4月の全国消費者物価指数は前年比3.4%(3月同+1.6%)、生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は同+3.2%(3月は同+1.3%)といずれも消費税引き上げの影響で上昇幅が拡大した。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は同+2.3%(3月は同+0.7%)。3月と比較した4月の前年比伸び率の拡大幅は、総合指数が+1.8%、コア指数が+1.9%、コアコア指数が+1.6%。コア指数の上昇幅拡大への寄与度は食料(寄与度差+0.65%)が圧倒的に大きく、教養娯楽(同;0.33%)、家具・家事用品(同+0.12%)、ガソリン(同+0.12%)がこれに続いている。電気代、都市ガス代、プロパンガス、固定電話手数料については4月の指数には旧税率を適用する経過措置が適用されている。消費税の価格への転嫁はこうした一部の品目を除いてほぼ順調に行われているとみられる。なお、東京都区部消費者物価指数(5月中旬速報)は、総合指数が前年比+3.1%(前月同+2.9%)、コア指数同+2.8%(前月同+2.7%)と、上昇率拡大幅は縮小している。
20140531図2

完全失業率(4月)は3.6%(前月比横ばい)
4月の完全失業率は3.6%と2か月連続で前月比横ばい。水準は2007年以来の低水準を保っているものの低下ペースは鈍化している。内訳は就業者が前年比+0.4%、労働力人口同-0.2%、完全失業者同-12.7%(いずれも季節調整前)。労働力人口の伸びにやや頭打ち感がみられ、労働力化率(筆者試算)も59.2%と前月比-0.2%の低下で、労働市場のダイナミズムには引き続き飽和感がある。ただし今後労働力化率が再び上昇して需要増に見合う形での労働力供給拡大は可能とみる。
20140531図3

鉱工業生産指数(4月)は前月比-2.5%
4月の鉱工業生産指数は過去3ヶ月で2回目の低下となる前月比‐2.5%。今年の1月をピークに生産指数は頭打ちになっている。輸送機械や電子部品・デバイスなど主要業種の生産が軒並み減少している。製造工業の生産予測指数は5月見込みが前月比+1.7%、6月見込みが同-2.0%と、生産が減速する可能性を示唆している。出荷指数は3ヶ月連続の低下となる同‐5.0%。出荷減少とともに在庫も調整されており、在庫指数は前月比-0.5%、在庫率指数は同-1.8%の低下。生産の減速は消費税引き上げに伴う出荷減少予想に応じた一時的なものと見る。ただしこれが消費回復後も継続するようであれば新たなリスクとなりうる。
20140531図4

[米国]

耐久財受注(4月)は前月比+0.8%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同-1.2%、同出荷は同-0.4%
民間設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は、前月比-1.2%と2ヶ月ぶりの減少となったが、前月分が同+4.7%に大幅上方改定されており、受注の水準は依然高いといえる。GDP統計上の民間機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)も同-0.4%のマイナスだったが前月分が同+2.1%に大幅上方改定されている。1-3月期のGDP統計では民間設備投資が前期比マイナス成長に転化したものの、4-6月期には再びプラス成長に回帰すると見る。
20140531図5

実質個人消費(4月)は前月比-0.3%、個人消費支出価格指数は前年比+1.6%
4月の実質個人消費は前月比-0.3%と昨年12月以来の前月比マイナスの伸び。ただし3月分が同+0.8%、また1-3月期では前期比年率3.1%の強い伸びのあとであり、一時的な消費の軟化でありかつ消費の水準は高いといえる。4月は自動車販売の軟化を反映して耐久消費財消費が前月比-0.5%と減少、非耐久消費財が同‐0.3%、サービス消費が同-0.2%と軒並み減少した。新車販売台数の減少や小売売上の減速からはさほどのサプライズではない。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+1.6%と前月の同+1.1%から上昇幅が拡大した。エネルギー関連財・サービス中心に価格上昇が加速したのが主因。年後半にかけて消費者インフレ率が1.7%レベルにまで上昇するとの筆者の見方に沿った動きになっている。食料品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターは前年比+1.4%(3月は同1.2%)とこちらも上昇が加速している。
20140531図6

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<経済レポート>これからは供給力強化~日本のGDPギャップ

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黒田日銀総裁の「人手・投資不足を懸念」発言の通り、日本の需給ギャップは急速に縮小しており、今年中にも需要が供給を超過する見込みだ。しかし生産要素の労働力と資本はともに、労働力人口への再流入や設備稼働率引き上げによる増加の余地があり、潜在成長率上昇の可能性はある。なお、需給ギャップ縮小で日本はデフレ状態から脱したと考えられるものの、2%のインフレ目標達成への道のりはまだ長いと見る。

マイナスの需給ギャップは今年中に解消へ

黒田日銀総裁は、24日付日経新聞のインタヴューで「どうやって供給力を高めるか、政府、日銀、民間で考えて努力する必要がある」「労働市場を中心に(供給力と需要の差を示す)需給ギャップが急速に縮んできている」と述べている。黒田総裁指摘のとおり、2013年以降の成長加速で日本経済の需給ギャップは急速に縮小している。本レポートでは日本経済の需給ギャップの動向と、供給力を高めるための方策、また需給ギャップ縮小が経済に与える影響を見る。

日本経済の需給ギャップを2通りの方法で推計してみよう。まず内閣府は、1-3月期時点でマイナスのGDPギャップは‐0.3%に縮小、また潜在成長率を+0.7%程度と推計している(5月23日内閣府)。内閣府によれば、昨年10-12月期時点のGDPギャップは‐1.6%だった。1-3月期の成長率大幅拡大(前期比+1.5%、同年率+5.9%)でこのギャップが一気に縮小した形だ。筆者個人の予想では、今後GDP成長率は駆け込み需要の反動で4-6月期に一時的にマイナス成長に転化ののち、7-9月期以降プラス成長を回復するとみている。筆者個人の成長予想に基づけば、マイナスのGDPギャップは今年の10-12月期に解消する計算になる(第1図)。マイナスの需給ギャップが解消するのはリーマンショック直前の2008年以来およそ6年ぶりのこととなる。

次に、実質GDPの過去の推移からトレンドを抽出する方法で潜在GDPを推計し、これとの対比で需給ギャップを推計してみる。統計上連続性のある1994年~2013年の実質GDP実績値(暦年年次データ)を対数化しHPフィルターを用いて平滑化した結果が[第2図]である。平滑化により取り出したトレンドを潜在GDPとみなすと、2013年時点ですでにGDP実績値はトレンドを上回っている。すなわちこの方法によれば、昨年時点で日本経済のマイナスの需給ギャップは解消済で、需要超過の状態になっていたことになる。

[第1図]
20140529図1

[第2図]
20140529図2

デフレの間資本ストックは増加、労働投入量は減少を続けた

日本のデフレの要因の一つに、過剰生産設備や過剰労働力によるマイナスの需給ギャップ、つまり供給力が需要を上回っている状態があるとされてきた。しかしながら、リーマンショック後今日までの需要回復により需給ギャップはほぼ解消し、需要が供給を上回る状況が近づいていることになる。こうなると、需要不足を前提に考えられてきた経済政策や財政政策は大きな転換を迫られることになる。今後供給力不足の事態を回避するためには、労働力や資本という供給力を拡大して潜在GDPを需要に見合う形で引きあげる必要がでてくるからだ。

現在の日本の持続的な供給力拡大ペース、つまり潜在成長率は極めて低いとされている。前述のとおり内閣府は日本の潜在成長率を約+0.7%と推計している。オークンの法則を用いて、失業率を変化させない成長率としての潜在成長率を試算すると、ここでも潜在成長率は約+0.6~0.7%との結果になった([第3図])。一方で最近の日本の成長率は、2012年が前年比+1.4%、2014年が同+1.6%と潜在成長率を大きく上回っており、2014年は消費税率引き上げにも関わらず+2%台の成長を個人的には予想している。こうした総需要拡大の牽引役は個人消費である。成長には財政出動による公的需要も寄与しているものの、その寄与は2013年4-6月期をピークに低減している。国内民間最終需要(個人消費+住宅投資+設備投資)は駆け込み需要もあり2013年7-9月期以降拡大が加速している。需要拡大が財政政策による一時的なものでは必ずしもなく、民間内需主導による持続的なものである可能性が高いことに鑑みれば、供給力の拡大は重要な課題といえる。

GDP産出に当たり投入される生産要素は「資本」と「労働」である。これらの生産要素の中期的推移を見ると極めて明瞭な傾向が見て取れる。[第4図]によれば、過去20年間、労働投入量(就業者数×総労働時間)はほぼ一貫して減少基調にある。一方、ネット資本ストック(民間企業資本ストック-純除却額)はほぼ一貫して増加基調にある。つまり過去20年間の―いわゆるデフレの期間―雇用と労働時間は短縮し続けた一方、民間企業設備投資はほぼ継続的に拡大し続けたことになる。

[第3図]
20140529図3

[第4図]
20140529図4

労働生産性は資本の生産性に勝っている

そこで、今後供給力を拡大していくためには、資本ストックを更に増やすか、またはこれまで減少し続けてきた雇用と労働時間を拡大させるかのいずれかが必要ということになる。ところで、一般的に日本のネット資本ストック(企業設備投資)は余剰であるというのが一般的な生活感である。たとえば今年2月の製造工業の稼働率指数は104.9ポイント(2010年=100)で、リーマンショック直前の2008年2月につけたピーク119.4ポイントに比べてまだ低水準にある。また、ネット資本ストックのGDPに対する比率(資本係数)は、過去20年間上昇基調から横ばいに転じつつあるも、水準は極めて高い。つまり、過去20年間企業は経済成長を超えるペースでの設備投資拡大を継続してきたことになる。

それでもなお、マクロでみると日本の経済は供給力が不足しつつあるという背景には、資本生産性の低下の可能性が考えられる。資本係数はGDP一単位の産出に必要な資本の単位をも表しており、資本係数の上昇は産出一単位に必要な資本の額が増加している、つまり資本一単位当たりの産出量が低下していることを表す。資本係数の逆数である資本生産性(資本一単位当たりの産出量)は資本係数の上昇とは逆に過去20年間低下を続けている。一方、労働投入量は20年間減少基調にあることから、労働生産性(実質GDP/労働投入量=就業者の一時間当たり産出量)は一貫して上昇している([第6図])。なお、内閣府は潜在GDP推計における生産要素の投入量に平均概念(資本投入量=資本ストック×稼働率)を用いている。これに倣うならば資本生産性も稼働率勘案後の資本投入量で試算するのが整合的であるがここでは簡便に資本ストックで計算した。

これらの生産要素つまり労働投入量とネット資本ストックの、産出に対する関係を同時に表すために、以下のコブ・ダグラス型生産関数を考える。
  ln(Y)=α*ln(L)+β*ln(K)+ln(ɤ)
ここで、Yは実質GDP、Lは労働投入量、Kは資本ストック、αは産出の労働投入量に対する弾性値(産出の労働弾力性)、βは産出のネット資本ストックに対する弾性値(産出の資本弾力性)、ɤは全要素生産性を表す。1994年~2004年の四半期データを用いて、上記生産関数に基づき各弾性値を回帰分析により推計した結果が[第1表]である。推計においては、Lとして就業者数を用いた場合(①)と、労働投入量(=就業者数×総労働時間)を用いた場合(②)の2通りの推計を行った。結果、いずれの場合も有意性に一部弱さがみられるものの、産出の弾力性は労働投入量に対しての方がネット資本ストックに対してよりも大きいということを示唆する結果になった。つまり労働一単位の方が資本一単位の投入よりもより多くの産出をもたらすということである。これは、上記で見た労働生産性の上昇と資本生産性の低下という関係とも整合している。

[第5図]
20140529図5

[第6図]
20140529図6

[第1表]
20140529表1

労働力供給拡大は可能、あとは生産性向上が課題

労働力は、人口動態要因などの制約を受けるため設備投資に比べて供給の制御が一般的には困難である。日本は人口減少国であり人口動態的には労働力による供給力強化には大きな制約がある。また、完全失業率は現在4%を割り込む水準にあり、ほぼ自然失業率に近い水準にあるといえる。つまり需給ギャップが示唆するように労働市場もほぼ需給が均衡するまでに労働需要が拡大済ということである。しかし、今後も労働力の供給が拡大する余地は残っている。労働力率(「労働力人口」の「労働力人口+非労働力人口」に対する比率)は、金融危機以降一貫して低下を続けた後、2012年に底入れして現在は上昇基調に転じている([第7図])。つまり金融危機による景気後退でいったん労働市場から退出した人口が景気回復とともに労働市場に再流入している。失業率自体は現状以下に低下する余地がなくとも、労働力人口の増加により労働力の供給拡大は可能ということになる。資本については、設備稼働率に上昇余地があることから、追加設備投資を伴わずともある程度の供給力拡大は可能である。

労働・資本の生産要素に加えて産出を決定するもう一つの要因である生産性についてはその向上が潜在成長率引き上げには有効である。上記[第1表]の②の推計式から試算した全要素生産性の伸び率の推移が[第8図]である。この試算によれば、全要素生産性の伸び率は金融危機直後の2009年をボトムに底入れしているものの、いまだ前年比マイナス圏にある。2000年代の生産性の大幅上昇時期との比較では現在の生産性は大幅に低下しているといえる。

最後に、需給ギャップとインフレ率の関係について述べておく。需給ギャップとインフレ率(生鮮食品を除く消費者物価の前年比伸び率)によるフィリップス曲線によれば、インフレ率をプラスに維持するためにはマイナスの需給ギャップが-2%以下に縮小することが必要となる。内閣府推計によれば、マイナスのGDPギャップが-2%を下回ったのは2013年4-6月期である。つまり2013年前半で日本経済はデフレから脱却したとほぼみなせることになる。一方、日銀が目標とする2%のインフレ率達成には、5%近い需要超過が必要になる計算となる。GDPギャップだけからは2%インフレの達成は正当化しにくいと依然言えるだろう。

[第7図]
20140529図7

[第8図]
20140529図8

[第9図]
20140529図9

<経済指標コメント>日本の機械受注は前月比+19.1%

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[日本]

機械受注(3月、船舶・電力を除く民需)は前月比+19.1%
3月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+19.1%と、前月の同‐4.6%から大幅反転増加した。結果1-3月期の機械受注は前期比+4.2%と前期の同+1.9%から伸びが加速。4-6月期の機械受注見通しは前期比+0.4%と、駆け込み需要の反動で伸びが減速する見通しとの結果になった。GDP統計上の民間企業設備は駆け込み需要もあり1-3月期に前期比年率+21.0%の大幅増加だった。消費税要因を除けば総じて企業設備投資は拡大加速基調にあり、日本経済拡大を個人消費とともに維持する要因になると見る。
20140524図1

[米国]

中古住宅販売戸数(4月)は年率4,650千戸(前月比+1.3%)
4月の中古住宅販売戸数は年率4,650千戸(前月比+1.3%)と4カ月ぶりの前月比増加。今年1月の水準に回帰したのみではあるが、寒波の影響が剥落して再び住宅販売が活発化し始めたことを示唆している。また4月は販売在庫が2,290千戸と昨年11月以来の2百万戸台に回復、中古住宅の供給も再開している。結果在庫期間は5.9ヶ月と前月の5.1ヶ月から大幅に長期化して適正水準の6ヶ月に近づいている。中古住宅市場の需給の引き締まりは緩和されつつある。住宅市場がタイムリーな調整に向かうとの当レポートの見方に整合している(5月22日付<経済レポート>参照)統計公表元の全米不動産業協会(NAR)は「在庫の改善が消費者の選択の幅を広げ、販売は総じてここから増加トレンドに向かうはず」と述べている。なお、中央販売価格は前年比+5.2%と3ヶ月連続の伸び減速で、2012年3月以来の低い伸びに留まった。
20140524図2

新築住宅販売戸数(4月)は年率433千戸(前月比+6.4%)
4月分の新築住宅販売戸数は年率433千戸(前月比+6.4%)と3カ月ぶりの増加、ただし水準は今年2月のレベルにとどまっている。販売在庫は192千戸と前月の191千戸からほぼ不変、結果在庫期間は5.3ヶ月と前月の5.6ヶ月から短期化した。住宅建設の伸び鈍化により新築住宅は依然需給がタイトであることを示唆している。しかし今後は、寒波による悪影響の剥落により住宅着工の増加が見込まれ、新築住宅の需給も徐々に緩和されると見る。その結果中古市場同様に、新築住宅の販売も持続的な増加基調に転ずると見たい。
20140524図3

<経済レポート>タイムリーな調整へ~米住宅市場減速の状況

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住宅市場の軟化は米国の持続的経済回復に対する懸念要因とみられている。しかし、住宅市場軟化の背景は需要側よりも供給側の要因に相応に起因していると考えられる。中期的にみると住宅市場の需給は適度な水準に収斂しつつある。今後住宅供給が増加するとともに金利の緩やかな上昇が実現すれば、販売減速下での住宅価格上昇という歪みは解消され、住宅市場は適度なペースでの持続的拡大基調に乗れると見る。

FRBも住宅市場回復の遅さに懸念

米国の住宅市場が減速している。GDP統計上の実質住宅投資は、2013年10-12月期が前期比年率-7.9%、2014年1-3月期が同-5.8%と2四半期連続でマイナスの伸びとなった。米国の住宅販売の約9割を占める中古住宅販売は、昨年7月のピークから今年の3月までほぼ一貫して減少し、3月実績は年率4,590千件とピークから約-15%減少している。FOMCは4月の定例会合後の声明文で「住宅セクターは弱いままである」との基調判断を示している。イエレンFRB議長は7日の米議会合同経済委員会での証言で「ひとつ注意すべきは、住宅セクター―2011年以来回復しつつあるセクターのひとつ―の活動指標は今年に入りこれまで失望させられるものにとどまっており、今後も注視を要する」と述べている。

1-3月期のGDP統計上の住宅投資がマイナス成長になったことで、2014年通年の住宅投資は前年の前年比+12.2%から大幅に減速して同3%前後の伸びに留まる計算になる。全米不動産業協会(NAHB)は2日付の住宅・金利予測において、2014年の住宅着工件数を1,086千件(昨年の929千件に比べ+16.9%の増加)と予測している。しかし今年1月~4月の住宅着工件数の月次平均の実績は年率961千件で、NAHB予測を大幅に下回るペースにとどまっている。

ただ、過去半年強の住宅市場の軟化は需要後退による一方的な軟化ではない。住宅販売在庫減少という供給側の要因や、年末年始の寒波による悪天候要因による一時的要因もある。また中期的には住宅市場は調整要因と回復要因が収斂している状況といえる。本レポートでは、住宅市場の建設と販売の両面からその軟化の背景を見る。

住宅着工の変動は統計要因の可能性

四半期毎のGDP統計上の実質住宅投資と、その基礎統計となる住宅着工件数の推移が[第1図]である。GDP統計上の住宅投資は昨年10-12月期に前期比でマイナスに転じたのち、今年の1-3月期も連続してマイナス成長だった。しかし、基礎統計の住宅着工件数の方は必ずしも一方的な減少を示してはいない。悪天候による影響を受けた1-3月期を除けば、昨年7-9月期以来今年の4月まで、4四半期中3四半期で住宅着工は前期比増加している。この統計間の不整合が一時的な統計の期ブレと考えるならば、天候回復後の3月、4月にほぼ寒波前の水準に回復した住宅着工の増加に合わせ、4-6月期のGDP統計上の住宅投資も再びプラス成長に回帰すると見ることができる。

直近の住宅着工件数統計によれば、住宅着工件数は1月に年率897千件のボトムを付けたのち、2月、3月と連続して増加し、3月時点では年率1,072千件と4カ月ぶりの1,000千件を回復した。また住宅着工の先行指標となる住宅着工許可件数も3月時点で年率1,080千件と3カ月連続で1,000千件台を維持している(5月17日付<経済指標コメント>参照)。着工に比べて相対的に天候の影響を受けにくい許可件数が安定した水準を保っていることは、今後住宅建設が安定定期に増加することを示唆している。

[第1図]
20140522図1

住宅販売減少は供給側にも要因がある

次に住宅販売市場の需給を見る。米国住宅販売市場の9割を占める中古住宅販売は過去約2年間減少基調にある([第2図])。一方で、販売市場の需給を表す在庫期間(販売在庫戸数÷月次販売戸数)は過去2年にわたり約5ヶ月前後を保っている。つまり住宅を市場に出してから売れるまでの期間が平均5ヶ月ということである。元来、米国の住宅販売在庫期間は6ヶ月レベルが標準と考えられており、現状の短い在庫期間は需要に対して在庫供給が極めてタイトであることを示唆している。

中期的に、過去約10年間の中古住宅の販売戸数と在庫水準の推移を見ると[第3図]のようになる。販売戸数は住宅バブル崩壊による急減を経て2011年頃から増加基調に転じている。一方で販売在庫はバブル崩壊で増加した抵当権実行で急増したのち、2007年頃をピークに今日まで減少基調にある。更に最近では抵当権実行率の低下により競売物件が従前のように市場に供給されなくなっている。かように住宅市場の需給がタイトであることが、販売減速にもかかわらず住宅価格が2桁の上昇を続けている(S&Pケースシラー20都市住宅価格指数は2月現在で前年比+12.1%の伸び)背景になっている。

同様の傾向は新築住宅市場でも見られる。[第4図]によれば、新築住宅販売戸数は2011年に底入れして緩やかな増加傾向に転じたが、販売在庫はその後も低水準での減少基調を続けた後、漸く昨年に底入れした。需要の増加にも関わらず新築住宅販売在庫の増加ペースが加速しないことは、住宅建設の供給能力に制約があることを示唆している。これらの状況証拠からは、住宅販売市場の減速は必ずしも需要の後退によるものではなく、供給側にもその要因があるとみてよさそうだ。

[第2図]
20140522図2

[第3図]
20140522図3

[第4図]
20140522図4

タイトな信用基準が需要を抑制している可能性

次に住宅の需要側の要因を見てみる。住宅建設業者の景況感を表すNAHB住宅市場指数の中期的な動きを見ると、昨年後半頃にやや頭打ち感はあるものの、その水準は決して低くはない。住宅市場に訪れる消費者の購買意欲は多少の減速はあれどもまず平常の水準にあるといってよい。

購買意欲のレベルにも関わらず住宅販売が減速している背景には、住宅ローンによる信用供与に制約があることが考えられる。FRBの資金循環統計によれば、家計の住宅ローン負債残高は住宅バブル崩壊後、直近の統計である2013年10-12月期に至ってもなお減少基調が続いている。クレジットカードや自動車ローンなどの消費者ローン残高が2010年に底入れしたのと対照的である([第6図])。FRBのシニアローンオフィサー・サーベイによれば、住宅ローン(プライムローン)の信用条件を厳格化した銀行の数は、2014年第1四半期に7四半期ぶりに信用条件を緩和した銀行の数を上回り、第2四半期でも同様の結果になっている。

また、住宅ローン金利の上昇も需要抑制の要因になっている可能性がある。30年物固定モーゲージ金利は、FRBによる追加金融緩和(QE3)開始直後の2012年末に3.4%にまで低下した。しかしその後モーゲージ金利はQE3実施にかかわらず上昇に転じ、4月現在でボトム比1%近く高い4.3%に上昇している。もっとも経験則では、住宅ローン金利が6%を超えない限り金利水準自体が住宅ローン借入需要の決定要因ではない。短期的に金利上昇が消費者をして借り入れ見送りをさせている可能性はあるが、現状程度の金利水準が住宅販売需要を大きく抑制しているとは考えにくい。むしろ信用条件厳格化の方が需要を抑制していると見たい。

[第5図]
20140522図5

[第6図]
20140522図6

住宅建設決定要因の影響度は拮抗しつつある

最後に、持ち家比率・賃貸需給・販売需給を説明変数とし、住宅建設(GDP統計上の実質住宅投資)を被説明変数とした回帰分析をアップデートする(1月4日付当レポート参照)。各決定要因の推移を見ると、まず持家比率は依然低下基調にあるもののその低下ペースはやや軟化している。賃貸需給を表す貸家空室率もここ4四半期ほどは下げ止まりの傾向がみられる([第7図])。賃貸需給を表す中古住宅販売在庫期間は上記の通り約5ヶ月という低水準にあるものの、短期化が加速する状況にはない。これらの状況はこれまでの住宅建設抑制要因(持家比率)と押し上げ要因(賃貸需給・販売需給)がいずれもその影響度を縮小してきていること、また近々これらの要因が住宅建設に与える影響の方向が反転する可能性もあることを示唆している([第8図][第1表])。

全米不動産業協会(NAR)は、4月22日のニュースリリースで「現状の販売状況は過去の標準的水準を下回っている」「米国の人口増加に照らせばより多くの住宅販売があってしかるべき」「一方で住宅価格上昇は在庫不足から標準的なペースを上回っている」と現在の中古住宅市場をひょうしている。これは在庫不足が販売戸数を制約する要因になっていることを裏付ける現場の評価といえる。

総じて、米国の住宅販売市場・建設市場はやや軟化しているものの、供給不足で価格が上昇するというやや歪んだ構造になっているといえる。むしろ今後住宅供給が増加して金利上昇により需給が適度に緩和されることで、現状の住宅価格上昇がバブルに繋がることが回避されると見たい。その意味でもFOMCの緩和縮小継続と来年の利上げ開始シナリオは適切なタイミングを反映したものと言えるだろう。

[第7図]
20140522図7

[第8図]
20140522図8

[第1表]
20140522表1


<経済指標コメント>日本の1-3月期実質GDPは+5.9%増

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[日本]

景気ウォッチャー調査(4月):現状判断DIは41.6(前月比-16.3ポイント)、先行き判断は50.3(同+15.6ポイント)
4月分景気ウォッチャー調査による現状判断DIは41.6ポイントと前月比-16.3ポイントの大幅低下。消費税引き上げ後の駆け込み需要の反動減が主因と考えられ、消費税の影響を受けやすい家計動向関連DIが37.2ポイント(同-19.8)の大幅低下だった。一方、先行き判断DIは50.3ポイントと同+15.6ポイントの大幅上昇、うち家計動向関連DIは49.8ポイント(同+18.5ポイント)の大幅上昇。先行き判断の良い理由として「まとめ買い在庫も2、3ヶ月先にはなくなる」「賃金ベースアップ」「反動減が思ったほどな」いことなどが挙げられている。筆者は、消費税引き上げ後の需要反動減は駆け込み需要と同じ額にとどまり、全体として消費税引き上げの需要への影響はニュートラルと見ているが、今回の調査はこれを支持する内容で、反動減は限定的かつ一時的にとどまることを示唆している。
20140517図1

実質GDP成長率(1-3月期)は前期比年率+5.9%
1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+5.9%の大幅増。筆者個人予想の同+4.1%を大幅に上回った。成長を押し上げたのは個人消費で、家計最終消費支出は同+8.6%の大幅増で成長を+5.0%押し上げた。民間住宅は同+12.9%、民間企業設備も同+21.0%の2ケタ成長に急伸した。いずれも消費税引き上げ前の駆け込み需要が成長を押し上げた形。意図せざる在庫減局面にある民間在庫品増加はペースを弱め成長を-0.7%押し下げ、公的需要も前期比年率-1.5%のマイナス成長となった。純輸出は輸出の大幅な回復で成長への寄与度+0.1%と3四半期ぶりの成長プラス寄与となった。駆け込み需要が想定以上に強かったことで、経済成長は筆者予想より上ぶれて推移している、4-6月期は反動減でマイナス成長を見込むが、2014年通年は現状の筆者予想前年比+1.9%に対し2%超、2014年度は筆者予想同+2%に対し2%弱の成長が可能な計算になる。なお、昨年7-9月期の成長率は前期比年率+1.3%に上方改訂、10-12月期は同+0.3%に下方改訂された。通年の成長率は2013年暦年が前年比+1.6%、2013年度が前年度比+2.3%。年度ベースでは3年度ぶりに2%を超える成長を実現したことになる。
20140517図2

[米国]
小売売上高(4月)は前月比+0.1%、除く自動車関連は前月比横ばい
4月の小売売上高は前月比+0.1%と弱めの伸びにとどまった。しかし前月分が同+1.5%に上方改訂(速報値は同+1.1%)されており、寒波の影響剥落後の強い個人消費は維持されているといえる。前年比の小売売上高の伸びは+4.0% と前月の同+4.1%に続き2ヶ月連続で4%台の高水準を維持した。4月に売上が不振だったのは家電店(前月比-2.3%)、家具店(同-0.6%)など。家電店は売上高の振れの大きい業種であり、家具店は寒波時期の住宅販売の一時的な減少を反映しているといえ、個人消費が堅調との見方に変更を要する内容ではない。GDP統計上の個人消費の基礎統計となる、自動車・建設資材・ガソリン・レストランを除くベースでは前月比横ばい。
20140517図3

企業在庫(3月)は前月比+0.4%、企業売上高は同+1.0%
3月の企業在庫は前月比+0.4%と緩やかな伸びにとどまり、3ヶ月前対比の伸びも+1.3%と3ヶ月連続の減速。一方企業売上は寒波の影響剥落で前月比+1.0%と強い伸び、3ヶ月前対比では+0.8%と3ヶ月ぶりにプラスの伸びに転じた。結果在庫売上高比率は1.30と前月比横ばい。総じて企業在庫は調整局面にあるといえる。
20140517図4

消費者物価指数(4月)は前月比+0.3%(前年比+2.0%)、同コア指数は同+0.2%(同+1.8%)
4月の消費者物価指数は前月比+0.3%、同コア指数は同+0.2%といずれも強めの伸び。前年比では総合指数が+2.0%、コア指数が+1.8%と急伸し、それぞれ2013年7月、8月以来の水準に回帰した。4月の消費者物価を押し上げた品目はエネルギー(前月比+0.3%、前年比+3.3%)、うちガソリンが前月比+2.3%の上昇となっている。ガソリン価格上昇の背景は寒波期のガソリン需要低下の反動と考えられる。一方で暖房油は寒波期の需要が剥落して前月比-3.0%と2ヶ月連続の低下。米消費者物価上昇率は過去2年間概ね前年比2%を下回って推移してきたが、今後年後半にかけては2%台半ばに上昇すると見る。FRBがインフレ指標とする個人消費支出価格指数の伸びも現在前年比+1.1%に低迷しているがこれも年後半にかけ+1.7%レベルまで上昇すると引き続き見る。
20140517図5

鉱工業生産指数(4月)は前月比-0.6%、設備稼働率は78.6%(前月比-0.6%ポイント)
4月の鉱工業生産指数は予想外に前月比-0.6%の低下。内訳は製造業が同-0.4%、鉱業が同+1.4%、電力・ガス等の公益事業が同-5.3%と、寒波期の需要増の反動と思われる公益事業が指数を押し下げている。一方在庫調整のためか製造業の指数が3ヶ月ぶりに低下している。これらにより設備稼働率は大幅低下の78.6%。
20140517図6

住宅着工件数(4月)は年率1073千件(前月比+13.2%)、同許可件数は1080千件(同+8.0%)
4月の住宅着工件数は年率1073件(前月比+13.2%)と急増、2ヶ月連続の増加で水準は昨年11月以来の水準に回帰した。寒波の影響で一時的に住宅着工が減少していたがその影響はほぼ剥落したといえる。住宅着工許可件数は同1080千件(+13.2%)とこれも大幅増加。4-6月期には住宅着工が前期比で大幅に増加に転じるペースで、GDP統計上も4‐6月期は住宅投資が3四半期ぶりに成長にプラス寄与すると見る。
20140517図7


<経済レポート> 年後半にかけ上昇と見る~米国消費者インフレ率

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米国のインフレ率は、FOMCの目標とする2%をほぼ過去2年に亘り下回って推移している。しかし、このインフレ率低下は、エネルギー価格低下や住宅販売の一時的減少を背景とするものといえる。一方で、失業率低下に伴い時間当たり賃金の上昇率が加速しており、需給ギャップやインフレ期待もより高いインフレ率を示唆している。年後半にかけて消費者インフレ率は1.7%レベルに上昇するとの見方を維持する。

米国の消費者インフレ率には底入れ感がある

米国の消費者物価指数(CPI)の前年比の伸びは過去約2年間2%を下回って推移しており、3月時点で総合指数が同+1.5%、コア指数は同+1.7%となっている(4月19日付<経済指標コメント>参照)。FRBがインフレ目標の指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の伸びは更に低く、3月時点で総合指数が前年比+1.1%、コア指数が同+1.2%と、FRBのインフレ目標である2%を過去2年間下回っている。

しかしより短期的な、6ヶ月前対比のCPIの伸び率(年率)は、3月時点で総合CPI、コアCPIいずれも+1.8%の水準にあり、前年比の伸び率を上回っている([第1図])。これは短期的に消費者インフレ率が底入れしている可能性を示唆するものである。

当レポートでは従前より、現在のインフレ率は理論値に比して低すぎることから年末にかけてPCEデフレーターの前年比の伸び率は1.7%レベルにまで上昇すると見てきた。本レポートではこの見方を支持する要因を改めて検証してみる。

[第1図]
20140511図1

エネルギー価格、住宅販売の回復がインフレ率上昇の鍵

CPIインフレ率の低下要因をその品目別に見てみる。まず総合CPIを押し下げているのはエネルギー関連品目である。CPIのうちのエネルギー価格は3月時点で前年比+0.4%の上昇にとどまっている。うちガソリン価格が同-4.7%と大幅に低下している([第2図])。米エネルギー情報局(EIA)によれば、全米の1ガロン当たりガソリン価格は、2012年4月に3.9ドルのピークを付けたのちほぼ横ばいから低下基調にあり、2012年の平均価格3.62ドルに対し、2013年は3.51ドル、2014年に入ってからは3月時点で3.53ドルレベルにある。もっとも今年の1月、2月は寒波の影響でガソリン需要が低下したことが価格が一時的に3.3ドル台にまで低下していた。一方でWTI原油価格先物は今年に入り1バレル=100ドル前後で概ね安定推移している。今後については、米国のロシアに対する経済制裁などどちらかといえば原油価格には上昇圧力がかかりやすい環境である。

エネルギー及び食料品を除くコアCPIの構成品目のうち指数押し下げに寄与しているのは、衣服・新車(乗用車)・住宅造作備品(家具・家電等)である([第3図])。衣服価格の低下は原材料価格の低下を反映したもの、また新車価格は年末にかけての新車販売の一時低迷の反映と考えられる。また住宅に関連する家具・家電製品価格の低下は、昨年来の住宅販売戸数の減少の反映と考えられる。

原油価格は今後上方圧力があり、新車販売は4月に大幅に増加した。住宅販売は依然減少傾向ではあるが、住宅市場の需給はまだタイトであり、住宅の供給が追い付けば再び住宅販売は増加に転じる可能性が高い。

[第2図]
20140511図2

[第3図]
20140511図3

時間当たり賃金の上昇がCPIに先行して加速している

次に消費者物価上昇圧力の一要因としての賃金上昇圧力をみてみよう。[第4図]によれば、CPIの上昇に先行して時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)の伸び率が底打ちの後加速しつつあることが分かる。時間当たり賃金上昇率は2008年のリーマンショック以降失業率の上昇と共に低下を続けたが、2012年に底入れし、今年の4月時点では前年比+2.3%にまで回復している。

失業率と時間当たり賃金の関係を示すシンプルなフィリップス曲線によれば、現在の失業率(4月時点で6.3%)は、時間当たり賃金の伸びの前年比+2%台後半に概ね相当する([第5図])。したがって、今後は賃金上昇がインフレ率の押し上げ要因のひとつになると考えられる。

もっとも4月のFRB地区連銀経済報告(ベージュブック)によれば「殆どの地区で賃金圧力は抑制されているか最低限である」とされている。2%台の賃金上昇率は歴史的には決して高くはないが、今後失業率が自然失業率の5.5%に近づくにつれて、その伸びを加速させることが期待できる。

[第4図]
20140511図4

[第5図]
20140511図5

需給ギャップと期待インフレ率との回帰では1.7%が適正水準

更に、需給ギャップと期待インフレ率を説明変数、コアPCEデフレーターを被説明変数とする回帰分析を行う。需給ギャップは米議会予算局の「予算・経済見通し(2014年2月)」における同局推計の米国潜在GDPから筆者が試算、期待インフレ率はミシガン大学消費者センチメント調査における12カ月後の期待インフレ率を用いた(なお、過去に失業率と期待インフレ率を説明変数とする同様の回帰分析を行った―3月23日付当レポート参照―が、最近の失業率の急低下により説明力が低下したことから、ここでは失業率に替えて需給ギャップを説明変数に用いることとした)。

結果は[第6図]と[第1表]の通りで、両方の説明変数はいずれも有意となり、現在の需給ギャップと期待インフレ率に相当するコアPCEデフレーターの前年比の伸び率は約+1.7%との結果になった。つまり現在のインフレ率は理論値に比べてやや低すぎるとの結果がここでも出たことになる。以上より、米国の消費者インフレ率は、年後半にかけて+1.7%レベルにまで上昇するとの筆者個人予想を維持する。

因みに、FOMC委員による経済予測(3月時点)によれば、コアPCEデフレーターの前年比の伸び率予測の中心傾向は2014年(第4四半期の前年同期比)が1.4~1.6%、2015年(同)が+1.7~2.0%となっている。筆者個人予想はFOMC委員予想の中心傾向にくらべればやや強気予想ということができる。しかし、インフレ率が今後1~2年をかけて2%の政策目標に回帰するとの見方は同じであり、金融政策についても、年内にFRBの資産購入停止と来年の利上げ開始予想に整合している。

[第6図]
20140511図6

[第1表]
20140511表1


<経済指標コメント>米4月非農業部門雇用者数は288千人増

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[日本]
全国消費者物価指数(3月)は前年比+1.6%、生鮮食品を除く総合指数は前年比+1.3%
3月の全国消費者物価指数は前月比+0.3%、前年比+1.6%の上昇と、2ヶ月連続で前年比の伸びを加速させた。生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は前月比+0.3%、前年比+1.3%と、2ヶ月連続で前年比の伸び率が横ばいにとどまった。内訳をみるとエネルギーの寄与度が引き続き高く、総合指数の前年比の伸びを+0.54%押し上げ、うち電気代は同じく+0.35%押し上げている。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は前月比+0.3%、前年比+0.7%と、前年比の伸びが前月の同+0.8%から減速している。総じて消費者インフレ率の伸びは減速しつつある。需給ギャップとインフレ率との関係からも、消費税効果を除くインフレ率が2%に達するのは2015年中には困難との見方を維持する。なお、消費税率引き上げ後の物価指標である東京都区部消費者物価指数(4月中旬速報)は、総合指数が前年比+2.9%(前月同+1.3%)、コア指数が同+2.7%(前月同+1.0%)、コアコア指数が同+2.0%(前月同+0.4%)といずれも急上昇しているものの、消費税率上昇のすべてが反映されているとは言えないようだ。
20140506図1
鉱工業生産指数(3月)は前月比+0.3%
3月の鉱工業生産指数は前月比+0.3%と前月の同-2.3%からやや持ち直し、中期的な上昇基調を維持した。一方出荷指数は同-1.2%と前月の同-1.0%に続き2ヶ月連続の低下。在庫指数は同+1.8%と前月の同-0.9%から上昇、在庫率も同+2.6%と2ヶ月連続の上昇となった。総じて生産・出荷の増加により在庫が減少するサイクルにある中、在庫循環は在庫積み増し局面に入っていると見ている。ただし3月単月では出荷減少が続いていることから、在庫増がいまだ意図せざるものである可能性もある。今後出荷が増加に転じることで本格的な生産・在庫増加局面に入るかに注目する。
20140506図2
完全失業率(3月)は3.6%(前月比横ばい)
3月の完全失業率は3.6%と前月比横ばいだったか、依然2007年以来の低水準を維持した。内訳は就業者が前月比+0.2%増、完全失業者数は前月の-3.7%減の反動で同+1.3%増加、労働力人口は前月比+0.2%の増加(いずれも季節調整値)。総じて労働力人口の伸びには減速感が見られ、労働参加率は3月現在で59.4%(筆者試算)と昨年11月のピーク59.6%以来頭打ちになっている。労働市場のダイナミズムが飽和状態になりつつあることと、今後の失業率低下ペースは低下する可能性があることをこれらの数値は示唆している。
20140506図3
実質家計消費支出(二人以上の世帯、3月)は前年比+7.2%
3月の実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前年比+7.2%と、前月の同-2.5%から急増した。消費税率引き上げ前の駆け込み需要は2月まで予想より低迷していたが、3月には相応の需要が示現したといえる。集計元の総務省による「駆け込み需要が見られたおもな品目」の中では、家庭用耐久財のうちのエアコン・電気冷蔵庫・電気掃除機が前年同月比実質ベースで300%を超える増加を見せている。
20140506図4

[米国]
実質GDP成長率(1-3月期)は前期比年率+0.1%
1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.1%にとどまった。2四半期連続の減速かつ2012年10-12月期以来の低成長となる。筆者個人予想(同+1.5%)と比較すると、個人消費が大きく上ぶれ、設備投資・住宅投資・純輸出が大幅下振れした形だ。もっとも内容は表面の数字ほど悪くはない。個人消費は同+3.0%と、寒波の影響にも関わらず2四半期連続の3%成長を実現した。成長を押し下げたのは他の需要項目で、設備投資同-2.1%、住宅投資同-5.7%、また在庫投資は寄与度-0.57%、純輸出は同-0.83%だった。特に財・サービス輸出が前期比年率-7.6%、同輸入が同-1.4%の減少で、輸出の大幅減が成長の押し下げ要因となった。設備投資は非国防資本財出荷の1-3月期の増加にも拘わらずGDP統計では機器投資がマイナス、住宅投資も悪天候による住宅着工の減少でマイナス成長だった。もっとも今後は、資本財受注の増加や天候回復による住宅着工の回復が見込まれ、企業部門も4-6月期には成長にプラス寄与すると見る。2014年通年の成長率は筆者予想の前年比+2.4%から下振れリスクが出てきたものの、2%台の成長は可能との見方を維持する。
20140506図5
実質個人消費(3月)は前月比+0.7%、個人消費支出価格指数は前年比+1.1%、同コアは同+1.2%
3月の実質個人消費は前月比+0.7%の強い伸び、また2月分も同+0.4%に上方改訂(速報値は同+0.2%)され、寒波の悪影響にも拘わらず1-3月期の実質個人消費は前期比年率+3.0%の力強い成長となった。内訳をみると、寒波の影響で1月に同-0.8%と大きく減少した財消費が2、3月に回復し、3月の財消費は同+1.4%の強い伸び。内訳は耐久消費財が同+2.7%、非耐久消費財が同+0.9%の増加で、3月の自動車販売の急増を反映して耐久消費財が消費をけん引した。一方寒波時の暖房需要等で1月に同+0.6%に急増したサービス消費は落ち着きを見せ3月は同+0.4%だった。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+1.1%と、2月の同+0.9%からやや伸びを加速させた。中期的にみるとPCEインフレ率には底入れ感がみられる。現在のPCEインフレ率は需給ギャップと比較してやや低すぎる水準にあり、今後年後半にかけて1%台半ば~後半に上昇すると見る。
20140506図6

ISM製造業指数(4月)は54.9%(前月比+1.2%ポイント)
4月のISM製造業指数は54.9%(前月比+1.2%ポイント)と3カ月連続の上昇、悪天候の影響と思われる12月、1月の急低下から持ち直している。総合DIを構成する5DIの内訳は、新規受注55.1%(前月比横ばい)、生産55.7%(同-0.2%ポイント)、雇用54.7%(同+3.6)、入荷遅延55.9%(同+1.9)、在庫53.0%(同+0.5)と、受注・生産がほぼ前月並みの水準を維持した。また4月は雇用DIが大幅に上昇しており、悪天候による一時雇用削減の終了を示唆している。
20140506図7
新車販売台数(4月)は年率16.0百万台(前月比-0.3百万台)
4月の新車販売台数は年率16.0百万台と、前月比-0.3百万台の減少だったが、2か月連続で16百万台台の高水準を維持した。悪天候による12月~2月の一時的落ち込みからの回復とともに、前年比でも+5.3%と2カ月連続で前年同月の販売を大きく上回っており、過去2年との比較でも自動車販売の本格的な増加基調への回帰を示唆している。
20140506図8
製造業受注(3月)は前月比+1.1%、非国防資本財受注(除く航空機関連)は前月比+3.5%、同出荷は同+1.5%
製造業受注は2カ月連続の増加となる+1.1%の強めの伸び。民間設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+3.5%と2013年1月以来の強い伸びとなった。GDP統計上の機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は同+1.5%とこれも強い伸び、1-3月期の同出荷は前期比年率+2.8%と2四半期連続のプラス成長となり、企業設備投資が徐々に拡大に転じつつあることを示唆している。なお、同出荷は4月公表の速報(耐久財受注統計)時点の同+1.0%から+1.5%に上方改訂されている。1-3月期GDP統計では企業の機器投資が予想外のマイナス成長だったが、今後これは上方改訂される可能性がある。
20140506図9
非農業部門雇用者数(4月)は前月比+288千人、失業率は6.3%
4月の非農業部門雇用者数は前月比+288千人と2012年1月以来の大幅な増加、かつ3ヶ月連続で200千人を上回る増加となった。事業所調査によれば非農業部門の内訳は民間部門が同+273千人、政府部門が同+15千人。3月に比べて雇用増加が加速した主な業種は、建設(同+32千人)、小売(同+34.5千人)、専門ビジネスサービス(同+75千人)と、いずれも寒波の影響で一時的雇用悪化があったと見られる業種で、これらが天候回復で回復したことを示唆している。週平均労働時間(生産及び非監督労働者)は33.7時間と前月比横ばい。時間当たり賃金(同)は20.50ドルと前月比+0.03ドル増、前年比では+2.3%増と先月の同+2.2%からやや伸びが加速した。家計調査では、失業率が6.3%と前月比-0.4%の大幅低下。ただし内訳をみると労働力人口が前月比-806千人、労働参加率が62.8%(前月比-0.4%)と低下しており、就業者数は同-73千人、失業者は-733千人減だった。おもに労働力人口からの人口流出による失業率低下であって、見かけほどよい数字ではない。ともあれ、FOMCがゼロ金利政策継続の閾値として1月声明文まで採用していた失業率6.5%を現実に下回った。今後も雇用者数は前年比1.5%~2%、時間当たり賃金は2%台半ば~後半の伸びを維持し、インフレ率差し引き後で2%台の実質個人消費を支える所得が維持されると見る。なお、FOMCは4月29‐30日の定例会合で、毎月の資産購入ペースを更に100億ドル縮小して毎月450億ドルとすることを決定した。インフレ率の底入れの兆し、非農業部門雇用者数増加ペースの加速、失業率の低下いずれもがFRBによる資産購入ペース縮小継続を支持している。FRBは年内に資産購入を停止し、来年2015年に利上げを開始するとの見方を維持する。
20140506図10