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<経済レポート>タイムリーな調整へ~米住宅市場減速の状況

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住宅市場の軟化は米国の持続的経済回復に対する懸念要因とみられている。しかし、住宅市場軟化の背景は需要側よりも供給側の要因に相応に起因していると考えられる。中期的にみると住宅市場の需給は適度な水準に収斂しつつある。今後住宅供給が増加するとともに金利の緩やかな上昇が実現すれば、販売減速下での住宅価格上昇という歪みは解消され、住宅市場は適度なペースでの持続的拡大基調に乗れると見る。

FRBも住宅市場回復の遅さに懸念

米国の住宅市場が減速している。GDP統計上の実質住宅投資は、2013年10-12月期が前期比年率-7.9%、2014年1-3月期が同-5.8%と2四半期連続でマイナスの伸びとなった。米国の住宅販売の約9割を占める中古住宅販売は、昨年7月のピークから今年の3月までほぼ一貫して減少し、3月実績は年率4,590千件とピークから約-15%減少している。FOMCは4月の定例会合後の声明文で「住宅セクターは弱いままである」との基調判断を示している。イエレンFRB議長は7日の米議会合同経済委員会での証言で「ひとつ注意すべきは、住宅セクター―2011年以来回復しつつあるセクターのひとつ―の活動指標は今年に入りこれまで失望させられるものにとどまっており、今後も注視を要する」と述べている。

1-3月期のGDP統計上の住宅投資がマイナス成長になったことで、2014年通年の住宅投資は前年の前年比+12.2%から大幅に減速して同3%前後の伸びに留まる計算になる。全米不動産業協会(NAHB)は2日付の住宅・金利予測において、2014年の住宅着工件数を1,086千件(昨年の929千件に比べ+16.9%の増加)と予測している。しかし今年1月~4月の住宅着工件数の月次平均の実績は年率961千件で、NAHB予測を大幅に下回るペースにとどまっている。

ただ、過去半年強の住宅市場の軟化は需要後退による一方的な軟化ではない。住宅販売在庫減少という供給側の要因や、年末年始の寒波による悪天候要因による一時的要因もある。また中期的には住宅市場は調整要因と回復要因が収斂している状況といえる。本レポートでは、住宅市場の建設と販売の両面からその軟化の背景を見る。

住宅着工の変動は統計要因の可能性

四半期毎のGDP統計上の実質住宅投資と、その基礎統計となる住宅着工件数の推移が[第1図]である。GDP統計上の住宅投資は昨年10-12月期に前期比でマイナスに転じたのち、今年の1-3月期も連続してマイナス成長だった。しかし、基礎統計の住宅着工件数の方は必ずしも一方的な減少を示してはいない。悪天候による影響を受けた1-3月期を除けば、昨年7-9月期以来今年の4月まで、4四半期中3四半期で住宅着工は前期比増加している。この統計間の不整合が一時的な統計の期ブレと考えるならば、天候回復後の3月、4月にほぼ寒波前の水準に回復した住宅着工の増加に合わせ、4-6月期のGDP統計上の住宅投資も再びプラス成長に回帰すると見ることができる。

直近の住宅着工件数統計によれば、住宅着工件数は1月に年率897千件のボトムを付けたのち、2月、3月と連続して増加し、3月時点では年率1,072千件と4カ月ぶりの1,000千件を回復した。また住宅着工の先行指標となる住宅着工許可件数も3月時点で年率1,080千件と3カ月連続で1,000千件台を維持している(5月17日付<経済指標コメント>参照)。着工に比べて相対的に天候の影響を受けにくい許可件数が安定した水準を保っていることは、今後住宅建設が安定定期に増加することを示唆している。

[第1図]
20140522図1

住宅販売減少は供給側にも要因がある

次に住宅販売市場の需給を見る。米国住宅販売市場の9割を占める中古住宅販売は過去約2年間減少基調にある([第2図])。一方で、販売市場の需給を表す在庫期間(販売在庫戸数÷月次販売戸数)は過去2年にわたり約5ヶ月前後を保っている。つまり住宅を市場に出してから売れるまでの期間が平均5ヶ月ということである。元来、米国の住宅販売在庫期間は6ヶ月レベルが標準と考えられており、現状の短い在庫期間は需要に対して在庫供給が極めてタイトであることを示唆している。

中期的に、過去約10年間の中古住宅の販売戸数と在庫水準の推移を見ると[第3図]のようになる。販売戸数は住宅バブル崩壊による急減を経て2011年頃から増加基調に転じている。一方で販売在庫はバブル崩壊で増加した抵当権実行で急増したのち、2007年頃をピークに今日まで減少基調にある。更に最近では抵当権実行率の低下により競売物件が従前のように市場に供給されなくなっている。かように住宅市場の需給がタイトであることが、販売減速にもかかわらず住宅価格が2桁の上昇を続けている(S&Pケースシラー20都市住宅価格指数は2月現在で前年比+12.1%の伸び)背景になっている。

同様の傾向は新築住宅市場でも見られる。[第4図]によれば、新築住宅販売戸数は2011年に底入れして緩やかな増加傾向に転じたが、販売在庫はその後も低水準での減少基調を続けた後、漸く昨年に底入れした。需要の増加にも関わらず新築住宅販売在庫の増加ペースが加速しないことは、住宅建設の供給能力に制約があることを示唆している。これらの状況証拠からは、住宅販売市場の減速は必ずしも需要の後退によるものではなく、供給側にもその要因があるとみてよさそうだ。

[第2図]
20140522図2

[第3図]
20140522図3

[第4図]
20140522図4

タイトな信用基準が需要を抑制している可能性

次に住宅の需要側の要因を見てみる。住宅建設業者の景況感を表すNAHB住宅市場指数の中期的な動きを見ると、昨年後半頃にやや頭打ち感はあるものの、その水準は決して低くはない。住宅市場に訪れる消費者の購買意欲は多少の減速はあれどもまず平常の水準にあるといってよい。

購買意欲のレベルにも関わらず住宅販売が減速している背景には、住宅ローンによる信用供与に制約があることが考えられる。FRBの資金循環統計によれば、家計の住宅ローン負債残高は住宅バブル崩壊後、直近の統計である2013年10-12月期に至ってもなお減少基調が続いている。クレジットカードや自動車ローンなどの消費者ローン残高が2010年に底入れしたのと対照的である([第6図])。FRBのシニアローンオフィサー・サーベイによれば、住宅ローン(プライムローン)の信用条件を厳格化した銀行の数は、2014年第1四半期に7四半期ぶりに信用条件を緩和した銀行の数を上回り、第2四半期でも同様の結果になっている。

また、住宅ローン金利の上昇も需要抑制の要因になっている可能性がある。30年物固定モーゲージ金利は、FRBによる追加金融緩和(QE3)開始直後の2012年末に3.4%にまで低下した。しかしその後モーゲージ金利はQE3実施にかかわらず上昇に転じ、4月現在でボトム比1%近く高い4.3%に上昇している。もっとも経験則では、住宅ローン金利が6%を超えない限り金利水準自体が住宅ローン借入需要の決定要因ではない。短期的に金利上昇が消費者をして借り入れ見送りをさせている可能性はあるが、現状程度の金利水準が住宅販売需要を大きく抑制しているとは考えにくい。むしろ信用条件厳格化の方が需要を抑制していると見たい。

[第5図]
20140522図5

[第6図]
20140522図6

住宅建設決定要因の影響度は拮抗しつつある

最後に、持ち家比率・賃貸需給・販売需給を説明変数とし、住宅建設(GDP統計上の実質住宅投資)を被説明変数とした回帰分析をアップデートする(1月4日付当レポート参照)。各決定要因の推移を見ると、まず持家比率は依然低下基調にあるもののその低下ペースはやや軟化している。賃貸需給を表す貸家空室率もここ4四半期ほどは下げ止まりの傾向がみられる([第7図])。賃貸需給を表す中古住宅販売在庫期間は上記の通り約5ヶ月という低水準にあるものの、短期化が加速する状況にはない。これらの状況はこれまでの住宅建設抑制要因(持家比率)と押し上げ要因(賃貸需給・販売需給)がいずれもその影響度を縮小してきていること、また近々これらの要因が住宅建設に与える影響の方向が反転する可能性もあることを示唆している([第8図][第1表])。

全米不動産業協会(NAR)は、4月22日のニュースリリースで「現状の販売状況は過去の標準的水準を下回っている」「米国の人口増加に照らせばより多くの住宅販売があってしかるべき」「一方で住宅価格上昇は在庫不足から標準的なペースを上回っている」と現在の中古住宅市場をひょうしている。これは在庫不足が販売戸数を制約する要因になっていることを裏付ける現場の評価といえる。

総じて、米国の住宅販売市場・建設市場はやや軟化しているものの、供給不足で価格が上昇するというやや歪んだ構造になっているといえる。むしろ今後住宅供給が増加して金利上昇により需給が適度に緩和されることで、現状の住宅価格上昇がバブルに繋がることが回避されると見たい。その意味でもFOMCの緩和縮小継続と来年の利上げ開始シナリオは適切なタイミングを反映したものと言えるだろう。

[第7図]
20140522図7

[第8図]
20140522図8

[第1表]
20140522表1


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