<経済指標コメント>米1-3月期GDPは-2.9%に下方改訂

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[日本]

全国消費者物価指数(5月)は前年比+3.7%、生鮮食品を除く総合指数は同+3.4%

5月の全国消費者物価指数は前月比+0.4%、前年比+3.7%の上昇。生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコア指数)は前月比+0.4%、前年比+3.4%。コア指数の前年比伸び率の前月からの拡大幅は+0.2%で、消費税引き上げが実施された4月の拡大幅+1.9%から大幅縮小した。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比横ばい、前年比+2.2%と前年比伸び率が前月の+2.3%から低下した。コア指数の前年比の伸び率拡大に寄与した項目はガソリン・電気代・プロパンガス・都市ガス代などで、エネルギーによるコア指数上昇への寄与度差が+0.21%と引き続き高い。なお、電気代・都市ガス代・プロパンガスおよび固定電話手数料は4月時点では旧税率が適用されており、5月分で初めて消費税引き上げ効果が反映されている。総じて消費税の物価への転嫁は5月までで終了したと見られる。消費税引き上げの影響を約2%とすると、実力ベースでのコア指数は前年比1%台半ばの伸びに留まっていることになる。なお、6月の東京都区部消費者物価指数(中旬速報)は総合指数が前月比-0.2%、コア指数が同横ばいと更に物価上昇に歯止めがかかっている。
20140629b図1

完全失業率(5月)は3.5%(前月比-0.1%ポイント)

5月の完全失業率は3.5%(前月比-0.1%ポイント)と水準的には実に1997年以来のレベルにまで低下した。失業率変化の要因は、労働力人口が前年比+0.5%の増加、就業者数が同+0.6%の増加で、前月と異なり労働力人口への流入を伴う失業率低下に回帰している。筆者試算による労働力化率は59.5%と前月比+0.3%の上昇。しかしながら労働参加率にはやや頭打ちの傾向がみられ、労働市場が飽和状態に近づいている可能性を示唆している。
20140629b図2

実質家計消費支出(5月、二人以上の世帯)は前月比-3.1%、前年比-8.0%

5月の実質家計消費支出(2人以上の世帯は)前月比-3.1%と、4月の同-13.3%に続いて減少。前年比の伸び率も-8.0%とマイナス幅を拡大した。4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動による消費減は5月も継続している。もっとも買い溜めによる在庫縮小が進行するにつれて家計消費は反発に転じると見る。
20140629b図3

[米国]

中古住宅販売戸数(5月)は年率4890千戸(前月比+4.9%)、中央販売価格は前年比+5.1%、在庫期間は5.6ヶ月

5月の中古住宅販売戸数は年率4,890千戸(前月比+4.9%)と2ヶ月連続の増加。昨年後半以来の販売減少傾向から反転の兆しがみられる。中央販売価格は前年比+5.1%と引き続き伸び率が低下。在庫期間は5.6ヶ月と前月の5.7ヶ月からやや短縮したものの、販売在庫戸数は2,280千戸と5ヶ月連続の増加で、販売増加にも関わらず在庫期間短縮幅は小幅にとどまり、適正とされる6ヶ月に近づいている。集計元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「第1四半期の落ち込みのあと販売活動は反発した」「住宅購入者は住宅価格の上昇が鈍いことで有利になっている」「住宅上昇の鈍化は販売在庫の上昇によりもたらされた」と述べている。今後住宅在庫の供給が続き、住宅価格上昇ペースが適度なものに留まれば、回復の遅れが懸念されている住宅市場は再び適度なペースでの拡大に転じると見る。
20140629b図4

新築住宅販売戸数(5月)は年率504千戸(前月比+18.6%)、在庫期間は4.5ヶ月

5月の新築住宅販売戸数は年率504千戸(前月比+18.6%)とこちらも2ヶ月連続となる大幅増加、販売戸数は2008年5月以来の年率500千戸台に回復した。一方販売在庫戸数は189千戸と過去数ヶ月間ほぼ横ばいにとどまっており、結果在庫期間は前月の5.3ヶ月から4.5ヶ月に大幅短縮となった。新築住宅建設は供給力の制約から在庫供給がおいつかず、販売ペースに対して在庫不足の状態にある。建設業の供給力が新築住宅市場の適正な拡大への鍵だといえる。
20140629b図5

耐久財受注(5月)は前月比-1.0%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+0.7%、同出荷は同+0.4%

5月の耐久財受注は前月比-1.0%の減少、民間航空機の受注減少などが主因。民間設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+0.7%と前月の同-1.1%からやや持ち直した。GDP統計上の民間機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)も前月比+0.4%と前月の同-0.4%をほぼ取り返す増加。四半期ベースでは、4-6月期の同出荷額は前期比年率+10%を超える増加となるペースで、1-3月期にマイナス成長だったGDP統計上の民間設備投資は4-6月期にプラス成長に回帰すると見る。
20140629b図6

実質GDP成長率(1-3月期、確報値)は前期比年率-2.9%

1-3月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率-2.9%と、改定値の同-1.0%から更に大幅下方改訂された。需要項目別には個人消費が前期比年率+1.0%(改定値同+3.1%)、民間設備投資同-1.2%(同-1.6%)、在庫投資寄与度-1.70%(同-1.62%)、純輸出寄与度-1.53%(同-0.95%)、政府支出前期比年率-0.8%(同-0.8%)。個人消費と純輸出の大幅下方改訂が成長率のマイナス幅を拡大させている。個人消費は非耐久消費財消費が前期比年率-0.3%(改定値同+0.4%)、サービス消費が同+1.5%(改定値同+4.3%)大幅下方改訂。このうちサービス消費については、米商務省による医療サービス関連消費の推計方法の変更が1月に遡って実施されたことが主因、また純輸出の下方改訂は、輸出に関する推計方法の変更が主因と米商務省は述べている。統計変更が今回の下方改訂要因であれば、改定値における-1.0%程度のマイナス成長が実力ベースであり、かつそれは一時的な要因と考えられる。今後成長率は4-6月期以降再びプラス成長に回帰すると見るが、数字上は今年通年の成長率は2%台への加速が困難になり、計算上は1.3%程度の成長に留まる計算になる。もっとも7月30日に公表される4-6月期GDP統計速報では年次改訂が過去3年の統計に対して実施される。本来の実力はこの4-6月期速報をまって評価することとしたい。
20140629b図7

実質個人消費(5月)は前月比-0.1%、PCEデフレーターは前年比+1.8%

5月の実質個人消費は前月比-0.1%と2ヶ月連続の減少。内訳は自動車販売の増加を反映した耐久消費財が同+1.0%の増加を見せたものの、非耐久消費財が同-0.3%、サービスが同-0.2%といずれもマイナスの伸びとなった。個人消費統計は商務省の推計手法変更による改訂が1月に遡って実施されており、医療サービス消費が下方改訂されている。このペースだと4-6月期の実質個人消費は前期比年率+1%台の伸びに留まる可能性が高く、通年のGDP成長率も下方リスクが出てきている。6月の小売売上高統計からも個人の消費もやや一服感がみられたこともあり、個人消費拡大は一時的な減速の可能性が出てきている。一方インフレ圧力は徐々に高まってきており、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+1.8%、同コア指数は同+1.5%といずれも伸びを加速させた。PCEデフレーターの伸びはFRBの目標である2%に近づいてきている(6月29日付<経済レポート>参照)。
20140629b図8

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<経済レポート>準備は整いつつある~FRB金融政策予想

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インフレ率と失業率が適正な水準に接近してきたことから、FOMCは年内に資産購入停止ののち、来年半ばには利上げを開始すると個人的には予想する。テイラー・ルールによる適正な政策金利の推計値はこの見方を支持している。一方リスク要因は、イエレン議長がインフレ・失業率のいずれにもまだ慎重な見方を崩していないこと、また直近のGDP統計の大幅下方改訂によるマイナス需給ギャップの再拡大である。

FOMC委員の利上げペース予測は前倒し方向にシフトしている

FRBは昨年12月の定例連邦公開市場委員会(FOMC)で資産購入のペース縮小開始を決定して以来、6月17-18日の定例会合まで5回連続で資産購入を月当たり100億ドルずつ縮小してきた。6月会合では毎月の資産購入額を、住宅ローン担保証券150億ドル・長期米国債200億ドルの合計350億ドルにまで縮小することを決定。今後も毎回同額の資産購入ペース縮小を決定すれば、10月または12月の定例会合で資産購入の停止が決定される見込みである。資産購入が年内に停止されれば、次は利上げの時期が焦点になってくる。筆者は、インフレ率の上昇を背景に、FOMCは来年の半ばにFF金利誘導目標の引き上げを決定すると個人的に予想する。

6月FOMC声明文におけるゼロ金利政策に関するフォワードガイダンスは、3月声明文で失業率の低下を背景に変更されて以来ほぼ不変である。そこでは、現在のFF金利誘導目標をどれほどの期間維持するかについての評価は「労働市場条件の指標、インフレ圧力、インフレ期待指標、金融市場動向の指標を含む広い範囲の情報を考慮する」と謳っている([第1表])。さらに同フォワードガイダンスでは、資産購入終了後も現在のFF金利誘導目標を「相当の期間」維持することが適切であること、さらに雇用とインフレ指標が委員会目標と整合したあともFF金利誘導目標を「委員会が正常と見るより低い水準に維持する」可能性を示唆している。

6月声明文と同時に公表された四半期毎のFOMC委員経済予測([第2表])によれば、2015年の適切な利上げタイミングを2015年と予測する委員は16人中12人で、前回3月時点予測の13人からは1名減少している。しかし適切な金融引き締めのペースについて、2015年末に1%を超えるFF金利誘導目標を予測する委員は8名と、3月の5名から大幅に増加している。これは、2015年中の利上げ開始がFOMC内で多数意見であるのみならず、予想される利上げ開始時期が3月に比べて前倒しになっていることを示唆している。

イエレンFRB議長は18日のFOMC後の記者会見で、金融政策や金利の道程には「不確実性」があると繰り返し述べて、金融引き締め開始時期については慎重に示唆を避けた。また、議長はのちに見るように、最近失業率低下やインフレ率上昇も一時的な要因による部分が多いと見ている。以下では労働市場やインフレに関する指標を分析しながら、またFOMCによる評価を合わせて考察しながら、来年の利上げ開始時期を探ってみる。

[第1表]
20140629表1
[第2表]
20140629表2

失業率低下は順調:労働参加率についてイエレン議長は慎重

まず、労働市場の条件を示す失業率は5月時点で6.3%とFOMCが1月定例会合まで低金利継続の目途としていた6.5%を下回っている。このペースなら、年末までに失業率は6%レベルにまで低下することが予想できる。米議会予算局の推計(2月「財政・経済見通し」)による米国の自然失業率は2014年時点で5.8%とされており、失業率は年内にほぼ自然失業率に近いと水準にまで低下することが期待できる。その意味では雇用の最大化というFOMCの使命達成の目途は立ちつつある。

一方、FOMC委員やイエレン議長の労働市場に対する見方は依然として慎重である。6月FOMC委員経済予測によれば、2014年第4四半期の失業率予測の中心傾向は3月予測よりも下方にシフトし、6.0-6.1%となっている。しかし、長期の失業率予測(委員が長期的な均衡水準と考える水準)の中心傾向は5.2-5.5%と、議会予算局の推計する自然失業率よりもかなり低い水準にある。つまり、雇用最大化を示唆する失業率の水準をFOMCはかなり低いところにおいていることになる。また、イエレンFRB議長は18日の記者会見で「失業率低下の一部は労働市場の縮小を反映していない」「最近見られる失業率低下の一部はおそらく影の失業もしくは求職意欲喪失の反映であり、これは労働人口への参加者の循環的な部分である」と述べ、今後経済回復とともに求職意欲喪失者が労働力人口に再流入すれば失業率低下ペースは減速すると述べている。イエレン議長は従前より、労働参加率の低下は構造要因ではなく循環要因であり、つまり緩和的な金融政策により改善可能なものと見ている。

筆者は、労働参加率の低下はより構造的な要因だとみている。1月13日付当レポート、および6月18日付当レポートでは、労働参加率低下の要因が労働力のミスマッチや、労働力人口からの恒久的な退出による構造要因である可能性を見た。その一例として、非労働力人口のうち「就業意欲のある非労働力人口」の寄与度はほぼゼロにまで低下していることがあげられる([第1図]、なお2014年1-3月期には一時的に寄与度拡大しているが、これは寒波による労働力人口からの一時退出が背景と考えられる)。非労働力人口の増加はほぼ恒久的な要因が大きくなっていることを示唆している。今後労働参加率が金融危機以前の水準にまで回帰する可能性は低く、したがって労働力人口への再流入による失業率の再上昇は考えにくいと見たい。

[第1図]
20140629図1

インフレ率は2%に向けて確実に上昇している: イエレン議長はノイズに慎重

FOMCがインフレ指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、総合指数が5月時点で前年比+1.8%、同コア指数が同+1.5%にまで上昇しており([第2図])、FOMCが目標とする2%に接近している(6月FOMC時点で判明していた4月時点の伸び率は総合指数が同+1.6%、コア指数が同+1.4%)。また消費者物価指数(CPI)は5月時点で同+2.1%と2ヶ月連続で2%台の伸びを見せ、コア指数も5月に同+2.0%に達している。5月11日付当レポートでは、PCEインフレ率が年末にかけて1.7%レベルに上昇すると筆者は見たが、現在のインフレ率上昇ペースはこれを上回るものである。またFOMCが評価対象とする期待インフレ率も安定から上昇の兆しがみられる。ミシガン大学消費者センチメント調査による12ヶ月後の期待インフレ率はここ数ヶ月に底入れして上昇に転じている([第3図])。インフレ率上昇と期待インフレ率上昇の兆しは、来年の利上げ開始を近々正当化する水準に達する可能性が高い。

6月FOMC委員経済予測では、2014年のPCEインフレ率予測中心傾向は上限がわずかに上方シフトして、第4四半期の前年同期比で1.5-1.7%、またコアインフレ率予測中心傾向は+1.5%-1.6%となっているものの、3月予測から大きな変動はない。6月FOMC時点で公表済だった4月PCEデフレーターの前年比の伸び率がすでに+1.6%に上昇していたことからは、FOMC委員のインフレ予想は相対的には控えめだといえる。イエレン議長は18日の記者会見でインフレ率についても慎重な見方をしている。議長は記者会見の質疑応答で最近のCPIのデータには「ノイズがある」として、インフレ率上昇が一時的なものであると見ていることを示唆している。また「ノイズから抽出した最近の証跡からは、時間をかけて徐々に2%の目標に回帰していく」と述べ、2%へのインフレ率回帰があくまで「徐々に」であると見ていると述べている。

インフレ率に含まれるノイズとしては、エネルギー価格の一時的上昇が考えられる。確かに総合指数においてはエネルギー価格が、またコア指数においては運輸サービスなどエネルギー価格の影響を受けやすいサービス品目がインフレ率を押し上げていることは事実である。しかしながら一方で、失業率の低下が時間当たり賃金の押し上げ要因になる兆しがかなり明らかになっている。また欠員率の上昇や週平均労働時間の増加など、労働市場がタイト化しつつある証跡が徐々に出てきている。6月18日付当レポートでみたように、労働市場の余剰は見かけよりも小さいと考えられることから、今後賃金上昇が更に消費者インフレ率を押し上げる趨勢的な要因になると見る。

[第2図]
20140629図2
[第3図]
20140629図3

1-3月期成長率の下方改訂はリスク要因

経済成長は総じて順調であるが、直近の統計はややリスク要因となっている。6月FOMC委員経済予測では2014年の実質GDP成長率予測(第4四半期前年同期比)の中心傾向は2.1-2.3%で、3月時点の+2.8-3.0%から大きく下方シフトしている。これは1-3月期の実質GDP成長率が予想外にマイナス成長になったことの反映である(6月FOMC時点で公表済の数値は改訂値の前期比年率-1.0%)。筆者のこの時点での2014年の成長予想は同じ第4四半期前年同期比では+1.6%である。さらに、25日に公表された確報値では、1-3月期の成長率は-2.9%に下方改訂されており、筆者試算では10-12月期の前年同期比の成長率は+1.3%に下振れする計算になる。成長率に関してはFOMC委員の予測は楽観的になる傾向があるが、これは6月予測でも同様の傾向である。

6月のFOMC声明文は経済成長につき「経済活動の成長はここ何ヶ月か反発した」としている。またイエレンFRB議長は6月FOMC後の定例記者会見で「第1四半期に実質GDPは減少したものの、この減少は主に一時的要因による結果と見える」としており、寒波の影響が剥落した4月以降にGDPは再び拡大に向かっていると見ているようだ。

GDP統計の下振れは、統計要因による一時的なものと筆者は見る。しかしインフレ率や金利引き上げ決定に対してはマイナスの需給ギャップの再拡大という形で影響を与えるため、筆者予想に対するリスク要因といえるだろう。1-3月期の-2.9%のマイナス成長によりマイナス需給ギャップが大幅に再拡大した。米議会予算局の推計による潜在GDPをもとにした筆者試算では、米国のマイナスの需給ギャップは2014年1-3月期時点で-5.1%と、前期の-4.0%から実に1%以上も拡大したことになる([第4図])。また、GDP統計の下方改訂前においてさえも、FOMC委員の成長予測がかなり楽観的であることは、来年半ばの利上げシナリオに対するリスク要因である。

[第4図]
20140629図4

テイラー・ルールは来年半ばの利上げ開始を示唆:来年末のFFターゲットは1%以上に

総合的に見れば、以上の労働市場関連指標とインフレ指標は総じてFRBによる来年半ばの利上げ開始を支持しているといえる。そこで、シンプルなテイラー・ルールを用いて適切な利上げ時期を推計してみることとする。テイラー・ルールとしては以下の公式を用いる。

     it=2+πt+α(πt-π)+β(yt-yt*

ここでitは適切な政策金利、πtはインフレ率実績、πはインフレ率目標、ytはGDP実績、yt*は潜在GDPである。インフレ率はPCEデフレーターの前年同期比の伸び率を用い、2014年4-6月期にこれが2%に達したのち2015年いっぱい2%で推移すると前提する。インフレ率目標は2%とする。GDPについては、2014年4-6月期以降は筆者個人予想、2015年は3%成長と前提する。潜在GDPは米議会予算局の2月時点の推計値を用いる。また係数はα=0.5、β=1.0を用いる注1)

試算の結果は[第5図]の通りである。2014年1-3月期時点ではテイラー・ルールに基づく適正な政策金利は-2.5%といまだマイナス金利の領域にある。しかし、今後インフレ率の上昇とマイナス需給ギャップの縮小に伴い適正な政策金利のマイナス幅は縮小し、2015年4-6月期にほぼゼロに、7-9月期には約+0.2%に上昇する計算となった。実際にはPCE総合インフレ率はCPI同様に来年には2%を超える伸び率になる可能性が高い。従って現実にはこの試算は、来年半ばころからFF金利誘導目標の引き上げを開始することを正当化する結果だといえる。来年半ばに利上げを開始すれば、FOMC一回当たり0.25%の利上げ実施として、2015年末のFF金利誘導目標は1.25%レベルになると計算できる。これは6月のFOMC委員の予測(2015年末のFF金利誘導目標を1%と予測する委員、1.25%と予測する委員がそれぞれ3名ずつ)とも整合する結果である。

[第5図]
20140629図5

出口戦略の詳細は年末に公表予定: バーナンキ「原則」よりリベラルになりそう

以上より、2015年半ばのFF金利誘導目標引き上げ開始、2015年末のFF金利誘導目標は1%~1.25%を筆者の個人予想とする。もっとも金融政策正常化へのプロセスはFOMC内でも未確定であり、今後FOMC内の議論も参照しつつプロセス予想を策定する必要がある。一つの基準となるのは、2011年6月に当時のバーナンキ議長の下のFOMC議事要旨で公表された「出口戦略諸原則」である。これによれば金融政策正常化は、①保有資産再投資停止、②フォワードガイダンス改訂と資金吸収オペ開始、③FF金利誘導目標引き上げ、④住宅ローン担保証券売却開始、のプロセスによることとされていた([第3表])。これは、FRBのバランスシート縮小と金利引き上げを平行して実施する極めて正統的な手法だといえる。

しかし、イエレン議長はこの出口戦略諸原則をそのまま今後の正常化に適用する意図はないようだ。4月FOMC議事録によれば、会合では金融政策正常化の手段として、①超過準備への付利金利引き上げ、②リバースレポ操作(RRP)、③ターム物預金ファシリティ(TDF)などの手段が検討されている。イエレン議長は18日記者会見の冒頭発言で「委員会は正常化に関わる多くの課題を建設的に検討中であり今後の会合でも議論を継続する、追加的な詳細は今年の後半に提供できると期待している」と述べ、年後半に具体的な出口戦略を公表する意図を表明した。一方、2011年の出口戦略原則については質疑応答で記者の質問に答えて「再投資の停止如何は未定」また「住宅ローン担保証券の売却は行わない可能性が高い」と述べている。イエレン議長はバーナンキ議長時代の想定よりもよりリベラルに信用市場に配慮した出口政策をとる意図が示唆されている。この点も年半ばのFF金利誘導目標引き上げ予想に対するリスクといえよう。

[第3表]
20140629表3

注1)テイラー・ルール公式と係数は、2012年6月6日のイエレンFRB副議長(当時)の講演Janet L. Yellen, “Perspectives on Monetary Policy”, June 6, 2012に倣った。

(訂正)8月14日、「テイラー・ルールは来年半ばの利上げ開始を示唆」の節の記述と[第5図]を訂正しました。

<経済指標コメント>米5月CPIは前年比+2.1%

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[米国]

鉱工業生産指数(5月)は前月比+0.6%、設備稼働率は79.1%(前月比+0.2%)
5月の鉱工業生産指数は前月比+0.6%と、4月の同-0.3%低下をとりもどす反発。4月分も速報の前月比-0.6%から上方改訂された。4月の鉱工業生産の落ち込みは一時的なものだったといえる。5月生産指数の内訳は、製造業が同+0.6%、鉱業同+1.3%、公益事業同-0.8%。設備稼働率は79.1%とこれも前月の低下から反発した。設備稼働率は1972-2013年平均の80.1%にはまだ回復していないもののあと1%にまで迫っている。
20140622図1

住宅着工件数(5月)は年率1001千件(前月比-6.5%)、着工許可件数は同991千件(同-6.4%)
5月の住宅着工件数は年率1,001千件(前月比-6.5%)と4ヶ月ぶりの減少。しかし2ヶ月連続で1000千件を上回っており、4-6月期の着工件数は前期比で+12.0%の大幅増加となるペース。GDP統計上の住宅投資は3四半期ぶりのプラス成長になると予想する。先行指標となる住宅着工許可件数は年率991千件(同-6.4%)と2ヶ月ぶりに減少。着工許可件数も4-6月期は前期比+4.2%の増加になるペースである。ただし5月の許可件数の前年比の伸びは-1.9%と4ヶ月ぶりにマイナスに転じていて、住宅着工の増加ペースが今後やや減速することを示唆している。5月22日付<経済レポート>で見たように、住宅市場の減速には、タイトな住宅ローン条件という要因と、建設業界の供給力不足という要因があると考えられる。しかし総じて現在の指標は、住宅市場は安定的な持続的拡大が可能との筆者の見方を支持している。
20140622図2

消費者物価指数(5月)は前月比+0.4%(前年比+2.1%)、同コア指数は前月比+0.3%(同+2.0%)
5月の消費者物価指数は前月比+0.4%と強めの伸び、前年比では+2.1%と2ヶ月連続で2%台の上昇となった。食品・エネルギーを除くコア指数は前月比+0.3%、前年比では+2.0%と2013年2月以来15ヶ月ぶりの2%台の伸びに回帰した。6ヶ月前対比の年率の伸び率は総合指数が+4.2%、コア指数が+2.4%であり、短期的にはCPIインフレ率が2%を上回るペースであることを表している。前月比の伸びの内訳は、食品+0.5%、エネルギー+0.9%、新車+0.2%、衣服+0.3%、住居家賃+0.3%、運輸サービス+1.0%、医療サービス+0.3%と、引き続きエネルギー及びエネルギー価格の影響を受けやすい運輸サービスが物価を押し上げている。6月には中東問題で原油価格が上昇していることから、今後もエネルギー中心の物価上昇が続くと見る。ただし、経済の拡大や労働市場のタイト化による賃金上昇加速の兆しがみられるなど、エネルギー以外の需給要因もインフレ率押し上げ要因になってきており、米国のインフレ圧力は高まりつつある。FRBがインフレ指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は4月時点で前年比+1.4%であるが、これも年末にかけて同+1.7%レベルにまで上昇するとの予想を維持する。
20140622図3

<経済レポート>タイト感強まる~米国労働市場

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失業率6.3%の米国労働市場の需給に関する見方は大きく2つに分かれる。労働市場は見かけよりも多くの余剰を抱えているとする見方と、労働市場は見かけよりもタイトになっているとの見方である。26週以下の短期失業率の低下や求人比率の上昇などからは、労働市場はタイト感が高まっていると見たい。タイトな労働市場は年後半に消費者インフレ率を適度なレベルにまで押し上げ、来年にはFOMCによる金利正常化を正当化することになるだろう。

6.3%の失業率に対する評価は分かれている

米国の失業率は5月時点で6.3%と、米議会予算局の推計する自然失業率5.9%にあと0.4%にまで低下している。この状況についてFOMC委員内の評価は分かれている。イエレンFRB議長は5月7日の米議会合同経済委員会での証言で「労働市場条件は目に見えて改善したが、依然として満足には程遠い」と述べている。その理由として「失業率は、最近の低下にも関わらず高いままである」「労働人口のうち6ヶ月以上失業している人口のシェアと、フルタイム職を志向しつつパートタイムで働く労働者数が歴史的な高水準にある」ことを挙げている。

遡って4月29-30日のFOMC議事録によれば「多くの参加者は労働市場の稼働率の低さに関するいくつかの指標―低い労働参加率、長期失業者比率の高さ、経済的理由でパートタイム雇用されている労働者の比率の高さを含む―は、失業率で捕捉されるより多くののりしろslackが労働市場に存在することを示唆している」とイエレン議長と同様の見解を示した。

しかし、いくらかの参加者は「自身の地区のコンタクト先はいくらかの業種や職種で労働者の不足を示唆した」と述べた。またある一人の参加者は「労働市場間の移動率を勘案した指標による労働市場稼働率は」十分に低下していると述べている(これは4月にリッチモンド連銀が公表したレポート注1) に基づくラッカー総裁の意見と思われる)。3月に米ブルッキングス研究所の発表した調査 注2)は、2009年以降の長期失業者はインフレ率などに影響を与えておらず、むしろ短期失業者を対象とした失業率の方が労働市場の条件を計測するのに適していると述べている。

短期失業率でみると労働市場はすでにタイト

本レポートでは上記の資料等を参考に、現在の米国の労働市場のタイト感につき考察する。筆者はイエレン議長が述べるよりも労働市場はタイト化しており、年後半にかけての賃金上昇とインフレ率上昇の背景となると考えている。まず、イエレン議長やブルッキングス研究所が採用する長期失業者の状況を見てみる。5月時点で27週間以上の長期失業者数は3,374千人で、2010年4月のピーク6,770千人から約半減している。しかし金融危機前には同失業者数が2,000千人を超えることはまれであった。同じく長期失業者数の総失業者数に占める割合は4月で34.4%と、2010年のピーク46%からは大幅低下している。しかし金融危機前はこの割合は30%を超えることはなかった。その意味では、27週以上の長期失業者数およびその割合は改善しているものの引き続き高い水準にあるということができる([第1図])。

次に、こうした高水準の長期失業者数が、循環的要因によるものか構造的要因によるものかが課題になる。ここでは、かくも長期間にわたり高水準を保っている長期失業者は構造的要因によるものと見る。その背景として考えられるのはまず雇用のミスマッチである。製造業の雇用者数は長期的に減少トレンドにあるが、金融危機で自動車産業が大きな打撃を受け減少ペースは更に加速した。自動車産業地域で同業に長らく携わっていた労働者が他の業種に転職できる可能性は低いと推測できる。また雇用ミスマッチは、失業率と欠員率(=(未充足求人数)÷(雇用者数+有効求人数))との関係を示すUV曲線の上方シフトからも推測できる。[第2図]によれば、金融危機からの回復にともない欠員率が上昇している、つまり求人は増加しているにも関わらず、失業率は過去の同じ欠員率の時にくらべて高止まりしている。これは労働市場の需要と供給がマッチしない状況が続いていることを示唆している。

この仮定を前提に、循環要因による失業率、ここでは26週以下の短期失業者を対象にした失業率の推移を見てみよう。[第3図]によれば、全体の失業率は過去10年の平均値よりもまだ高い水準にあるのに対し、26週以下の短期失業者を対象にした失業率は、既に過去10年の平均値を下回る水準にまで低下している。つまり循環要因による失業率からは、労働市場はすでに平均よりもタイトな状況にあることが推測できる。

[第1図]
20140618図1

[第2図]
20140618図2

[第3図]
20140618図3


求人増加、労働時間の長期化も労働市場のタイト化を示唆

再び上述[第2図]のUV曲線に戻ると、欠員率は4月時点で3.1%と、2008年1月以来6年半ぶりに3%台に上昇した。これは未充足求人の割合が増加していることを表しており、労働市場のタイト化を示唆する指標である。また、米国の需給ギャップと過去の失業率との相関から現在の失業率を推計すると、筆者計算では約7.5%との結果になる。つまり現在の6.3%の失業率は、需給ギャップとの比較ではやや低すぎる水準である。

更に、労働市場のタイト化を示唆する指標として週平均労働時間の長期化があげられる。労働市場がタイトになると、まず労働時間が長期化し、次に雇用が増加、最後に賃金が上昇するのが通常の波及経路である。週平均労働時間は5月時点で33.7時間と、金融危機からの経済回復後のピークの水準にある([第4図])。

短期失業率のトレンド以下への低下は、労働市場が見かけの失業率よりも実際にはタイトであることを推測させるものであり、また求人増加、労働時間の長期化は少なくとも労働市場かタイト化の度合いを高めつつあることを示唆するものである。現在の失業率や長期失業者数は確かに労働市場の余剰がまだ相応にあることを表してはいるものの、これらが構造要因であるとするならば、実態的には労働市場のタイト化はかなり明らかである。

[第4図]
20140618図4

タイト化する労働市場は賃金と物価の上昇をもたらす

次に、このタイトな労働市場が賃金と物価に与える影響を見てみる。5月現在の時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)の時間当たり賃金は前年比+2.4%で、2000年代半ばの3~4%の上昇率に比べればまだ低い。しかし、失業率と時間当たり賃金の関係を示すシンプルなフィリップス曲線を描いてみると、失業率低下に遅行して、2012年半ばから時間当たり賃金の伸び率が徐々に上昇しているのがわかる([第5図])。また、時間当たり賃金伸び率の上昇に遅行して、コア消費者物価指数の前年比の伸び率がここ2~3ヶ月で上昇に転じている([第6図])。実際に消費者物価指数の前年比の伸びは、5月時点で総合指数が+2.1%、コア指数が+2.0%と、16ヶ月ぶりに両指数がそろって2%を超えた。ここからは、タイト化した労働市場が賃金上昇を通じてインフレ率を上昇させる波及経路を読み取ることができる。

コア個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)と失業率の関係はより当てはまりが良く、両者には強めの相関関係がみられる([第7図])。単純な回帰式では現在の6.3%の失業率は約+1.8%のコアPCEインフレ率に相当する。失業率を需給ギャップに置き換え、さらに期待インフレ率を変数に加えた回帰式では更に当てはまりが良く、そこでも現在のコアPCEインフレ率は約+1.7%と推計される(5月11日付当レポート参照)。4月時点のPCEインフレ率は総合指数が1.4%、コア指数が+1.3%といずれも上昇に転じている。FOMCがインフレ指標として用いているPCEインフレ率は年末にかけて+1.7%にまで上昇すると筆者は個人的に予想している。

なお、上記のブルッキングス研究所調査では、26週以下の短期失業率の方が失業率全体よりも失業率と物価の関係をよく説明できること、また短期失業率を用いたUV曲線は金融危機の前後でシフトせず安定していることから、金融危機以降の長期失業者は実際には経済や物価変動に影響を与えておらず、むしろ縁辺労働者(非労働力人口)と見るべきとしている。筆者の見方もこれに近いものではあるが、同調査が1976年から現在までの長期を分析の対象としているのに対し、筆者は1992年以降の中期を分析の対象としている。この期間については少なくとも、短期失業率が物価上昇率をよりよく説明するという結果は得られなかった。従って、労働市場が表面の失業率よりもタイトであるとの見方は維持しつつ、以上の分析では全体の失業率を用いてその効果を計測することとした。

[第5図]
20140618図5

[第6図]
20140618図6

[第7図]
20140618図7

大きなマイナス需給ギャップによりインフレ高進は穏当にとどまる

また、労働市場がタイト化していることは、経済全体の余剰が十分に縮小していることを必ずしも意味しない。米議会予算局の推計する潜在GDPをもとに筆者が試算した米国の需給ギャップは、1-3月期時点で-4.3%と日本に比べてまだ大きい([第8図])。労働市場がタイト化しているにも関わらず大きなマイナス需給ギャップが存在する背景は、米国の設備投資がまだ過剰な状態にあることである(6月9日付当レポート参照)。その意味では、米国のインフレ率は上昇するとはいえ穏当な水準にとどまる可能性が高く、量的緩和によって大幅なインフレの懸念があると見るのは時期尚早であろう。

以上、米国の労働市場のタイト化により今後賃金上昇圧力とインフレ圧力が継続的に高まり、PCEインフレ率はFOMCが目標とする2%に来年前半には達すると見る。これは米国経済が好循環に入っていることを示唆するものである。これらより、現在のFOMCの量的緩和政策は着実に縮小され、年内に資産購入停止、またインフレ率が2%に近づく来年には利上げが開始されるとの筆者の個人予想を維持する。

[第8図]
20140618図8

注1)Andreas Hornstein, et al, “A New Measure of Resource Utilization in the Labor Market”, April 18 2014, Federal Reserve Bank of Richmond.
注2)Alan B. Krueger, et al, ”Are the Long-Term Unemployment on the Margins of Labor Market?” March 20-21 2014, Brookings Panel on Economic Activity.

<経済指標コメント>日本の1-3月期GDP成長率は+6.7%

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[日本]

実質GDP成長率(1-3月期、2次速報値)は前期比年率+6.7%
1-3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率+6.7%と、予想を上回った1次速報値の同+5.9%から更に上方改訂された。需要項目別内訳は家計最終消費支出同+9.4%(1次速報値同+8.6%)、民間住宅同+13.0%(同+12.9%)、民間企業設備同+34.2%(同+21.0%)、公的需要同-1.9%(同-1.5%)、民間在庫寄与度-1.7%(同-0.7%)、純輸出同+0.1%(同+0.1%)。主な上方改訂要因は民間企業設備だった。消費税引き上げ前の駆け込み需要は当初予想よりも大幅に大きかったことになる。通年の成長率は2013年暦年が前年比+1.5%、2013年度が前年度比+2.3%。2014年暦年の成長率は、筆者の4月時点の予想である2%弱(4月5日付<経済レポート>参照)から上ブレして2%台半ばの成長が可能、また2014年度も筆者の4月時点予想である1%台半ばに対して2%レベルが可能な計算になる。
20140614図1

景気ウォッチャー調査(5月):現状判断DIは45.1(前月比+3.5ポイント)、先行き判断DIは53.8(同+3.5ポイント)
5月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する現状判断DIは45.1(前月比+3.5ポイント)と、消費税引き上げの影響で-16.3ポイントと大幅低下した4月から反発した。駆け込み需要反動減がやや緩和されたことを示唆している。ただしDIの水準はまだ50ポイントを下回っており、駆け込み需要期前の水準にはもどっていない。内訳は家計動向関連DIが42.1(前月比+4.9ポイント)、企業動向関連DIが47.4(同-1.1ポイント)、雇用関連DIが59.3(同+3.4ポイント)と、消費税の影響を受けやすい家計動向の好転が目立っている。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する先行き判断DIは53.8(同+3.5ポイント)と、+15.6ポイントの大幅反発を見せた4月に続き2か月連続で上昇した。反動減剥落後の景気回復に対する期待が示唆されている。内訳は家計動向関連DIが53.1(同+3.3ポイント)、企業動向関連DIが53.5(同+3.6ポイント)、雇用関連DIが58.6(同+4.2ポイント)と押しなべて上昇している。
20140614図2

[米国]

企業在庫(4月)は前月比+0.6%、企業売上高は同+0.7%
4月の企業在庫は前月比+0.6%とやや強めの伸び、3ヶ月前対比の伸び率も+1.5%と5ヶ月ぶりに前月の伸び率を上回った。企業在庫は在庫調整局面にあり、1-3月期には成長率を-1.6%と大幅に押し下げたが、その調整ペースもやや緩和されつつあるようだ。在庫売上高比率は1.29と前月比横ばい、ただし直近のピークである1月の1.31倍からは低下している。一方で企業売上高は前月比₊0.7%と強い伸びで、寒波の影響による年初の売り上げ減はほぼ解消された。企業在庫は調整局面が続くとみていたが、4-6月期には成長にプラス寄与する可能性が出てきた。
20140614図3

小売売上高(5月)は前月比+0.3%
5月の小売売上高は前月比+0.3%とやや弱めの伸びに留まり2ヶ月連続の減速となった。ただし、前月4月分は大幅上方改訂されて同+0.5%となり(速報値同+0.1%)、総体的には悪い数字ではない。5月分の内訳は新車販売の増加を反映して自動車同部品ディーラーが同+1.4%、建設資材園芸店が同+1.1%と売上増をけん引した。売上が減少した業種は衣服店同-0.6%、家電店同-0.3%、百貨店同-1.4%など。4月の実質個人消費の前月比-0.3%へのマイナス成長転化に続き、個人消費の一服感を示唆する指標である。しかし自動車販売が5月に年率16.7百万台に急増したことなど個人消費の伸びは堅調、また4-6月期GDP統計上の実質個人消費の基礎統計となる「自動車・ガソリン・建設資材・レストランを除く小売り売上高は5月までで前期比+1.1%の伸びに加速している(1-3月期は同横ばい)。4-6月期の実質個人消費も2%をやや超える成長を見込む。
20140614図4


<経済レポート>緩やかな拡大再開へ~米国設備投資

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1-3月期には在庫・設備投資・輸出といった企業部門が米GDPを大きく押し下げ、実質成長率(改定値)は前期比年率-1.0%のマイナスに転化した。短期的には悪天候要因による供給停滞の反動もあり民間設備投資はプラス成長に戻ると見る。しかし中期的には企業収益・キャッシュフローの飽和感と、設備稼働率回復ペースが遅いことで、民間設備投資の拡大は緩やかにとどまると見る。

企業部門がGDPを押し下げた

5月29日に公表された米1-3月期実質GDP成長率(改定値)は、前期比年率-1.0%と12四半期ぶりのマイナス成長に転化した(速報値は同+0.1%)。尤も、内容は表面の数字ほどには悪くない。米国経済をけん引している個人消費は同+3.1%と2四半期連続で3%台の高成長を示現し、成長に+2.09%寄与した。成長を押し下げたのは企業在庫(寄与度-1.62%)、純輸出(同-0.95%)、民間設備投資(同-0.20%)といった企業部門であった([第1図][第2図])。また住宅投資(同-0.16%)、政府支出(同-0.15%)も成長率を押し下げる要因になった。

GDPの押し下げ要因が主に企業部門であることは、循環要因や天候要因によるところが大きい。企業在庫は在庫調整という循環的要因であり、米国の場合4~6四半期で調整が終了する。純輸出(財・サービス赤字の拡大)は、財・サービス輸出が前期比年率-6.0%のマイナス成長というやや稀な要因である。財・サービス輸出の月次の推移を見ると食品と資本財を中心に1月~2月に輸出が急減したものの、3月以降は増加に転じていることから、輸出減少は悪天候による生産縮小が主要因と考えられる。

一方、民間設備投資も悪天候による生産停滞が一要因ではあるものの、成長への寄与度は過去5四半期にわたり1%を下回っている。2013年11月30日付当レポートでは、設備投資と企業キャッシュフロー及び設備稼働率の関係から、設備投資の拡大ペースは緩やかなものに留まるとの見方を示したが、以下に見るとおりその状況は現状でも大きく変わっていないようだ。

[第1図]
20140609図1
[第2図]
20140609図2

今年後半にかけて民間設備投資は拡大に転じると見る

まず、短期的な民間設備投資の動向を予想してみよう。GDP統計上の民間設備投資のうち機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)の四半期毎の推移を見ると、4-6月期は4月までで前期比年率+9.4%と、前期の同横ばいから大きく反発している。月次統計では1月をボトムに増加傾向に転じており、寒波の影響が払しょくされたことが示唆されている。また、先行指標となる同受注も4月までで同+15.5%と、今後年後半にかけて民間設備投資が加速することを示唆している([第3図])。

企業景況感の推移もこの見方を支持するものだ。ISM製造業指数のうちの受注DIと生産DIはそれぞれ1月と2月をボトムに反転上昇している([第4図])。5月ISM製造業指数調査では「自動車部品用の棒鋼の需要が高く、供給はタイトで価格が上昇している(鉄鋼業)」「業況は予想通りやや向上している(一般機械)」「業量は増加しつつある(化学工業)」といった回答がみられる。また、フィラデルフィア連銀企業景況感指数のうちの設備投資DI(6ヶ月先)も、4-6月期(5月まで)で2004年第4四半期以来の高水準に上昇しており、今後半年間に企業設備投資が増加することを示唆している([第5図])。同調査による設備投資DIは2012年7-9月期をボトムに上昇基調にあるにもかかわらず、実際の民間設備投資実績が低調に留まっていることは、設備投資が地政学要因や天候要因などの外的要因で一時的に抑制されていることを示唆している。企業の設備投資意欲自体は高水準にある。

以上より、筆者は4-6月期以降GDP統計上の民間設備投資が平均して前期比年率+6%レベルの成長を継続すると個人的に予想している。2014年通年では前年比+3.8%と、2013年の同+2.7%を上回る成長を見込む。

[第3図]
20140609図3
[第4図]
20140609図4
[第5図]
20140609図5

企業収益と設備稼働率は設備投資の緩やかな拡大を示唆

しかしながら、中期的には企業の設備投資が個人消費ほどの力強い拡大をする材料には乏しい。好況期には民間設備投資は2桁の成長をするのが経験則である。しかし来年にかけても民間設備投資の伸びは1桁台にとどまりそうだ。その要因の一つは企業収益の伸びの鈍化である。商務省統計によれば、4-6月期の企業収益(在庫評価及び資本減耗調整後)は前年同期比-3.0%と2009年以来のマイナスの伸びに転化した。また、GDPに対する企業収益の割合(企業分配率)も、リーマンショックから回復して2000年代に入ってからの最高水準である12%台にまで上昇したのちは横ばい状態が続いている([第6図])。上記のISM製造業指数調査においても、化学工業において売上増加にも関わらず価格転嫁が困難で利鞘確保が困難との回答がみられた。

同じく企業キャッシュフローの伸びも伸び悩んでいる。企業ネットキャッシュフロー(税引前利益‐ネット配当支払+固定資本減耗)は2014年1-3月期に前年同期比-6.6%と過去8四半期中3四半期でマイナスの伸びになっており、設備投資の源泉である企業キャッシュフローの拡大ペースが頭打ちになっていることを示唆している。一方で設備投資のキャッシュフローに対する比率は上昇傾向にあり、1-3月期時点で99.3%と、2008年の金融危機前以来の100%に接近している。設備投資/キャッシュフロー比率が100%を超えることは企業が当期の新たな現金取得額よりも多くの資金を設備投資に投入することを表す。米企業の設備投資/キャッシュフロー比率は中期的には低下基調にあり、企業がおおむね設備投資額をキャッシュフローの範囲内に収める傾向があった。しかしここにきて設備投資/キャッシュフロー比率が上昇していることは、企業の設備投資意欲がその財務状況を上回るものであることを示唆している。

設備投資の供給サイドの事情は上記の通りであるが、需要サイドの指標として設備稼働率を見る。鉱工業の設備稼働率は4月時点で78.6%と、リーマンショック前の水準である80%台をいまだ回復していない。また長期的な米国の平均設備稼働率(1972~2013年平均)は80.1%であるが、現在の水準はこれをも下回っている。実質GDPがリーマンショック前の水準を2011年に上回ったにも関わらず設備稼働率の上昇ペースが鈍いのは、設備投資のペースが成長を上回っていて過剰設備状態が続いていることを示している。企業収益状況と設備稼働率は、民間設備投資の拡大が今後も緩やかであることを示唆している。

[第6図]
20140609図6
[第7図]
20140609図7

企業在庫もあと2四半期は成長にマイナス寄与と見る

ここで、2013年11月30日付当レポートで見た、企業ネットキャッシュフローと鉱工業設備稼働率を外生変数、名目民間設備投資を内生変数とする回帰分析をアップデートする。企業ネットキャッシュフローと鉱工業設備稼働率及び名目民間設備投資の年次平均データの対数値を取り、外生変数のラグ期間を1年として回帰を行った結果が[第8図][第1表]である。2014年第1四半期までの企業ネットキャッシュフローと鉱工業設備稼働率に基づく2014年の名目民間設備投資は2013年の前年比+8%から加速して同+12%の伸び(インフレ率差引後の実質ベースでは10%前後)となる計算になる。これは上記の筆者個人予想よりはやや強めの結果ではあるものの、持続的な2桁成長を担保する結果でないことは上記と整合している。2015年以降は今年の企業キャッシュフローと設備稼働率が大幅に好転しない限り設備投資拡大ペースは大きく加速はしないことになる。米国経済において企業部門は家計部門に遅行して回復しているものの、そのペースは引き続き緩やかにとどまりそうだ。

なお、1-3月期に大幅に積み増しペースを減速させて成長率を-1.6%押し下げた企業在庫は、現在在庫調整局面にある。米国の在庫循環図は寒波の影響でやや歪んだ形になっている。昨年11月までは在庫積み上げペースが加速していたが、ホリデー商戦に当たり政府債務上限問題などへの警戒感から12月にペースがやや減速した。その後は寒波の影響で企業売り上げが減少するのに合わせて在庫積み増しペースが減速した。5月以降は企業売上が再び増加に向かっているとみられるが、5月ISM製造業指数・非製造業指数のいずれも、在庫DIは前月比横ばいで、まだ在庫積み増しの兆候は見られない。4-6月期は在庫調整からはいわば意図せざる在庫減少局面に当たり、企業在庫は7-9月期までは成長にマイナスの寄与を続けると予想する。

[第8図]
20140609図8
[第1表]
20140609表1

<経済指標コメント>米5月非農業部門雇用者数は+217千人増

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[米国]

ISM製造業指数(5月)は55.4%(前月比+0.5%ポイント)、非製造業指数(同)は56.3%(同+1.1%ポイント)
5月分ISM製造業指数は55.4%(前月比+0.5%ポイント)と4ヶ月連続の上昇、企業部門の回復加速を示唆する結果になった。総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注56.9%(前月比+1.8%ポイント)、生産61.0%(同+5.3)、雇用52.8%(同-1.9)、入荷遅延53.2%(同-2.7)、在庫53.0(同横ばい)。先行性のある新規受注DIが4ヶ月連続で上昇したこと、生産DIが4月の一時的マイナス転化から大幅反転上昇したことが回復力の強さを反映している。雇用DIは前月比低下したものの、5月雇用統計で4月の大幅雇用増からの一時的調整があったことと整合している。非製造業指数は56.3%と3ヶ月連続の上昇で、製造業同様に企業部門の強い回復を示唆している。
20140608図1

新車販売台数(5月)は年率16.7百万台(前月比+0.7百万台)
5月の新車販売台数は年率16.7百万台と前月の同16.0百万台から大幅増加、実に2007年2月以来の水準に回帰した。米国の実質個人消費は4月に前月比-0.3%の減少だったが、5月自動車販売の増加は消費が5月に再び拡大に転じていることを示唆している。
20140608図2

雇用統計(5月):非農業部門雇用者数は前月比+217千人、失業率は6.3%(前月比横ばい)
5月雇用統計、非農業部門雇用者数は前月比+217千人と4ヶ月連続で200千人を超える増加幅を維持。前月の一時的大幅増(同+282千人)からは減速したものの、前年比の雇用増加ペースは+1.7%と持続的である。雇用増が加速した業種は教育・医療(前月比+63千人)、娯楽・宿泊(同+39千人)など、米国雇用を構造的に支えている業種であり、雇用市場は米国本来の拡大パタンを維持しているといえる。失業率は6.3%と前月比横ばい。内容を見ると労働力人口が前月比+192千人、就業者数が同+145千人といずれも増加しており、労働市場の拡大を示唆する良い形。労働参加率は58.9%と2ヶ月連続前月比横ばい。また、時間当たり賃金の伸び率が前年比+2.4%と前月の同+2.3%から加速している。失業率低下にともない賃金上昇率が高まっていることは、年後半の米国のインフレ率上昇シナリオを支持するものである。総じて雇用統計は雇用市場の堅調な拡大と将来のインフレ圧力を裏付ける内容。FRBによる年内の資産購入停止と来年の利上げ開始予想を維持する。
20140608図3