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<経済指標コメント>米1-3月期GDPは-2.9%に下方改訂

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[日本]

全国消費者物価指数(5月)は前年比+3.7%、生鮮食品を除く総合指数は同+3.4%

5月の全国消費者物価指数は前月比+0.4%、前年比+3.7%の上昇。生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコア指数)は前月比+0.4%、前年比+3.4%。コア指数の前年比伸び率の前月からの拡大幅は+0.2%で、消費税引き上げが実施された4月の拡大幅+1.9%から大幅縮小した。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比横ばい、前年比+2.2%と前年比伸び率が前月の+2.3%から低下した。コア指数の前年比の伸び率拡大に寄与した項目はガソリン・電気代・プロパンガス・都市ガス代などで、エネルギーによるコア指数上昇への寄与度差が+0.21%と引き続き高い。なお、電気代・都市ガス代・プロパンガスおよび固定電話手数料は4月時点では旧税率が適用されており、5月分で初めて消費税引き上げ効果が反映されている。総じて消費税の物価への転嫁は5月までで終了したと見られる。消費税引き上げの影響を約2%とすると、実力ベースでのコア指数は前年比1%台半ばの伸びに留まっていることになる。なお、6月の東京都区部消費者物価指数(中旬速報)は総合指数が前月比-0.2%、コア指数が同横ばいと更に物価上昇に歯止めがかかっている。
20140629b図1

完全失業率(5月)は3.5%(前月比-0.1%ポイント)

5月の完全失業率は3.5%(前月比-0.1%ポイント)と水準的には実に1997年以来のレベルにまで低下した。失業率変化の要因は、労働力人口が前年比+0.5%の増加、就業者数が同+0.6%の増加で、前月と異なり労働力人口への流入を伴う失業率低下に回帰している。筆者試算による労働力化率は59.5%と前月比+0.3%の上昇。しかしながら労働参加率にはやや頭打ちの傾向がみられ、労働市場が飽和状態に近づいている可能性を示唆している。
20140629b図2

実質家計消費支出(5月、二人以上の世帯)は前月比-3.1%、前年比-8.0%

5月の実質家計消費支出(2人以上の世帯は)前月比-3.1%と、4月の同-13.3%に続いて減少。前年比の伸び率も-8.0%とマイナス幅を拡大した。4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動による消費減は5月も継続している。もっとも買い溜めによる在庫縮小が進行するにつれて家計消費は反発に転じると見る。
20140629b図3

[米国]

中古住宅販売戸数(5月)は年率4890千戸(前月比+4.9%)、中央販売価格は前年比+5.1%、在庫期間は5.6ヶ月

5月の中古住宅販売戸数は年率4,890千戸(前月比+4.9%)と2ヶ月連続の増加。昨年後半以来の販売減少傾向から反転の兆しがみられる。中央販売価格は前年比+5.1%と引き続き伸び率が低下。在庫期間は5.6ヶ月と前月の5.7ヶ月からやや短縮したものの、販売在庫戸数は2,280千戸と5ヶ月連続の増加で、販売増加にも関わらず在庫期間短縮幅は小幅にとどまり、適正とされる6ヶ月に近づいている。集計元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「第1四半期の落ち込みのあと販売活動は反発した」「住宅購入者は住宅価格の上昇が鈍いことで有利になっている」「住宅上昇の鈍化は販売在庫の上昇によりもたらされた」と述べている。今後住宅在庫の供給が続き、住宅価格上昇ペースが適度なものに留まれば、回復の遅れが懸念されている住宅市場は再び適度なペースでの拡大に転じると見る。
20140629b図4

新築住宅販売戸数(5月)は年率504千戸(前月比+18.6%)、在庫期間は4.5ヶ月

5月の新築住宅販売戸数は年率504千戸(前月比+18.6%)とこちらも2ヶ月連続となる大幅増加、販売戸数は2008年5月以来の年率500千戸台に回復した。一方販売在庫戸数は189千戸と過去数ヶ月間ほぼ横ばいにとどまっており、結果在庫期間は前月の5.3ヶ月から4.5ヶ月に大幅短縮となった。新築住宅建設は供給力の制約から在庫供給がおいつかず、販売ペースに対して在庫不足の状態にある。建設業の供給力が新築住宅市場の適正な拡大への鍵だといえる。
20140629b図5

耐久財受注(5月)は前月比-1.0%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+0.7%、同出荷は同+0.4%

5月の耐久財受注は前月比-1.0%の減少、民間航空機の受注減少などが主因。民間設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+0.7%と前月の同-1.1%からやや持ち直した。GDP統計上の民間機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)も前月比+0.4%と前月の同-0.4%をほぼ取り返す増加。四半期ベースでは、4-6月期の同出荷額は前期比年率+10%を超える増加となるペースで、1-3月期にマイナス成長だったGDP統計上の民間設備投資は4-6月期にプラス成長に回帰すると見る。
20140629b図6

実質GDP成長率(1-3月期、確報値)は前期比年率-2.9%

1-3月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率-2.9%と、改定値の同-1.0%から更に大幅下方改訂された。需要項目別には個人消費が前期比年率+1.0%(改定値同+3.1%)、民間設備投資同-1.2%(同-1.6%)、在庫投資寄与度-1.70%(同-1.62%)、純輸出寄与度-1.53%(同-0.95%)、政府支出前期比年率-0.8%(同-0.8%)。個人消費と純輸出の大幅下方改訂が成長率のマイナス幅を拡大させている。個人消費は非耐久消費財消費が前期比年率-0.3%(改定値同+0.4%)、サービス消費が同+1.5%(改定値同+4.3%)大幅下方改訂。このうちサービス消費については、米商務省による医療サービス関連消費の推計方法の変更が1月に遡って実施されたことが主因、また純輸出の下方改訂は、輸出に関する推計方法の変更が主因と米商務省は述べている。統計変更が今回の下方改訂要因であれば、改定値における-1.0%程度のマイナス成長が実力ベースであり、かつそれは一時的な要因と考えられる。今後成長率は4-6月期以降再びプラス成長に回帰すると見るが、数字上は今年通年の成長率は2%台への加速が困難になり、計算上は1.3%程度の成長に留まる計算になる。もっとも7月30日に公表される4-6月期GDP統計速報では年次改訂が過去3年の統計に対して実施される。本来の実力はこの4-6月期速報をまって評価することとしたい。
20140629b図7

実質個人消費(5月)は前月比-0.1%、PCEデフレーターは前年比+1.8%

5月の実質個人消費は前月比-0.1%と2ヶ月連続の減少。内訳は自動車販売の増加を反映した耐久消費財が同+1.0%の増加を見せたものの、非耐久消費財が同-0.3%、サービスが同-0.2%といずれもマイナスの伸びとなった。個人消費統計は商務省の推計手法変更による改訂が1月に遡って実施されており、医療サービス消費が下方改訂されている。このペースだと4-6月期の実質個人消費は前期比年率+1%台の伸びに留まる可能性が高く、通年のGDP成長率も下方リスクが出てきている。6月の小売売上高統計からも個人の消費もやや一服感がみられたこともあり、個人消費拡大は一時的な減速の可能性が出てきている。一方インフレ圧力は徐々に高まってきており、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+1.8%、同コア指数は同+1.5%といずれも伸びを加速させた。PCEデフレーターの伸びはFRBの目標である2%に近づいてきている(6月29日付<経済レポート>参照)。
20140629b図8

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<経済レポート>準備は整いつつある~FRB金融政策予想

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インフレ率と失業率が適正な水準に接近してきたことから、FOMCは年内に資産購入停止ののち、来年半ばには利上げを開始すると個人的には予想する。テイラー・ルールによる適正な政策金利の推計値はこの見方を支持している。一方リスク要因は、イエレン議長がインフレ・失業率のいずれにもまだ慎重な見方を崩していないこと、また直近のGDP統計の大幅下方改訂によるマイナス需給ギャップの再拡大である。

FOMC委員の利上げペース予測は前倒し方向にシフトしている

FRBは昨年12月の定例連邦公開市場委員会(FOMC)で資産購入のペース縮小開始を決定して以来、6月17-18日の定例会合まで5回連続で資産購入を月当たり100億ドルずつ縮小してきた。6月会合では毎月の資産購入額を、住宅ローン担保証券150億ドル・長期米国債200億ドルの合計350億ドルにまで縮小することを決定。今後も毎回同額の資産購入ペース縮小を決定すれば、10月または12月の定例会合で資産購入の停止が決定される見込みである。資産購入が年内に停止されれば、次は利上げの時期が焦点になってくる。筆者は、インフレ率の上昇を背景に、FOMCは来年の半ばにFF金利誘導目標の引き上げを決定すると個人的に予想する。

6月FOMC声明文におけるゼロ金利政策に関するフォワードガイダンスは、3月声明文で失業率の低下を背景に変更されて以来ほぼ不変である。そこでは、現在のFF金利誘導目標をどれほどの期間維持するかについての評価は「労働市場条件の指標、インフレ圧力、インフレ期待指標、金融市場動向の指標を含む広い範囲の情報を考慮する」と謳っている([第1表])。さらに同フォワードガイダンスでは、資産購入終了後も現在のFF金利誘導目標を「相当の期間」維持することが適切であること、さらに雇用とインフレ指標が委員会目標と整合したあともFF金利誘導目標を「委員会が正常と見るより低い水準に維持する」可能性を示唆している。

6月声明文と同時に公表された四半期毎のFOMC委員経済予測([第2表])によれば、2015年の適切な利上げタイミングを2015年と予測する委員は16人中12人で、前回3月時点予測の13人からは1名減少している。しかし適切な金融引き締めのペースについて、2015年末に1%を超えるFF金利誘導目標を予測する委員は8名と、3月の5名から大幅に増加している。これは、2015年中の利上げ開始がFOMC内で多数意見であるのみならず、予想される利上げ開始時期が3月に比べて前倒しになっていることを示唆している。

イエレンFRB議長は18日のFOMC後の記者会見で、金融政策や金利の道程には「不確実性」があると繰り返し述べて、金融引き締め開始時期については慎重に示唆を避けた。また、議長はのちに見るように、最近失業率低下やインフレ率上昇も一時的な要因による部分が多いと見ている。以下では労働市場やインフレに関する指標を分析しながら、またFOMCによる評価を合わせて考察しながら、来年の利上げ開始時期を探ってみる。

[第1表]
20140629表1
[第2表]
20140629表2

失業率低下は順調:労働参加率についてイエレン議長は慎重

まず、労働市場の条件を示す失業率は5月時点で6.3%とFOMCが1月定例会合まで低金利継続の目途としていた6.5%を下回っている。このペースなら、年末までに失業率は6%レベルにまで低下することが予想できる。米議会予算局の推計(2月「財政・経済見通し」)による米国の自然失業率は2014年時点で5.8%とされており、失業率は年内にほぼ自然失業率に近いと水準にまで低下することが期待できる。その意味では雇用の最大化というFOMCの使命達成の目途は立ちつつある。

一方、FOMC委員やイエレン議長の労働市場に対する見方は依然として慎重である。6月FOMC委員経済予測によれば、2014年第4四半期の失業率予測の中心傾向は3月予測よりも下方にシフトし、6.0-6.1%となっている。しかし、長期の失業率予測(委員が長期的な均衡水準と考える水準)の中心傾向は5.2-5.5%と、議会予算局の推計する自然失業率よりもかなり低い水準にある。つまり、雇用最大化を示唆する失業率の水準をFOMCはかなり低いところにおいていることになる。また、イエレンFRB議長は18日の記者会見で「失業率低下の一部は労働市場の縮小を反映していない」「最近見られる失業率低下の一部はおそらく影の失業もしくは求職意欲喪失の反映であり、これは労働人口への参加者の循環的な部分である」と述べ、今後経済回復とともに求職意欲喪失者が労働力人口に再流入すれば失業率低下ペースは減速すると述べている。イエレン議長は従前より、労働参加率の低下は構造要因ではなく循環要因であり、つまり緩和的な金融政策により改善可能なものと見ている。

筆者は、労働参加率の低下はより構造的な要因だとみている。1月13日付当レポート、および6月18日付当レポートでは、労働参加率低下の要因が労働力のミスマッチや、労働力人口からの恒久的な退出による構造要因である可能性を見た。その一例として、非労働力人口のうち「就業意欲のある非労働力人口」の寄与度はほぼゼロにまで低下していることがあげられる([第1図]、なお2014年1-3月期には一時的に寄与度拡大しているが、これは寒波による労働力人口からの一時退出が背景と考えられる)。非労働力人口の増加はほぼ恒久的な要因が大きくなっていることを示唆している。今後労働参加率が金融危機以前の水準にまで回帰する可能性は低く、したがって労働力人口への再流入による失業率の再上昇は考えにくいと見たい。

[第1図]
20140629図1

インフレ率は2%に向けて確実に上昇している: イエレン議長はノイズに慎重

FOMCがインフレ指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、総合指数が5月時点で前年比+1.8%、同コア指数が同+1.5%にまで上昇しており([第2図])、FOMCが目標とする2%に接近している(6月FOMC時点で判明していた4月時点の伸び率は総合指数が同+1.6%、コア指数が同+1.4%)。また消費者物価指数(CPI)は5月時点で同+2.1%と2ヶ月連続で2%台の伸びを見せ、コア指数も5月に同+2.0%に達している。5月11日付当レポートでは、PCEインフレ率が年末にかけて1.7%レベルに上昇すると筆者は見たが、現在のインフレ率上昇ペースはこれを上回るものである。またFOMCが評価対象とする期待インフレ率も安定から上昇の兆しがみられる。ミシガン大学消費者センチメント調査による12ヶ月後の期待インフレ率はここ数ヶ月に底入れして上昇に転じている([第3図])。インフレ率上昇と期待インフレ率上昇の兆しは、来年の利上げ開始を近々正当化する水準に達する可能性が高い。

6月FOMC委員経済予測では、2014年のPCEインフレ率予測中心傾向は上限がわずかに上方シフトして、第4四半期の前年同期比で1.5-1.7%、またコアインフレ率予測中心傾向は+1.5%-1.6%となっているものの、3月予測から大きな変動はない。6月FOMC時点で公表済だった4月PCEデフレーターの前年比の伸び率がすでに+1.6%に上昇していたことからは、FOMC委員のインフレ予想は相対的には控えめだといえる。イエレン議長は18日の記者会見でインフレ率についても慎重な見方をしている。議長は記者会見の質疑応答で最近のCPIのデータには「ノイズがある」として、インフレ率上昇が一時的なものであると見ていることを示唆している。また「ノイズから抽出した最近の証跡からは、時間をかけて徐々に2%の目標に回帰していく」と述べ、2%へのインフレ率回帰があくまで「徐々に」であると見ていると述べている。

インフレ率に含まれるノイズとしては、エネルギー価格の一時的上昇が考えられる。確かに総合指数においてはエネルギー価格が、またコア指数においては運輸サービスなどエネルギー価格の影響を受けやすいサービス品目がインフレ率を押し上げていることは事実である。しかしながら一方で、失業率の低下が時間当たり賃金の押し上げ要因になる兆しがかなり明らかになっている。また欠員率の上昇や週平均労働時間の増加など、労働市場がタイト化しつつある証跡が徐々に出てきている。6月18日付当レポートでみたように、労働市場の余剰は見かけよりも小さいと考えられることから、今後賃金上昇が更に消費者インフレ率を押し上げる趨勢的な要因になると見る。

[第2図]
20140629図2
[第3図]
20140629図3

1-3月期成長率の下方改訂はリスク要因

経済成長は総じて順調であるが、直近の統計はややリスク要因となっている。6月FOMC委員経済予測では2014年の実質GDP成長率予測(第4四半期前年同期比)の中心傾向は2.1-2.3%で、3月時点の+2.8-3.0%から大きく下方シフトしている。これは1-3月期の実質GDP成長率が予想外にマイナス成長になったことの反映である(6月FOMC時点で公表済の数値は改訂値の前期比年率-1.0%)。筆者のこの時点での2014年の成長予想は同じ第4四半期前年同期比では+1.6%である。さらに、25日に公表された確報値では、1-3月期の成長率は-2.9%に下方改訂されており、筆者試算では10-12月期の前年同期比の成長率は+1.3%に下振れする計算になる。成長率に関してはFOMC委員の予測は楽観的になる傾向があるが、これは6月予測でも同様の傾向である。

6月のFOMC声明文は経済成長につき「経済活動の成長はここ何ヶ月か反発した」としている。またイエレンFRB議長は6月FOMC後の定例記者会見で「第1四半期に実質GDPは減少したものの、この減少は主に一時的要因による結果と見える」としており、寒波の影響が剥落した4月以降にGDPは再び拡大に向かっていると見ているようだ。

GDP統計の下振れは、統計要因による一時的なものと筆者は見る。しかしインフレ率や金利引き上げ決定に対してはマイナスの需給ギャップの再拡大という形で影響を与えるため、筆者予想に対するリスク要因といえるだろう。1-3月期の-2.9%のマイナス成長によりマイナス需給ギャップが大幅に再拡大した。米議会予算局の推計による潜在GDPをもとにした筆者試算では、米国のマイナスの需給ギャップは2014年1-3月期時点で-5.1%と、前期の-4.0%から実に1%以上も拡大したことになる([第4図])。また、GDP統計の下方改訂前においてさえも、FOMC委員の成長予測がかなり楽観的であることは、来年半ばの利上げシナリオに対するリスク要因である。

[第4図]
20140629図4

テイラー・ルールは来年半ばの利上げ開始を示唆:来年末のFFターゲットは1%以上に

総合的に見れば、以上の労働市場関連指標とインフレ指標は総じてFRBによる来年半ばの利上げ開始を支持しているといえる。そこで、シンプルなテイラー・ルールを用いて適切な利上げ時期を推計してみることとする。テイラー・ルールとしては以下の公式を用いる。

     it=2+πt+α(πt-π)+β(yt-yt*

ここでitは適切な政策金利、πtはインフレ率実績、πはインフレ率目標、ytはGDP実績、yt*は潜在GDPである。インフレ率はPCEデフレーターの前年同期比の伸び率を用い、2014年4-6月期にこれが2%に達したのち2015年いっぱい2%で推移すると前提する。インフレ率目標は2%とする。GDPについては、2014年4-6月期以降は筆者個人予想、2015年は3%成長と前提する。潜在GDPは米議会予算局の2月時点の推計値を用いる。また係数はα=0.5、β=1.0を用いる注1)

試算の結果は[第5図]の通りである。2014年1-3月期時点ではテイラー・ルールに基づく適正な政策金利は-2.5%といまだマイナス金利の領域にある。しかし、今後インフレ率の上昇とマイナス需給ギャップの縮小に伴い適正な政策金利のマイナス幅は縮小し、2015年4-6月期にほぼゼロに、7-9月期には約+0.2%に上昇する計算となった。実際にはPCE総合インフレ率はCPI同様に来年には2%を超える伸び率になる可能性が高い。従って現実にはこの試算は、来年半ばころからFF金利誘導目標の引き上げを開始することを正当化する結果だといえる。来年半ばに利上げを開始すれば、FOMC一回当たり0.25%の利上げ実施として、2015年末のFF金利誘導目標は1.25%レベルになると計算できる。これは6月のFOMC委員の予測(2015年末のFF金利誘導目標を1%と予測する委員、1.25%と予測する委員がそれぞれ3名ずつ)とも整合する結果である。

[第5図]
20140629図5

出口戦略の詳細は年末に公表予定: バーナンキ「原則」よりリベラルになりそう

以上より、2015年半ばのFF金利誘導目標引き上げ開始、2015年末のFF金利誘導目標は1%~1.25%を筆者の個人予想とする。もっとも金融政策正常化へのプロセスはFOMC内でも未確定であり、今後FOMC内の議論も参照しつつプロセス予想を策定する必要がある。一つの基準となるのは、2011年6月に当時のバーナンキ議長の下のFOMC議事要旨で公表された「出口戦略諸原則」である。これによれば金融政策正常化は、①保有資産再投資停止、②フォワードガイダンス改訂と資金吸収オペ開始、③FF金利誘導目標引き上げ、④住宅ローン担保証券売却開始、のプロセスによることとされていた([第3表])。これは、FRBのバランスシート縮小と金利引き上げを平行して実施する極めて正統的な手法だといえる。

しかし、イエレン議長はこの出口戦略諸原則をそのまま今後の正常化に適用する意図はないようだ。4月FOMC議事録によれば、会合では金融政策正常化の手段として、①超過準備への付利金利引き上げ、②リバースレポ操作(RRP)、③ターム物預金ファシリティ(TDF)などの手段が検討されている。イエレン議長は18日記者会見の冒頭発言で「委員会は正常化に関わる多くの課題を建設的に検討中であり今後の会合でも議論を継続する、追加的な詳細は今年の後半に提供できると期待している」と述べ、年後半に具体的な出口戦略を公表する意図を表明した。一方、2011年の出口戦略原則については質疑応答で記者の質問に答えて「再投資の停止如何は未定」また「住宅ローン担保証券の売却は行わない可能性が高い」と述べている。イエレン議長はバーナンキ議長時代の想定よりもよりリベラルに信用市場に配慮した出口政策をとる意図が示唆されている。この点も年半ばのFF金利誘導目標引き上げ予想に対するリスクといえよう。

[第3表]
20140629表3

注1)テイラー・ルール公式と係数は、2012年6月6日のイエレンFRB副議長(当時)の講演Janet L. Yellen, “Perspectives on Monetary Policy”, June 6, 2012に倣った。

(訂正)8月14日、「テイラー・ルールは来年半ばの利上げ開始を示唆」の節の記述と[第5図]を訂正しました。