<経済指標コメント>日本のCPIは前年比+3.6%

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[日本]

全国消費者物価指数(6月):総合指数は前年比+3.6%、生鮮食品を除く総合指数は同+3.3%

6月の全国消費者物価指数は前月比-0.1%、前年比+3.6%。生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコア指数)は前月比横ばい、前年比+3.3%。総合指数、コア指数ともに前年比の伸び率は前月に比べ減速した。構成品目別にはエネルギーが4ヶ月ぶりに伸びを減速させ、総合指数とコア指数の伸び率を-0.04%押し下げたのが主因。消費税率引き上げの影響を除くと、コア指数の伸び率は1%台前半にとどまっていると考えられる。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比-0.1%、前年比+2.3%。なお、東京都区部の総合指数(7月中旬速報)は前年比+2.8%(前月同+3.0%)、コア指数は同+2.8%(前月同+2.8%)とこちらも伸びが減速する兆しがみられる。
20140726図1

[米国]

消費者物価指数(6月):総合指数は前年比+2.1%、コア指数は同+1.9%

6月の消費者物価指数は前月比+0.3%、前年比+2.1%(前月同+2.1%)、コア指数は前月比+0.1%前年比+1.9%(前月同+2.0%)。前年比の伸びは総合指数が前月並み、コア指数は前月に比べやや減速した。前月比で価格が上昇した主な品目はガソリン(前月比+3.3%)、下落した主な品目は新車(同-0.3%)、中古車(同-0.4%)など。ただし前年比の伸び率で見るとエネルギー価格の上昇率が+1.6%と前月の同+3.3%から大幅に減速している。今年に入り2%台に上昇してきた消費者インフレ率はエネルギー価格の上昇一服によりいったん伸びが減速する可能性はある。しかし年末インフレ率がFRBの心地よい水準に位置するとの見方は維持する。FRBが指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は5月時点で前年比+1.8%の伸びだがこれもいったん減速ののち年末には1.7%レベルとなると見る。
20140726図2

中古住宅販売戸数(6月)は年率5040千戸(前月比+2.6%)、在庫期間は5.5ヶ月

6月の中古住宅販売戸数は3ヶ月連続の増加となる年率5040千戸(前月比+2.6%)、昨年10月以来の年率5百万戸台を回復した。販売在庫も5ヶ月連続で増加し、在庫期間は前月並みの5.5ヶ月。総じて住宅販売は年初の寒波期をボトムに回復途上にある。また販売在庫も順調に増加しており、需給はややタイト乍ら在庫期間は標準の6ヶ月に近いところにまで緩和してきている。中央販売価格は前年比+4.3%と5ヶ月連続で伸びを減速させ、昨年の10%台の伸びに比べて過熱感はかなり緩和されているといえる。中古住宅市場は調整を経て程よい均衡に向かっていると考えられる。集計元の全米不動産業協会は「在庫水準は過去1年で最高の水準にあり、販売価格は(消費者にとって)歓迎すべき水準に減速している」と述べており、住宅価格減速が販売を更に加速させる可能性を示唆している。
20140726図3

新築住宅販売(6月)は年率406千戸(前月比-8.1%)、在庫期間は5.8ヶ月

6月の宅販売は年率406千戸(前月比-8.1%)と前月の同+8.3%増から大幅減少に転じた。前月分も速報の同504千戸から同442千戸に大幅下方改訂された。6月分の販売減少に伴い在庫期間は5.8ヶ月と前月の5.2ヶ月から長期化した。中央販売価格は前年比+5.3%と前月の同+6.9%から減速した。新築住宅販売は最近振れの大きい指標となっているが、総じて販売戸数は調整傾向にあり、在庫期間は6ヶ月に近いところにまで調整が進んでいる。販売在庫も徐々に積み上がりが進んだことで、新築住宅販売も現在の調整期間を経て、中古住宅市場にやや遅行して再び拡大に向かうと見る。
20140726図4

耐久財受注(6月)は前月比+0.7%、除く輸送関連同+0.8%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+1.4%、同出荷同-1.0%

6月の耐久財受注は前月比+0.7%と前月の同-1.0%からやや反発。民間設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+1.4%と3ヶ月ぶりの増加に転じた。4-6月期GDP統計の民間機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は前月比-1.0%と2ヶ月連続の減少となった。しかし4-6月期平均は1-3月期平均に比べて+8.6%の増加となった。4-6月期GDP統計上の設備投資(機器投資)は前期比年率10%レベルの成長を見せたとの予想を維持する(7月20日付<経済レポート>参照)。また資本財受注も増加していることから、年後半にかけても民間設備投資は適度なペースでの拡大を見込む。
20140726図5


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<経済レポート>内需はプラスに戻った~米国経済定点観測

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30日公表予定の米4-6月期GDPは前期比年率2%の成長に回復したと個人的に予想する。通年成長率は1-3月期の一時要因による落ち込みの影響で前年比+1.3%に留まると見ざるを得ない。しかし、米国経済のファンダメンタルズは堅調であり、年末にかけて3%成長ペースに回帰すると見る。リスク要因は地政学リスクのほか、やや高値警戒感のある株価とFRB金融引締め期待による金利上昇である。

1-3月期のGDP落ち込みは天候と統計要因

1-3月期に米国の実質GDP成長率は予想外の前期比年率-2.9%に落ち込んだ([第1図])。この要因は大きく2つある。まず、年初から米国を襲った寒波の影響で、個人消費や設備投資などの経済活動が大きく落ち込んだこと。次に、米商務省が6月の1-3月期GDP統計確報値公表時にいくつかの需要項目の推計手法を変更したことである(6月29日付<経済指標コメント>参照)。米商務省によれば、個人消費統計のうちの医療サービス関連消費の推計方法が1月に遡って改訂され、結果実質サービス消費は改訂値の同+4.3%(寄与度+1.93%)から確報値で同+1.5%(寄与度+0.67%)に下方改訂された。また輸出に関する推計方法変更により、純輸出の寄与度が改訂値の-0.95%から確報値で-1.53%に下方改訂された。個人サービス消費と純輸出を合わせて成長率を-1.84%押し下げた。これらが純粋に統計要因だとした場合、実力ベースの1-3月期の成長率は、推計手法変更前の数字である改訂値の同-1.0%レベルだと推測することができる。

中期的な米国の成長の実力を企業景況感指数との関係からみてみよう。ISM製造業指数と成長率の間にはある程度の相関がみられる([第2図])。ISM製造業指数は1月に51.3%に急落ののち上昇に転じており、6月現在で55.3%の水準にある。4-6月のISM製造業指数平均は55.2%で、これは1-3月期平均の52.7%に比べて上昇している。4-6月期平均のISM製造業指数に相当する4-6月期の成長率は前年比で約+2.4%になる計算である。つまり現状の企業景況感からは米国経済は潜在成長率を超える2%台の成長が可能な環境にあるということができる(米議会予算局推計の潜在GDPによれば、2014年4-6月期の潜在成長率は前年比+1.7%となる計算になる)。

しかしながら、寒波の影響からのリバウンドが必ずしも十分に力強くないこと、また輸出の伸び悩みなどから、4-6月期の成長率は前期比年率+2.0%(前年比+1.4%)程度の回復にとどまった模様だ(4-6月期GDP統計は7月30日公表予定)。また2014通年の成長率は、4-6月期の数字の落ち込みの影響で、前年比+1.3%程度の成長にとどまらざるを得ない計算になる。これは、4月時点の筆者個人予想(4月5日付当レポート参照)である2014年通年成長率+2.4%に比較すると大幅な下方修正となる。以下では、需要項目毎の基礎統計を中心に、4-6月期の成長率予想を行う。

[第1図]
20140720図1
[第2図]
20140720図2

自動車が消費を牽引するもサービス消費は低迷中

実質個人消費は4-6月期に前期比年率+1.7%の成長に回復したと予想する([第3図])。月次の個人消費統計によれば、実質個人消費は寒波の悪影響から反転増加して3月に急伸したのち、4月、5月連続でマイナスの伸びになっている。しかし、6月の実質個人消費は3ヶ月ぶりに前月比でプラウの伸びに転じていると見る。自動車販売は2ヶ月連続の増加で6月に年率16.9百万台に達した。自動車・ガソリン・建設資材・レストランを除くベースでの小売売上高も6月に前月比+0.7%と急増し、このベースでの4-6月期小売売上高は前期比+1.8%と前期の横ばいから急伸している。6月の実質個人消費を前月比+0.4%の強めの伸びとすれば、4-6月期の実質個人消費は前期比年率+1.7%となる計算である。

消費者センチメントも高水準で推移しており、個人消費の堅調さを示唆している。ミシガン大学消費者センチメント指数は今年に入りおおむね80ポイント台の前半でほぼ安定的に推移している。小売売上高は1月に一時消費者センチメントから大きく下方乖離する形で減速したが、6月時点では消費者センチメントとほぼ整合的な水準にまで回復している([第4図])。これは、1月からの小売売上高の減速が天候要因による一時的なものだったことを示唆している。

また今後についても、外部環境要因は個人消費が堅調に推移することを示唆するものが多い。非農業部門雇用者数は2月以降5ヶ月連続で200千人を超える増加をしている。株価は2月に底入れしたのち上伸を続けており、NYダウは6月に史上初の17000ドル台に乗せている。もっとも、個人消費の内訳を見るとその伸び率にはばらつきがみられる。個人消費を需要項目別に見ると、振れの大きい傾向がある自動車などの耐久消費財消費の増加が1月の落ち込み以降急回復して全体をけん引している。これに比べて非耐久消費財とサービスの消費の伸びは緩やかなものにとどまっている([第5図])。特にサービス消費は個人消費の約7割を占めており、これが2%を超える成長を持続できなければ個人消費の持続性が確認しにくい。5月現在でサービス消費の伸びは1%台にとどまっている。鉱工業生産指数統計によれば、電力・ガスなどの公益事業の生産指数は2月以降5ヶ月連続で低下している。このことからは、サービス消費の下振れは依然4-6月期個人消費成長率の下方リスク要因ということができる。

[第3図]
20140720図3
[第4図]
20140720図4
[第5図]
20140720図5


設備投資と住宅投資はプラス成長に回帰したと見る

民間企業設備投資は、1-3月期に前期比年率-1.2%、うち機器投資は同-2.8%のマイナス成長に転化したが、4-6月期にはいずれもプラス成長に回帰し民間設備投資は前期比年率6%程度の成長をしたと予想する。1-3月期の機器投資の落ち込みは、基礎統計である非国防資本財出荷(航空機関連を除く)の同じ時期の減少と整合していた。4-6月期にはこの出荷額はほぼ昨年10-12月期並みの増加率に転じており、機器投資は昨年10-12月期並みの10%レベルの成長を見込むことができる([第6図])。

一方で、構造物投資(工場、商業用建物など)は4-6月期もマイナス成長が続きそうだ。1-3月期には構造物投資は前期比年率-7.7%と2四半期連続のマイナス成長だった。基礎統計となる民間非住宅建設支出は、1月以降3ヶ月連続で前月比減少したのち4、5月には増加に転じているものの、4-6月期平均では前四半期を下回る水準に留まる見込みである([第7図])。機器投資とソフトウエア投資の増加と構造物投資の合わせると、民間設備投資全体の伸びは前期比年率6%台に留まると見る。

住宅投資は1-3月期に前期比年率-4.2%と、2四半期連続となるマイナス成長だった。しかし4-6月期には2桁近い伸びに回復したと見る。基礎統計である住宅着工件数は、4-6月期平均で前期比+6.0%増加している。天候要因で6月の着工件数が大幅減少したものの、4月の着工急増で4-6月期はGDPを押し上げるのに十分な数字となったとみられる。

[第6図]
20140720図6
[第7図]
20140720図7
[第8図]
20140720図8


4-6月期に2%成長、年末にかけ3%に加速を見込む:リスク要因は株価の高値警戒

純輸出は前期に続き4-6月期も成長率にマイナスの寄与となったと見る。5月分までの貿易収支統計によれば、実質ベースの財の貿易収支赤字は2四半期連続で拡大しており([第9図])、リーマンショック前の2008年前半以来の水準となっている。貿易赤字拡大の主因は輸入増加の回復ペースが急加速して、輸出増加ペースを上回り始めたことにある([第10図])。海外経済の減速に比べて、国内の需要の回復がこれを上回るものであることを示唆するこの傾向は、むしろ米国経済が相対的に他国に比べて健全であることを示唆しているといえるだろう。

以上より、4-6月期に米国実質GDP成長率は前期比年率+2.0%の成長に回復したと個人的に予想する。その後についても、堅調な雇用増加と企業景況感の持続、株価上昇などからくる消費者センチメントへの好影響から、年末にかけて米経済は2%台半ば~3%の成長を持続すると見る。リスク要因としては、諸々の地政学リスクのほかに、ややバリューエーション的に高値警戒感のある株価動向があげられる。株価は年末にかけてNYダウで18000ドルを目指すと個人的には予想している。しかしながら、S&P500のPEが20倍に近づいている現状の水準は投資家に高値警戒感を持たせる水準と言わざるを得ない。また、FRBは10月までに資産購入停止を決定して来年半ばに利上げを開始すると予想するが、これに伴う金利上昇も個人消費にとっての抑制要因ではある。筆者の過去の試算によれば、現状2.5%の長期金利が3.5%に上昇すると、個人消費は約-1.6%(=金利上昇率40%×弾性値0.04)押し下げられる計算になる(2013年12月31日付当レポート参照)。しかし、住宅価格が、現状の前年比+12%ペースで上昇を継続すれば、金利上昇による消費抑制効果はカバー可能である。

なお、7月30日に公表予定の米商務省のGDP統計では、年次改訂により統計が過去3年に遡って改訂される予定である。改訂後の米国経済の趨勢については指標公表後に改めて分析を行う。

[第9図]
20140720図9
[第10図]
20140720図10
[第1表]
20140720表1
注)7月22日、[第1表]の日本の実質GDPの数値を訂正いたしました。

<経済指標コメント>米住宅着工件数は-9.3%減

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[米国]

小売売上高(6月)は前月比+0.2%、除く自動車関連は同+0.4%

6月分の小売売上高は前月比+0.2%と弱めの伸びかつ3ヶ月連続の減速となったが、内容は見かけほど悪くない。売上が減少したのは自動車同部品ディーラー(同-0.3%)、建設資材(同-1.0%)、レストラン(同-0.3%)。台数ベースでは6月の新車販売台数は年率16.9百万台と2ヶ月連続で増加している。建設資材売上の減少は住宅着工の減少による一時的なものと考えられる。個人消費統計上の基礎統計となる「自動車・ガソリン・建設資材・レストランを除く」ベースでは前月比+0.7%と伸びが急加速している。4-6月期の同ベースの売上高は前期比+1.8%と1-3月期の同横ばいから伸びを加速させている。総じて個人消費は今年前半の一時的減速から加速に転じつつあり、6月の実質個人消費は3ヶ月ぶりのプラス成長への転化、4-6月期GDP統計上の実質個人消費は、1-3月期の前期比年率+1.0%から加速して同+2%レベルの伸びが期待できる。
20140719図1

企業在庫(5月)は前月比+0.5%、企業売上高は同+0.4%

5月の企業在庫は前月比+0.5%と前月の同+0.6%に続いて強めの伸び、企業売上高も同+0.4%と前月の同+0.8%に続いて増加した。在庫売上高比率は1.29倍と安定している。企業在庫の3ヶ月前対比の増加幅は2ヶ月連続で拡大しており、企業在庫の積み上げが加速していることを示唆している。1-3月GDP統計では企業在庫積み上げの減速が成長率を実に-1.7%押し下げたが、4-6月期は一転して成長にプラス寄与すると見る。
20140719図2

鉱工業生産指数(6月)は前月比+0.2%、設備稼働率は79.1%(前月比横ばい)

6月の鉱工業生産指数は2ヶ月連続の上昇となる前月比+0.2%、内訳は製造業同+0.1%、鉱業同+0.8%、公益事業同-0.3%。過去分の改訂により4月のマイナスの伸びは前月比横ばいに上方改訂、全体として過去5ヶ月間はほぼ生産が堅調な伸びを続けているとの結果になった。設備稼働率は79.1%と前月比横ばい、1972-2013年平均の80.1%にはまだ及ばず、鉱工業設備にはまだ余剰があることを示唆している。
20140719図3

住宅着工件数(6月)は年率893千件(前月比-9.3%)、着工許可件数は同963千件(同-4.2%)

6月の住宅着工件数は年率893千件(前月比-9.3%)と大幅減少、前月分も同985千件に下方改訂され、2ヶ月連続の減少かつ連続で1000千件を下回った。しかし地域別内訳を見ると、着工の減少は南部の急減(同-29.6%)が主因で、北東部(同+14.1%)、中西部(同+28.1%)、西部(同+2.6%)はいずれも増加している。報道等によれば、南部の悪天候が同地区住宅着工の減少の背景で、一時的なもののようだ。この一時要因を除けば総じて住宅着工は堅調に回復しているといえる。4-6月期の住宅着工件数は年率980千件(前期比+6.0%)と、1-3月期の同-9.8%から急反発している。1-3月期までGDP統計上の住宅投資は2四半期連続でマイナスの伸びが続いたが、4-6月期は前期比年率+10%レベルへの反発を見込む。6月の住宅着工許可件数は年率963千件(前月比-4.2%)とこれも2ヶ月連続の減少、ただし減少幅は着工件数に比べて小さく、今後住宅着工は安定基調を保つと見たい。
20140719図4

<経済レポート>出口の扉は速やかに~6月FOMC議事要旨

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6月FOMC議事要旨からは、いわゆる出口戦略に関する委員の議論の状況が読み取れる。バーナンキ議長の時代に比べ、イエレン議長のFOMCでは、出口戦略の実施において市場への影響を最小限にとどめることへの配慮がうかがえる。また政策手段としてFF金利誘導目標を必ずしも前提としないなど、実効性重視の考え方も見て取れる。

FOMCは「金融正常化の政策手段」を検討中

6月時点のFOMC委員による四半期経済予測によれば、2015年中の金融引締めを予測する委員が16人中12人で、2015年末のFF金利の中央予測値は1.0%となっている。FOMC内ではほぼ来年の利上げ開始がコンセンサスとなっているといえる。筆者個人は、今年中にFOMCが資産購入の停止を決定し2015年半ばに利上げを開始、年末のFF金利誘導目標は1.25%にまで引き上げられると予想している。なお、9日に公表された6月17-18日定例FOMCの議事要旨によれば「経済が委員会の期待通りに進捗して今後の各会合で資産購入ペースを縮小することを正当化するならば、最後の縮小は10月会合後に起きる」としている。これまでFOMCは資産購入のペースを会合毎に100億ドルずつ縮小し現在では毎月350億ドルだが、今後7月、9月の定例会合で100億ドルずつの縮小を決定、10月定例会合で最後の150億ドルを停止することを決定する方向である。

一方で、長期間の量的緩和により銀行間市場は大幅な資金余剰状態にある。6月末現在の米国のマネタリーベースは約3.9兆ドルで、リーマンショックを機にFRBが大量資金供給を開始する以前の水準の約5倍に達している([第1図])。マネタリーベースの内訳をみると、所要準備預金残高は約89百万ドルにすぎず、約2.6兆ドルの超過準備残高、約1.3兆ドルの流通貨幣がマネタリーベースの太宗を占めている。ゼロ金利政策開始前のFRBの金融政策はオーバーナイト物FF金利を操作目標としていた。しかし超過準備残高がここまで増加した状態では、基本的にいずれの銀行も資金余剰状態にあるため、FRBがFF金利誘導目標を引き上げても実際のFF金利が目標通りに上昇しない可能性がある。そこでFRBとしては、FF金利誘導目標引き上げに加え、FF金利を目標に誘導するための手段を講じる必要が出てくる。

FOMCでは4月定例会合より、「金融政策正常化」と題するセッションを設け、金融政策正常化に向けた政策手段の検討を継続している。本レポートでは、4月-6月定例会合議事要旨及び6月定例会合後のイエレンFRB議長の記者会見内容から、現在のFOMCにおける出口戦略の検討状況を整理する。金融正常化に向けた出口戦略については、バーナンキ議長の時代2011年6月FOMC定例会合議事録において「出口戦略諸原則」が示されている(6月29日付当レポート参照)。しかしイエレン議長は必ずしもこの「諸原則」に縛られることなく、新たな金融政策パッケージを策定して今年の後半に公表すると6月定例会合後の記者会見で述べている。

[第1図]
20140713図1

超過準備預金への付利金利引き上げが利上げに中心的な役割

4月、6月のFOMC議事要旨によれば、現在金融政策正常化のためのツール(政策手段)として[第1表]に示したものが俎上に乗っている。これらは、2011年の「諸原則」に示された手段を参考にはしているものの、その内容は2011年の諸原則とは異なるものになりそうだ。2011年「諸原則」では、①保有資産の再投資停止②フォワードガイダンス改訂と準備預金吸収操作③FF金利誘導目標引き上げ④住宅ローン担保証券売却、という順序を定めていた。しかし6月FOMC議事要旨によれば、イエレン議長のFOMCでは超過準備への付利金利調整とオーバーナイトリバースレポ(ON RRP)を政策手段の中心にする可能性が高そうだ。さらにFOMCはFF金利計算方式の変更をも検討している。また住宅ローン担保証券売却についてはこれを実施しない可能性が高いことを6月の記者会見で表明している。以下ではそれぞれの政策手段の沿革と4月、6月のFOMCでの議論の状況を見てみる。

FRBによる準備預金への付利は、2008年のリーマンショックを受けて同年10月に成立した金融安定化法Emergency Economic Stabilization Act of 2008成立で可能となった。当初は、所要準備に対する付利は準備預金積み期間の平均FF金利誘導目標マイナス10bps、超過準備に対する付利金利は積み期間の最低FF金利誘導目標マイナス75bpsとされ、2008年10月より実施された(当時のFF金利誘導目標は1.5%)。その後FF金利引き下げに伴いこのこれらの幅は改訂されたのち、2008年12月にFF金利誘導目標の0-0.25%への引き下げとともに、所要準備、超過準備ともに付利金利は0.25%とされ現在に至っている([第2表])。

一般に超過準備預金への付利金利は銀行間金利のフロアを設定する機能がある。量的緩和で超過準備預金残高が大量に存在する状況では、民間銀行の準備預金調達ニーズは低く、中央銀行が政策金利の誘導目標をアナウンスしても実際の銀行間金利は誘導目標より低くなりやすい。しかし、超過準備預金に金利付利すれば、資金の出し手は市中金利が超過準備預金金利にまで下がったところで資金を市中に放出するインセンティブを失い、金利はそれ以上に下がらない。民間銀行は中央銀行より信用度が低いため、中銀預金への付利金利より低い金利で民間銀行に対して資金を放出することは不合理だからである。超過準備預金が大量に存在する状態でも、超過準備預金への付利金利を引き上げることで、実際のFF金利を誘導目標に合わせて引き上げることが容易になるわけだ。6月FOMC議事要旨によれば「ほとんどの参加者は超過準備付利金利の調整が金融政策正常化のプロセスにおいて中心的な役割を果たすことで合意した」とされている。

[第1表]
20140713表1

[第2表]
20140713表2

リバースレポとターム物預金ファシリティによる資金吸収:FF金利算出方法変更も

オーバーナイトリバースレポ(ON RRP)は、FRBが資金吸収を行う公開市場操作である。ON RRPで資金を市場から吸収することによりマネタリーベースを縮小することで、FF金利を操作目標とする金融政策がよりよく実施されることになる、また、Freddie MacやFannie Maeなどの住宅公社はFRBに中銀口座を保有しているものの、準備預金を積む義務がなくまた預金への付利もされない。住宅公社はそのため超過準備預金付利金利を下回る金利で資金を出すことがあり、実際には上記のように超過準備預金付利金利は市中金利のフロアにならない。そこで、住宅公社も応札できるオーバーナイトリバースレポを実施することで、その付利金利を市中オーバーナイト金利のフロアとすることができる。

しかし、「何人かの参加者は、委員会は必要に応じ他の政策手段の実施も準備するべき」として、ターム物預金やターム物リバースレポを例として挙げている。ターム物預金ファシリティ(TDF)は、4月FOMCで既に検討開始されていた手段で、リバースレポ同様に市場からの資金吸収によってFF金利の誘導を容易にする役割を果たしうる。TDFの場合、期間がターム物であることにより、オーバーナイトのリバースレポによる資金吸収よりも効果は大きいといえる。TDFは既に2010年5月にFRBに承認され、その後少額の試験的操作が実施されている。直近では期間1週間、金利0.30%レベルで実施されている。

FF金利誘導目標について2011年の「諸原則」では、「FF金利誘導目標引き上げ後はこれを一義的な金融調節手段とする」と定められていた。しかし現在のFOMCは必ずしもこれを所与としていない模様だ。6月のFOMC議事録によれば「ほとんどの参加者はFF金利が引き続き委員会の金融調節枠組みと正常化におけるコミュニケーションで役割を果たすべき」と考え、そのうちの多くは「誘導目標金利レンジを公表するべきと述べ」た。しかしながら「何人かの参加者は、委員会の手段の市場金利への効果の程度が不確実であることから、正常化の期間においては管理可能な金利administrative rates にフォーカスするべき」と述べている。さらに、「参加者は、より健全なオーバーナイト銀行調達金利を取得しベンチマーク金利の基準を開発する国際的な動きの教訓を適用するべく、実効FF金利の産出方式変更の可能性を検討した」とされている。なお、6月FOMCでは保有資産の再投資についても議論がなされ「多数の参加者は、再投資の停止は利上げと同時かその後が最善だと述べ、そのうちのほとんどは利上げの後が好ましい」と述べている。しかしながら「いくらかの参加者」は2011年の諸原則に則り利上げ前に再投資を停止するべきとしている。

6月FOMC議事録では「総じて参加者は、公共とのコミュニケーションを促進し金融政策の信頼を高める簡潔で明瞭な正常化へのアプローチを選好すると表明」し「委員会は今年の後半にその計画を策定して公表するのが有効」とされた。イエレン議長が6月記者会見で述べたように今年後半に正常化に関する計画をFOMCが公表する意向が議事録からも読み取れる。

出口戦略は一度で速やかに実施する方向

現在のFOMCの考える正常化へのプロセスは2011年のFOMCの想定とはかなり異なるものになりそうだ。主な相違点としてはまず、現在のFOMCは長期国債や住宅ローン担保証券などの資産の売却には消極的であることがあげられる。2011年の「諸原則」には「準備預金吸収のための一時的市場操作」の実施と「住宅ローン担保証券の売却」が謳われていた。前者の「準備預金吸収のための市場操作」では潜在的には米国債の買い切りオペも想定されていたと考えられる。しかし現在のFOMCでは買い切りオペは議論の俎上にのっておらず、住宅ローン担保証券の売却もイエレン議長が記者会見で否定的なスタンスを示している。これは長期金利上昇という市場へのインパクト、特に住宅ローン担保証券売却による住宅市場への悪影響に最大限配慮する考え方が背景にあると考えられる。

次に、政策手段発動の順序として、2011年のFOMCがまず保有資産再投資の停止を最初に実施するとしていたのに対し、現在のFOMCはこれをFF金利誘導目標引き上げと同時かむしろその後にすることを選好していることである。保有資産の再投資はFRBによる量的緩和手段の中では最もマイナーな手段に相当するものであり、こうした手段をまず停止することで将来の利上げに向けた地ならしをするという2011年FOMCの考え方は十分に妥当性があり、かつ将来の金融政策への道筋を明示する効果もある。しかし現在のFOMCは、再投資の早期停止が「委員会が期待よりも速く金融引締めを行うと見られる」リスクや「住宅ローン担保証券市場への予期せぬ悪影響」に配慮する意見が多数の模様である。

これらの状況証拠からは、現在のFOMCが、住宅ローンなど実体経済への影響に最大限に配慮し、また利上げに対する過大な期待を市場に抱かせないことを志向していると考えられる。技術的にはこうした懸念を排除するプロセスとして、FF金利誘導目標引き上げ、超過準備預金付利金利引き上げ、ON RRPの本格化を同時に決定し、その直後に保有資産再投資の停止を決定することが最もありそうなやり方である。現在の情報からはいまだFOMCの金融政策正常化プロセスを予想することは困難ではあるが、現在のFOMCが経済見通しの悪化に備え出口戦略実行へのコミットを可能な限り保留し、かつ実施の際は速やかに出口を開けることを選好していることには留意しておきたい。

(訂正)「超過準備預金への付利金利引き上げが利上げに中心的な役割」の第3パラグラフ、および「リバースレポとターム物預金ファシリティによる資金吸収:FF金利算出方法変更も」の第1パラグラフの記述を、8月9日に訂正いたしました。

<経済指標コメント>日本の機械受注は-19.5%減

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[日本]

景気ウォッチャー調査(6月):現状判断DIは47.7(前月比+2.6ポイント)、先行き判断DIは53.3(同-0.5ポイント)

6月景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは47.7(前月比+2.6ポイント)と、4月の消費税引き上げによる大幅低下ののち2ヶ月連続の上昇、ただし景気の現状に対する判断の分かれ目である50は依然下回っている。内訳は、企業動向関連と雇用関連がいずれも50を上回っているものの家計動向関連が45.1(同+3.0ポイント)と依然50を下回る水準。2~3ヶ月先の先行きに対する判断DIは53.3(同-0.5ポイント)とわずかに低下したものの、3ヶ月連続で判断の分かれ目である50を上回った。内訳は、企業動向関連と雇用関連が上昇したものの、家計関連が52.3(同-0.8ポイント)低下した。消費税引き上げの影響の出やすい家計動向関連の景況感が相対的にまだ低いものの、総じて景況感は消費税引き上げに伴う反動減から着実に回復方向にあると見る。
20140712図1

機械受注(5月、船舶・電力を除く民需)は前月比-19.5%

5月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-19.5%と、前月の同-9.1%に続き2ヶ月連続の大幅減少となった。5月の内訳は製造業が同-18.6%、非製造業が同-17.8%といずれの業種も受注が減少している。消費税駆け込み需要の反動減が4月、5月と連続して反映されていると考えられる。受注額の3ヶ月移動平均は前年比+7.7%とプラスの伸び率を維持しており、現在の受注減は駆け込み需要の反動減の範囲内であることが示唆されている。なお、四半期ベースでは4-6月期の機械受注は1-3月期に比べて-9.5%と5四半期ぶりの減少となるペースであり、4-6月期のGDP統計上の民間企業設備は5四半期ぶりにマイナス成長にならざるを得ない。
20140712図2


<経済レポート>独自色徐々に~イエレンFRB議長講演

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2日のイエレン議長講演における発言は、市場との対話としての早期利上げ期待に対するけん制の域にとどまらず、議長が自身の立ち位置を就任後初めて体系的に表明したものとして興味深い。イエレン議長は今後もそのリベラル色を徐々に前面に押し出してくることが考えられる。その特色は金融政策よりも金融システム監督に色濃く出てくる可能性が高そうだ。

イエレン議長は緩和政策の継続を示唆

金融緩和政策は金利の低位安定により経済を刺激する効果を持つ。一方で緩和政策の継続は株価や住宅価格上昇によるバブルをもたらしうる、また低金利が継続すると投資家は少しでもリターンのよいリスク資産への投資を拡大して過度なリスクテイクに走る可能性がある。金融緩和政策がもたらすこうしたジレンマにつき、イエレン議長は議長なりの明確な回答を示した。

7月2日、イエレンFRB議長は「金融政策と金融安定化」と題する講演で、金融政策とマクロプルデンシャル政策(金融システム全体に対する監督政策)との関係を論じた。そこで議長は、金融政策は雇用最大化・物価安定という目的にのみ資するべきであって、金融緩和政策から生じうる過度なリスクテイクによる金融システムの安定に関わるリスクは金融政策とは別のマクロプルデンシャル政策により対応するべきとしている。言い換えれば、雇用最大化・物価安定の観点から緩和政策が必要と判断される場合には、株価・住宅価格上昇などのバブル懸念を理由に緩和政策を停止すべきではないと明言した点で興味深い。

イエレン議長はまず「金融政策は金融安定化ツールとしては重大な制約に面している」「金利調節を通じて金融安定を推進するやり方は、物価と雇用のボラティリティ上昇をもたらす」と述べて、金融安定のツールとして金融政策を用いることに否定的な見解をしめした。一方で「私も低金利が潜在的に、金融市場参加者が利回りを追求しリスクをとるインセンティブ高めることに意を用いている」として「金融安定・物価安定・雇用の関係を論じる際には、議論はしばしばこれらの目標の間の矛盾にフォーカスする」という課題は認識している。そして「金融政策はリスクテイクに大きな影響力をもつ」という実態も認めている。しかし結論としては「(金融緩和政策が過度なリスクテイクをもたらして金融システムの脆弱化を招く)可能性は、金融政策が一義的には物価安定と雇用最大化にフォーカスする必要性を排除するものではない」と述べた。

バブル懸念にはマクロプルーデンスの方が有効

2000年代により強い金融引き締め策をとっていれば住宅バブル崩壊は防止できたとの論調がある。イエレン議長はこれも否定し、金融引き締め策が過度な住宅投資による住宅価格の上昇を防げたとしてもその効果は「この時期の(低い)インフレ率のモメンタムに比べて穏当なものにとどまった可能性がたか」く、「金融引き締めによる住宅バブル防止と引き換えに失業率上昇という代償が必要になったであろう」「高失業率の中の高金利は家計の債務返済能力に直接影響を与え、家計バランスシートの脆弱性を緩和する効果は穏当なものにすぎなかったであろう」としている。2000年代前半に緩和政策を継続した当時のグリーンスパン議長の政策を、住宅バブルの根源とする見方がリーマンショック後に広がった時期があった。しかしイエレン議長の見方では、住宅バブルとその崩壊は低金利政策のせいではなく、銀行監督等の欠如にあったということになる。

これらを総括して議長は「私は現在、金融安定への懸念に対応するために金融政策を物価安定と雇用最大化の獲得という一義的な目的から乖離させる必要はないと見る」「つまり、私は金融システムにおけるリスクテイクの高まりとこうした懸念の加速と広がりは、より健全なマクロプルデンシャルアプローチの必要性につながると見る」と結論づけている。

要約すればイエレン議長は、インフレ率が低く失業率が高い間は緩和的な金融政策を続けるべきであって、これに伴うバブルや過度なリスクテイクに対しては金融引き締めではなく金融監督で対応するべきと述べているのである。金融緩和策による景気刺激と、これに伴うバブルのリスクのバランスをどう考えるかは金融政策における難問の一つである。この難問に対してイエレン議長は議長なりの極めて明確な回答を示したといえる。

イエレン議長発言は議長のリベラル哲学の反映

市場はこの議長発言を、金融緩和政策の長期化というハト派的発言、または早期利上げ期待に対するけん制と受け止めた模様である。2日のイエレン議長発言後にNYダウは一時史上初の17000ドル台に上昇、10年物米国債利回りは2.6%台から2.5%台に弱含んだ。

しかし、イエレン議長発言は単に短期的な市場との対話というよりも、リベラル派のイエレン議長が就任後自己の哲学をほぼ初めて明らかに開陳したものと見る方が妥当であろう。イエレン議長は就任時に、バーナンキ前FRB議長の例に倣い金融政策の「継続性」を強調した。ここでいう継続性とは、退任前のバーナンキ議長のQE縮小政策のことを指すと考えられる。自らハト派をもって任ずるイエレン議長の就任で、市場が金融政策の転換期待から混乱することをあらかじめ防止するこの表明は、市場安定の観点から極めて妥当といえる。

ただ、本来的にリベラルなイエレン議長が前任者(バーナンキ議長は共和党の大統領に指名された議長で、民主党の大統領に指名されたイエレン議長とは立場も異なる)の政策をそのまま引き継ぐだけとは考えにくく、どこかの時点でイエレン色を徐々に前面に押し出すことは容易に想像できたことである。金融政策の目的を物価安定と雇用最大化に絞り、言い換えれば低金利によるリスクテイクは容認しつつ、過度なリスクテイクによる金融システム不安定化への懸念には銀行監督等強化で対応するという方法は、いわば市民に優しく銀行に厳しい政策である。イエレン議長のリベラルな面が今回の発言の根底にある哲学だといえる。

2000年代前半に緩和政策を継続したグリーンスパン議長は緩和政策による資産価格の上昇をむしろ歓迎していたふしがあり、その意味では金融政策がリスクテイクに大きな影響を及ぼすことを強く認識したうえで緩和政策を継続したといえる。一方イエレン議長が過度なリスクテイク防止に対する金融政策の効果は限定的と認識していることは、本来これもイエレン議長と対局の立ち位置にあるグリーンスパン議長の金融政策を決して擁護しているものではなく、むしろこれとは真逆の考え方だといえよう。なお、過度なリスクテイクの防止を市場原理によらず監督によって未然防止することの実効性につき筆者個人はどちらかといえば懐疑的と言わざるを得ない。しかし、2日の議長発言は銀行監督等の更なる強化の可能性を示唆するものである。議長のリベラルな特色は金融政策というよりむしろ銀行監督の強化という形で発現してくる可能性が高そうだ。

なお、今回のイエレン議長の発言は、それが単なる市場との対話というよりも金融政策と金融安定化政策についての一般論としての議長の考えを示したものという意味で、筆者個人の金融政策予想に影響を与えるものではない。年内にFRBは資産購入停止を決定し、2015年半ばに利上げを開始するとの個人予想を維持する。

<経済指標コメント>米非農業部門雇用者数は288千人増

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[日本]

鉱工業生産指数(5月)は前月比+0.5%

5月の鉱工業生産指数は2ヶ月ぶりの上昇となる前月比+0.5%。出荷指数は4ヶ月連続低下となる同-1.2%、在庫指数同+2.9%、在庫率指数同+3.5%。4月の消費税引き上げの影響で出荷が減少する一方、生産が増加した結果在庫が増加している。駆け込み需要反動減が解消されれば再び出荷増が見込めることで、現在は在庫を積み増す時期に相当していると見る。消費税影響が終われば生産は再び増加基調に戻ると見る。なお、公表元の経済産業省は「総じてみれば、生産は横ばい傾向にある」としている。
20140705図1

日銀短観(6月調査)大企業製造業業況判断は12(3月調査比-5)、先行き判断は15(同+7)

6月調査分の日銀短観、大企業製造業の業況判断DIは12(3月調査比-5ポイント)。消費税率引上げの影響がDI低下要因と考えられる。一方先行き判断DIは15と3月調査比+7ポイント、6月現況判断DI比+3ポイントの上昇、水準は2四半期前の12月調査時点の先行き判断DIの水準を上回っている。消費税増税の業況への影響は9月頃までには解消される可能性を示唆する指標となった。
20140705図2

[米国]

新車販売台数(6月)は年率16.9百万台(前月比+0.2%)

6月の新車販売台数は年率16.9百万台と2ヶ月連続の増加、2006年6月以来の17百万台にあと一歩まで迫っている。4-6月期の販売台数は年率16.53百万台と前期比+6.1%の増加で、4-6月期の個人消費の回復に寄与する見込み。GDP統計上の実質個人消費は統計方法の変更もあり1-3月期に前期比年率1.0%に大幅減速したが、4-6月期の自動車販売増は耐久消費財中心に個人消費が持ち直していることを示唆している。
20140705図3

ISM製造業指数(6月)は55.3%(前月比-0.1%)、非製造業指数は56%(同-0.3%)

6月のISM製造業指数は5か月ぶりの小幅低下となる55.3%(前月比-0.1%)。非製造業指数は4ヶ月ぶりの低下となる56.0%(同-0.3%)。いずれも低下幅は小幅であり、企業景況感は堅調といえる。先行指標となる新規受注DIは製造業が58.9%(同+2.0%)、非製造業が61.2%(同+0.7%)とそれぞれ5ヶ月、6ヶ月連続で上昇していることも、企業活動が今後加速することを示唆している。
20140705図4

非農業部門雇用者数(6月)は前月比+288千人、失業率は6.1%(前月比-0.2%)

6月非農業部門雇用者数は前月比+288千人と5ヶ月連続で200千人を超える増加。失業率は6.1%(前月比-0.2%)と、米国の自然失業率である5.9%(米議会予算局推計)にほぼ近いところにまで低下している。内訳をみると、労働力人口が前月比+81千人、就業者数が同+407千人と労働市場の拡大を伴う失業率低下となっている。労働参加率は62.8%と依然過去最低水準にあるが、人口増加に対する労働力人口比率低下は構造的要因と考えられる(6月18日付<経済レポート>参照)ことから、現在の失業率低下は労働市場が中立からタイト化へ向かっていることを示唆している。時間当たり賃金は前年比+2.3%と伸び率がやや頭打ち傾向にあるものの、今後失業率低下に遅行して賃金上昇は加速し、インフレ率の上昇に寄与すると見る。
20140705図5