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<経済レポート>内需はプラスに戻った~米国経済定点観測

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30日公表予定の米4-6月期GDPは前期比年率2%の成長に回復したと個人的に予想する。通年成長率は1-3月期の一時要因による落ち込みの影響で前年比+1.3%に留まると見ざるを得ない。しかし、米国経済のファンダメンタルズは堅調であり、年末にかけて3%成長ペースに回帰すると見る。リスク要因は地政学リスクのほか、やや高値警戒感のある株価とFRB金融引締め期待による金利上昇である。

1-3月期のGDP落ち込みは天候と統計要因

1-3月期に米国の実質GDP成長率は予想外の前期比年率-2.9%に落ち込んだ([第1図])。この要因は大きく2つある。まず、年初から米国を襲った寒波の影響で、個人消費や設備投資などの経済活動が大きく落ち込んだこと。次に、米商務省が6月の1-3月期GDP統計確報値公表時にいくつかの需要項目の推計手法を変更したことである(6月29日付<経済指標コメント>参照)。米商務省によれば、個人消費統計のうちの医療サービス関連消費の推計方法が1月に遡って改訂され、結果実質サービス消費は改訂値の同+4.3%(寄与度+1.93%)から確報値で同+1.5%(寄与度+0.67%)に下方改訂された。また輸出に関する推計方法変更により、純輸出の寄与度が改訂値の-0.95%から確報値で-1.53%に下方改訂された。個人サービス消費と純輸出を合わせて成長率を-1.84%押し下げた。これらが純粋に統計要因だとした場合、実力ベースの1-3月期の成長率は、推計手法変更前の数字である改訂値の同-1.0%レベルだと推測することができる。

中期的な米国の成長の実力を企業景況感指数との関係からみてみよう。ISM製造業指数と成長率の間にはある程度の相関がみられる([第2図])。ISM製造業指数は1月に51.3%に急落ののち上昇に転じており、6月現在で55.3%の水準にある。4-6月のISM製造業指数平均は55.2%で、これは1-3月期平均の52.7%に比べて上昇している。4-6月期平均のISM製造業指数に相当する4-6月期の成長率は前年比で約+2.4%になる計算である。つまり現状の企業景況感からは米国経済は潜在成長率を超える2%台の成長が可能な環境にあるということができる(米議会予算局推計の潜在GDPによれば、2014年4-6月期の潜在成長率は前年比+1.7%となる計算になる)。

しかしながら、寒波の影響からのリバウンドが必ずしも十分に力強くないこと、また輸出の伸び悩みなどから、4-6月期の成長率は前期比年率+2.0%(前年比+1.4%)程度の回復にとどまった模様だ(4-6月期GDP統計は7月30日公表予定)。また2014通年の成長率は、4-6月期の数字の落ち込みの影響で、前年比+1.3%程度の成長にとどまらざるを得ない計算になる。これは、4月時点の筆者個人予想(4月5日付当レポート参照)である2014年通年成長率+2.4%に比較すると大幅な下方修正となる。以下では、需要項目毎の基礎統計を中心に、4-6月期の成長率予想を行う。

[第1図]
20140720図1
[第2図]
20140720図2

自動車が消費を牽引するもサービス消費は低迷中

実質個人消費は4-6月期に前期比年率+1.7%の成長に回復したと予想する([第3図])。月次の個人消費統計によれば、実質個人消費は寒波の悪影響から反転増加して3月に急伸したのち、4月、5月連続でマイナスの伸びになっている。しかし、6月の実質個人消費は3ヶ月ぶりに前月比でプラウの伸びに転じていると見る。自動車販売は2ヶ月連続の増加で6月に年率16.9百万台に達した。自動車・ガソリン・建設資材・レストランを除くベースでの小売売上高も6月に前月比+0.7%と急増し、このベースでの4-6月期小売売上高は前期比+1.8%と前期の横ばいから急伸している。6月の実質個人消費を前月比+0.4%の強めの伸びとすれば、4-6月期の実質個人消費は前期比年率+1.7%となる計算である。

消費者センチメントも高水準で推移しており、個人消費の堅調さを示唆している。ミシガン大学消費者センチメント指数は今年に入りおおむね80ポイント台の前半でほぼ安定的に推移している。小売売上高は1月に一時消費者センチメントから大きく下方乖離する形で減速したが、6月時点では消費者センチメントとほぼ整合的な水準にまで回復している([第4図])。これは、1月からの小売売上高の減速が天候要因による一時的なものだったことを示唆している。

また今後についても、外部環境要因は個人消費が堅調に推移することを示唆するものが多い。非農業部門雇用者数は2月以降5ヶ月連続で200千人を超える増加をしている。株価は2月に底入れしたのち上伸を続けており、NYダウは6月に史上初の17000ドル台に乗せている。もっとも、個人消費の内訳を見るとその伸び率にはばらつきがみられる。個人消費を需要項目別に見ると、振れの大きい傾向がある自動車などの耐久消費財消費の増加が1月の落ち込み以降急回復して全体をけん引している。これに比べて非耐久消費財とサービスの消費の伸びは緩やかなものにとどまっている([第5図])。特にサービス消費は個人消費の約7割を占めており、これが2%を超える成長を持続できなければ個人消費の持続性が確認しにくい。5月現在でサービス消費の伸びは1%台にとどまっている。鉱工業生産指数統計によれば、電力・ガスなどの公益事業の生産指数は2月以降5ヶ月連続で低下している。このことからは、サービス消費の下振れは依然4-6月期個人消費成長率の下方リスク要因ということができる。

[第3図]
20140720図3
[第4図]
20140720図4
[第5図]
20140720図5


設備投資と住宅投資はプラス成長に回帰したと見る

民間企業設備投資は、1-3月期に前期比年率-1.2%、うち機器投資は同-2.8%のマイナス成長に転化したが、4-6月期にはいずれもプラス成長に回帰し民間設備投資は前期比年率6%程度の成長をしたと予想する。1-3月期の機器投資の落ち込みは、基礎統計である非国防資本財出荷(航空機関連を除く)の同じ時期の減少と整合していた。4-6月期にはこの出荷額はほぼ昨年10-12月期並みの増加率に転じており、機器投資は昨年10-12月期並みの10%レベルの成長を見込むことができる([第6図])。

一方で、構造物投資(工場、商業用建物など)は4-6月期もマイナス成長が続きそうだ。1-3月期には構造物投資は前期比年率-7.7%と2四半期連続のマイナス成長だった。基礎統計となる民間非住宅建設支出は、1月以降3ヶ月連続で前月比減少したのち4、5月には増加に転じているものの、4-6月期平均では前四半期を下回る水準に留まる見込みである([第7図])。機器投資とソフトウエア投資の増加と構造物投資の合わせると、民間設備投資全体の伸びは前期比年率6%台に留まると見る。

住宅投資は1-3月期に前期比年率-4.2%と、2四半期連続となるマイナス成長だった。しかし4-6月期には2桁近い伸びに回復したと見る。基礎統計である住宅着工件数は、4-6月期平均で前期比+6.0%増加している。天候要因で6月の着工件数が大幅減少したものの、4月の着工急増で4-6月期はGDPを押し上げるのに十分な数字となったとみられる。

[第6図]
20140720図6
[第7図]
20140720図7
[第8図]
20140720図8


4-6月期に2%成長、年末にかけ3%に加速を見込む:リスク要因は株価の高値警戒

純輸出は前期に続き4-6月期も成長率にマイナスの寄与となったと見る。5月分までの貿易収支統計によれば、実質ベースの財の貿易収支赤字は2四半期連続で拡大しており([第9図])、リーマンショック前の2008年前半以来の水準となっている。貿易赤字拡大の主因は輸入増加の回復ペースが急加速して、輸出増加ペースを上回り始めたことにある([第10図])。海外経済の減速に比べて、国内の需要の回復がこれを上回るものであることを示唆するこの傾向は、むしろ米国経済が相対的に他国に比べて健全であることを示唆しているといえるだろう。

以上より、4-6月期に米国実質GDP成長率は前期比年率+2.0%の成長に回復したと個人的に予想する。その後についても、堅調な雇用増加と企業景況感の持続、株価上昇などからくる消費者センチメントへの好影響から、年末にかけて米経済は2%台半ば~3%の成長を持続すると見る。リスク要因としては、諸々の地政学リスクのほかに、ややバリューエーション的に高値警戒感のある株価動向があげられる。株価は年末にかけてNYダウで18000ドルを目指すと個人的には予想している。しかしながら、S&P500のPEが20倍に近づいている現状の水準は投資家に高値警戒感を持たせる水準と言わざるを得ない。また、FRBは10月までに資産購入停止を決定して来年半ばに利上げを開始すると予想するが、これに伴う金利上昇も個人消費にとっての抑制要因ではある。筆者の過去の試算によれば、現状2.5%の長期金利が3.5%に上昇すると、個人消費は約-1.6%(=金利上昇率40%×弾性値0.04)押し下げられる計算になる(2013年12月31日付当レポート参照)。しかし、住宅価格が、現状の前年比+12%ペースで上昇を継続すれば、金利上昇による消費抑制効果はカバー可能である。

なお、7月30日に公表予定の米商務省のGDP統計では、年次改訂により統計が過去3年に遡って改訂される予定である。改訂後の米国経済の趨勢については指標公表後に改めて分析を行う。

[第9図]
20140720図9
[第10図]
20140720図10
[第1表]
20140720表1
注)7月22日、[第1表]の日本の実質GDPの数値を訂正いたしました。
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