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<経済指標コメント> 米8月新築住宅販売は年率504千戸

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[日本]

全国消費者物価指数(8月):総合指数は前年比+3.3%、生鮮食品を除く総合指数は同+3.1%

8月の全国消費者物価指数、総合指数は前月比+0.2%、前年比では+3.3%と前月の同+3.4%から伸び率が低下した。生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は前月比横ばい、前年比は+3.1%と前月の同+3.4%から伸び率低下。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は前月比+0.1%、前年比は+2.3%と前月並みの伸び率だった。総合指数の前年比伸び率低下に寄与したのは引き続きエネルギー(前年比+6.8%、寄与度差-0.18%)、生鮮食品を除く食料(寄与度差-0.02%)。エネルギー価格は3ヶ月連続で前年比の伸び率が低下している。消費税率引上げ後消費者物価指数の前年比の伸び率は横ばいから低下傾向にある。消費税率引上げ影響を除くと、コア指数の前年比伸び率は+1%強にとどまっている計算になる。なお、9月の東京都区部消費者物価指数(中旬速報)は総合指数が前年比+2.9%(前月同+2.8%)、コア指数が同+2.6%(前月同+2.7%)。なお東京都区部のコア指数は前月比-0.1%と8か月ぶりに前月比で低下している。

20140927図1

[米国]

中古住宅販売(8月)は年率5050千戸(前月比-1.8%)、在庫期間は5.5ヶ月

8月の中古住宅販売戸数は年率5050千戸(前月比-1.8%)と5ヶ月ぶりの小幅減少。しかし今年にはいってからの増加基調は崩れていない。公表元の全米不動産業協会は「現金で住宅を購入する投資家への販売の減少が顕著だった」としており、販売減少は本来的な需給の影響ではないようだ。販売在庫は前月比-0.8%と2ヶ月連続減少するも在庫期間は5.5ヶ月と横ばいで、需給はややタイトである。中央販売価格は前年比+4.8%と緩やかな伸びに留まっており、消費者が購入しやすい範囲の上昇率である。後述の新築住宅販売の急増と合わせると、住宅市場の需給は適度かややタイトな状況にあり、今後も住宅販売は堅調な増加を続けるとみる。

20140927図2

新築住宅販売(8月)は年率504千戸(前月比+18.0%)、在庫期間は4.8ヶ月

8月の新築住宅販売は年率504千戸(前月比+18.0%)と急増、2008年5月以来の水準となった。もっともこの統計は月次の振れが比較的大きいため、単月の指標よりも趨勢を見ることが必要になる。同指標の6ヶ月移動平均は437.3千戸で、概ね横ばい基調、ただし8月には前月比+2.8%と3ヶ月ぶりに上昇、前年比で+3.8%と4か月ぶりにプラスの伸びに転じた。販売在庫も203千戸(前月比+1.0%)と6ヶ月連続で増加しており、供給も徐々に回復している。ただし8月の販売増で在庫期間は4.8ヶ月と前月の同5.6ヶ月から大幅縮小した。中古住宅と合わせると住宅市場はややタイトな需給にあり、今後も住宅販売は堅調な増加を続けるとみる。

20140927図3

耐久財受注(8月)は前月比-18.2%、除く運輸関連同+0.7%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)同+0.6%、同出荷同+0.1%

8月の耐久財受注は前月比-18.2%と大幅減少したが、これは振れの大きい民間航空機受注の大幅減(同-74.3%)によるもので、運輸関連を除くベースでは同+0.7%と前月の同-0.5%から増加に転じている。民間設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同+0.6%と前月の同-0.2%から増加に転じた。前年比の伸び率も+7.5%と高めの水準にある。総じて企業設備投資の増加モメンタムは不変と見る。GDP統計上の民間設備投資(機器投資)の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は前月比+0.1%と小幅な伸びにとどまったが、前月分が同+1.9%に上方改訂された。7-9月期の同出荷は8月までで前期比+11.1%と前期の同+11.0%を上回る水準になっており、7-9月期GDP統計における民間設備投資は筆者個人予想よりも上ぶれる可能性が出てきた。

20140927図4

実質GDP成長率(4-6月期、確報値)は前期比年率+4.6%

4-6月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率+4.6%と、先月公表済の改定値(同+4.2%)から上方改訂された。速報値(同+4.0%)から改訂値への上方改訂とあわせて2回連続の上方改訂となった。内訳は個人消費前期比年率+2.5%(改定値同+2.5%)、設備投資同+9.7%(同+8.4%)、住宅投資同+8.8%(同+7.2%)、政府支出同+1.7%(同+1.4%)、在庫投資寄与度+1.42%(同+1.39%)、純輸出寄与度-0.34%(同-0.43%)と、各需要項目が総じて小幅上方改訂となっており、今回の改訂による経済見通しへの影響は限定的である。数字上は米国経済の拡大ペースが従前統計よりもやや強めであることを示すもので、2014年通年の成長率を2%とする筆者個人の予想を更に強く支持する結果になった。

20140927図5

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<経済レポート> 陽あたり良好~米国経済定点観測

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個人消費を中心に米国経済は拡大ペースを取り戻している。企業部門も企業業績の回復を背景に設備投資意欲は高水準にある。2014年通年では2%の成長を達成し、失業率低下やインフレ率上昇と合わせて、来年半ばの利上げが開始できる良好な経済状態と見る。リスク要因は史上最高値にある株価の調整と地政学リスクである。

自動車販売が好調:個人消費は急回復中

米国経済は悪天候を主因とする年初の一時的落ち込みからの回復が加速している。実質GDP成長率は4-6月期に前期比年率+4.2%(改定値)と大幅な拡大ののち、7-9月期は企業在庫積み上げペース軟化を主因に2%台前半に一旦減速すると見る。しかし個人消費ほかの内需は堅調な拡大となり、10-12月期に3%台に再加速すると見る([第1図])。結果筆者個人の2014年通年成長率予想を前年比+2.0%とする。9月時点のFOMC委員経済予測をこれと比較すると[第2図]の通り、筆者個人予想はFOMC委員予測の中心傾向の下限かわずかに下方に位置している。従来FOMC委員の成長率予測は極めて楽観的であり筆者個人予想よりもかなり上方であったが、9月FOMC後に公表された最新の経済予測では、成長率予測が大幅下方シフトしており、従来比現実的な予測になったといえる。

年後半の米国経済で一時懸念されたのが個人消費の失速である。月次の個人消費統計によれば、実質個人消費は3月にいったん回復ののち減速傾向にあり、7月は前月比-0.2%と過去4ヶ月間で2回目のマイナス成長となった(8月31日付<経済指標コメント>参照)。しかし、この懸念を払しょくしたのが8月分小売売上高統計である。8月小売売上高は自動車販売の急増を主因に前月比+0.6%の強い伸び、また速報値で前月比横ばいにとどまっていた7月分も同+0.3%に上方改訂された(9月15日付<経済指標コメント>参照)。これで、7月分の実質個人消費も上方改訂の可能性が出てきたことから、一時マイナス成長の懸念のあった7-9月期実質個人消費は巡航速度といえる前期比年率2%台の成長が視野に入ってきた。

9月以降の個人消費にも期待できる。株価上昇などを背景に消費者センチメントは上昇している。ミシガン大学消費者センチメント指数は9月時点(速報)で84.6ポイントと昨年7月以来の高水準に上昇した。消費者センチメント指数と小売売上高の関係からは、9月にも個人消費拡大のモメンタムが継続していると想像できる([第3図])。中期的にも、雇用拡大ペースと時間当たり賃金上昇が適度なペースを保っていることや、限界消費性向の高さから個人消費は2%台半ばの巡航速度を年末まで保つ可能性が高い。国際ショッピングセンター評議会(ICSC)は、8月には新学期商戦が小売売上高を押し上げチェーンストアセールス売上高は前年比+5.2%となったが、9月も同様に同+4~5%の売上増が見込めるとしている(9月16日付ICSCプレスリリース)。

[第1図]
20140923図1
[第2図]
20140923図2
[第3図]
20140923図3


企業景況感は金融危機後最高水準:設備投資は堅調に拡大しよう

企業部門も堅調な拡大を続けると見る。民間設備投資のうちの機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は7月までで前期比年率+8.6%と、前期をやや下回るペースではあるものの堅調な伸び率である。建物などの構造物投資の基礎統計となる民間非住宅建設支出は7月までで前期比年率+11.0%と、前期を上回る伸び率となっている([第4図])。これらに知的財産投資を合わせた民間設備投資は7-9月期に前期比年率+7%強の伸びを見込む。これは前期の同+8.4%からはやや減速するものの持続可能な企業部門の拡大を示すものである。

企業設備投資は今後も堅調な拡大が見込める。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は出荷同様7月に入りやや伸びが減速しつつも高水準にある。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数調査における6ヶ月先の設備投資見通しはいまだ高水準にある([第5図])。また企業景況感は極めて良い状態にある。8月ISM製造業指数が2011年来、同非製造業指数が2008年の計測開始以来の高水準に上昇している(9月6日付<経済指標コメント>参照)ほか、9月に入ってもNY連銀製造業指数が27.54ポイントと2009年以来の高水準、同出荷DIも27.08ポイントと3ヶ月連続上昇でこれも2009年以来の水準に上昇している。

民間設備投資拡大に欠かせない企業収益は回復している。4-6月期の企業収益は前年同期比-0.3%と2四半期連続の前年比マイナスだったが、前期の同-4.8%からは大幅にマイナス幅を縮めた。また業種別内訳を見ると、相対的に収益が低迷しているのは株価など金融市場変動の影響を受けやすい金融機関であり、非金融機関の収益は前年比+1.4%とプラスに転じている([第6図])。これに伴い企業ネットキャッシュフローも4-6月期には前年比でプラスに転じている。設備投資の源泉となるネットキャッシュフローの好転は今後の設備投資にとっての大きな好材料である。

[第4図]
20140923図4
[第5図]
20140923図5
[第6図]
20140923図6

内需拡大とドル高で貿易赤字は再拡大を見込む

一方で、企業在庫は7-9月期に成長にマイナス寄与となりそうだ。4-6月期に企業在庫の積み増し加速が成長率を実に+1.39%押し上げたが、その後企業在庫積み増しペースが減速しつつある(9月15日付<経済指標コメント>参照)。7-9月期には逆に企業在庫が成長を-0.5%ほど押し下げると見る。

住宅投資も昨年末から今年初にかけ天候要因などで一時減少したが、4-6月期には前期比年率+7.2%のプラス成長に回帰した。7-9月期の住宅着工件数も振れを伴いながらも総じて増加基調を保っている。7-8月の住宅着工件数平均は4-6月期を+5.2%上回っており、このペースであればGDP統計上の住宅投資も6%台の成長を見込むことができる([第7図])。先行指標となる住宅着工許可件数も8月までで前期を上回る水準にあることから、その後も住宅投資は堅調な拡大を続けると予想する。住宅市場における需要は、新築住宅販売戸数が引き続き月次では振れのある推移をしているものの総じて高水準にある。建設業などの供給能力にむしろ懸念があったが、雇用統計によれば建設業の雇用が7月、8月にそれぞれ+31千人、+20千人増加しており、建設業の供給能力も徐々に回復していることを示唆している。

純輸出は輸入の増加を主因に4-6月期に成長率を-0.43%押し下げたが、7-9月期は輸入の減速で成長にプラス寄与となりそうだ。7月分貿易収支統計によれば、実質ベース財の輸出が前月比+1.3%増加したのに対し、輸入は同+0.5%に留まり、前年比の輸入の伸び率はマイナスに転じている([第8図])。結果、7月時点で財の貿易赤字は前期に比べて大幅に縮小している。7-9月期には財の貿易赤字の縮小により一時的に純輸出が成長にプラス寄与すると見る。もっとも今後は内需拡大加速により輸入が再び増加、また海外経済減速やドル高の影響で輸出が伸び悩むことが予想される。貿易収支赤字の縮小は一時的なものであり、米国経済の拡大加速とともに従来型の貿易赤字状況に回帰すると見る。

[第7図]
20140923図7
[第8図]
20140923図8

失業率は年内6%割れ、インフレ率は来年2%に上昇と見る

失業率は8月現在で6.1%にまで低下しており、今後年末にかけて6%を割り込む水準に低下すると見る。ここ数ヶ月は労働参加率の下げ止まりにより表面上の失業率低下ペースはやや鈍化する傾向があり、また今後労働市場への人口再流入による失業率上昇の可能性がないわけではない。しかしながら、労働参加率低下の多くはスキルミスマッチなどによる構造要因であると筆者個人は考えており、労働参加率は今後も横ばいから低下傾向を辿ると見たい(9月14日付当レポート参照)。一方労働需要は販売が好調な自動車産業などで少なくとも短期的には増加が見込まれるため、年末にかけ非農業部門雇用者数は前年比約2%の伸びを確保し、雇用市場は堅調な拡大を続けると考える。

インフレ率については、PCEデフレーターが年末に前年比+1.7%、来年にはFRBが目標とする同+2%に上昇すると見る。失業率や需給ギャップに表象される経済の「のりしろ」の水準はまだ大きいものの、経済拡大に伴い着実に縮小している。またミシガン大学調査による期待インフレ率(12ヶ月後)は、今年に入り3%台の比較的高い水準で安定推移している。FOMCが9月声明文に謳ったように、インフレ率が継続的に2%を下回るリスクはもはや後退したといえる。インフレ率として振れの少ないコアPCEデフレーターを用い、外生変数として需給ギャップと期待インフレ率を用いた推計式によれば、現在のコアPCEインフレ率推計値は約1.7%と計算できる。7月現在の実績値はPCEデフレーターが前年比+1.5%、コアPCEデフレーターが同+1.4%と、いずれも推計値よりも低めとなっている。今年後半にエネルギー価格の低下でインフレ率は一時的に低下しているが、年末にかけては+1.7%の均衡水準に回帰するとの見方を維持したい。これらより金融政策については、FRBが10月に資産購入停止決定ののち2015年6月に利上げを開始、その後定例会合毎に0.25%ずつ利上げを行い、2015年末にFF金利誘導目標レンジを1.25-1.50%にまで引き上げることを個人予想としている(9月21日付当レポート参照)。

以上のように、米国経済見通しは極めて良好であり、潜在成長率を超える成長を続けることでマイナスの需給ギャップは着実に縮小していくはずだ(8月米議会予算局の推計によれば、2014年の米国の潜在成長率は+1.6~1.7%)。一方で、上記予想に対する当面のリスク要因は株価と地政学リスクである。好調な消費者センチメントや企業景況感の一部は史上最高値水準にある株価により押し上げられていると考えられる。現在S&P500の株価収益率は20倍に接近しているが、低位に抑えられている米国債利回り水準(約2.6%)との関係において割高感はなく、筆者個人も年末にかけ更なる株価上昇を見ている。しかし、今後年末にかけては成長加速と金融引締め期待から長期金利が上昇すると株式の割安感は相対的に後退せざるを得ない。また中東・ロシアなどの地政学リスクはなお断続的に市場混乱要因となりうることには引き続き留意が必要である。なお、経済・金融に関する個人予想のアップデートを[第1表]に示す。

[第9図]
20140923図9
[第1表]
20140923表1

<経済指標コメント> 米8月CPIは前年比+1.7%

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[米国]

鉱工業生産指数(8月)は前月比-0.1%、設備稼働率は78.8%(前月比-0.3%ポイント)

8月の鉱工業生産指数は7ヶ月ぶりに小幅低下し前月比-0.1%。内訳は製造業同-0.4%、鉱業同+0.5%、公益事業同+1.0%。製造業生産指数の低下は自動車及同部品の生産指数の低下(同-7.6%)が主因。もっとも自動車及同部品の生産指数は前月に同+9.3%と大幅上昇しており、8月の低下はその調整と考えられる。自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は、7月の8.09百万台(前月比+1.08百万台)から8月は同7.16百万台(同-0.93百万台)に大幅減少しており、また8月雇用統計で自動車及び同部品製造業の雇用者数が8月に前月比-4.6千人と前月の同+12.8千人から減少に転じたこととも整合している。しかしながら、8月の新車販売台数は年率17.4百万台と実に8年ぶりの年率17百万台台に急増しており、今後自動車生産需要は再び増加すると考える。総じて8月鉱工業生産の低下は一時的なものと見る(9月6日付<経済指標コメント>参照)。9月の企業景況感指数を見ると、NY連銀製造業指数の出荷DI、フィラデルフィア連銀製造業景況感指数の出荷DIともに前月比上昇しており、9月には再び生産の再拡大が見込める。

20140921b図1

消費者物価指数(8月)は前年比+1.7%、同コア指数は同+1.7%

8月の消費者物価指数は昨年4月以来の前月比低下となる前月比-0.2%、前年比では+1.7%と5月のピーク同+2.1%から3ヶ月連続で伸び率が低下した。同コア指数は前月比横ばい、前年比+1.7%とこちらも5月ピーク同+2.0%から3ヶ月連続で伸び率が低下。インフレ率低下の主因はエネルギー価格低下と関連サービスの価格低下。ガソリン価格は前月比-4.1%(前年比-2.8%)、またエネルギー価格の影響を受けやすい運輸サービスが前月比-0.6%(前年比+1.5%、直近ピークは6月の同+3.2%)と価格低下している。エネルギー価格低下により年後半にインフレ率は一時的に低下し、その後再び堅調な伸びを見せるとの個人予想に沿った動きであり、来年にかけて再び米国のインフレ率は上昇に向かうとの見方は維持したい。

20140921b図2

住宅着工件数(8月)は年率956千戸(前月比-14.4%)、住宅着工許可件数は同998千件(同-5.6%)

8月の住宅着工件数は年率956千戸(前月比-14.4%)と大幅減少、前月の同+22.9%増から反落した。もっとも着工が大幅減少したのは集合住宅で、一戸建て住宅の着工件数は同643千戸(同-2.4%)と小幅減少にとどまっている。住宅着工許可件数も同998千件(同-5.6%)と前月の同+8.6%から減少に転じた。しかし総じて住宅着工件数はゆるやかな増加基調を保っており(6ヶ月移動平均は上向き)、7-9月期の住宅着工件数は8月までの平均で4-6月期に比べ+5.2%増加している。7-9月期のGDP統計上の住宅投資は2四半期連続のプラスの伸びになる見込みだが、そのペースは前期よりもやや減速するリスクが出てきている。

20140921b図3

<経済レポート> 利上げの準備は整った~9月FOMC

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9月FOMC声明文は予想外にハト派的内容だったが、委員の経済予測による利上げ開始時期はタカ派方向にシフトした。出口戦略の原則と計画も公表され、利上げの準備は整ったといえる。筆者個人の金融政策予想を、2015年6月定例会合で初回利上げ決定、2015年末のFF金利誘導目標レンジを1.25-1.5%とする。

声明文はハト派、利上げ予測はタカ派

16-17日のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)では、資産購入の月150億ドルへの縮小が決定されたほか、いくつかの注目点があった。声明文の文言、FOMC委員経済予測、同時に公表された「金融政策正常化への原則」、である。まず声明文の内容を見てみよう。冒頭の基調判断は「経済活動は緩やかなペースで拡大している」とされ、前回7月会合声明文の「第2四半期に反発した」からやや後退している。労働市場条件は「幾分改善した」との表現にとどまり、「労働資源の著しい余剰が残っている」との表現が存置された。一方インフレについては「インフレが継続的に2%を下回って推移するリスクは今年前半に後退した」として、前回の「いくぶん後退」から更に判断を改善させている。

また「委員会」を主語とするフォワードガイダンスでは「極めて緩和的な金融政策スタンスが適切であり続ける」「現在のFF金利誘導目標を資産購入終了の後も相当の期間維持することが適切である可能性が高い」「雇用とインフレが使命と整合的な水準に近づいたあとも、経済条件は当面の間委員会がFF金利を委員会が長期的に正常と見る水準より低く維持することを正当化すると期待する」との文言が存置された。なお、声明文のフォワードガイダンスについては、ダラス連銀フィッシャー総裁とフィラデルフィア連銀プロッサー総裁が反対票を投じた。前回7月会合でイエレン議長の下ではじめての反対票がプロッサー総裁により投じられたが、9月会合では同総裁を含め反対票が2票に増えたことになる。

同時に公表されたFOMC委員による9月時点の経済予測においても、2014年の成長率予測の中心傾向が2.0-2.2%(第4四半期前年同期比)、2015年が2.6-3.0%に下方シフトしている([第1表])。しかしながら、適切な利上げについては委員の予測が大幅に前倒しにシフトした。適切な利上げ時期として2015年のとの予測をした委員が14人と6月予測の12人から増加した。また2015年末のFF金利誘導目標レンジ中心の適切な水準としては1.875%(1.75-2.0%の誘導目標レンジに相当)を予測する委員が4人と最も多く、中央値は1.375%(1.25-1.5%の誘導目標レンジに相当)と6月時点予測の1%から上方シフトした([第1図])。

[第1表]
20140921表1
[第1図]
20140921図1

出口戦略:IOERを主な手段に、再投資停止は利上げの後

また、FOMCは同時に「金融政策正常化の原則と計画」と題するプレスリリースを行った。これは、これまでFOMC内で検討されてきた金融政策正常化(出口戦略)の詳細につき年後半に公表すると議長が従前より述べていたことが実現したものである。同「原則と計画」によれば、2011年6月の正常化原則(7月13日付当レポート参照)の多くは採用可能であるものの、その後のFRBの証券ポートフォリオ変化や新たな政策手段に鑑みいくらかの観点で変更を加えたとされる。新たな「原則と計画」のポイントは、①FF金利誘導目標をレンジとすること、②FF金利の誘導の手段として一義的には超過準備預金付利金利(IOER)を用いること、③オーバーナイトリバースレポ(RRP)は補完的手段にとどめること、③保有資産の再投資停止は利上げの後に行うこと、④住宅ローン担保証券(MBS)の売却を行わないこと、にまとめられる([第2表])。これらはいずれも、6月、7月のFOMC議事要旨において委員の多数意見とされていたもので大きなサプライズはない。(8月24日付当レポート参照)むしろこの「原則と計画」の公表が9月に行われたことがやや想定よりも早めだったといえる。

なお、イエレン議長は、会合後の記者会見冒頭発言で、失業率やU-6失業率の低下、労働参加率の下げ止まりは労働市場が委員会の目標に向かって改善しつつあることを示しているとしつつも労働市場の回復は「完全に回復はしていない」とし、また極めて多くの人が「職を探しても見つけられず、フルタイム職を選好してもパートタイム職で働き、労働市場が強ければ職探しをするであろうが現在は職探しをしていない」と述べて、労働市場の回復が十分でないことを強調している。また、10月のFOMCで資産購入終了を決定する見込みであること、準備預金が潤沢にある間はIOERがFF金利誘導目標のレンジ上限として機能することを委員会が想定していると述べている。

[第2表]
20140921表2

来年6月FOMCでの初回利上げ決定、来年末FF金利は1.25-1.5%と見る

FOMC声明文の内容が予想以上にハト派的である一方でFOMC委員の利上げ開始や時期の予測が前倒しになっていることは、FOMC内で多数派と思われるハト派がややタカ派方向にシフトし、さらに本来のタカ派が更に緩和的金融政策の早期解除を強く主張するようになったことが背景だと考える。声明文で「著しい労働資源の余剰」「相当の期間」などの文言を存置したことには、イエレン議長をはじめとするハト派の強い意向が反映されていると引き続き見ることができる。ハト派代表であるイエレン議長自身のハト派的発言が後退を始めていることは9月14日付当レポートで見たとおりであるが、労働市場の条件について議長の表現も変化している。今回の記者会見で議長は労働市場条件が「完全には回復していない」と述べており、これは8月22日のジャクソンホールでの講演での表現と同じであるが、以前の7月17日の米議会宛半期金融政策報告における「満足できるには程遠い」との表現からは明らかに改善している。また9月FOMCで2人のタカ派委員(フィッシャー総裁、プロッサー総裁)が声明文のフォワードガイダンス文言に反対票を投じたことは、タカ派の意見が更に強くなったことを表している。

一方で利上げ時期については2015年を予測する委員が17人中14人とほぼ大多数を占めたうえ、2015年末のFF金利誘導目標レンジ予測1.25~1.5%は、利上げを開始時期が来年6月とする意見が全体の中央値であることを示唆している。これらは、来年半ばの利上げ開始を予想する当レポートの見方を更に支持するものである。成長率・失業率・インフレ率を示す指標は明らかに利上げ開始時期の前倒しを示唆することはハト派といえども認めざるを得ない状況であり、これが経済予測におけるFF金利水準の上方シフトに反映されているといえる。声明文のハト派文言は経済的観点の判断というよりも社会的リベラルな主張者の証跡の色彩が濃くなっているといえる。現実の金融政策は経済学的判断に基づいて実施されるべきものであるから、結果金融政策は委員の経済予測に基づき従前の想定よりいくぶん前倒しになる可能性が高いといえるだろう。

これらを総合して、筆者のFRB金融政策予想を「2015年6月定例会合で0.25%の利上げ開始を決定、年末のFF金利誘導目標レンジ1.25-1.50%」を新たな筆者個人の予想とする。イエレン議長の採用するテイラールール公式注1)を用いて適正なFF金利水準を試算すると、2014年10-12月期に適正FF金利がプラスに転じ、2015年10-12月期に約1.5%に上昇するとの結果になった([第2図]、なお前提として2014年成長率とPCEデフレーターは筆者個人暫定予想、2015年はPCEデフレーター前年比+2.0%、成長率3%とした)。テイラールールからは2015年1-3月期時点で既に0.75%レベルまでの利上げが正当化される計算になるが、FOMC声明文が資産購入停止後「相当の期間」現在のゼロ金利を維持するとの見通しを依然明記していることから、ほぼ半年の間は利上げを実施しないとする。また初回利上げは議長記者会見の実施される定例会合で決定する可能性が高いことから、10月以降6ヶ月を経過した直後の記者会見付定例会合である6月を最初の利上げ決定と予想する。当初の利上げは6月定例会合を含め以後2015年内に5回予定されている定例会合([第3表])毎に0.25%ずつの慎重なペースで実施されるとし、結果2014年末のFF金利誘導目標レンジ予想は1.25-1.5%とする。これは上記のテイラールールによる均衡政策金利試算結果ともほぼ一致するものである。

[第2図]
20140921図2
[第3表]
20140921表3

リスク要因は8月分以降の経済指標の軟化

上記予想に対するリスク要因は、利上げペース前倒し(加速)方向と後倒し(減速)方向の双方向がある。まず利上げペースが予想よりも速くなるリスク要因として、4名のFOMC委員が2015年末のFF金利誘導目標レンジを1.75-2.0%と予測していることである。これは初回利上げ開始を来年前半に前倒しするかまたは1会合毎の利上げペースを0.25%より大きな幅にすることを想定した予測と考えられる。しかし、ハト派委員の数が人数上は多いことから、この方向のリスクは相対的には小さいと見る。利上げ開始後の利上げペースについてはおそらく9月会合の議事要旨でなんらかの議論がなされている可能性があるため、議事要旨公表後に確認することとしたい。

一方、利上げペース後倒し方向のリスク要因は、まずFOMC内でハト派が相対的に多数であることと、経済活動が来年にかけて減速するリスクである。公表済の8月分経済指標は、雇用統計、住宅着工、消費者物価指数などがやや軟化しているものがみられる。これらの軟化は一時的要因と筆者個人は考えているが、9月以降経済指標の好転が見られなかった場合、来年半ば利上げ開始が見送られる可能性なしとしない。現在筆者は暫定的に2014年通年の成長率を前年比+2.0%(第4四半期前年同期比では+1.9%)と試算しており、FOMC委員の成長予測はこれよりもいくぶんながら楽観的である。

注1)it=2+πt+0.5(πt-π)+1.0(yt-yt*、it:適切な政策金利、πt:インフレ率実績、π:インフレ率目標、yt:GDP実績、yt*:潜在GDP。(Janet L. Yellen, “Perspectives on Monetary Policy”, June 6, 2012参照)

<経済指標コメント> 日本の4-6月期実質GDP成長率は-7.1%

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[日本]

実質GDP成長率(4-6月期、2次速報値)は前期比年率-7.1%

4-6月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率-7.1%と、1次速報値の同-6.8%から下方改訂。内訳は家計消費支出同-19.5%(1次速報値同-19.2%)、民間住宅同-35.6%(同-35.3%)、企業設備同-18.8%(同-9.7%)、公的需要同-0.2%(同+0.8%)、民間在庫寄与度+4.9%(同+3.4%)、純輸出同+3.2%(同+3.2%)。企業設備と公的需要が下方改訂、民間在庫が上方改訂されている。消費税率引上げ後の4-6月期の反動減は予想外に大きかったといえる。7月以降の指標を見ても、資本財出荷が前月比で大幅増加したものの、家計消費支出や住宅着工件数が前月比で減少(8月31日付<経済指標コメント>参照)、また先行指標となる景気ウォッチャー調査DIが低下するなど(下記参照)、反動減からの戻りは弱い。8月31日付<経済レポート>のトレンドラインに当てはめると、2012年10-12月期以降の短期成長トレンド(年率+1.7%)への回帰のためには、7-9月期に前期比年率+6.8%成長が必要、1994年からの長期成長トレンド(HPフィルター回帰による、年率+1%)への回帰には7-9月期に同+2.6%の成長が必要になる。前者の達成は極めて困難、後者はなんとか射程距離である。
20140915図1

景気ウォッチャー調査(8月):現状判断DIは47.4(前月比-3.9ポイント)、先行き判断DIは50.4(同-1.1ポイント)

8月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは47.4(前月比-3.9ポイント)と4ヶ月ぶりに低下かつ2ヶ月ぶりに横ばいを示す50を下回った。消費税率引上げ実施の4月に大幅低下ののち反動減緩和につれて7月にいったん51.3にまで上昇した現状判断DIの最低下は、反動減からの戻りの減速を示唆している。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは50.4(同-1.1ポイント)と3ヶ月連続の低下。こちらは50を上回っているものの、反動減からの戻りへの期待が徐々に低下している可能性を示唆している。
20140915図2

機械受注(7月、船舶・電力を除く民需)は前月比+3.5%(前年比+1.1%

7月機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+3.5%と前月の同+8.8%に続いて2ヶ月連続の増加となった。しかし、4、5月の大幅減少分を回復するには至っていない。もっとも前年比の伸び率が+1.1%(季節調整前)と3ヶ月ぶりにプラスに転じ、消費税率引上げの影響を受けない1年前の水準にまでは回復した。経済産業省鉱工業生産統計によれば7月は資本財出荷が大幅増加していることから、今後企業設備投資は拡大に転じることが見込まれる。
20140915図3

[米国]

小売売上高(8月)は前月比+0.6%、除く自動車関連同+0.3%

8月小売売上高は前月比+0.6%と4月以来の強い伸び。また前月分も同横ばいから同+0.3に上方改訂された。8月は自動車販売の急増で自動車・同部品ディーラーの売上が同+1.5%と増加して小売売上全体を押し上げたほか、自動車関連を除くベースでも同+0.3%と予想外の好調な結果となった。売上を増加させたのは建設資材・園芸品店同+1.4%、スポーツ用品・玩具店同+0.9%、家電店同+0.7%など、本来の個人消費の中心となる業種の売上が伸びている。一方ガソリン価格の低下によりガソリンスタンドは同-0.8%と売上減少。趨勢を示す前年比の伸びは+5.0%と昨年7月以来の5%台の伸びに回復、小売売上の基調が増加に転じつつあることを示唆している。今後も堅調な雇用増と賃金の伸び加速で個人消費は堅調な拡大を続けると見る。なお、個人消費統計上の実質個人消費は7月に同-0.2%のマイナス成長だったが、今後これは上方改訂の可能性があり、7-9月期の実質個人消費は前期比年率2%レベルの伸びが何とか視野に入ってきている。
20140915図4

企業在庫(7月)は前月比+0.4%、企業売上高は同+0.8%、在庫売上高比率は1.29

企業在庫は前月比+0.4%と2ヶ月連続で伸び率横ばい、企業売上高は同+0.8%と伸びが加速した。企業売上増加に対して在庫積み増しペースは相対的に低下しており、企業在庫の3ヶ月前対比の増加幅は2ヶ月連続で縮小した。4-6月期には企業在庫が実質GDPを+1.39%押し上げたが、7-9月期は反動で成長にマイナス寄与する可能性が高い。
20140915図5

<経済レポート> のりしろを巡る議論~米労働市場条件

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イエレンFRB議長は労働市場の循環的のりしろslackが見かけより大きいとの立場をとるハト派であるが、のりしろに関する最近の発言には微妙な変化がみられる。一部労働市場指標の好転の遅れに構造要因を認めたり、またのりしろの長期化に伴う早期インフレ率上昇リスクにも言及している。これは労働参加率低下が主に構造要因であり失業率低下とともにインフレ圧力が高まるとの筆者個人の見方に沿う方向である。イエレン議長発言からも、来年半ばの利上げ開始という個人予想は維持できる。

議長の経済的ハト派色に変化

イエレンFRB議長は労働市場とりわけ労働市場ののりしろslackにしばしば言及し、その根拠となる経済指標に言及している([第1表])。基本的に議長は、表面上の失業率低下が労働市場ののりしろを過小評価しており労働市場には見かけ以上ののりしろがあるとの考え方である。またこの状況の背景には構造的要因よりも循環的要因が大きく、従って緩和的金融政策を継続することで解消可能との立場をとっている。例えば3月31日のシカゴにおける講演で議長は、労働参加率の低下が構造要因でなく循環要因であること、および労働市場ののりしろ解消に対しては金融政策が有効であることを示唆している。また7月15日の米議会宛半期金融政策報告では、失業率がFOMCの長期的均衡水準を上回っていることや、労働参加率が人口動態や失業率から期待されるよりも弱いことをもって米国には「著しい労働市場ののりしろ」が存在することを示唆している。

しかしながら、労働市場についてのイエレン議長の発言には微妙な変化がみられる。8月22日の米ワイオミング州ジャクソンホールにおける講演で議長は、労働市場ののりしろについて「労働市場に残るのりしろの水準を判断するのはより困難」になっていると述べ、これまでの「著しいのりしろ」との表現から一歩後退している。同講演では、労働参加率、経済的理由によるパートタイマー数、自発的離職率・採用率、賃金上昇率の4指標を挙げて、これが循環要因との考え方と構造要因との考え方の双方を紹介している。

また、イエレン議長は同じ講演で、FRBが開発した労働市場条件指数(LMCI)に言及している。同指数は、[表1]の経済指標を含む19の指標をもとにFRBが開発した指数で、イエレン議長は同指数の好転が失業率低下に比べて遅いことから「失業率低下は労働市場条件全体の好転をいくぶん過大評価していることを示唆している」と述べている([第1図])。しかし、LMCIは労働市場ののりしろのみならず失業率に直接現れない労働市場の条件を表象する指標による指数であり、LMCIの改善の遅れは必ずしも労働市場ののりしろの残存を意味するものではない。イエレン議長の言説は労働市場に循環的なのりしろがあるとの経済学的ハト派主張というよりもむしろ労働者が現在の労働環境にまだ不満足であるとの社会的リベラルな主張に移行しつつあると見える。

[第1表]
20140914表1

[第1図]
20140914図1

長期失業率が循環的のりしろと言及されることがなくなった

イエレン議長が引用する指標のうち、長期失業率と労働参加率についてその要因を検証する議論を見てみよう。まず27週以上の長期失業率(27週以上の長期失業者数/労働力人口)は8月現在1.9%で、金融危機前の1%弱よりも高い水準にある([第2図])。イエレン議長は3月31日のシカゴにおける講演で、6ヶ月(27週)以上の長期失業率の例外的な高さを労働市場ののりしろを表象する根拠として挙げている。また「長期失業者は究極的に労働力人口から退出する懸念」なしとはしないものの、短期失業者と長期失業者の職業・教育水準に差異がみられないこと、短期失業者の方が長期失業者よりも職を得やすいという証跡はないことから、「長期失業者も究極的にはより強い労働市場の恩恵を受ける」と述べ、長期失業率も労働市場条件により変化する循環的要因であるとの考えを示している。

しかし、最近ではイエレン議長が長期失業率を労働市場ののりしろの証跡として言及しない傾向がみられる。7月の米議会宛半期金融政策報告、8月のジャクソンホール講演のいずれにおいても長期失業率は言及されていない。一方、長期失業率の高止まりについて3月に米ブルッキングス研究所が発表したレポート注1)では、金融危機以降の長期失業者数は経済やインフレに影響を与えておらず、26週以下の短期失業率の方が労働市場条件をよく説明できるとしている。同レポートによれば、26週以下の短期失業率は既に1994年~2014年の平均値を下回っており、ここからは労働市場は金融危機前の状態にまで回復していることになる([第3図])。

筆者は、長期失業率の高止まりは主に構造要因によるものと考えている。その背景として考えられるのはまず雇用のミスマッチである。製造業の雇用者数は長期的に減少トレンドにあるが、金融危機で自動車産業が大きな打撃を受け減少ペースは更に加速した。自動車産業地域で同業に長らく携わっていた労働者が他の業種に転職できる可能性は低いと推測できる。また雇用ミスマッチは、失業率と欠員率(=(未充足求人数)÷(雇用者数+有効求人数))との関係を示すUV曲線の上方シフトからも推測できる(6月18日付当レポート参照)。

[第2図]
20140914図2

[第3図]
20140914図3

労働参加率低下に反映されるのしりろは解消しつつある

次に労働参加率について、イエレン議長はしばしばこれを労働市場の循環的要因によるのりしろの証跡として言及している。8月のジャクソンホール講演で2008年以降の労働参加率低下要因として、引退、障がい、高学歴化、求職意欲喪失を含むその他の要因の4つを挙げている。そして「昨年後半以降の労働参加率が横ばいに転じていることは一部には労働市場の好転で求職意欲喪失者が労働力人口に再流入していることの反映である可能性がある」「そうならば、循環要因による労働参加不足は解消した可能性がある」としている([第4図][第5図])。一方、引退、障がい、高学歴化についても、イエレン議長は人口動態による構造要因というよりも労働市場への期待後退などの循環要因である可能性が高いことを示唆している。

一方、FRBが9月に公表したレポート注2)は、2007年以降の労働参加率の低下の多くは構造的要因によるものとしている。ここでは高齢化のほか、高学歴化、「労働需要の2極化(労働需要が高スキル職と低スキル職に2分化し、中間スキルの職種への需要が低下する傾向)」によるミスマッチなどを構造要因と位置付けている。これらの要因を変数としたモデルにより労働参加率のトレンドを作成すると、トレンドからの乖離(循環要因による変動部分)は高々0.6%程度と推計している。

このように、労働参加率低下が構造要因か循環要因かについては、その要因の定義も含めて様々な見方があるが、筆者個人は労働参加率の低下が雇用ミスマッチや高学歴化による構造要因によるところが大きいと考えている。もっとも、イエレン議長が指摘するように、求職意欲喪失者など一時的な労働力市場からの退出者と考えられる人口が労働力人口に再流入して労働参加率が上昇することはありうる。しかし、こうした人口は金融危機以前に比べてさほど多いわけではないことに留意が必要である。非労働力人口のうち労働力人口への再流入の可能性のある人口として最も広い定義を用いて「就業意欲のある非労働力人口」の推移を見てみる。「就業意欲のある非労働力人口」の生産年齢人口に占める割合は現在約2.5%である。金融危機直前の2007年の同比率のボトムは約2%であり、現在の水準はこれよりまだ高いといえるものの、仮にこの差分が労働力人口に再流入したとしても、労働参加率の上昇はたかだか0.5%程度にとどまることになる([第6図])。

[第4図]
20140914図4

[第5図]
20140914図5

[第6図]
20140914図6

パートタイマー、自発的離職率、賃金上昇率はのりしろを表しにくい

その他、イエレン議長がジャクソンホールで言及した3つの指標(経済的理由によるパートタイマー数、自発的離職率・採用率、賃金上昇率)は、確かに循環要因の色が強く今後労働市場の改善で好転する可能性が高い指標といえるものの、これらは労働市場ののりしろというよりも労働者にとっての労働環境の指標と見るのが適切であろう。まず経済的理由によるパートタイマー数は8月現在で7277千人と、金融危機前の約5000千人に比べまだ高水準にある([第7図])。イエレン議長はこれが「現在の失業率が労働市場ののりしろを過小評価していることの理由」としつつも「経済的理由によるパートタイマーの一部は循環的でなく構造的要因で上昇していかもしれない」として、伝統的にパートタイマー比率の高いサービス業へ雇用がシフトしていることをその背景として挙げている。

自発的離職率は採用率とともに労働市場のダイナミズム(または流動性)を表す指標で、好景気時には採用と離職の双方が増加する傾向にある。自発的離職率も同様に金融危機前に比べて低い水準にある([第8図])。しかしこれらの指標は労働市場ののりしろというよりもむしろ労働市場の流動性を表す指標であり、これをもって失業率が労働力ののりしろ過小評価していることには必ずしもならないであろう。

賃金上昇率についてイエレン議長はこれを労働市場ののりしろを示す指標としながらも「循環的影響と構造的影響の区別は著しく困難」としている。伝統的考え方によれば賃金上昇率は労働市場の需給に反応するものであるとともに「(景気後退期に賃金引下げしなかったことの累積的な効果で)景気回復時に積み上がりデフレーションが起きている可能性」また「生産様式や国際貿易などの構造要因により」賃金決定方式が変化した可能性を挙げている。筆者個人は、現在の時間当たり賃金上昇率(8月時点で前年比+2.5%)は失業率低下に比べて相対的に低いものの、これは賃金上昇の遅行性によるものにすぎず、今後これまでの失業率低下を反映した賃金上昇加速が起きると基本的には見ている([第9図])。従って遅行性のある賃金上昇率はかならずしも労働市場ののりしろの大きさを示唆するものではないと見る。

[第7図]
20140914図7
[第8図]
20140914図8
[第9図]
20140914図9

循環要因縮小によるインフレ対処のため利上げは来年半ばと見る

以上をまとめると、労働市場の循環的のりしろはイエレン議長も暗に認め始めているようにかなり縮小しており、失業率はほぼ労働市場ののりしろを適正に表していると筆者個人は考える。失業率に表れていないのりしろは主に縁辺労働者の生産年齢人口に占める割合で計測できるが、金融危機前と比較したそののりしろの水準は労働参加率にして1%以下の範囲にとどまっていると考えられる。従ってインフレ率との関係で労働市場ののりしろを考える場合は、労働市場の需要超過はかなり縮小してタイト化の方向に向かっていると考えるのが適切であろう。むしろイエレン議長自身もジャクソンホール講演で紹介しているように、長期失業者を生んだ雇用ミスマッチなどの要因により「賃金と物価圧力は持続的な最大雇用が実現するよりもかなり早期に起きる可能性がある」と見ておくべきであろう。

これらより、FOMCは10月定例会合で資産購入停止を決定し来年6月または7月の定例会合で初回の利上げを決定するとの個人予想を維持する。イエレン議長はハト派であり労働市場ののりしろが見かけの失業率よりも大きいとの立場をとりつつも、循環的なのりしろの規模についてはややその縮小を認める論調に転じており、かつのりしろの長期化が賃金インフレを早期に招く可能性にも言及している。残る労働市場の課題は構造的もしくはのりしろとはやや距離のある労働条件であり、これは金融政策というよりも社会的な課題として解決を図る類のものであろう。

(補論)縁辺労働者、求職意欲喪失者、経済的理由によるパートタイマーとU-6失業率

縁辺労働者persons marginally attached to the labor forceとは、非労働力人口のうち「現在労働も求職もしていないが就業意欲はあり就業可能でかつ過去12ヶ月以内に求職をした者」のことである。求職意欲喪失者discouraged workersは縁辺労働者のうち「現在求職をしていないことが労働市場の理由による者」である。(非労働力人口>就業意欲のある非労働力人口>縁辺労働者>求職意欲喪失者)。これら非労働力人口の一部及び経済的理由によるパートタイマーemployed persons at work part-time for economic reasonsをも失業者と見做して算出された失業率が代替的失業率alternative measures of labor underutilizationのうちのU-6(いわゆるU-6失業率)である。U-6失業率の定義は「(失業者+縁辺労働者+経済的理由によるパートタイマー)÷(労働力人口+縁辺労働者)」。U-6失業率は8月現在で12.0%と、金融危機直前の2007年の8%台に比べてまだ高水準にある([第10図])。

[第10図]
20140914図10

注1)Alan B. Krueger, et al, ”Are the Long-Term Unemployment on the Margins of Labor Market?” March 20-21 2014, Brookings Panel on Economic Activity.
注2)S. Aronson, et. al., “Labor Force Participation: Recent Development and Future Prospects”, September 2014, Finance and Economics Discussion Series, Federal Reserve Board.

<経済指標コメント> 米8月非農業部門雇用者数は+142千人

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[米国]

ISM製造業指数(8月)は59.0%(前月比+1.9%ポイント)、非製造業指数は59.6%(同+0.9%ポイント)

8月のISM製造業指数は2ヶ月連続上昇となる59.0%(前月比+1.9%ポイント)、水準は2011年3月以来の高水準。製造業18業種中17業種が経済活動の拡大を報告している。総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注66.7%(同+3.3%ポイント)、生産64.5(同+3.3)、雇用58.1(同-0.1)、入荷遅延53.9(同-0.2)、在庫52.0(同+3.5)。雇用DIがわずかに低下したものの、先行性のある新規受注DI、一致性のある生産DIは前月比大幅上昇となった。製造業指数59.0%は実質GDP成長率との相関からは前期比年率約+3.5%の成長に相当する。ISM非製造指数は59.6%(前月比+0.9%ポイント)と2ヶ月連続上昇、水準は現在の指数の連続性のある2008年1月の開始以来最高水準となった。非製造業15業種のすべてが経済活動の拡大を報告している。総合DIを構成する4つのDIの内訳は、事業活動65.0(同+2.6)、新規受注63.8(同-1.1)、雇用57.1(同+1.1)、入荷遅延52.5(同+1.0)。総じて、企業景況感は高水準に上昇しており、引き続き米経済が堅調な拡大を続けていくことを示唆している。
20140906図1

新車販売台数(8月)は年率17.4百万台(前月比+1.0%)

8月の新車販売台数は年率17.4百万台(前月比+1.0%)の急増。年率販売台数が17百万台を上回ったのは実に2006年7月以来のこと。2008年のリーマンショック以前の2000年代には年間17百万台が自動車販売の一つの目途とされていたが、金融危機による落ち込みからようやく以前の水準に回帰したことになる。一方短期的にも8月の自動車販売増加は個人消費の加速を示唆している。実質個人消費は7月に前月比-0.2%のマイナス成長となり消費拡大に一服感があった。しかし8月新車販売の急増は、8月以降再び個人消費は再加速していることを示唆している。今後の8月個人消費関連指標(小売売上高等)の再加速に期待できる。
20140906図2

雇用統計(8月):非農業部門雇用者数は前月比+142千人、失業率は6.1%(前月比-0.1%ポイント)

8月雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は予想を下回る前月比+142千人にとどまった。内訳を見ると、自動車及び同部品製造業(前月比-4.6千人)、小売業(同-8.4千人)が前月比で雇用が減少に転じたほか建設業(同+20千人)などの雇用増加ペースが減速している。一方で専門ビジネスサービス(同+47千人)、教育・医療(同+37千人)は雇用が加速している。米労働省によれば、自動車製造業では7月の定例工場閉鎖後の再雇用数減少、小売業はニューイングランド地方のスーパーのストライキが雇用減の要因とされている。スーパーのストライキは一時要因、また自動車は生産・販売ともに7~8月に増加しており、労働需要は本来的には強いと考えられる。8月雇用統計上の雇用増加ペース減速は一時的なものと見たい。家計調査では、失業率が6.1%(同-0.1%ポイント)と小幅低下。内訳を見ると労働力人口が前月比減少し労働参加率は62.8%(同-0.1%ポイント)に低下していることが失業率低下に寄与しているものの、就業者数も同時に増加している。他の雇用関連指標(ISM非製造業指数の雇用DI、ADP社民間就業者数)が8月に堅調な伸びを示していることからは、堅調な雇用増加基調に変化はないと見たい。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.5%と2010年以来の高い伸び率となっている。インフレ率を2%とした場合実質賃金上昇率は約+0.5%となり、今年に入り物価上昇で一時伸びが減速していた実質賃金の伸びが加速に転じ始めている。時間当たり賃金は失業率低下に遅行して今後も伸びが加速すると見る。イエレンFRB議長が重視するその他の指標では、27週以上の長期失業者は2963千人(同-192千人)、経済的理由によるパートタイマーは7277千人(同-234千人)といずれも好転(減少)している。総じて労働市場の堅調拡大基調は不変、またイエレン議長の重視する指標も好転していることから、FRBの金融政策についての個人予想(今年10月に資産購入停止決定、来年6月または7月に利上げ開始)を維持する。
20140906図3