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<経済レポート> 10年ぶり3%へ:米経済定点観測

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2014年後半に予想以上の拡大加速を見せた米国経済であるが、今後はその反動や2015年半ばに予想される利上げなどいくつかの向い風要因がある。しかしそれでもなお、2015年の米国経済は10年ぶりの3%成長を達成すると見る。牽引役は引き続き個人消費であるが、設備稼働率上昇などによる需給ギャップ縮小で経済全体の需給がタイト感を増す年になるだろう。リスク要因は株価高値警戒感と新興国リスクである。

2015年は利上げにもかかわらず10年ぶりの高成長へ

米経済は7-9月期まで2四半期連続で前期比年率4%を超える成長加速を見せた。10-12月期はしかしやや減速して同+3.0%の成長に落ち着くと見る。もっとも牽引役の個人消費は11月に前月比+0.7%の大幅な伸びを見せており、前期の前期比年率+3.2%から10-12月期にはさらに加速して同4%台の伸びになると見る。10-12月期の成長減速要因は企業設備投資である。企業設備投資は7-9月期に同+8.9%の強い伸びだったが、10-12月期には同ゼロ成長程度にとどまると見る。設備投資のうちの機器投資の基礎統計である非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は11月までで前期比マイナスの伸びに留まっている。

次に、10-12月期成長率を押し下げる要因が純輸出である。ドル高と海外景気の減速で輸出が伸び悩む一方で、内需拡大で輸入の増加ペースが拡大している。10月までの貿易収支統計からは、10-12月期の実質ベースの財の貿易赤字は前期よりも拡大するペースである。また、在庫調整も成長の押し下げ要因となるだろう。企業在庫は依然調整局面にあり、10月までの企業在庫統計でも在庫積み増しペースの鈍化が続いている。企業在庫は10-12月期のGDPにはマイナス寄与となると見る。以上より、2014通年の米実質GDP成長率は前年比+2.4%レベルに着地しそうだ。

2015年は、2014年の景気拡大ペースがさらに加速する可能性が高い。ただし、2015年6月と筆者個人が見ているFRBの利上げ開始は個人消費中心に景気の抑制要因とならざるをえない。その結果成長率は年央でピークに達したあと徐々に減速していくと見る([第1図])。それでも計算上は2015年通年の成長率を前年比+3%台前半と、2005年以来10年ぶりの3%成長を達成すると予想する([第2図])。ちなみに10年ぶりの3%成長は、米国の景気循環のサイクルが概ね10年と見られることとも整合している。以下では需要項目毎の動向を見ることにする。

[第1図]
20141231図1
[第2図]
20141231図2

設備稼働率上昇で企業設備投資意欲は維持される

2015年の個人消費については、概ね12月14日付当レポートで予想した通りであるが、その後公表された11月分実質個人消費が予想以上に強かったため今年の10-12月期の発射台が高くなり、その分2015年の消費の伸びも押し上げられることになる。金利上昇の影響で2015年後半に1%台への減速が見込まれることは上記レポート予想と不変である。2015年通年で実質個人消費は前年比+2%台後半の強い伸びになると見る。

企業設備投資についてはこれまで同様、堅調ながらも緩やかな拡大が続くとの見方は不変である。設備投資の対GDP比率の推移から設備投資循環の状況を見たのが[第3図]である。設備投資循環は現在上昇局面にあり、また同比率の20四半期移動平均も上昇していることから、設備投資の拡大は今しばらく続きそうだ。しかし設備投資/GDP比率のピークの水準がサイクル毎に切り下がっている傾向からはそろそろ今回の循環のピークも近い可能性がある。今後1年程度はややペースを落としながら設備投資が拡大するというのがありそうなシナリオだ。

一方で企業の設備投資意欲はまだ高い。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数における6ヶ月先の設備投資DIは依然高水準にあり、少なくとも現在の設備投資拡大ペースが今後半年は持続する可能性が高いことを示唆している([第4図])。企業の設備投資意欲は主に企業収益と設備の余剰度合が決定すると考えられる。[第5図]は、企業ネットキャッシュフロー及び設備稼働率と、企業設備投資との関係を見たものである。企業ネットキャッシュフローはここ数四半期の間高水準ながら一進一退の動きにとどまっている。一方で鉱工業の設備稼働率は順調に上昇を続け、11月時点で80.1%と、金融危機前の2003年以来の水準かつ1972-2013年の平均値に回帰した。今後更に設備稼働率が上昇すると、鉱工業の生産設備の余剰は更に縮小してタイトな状況になる。以上から2015年の企業設備投資は2014年並みの前年比+6%台の成長を持続すると見る(企業キャッシュフロー・設備稼働率と企業設備投資の関係については6月9日付当レポート参照)。

[第3図]
20141231図3
[第4図]
20141231図4
[第5図]
20141231図5

住宅市場の需給は依然タイト

住宅投資は2014年に前年比2%弱の成長に鈍化した。住宅ローン金利の低位安定にもかかわらず住宅投資が増加しないのは主に住宅ローンの信用条件がいまだタイトであることがあると考えられる。FRBの資金循環統計によれば、家計の住宅ローン借入残高は2014年7-9月期時点で約9.4兆円と引き続き金融危機以後の最低水準に近いところにとどまっている。また持家比率が継続的に低下していることも住宅市場拡大の抑制要因となっている。中期的な住宅投資の循環を見ると、住宅バブル崩壊後に住宅投資が長い下降を辿ったのち、現在は上昇局面にあるものの、その上昇ペースは極めて緩やかなものにとどまっている([第6図])。これらからは住宅投資が経済の牽引役になることは2015年においてもなさそうである。

一方で住宅販売が堅調に推移しているなど需給面では住宅市場は良好な状態にある。住宅市場の需給を表す中古住宅販売在庫期間と貸家空室率はいずれも低下基調にある([第7図])。これらの状況からは、短期的には住宅市場の需給はややタイトであり、2015年においても持続的な投資拡大が期待できると考えられる。2015年通年の実質住宅投資は2014年からやや加速して前年比+5%程度の成長を見込む(持家比率・貸家空室率・中古住宅販売在庫期間を決定要因とする住宅投資の分析については5月22日付当レポート参照)。

企業在庫については[第8図]に見るようにやや長めの在庫調整局面が続いている。海外経済の不透明感から企業が在庫積み増しに消極的であることが推し量られる。しかし、全体的な企業景況感が好調であることから、この調整も2015年半ばには終了し、年後半には再び在庫積み増しペースが加速すると見る。

[第6図]
20141231図6
[第7図]
20141231図7
[第8図]
20141231図8

リスク要因は株価への警戒感と新興国

成長予想に当たってかく乱要因となりそうなのが純輸出である。現状ではドル高と海外景気の減速が輸出の抑制要因、またドル高は内需の拡大と相まって輸入拡大要因となり、少なくとも2015年前半は貿易赤字の拡大が成長抑制要因になるだろう。一方年後半は金利上昇で内需拡大ペースが鈍化することから輸入の伸びがやや減速すると考えられる。海外景気が年後半にかけて回復に向かえば輸出が年後半には回復してくると考えられる。結果純輸出は通年で成長にほぼゼロの寄与度となると見ておきたい。

結果、筆者個人の2015年の通年成長率予想を前年比+3%台前半とする。インフレ率については、原油価格の下落から個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率は2015年に1%台前半~半ばで推移する可能性が高い。一方で失業率低下と設備稼働率上昇に伴いマイナスの需給ギャップが縮小することがインフレ圧力となり、食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターの前年比伸び率は1%台後半から2%の心地よい水準で推移すると見る。筆者試算によれば、米国のマイナスの需給ギャップは現在-3.2%、これが2015年末には-2%を割り込む水準に縮小する計算になる([第9図])。この需給ギャップ縮小がインフレ率底支え要因となるとともに賃金上昇率の加速を促し、経済拡大の正のスパイラルを形成することになるだろう。

上記予想に対するリスク要因はいくつかある。まず史上最高値を更新し続ける株価が2015年に予想外に反落することである。筆者は上記予想の前提としてNYダウが2015年末に19500ドルにまで上昇すると想定している。しかしながら現状S&P500指数の株価収益率は20倍にまで上昇しており、一般論としてはやや高値警戒感が出てくる水準である。企業収益の回復が株価に追いつけばこの警戒感は払しょくできるが、現状では収益よりも株価先行感が否めない。次に、原油価格下落やロシアの政治経済リスクが他の新興国に伝染してグローバルな経済悪化をもたらすリスクである。現在のところロシア以外の新興国リスクは顕在化していないが、他のBRICS諸国や産油国への波及リスクは否定しえない。更にギリシャでは年内の議会による大統領選出に失敗したことから1月に総選挙が行われる見込みである。反財政緊縮を唱える急進的左派が政権を握ればIMF/EUによる支援スキームが継続できなくなるリスク顕在化の可能性がある。これはさらに他の欧州周縁国関連の金融市場にも波及する可能性がある。こうしたリスクにかかわらず米国が予想通りの成長を達成すれば米国の復活は本物といえるだろう。

[第9図]
20141231図9

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<経済指標コメント> 米7-9月期実質GDP成長率は前期比年率+5.0%

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[日本]

住宅着工戸数(11月)は年率888千戸(前月比-1.8%)、季節調整前前年比-14.3%

11月の住宅着工戸数は年率888千戸(前月比-1.8%、季節調整済)と4ヶ月ぶりの前月比減少。しかしその減少幅は小幅で、7月のボトム以来の住宅着工の底入れ基調はまだ続いているといえる。10-12月期の住宅着工戸数は4四半期ぶりに前期を上回る可能性が高く、GDP統計上の10-12月期住宅投資はプラス成長への転化が可能だ。もっとも季節調整前の前年同月比は-14.3%と9ヶ月連続のマイナスとなっており、消費税率引上げ後の反動減からはまだ回復していない。

20141227図1

全国消費者物価指数(11月)は前年比+2.4%、生鮮食品を除く総合指数は同+2.7%

11月の全国消費者物価指数は前月比-0.4%と2ヶ月連続の低下、前年比では+2.4%と前月の同+2.9%から伸び率が低下した。生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は前月比-0.2%、前年比では+2.7%と4ヶ月連続で伸び率が低下した。消費税率引上げ影響を除くとコア指数は前年比+0.7%と2ヶ月連続で1%を下回る伸びになっている。エネルギー価格の低下が引き続きコア指数の伸び率低下要因となっており、11月はエネルギーが前年比の伸び率を-0.08%押し下げている。食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)の前年比伸び率も前年比+2.1%と、消費税率引上げ影響を除くとほぼゼロ%の伸びに低下している。日本のフィリップス曲線の形状に加え、成長悪化による需給ギャップ再拡大もあり、今後1年での2%インフレ率への回帰は依然困難と見る。

20141227図2

完全失業率(11月)は3.5%

11月の完全失業率は3.5%(前月比横ばい)。内訳を見ると、完全失業者数が2ヶ月連続で減少しているものの、労働力人口も2ヶ月連続の減少、筆者試算による労働力化率は59.4%と2ヶ月連続の低下(いずれも季節調整値)。低失業率と労働力化率の頭打ち傾向は、労働市場が引き続きタイトな状況にあることを示唆している。一方で日本のフィリップス曲線の形状からは、2%のインフレ率達成のためには失業率が1%にまで低下することが必要になる計算であり、労働市場のタイト化にもかかわらずインフレ率上昇にはまだ時間がかかりそうだ。

20141227図3

実質家計消費支出(11月)は前年比-2.5%、季節調整済前月比+0.4%

11月の実質家計消費支出は前年比-2.5%と消費税率引上げのあった4月以来のマイナスの伸びが続いている。マイナス幅は概ね消費税率引上げ幅と同じである。もっともマイナス幅は確実に縮小しているうえ、季節調整済の前月比の伸びは+0.4%と3ヶ月連続のプラスとなった。家計消費は消費税率引上げによる反動減から徐々に底入れしつつあるといえる。名目家計消費支出は前年比+0.3%と5ヶ月ぶりに前年比プラスの伸びに回復。総じて個人消費は上方モメンタムを回復しつつある。

20141227図4

鉱工業生産指数(11月)は前月比-0.6%

11月の鉱工業生産指数は前月比-0.6%と3ヶ月ぶりの低下。出荷指数は同-1.4%とこれも3ヶ月ぶりの低下。もっとも低下幅は小幅で、9月以降の生産底入れ基調は継続しているといえる。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷指数も同-2.4%と3ヶ月ぶりに低下したが、資本財出荷の10-12月期の前期比伸び率は2四半期連続のプラスとなるペースであり、7-9月期に予想外にマイナス成長となったGDP統計上の企業設備投資は、10-12月期にはプラス成長に転じると見る。一方で在庫指数は同+1.0%、在庫率指数同+4.0%と一旦進行した在庫調整から再び在庫が増加している。在庫循環図上は「意図せざる在庫増」局面にある。在庫調整は来年半ば位までは成長を押し下げる要因になりそうだ。

20141227図5

[米国]

中古住宅販売戸数(11月)は年率4930千戸(前月比-6.1%)、在庫期間は5.1ヶ月

11月の中古住宅販売戸数は年率4930千戸(前月比-6.1%)と3ヶ月ぶりに大幅減少。販売在庫は2090千戸(同-6.7%)と4ヶ月連続の減少となり、在庫期間は5.1ヶ月と前月比横ばいなるも8月をピークに再び短期化している。統計上は販売在庫が再びタイトになったことにより販売も一時的に減少したと見れる。集計元の全米不動産業協会は「中古住宅販売はばらつきが大きく、季節要因で販売在庫が減少している」「10月の株価下落が消費者心理に影響した可能性がある」としている。株価一時下落が販売減少の要因ならば、11月以降の株価回復で住宅販売も回復の期待が持てる。供給側要因による在庫減少は消費者の選択肢を狭めることで販売抑制要因にはなりうるものの、住宅販売が抑制される他の要因は見当たらず、今後も住宅販売は堅調に推移すると見る。

20141227図6

実質GDP成長率(7-9月期、確報値)は前期比年率+5.0%

7-9月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率+5.0%と、改定値の同+3.9%から更に上方改訂され、2003年7-9月期以来の高成長となった。需要項目別内訳は個人消費同+3.2%(改定値同+2.2%)、設備投資同+8.9%(同+7.1%)、住宅投資同+3.2%(同+2.7%)、政府支出同+4.4%(同+4.2%)、企業在庫寄与度-0.03%(同-0.17%)、純輸出寄与度+0.78%(同+0.78%)。個人消費・設備投資・住宅投資の内需項目がいずれも上方改訂されており、なかんずく個人消費の大幅な上方改訂が目立つ。今後この反動や利上げ影響で成長率は数字の上ではやや減速を見込むものの、2015年の成長率は3%台が射程距離に入ってきている。

20141227図7

実質個人消費(11月)は前月比+0.7%、個人消費支出価格指数は前年比+1.2%、同コア指数は同+1.4%

米11月実質個人消費は前月比+0.7%の大幅増。新車販売急増を反映して耐久財消費が同+2.3%となったのが主因。ただ非耐久財消費同+1.0%、サービス消費同+0.4%といずれも強い伸びを示した。物価安で実質可処分所得が同+0.5%と名目可処分所得の伸び+0.3%を上回っており、イエレンFRB議長が17日記者会見で述べた通りインフレ率低下は経済にはネットでポジティブとの見方に整合している。10-12月期の実質個人消費は前期比年率4%台になるペースで、筆者の個人予想を上回る可能性が高くなってきた。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+1.2%と前月の同+1.4%から伸び率が低下、5月の同+1.7%をピークに低下基調が続いている。もっとも総合消費者インフレ率低下はエネルギー価格低下の影響によるもので、食品及びエネルギーを除くコアPCEは前年比+1.4%と相対的に堅調である。成長加速による需給ギャップの縮小により、ベースラインのコアインフレ率は来年1.7~2%に再上昇すると見る。

20141227図8

耐久財受注(11月)は前月比-0.7%、除く運輸関連同-0.4%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)同横ばい、同出荷同+0.2%

11月の耐久財受注は前月比-0.7%と減少、運輸関連を除くベースでも同-0.4%と2ヶ月連続減少となった。企業設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は前月比横ばい(厳密には3ヶ月連続マイナスとなるわずかなマイナス)にとどまったもののマイナス幅は縮小している。GDP統計上の機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は同+0.2%と前月の同-0.9%の大幅マイナスからやや持ち直した。10-12月期の同出荷指数は前月比依然わずかなマイナス水準にあるが、今後の数値改訂や12月の結果次第ではプラス成長への回帰も可能なペースである。総じて企業設備投資は緩やかながらも堅調な拡大を続けていると見る。

20141227図9

新築住宅販売戸数(11月)は年率438千戸(前月比-1.6%)、在庫期間は5.8ヶ月

11月の新築住宅販売は年率438千戸(前月比-1.6%)と2ヶ月連続の小幅減少。6ヶ月移動平均も同432.3千戸(同-0.8%)と4ヶ月ぶりにわずかに低下に転じた。しかしながら販売基調はまだ横ばいを保っており、11月以降の株価回復や長期金利の低位安定の環境からは今後も住宅販売は堅調に推移すると見たい。販売在庫は213千戸と9ヶ月連続で増加、在庫期間は5.8ヶ月と標準とされる6ヶ月に近いところにまで長期化している。供給力不足でタイトな状況にあった新築住宅市場も、供給が持続的に回復する傾向が見られ、これは販売増加には好材料である。

20141227図10


<経済レポート> フォワードガイダンス変更:12月FOMC声明文

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FOMCは12月定例会合で声明文のフォワードガイダンスを変更し「委員会は金融正常化開始に忍耐強くいられる」とした。この変更は従前からの筆者個人予想に沿ったものであり、来年6月の利上げ開始、来年末のFF金利誘導目標レンジ1.25-1.50%との個人予想を維持する。もっともインフレ率低下は潜在的な下方リスクでありまた利上げペースもFOMC内で意見が2分化していることには留意が必要である。

フォワードガイダンスを「忍耐強くいられる」に変更

12月16-17日のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合後の声明文、及びFOMC委員経済予測、そして会合後のイエレン議長記者会見には、大きく3つのポイントがある。一つは利上げ時期に関わるフォワードガイダンスの変更、次にインフレ率低下に関するFOMCの評価、最後にこれらを総合した来年の利上げ時期と利上げペースの見通しである。

まず、17日の声明文では、注目のフォワードガイダンスが従来の「0-0.25%のFF金利誘導目標レンジを資産購入終了後相当の期間for a considerable time維持することが適切である可能性が高い」から「現状の評価に基づけば、委員会は金融政策スタンスの正常化開始に忍耐強くいられるcan be patientと判断する」に変更された。「相当の期間」文言のフォワードガイダンスからの削除は筆者個人の予想通りであった。なお声明文では上記文言にすぐに続けて前回のフォワードガイダンス文言をそのまま引用し「このガイダンスは、、、前回の声明と整合的なものと委員会は見做している」と述べる配慮をしている([第1表])。つまり今回の文言変更は利上げ開始までの行程の変更を示唆するものではなく、あくまで時間の経過で利上げが近づくにつれ「相当の期間」が妥当しなくなったことによるものであることの再確認である。イエレン議長も会合後の記者会見の冒頭発言で「フォワードガイダンスの変更は、従前の声明文で公表された委員会の政策意図の如何なる変更をも示唆するものではない」と述べている。

新たなフォワードガイダンスは、従前の「相当の期間」と同様に英イングランド銀行の所謂「オープンエンドガイダンス」に相当すると考えられる。英イングランド銀行の分類では「忍耐強くいられる」とのガイダンスは政策変更までの特定の期間を示唆する「時間条件ガイダンス」には相当しないといえる。しかしながら新たなフォワードガイダンスは、のちに見るように今後3回~4回のFOMC定例会合の期間という短い期間を示唆する文言と見ることができる(2013年8月11日付当レポート参照)。

[第1表]
20141223表1

インフレ率低下には配慮するも経済への影響はプラス

次に、原油価格下落に伴うインフレ率低下を背景にインフレ率についてのFOMCの評価に微妙な変化がみられる。FOMCの使命に照らした今後の雇用と物価見通しの部分で「委員会は、、経済活動が適度なペースで拡大し、雇用市場指標〔とインフレが〕、委員会の2つの使命に整合的な水準に向かって推移すると予想する」との文言から〔 〕内の“インフレ“が削除された。更に「委員会はインフレの動向を引き続き注意深く監視closely monitorしていく」との文言が追加された。これらは、インフレ率低下に関してFOMCが更に注意を払い始めたことを示唆している。

FOMCのインフレ率についての評価の変化は、今回改訂されたFOMC委員の経済予測にも反映されている。2015年のPCEインフレ率(第4四半期前年同期比)予測の中心傾向は1.0-1.6%と、9月時点予測の1.6-1.9%から大幅に下方シフトしている。これは原油価格の急落により総合インフレ率が従前予想よりも低下する見通しの反映である。一方で、食品・エネルギーを除くコアPCEインフレ率予測(2015年)は1.5-1.8%と、9月時点予測の1.6-1.9%からわずかな下方シフトにとどまっている。イエレン議長が会合後の記者会見でも述べている通り、FOMC総合インフレ率は今後更に低下する可能性が高いものの「コアインフレ率は現状の水準で推移すると予想」していることになる。

しかし、総合インフレ率の低下に関しては声明文で「委員会は労働市場の更なる改善と、一時的なエネルギー価格低下や他の要因の後退とともに、インフレ率が2%に向かって徐々に上昇すると予想する」と明記している。またイエレン議長は記者会見の質疑応答で「米国や米国の経済見通しの観点からは、原油価格の低下はネットでプラスだと委員会は判断している」と述べている。インフレ率の低下が金融政策に与える影響は今のところ限定的なようだ。筆者個人は、原油価格低下による総合インフレ率の低下にかかわらず、成長加速による需給ギャップの縮小がインフレ率を底支えると考えている。総合インフレ率について筆者はこれまで来年2%までの上昇を予想していたが、これは下方修正を考慮せざるを得ない。しかし、需給ギャップの縮小と期待インフレ率の安定により、コアインフレ率は来年2015年に1.8%レベルで推移すると想定する。

[第2表]
20141223表2

来年6月の初回利上げ、年末FFレンジ1.25-1.50%の個人予想を維持する

適切な利上げ開始時期に関しては、FOMC委員17人中15人が2015年を予想している(上記[第2表])。イエレン議長は記者会見質疑応答で「多くのa number of 参加者は経済環境が来年半ばまで(金融正常化に)適切になる」と見ていると述べている。2015年の利上げ開始はFOMC内でほぼコンセンサスになっているといえる。なお、イエレン議長は記者会見の質疑応答で「今後2回のcouple of委員会では利上げはない」と発言している。今後のFOMC定例会合の日程に照らせば、利上げ開始は最速でも2015年4月ということになる。ちなみに、2004年1月にグリーンスパン議長時代のFOMCが声明文で「忍耐強くいられる」文言を用いたときは、文言開始後3回目の定例会合で初回の利上げが決定された([第3表])。今回の「忍耐強く」が2001年とまったく同じ時間軸を指すということはできないが、上記のイエレン議長発言と合わせて、「忍耐強く」は来年4月ないし6月の利上げ開始を示唆する文言だということができる。

また、利上げのペースについて、FOMC委員経済予測における2015年末のFF金利誘導目標レンジ中心値の予測の分布は[第1図]の通りである。9月時点予測に比べると予想はいくぶん2分化の傾向があり、また委員予測の中央値は9月時点の1.375%から1.125%へといくぶん下方シフトした。FOMC委員の経済予測をもとに、テイラー・ルールに基づく2015年末の適正FF金利水準を試算したのが[第4表]である。FOMC委員の総合PCEインフレ率予測とコアPCEインフレ率予測に乖離があるため、どちらを用いるかで試算結果がかなり異なってくる。インフレ率として総合PCEインフレ率予測を用いた場合の2015年末の適正FF金利は0.75%、コアPCEインフレ率予測を用いた場合のそれは1.28%との結果になった。また、筆者個人の予想に基づく試算結果は1.55%との結果になった。これらを[第1図]のFOMC委員予測分布と合わせると、FOMC内にはハト派とタカ派が2分化しており(0.875%を予測する委員と1.875%を予測する委員がそれぞれ4名ずつ)、特にタカ派委員はテイラー・ルールによる適正金利よりも高い水準への利上げを志向していることがわかる。

筆者個人は、これまでの「2015年6月利上げ開始、2015年末FF金利誘導目標レンジ1.25-1.50%」を維持する。インフレ率予想をやや下方修正してもなお、成長率の予想以上の加速により需給ギャップの縮小が適正な政策金利水準を押し上げることから、上記テイラー・ルールによる試算の通り来年末1.25-1.5%のFF金利誘導目標レンジは正当化される。また声明文のフォワードガイダンス、FOMC委員経済予測、イエレン議長の記者会見発言内容のいずれもが、筆者個人の予想を支持している。

[第1図]
20141223図1
[第3表]
20141223表3
[第4表]
20141223表4

リスクは下方:来年のFOMC投票メンバーはハト派勢力が拡大する

上記の筆者個人予想に対するリスクはどちらかといえば下方つまり利上げペース後倒し方向である。ひとつのリスクシナリオとして、6月以降の利上げペースが定例会合毎に0.25%でなく、当初は1会合おきに0.25%ずつとなり、年末のFF金利誘導目標レンジが0.75-1.00%に留まるケースが考えられる。2015年末のFF金利誘導目標レンジ中心値を0.875%と予測する4名のFOMC委員は、2015年半ばからの利上げ開始後年内は1回おきになることを想定しているとも考えられる。

次に、来年のFOMC投票メンバーの交替である。来年は、2名のタカ派委員(フィラデルフィア連銀プロッサー総裁、ダラス連銀フィッシャー総裁、この2名は12月FOMCでタカ派的観点から反対票を投じた)と1名のハト派委員(ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁、同氏は12月FOMCでハト派的観点から反対票を投じた)が投票メンバーから外れる。一方新たな投票メンバーには、シカゴ連銀エバンス総裁、サンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁の2名のハト派が含まれるのに対し、投新たに加わるタカ派はリッチモンド連銀ラッカー総裁のみである。差し引きではFOMC内ではややハト派の勢力がやや拡大する見通しである。

また、原油価格の更なる下落は利上げペース鈍化のリスク要因であると言わざるを得ない。現在1バレル=55ドル前後まで下落している原油価格が更に40ドルレベルにまで下落すると、インフレ率は一時的には1%を割り込む可能性なしとしない。原油価格下落はあくまで外的要因によるインフレ率低下であって米国のファンダメンタルズに起因する要因ではないため金融政策への影響は限定的と基本的には見る。しかし原油価格下落が期待インフレ率の低下をという形で顕在化すると、FOMCの政策決定にも直接的な影響を及ぼす可能性がでてくる。

<経済指標コメント> 米11月消費者物価指数は前年比+1.3%

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[日本]

日銀短観(12月調査):大企業製造業の業況判断DIは12ポイント(9月調査比-1ポイント)

日銀短観12月調査、大企業製造業の業況判断(最近)DIは12(9月調査比-1ポイント)と小幅低下。内訳は、円安の好影響を受ける造船・重機等が14(同+11ポイント)と上昇した一方、原油価格下落の影響で石油・石炭製品が-27(同-27ポイント)と急低下するなどばらつきがみられる。大企業非製造業の業況判断DIは16(同+3ポイント)と小幅上昇。総じて企業景況感は消費税率引上げ後の下げ止まりがみられるものの回復には転じていない。また円安、原油安という新たな要因で業種間のばらつきが目立つ。先行き判断DIは大企業製造業が9、大企業非製造業が15といずれも最近の判断DIから低下している。

20141220図1

[米国

鉱工業生産指数(11月)は前月比+1.3%、設備稼働率は80.1%

11月の鉱工業生産指数は前月比+1.3%と急上昇、内訳は製造業同+1.1%、鉱業同-0.1%、公益事業同+5.1%と、原油価格低下の影響と思われる鉱業以外はともに上昇。まだ自動車生産(乗用車及び軽トラック)も年率11.69百万台(前月比+7.7%)と4ヶ月ぶりに増加した。設備稼働率は80.1%(前月比+0.8%ポイント)と大幅上昇、金融危機前の2008年3月以来の高水準、また1972-2013年の平均である80.1%に回帰した。設備稼働率の上昇は経済ののりしろ(slack)の縮小を意味し、原油価格下落で低下基調にあるインフレ率を需給面で底支えすることになるだろう。

20141220図2

住宅着工戸数(11月)は年率1028千戸(前月比-1.6%)、着工許可件数は同1035千件(同-5.2%)

11月の住宅着工戸数は年率1028千戸(前月比-1.6%)と微減、ただし10月分が速報値の同1009千戸から同1045千戸の大幅上方改訂されている。結果着工戸数は3ヶ月連続で年率1000千戸を超える水準を維持、また6ヶ月移動平均も同1011.8千戸と1000千戸超かつ上向きの状態にある。また地域別に見ると、北東部前月比+8.7%、中西部同+14.4%、南部同-19.5%、西部同+28.1%と着工が減少したのは南部のみである。また住宅着工許可件数は年率1035千件(同-5.2%)とこれも減少、ただし6ヶ月移動平均は1031.8千戸と引続き高水準かつ上向きにある。総じて住宅着工は引き続き堅調な増加基調にあるということができる。

20141220図3

消費者物価指数(11月)は前月比-0.3%(前年比+1.3%)、同コア指数は前月比+0.1%(前年比+1.7%)

11月の消費者物価指数(CPI)は原油価格の下落等を反映して前月比-0.3%の大幅低下、前年比の伸び率は+1.3%と前月の同+1.7%から大幅低下した。内訳はガソリン前月比-6.6%、暖房油同-3.5%とエネルギー関連の価格が大幅低下している。食品・エネルギーを除くコア指数は前月比+0.1%とプラスの伸びを保ち、前年比では+1.7%と前月の同+1.8%からやや低下したものの相対的に高い水準を保っている。医療用品同+0.6%、医療サービス同+0.4%などが上昇、一方で中古車同-1.2%、衣服同-1.1%などが、年末販売促進策の影響もあってか価格下落している。総じて原油価格急落の影響で総合指数の前年比伸び率は今後も一時的に更に低下する可能性が高いが、コア指数は経済ののりしろの縮小により来年にかけても前年比+1.5%~2%の間で堅調に推移すると見る。

20141220図4

<経済レポート> 利上げ影響の見積もり:来年の米個人消費

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米国のホリデー商戦は予想以上に好調である。雇用拡大やガソリン安が消費者の購買意欲を刺激していると考えられる。11月小売売上高統計の結果、今年のホリデー商戦売上についての筆者個人の予想を上方修正する。一方で、来年2015年はFRBの利上げによる金利上昇の影響で個人消費の伸びはやや減速すると見る。

ガソリン安と雇用拡大でホリデー商戦は予想以上に好調

米国の個人消費は年末にかけ加速している。11月の小売売上高は前月比+0.7%と今年3月以来の高い伸び、前年比の伸び率は+5.1%と昨年7月以来の高い伸びとなった(12月13日付<経済指標コメント>参照)。筆者がホリデー商戦売上高のベースとしている「自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く」小売売上高の伸び率は、11月時点で前年比+4.3%と2012年5月以来約2年半ぶりの高い伸び率となっている。これは、昨年11月の同+3.7%をはるかに上回るペースでもある([第1図])。

小売売上の急加速の背景にはまず、株価上昇や雇用環境の好転に伴う良好な消費者センチメントがある。ミシガン大学消費者センチメント指数は8月以来12月速報まで5ヶ月連続の上昇、12月速報値は93.8ポイントと2007年1月以来約8年ぶりの高水準に上昇した。消費者センチメント指数の上昇は小売売上高の増加ペースの加速とも軌を一にしている([第2図])。消費者センチメント指数の上昇からは、12月の小売売上高は更なる加速を見込むことができる。

もう一つの要因として、10月以来の原油価格下落によるガソリン価格低下が消費者の購買意欲を高めていると考えられる。米エネルギー情報局(EIA)によれば、11月中旬以降全米のガソリン平均価格は1ガロン=3ドルを割り込んでいる。ガソリン価格が3ドル以下になるのは2010年11月以来約4年ぶりのことである。ガソリン価格低下に自動車ローン条件の良さが加わって11月の新車販売台数は年率17.1百万台(前月比+0.7%)に急増した。ついては、11月の小売売上高実績値とこれらの外部要因を勘案して、筆者個人の今年のホリデー商戦売上高予想を当初の前年比+3.7%(11月9日付当レポート参照)から上方修正して、前年比+4.8%とする([第3図])。

[第1図]
20141214図1
[第2図]
20141214図2
[第3図]
20141214図3

企業収益の改善で賃金の伸びはまだ加速が見込める

好調な個人消費を支える雇用と賃金の状況を改めてみてみよう。11月分雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は3ヶ月連続で前年比+2.0%の伸びを維持している。また時間当たり賃金は同+2.2%、週平均労働時間は同+0.3%の伸びとなっている。これらを合わせ、雇用と賃金で約+4.5%の購買力が生み出されている計算になる([第4図])。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の10月時点の前年比の伸び率+1.4%を差し引くと、実質ベースで約+3%の個人消費の伸びが期待できる購買力があることになる。

今後の雇用・賃金動向については、失業率が11月時点で5.8%と自然失業率に近いところにまで低下していることから、雇用拡大ペースの大きな加速は考えにくい。また週平均労働時間は11月時点で33.8時間と過去のピークに近いところまで増加していることから、これも今後更なる伸びは期待しにくいといえるだろう。一方で、時間当たり賃金はまだ上昇ペース加速の余地がある。失業率の低下や週平均労働時間の伸びに比べて時間当たり賃金の上昇率ペースはかなり遅行している([第5図])。

賃金上昇ペースの加速が遅いのは今回の景気回復局面における謎のひとつであるが、筆者個人は賃金上昇率が低位にとどまっていることは構造的な要因ではなく、いずれ労働市場の需給タイト化に遅行して賃金上昇ペースが加速すると見ている。賃金上昇ペースが遅い理由の一つに今年前半までの企業収益の低迷が考えられる。企業収益は今年の1-3月期に一時的な成長のマイナス転化により前年比マイナスの伸びになった。これが企業の賃金引上げを抑制したことは考えられることである。しかし、その後非金融機関を中心に7-9月期まで企業収益は前年比でプラスの伸びに回復している([第6図])。非金融機関(事業会社)の時間当たり賃金は、来年には少なくとも前年比+2.5%伸びが期待できるところであろう。

[第4図]
20141214図4
[第5図]
20141214図5
[第6図]
20141214図6

来年はFRB利上げによる金利上昇が消費へのマイナス要因となる

雇用・賃金のほかに、物価・金利・株価・住宅価格も個人消費を決定する要因である。これらのうち来年に最も大きな変動があると考えられるのが金利である。筆者は、2015年6月からFRBの利上げが開始され2015年末にはFF金利誘導目標レンジが1.25-1.50%にまで引き上げられると個人的に予想している。FRBによる米国債購入が10月に停止されたことと、FF金利誘導目標の引上げに伴い、10年物米国債利回りは2015年末には4%レベルにまで上昇すると見る。これにより、現在約4%の低水準にある30年物住宅ローン金利は2015年末には6%レベルにまで上昇することになると見る。

雇用拡大ペースが横ばいにとどまり、時間当たり賃金上昇率も遅い加速に留まるとすれば、金利上昇が消費に与えるマイナス効果がどの程度個人消費を減速させるかが来年の米国の成長率を占うに当たり重要になる。そこで、雇用・賃金のほか物価・金利・株価・住宅価格を外生変数とする実質個人消費の要因分解をアップデートすることにより、来年にかけての個人消費の伸び率を推計することとする(8月15日付当レポート参照)。

雇用・賃金・金利以外の外生変数の今後の推移の前提として、まずインフレ率(PCEデフレーターの前年比伸び率)は2015年を通じて+2%で推移するとした。原油価格下落で現在インフレ率は1%台半ばまで低下している。しかし、原油価格下落が一段落すれば、成長加速による需給ギャップ縮小と消費者インフレ期待の改善により、インフレ率は来年には2%レベルにまで上昇すると個人的には予想している。株価については、NYダウ平均が来年末に19500ドルにまで上昇すると前提した。NYダウは8日に17935ドルと史上最高値を付けたのち一時下落に転じているが、成長率やインフレ率からすると来年末の19500ドルレベルへの程度の上昇は十分に考えられるところである。住宅価格は上昇ペースを減速させており、S&Pケース・シラー住宅価格指数(10都市)の上昇率は9月時点で前年比+4.8%にまで低下している。しかしながら一方で、住宅市場の需給は依然タイトであり、住宅価格上昇率は加速することはないものの現在の+5%程度の上昇は来年も持続すると見たい。

来年の個人消費は年後半に減速を見込む:通年のGDPは3%成長が可能

雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格を外生変数として、1992年10-12月期から2014年7-9月期までの88四半期の実質個人消費の実績値を回帰した結果が[第1表]である。またこの結果を用いて上記の前提により2015年10-12月期までの実質個人消費の推移を推計したものが[第7図]である。これによれば、来年半ばからの金利上昇が個人消費を-1%ほど押し下げる計算になる。実質個人消費の伸び率は2015年1-3月期には前年比+3%レベルとなるものの、10-12月期には同+2.0%にまで減速するとの結果になった。

因みに、仮にインフレ率が現状のまま前年比+1.4%で推移するとした場合、実質個人消費の伸び率はこの推計値より+0.2%ほど押し上げられる計算になる。また株価が現状水準のまま横ばいで推移するとした場合、個人消費の伸び率はこの推計値より-0.2%ほど押し下げられる計算になる。インフレ率が上記前提に反して上昇しなかった場合は金利上昇も抑制されることで個人消費にはプラス要因となり、その場合株価が前提に反して上昇せずまたは下落することがあっても概ねカバーできると考えられる。

以上より、2015年のGDP統計上の実質個人消費は、現状の前期比年率+2%台半ばの伸びから、2015年後半には同+1.5%レベルにまで減速すると見ておく([第8図])。もとよりこの予想は来年の米国経済全体が減速することを示唆するものではない。この予想においても2015年の実質個人消費は前年比+2.2%と今年とほぼ同じ成長ができる計算である。他には住宅建設の加速と在庫調整の終了により来年の成長率は押し上げられ、2015年通年の実質GDPは前年比約+3%の成長となると個人的には見込んでいる。

[第1表]
20141214表1
[第7図]
20141214図7
[第8図]
20141214図8

<経済指標コメント> 米11月小売売上高は前月比+0.7%

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[日本]

実質GDP成長率(7-9月期、2次速報値)は前期比年率-1.9%

7-9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率-1.9%と、1次速報値の同-1.6%から下方改訂された。需要項目別内訳は家計消費支出同+1.5%(1次速報値同+1.4%)、住宅投資同-24.4%(同-24.1%)、企業設備投資同-1.5%(同-0.9%)、公的需要同+1.9%(同+2.8%)、企業在庫寄与度同-2.2%(同-2.2%)、純輸出寄与度同+0.4%(同+0.4%)。下方改訂されたのは企業設備投資と公的需要で、他の需要項目は1次速報値から大きな変化はなかった。7-9月期法人企業統計からは企業設備投資のプラス成長への上方改訂が期待されたが結果は下方改訂。家計消費が2四半期ぶりのプラス成長になったものの、住宅投資・設備投資がマイナスとなり、さらに在庫調整が成長を-2.2%押し下げた形。実質GDP成長率の前年同期比は-1.2%と前期の同-0.3%からマイナス幅が更に拡大した。消費税率引上げ後の反動減からまだ経済は持ち直していないとの結果になった。もっとも家計消費、資本財出荷、住宅着工は9月~10月に入り前月比で増加を始めており、経済の底入れは近いと見る。10-12月期の実質GDP成長率は家計消費の加速と企業設備投資のプラス成長転化を梃子に、前期比年率4%レベルの成長への回復を見込む。2014年暦年の成長率は前年比+0.4%、2014年度の成長率は前年度比ほぼゼロ%を見込む。

20141213図1

景気ウォッチャー調査(11月):現状判断DIは41.5(前月比-2.5ポイント)、先行き判断DIは44.0(同-2.6ポイント)

11月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは41.5(前月比-2.5ポイント)と2ヶ月連続の低下、横ばいを示す50を4ヶ月連続で下回った。内訳は家計動向関連(同-2.8ポイント)、企業動向関連(同-1.6ポイント)、雇用関連(同-2.4ポイント)といずれの項目も前月比で低下。判断悪化理由として「来客数減少」「物価が上がっているという感覚(百貨店)」「円安の影響で、海外から調達する原材料価格高騰が販売価格に転化できない(食料品製造業)」などがあげられている。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは44.0(同-2.6ポイント)と6ヶ月連続の低下、また横ばいを示す50を3ヶ月連続で下回った。内訳は家計動向関連(同-2.9ポイント)、企業動向関連(同-22ポイント)、雇用関連(同-1.1ポイント)といずれの項目も前月比低下。判断悪化理由としては「諸物価値上がり傾向(商店街)」「衆議院選挙で景気不透明(スーパー)」「円安の影響」などがあげられている。統計上の家計消費、設備投資は上向きに転じつつあるものの街角景況感への浸透はまだのようだ。

20141213図2

機械受注(船舶・電力を除く民需、10月)は前月比-6.4%

10月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-6.4%と、前月の同+2.9%から5ヶ月ぶりに減少した。内訳が製造業同-5.5%、非製造業同-7.5%といずれの業種からの受注も減少となった。前年比の伸びは-4.9%と、前月に同+7.3%のプラス転化したものの1ヶ月で再びマイナスに戻った。反動減ののち6月以降回復を続けてきた機械受注は前年並みの水準に戻ったところで一時的な停滞感がみられる。

20141213図3

[米国]

小売売上高(11月)前月比+0.7%、除く自動車同+0.5%

11月の小売売上高は前月比+0.7%の強い伸び。内訳は新車販売の増加を反映した自動車及び同部品ディーラーが前月比+1.7%と急増、他には建設資材・園芸品店(同+1.4%)、家電店(同+0.9%)、衣服店(同+1.2%)、百貨店(同+1.0%)など、ホリデー商戦の目玉となる業種が売上を伸ばしている。ただしガソリン価格の低下でガソリンスタンドは同-0.8%と4ヶ月連続で売上が減少した。小売売上全体の前月比の伸び+0.7%は3月以来の高い伸び、前年比の伸び+5.1%は昨年7月以来の強い伸びとなる。ホリデー商戦売上高のベースとなる「自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く」売上高も前月比+0.6%と予想以上の強い伸びとなった。筆者個人は今年のホリデー商戦売上高(自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く小売売上高の11-12月合計)を前年比+3.7%と予想していたが(11月9日付<経済レポート>参照)、11月の実績はこの予想を大きく上回るペースで、今やホリデー商戦売上高は前年比+5%近い伸びになる計算になる。その場合、ホリデー商戦売上高は3年ぶりに前年の伸びを上回ることになる。なお、感謝祭翌日のブラックフライデー週末の売上はよくはなかった模様(ShopperTrak社によれば感謝祭とブラックフライデーの売上は前年比-0.5%、全米小売業連盟によれば感謝祭週末の総客足は同-5.2%)だが、オンライン売上増加や商戦期間分散で11月全体の売上が同+5%以上も伸びたと思われる。12月にはミシガン大学消費者センチメント指数も93.8(前月比+5.0ポイント)に急上昇しており、12月の売上加速にも期待できる。

20141213図4

企業在庫(10月)は前月比+0.2%、企業売上高は同-0.1%、在庫売上高比率は1.3倍

10月の企業在庫は前月比+0.2%とやや弱めの伸び。3ヶ月前対比の増加幅は5ヶ月連続で縮小しており、企業在庫循環がまだ調整局面にあることを示唆している。企業売上高は同-0.1%と過去3ヶ月で2回目のマイナスの伸び。GDP統計上の企業在庫は、10-12月期にも2四半期連続で成長にマイナス寄与する可能性が高い。

20141213図5

<経済レポート> インフレ期待低下の影響は限定的:FOMC展望

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16-17日に開催予定のFOMC定例会合では、フォワードガイダンスから「相当の期間」の文言が削除され、来年6月からの利上げ開始への地ならしがされると個人的には予想している。一方で、10月FOMCでは市場の期待インフレ率低下に懸念を示す議論がなされたことが議事録から読み取れる。インフレ率はFOMC委員予測を下回るリスクなしとしない指標であるが、需給ギャップの縮小で今後インフレ率は再上昇し、予想通り利上げは開始されると考える。

12月FOMCでは「相当の期間」削除を予想:テイラー・ルールは利上げ時期前倒しを示唆

12月16-17日にFRB公開市場委員会(FOMC)定例会合が開催される。12月会合は資産購入終了を決定した10月会合以降初の定例会合でありまた今年最後の定例会合、さらにFOMC委員の経済予測改訂及びイエレン議長記者会見を伴う注目度の高い会合となる。筆者個人は、12月会合で現在のフォワードガイダンス「0-0.25%のFF金利誘導目標レンジを資産購入終了後も相当の期間維持することが適切である可能性が高い」が改訂され、少なくとも「相当の期間」の文言は削除されると予想している。また、FOMCは来年6月の定例会合で初回の利上げを決定すると予想している(11月3日付当レポート参照)。

「相当の期間」文言削除予想の理由は2点ある。一つは、10月に資産購入が既に終了した後の一定の期間(3月19日FOMC後のイエレン議長の記者会見質疑応答発言によれば約6ヶ月)を「相当の期間」と表現していると見做すならば、その期間は時間とともに短縮してくためいずれはこの文言は修正されねばならないことである。次に、11月19日に公表された10月FOMCの議事要旨によれば「相当の期間」の文言の存置如何についてはかなりの議論がされており、いくらかの(some)参加者が「相当の期間」文言の削除を志向していることだ。これらの参加者は「こうした表現は委員会の決定がデータに依存しないとの誤解を招く可能性」を懸念している。しかし他の参加者はこの文言が政策意図を表現にするのに有用であるまたは委員会の決定はデータ依存であるとの他の文言を加えるのがよい、とした。英イングランド銀行の分類に倣えば、「相当の期間」というフォワードガイダンスは「オープンエンドガイダンス」に相当するあくまで定性的なガイダンスである。しかし現実には上記の通りこれが一定の期間を示す「時間条件ガイダンス」と現在の市場が見做している可能性が高い。これを回避するためにも、同文言の削除は妥当とFOMC内でも結論される可能性は高そうだ。

来年半ばの利上げ開始予想は、インフレ率と需給ギャップに関するこれまでの実績と今後の筆者個人予想をテイラー・ルールに当てはめた結果で推測できる。ここで改めてテイラー・ルールによる適正政策金利推計をアップデートしてみる。[第1図]はテイラー・ルールによるFF金利誘導目標の適正水準を推計したものである。ここではイエレン議長に倣いテイラー・ルールを2通り設定した注1)。一つは「1993年テイラー・ルール」と議長が呼ぶもので、政策金利決定要因としてのインフレギャップと需給ギャップを同等に勘案するジョン・テイラー氏本来のテイラー・ルールである。もう一つは「1999年テイラー・ルール」とイエレン議長が呼ぶもので、政策金利決定に当たり需給ギャップをより重視するようにパラメーターを同議長が変更したものである。イエレン議長はそのリベラルな背景からインフレ率よりも需給ギャップ(特に労働市場の余剰)を重視する立場をとっている。同じインフレ率・需給ギャップの場合、1999年ルールの方が適正な政策金利水準は低めに出る。試算の結果、現在(2014年10-12月期時点)の適正FF金利は1993年ルールで2.1%、1999年ルールで0.6%となった。オリジナルのテイラー・ルール1993年では現在で既にゼロ金利政策が終了していてしかるべきとの結果であるのに対し、イエレン議長が採用する1999年ルールの場合、現在ようやくゼロ金利解除が正当化されることになる。いずれにしても、イエレン流のテイラー・ルールにおいてすら現在かかなり近い直後の時期の利上げが正当化されることになる。なお直近2四半期の成長率が予想を上回るものだったことから、従前の試算(8月24日付当レポート参照)に比べて1999年ルールによる適正な利上げ時期は2四半期ほど前倒しになっている。筆者は現在初回利上げを2015年6月会合と予想しているが、テイラー・ルールからはこの時期は前倒しも正当化可能ということになる。ちなみに、2015年末の適正なFF金利誘導目標は、1993年ルールの場合3%、1999年の場合2%と計算される。

[第1図]
20141207図1

成長・雇用は前回会合以降も好調、インフレ率は下振れリスクの可能性も

10月定例会合以降の経済指標も好調である。10月FOMC以降に公表された7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.9%(改定値)と、前期の同+4.9%に続く強い伸びをしめした。筆者個人の予想では、10-12月期の実質GDP成長率の前年同期比の伸び率は+2.4%となる見込みである。これは9月時点のFOMC委員経済予測における2014年成長率予測(10-12月期前年同期比)の中心傾向である+2.0~+2.2%を優に上回る水準ということになる。

雇用市場も10月FOMC以降順調な拡大を続けている。11月非農業部門雇用者数は前月比+321千人と雇用増加ペースが大きく加速した。11月時点の失業率は5.8%と、9月時点のFOMC委員予測中心傾向(5.9~6.0%)を既に下回る水準に改善している(12月6日付<経済指標コメント>参照)。労働市場の余剰を表す指標も改善を続けている。11月の「経済的理由によるパートタイマー」数は6850千人と、2008年10月以来初めて7000千人を割り込む水準に減少した。27週以上の長期失業者数は11月時点で2815千人と4ヶ月連続で3000千人を下回りかつ4ヶ月連続で減少している。10月FOMC声明文での「労働市場の余剰は低減しつつある」との状況は10月以降も妥当しているといえる。なお、11月の労働参加率は62.8%と引き続き低水準にとどまり、また時間当たり賃金上昇率も前年比+2.2%と伸び悩んでいる。しかし、労働参加率低下は循環要因というよりむしろ構造要因である可能性が高く、また時間当たり賃金は今後失業率低下に遅行して上昇ペースを速めると個人的には考えている。

一方で、インフレ率についてはやや懸念なしとしないのが実情である。10月FOMC声明文では「市場のインフレ期待指標はいくぶん低下し、調査に基づく長期インフレ期待は安定を続けている」との新たな文言が挿入され、労働市場に対する判断改善に替えて低インフレ率に対する配慮が示された。FOMCがインフレ指標とする個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は10月時点で前年比+1.4%と、10月FOMC委員経済予測の中心傾向1.5~1.7%を下回っている([第2図])。筆者個人は年末時点のPCEデフレーターの伸び率が前年比+1.7%にまで再加速し、来年いっぱいはFRBが目標とする同+2%レベルで推移すると予想して上記のテイラー・ルール推計の前提としている。総合PCEデフレーターの伸び率が低下から横ばいに転じ、またコアPCEデフレーターの伸び率が拡大に転じていることからは、食品・エネルギーを除く消費者インフレ率は一旦底入れしたと見られる。しかしながら、外部環境は原油価格の下落が依然止まらない状況で、今後のインフレ率反転上昇見通しには下方リスクが出てきている可能性もあると言わざるを得ない。同時に市場の期待インフレ率も原油・商品価格下落に伴いここ何ヶ月かで低下傾向にある。

[第2図]
20141207図2

市場の期待インフレ率の低下が10月会合で議論になった

インフレ率なかんずく期待インフレ率については、10月会合でもさまざまな議論がなされた。10月FOMC議事要旨によれば、ほとんどの参加者は「インフレ率は石油ほかの商品価格と輸入物価の低下により短期的には低下する」ものの「インフレ期待の安定の中、資源余剰の逓減とともに中期的には委員会の2%目標に回帰する」と予想している。しかしながら一方で、「調査によるインフレ期待は安定している」が「今後5年間、及び5年後に始まる5年間の市場のインフレ期待は前回会合以降低下した」ことが10月FOMCでの議論になっている。実際、5年物米国債利回りと5年物物価連動米国債の利回り差(TIPSスプレッド)から算出される期待インフレ率(BEI)は、5年後で約1.5%、5年後スタートの5年後(5年先5年)で約2.3%となっており、これらは今年の7月をピークに低下傾向にある([第3図])。

市場のインフレ期待低下の背景については10月FOMCでは様々な意見が出された。議事要旨によれば、ある意見は「インフレリスク確率の低下や物価連動債の流動性を反映したインフレリスクプレミアムの低下」をその背景として挙げた。またある意見は「市場のインフレ期待がインフレリスクプレミアムの反映であってインフレ期待低下の反映ではないとしても、こうした変化が、低インフレを伴う経済減速の悪い結果についての投資家のコンセンサスの拡大を反映している可能性があることから、政策当局はこうした変化を勘案するべき」との意見があったとされる。総じて、TIPSスプレッドに表象される市場のインフレ期待が、単に市場流動性や需給の反映と見るか、それとも実体経済における期待インフレ率を反映したものと見るかで意見が分かれているということができる。

一般に、TIPSスプレッドに表される期待インフレ率(BEI)は、米国債や物価連動国債の短期的・中期的な需給に左右されることが多いため、厳密に市場の期待インフレ率を表しているとは限らない。従って筆者自身は、インフレ率決定要因として期待インフレ率を変数に用いる際はTIPSスプレッドではなく、ミシガン大学消費者センチメント調査における12ヶ月後の消費者期待インフレ率を用いている(10月26日付当レポート参照)。もっとも、ミシガン大調査における期待インフレ率もここ3ヶ月間は低下傾向にある([第4図]。こうした環境からは、インフレ期待の低下が将来のインフレ率上昇を抑制する要因になる可能性なしとはしないことになる。

[第3図]
20141207図3
[第4図]
20141207図4

インフレ率が2%に向けて再上昇するとの予想を維持する:需給ギャップ縮小が要因

しかしながら、筆者個人は引き続き米国の消費者インフレ率が、年末から来年にかけて2%のFOMC目標値に向けて上昇していくとの見方を維持しておきたい。筆者個人の見方は上記議事要旨に見られるFOMCの多数意見に近く、需給ギャップの縮小がインフレ率上昇の主要因と考えるものである。10月26日付当レポートの分析によれば、インフレ率に与える影響は需給ギャップの方が期待インフレ率よりも大きい。同分析によれば、マイナスの需給ギャップ+1%の縮小はインフレ率を約+0.12%押し上げる効果がある。実際に、2014年7-9月期の需給ギャップ-3.4%は前年同期に比べて+0.8%縮小している。現在の米国の潜在成長率が2%弱であることを考えれば、今後米経済が潜在成長率を上回るペースで成長し、需給ギャップが縮小していくことは計算上も可能である。これに対し同分析では、期待インフレ率-0.1%の低下はインフレ率を高々-0.02%程度押し下げるに過ぎない。期待インフレ率の変動幅からみても、需給ギャップの縮小によるインフレ押し上げはインフレ期待低下による押し下げ効果を上回る可能性が高いのである。

従って、インフレ率についても現在のFOMCの多数意見である「中期的には2%目標に回帰する」が12月定例会合でも維持されるとともに、来年6月定例会合で最初の金利引上げ決定、その後定例会合毎に0.25%の利上げが行われ、2015年末にはFF金利誘導目標レンジが1.25-1.50%に引き上げられるとの予想を維持したい。実際、FOMC委員の中でハト派に属するNY連銀ダドリー総裁ですら、12月1日の講演で「利上げが2015年半ばに実施されるとの市場の期待は私には合理的に見える」「私の見方は10月FOMC会合前にNY連銀により実施されたプライマリー・ディーラーと投資家に対する調査と大きく違わない」として市場の期待を容認する発言をしている注2)

上記予想に対するリスク要因は、市場や調査によるインフレ期待の低下が更に進行して実際のインフレ率を予想以上に低下させることのほか、原油・商品価格の更なる低下が考えられる。更に最近の傾向として、金利格差拡大期待からくるドル高傾向がある。ドル高は輸入物価の低下の形で国内のインフレ率を抑制する効果がある。米国の輸入物価は、石油関係を除けばまだ上昇基調からピークアウトの兆しがみられるに過ぎない([第5図]。しかしながら、今後ドル高の効果が徐々に顕在化することによって、輸入物価が更に低下に転じる可能性なしとはしない。輸入物価の上昇は交易条件の好転という形で企業収益にはプラス効果となるが、インフレ目標達成に対してはネガティブな要因とならざるを得ないだろう。

[第5図]
20141207図5


注1) テイラー・ルールの一般的等式は以下:
      it=2+πt+α(πt-π*)+β(yt-yt*)
itは適切な政策金利、πtはインフレ率実績、π*はインフレ率目標、ytはGDP実績、yt*は潜在GDPである。ここでは、インフレ率としてPCEデフレーターの前年同期比の伸び率を用い、2015年1-3月期にこれが2%に達したのち2015年いっぱい2%で推移すると前提する。インフレ率目標は2%とする。GDPについては、2014年10-12月期は筆者個人予想、2015年は3%成長と前提する。潜在GDPは米議会予算局の8月時点の推計値を用いる。係数をα=0.5、β=0.5とするのが1993年テイラー・ルール、α=0.5、β=1.0とするのが1999年テイラー・ルールである(2012年6月6日イエレンFRB副議長(当時)講演Janet L. Yellen, “Perspectives on Monetary Policy”, June 6, 2012)。

注2) NY連銀による「プライマリー・ディーラー調査(2014年10月)」によれば、利上げ開始時期としてプライマリー・ディーラーの28%が2015年4-6月期を、25%が同7-9月期を予想、利上げ時期予想の中央値は2015年6月だった。また「市場参加者調査(同)」によれば、投資家の32%が2015年7-9月期の利上げ開始を予想、利上げ時期予想の中央値は2015年7月だった。

<経済指標コメント> 米11月非農業部門雇用者数は前月比+321千人

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[米国]

ISM製造業指数(11月)は58.7%(前月比-0.3%ポイント)、非製造業指数は59.3%(同+2.2%ポイント)

11月のISM製造業指数は58.7%(前月比-0.3%ポイント)とわずかに低下したが、上昇基調は依然保っている(3ヶ月移動平均は58.9%と前月比+0.8%ポイント上昇)。総合DIを構成する5つのDIの内訳は新規受注66.0%(前月比+0.2%ポイント)、生産64.4%(同-0.4)、雇用54.9%(同-0.6)、入荷遅延56.8%(同+0.6)、在庫51.5%(同-1.0%)。生産DIがやや低下したものの、先行性のある新規受注DIは2ヶ月連続の上昇、在庫DIが低下するよい形である。非製造業指数は59.3%(同+2.2%ポイント)と3ヶ月ぶりの上昇。総合DIを構成する4つのDIの内訳は、事業活動64.4%(前月比+4.4%ポイント)、新規受注61.4%(同+2.3)、雇用56.7%(同-2.9)、入荷遅延54.5%(同+5.0)。総じて企業景況感は高水準にあり、年末から来年にかけて米経済拡大ペースがj持続することを示唆している。

20141206図1

新車販売台数(11月)は年率17.1百万台(前月比+0.7%)

11月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率17.1百万台(前月比+0.7%)と今年8月以来の水準に増加した。低金利、自動車ローン信用条件緩和、ガソリン価格の低下が自動車購入を促進していると考えられる。消費者信用残高のうち自動車ローンなどノンリボルビング信用の残高は今年に入り前年比約8%の伸びを続けている。原油価格下落によりガソリン価格は1バレル=3ドルを割り込む水準に低下している。生産面では自動車産業は8月以降自動車生産ペースを落としていることから、生産は今後再拡大が見込まれる。現状の低ガソリン価格が継続すれば今後も高水準の自動車販売が期待できる。自動車販売の増加で、10-11月期のGDP統計上の実質個人消費は筆者の見る前期比年率+2%台半ばより上ぶれる可能性が出てきた。

20141206図2

雇用統計(11月):非農業部門雇用者数は前月比+321千人、失業率は5.8%(前月比横ばい)

11月雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+321千人と、2012年1月以来の増加幅となった。内訳は民間部門同+314千人、うち製造業同+48千人、サービス業同+266千人。雇用増を牽引したのは小売業(前月比+50.2千人)、専門ビジネスサービス(同+86千人)などのサービス業だった。小売業の雇用増加ペース加速はホリデー商戦の好調さを示唆するものである。非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は+2.0%と2006年以来の高水準を3ヶ月連続で維持している。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)の伸び率は前年比+2.2%とピークの今年5月の同+2.5%からやや伸び悩んでいるが、今後雇用市場のタイト化とともに遅行的に上昇ペースは加速すると見る。家計調査による失業率は5.8%と前月比横ばい、内訳は労働力人口と失業者がともに増加しており、労働市場拡大を伴う失業率低位安定である。労働参加率は62.8%と前月比横ばいかつ低下傾向を維持している。労働市場の改善は、来年6月のFRBによる利上げ開始予想を支持するものである。また、雇用増+2.0%、時間当たり賃金同2.2%、週平均労働時間同+0.3%の伸びは、インフレ率差引後の実質ベースで3%近い消費者購買力の拡大を意味しており、米国経済拡大ペースの持続を支持する内容となっている。

20141206図3