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<経済指標コメント> 米10-12月期実質GDP成長率は前期比年率+2.6%

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[日本]

完全失業率(12月)は3.4%(前月比-0.1%ポイント)

12月の完全失業率は3.4%(前月比-0.1%ポイント)と、1997年以来の低水準に低下した。内訳は就業者数が前月比+0.7%(前年比+0.6%)、労働力人口が同+0.7%(同+0.4%)といずれも増加しており、労働力人口の増加を伴う失業率低下となっている。筆者試算による労働力化率は59.8%(前月比+0.4%ポイント)と上昇している。ただし、6ヶ月移動平均の動きを見ると失業率低下ペース、労働力化率上昇ペースともに減速がみられることから、労働市場はかなりタイト化している可能性が引き続き高いと見る。

20150131図1

実質家計消費支出(二人以上の世帯、12月)は前年比-3.4%(前月比+0.4%)

12月の実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前年比-3.4%と4月の消費税率引き上げ以来連続してマイナスの伸びとなり、かつ消費税率引上げ幅の2%を上回る減少となっている。もっとも季節調整済前月比では+0.4%と4ヶ月連続で増加しており、駆け込み需要の反動減は緩和されていると見られる。名目家計消費支出は前年比-0.6%と前月の同+0.3%から再びわずかにマイナスの伸びに転化したがその推移は安定しつつある。勤労世帯の実質実収入は前年比-0.8%と依然マイナス圏にあるがマイナス幅は4月「の同-7.1%から大幅に縮小している。原油価格下落によるエネルギー価格低下は今後勤労世帯の実質実収入押し上げ要因となる。総じて個人消費は依然低水準ながら底入れしつつあるといえる。なお、内閣府の消費総合指数は11月に前月比+0.9%の大幅上昇を示しており、GDP統計上の実質家計消費支出が前期比年率+3%を超えるペースに加速していることを示唆している。

20150131図2

全国消費者物価指数(12月)は前月比+0.1%(前月比+2.4%)、生鮮食品を除く総合指数は同-0.2%(前年比+2.5%)

全国消費者物価指数(12月)は前月比+0.1%と3ヶ月ぶりにわずかに上昇、前年比上昇率は+2.5%と前月比横ばいの伸びだった。生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は前月比-0.2%と2ヶ月連続の低下、前年比上昇率は+2.5%と5ヶ月連続で低下した。コア指数の上昇率は消費税率引上げの影響を除くと前年比+0.5%にまで低下している。前月比で主に上昇した費目は生鮮野菜(前月比+5.1%)、低下した費目はガソリン(同-3.6%)だった。前年比上昇率内訳ではエネルギーが+2.8%と上昇率を更に低下させている。エネルギーは消費税率影響を除くと+0.8%とまだプラス寄与しているものの今後マイナスの伸びに転化する可能性が高い。なお、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)上昇率は前月比横ばい、前年比では+2.1%と消費税影響を除くと前年比でほぼゼロの伸びにまで低下している。エネルギー価格低下は一時的な要因であり、失業率低下に見られるようにマイナスの需給ギャップは確実に縮小しているが、日本のフィリプス曲線の形状からは2%物価目標達成には相当の需要超過が必要な計算になる。量的・質的追加緩和のアナウンスメント効果は持続的とはいいにくい。消費税率影響を除く2%のインフレ率達成は引き続き困難と見る。

20150131図3

鉱工業生産指数(12月)は前月比+1.0%

12月の鉱工業生産指数は前月比+1.0%と前月の同-0.5%から反転上昇した。出荷指数は同+1.1%、在庫指数は同-0.4%、在庫率指数は同-4.1%。総じて前月に比べ生産・出荷が増加して在庫圧縮が進んだ形。また生産指数の前年比の伸びは+0.3%と3ヶ月ぶりにプラスの伸びに転じている。GDP統計上の企業設備投資の先行指標となる資本財出荷は前月比-2.7%と2ヶ月連続で減少したが、10-12月期平均では前期を+2.2%上回っており、10-12月期の企業設備投資が3四半期ぶりにプラス成長に回復する可能性が高いことを示唆している。総じて企業部門は家計部門に先んじて回復しているが、海外経済の減速が一時的に設備投資意欲を抑制している可能性がある。なお、集計元の経済産業省は「生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」として概況判断を前月までの「一進一退にある」から引き上げている。

20150131図4

住宅着工戸数(12月)は年率883千戸(前月比+1.1%)

12月の住宅着工戸数は年率883千戸(前月比+1.1%)と前月の同-1.5%から反転増加、過去6ヶ月中4ヶ月で増加となった。結果10-12月期の住宅着工戸数は前期比+2.3%と4四半期ぶりに前期を上回っており、10-12月期のGDP統計上の住宅投資が3四半期ぶりのプラス成長になる可能性がでてきている。もっとも前年比の伸びは12月で-14.7%と大幅なマイナスにとどまっている。住宅着工は持ち直しているものの、消費税率引上げ前の水準からはまだかなり低いレベルにある。

20150131図5

[米国]

耐久財受注(12月)は前月比-3.4%、除く運輸関連同-0.8%

12月の耐久財受注は前月比-3.4%と前月の同-2.1%に続き大幅な減少となった。振れの大きい運輸関連を除くベースでも同-0.8%と3ヶ月連続で減少した。GDP統計上の設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)も同-0.6%と4ヶ月連続の減少。総じて耐久財や資本財の受注には減速がみられる。好調な米国内需に比べて減速の続く欧州やアジアの経済が企業の設備投資を慎重にさせている可能性がある。なお、GDP統計上の機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は前月比-0.2%と3ヶ月連続の減少、10-12月期は前期比年率-3.3%と3四半期ぶりのマイナスの伸びに転化した。

20150131図6

新築住宅販売戸数(12月)は年率481千戸(前月比+11.6%)、在庫期間は5.5ヶ月

12月の新築住宅販売戸数は年率481千戸(前月比+11.6%)と前月の同-6.7%から大幅反転増加、過去6ヶ月中4ヶ月で前月比増加となった。トレンドを表す6ヶ月移動平均は前月比+2.8%と上昇に転じた。一方販売在庫は219千戸(同+2.3%)と微増にとどまり、結果在庫期間は5.5ヶ月と前月の同6.0ヶ月から大幅に短期化した。引き続き住宅販売は堅調、供給は相対的に増加ペースが遅く、結果住宅市場はタイトな需給にあるといえる。もっとも12月の季節要因もあり、総じて今後は供給サイドも需要にやや遅れて住宅市場の拡大に寄与すると見る。

20150131図7

実質GDP成長率(10-12月期)は前期比年率+2.6%

10-12月期の実質GDP成長率(速報)は前期比年率+2.6%と前期の同+5.0%から大幅に減速した、成長率を押し下げたのは主に外需のマイナス拡大と政府支出減少であり、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要は同+3.9%と前期の同+4.1%と遜色ない強い伸びを維持した。米国の内需は引き続き強い拡大を続けているといえる。需要項目別内訳は個人消費同+4.3%、設備投資同+1.9%、住宅投資同+4.1%、政府支出同-2.2%、企業在庫寄与度同+0.82%、純輸出寄与度同-1.02%。個人消費は3四半期連続の伸び率上昇で同+4.3%の極めて強い伸びで成長を牽引した。設備投資は同+1.9%と前期の同+8.9%から大幅減速、特に生産設備などの機器投資が同-1.9%と3四半期ぶりのマイナス成長に転化した。住宅投資は同+4.1%とほぼ堅調な伸びを継続した。成長率を押し下げた要因は輸入の増加で、同+8.9%と前期の同-0.9%から転じて大幅増加した。内需の拡大に加えドル高と資源価格下落が輸入拡大に拍車をかけた可能性がある。一方輸出は同+2.8%と前期の同+4.5%から減速、ドル高や海外景気減速の反映と考えられる。結果純輸出が成長を-1%以上押し下げた。政府支出は同-2.2%と3四半期ぶりの減少、連邦政府支出、州・地方政府支出のいずれもが減少しており、前期の同+4.4%からの統計上の反動減と考えられる。結果2014年通年の実質GDP成長率は前年比+2.4%に着地、2012年の同+2.3%、2013年の同+2.2%に続き3年連続で2%台かつ潜在成長率を上回る成長を維持した。2015年は雇用拡大と賃金上昇を背景に引き続き個人消費が成長を牽引、設備投資は引き続き緩やかな拡大、住宅投資は堅調に拡大するとみて、10年ぶりに前年比+3%台の成長を引き続き見込む。

20150131図8

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<経済レポート> 孤高の超然主義:米大統領一般教書演説

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オバマ米大統領の一般教書演説は、共和党等への名指し批判は抑えたものの、経済政策の内容は従前同様のリベラルな内容であった。大統領・議会の対立は容易には解消しそうにない。米国経済が自立的拡大ペースを速めていることで政治対立の悪影響は相対的には小さいといえる。ただ、原油価格下落や海外経済要因が米国経済に悪影響を与えた場合は政治のグリッドロックのリスクが顕在化する可能性もある。

名指し批判は影をひそめるも政策は依然リベラル

オバマ米大統領は20日、米議会で2015年の一般教書演説を行った。これは同氏の大統領として7回目の一般教書演説である(1期目就任直後の上下院合同会議演説を含む)。オバマ大統領はリーマンショック直後の2009年に就任、1期目の4年間はほぼ金融危機対応とそれに伴う雇用対策、そして医療保険制度改革(オバマケア)が主な論点であった。2011年の中間選挙ではしかし、下院で共和党が民主党を逆転して過半数議席を獲得し、以後オバマ大統領はねじれ議会と相対することになる。2013年からの2期目には共和党議席は更に拡大した。

オバマ大統領の演説は当初就任時からリベラルな民主党の党派色が強く、共和党・富裕層・金融機関に対する名指し批判もしばしばであった。なかでも民主・共和両党の対立が最も先鋭化した例が、共和党が下院を制した2012年から翌13年にかけての所謂「財政の崖」問題である。2期目における最初の2013年一般教書演説は、主に財政の崖問題につき自動歳出削減の回避を訴えるとともに、予算案を可決しない共和党を名指し批判するなど、大統領演説も先鋭化した。しかしその後、2014年は経済の回復を反映して、また下院議会多数派の共和党への配慮からか、一般教書演説自体が穏当なものにとどまり、あまり見るべきもののない内容となった。

今年2015年の一般教書演説ではさらにその傾向が進んだ。2014年の中間選挙では下院に加え上院でも共和党が過半数議席を獲得し、議会は完全に共和党が制する状況になった。かかる中、20日の演説では共和党などへの名指し批判は影をひそめ、経済政策についても昨年に続き具体性に欠ける表現にとどめている。しかしながら、今年の一般教書演説に示された経済・財政政策は引き続きリベラル色の強く、かつ従前の政策と基本変わるところがない。共和党議会を前にしてもなお政策内容では妥協しないというスタンスだといえる。

経済政策は従来比特段の新味なし:中間層減税・最低賃金引上げ・税の抜け穴解消

オバマ大統領は演説の導入部分で「危機の影は去った、米国は強い国家である」と述べ、2015年を米国の成長拡大へのジャンプスタートjumpstartと位置づけた(因みに昨年の演説では2014年をブレークスルーbreakthroughと位置づけていた)。次に個別政策部分においては経済政策を最初におき、「ミドルクラスの経済Middle-Class Economics」をその標語とした。総じて政策の内容は、従来の雇用重視・ミドルクラス重視・富裕層及び大企業課税拡大路線から不変である([第1表])。経済政策としては、オバマ大統領が従来から提案を繰り返している、ミドルクラス(中間層)税優遇拡大と、連邦政府の定める最低賃金の引き上げが今年も登場した。ただ、中間層への税優遇について演説では児童税優遇年間3000ドルのみを具体的数値として挙げるにとどまった。

また連邦政府の定める最低賃金引上げについても従来は具体的な数字を挙げていたが今回はそれを示さなかった。連邦政府の定める最低賃金はオバマ政権下の2009年に現行の時間当たり7.25ドルに引き上げられて以来改正されていない。米国では連邦政府の定める最低賃金と各州の定める最低賃金の高い方が最低賃金として適用される。各州の最低賃金を連邦政府の定める7.25ドルより高く設定している州が現在29州およびコロンビア特別区、同額の州が14州、低く設定する州が2州ある。うち最も高い最低賃金を定めているのがコロンビア特別区の9.50ドル、次いでワシントン州の9.47ドルである。オバマ大統領は昨年連邦最低賃金を10.10ドルへの引上げを提案したものの、これはすべての州で最低賃金が上昇することを意味することからいまだ立法に至っていない。

またオバマ大統領は従来同様に、税制の簡素化と富裕層の税の抜け穴の解消を提言している。富裕層の税の抜け穴解消について大統領は、一般教書演説に先立ち17日に具体案を公表していた(後述)にも関わらず、演説では具体的な内容には触れなかった。結果この政策についても演説内容は抽象的なものにとどめている。他にオバマ大統領はコミュニティカレッジの無償化というこれだけは目新しいがしかし実現可能性の低い提言を行った。

[第1表]
20150125表1

税制改正案詳細:相続税改正・キャピタルゲイン税率引上げ・大手金融機関外形標準課税

オバマ大統領は、20日の一般教書演説に先立つ17日に「ミドルクラス家庭に確実に投資するより簡素で公平な税制A Simpler, Fairer Tax Code That Responsibly Invests Middle Class Families」と称する政策概要を公表している。ここには上記の中間層税優遇や富裕層の税の抜け穴ふさぎのより具体的な内容が示されている。さらには大手金融機関に対する外形標準課税も提言されている([第2表])。オバマ大統領の政策のリベラルさと共和党への対決姿勢は演説そのものよりもむしろこの政策概要に表れているといえるだろう。

ここで目玉とされる政策はまず、富裕層の相続財産課税ベースの”Step-Up”廃止である。現行税制では、相続した資産を直ちに売却した場合その売却価格が相続価格とみなされる(つまり相続人にキャピタルゲインが発生しなかったと見做される)。これは富裕層に有利な抜け穴としてこれを廃止しようとの提言である。次に、大統領はキャピタルゲインと配当への連邦最高税率を28%にまで引き上げることを提言している。現行の連邦キャピタルゲイン税制では、長期のキャピタルゲイン所得の最高税率を20%(所得200千ドル以上の世帯はさらに3.8%のメディケア寄与課税)としている。このキャピタルゲイン課税率は、同額の所得税率比低いことから富裕層やヘッジファンドなどに有利な税制とされてきたものである。更に同税制概要では、総資産500億ドル以上の銀行に対する外形標準課税をも提言している。中間層への税優遇については従来のオバマ大統領の政策同様に、共働き世帯への税還付、児童をもつ中間層への税優遇などが中心となっている。

これらの税制改革案は、これまでのオバマ大統領の政策を引き継いだもので、共和党の賛同を得られる可能性が極めて低いものばかりである。オバマ大統領の一般教書演説に対し、野党共和党は従来通りに直ちに反対の立場を表明した。共和党のベイナー下院議長は同日の声明で「大統領の提言は増税、大きな政府、そして何より中間層支援に失敗したこれまでの手法と同じである」と述べた。

[第2表]
20150125表2

共和党議会には受け入れられにくいオバマ政策:大統領・議会の対立は継続の見込み

共和党多数の議会に対して先鋭化した直接的批判を避けつつも、議会の反対を承知でリベラルな民主党政策を語るオバマ大統領のスタンスは、孤高の超然主義ともいうべきものである。演説で言及された政策の中共和党と共同歩調がとれる可能性があるのは、環太平洋パートナーシップ(TPP)に関する大統領の貿易促進顕現付与程度である(1月20日付WSJ)。富裕層増税やキャピタルゲイン増税はいずれも共和党のスタンスとは相いれない(もっとも2013年1月に成立したいわゆる「財政の崖回避法」では所得450千ドルを超える世帯の所得税率を35%から39.6%に引き上げる法案が共和党の一部の賛成で可決されたという例はある)。さらに大手金融機関への外形標準課税に至っては、オバマ大統領が2010年1月に提唱した「金融危機責任手数料」案の再来を思わせるものである。いずれも共和党議会での成立の可能性は極めて低いといえるだろう。

一方で共和党も、オバマ大統領の政策への明確な対案を示しているわけではない。上下院で多数を握った共和党は、今年からは民主党の法案ブロックのみならず、能動的な議会多数派としての立法をなすべきであろう。さもなくば米議会は引続き低生産な議会であり続ける可能性が高い(2012-13年の第112回米議会で成立した法案は283本、2013-14年の第113回米議会で成立した法案は296本と、それぞれ戦後の米議会の歴史でワースト1位、2位である―CNBC調べ)。なお、G.W.ブッシュ元大統領の副補佐官だったカール・ロウブ氏は、21日付WSJ紙への寄稿で「共和党はオバマ大統領の政策による空白を、税制簡素化・規制緩和・エネルギー国内生産拡大・歳出抑制・政府債務管理・通商拡大・給付金見直しを行い中間層に焦点を絞る頑健で成長志向のアジェンダで埋めるべきだ」と述べている。

米国経済は現在好調に拡大ペースを加速させており、経済を巡る緊急の課題が目の前にあるわけではない。米経済は自立的な持続的成長が可能な状態にまで回復しており、大統領対議会の対立構造が経済に与える悪影響は金融危機以降のこれまでに比べれば小さいといえる。一方、税制・財政改革が急がれる局面があるとすれば、原油価格下落によるエネルギー産業等への悪影響、また欧州や中国など海外の経済悪化が外的ショックとして米国経済に影響を及ぼす場合である。こうした場合には政治のグリッドロック状態のリスクが顕在化する可能性がある。

<経済指標コメント> 米12月住宅着工戸数は前月比+4.4%

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[米国]

住宅着工戸数(12月)は年率1089千戸(前月比+4.4%)、着工許可件数は1032千件(同-1.9%)

12月の住宅着工戸数は年率1089千戸(前月比+4.4%)と前月の同-4.5%から反転増加、4ヶ月連続で年率1000千戸台の高水準を維持している。6ヶ月移動平均も同1052千件と6ヶ月連続で上昇しており、住宅着工は依然増加基調を保っている。結果四半期ベースでは10-12月の着工戸数は前期比+4.4%と前期の同+4.5%並みの増加となった。10-12月GDP統計上の住宅投資は前期比年率+5%程度と3四半期連続の増加を見込んでいるが、12月の住宅着工戸数はこれに整合するものである。12月の住宅着工許可件数は年率1032千件(前月比-1.9%)と小幅減少したが、6ヶ月連続の1000千件台、6ヶ月移動平均も4ヶ月連続で上昇しており、基調は堅調である。

20150124図1

中古住宅販売戸数(12月)は年率5040千戸(前月比+2.4%)、在庫期間は4.4ヶ月

12月の中古住宅販売戸数は年率5040千戸(前月比+2.4%)と前月の同-6.3%減からやや持ち直した。地域別には北東部が同-2.9%、中西部同-3.5%、南部同+3.8%、西部同+9.8%。中古住宅販売はここ数ヶ月減速がみられるものの、低金利や景況感向上で消費者の需要は底堅いといえる。一方販売在庫は1850千戸(同-11.1%)と大幅減、結果在庫期間は4.4ヶ月と11か月ぶりに5ヶ月を割り込んだ。住宅市場の供給不足は徐々に解消してきたと見ていたが、冬の季節要因で一時的に売り物が減少したものと思われる。集計元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「在庫減少が消費者の選択幅を狭める可能性があり、在庫不足が需要の強さを打ち消して」いる可能性を指摘している。もっとも季節要因で今後供給が再開すれば再び中古住宅販売は堅調な増加に回帰すると個人的には見る。

20150124図2

<経済レポート> 3年ぶりの好成績:米ホリデー商戦結果

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米国の2014年ホリデー商戦は3年ぶりの好調な結果に終わった。ここ数年の傾向として商戦の早期化と売上日の分散化がみられる。昨年12月の小売売上高の予想外の減少など昨年末にかけて経済指標の軟化がみられるものの、一時要因または循環的要因と見たい。個人消費及び経済は持続的ペースで拡大を続けるとの見方を維持する。

2014年ホリデー商戦は前年比+4.2%の伸びに加速した

昨年の米国ホリデー商戦は好調に終了した。14日に公表された12月小売売上高統計から筆者が集計した2014年ホリデー商戦売上高(自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く小売売上高の11-12月合計、季節調整済)は前年比+4.2%と、2011年以来3年ぶりに前年の伸び率を上回り、かつ3年ぶりに+4%台の伸びに回帰した([第1図])。もっとも12月単月の小売売上は全体で前月比-0.9%、自動車・ガソリン・レストランを除くベースでも同-0.5%と予想外の不振であった(1月17日付<経済指標コメント>参照)。結果+4.2%の前年比伸び率は筆者の直近予想+4.8%を下回る結果となった。12月の小売売上減の原因は、ロシア・ギリシャ問題などによる景況感悪化や米西海岸港湾の業務停滞による物流停滞などが考えられるものの定かではない。

12月単月の小売売上が前月比で不振だったにも関わらず商戦売上全体の伸びが好調だったのは、商戦までの個人消費拡大により既に10月時点で商戦ベースの小売売上高が前年比+4.0%にまで伸びていたことが数字上の要因である。中期的な雇用拡大や株価上昇による消費者センチメントの向上をベースとした個人消費拡大を反映した結果といえる。また、前年2013年末に見られた「財政の崖」懸念などのネガティブ要因が2014年にはなかったこと、感謝祭日付シフトにより感謝祭翌日のブラックフライデーからクリスマスまでの商戦期間が前年より1日多かったことも要因として考えられる。さらに、ブラックフライデー売上高が前年比を下回るなど(全米小売業連盟の昨年11月30日プレスリリースによれば、2014年のブラックフライデー週末の売上は前年比-6.2%減の233.3百万ドル、国際ショッピングセンター評議会の11月27日プレスリリースによれば感謝祭とブラックフライデーの売上合計は前年比-0.5%減)当初は不振な兆しがあったにも関わらず全体売上が伸びたことは、売上が特定日に集中せず分散する傾向が顕著だったことを示唆している(後述)。

一方で、消費者センチメントの上昇は1月に入っても継続している。ミシガン大学消費者センチメント指数は1月速報で98.2と10年ぶりの高水準に上昇した([第2図])。12月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比+252千人の堅調な伸びを示している。株価も1月に入りやや値動きが大きくなっているものの、総じて高水準を保っている。これらからは、12月の小売売上不振は一時的なものと見たい。12月分の上方改訂の可能性もあり、1月分以降の指標を待つこととしたいが、総じて個人消費が堅調な拡大を続けるとのこれまでの見方は維持したい。

[第1図]
20150118図1

[第2図]
20150118図2

業界団体も商戦結果に高評価

調査会社や各小売業界団体の評価も極めて高い。米調査会社ShopperTrak社は1月8日付レポート”Annual Holiday Review 2014”で、2014年のホリデー商戦売上結果を同時点で前年比+4.6%と推計し同社予想を上回る結果となったことを報告している(同社の事前予想は同+3.8%)。同レポートは、消費者の買物の早期化が進み、買物の比重が12月から11月にシフトする傾向が過去10年年間顕著であることを指摘している。ここからは12月の売上が11月に比べて減速することはトレンドに沿った動きともいえる。また同レポートは、ブラックフライデーなど特定日の売上が全体の売上に占める重要性が低下していることも合わせて報告している。同社は「ブラックフライデーやスーパーサタデーは依然として商戦期間の売上高上位2日であるが、消費者はこの2日間の値下げ価格よりも、商戦期間を通じた販促活動により関心を示しているように見える」としている。

全米小売業協会(NRF)は14日のプレスリリースで、2014年のホリデー商戦売上集計結果を6161億ドル(前年比+4%)と公表した(NRFの事前予想は同+4.1%)。NRF「ホリデー小売売上の結果は小売業界と米国経済にとり歓迎すべきニュース」と述べている。12月単月の不振についてNRFは「12月は季節調整の難しい月であることがこの変動要因の一部であろう」としている。

国際ショッピングセンター評議会(ICSC)は15日のプレスリリースで、2014年ホリデー商戦売上結果を4871億ドル(前年比+3.6%)と公表し、2011年以来の高い売上の伸びになったことを報告した。なお、ICSCは、1月半ば時点の調査で、42%の消費者がガソリン価格低下に伴い消費に回すお金が増えたと感じていることも報告している。業界団体、筆者個人ともにホリデー商戦結果は予想をやや下回ったものの2011年以来の好結果であったこと、また12月の一時的不振は消費トレンド上昇の見方に影響しないことを示唆している([第1表])、なおホリデー商戦売上高は調査会社・団体毎に定義や集計方法が異なるため数字は一致しない)。

[第1表]
20150118表1

一部経済指標の軟化は一時要因と見たい

一方で、12月分にかけて米国経済指標の一部に鈍化が見られるのも事実である。小売売上高のほかに大きな下方サプライズだった12月指標は、まず雇用統計における時間当たり賃金の低下である。12月の時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は20.68ドル(前月比-0.06ドル)と極めてまれな前月比大幅減少だった。金融危機の時期においてもかかる賃金低下は見られなかった。前年比では+1.6%と前月までの同2%台の伸びから大幅に伸び率が低下した。基本的にはこの単月の賃金係数は一時要因によるはずれ値と見たい。また仮に単月の賃金低下が起きていたとしても、インフレ率が12月には更に低下していることから、実質賃金の伸びは昨年半ばに比べてむしろ加速している計算になる([第3図])。

ISM指数は製造業、非製造業ともに大き目の低下を示した。調査対象の回答結果によれば、西海岸港湾の業務停滞が主因なようで、これも一時要因といえる。一方、同指数の3ヶ月移動平均をとってみると、製造業・非製造業いずれも昨年半ばをピークに緩やかな低下サイクルに入っているようにも見える([第4図])。しかしこれもあくまで循環的変動であり、トレンドの変化というものではなさそうだ。特に非製造業指数は昨年8月に2008年の現状指数計測開始以来の最高値を付けている。年後半にかけての指数低下はその一時的反動と見るのが自然であろう。

中古住宅販売戸数も昨年11月にかけて上昇モメンタムの剥落がみられる([第5図])。ただしこれも、10月の一時的な株価下落や、中古住宅販売取引が全体に減少する冬場の季節調整の困難さからくる一時的変動と見る。住宅在庫の供給や消費者の住宅購入活動が春に再開すれば、低金利を背景に引き続き住宅市場は堅調な拡大に回帰すると見る。

[第3図]
20150118図3

[第4図]
20150118図4

[第5図]
20150118図5

10-12月期GDPは3%成長を予想:外部リスク要因の米国への波及は限定的

企業設備投資の先行指標となる資本財受注及び出荷も10月、11月までは減速感がある。10-12月期のGDP統計上の機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は11月までで前期比ほぼ横ばいの伸びに留まっている([第6図])。このため、2四半期連続で2桁の伸びを示した機器投資は10-12月期には大幅に減速することとなると見込んでいる。設備稼働率が上昇する一方で、企業ネットキャッシュフローが伸び悩んでいることから、企業設備投資は今後も緩やかな伸びに留まることは既に筆者予想には織り込み済である。

以上より、12月の小売売上減少を含め昨年末にかけての経済指標の軟化は一時要因によるものまたは想定内の動きと考えられることから、現在のところ筆者個人の2015年経済予想(1月7日付当レポート参照)に大きな変更は不要である。また10-12月期の実質個人消費は12月の下振れを見込んでも前期比年率+4%台の成長となる見通しだ。実質GDP全体では設備投資の減速や在庫調整による成長押し下げ要因を勘案して、10-12月期の成長率を同+3.0%レベルと見込む。これは前期の同+5%成長からは大幅な減速となるが、依然潜在成長を超えるペースの成長維持となる。また2015年通年については引き続き10年ぶりの3%成長への回帰を予想する。

外部のリスク要因として、ロシアやギリシャ問題による世界的景況感の悪化や、原油価格下落に伴うデフレ懸念が考えられる。世界的景況感悪化の場合は株価下落や消費者センチメントの悪化を通じた実体経済への悪影響が考えられる。またデフレ懸念は消費者物価指数の前年比の伸びが12月に1%を割り込んだことがその発端となる可能性なしとしない。しかし米国に関する限り消費者センチメントはロシア・ギリシャ問題にかかわらず上昇を続けている。また総合インフレ率の低下に対してコアインフレ率は1%台半ばの伸びを維持しており、エネルギー以外の物価への波及は今のところ顕著ではない。

[第6図]
20150118図6

<経済指標コメント> 米12月消費者物価指数は前年比+0.8%

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[日本]

景気ウォッチャー調査(12月):現状判断DIは45.2(前月比+3.7ポイント)、先行き判断DIは46.7(同+2.7ポイント)

12月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは45.2(前月比+3.7ポイント)と5ヶ月ぶりの上昇。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは46.7(同+2.7ポイント)と7ヶ月ぶりの上昇。いすれも、消費税率引上げ後の反動減が底入れしつつあることを示唆している。現状・先行きDIいずれも、家計動向関連・企業動向関連・雇用関連DIが前月比で上昇し、押しなべて景況感が好転している。ただし、景気判断理由を見ると、消費税率引上げの悪影響と再引き上げ延期の好影響、また円安の好影響と悪影響がそれぞれ報告されており、街角景気実感はまちまちな状態といえる。家計消費や企業設備などの実体経済統計では既に景気が10-12月期には拡大に転じていることを示唆しているにも関わらず、景況感は一方向には回復しておらず、景気回復がまだ街角には実感されていない可能性を示唆している。

20150117図1

機械受注(船舶・電力を除く民需、11月)は前月比+1.3%(前年比-14.6%)

11月機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+1.3%と、前月の同-6.4%の大幅減少からわずかな持ち直しにとどまった。内訳は製造業が同-7.0%、非製造業が同+0.5%と、製造業の2ヶ月連続減少が全体の伸びを抑制している。四半期ベースでは、10-12月期の受注は7-9月期のプラス成長から再びマイナスの伸びに転化するペースである。鉱工業指数統計における資本財出荷ペースからGDP統計上の企業設備投資は10-12月期以降プラス成長への回帰を個人的に予想しているが、機械受注の動向からはそのペースは予想比やや遅くなる可能性が出てきている。

20150117図2

[米国]

小売売上高(12月)は前月比-0.9%、除く自動車関連同-0.1%

12月の小売売上高は前月比-0.9%と大幅減少、寒波の影響を受けた昨年1月以来の大幅減となった。12月の新車販売の減少により自動車及び同部品ディーラーが同-0.7%、ガソリン価格の下落によりガソリンスタンドが同-6.5%の減少になったのが主因。しかし、自動車・ガソリン・レストランを除くベースでも同-0.5%と昨年1月以来の売上減となっている。家電店(同-1.6%)、建設資材店(同-1.9%)、衣服店(同-0.3%)、百貨店(同-0.2%)など、ホリデー商戦の中心となる業種で売上が減少した。12月の小売売上減の原因は、ロシア・ギリシャ問題などによる景況感悪化や米西海岸港湾の業務停滞による物流停滞などが考えられるものの定かではない。いずれにしても12月の売上減少は一時要因と見て、米個人消費の堅調な拡大見通しを変更する必要はないと考える。なおこの結果、2014年のホリデー商戦売上高(自動車・ガソリン・レストランを除く小売売上高の11-12月合計)は前年比+4.2%と、筆者直近予想(2014年12月14日付<経済レポート>参照)を下回った。しかしそれでも2011年以来の前年比売上伸び率加速かつ4%台の伸び回復である。昨年のホリデー商戦は好調に終わったと評価できる。

20150117図3

企業在庫(11月)は前月比+0.2%、企業売上高は同-0.2%、在庫売上高比率は1.31倍

11月の企業在庫は前月比+0.2%と引き続き弱めの伸びに留まっている。しかし、3ヶ月前対比の増加幅の推移を見るとその減速ペースには底入れ感が見られる。GDP統計上今年前半は在庫調整が成長にマイナス寄与するものの年後半より在庫積み増しが再開するとの筆者個人の見方に整合する動きである。

20150117図4

消費者物価指数(12月)は前月比-0.4%(前年比+0.8%)、コア指数は同横ばい(同+1.6%)

12月の消費者物価指数は前月比-0.4%と2ヶ月連続の前月比低下、前年比では+0.8%と2009年10月以来の1%割れとなった。主因は引き続きエネルギー価格(前年比-10.6%)の低下、うちガソリンは前年比-21.0%の大幅価格下落となっている。原油先物価格は1月に入っても更に50ドル割れにまで下落しており、1月にはエネルギー価格の前年比伸び率が更に-10%ほど低下する見通しだ。これは総合インフレ率を更に-0.8%ほど押し下げる計算になる。一方原油先物価格が下げ止まり今後50ドルレベルで推移すれば総合インフレ率のマイナス転化は回避できる計算になる。米エネルギー情報局(EIA)は1月13日付の短期エネルギー見通し(STEO)で、今後のガソリン価格を1ガロン=2ドル台前半から半ばでほぼ横ばい推移すると予想している。また先月時点の予想に比べ世界の石油等燃料の今年の需給を好転方向に修正している。食品及びエネルギーを除くコア消費者物価指数は前月比横ばい、前年比+1.6%と相対的に低下幅は限定的。米国の需給ギャップ縮小からはコア消費者物価の前年比伸び率は+1%台後半で今後も推移すると見る。例えば運輸サービス価格はエネルギー価格上昇に敏感に反応したが、エネルギー価格下落への追随はまだ顕著ではなく、12月時点でも前年比+1.7%の伸びを維持している。コアインフレ率が相対的に安定していること、成長加速で需給ギャップが縮小していることから、FRBが今年6月に利上げを開始するとの個人予想は維持する。コア指数は総合指数に遅行して動く傾向があることは下方リスク要因である。

20150117図5

鉱工業生産指数(12月)は前月比-0.1%、設備稼働率は79.7%

12月の鉱工業生産指数は前月比-0.1%と前月の同+1.3%の大幅上昇からわずかに低下した。内訳は製造業同+0.3%、鉱業同+2.2%、電力・ガスなどの公益事業同-7.3%と、振れの大きい公益事業の指数低下が全体指数の低下である一方、エネルギー価格下落の影響を受ける鉱業が3ヶ月ぶりに上昇に転じている。自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率11.58百万台(前月比-0.6%)とほぼ前月並みの水準を維持している。総じて鉱工業生産の拡大ペースはやや鈍化しつつも高水準にある。設備稼働率は79.7%と前月の80.0%から低下、1972-2013年平均の80.1%を超えることはできなかった。しかし製造業設備稼働率は78.4%と前月比横ばい、同期間平均の78.7%にほぼ近いところにある。総じて経済ののりしろ(slack)は相当程度に縮小しているといえる。

20150117図6

<経済レポート> 消費と交易条件にメリット:原油価格と米経済

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原油価格の急落の要因はエネルギー需給の悪化と米ドル為替レート上昇と考えられる。現在の需給環境とドル上昇が継続すれば原油価格は更に下落すると試算される。一方原油価格下落は、個人消費拡大や交易条件の好転を通じネットでは米国経済にプラスの効果をもたらす。期待インフレ率の低下はリスク要因であるが、成長加速による需給ギャップ縮小がこれを相殺し、コアインフレ率は安定的に推移すると見る。

需給要因では50ドル割れの原油急落は説明できない

原油価格(WTI先物)は1月初めに1バレル=50ドルを割り込むまでに下落し、リーマンショック後の2009年以来の低水準となった。ガソリン価格も同様に、昨年12月には1ガロン=3ドルを割り込んで2010年以来の低価格となっている。原油価格やガソリンなどエネルギー価格下落はインフレ率低下を通じて個人消費の拡大ペースを加速させるほか、原材料価格の低下により輸入企業にはプラスの貢献となるだろう。一方で、エネルギー産業にはマイナスの影響を与えるほか、インフレ率がFRBの目標である2%から大幅下方乖離してデフレ圧力が経済に悪影響を与えるリスクもある。イエレンFRB議長は昨年12月17日FOMC定例会合後の記者会見で「米国経済見通しの観点からは原油価格の下落はネットでプラス」と述べており、筆者も同様に考えている。当レポートでは原油価格下落の背景とこれが米国経済に与える影響を分析する。

まず、原油価格を決定要因で回帰分析することにより原油下落の背景と今後の動向を試算する。今回の原油価格急落は主に供給側の要因とされている。昨年11月27日に、石油輸出国機構(OPEC)が原油価格低下にもかかわらず減産を行わないことを決定したことがその後の急落の原因とされる。WTI原油先物価格は11月下旬まで1バレル=70ドル台で推移していたが、上記のOPEC決定後に急落し、約1ヶ月で-20ドルを超える下落を示した。

原油市場の需給を表す指標として、米エネルギー情報局(EIA)が集計する「世界のネット石油在庫増減」(EIA「短期エネルギー見通しShort Term Energy Outlook」2014年12月)と原油先物価格とを比較してみよう([第1図])。これによれば、原油価格と石油需給の間には相応の連関がある。しかし、現在の原油先物価格50ドル割れは需給要因に比較するとかなり下げすぎの感がある。IEAの推計によれば現在石油需給は供給超過(ネットで在庫が増加)の状況にあるが、その水準はリーマンショック後に比較するとかなり小さい。またリーマンショック後は金融危機により世界経済が大幅な後退局面にあった。これに比べれば現在の石油需給や経済状況は遥かに好環境にある。にも拘わらず金融危機並みの原油価格急落が起きていることには別の要因があると考えられる。

[第1図]
20150112図1

ドル高要因が続けば原油価格は40ドルにまで下落も

原油価格の下落を招いているもう一つの要因がドル高である。他国に比べて大幅に加速している米経済成長率や、FRBの量的緩和終了及び今年の利上げ開始観測から、米ドル為替レートは、1ドル=120円レベル、1ユーロ=1.2ドル割れと急伸している。FRBの推計する貿易加重平均対広域通貨米ドルレートインデックス(名目)は1月2日現在で111.8ポイントと、2010年の欧州財政危機によるユーロ安局面を上回り、2005年のFRB利上げ開始時期における円安・ユーロ安・ドル高局面に迫る水準となっている。[第2図]は米ドル為替レートと原油先物価格の関係を見たものである。これによれば、現在のドル高水準からは金融危機後並みの原油安も説明できそうだ。

世界の石油在庫ネット増減と米ドル為替レートとを説明変数として原油先物価格を回帰分析した結果が[第1表]である。いずれの変数も統計的に有意で原油先物価格の変動を約75%説明できるとの結果になった。これによれば、たとえば米ドル為替レートの1%の上昇は原油先物価格を約3.5%押し上げる計算になる。

更に、上記で得られた回帰式に基づき、2015年の原油先物価格見通しを試算したものが[第3図]である。前提として、石油在庫増減はEIAの12月時点の予測を用いた。EIAは、2015年も石油は供給超過が継続し、世界の石油在庫は2015年第3四半期にかけ最大1日当たり0.84百万バレル増加ののち、第4四半期に需要超過に転ずると予測している。米ドル為替レートは筆者の個人予想に沿って2015年末にかけ現状から約3%ドルが増価すると想定した。結果、原油先物価格は2015年中もややペースを落としながらも下落傾向が続き、2015年末には1バレル=40ドルレベルにまで下落するとの試算になった。これらからは、原油価格は今年いっぱいインフレ抑制要因となり続ける可能性が高いといえる。

[第2図]
20150112図2

[第1表]
20150112表1



[第3図]
20150112図3

インフレ率1%の低下は個人消費を0.3%押し上げる

次に、原油価格下落の個人消費への影響を考える。消費者物価指数(総合指数)の伸び率は昨年11月現在で前年比+1.3%にまで低下している。筆者試算によれば、実質個人消費の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)に対する弾性値は約-0.3である(2014年12月14日付当レポート参照)。つまり消費者インフレ率の-1%の低下は実質個人消費を約+0.3%押し上げることになる。筆者個人の2015年米経済成長率予想では、PCEインフレ率を保守的に2%での推移と前提している。従ってインフレ率がこれを1%下回る前年比+1%レベルで推移するならば、実質個人消費はこの予想を約+0.3%上回り、実質GDP成長率を約+0.2%上ブレさせる要因となる([第4図])。

今後原油先物価格が上記の試算の通り今年末に40ドルレベルまで下落すると、原油価格の伸び率は今後前年比約-50%となる計算になる。原油価格下落率のうち消費者エネルギー価格へ転嫁される比率を約半分の-25%とし、消費者物価指数におけるエネルギーのシェア(100分の8.886)を勘案すると、原油価格下落は消費者インフレ率を約-2.2%押し下げる計算になる。計算上はエネルギーを除く消費者物価指数の上昇を勘案しても、2009年同様に総合消費者物価指数の前年比の伸び率は一時的にマイナスになる可能性がある。

現実には、原油市場は今後需給調整などの実施によりIEAの予測よりも需給が好転する可能性が高いと見る。需給要因が好転すれば米ドル為替レートが上昇しても原油価格は50ドルレベルでいったん底入れする可能性が高いのではないか。筆者個人の予想としては、消費者インフレ率は大きく変動するものの、PCEデフレーターベースで前年比+1%~1%台半ばで推移するとの見方を維持しておきたい。上記の2%インフレ率を前提とした実質個人消費予想との差分は上方リスク要因とする。もっともインフレ率が大幅に低下すると賃金上昇率が伸び悩むことでインフレ率低下を相殺する可能性もあることには留意しておく必要がある。

[第4図]
20150112図4

交易条件の好転を通じ総合的には企業部門にも有利と見る

次に企業部門への影響につき考察する。原油価格下落は原油のネット輸入国である米国にとり原油価格下落はネットでプラス影響となるはずである。まず輸入物価と輸出物価の推移を見てみよう。米国の輸入物価のうち値動きの大きい品目は石油製品、輸出物価のうち値動きの大きい品目は農産物である。経験則ではこれらを合わせた指数の変動は輸入物価指数の方が輸出物価指数よりも大きく、原油価格下落局面で輸入物価指数が低下するペースは、輸出物価指数低下ペースよりも大きい([第5図])。つまり、米国は原油価格下落局面においては輸出・輸入価格の差(交易条件)のメリットを享受できる立場にあるわけだ。もっとも最近は、輸出入物価指数は世界的なデフレ傾向からいずれも前年比ゼロに近い水準で推移しており、ここからは交易条件の好転は顕著ではない。

しかし、企業景況感調査からは、原油価格下落もしくはドル高による交易条件の好転の兆しがみられる。フィラデルフィア連銀製造業景況感調査における、支払価格DIと受取価格DIの推移を見ると、支払価格DIが昨年夏以降急激に低下しているのに対し、受取価格DIはインフレ率低下にもかかわらずむしろ上昇基調にある([第5図])。支払価格DIから受取価格DIを差し引いて算出した交易条件は、過去半年間上昇傾向にあり、2009年の原油安・ドル高局面以来のプラス水準にまで後一歩まで迫っている。以上より、米企業全体ではドル高を伴う原油価格下落は交易条件の好転という形でメリットとなるといえそうだ。

一方、貿易収支においては原油安・ドル高は貿易赤字拡大要因と言わざるを得ない。ドル高による輸出への悪影響と、物価安による輸入の増加は、米国内需の拡大加速と相まって貿易収支赤字を拡大させる要因である。現在のところまだこの傾向は顕著ではないものの、輸出の鈍化と輸入の回復は統計にもその兆しがみられる([第7図])。

[第5図]
20150112図5

[第6図]
20150112図6

[第7図]
20150112図7

インフレ期待低下は需給ギャップ縮小で相殺される

最後に、インフレ期待を通じたインフレ率への影響を見る。原油価格下落を契機に市場の期待インフレ率は低下ペースを速めている。10年物米国債利回りと10年物インフレ連動米国債利回りの差であるTIPSスプレッドは昨年12月現在で約+1.7%と、3ヶ月前の同9月の+2.1%から約-0.4%も低下した。ミシガン大学消費者センチメント調査における12ヶ月後の期待インフレ率は昨年12月調査で+2.8%と、同9月比-0.2%低下している。

しかし、現在のところ期待インフレ率の低下を通じたインフレ率実績への影響は限定的と見ておきたい。ミシガン大学調査の期待インフレ率と需給ギャップを説明変数とする回帰式によれば、コアPCEデフレータの前年比の伸びは現状でも約+1.7%が適正であるとの結果になっている([第8図])。期待インフレ率が低下する一方で、成長率の加速によりマイナス需給ギャップが急速に縮小していることで、適正なインフレ率はほぼ従前と同じ水準を維持している。原油価格変動により総合インフレ率は低下または低位にとどまる可能性が高いものの、食品及びエネルギーを除くコアインフレ率は需給ギャップの縮小が底支えする形で今年も1%台後半で推移するとの見方を維持する。

なお、筆者はインフレ率推計の際の期待インフレ率にミシガン大学調査におけるいわゆる「サーベイ・ベース」の数値を使用している。米国債のTIPSスプレッドに表れる「市場ベース」のインフレ期待は、FOMC声明文も指摘する通りサーベイ・ベースのインフレ期待よりも低下ペースが大きいことには留意しておくべきであろう。またFOMCでは、期待インフレ率低下の理由につき様々な議論がなされているものの(昨年10月、及び12月FOMC定例会合議事要旨)意見にはばらつきがあり、今後も継続審議とされている。こうした市場ベースの期待インフレ率急低下は、インフレ実績安定との見方に対するリスク要因といえる。

[第8図]
20150112図8

訂正) 1月18日に[第1表]ほか関連する記述を訂正しました。誤)(IEA調査による)「世界の石油在庫増減」→正)「OECD加盟国の石油在庫増減」

<経済指標コメント> 米12月非農業部門雇用者数は前月比+252千人

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[米国]

新車販売台数(12月)は年率16.8千台

12月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率16.8千台(前月比-0.3%)と微減した。しかしながら前年比では+8.8%と大幅増加ペースを維持、また10-12月平均販売台数は同16.7千台(前期比+0.1%)と4四半期連続で前期を上回った。低金利に加えてガソリン価格の低下が好調な自動車販売を支えている。

20150110図1

ISM製造業指数(12月)は55.5%(前月比-3.2%ポイント)、非製造業指数は56.2%(同-5.1%ポイント)

ISM製造業指数は55.5%(前月比-3.2%ポイント)と大き目の低下、総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注57.3%(同-8.7)、生産58.8(同-5.6)、雇用56.8(同+1.9)、入荷遅延59.3(同+2.5)、在庫45.5(同-6.0)。調査参加企業の回答には「ホリデー商戦期間の売上は昨年より大きく改善した(食品)」一方で「西海岸港湾の停滞」が販売・購買に影響を与えたとの回答が複数みられる。西海岸港湾の労使交渉に伴う搬送業務停滞が一時的に企業景況感を押し下げたに過ぎないようだ。非製造業指数も56.2%(同-3.1%ポイント)と低下。総合DIを構成する4つのDIの内訳は、事業活動57.2(同-7.2)、新規受注58.9(同-2.5)、雇用56.0(同-0.7)、入荷遅延52.5(同-2.0)。ここでも西海岸労使交渉の影響が景況感を押し下げている。一方、原油価格低下は製造業・非製造業ともにポジティブ要因となっていることが回答内容からうかがわれる。港湾の一時要因が解消すれば再び景況感は回復すると見る。

20150110図2

雇用統計(12月):非農業部門雇用者数は前月比+252千人、失業率は5.6%

12月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+252千人の強い増加、約3年ぶりの大幅増加だった前月分も同+353千人に更に上方改訂された。12月の増加ペースは前年比+2.1%で2006年4月以来の増加ペースとなった。内訳は民間部門同+240千人、政府部門同+12千人。民間部門では建設業同+48千人、自動車製造業同+1.8千人、小売業同+7.7千人、専門ビジネスサービス同+52千人、教育・医療サービス同+48千人とどの業種も押しなべて雇用を拡大させている。一方、時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は20.68ドルと前月比-0.06ドル低下する異例の結果、前年比で+1.6%と、前月までの2%台から伸び率が急低下した。一方で週平均労働時間は33.9時間と2007年以来の水準に増加、失業率低下とも合わせて労働市場はタイト化傾向にある。賃金の低下は一時要因によると見られ、今後賃金上昇ペースは再び加速すると見たい。家計調査による失業率は5.6%(前月比-0.2%ポイント)と2008年6月以来の低水準に低下した。内訳は就業者数が増加しているものの労働力人口が減少しており、結果労働参加率は62.7%(同-0.2%)と低下傾向を継続している。しかし、27週以上の長期失業者、経済的理由によるパートタイマーはいずれも減少し、失業率に表れない労働市場条件の改善継続を示唆している。総じて労働市場は堅調な拡大、労働市場の余剰は縮小を続けている。今後も雇用は前年比+2%前後の増加を継続すると見る。

20150110図3

<経済レポート> 巡航速度に回帰へ:日本経済定点観測

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2015年の日本経済は、消費税率引上げ後の反動減が順次解消し、さらに財政出動の効果もありトレンド成長率である1%を上回る成長を実現できると個人的に予想する。その後は持続的成長が十分に可能な環境に回帰できることになる。しかしリスクは下方と言わざるを得ない。短期的には海外の政治経済要因、中期的には景気サイクルがそろそろピーク時期に来ている可能性があることである。

2015年には1%強の成長を見込む

日本の実質GDPは2014年7-9月期、10-12月期の2四半期連続でマイナス成長を記録し、テクニカルなリセッションとなった。しかし10-12月期は、その反動もあり前期比年率+3%台の強めの成長になると見る。ただ2015年には反動要因は徐々に剥落して成長率は徐々に減速するだろう。しかしながら、財政出動がこれを底支えする形で経済は持続的なペースの拡大を維持すると考える([第1図])。結果、2014年暦年の成長率は前年比+0.2%に留まるものの、2015年通年は同+1.4%の成長に回復すると見る([第2図])。

1.4%の成長率は最近の日本の成長トレンドを超えるペースである。オークンの法則を用いて日本の潜在成長率を試算してみると、40四半期の長期推計では潜在成長率は約+0.4%と、内閣府の推計である+0.6%にほぼ近い低い水準となっている。一方、20四半期の中期推計による潜在成長率は+1.0%とやや高めの水準になっている([第3図])。ちなみに、HPフィルターによるトレンド推計では現在の成長トレンドは約+0.9%と、オークンの法則による20四半期推計とほぼ同じ推計値となる(2014年11月23日付当レポート参照)。

のちに述べるように、+1.4%の成長のうち約+0.2%は財政出動の効果によるものであり、これを除いた+1.2%成長は、中期的トレンドをわずかに上回る成長ベースということになる。いずれにせよ、2015年に+1.4%の成長ができれば、内閣府ベースのマイナスの需給ギャップは1年間で確実に縮小し、筆者試算では2015年末には-0.5%と、消費税率引上げ前の駆け込み需要のあった昨年1-3月期とほぼ同じところまで縮小する計算になる。

[第1図]
20150107図1
[第2図]
20150107図2
[第3図]
20150107図3

企業部門が先行、家計消費と住宅がこれに続く

上記の個人予想の背景となる需要項目毎の動きを見てみよう。まず家計消費出は、7-9月期にわずかながら前期比増加に転じた。内閣府消費総合指数の11月までの結果を見ると10-12月期も引き続きプラス成長が維持できる見込みである([第4図])。駆け込み需要反動減が年内に解消することはほぼ確実で、個人消費は底入れ後再び拡大に向かうと考えられる。現金給与の増加ペースが加速していることや、原油価格の下落で物価上昇率が低下していることも家計消費の追い風になる。ただし、消費税率の2%引上げが実質家計消費に影響を与えていることは認めざるを得ない。総務省家計調査による実質家計消費(二人以上の世帯)は11月時点で前年比-2.5%と、丁度消費税率引上げ幅分減少していることになる。従って、家計消費の拡大は経済の拡大を底支えするものの、その水準が駆け込み需要前に戻るには2015年末までかかると見ておきたい。

企業設備投資は今後強めの拡大が期待できる。設備投資は昨年7-9月期まで予想外に2四半期連続のマイナス成長となった。しかし、先行指標となる資本財出荷はすでに7-9月期に前期比でプラス成長に回復している。11月までの資本財出荷は前期を更に上回るペースで増加している([第5図])。機械受注は消費税率引上げ後にいち早く前年比プラスに回復した指標であり、総じて企業部門は家計消費に先んじて経済回復の牽引役となっている。

一方企業在庫は当面成長にマイナス寄与を続けそうだ。在庫循環図によれば現在企業在庫は「意図せざる在庫増」から「在庫調整」局面に入ろうとしている([第6図])。今後数四半期は企業在庫調整が成長を押し下げる要因となりそうだ。企業在庫は消費税率引上げ直後の4-6月期に大幅に積み上がり、その反動で7-9月期には在庫調整がマイナス成長率の大きな要因となった。企業在庫がマイナス成長の要因であることを一時要因と見るむきもあるようだが、中期的在庫循環からはあながち一時要因とは言えないようだ。

[第4図]
20150107図4
[第5図]
20150107図5
[第6図]
20150107図6

緊急経済対策の効果は約0.2%にとどまりそう

住宅投資は回復が最も遅い需要項目であった。しかしこれも設備投資と家計消費に遅れて底入れの兆しがみられる。昨年10-12月期の住宅着工件数は11月期までで4四半期ぶりに前期を上回るペースで、GDP統計上も10-12月期には3四半期ぶりのプラス転化になる計算である([第7図])。住宅の統計計上のラグを見込めば、2014年10-12月期はゼロ成長、今年の1-3月期にはプラス転化を見込む。ただし、現状でも住宅着工件数は前年比大幅マイナスの位置にあり、2015年中には消費税率引き上げ前の水準には回帰できないと見る。

純輸出は2015年の成長にほぼゼロの寄与を見込む。輸出入はいずれも国内・海外それぞれの要因でばらつきの大きい動きが続いている。消費税率引上げ前の駆け込み需要で一時急増した輸入は反動減で伸びが急減速している。海外景気の減速で輸出も一進一退の動きが続いている。今後1年間は内需の安定で輸入がほぼ巡航速度に回帰、一方輸出は海外経済の減速でトレンドをやや下回る伸びに留まると見たい。

公的需要は成長率をトレンド以上に押し上げる底支え要因になるだろう。12月27日に閣議決定された「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」は総額3.5兆円の国費支出を謳っている。これによれば国費による本対策の実質GDP押し上げ効果は概ね0.7%程度と見込まれている。しかし、この国費の規模は2013年初に決定された「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の10.3兆円の約3分の1の規模である。2013年度には、GDPの約2%に相当するこの経済対策にもかかわらず公的需要の実質GDP成長率への寄与度は+0.8%にとどまった。今回の3.5兆円はGDPの約0.7%に相当する規模であるが、その効果は首相官邸試算よりも低めに見積もる必要があるだろう。ここでは、3.5兆円のうち実際に成長に寄与する部分はその約6割とみて、2015年の成長への寄与度を約+0.2%と見積もることにする。

[第7図]
20150107図7

リスク要因は短期的に原油・欧州、中期的には景気サイクル

物価については、2%の物価目標達成は引き続き困難と考える。原油価格下落による総合インフレ率の低下はもとより、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除くいわゆるコアコア指数の伸び率も11月時点で前年比+0.1%とほぼゼロに近いところにまで低下している([第8図])。日本の場合フィリップス曲線が米国に比べて下方にあり、2%のインフレ率に対応する失業率が約1.3%と極めて低い水準にある([第9図])。需給ギャップに換算すると、マイナスの需給ギャップが解消してなお需要超過が5%を超える水準にならねば2%の物価目標は達成できない計算になる。これはかなり非現実的な状況と言わざるを得ない。フィリプス曲線を上方シフトさせるためには労働市場の流動性を高め、労働需給の動きに応じて賃金上昇を促すことが最も理にかなった方法である。現金給与総額は企業のベースアップ復活により2014年に大幅に増加したが、人為的な賃金上昇にはおのずと限界があると見ざるを得ない。今後物価上昇が加速するとすれば、失業率は3%を割り込んだ時点でその可能性がある。フラット化したフィリップス曲線の下では、失業率が自然失業率を下回ったところからインフレ率が急激に高まる可能性があるからである。

以上より、2015年の日本経済は、消費税率引上げによる反動減が企業部門を牽引役として家計消費、住宅投資の順に解消し、短期的な成長トレンドである1%をやや上回る成長に回帰すると見る。上記の通り財政出動の効果が約+0.2%とすれば、ベースラインの成長はほぼトレンド成長率に沿うかこれをやや上回るペースということになる。こうして2015年末にマイナスの需給ギャップがほぼ解消すれば翌年からは本来の持続的成長を継続することは十分に可能である。

この予想に対するリスクはやや下方と見ざるを得ない。一つには短期的に、原油価格下落、ロシア問題、ギリシャ問題、欧州デフレ圧力など主に海外の外的ショックのリスクの示現の兆しが年初からみられることである。もう一つは中期的に、景気サイクルを10年と見た場合2009年の金融危機からかぞえて6年目の2015年はサイクルのピークである可能性があることである。米国について筆者は2015年の成長率を3%超と個人的に予想するとともに、これが直近の2004年のピークから数えて11年目のピークである可能性も認識している(2014年12月31日付当レポート参照)。

なお、筆者個人の2015年の経済・金融予想を[第1表]にまとめる。

[第8図]
20150107図8
[第9図]
20150107図9
[第1表]
20150107表1