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<経済レポート> ハト派の巻き返し:1月FOMC議事要旨

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1月FOMC会合の議事要旨は、多くの参加者がゼロ金利の長期化に傾いているとの記述があるなど予想外にハト派的な内容だった。また原油価格下落によるインフレ率低下も利上げ後倒しのリスク要因となりうる。しかしながら、成長加速による需給ギャップの縮小を背景に年半ば利上げは正当化可能とみて、6月利上げ開始との個人予想を維持する。モデルによるインフレ率推計やテイラー・ルールも年内利上げ開始を依然支持している。

多くの参加者はゼロ金利長期化に傾いた

18日に公表された1月27-28日のFRB公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によれば「多くのmany参加者は、彼らの金融政策正常化開始時期に関するリスクのバランスの評価が、FF金利を実質的な下限により長期間維持する方向に傾いていると表明した」とされた。これはFOMC内の議事がややハト派方向に移行しつつある可能性を示唆するものである。本レポートでは同議事録の内容から、今後のFRBの金融政策の方向を占うこととする。

1月議事要旨の内容に先立ち、昨年10月FOMCでのQE3終了決定以後のFOMC声明文のフォワードガイダンスの推移を見ておく。資産購入終了が決定された10月会合では声明文のフォワードガイダンスが「相当の期間」に維持されたが、次の12月声明文ではこれが「忍耐強くいられる」に変更された(2014年12月23日付当レポート参照)。その後1月声明文では「忍耐強くいられる」とのフォワードガイダンスが維持された([第1表])。また資産購入停止を決定した10月には原油価格の下落が始まっており、10月声明文では「市場のインフレ予想指標はいくぶん低下し、調査による長期インフレ期待は安定したままである」と市場のインフレ期待に初めて言及がなされた。また12月声明文では、従前の「インフレ率が持続的に2%を下回って推移する可能性はいくぶん低減した」との文言が削除され、代わって「委員会はインフレの動向を引き続き注意深く監視していく」との文言が追加された。またインフレ率とインフレ率の低下については様々な議論が交わされていた。10月、12月の議事要旨からは「5年間及び5年先スタートの5年間の市場ベースの期待インフレ率の低下」につき様々な意見があったことが読み取れる(2014年12月7日付当レポート参照)。

なお、フォワードガイダンス「忍耐強くいられる」が維持された1月声明文は、12月声明文に比べて他にも本質的な変更はなく「経済活動が堅固なペースで拡大している」と経済の基調判断が従来の「適度なペース」から上方改訂されたことと、「インフレ率は短期的には更に低下すると予想される」とインフレについての基調判断がやや下方修正されたことが主な変更点であった。

[第1表]
20150222表1

コアインフレ率・賃金上昇率・市場予想インフレ率が議論された

1月FOMC議事要旨によれば、最も議論に多くの時間が割かれたと見られるのがインフレについての議論であった。そこでは主に、「インフレ率」「時間当たり賃金」「市場ベースの予想インフレ率」の3つの観点から議論がなされている。第1にインフレ率につき「多数の参加者はインフレ期待が安定している限りはエネルギー価格の下落はインフレ率全体に持続的な影響を与えない」と見ている。また数人の参加者は「エネルギー価格を除いたインフレ指標もここ数ヶ月低下しているが、これは輸入物価下落やエネルギー価格低下の非エネルギー品目への転嫁を含む一時的な要因」と述べている。総じてエネルギー価格下落について参加者はインフレ見通しに影響を大きな影響を与えない一時要因と見ている模様である。特にエネルギー価格下落がコアインフレ率に与える影響は限定的との意見は、これまでの当レポートでの見方とも一致している。

第2に賃金について、「何人かの参加者は、名目賃金の伸びの弱さは総合及びコアインフレ率が2%の委員会目標に回帰するのにより長期間かかることを示唆している」とのべた。一方で「2~3人の参加者は、名目賃金は物価上昇率の将来の挙動にほとんど有効な情報とならない」としている。また参加者は、失業率上昇時に賃金が十分に下方に調整されなかったため、これによる積み上がり賃金デフレ(pent-up wage deflation)が景気回復期の賃金上昇を抑制している可能性を議論し、この場合間もなく労働市場ののりしろと整合的な形で賃金上昇率ペースは高まるはずとした。そして、ほとんどの参加者は「資源ののりしろの減少の継続がインフレ率の2%への回帰を助ける」と予想した。当レポートでは賃金についてもこのFOMCでの議論と同様の見方をしている。「積み上がり賃金デフレ」の存在は明瞭ではないが、失業率低下に遅行して間もなく時間当たり賃金上昇ペースは加速すると個人的には見ている。なお、やや興味深いのは2~3名の参加者が言及した賃金上昇率とインフレ率の関係である。過去の両者の推移を見ると確かに時間当たり賃金上昇率とコアインフレ率との間には明確な相関関係は見て取れない([第1図])。賃金上昇率はインフレ率に遅行すると一般的に筆者は考えており、賃金上昇は購買力の増加を通じて消費を加速させ、需給の引き締まりを通じて2次的にインフレ率を上昇させる潜在要因だと見ている。しかし、短期的なインフレ率予想においては賃金上昇率が有効な変数とならないことは事実のようだ。

第3に、10月会合以降毎回会合で様々な議論が交わされた市場ベースの予想インフレ率低下につき1月も議論が行われた。5年物米国債利回りと5年物物価連動米国債利回りから算出される市場ベースの予想インフレ率は12月会合以降も更に低下を続けている([第2図])。かかる状況につきまず多数の参加者は「(市場ベースの予想インフレ率低下は)名目利子率に含まれるリスクプレミアム低下の反映であってインフレ期待の低下ではない」と判断している。つまり米国債利回り低下は米国ソブリンリスクに対するプレミアムの低下によるものであって、その結果米国債利回りと物価連動国債利回りの差(TIPSスプレッド)が縮小したことで、見かけ上予想インフレ率が低下したように見えるに過ぎないというわけだ。しかしながらその他の参加者は「(市場ベースの)予想インフレ率の低下が期待インフレ率の低下の反映である可能性を重視」している。さらにこれらの参加者は、調査ベースの期待インフレ率は(インフレ期待についての)確証を十分に提供しないとして、日本の1990年代から2000年代初ディスインフレ時期においも、調査による長期期待インフレ率が目立った低下を見せなかったことを挙げている。かように今回もインフレ予想に関する見方は一致せず「市場ベースの予想インフレ率の動向は注意深く監視されるべき」と合意されるにとどまった。

[第1図]
20150222図1

[第2図]
20150222図2

インフレ率は間もなく1.7%レベルに回帰すると個人的には予想する

ここで、予想インフレ率とインフレ実績についての筆者個人の見方を再整理しておきたい。筆者個人は市場ベースの予想インフレ率すなわちTIPSスプレッドにあまり重きを置いていない。TIPSスプレッドは市場の米国債需給(とりわけ発行量が相対的に少ない物価連動米国債)に左右されやすく、また上記の多数の参加者が述べているように、米国債のリスクプレミアムの変動に左右される可能性が高いためである。FOMCの1月会合が開催された時期の米国債10年物利回りは1.8%と2%を割り込む水準にまで低下していた。筆者個人はこの利回り低下の原因を、欧州財政問題やロシア・中東などの地政学リスクを背景にした米国以外の地域のリスクの高まりにより米国債のリスクプレミアムが相対的に縮小したことだと見ている。米国経済成長期待や利上げ期待からくる利回り上昇圧力を質への逃避による資金流入による利回り低下圧力が一時的に上回っていることが米国債利回り低下の背景と考える(1月FOMC議事要旨によれば、会合ではこの長期金利低下についても議論がなされており、予想インフレ率と同様に意見が分かれたままとなっている)。

筆者個人は予想インフレ率としてミシガン大学消費者センチメント調査における12ヶ月後の期待インフレ率を用いている。この指標は調査ベースであるが、上記議事要旨で言及された日本の期待インフレ率調査に比べると消費者のインフレ期待をよく反映していると言える。予想期間が短期であることからその時点の消費者の期待インフレ率を相応に反映しうるためだ。実際にここ数ヶ月間、同調査における期待インフレ率は低下を続けている([第3図])。ミシガン大学の消費者期待インフレ率と需給ギャップ(米議会予算局推計の潜在GDPから算出)を外生変数とし、コア個人消費支出価格指数(コアPCEデフレーター)の前年比伸び率を内生変数とする回帰分析を直近指標によりアップデートしたのが[第2表]である(推計期間は44四半期)。

この推計によれば、2014年10-12月期時点の推計コアPCEインフレ率は約+1.7%との結果になった。期待インフレ率が低下したにも関わらず、成長加速によるマイナスの需給ギャップ縮小がこれを相殺し、結果的にはこれまで同様に均衡インフレ率が+1.7%に維持されていることになる。現状のコアPCEインフレ率(12月時点で+1.3%)はこの水準からかなり下方乖離している([第4図])。従って筆者個人の予想としては、主に需給ギャップの縮小により今後インフレ率が1.7%レベルにまで上昇するとの見方を維持する。外部環境もこの見方を支持している。すなわち原油価格の下落が1月で一段落し、一時1バレル=50ドルを割り込んだ原油先物価格は2月に入ってからは50ドル台前半に回復して推移している。原油価格がこの水準で推移すれば期待インフレ率も下げ止まることが十分に考えられる。

[第3図]
20150222図3

[第2表]
20150222表2

[第4図]
20150222図4

インフレ率低下でもテイラー・ルールは年内利上げを支持

さて、1月FOMC会合の議事要旨に戻り、金融政策に関する議論の箇所を見る。そこではまず、金融政策正常化を遅くした場合と早くした場合のそれぞれのリスクのトレードオフにつき議論がなされている。まず数人の参加者は、正常化の遅延には「金融政策スタンスが過度に緩和になることにより望ましくないインフレ率上昇」のリスクがあるとした。一方で多くの参加者は「早すぎる利上げは実体経済と労働市場の見かけの堅調な回復を阻害する」可能性があるとした。その他の発言も合わせると、利上げ早期化のリスクを重視するハト派的発言の方が数の上では多かった模様である。この結果、冒頭に掲げた「多くの参加者は彼らの金融政策正常化開始時期に関するリスクのバランスの評価が、FF金利を実質的な下限により長期間維持する方向に傾いていることを表明」した。1月議事要旨がハト派トーンとされる根拠はこの記述にある。しかしながら、ここに至るまでの成長率・インフレ・労働市場を含む経済見通しに関する参加者の議論とこのハト派的金融政策志向の高まりとの関係は議事要旨を見る限りでは明らかではない。経済見通しに関する議論では意見は分かれていたものの、経済成長・インフレ・労働市場にかんして悲観的な見方をする発言が従前に比べて明らかに増加した証跡は見当たらない。更に上記記述に続けて「いくらかの参加者は、、FF金利は既にその下限に十分な期間維持されており、短期間のうちに引締めを開始することが適切かもしれない」と述べている。数の上では相対的に少ないものの、早期利上げ開始を主張する参加者も依然存在するのである。

ここで、テイラー・ルールによる適正なFF金利誘導目標の推計を改めて行っておく。テイラー・ルールはいわゆる1993年版と1999年版の2通りを用いる。1993年版はJ.テイラー氏のオリジナルの公式に基づくもの、1999年版はイエレン現FRB議長が労働市場ギャップをより重視する形でこれを改変したものである(2014年12月7日付当レポート参照)。2014年末までは需給ギャップとPCEデフレーターの実績値、2015年の需給ギャップは筆者個人の成長予想に基づく数値、2015年PCEデフレーターはここではやや保守的に2015年いっぱい前年比伸び率が1%で推移するとした。その結果、相対的にタカ派的な1993年版では2015年末の適正FF金利は1.5%、ハト派的な1999年版テイラー・ルールにおいても0.5%と、いずれも年内の利上げ開始を正当化する結果となった([第5図])。実際には原油価格の下げ止まりでコアインフレ率は1%台半ばから後半で推移する可能性が高い。従ってこれまでの原油価格下落を反映してもなお年半ばの利上げ開始は正当化可能である。1月FOMC議事要旨の内容はこれだけで金融政策予想を変更する大きな材料にはなりにくい。従ってこれまでの筆者個人の金融政策予想(6月利上げ開始、12月時点のFF金利誘導目標レンジ1.25-1.50%)を維持することとする。

もっともこの個人予想には下方(利上げ後倒し)リスクがある。1月FOMC議事要旨のハト派的内容、そしてFOMC投票メンバーの入替により1月からハト派投票メンバーが相対的に増加していることは、この予想に対するリスク要因と言わざるを得ない。次の金融政策スタンスの判断ポイントは次回3月17-18日のFOMC定例会合である。ここで示される声明文やFOMC委員の経済予測が大幅にハト派方向にシフトした場合はこの個人予想の修正を考慮する必要が出てくるかもしれない。また小売売上、資本財受注、企業景況感などの米国経済指標が年末から年初にかけてやや軟化傾向にあることも経済見通し面からの下方リスク要因と言わざるを得ないだろう。

[第5図]
20150222図5


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<経済指標コメント> 日本の10-12月期実質GDP成長率は前期比年率+2.2%

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[日本]

実質GDP成長率(10-12月期)は前期比年率+2.2%

10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%と3四半期ぶりのプラス成長に回帰した。しかその伸び率は、家計消費を中心に下振れ、筆者個人予想(同3%台)を下回った。需要項目別内訳は家計消費同+1.1%、住宅投資同-4.8%、企業設備同+0.4%、公的需要同+0.4%、在庫投資寄与度+0.6%、純輸出寄与度同+1.1%。家計消費は内閣府消費総合指数からは同+3%台の大幅な伸びを予想していたが結果は同+1.1%にとどまり、2四半期続けて予想を下回る結果となった。住宅投資は住宅着工戸数が4四半期ぶりに増加に転じたにも関わらずGDP統計への計上は3四半期連続マイナス、ただしマイナス幅は大幅に縮小した。企業設備は資本財出荷の伸びから予想していた通り3四半期ぶりにプラス成長に転じた。財・サービス輸出は同+11.4%と伸びが大幅に加速、同輸入が同+5.3%の小幅な伸びにとどまったことで純輸出は4四半期連続で成長にプラス寄与した。家計消費・企業設備・住宅投資を合わせた国内民間最終需要は前期比年率+0.8%と3四半期ぶりのプラス成長。2014年通年の成長率は前年比+0.0%となった。10-12月期の成長率下振れの結果、2015年暦年成長率は前年比+1%レベル、2015年度は前年度比2%弱になる計算である。消費税率引上げ後の反動減から日本経済は持ち直しが明らかになったもののそのペースは遅く、10-12月の実質GDPは前年同期比で-0.5%(季節調整前)といまだマイナス圏にある。

20150221図1

[米国]

住宅着工戸数(1月)は年率1065千戸(前月比-2.0%)、着工許可件数は同1053件(同-0.7%)

1月の住宅着工戸数は年率1065千戸(前月比-2.0%)と米1月住宅着工戸数は年率1065千戸(前月比-2.0%)と前月の同+7.1%から反落。ここ数ヶ月住宅着工戸数は一進一退が続いている。1月の米国の寒波を勘案すればこの程度の減少はありうる。住宅建設市場は今後も堅調に拡大するとの見方を維持する。ただ6ヶ月移動平均線が7ヶ月ぶりに低下に転じており、他の経済指標と同じく米国経済拡大ペースの減速を示唆している可能性がある。住宅着工許可件数も同1053件(同-0.7%)と前月の同横ばいから減少に転じた。

20150221図2

鉱工業生産指数(1月)は前月比+0.2%、設備稼働率は79.4%(前月比横ばい)

1月の鉱工業生産指数は前月比+0.2%と前月の同-0.3%から反転上昇。内訳は製造業同+0.2%、鉱業同-1.0%、公益事業同+2.3%。振れの大きい鉱業や公益事業を別にすれば、製造業は3ヶ月連続の上昇を続けており、米国の鉱工業生産は依然堅調といえる。設備稼働率は79.4%と前月比横ばいにとどまり、鉱工業全体では設備稼働率が11月のピーク79.8%に回帰できていない。米コアインフレ率は堅調と個人的に予想しているが、設備稼働率上昇ペースの減速はこれに対するリスク要因となりうる。

20150221図3

<経済指標コメント> 米1月小売売上高は前月比-0.8%

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[日本]

景気ウォッチャー調査(1月):現状判断DIは45.6(前月比+0.4ポイント)、先行き判断DIは50.0(同+3.3ポイント)

1月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは45.6(前月比+0.4ポイント)と2ヶ月連続上昇。もっとも水準は横ばいを示す50を6ヶ月連続で下回っており、内訳も家計動向関連43.9(同-0.3ポイント)、企業動向関連46.7(同+0.1ポイント)、雇用関連54.8(同+5.8ポイント)とばらつきがある。一方、2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは50.0(同+3.3ポイント)と2ヶ月連続上昇かつ5ヶ月ぶりに横ばいを示す50ポイントに回復した。内訳も家計動向関連48.4(同+3.4ポイント)、企業動向関連51.8(同+2.5)、雇用関連57.1(同+5.9)と、すべてのDIが上昇、かつ家計動向関連を除く2つのDIが50を上回っている。消費税率引上げによる反動減の影響は徐々に解消されているといえる。なお、内閣府消費総合指数は10-12月で前期比年率+3.3%の大幅な増加を示している。筆者個人は日本の10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+3%台半ば、うち家計消費を同+2%弱と予想していたが、この予想には上ブレの可能性が出てきている。

20150214図1

機械受注(12月、船舶・電力を除く民需)は前月比+8.3%(前年比+11.4%)

12月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+8.3%と2ヶ月連続の増加、10月の同-6.4%の大幅減を、11月(同+1.3%)と12月取り戻した形。内訳は製造業同+24.1%、非製造業同+7.2%と製造業からの受注増加が目立っている。季節調整前前年同月比では+11.4%と3月ぶりにプラス転化した。結果、10-12月期の機械受注は前期比+0.4%と2四半期連続のプラスの伸びとなった。GDP統計上の企業設備投資は7-9月期に予想外のマイナス成長にとどまったが、10-12月期にはプラス成長に転化すると見る。

20150214図2

[米国]

小売売上高(1月)は前月比-0.8%、除く自動車同-0.9%

1月の小売売上高は前月比-0.8%と2ヶ月連続かつ大幅な減少、自動車を除くベースでも同-0.9%と2ヶ月連続減少。もっともガソリン価格下落(米エネルギー情報局によれば1月第4週の全米ガソリン小売価格は1ガロン2.13ドルと12月第5週の同2.39ドルから更に下落)が小売売上高減少の主因であり、自動車・ガソリン・レストランを除くコアの小売売上高は同+0.1%とプラスに転化している。主な業種別内訳は自動車及び同部品ディーラー同-0.5%、家具店同-0.7%、家電店同+0.3%、建設資材店同+0.6%、食品店同-0.3%、ガソリンスタンド同-9.3%、衣服店同-0.8%、無店舗小売店同+0.5%。総じて1月の小売売上ややや不振だったと言わざるを得ない。GDP統計上の個人消費の基礎統計となる自動車・ガソリン・建設資材・レストランを除く売上は前月比横ばいとなっており、インフレ率低下を勘案すれば1月の実質個人消費は前月比何とか横ばいは確保しそうだ。1-3月期の実質個人消費前期比年率2%台半ばとの筆者個人予想は維持するものの、1月小売売上高がやや不振であったことや、消費者センチメントの反落(2月ミシガン大消費者センチメント指数は93.6と前月比-4.5ポイントの大幅低下)からはこの予想には下方リスクが出てきた。

20150214図3

<経済レポート> マクロでは健全化:米家計バランスシート

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米国では家計バランスシートの健全化が進む一方で、自動車ローンを含む消費者ローン借入増加ペースが高水準にある。さらにサブプライム自動車ローンの延滞増加に対する懸念の論調が増えている。しかし、住宅ローン借入の減少で家計全体の債務返済余力は高まっておりマクロでは信用不安の懸念は現状では低いと見たい。一方で自動車販売台数が飽和状態に近づきつつあることから、今後更なる自動車販促策から信用条件が緩和され続ける可能性はリスクとして留意しておく。

サブプライム自動車ローンの延滞増加への懸念論調

米国のサブプライム自動車ローンが新たなバブルを招くとの論調が米国でみられる。NYT紙は昨年以来、米国で返済能力の低い低所得者に対して自動車ローンが提供されるケースが増加しているとしてこれを「新たなサブプライム・ブーム」と呼んでいる。また同紙は低金利環境で高いリターンを求める投資家向けにサブプライム自動車ローンの証券化商品組成が増加、組成金額は2014年に202億ドルと、2010年の3倍以上に増加していると報じている(2014年7月19日付、2015年1月26日付NYT紙)。またWSJ紙も、2014年1-3月期に実行されたサブプライムローンのうち8.4%が11月までに既に延滞を起こしている等、2014年の自動車販売増の背景にありうべきサブプライム自動車ローン拡大リスクへの懸念を報じている(2015年1月8日付WSJ紙)。

一方、大手自動車ディーラーや大手自動車メーカー系列自動車ローン会社の経営陣は「リスクに見合ったリターンがあれば信用市場のどの領域であれば(サブプライム自動車ローン貸出の)リスクをとることは適切」「金融危機においてもサブプライム自動車ローン証券化商品で損失を被った投資家はいない」「住宅価格上昇を前提にした期間30年の住宅ローンと、自動車価額減価を前提とした6年以内の自動車ローンは異なる」として、自動車ローンバブル懸念に反対の意見を表明している(2月7日付Automotive News誌)。

本レポートでは自動車ローンを含む米国家計のバランスシート状況と各種消費者ローンの延滞状況などから、サブプライム自動車ローンが新たなバブルとその崩壊を招くリスクの程度を占うことにする。

株価上昇と消費者ローン借入で家計バランスシートが拡大中

FRBの資金循環統計によれば、2014年第3四半期時点の家計資産残高は95.4兆ドル、家計負債残高は14.1兆ドル、資産から負債を差し引いた家計純資産は85.3兆ドルである。昨年10月の一時的株価下落で資産残高は約2年ぶりに前期比微減したものの、総じて2010年以降今日まで増加基調を維持しており、家計バランスシートは順調な拡大を続けているといえる([第1図])。一方家計負債残高は全体で金融危機前のピークにまで回復していない。総じて家計はまだデレバレッジングが続いており、バランスシートは健全化が継続しているといえる。

家計資産・負債毎の内訳を見ると、家計バランスシートの拡大には、実物資産よりも金融資産価額上昇が大きく寄与していることがわかる。家計資産のうち不動産価額は金融危機直前の2007年の水準を2014年にようやく上回ったにすぎない。一方で金融資産価額は2007年比+26%にまで増加している([第2図])。住宅価格上昇ペースが適度であるのに対し、株や債券など歴史的な金融資産価格の上昇が家計資産の増加を支えているといえる。負債サイドも同様である。家計の住宅ローン負債残高は金融危機以降現在もなお減少傾向を辿っており、2007年比-11.7%にまで減少している。一方クレジット・カードや自動車ローンなどの消費者ローン残高は2010年頃から増加に転じ、現在では2007年比+24.1%と金融資産とほぼ同じペースで増加している([第3図])。

2007年以降の住宅バブル崩壊とこれに続く金融危機以降、住宅価格は2010年頃から上昇に転じているものの、その上昇ペースは現在では一桁にとどまっており極めて適度である。また金融機関の住宅ローンの信用条件が相対的に厳格であることが住宅ローン残高減少の背景として考えられる。1月のFRBシニア・ローン・オフィサー・サーベイによれば、10-12月の間に住宅ローン(住宅公社保証適格)の信用条件は不変との回答が64行中54行、信用条件をいくぶん緩和したとの回答が9行であった。総じて信用条件は緩和方向にはあるものの、中古住宅販売ペースが適度なものにとどまっていることからは、総じて信用条件は厳格なようだ。

[第1図]
20150211図1

[第2図]
20150211図2

[第3図]
20150211図3

自動車ローン増加ペースは速いが残高は小さい

これに対し、消費者ローンの増加ペースは極めて高水準で、総残高のみならず消費者ローン債務返済支払額の可処分所得に対する割合(デット・サービス・レシオ)も2013年にほぼ8年ぶりに住宅ローンのそれを上回って現在に至っている([第4図])。つまり消費者ローンの支払負担は今や住宅ローン支払負担を上回る状態になっているわけだ。また、ローン残高の可処分所得に対する比率も、2014年9月時点で住宅ローンは71.8%と金融危機前2007年のピーク99.6%から継続的に低下しているのに対し、消費者ローンでは24.9%と既に金融危機前のピーク24.5%を上回るレベルにまで上昇している。

消費者ローンは、クレジット・カード等のリボルビングローンと、学生ローンや自動車ローンなどのノンリボルビングローンに分かれる。FRBの消費者信用残高統計によれば、2014年12月時点の消費者信用(ローン)残高合計約3.3兆ドルのうち、リボルビングローン残高は0.9兆ドル、ノンリボルビングローン残高は2.4兆ドルである。ノンリボルビングローンの内訳は学生ローンが約1.3兆ドル、自動車ローンが1.0兆ドルである([第6図])。これらのうち、継続的に高い伸び率を保っているのがノンリボルビングローンであり、昨年12月現在で前年比+8.3%の高い伸び率を保っている。特に自動車ローン同+8.7%と消費者ローンの中で最も高い伸び率である。これに対しリボルビングローンの前年比伸び率は+3.4%にとどまっている。

自動車ローンの増加ペースは住宅ローンや他の消費者ローンに比べてペースが速いことは確かである。しかしながら一方で、自動車ローンの残高は約1兆ドル弱と、減少してもなお約9.3兆ドルの残高がある住宅ローンに比べて極めて小さい市場である。また、家計全体のデット・サービス・レシオは[第4図]で見た通り極めて低い水準にある。この状況からは、自動車ローンのうちの一部であるサブプライム自動車ローンがバブル崩壊により新たな金融危機をもたらすとは考えにくい。

[第4図]
20150211図4

[第5図]
20150211図5

[第6図]
20150211図6

自動車ローンのリスクは小さい:自動車販売台数飽和後にはリスクシナリオも

自動車ローン等の消費者ローンの伸び率が相対的に強い背景は定かではない。FRBシニア・ローン・オフィサーサーベイによれば、自動車ローンの信用条件は統計開始の2011年以降一貫して緩和傾向が続いている。自動車ローンの信用条件DIは、クレジットカード・ローンや住宅ローンに比べて低い(緩和した銀行の割合が多い)状態が2014年半ばまでは続いていたが、直近の信用条件DIは上昇に転ずる兆しもみられる。むしろ直近では住宅公社保証適格の優良な住宅ローンの方信用条件緩和傾向の方が強いともいえる([第7図])。

自動車ローンを含む消費者ローンの延滞率も依然低水準にある。消費者ローンの延滞率(30日以上)は2.21%と過去20年間で最低水準にある([第8図])。ローン延滞率は失業率と同じ動きをする傾向があり、現状の雇用市場の拡大ペースが持続的であるとの見方からは、消費者ローンの延滞率は当面低位で安定する可能性が高い。もっとも、米調査会社TransUnion社は2014年10-12月期の自動車ローン延滞率(60日以上)の延滞率を1.20%と集計し、2011年1-3月期以来11四半期連続で上昇したとしている。また同社は2015年には自動車ローン延滞率が1.27%にまで上昇すると予想している(2014年12月16日付同社プレスリリース)。しかし、1兆円の自動車ローン市場のうちで1%台の延滞率は金融市場を揺るがすほどのインパクトを持つとは考えにくい。また上記の通り、住宅ローンと自動車ローンはその期間や担保価値算定の前提が異なり、自動車ローンのリスクは住宅ローンに比べて低いといえる。また担保物件が住宅ではなく自動車であることから、担保権実行に伴う社会的な悪影響も相対的に低いといえるだろう。

以上より、自動車ローンの増加に伴うバブル危機の可能性は現状では低いと見たい。一方で、自動車市場では新車販売台数が年率17百万台弱と過去のピークに近いところまで増加しており、今後更なる販売増の余地は限られているといえる。そうした状況において自動車販売促進策や自動車ローン貸出促進策として信用条件の緩和が拡大するとすれば、新たな信用バブルの可能性なしとしない点はリスクとして留意しておきたい。また最近の新車販売の伸びの減速に比べて、自動車ローン残高増加率が依然として高いことは、自動車購入の際に現金でなく借入で購入する消費者が増加している可能性を示唆している([第9図])。

[第7図]
20150211図7

[第8図]
20150211図8

[第9図]
20150211図9

<経済指標コメント> 米1月非農業部門雇用者数は前月比+257千人

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[米国]

実質個人消費(12月)は前月比-0.1%、個人消費支出価格指数は前年比+0.7%

12月の実質個人消費は前月比-0.1%と8ヶ月ぶりに前月比マイナスの伸びとなった。しかし、前月11月分は同+0.7%と大幅な伸びに上方改訂された。結果GDP統計上の10-12月期の実質個人消費は前期比年率+4.3%と極めて強い伸びとなった。12月単月の消費減速は、新車販売や小売売上高の減少から予想されたことであり、サプライズではない。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+0.7%と7ヶ月連続で上昇率を低下させた(前月は同+1.2%)。エネルギー価格の下落が総合PCE総合インフレ率を低下させる要因となっている。一方食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは同+1.3%と相対的には堅調な伸びを続けている。原油価格下落は1月も続いており、PCEインフレ率は一時的にマイナスに転化する可能性があるものの、コアインフレ率は需給ギャップの縮小とともに堅調に推移すると見たい。個人消費はかかる消費者インフレ率低下も手伝い、雇用拡大と賃金上昇による購買力増で堅調な拡大を続けると見る。1-3月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+2.5%の伸びを見込む。

20150207図1

ISM製造業指数(1月)は53.5%(前月比-1.6%ポイント)、非製造業指数は56.7%(同+0.2%ポイント)

1月のISM製造業指数は53.5%(前月比-1.6%ポイント)と3ヶ月連続の低下、総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注52.9%(前月比-4.9%)、生産56.5%(同-1.2)、雇用54.1%(同-1.9)、入荷遅延52.9%(同-5.7)、在庫51.0(同+5.5)。在庫DI以外のDIがすべて低下、在庫が積みあがるという形。非製造業指数は56.7%(前月比+0.2%)と2ヶ月ぶりの上昇。総合DIを構成する4つのDIの内訳は、事業活動61.5%(前月比+2.9%ポイント)、新規受注59.5(同+0.3)、雇用51.6%(同-4.1)、入荷遅延54.0%(同+1.5)。昨年後半から各種企業景況感指数の軟化が見られる(2月1日付<経済レポート>参照。が、これは企業部門のトレンド変化を表すものではなく、また1月の指数低下も一時的なものと見たい。また景況感指数の水準自体は高い(低下幅の大きいISM製造業指数でもその水準53.5%は、筆者試算では実質GDP成長率約2%に相当する)ことから、企業部門は2015年も緩やかな拡大を継続すると見る。

20150207図2

新車販売台数(1月)は年率16.6百万台(前年比+9.0%)

1月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率16.6百万台(前年比+9.0%)と高水準を維持した、ただし前月比では-0.2%と2ヶ月連続で売上が微減している。ガソリン価格下落や低金利など引き続き自動車販売を取り巻く環境は良好である。

20150207図3

雇用統計(1月):非農業部門雇用者数は前月比+257千人、失業率は5.7%

1月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+257千人と引き続き堅調な伸びを見せた。内訳は建設業同+39千人、製造業同+22千人、小売業同+45.9千人、専門ビジネスサービス同+39千人、教育・医療業同+46千人と主要業種でまんべんなく雇用が増加している。12月時点で非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は+2.3%に加速しており、雇用拡大ペースは筆者が今年の拡大ペースとして想定している2%を上回っている。なお今回は事業所調査の年次改訂により過去の数値が2010年1月に遡り改訂された。結果2014年12月時点の非農業部門雇用者数は140,592千人と従前に比べ+245千人の上方改訂となった。これに伴い、昨年11月の非農業部門雇用者数前月比の伸びは+423千人、12月は同+329千人と大幅に上方改訂された。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は20.80ドル(前月比+0.07ドル)と前月比で上昇、12月の予想外に時間当たり賃金が前月比で低下したことは一時要因であった可能性が高い。もっとも時間当たり賃金の前年比の伸び率は+2.0%にとどまっており、失業率低下に比べて賃金上昇ペースがまだ遅いことは否めない。家計調査による失業率は5.7%(前月比+0.1%)とわずかに上昇したが、内訳は労働力人口・就業者数いずれも増加しており、労働市場の拡大を伴う失業率上昇である。労働参加率は62.9%(前月比+0.2%)と前月比上昇。米雇用は総じて堅調な拡大を続けており、労働市場ののりしろは確実に縮小しているといえる。今後も雇用者数は毎月+200千人前半から半ばの伸びを維持、時間当たり賃金上昇率も前年比+2.5%までの上昇を引き続き見込む。

20150207図4


<経済レポート> 内「優」外患:米企業景況感の動向

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10-12月期のGDP統計ほかの米国経済指標からは、成長加速する家計部門に比べ、設備投資や輸出等企業部門の成長が減速していることが読み取れる。この背景には、海外景気の減速やドル高による外需の軟化、及び原油価格下落による内需の急拡大があると考えられる。しかしながら、各種企業景況感指数や企業サーベイには企業部門の減速がトレンドの変化である証跡は見られない。原油安の企業へのプラス効果もあり、今後企業設備投資は今年一杯緩やかな拡大基調を維持すると見る。

海外景気が米企業部門を抑制している可能性

30日に公表された米国の2014年10-12月期実質GDP成長率(速報)は前期比年率+2.6%と、筆者個人の予想同+3.0%をやや下回った。ただし主な下ぶれ要因は純輸出と政府支出、及び設備投資の一部であり本質的なサプライズではない。一方成長の牽引役である個人消費は、予想通り同4%を超える成長に加速しており、米国経済が持続的に拡大しているとの見方を支持する結果といえる(1月30日付<経済指標コメント>参照)。また、10-12月期の成長率は前期の同+5.0%との比較では表面上は大幅な減速となるが、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要の伸びは同+3.9%と、前期の同+4.1%にほぼ並ぶ高い伸びであり、米国経済の牽引役である内需は極めて強い拡大ペースを維持している([第1図])。

ところで、現在の米国経済は家計部門が牽引する一方で企業部門がやや減速という形になっている。10-12月期の実質GDP成長率の押し下げ要因となった民間部門の需要項目は設備投資と純輸出である([第2図])。個人消費は3四半期連続伸びを加速させて10-12月期の成長を+2.87%押し上げたのに対し、設備投資の成長への寄与度は+0.24%にとどまり、また純輸出は財・サービス収支赤字の拡大で成長率を-1.02%押し下げた。

かかる状況は、米国の内需と外需の拡大ペースの差の反映ともいえる。国内では雇用増加と賃金上昇による家計の購買力拡大で個人消費が拡大し輸入も増加する。一方で欧州・アジアなど海外経済の減速で輸出が伸び悩み企業の設備投資意欲も抑制されるという構図である。また、10月以降のドル高と原油安も内外需のデカップリング要因である。ドル高と原油安は輸入品やガソリン等の価格低下を通じて国内消費拡大を喚起する。一方ドル高は輸出企業にとっては海外景気減速に加え更なる向い風となる。ただし、筆者は海外景気減速・ドル高・原油安が企業景況感に与える影響はネットでは米国経済にプラスであり、悪影響がある場合も一時的と個人的には考えている。以下ではGDP統計や企業景況感動向を示す指標・調査もとにこれを検証する。

[第1図]
20150201図1

[第2図]
20150201図2

資本財の受注は大幅減速、輸出の伸びは頭打ち

まず、10-12月期GDP統計等から企業設備投資と財・サービス収支の動向を見てみよう。設備投資は10-12月期に前期比年率+1.9%と前期の同+8.9%から大幅に伸びが減速した。内訳は建物などの構造物投資が同+2.6%、生産設備やコンピューターなどの機器投資が同-1.9%、知的財産投資が同+7.2%と、機器投資のマイナス転化が目立っている([第3図])。これは基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)が10-12月期に前期比マイナスの伸びに転化したことと整合している。

機器投資の先行指標としては、同じく航空機関連を除く非国防資本財の新規受注の伸びが10月以降大幅に減速している([第4図])。特に鉄鋼などの一次金属や生産機械を含む一般機械の受注減少が目立っている。

財。サービス収支においては、10-12月期における輸入の急増と輸出の急減速が顕著である([第5図])。10-12月期に実質ベースの財・サービス輸入は前期比年率+8.9%と前期の同-0.9%から大幅に増加した。一方財・サービス輸出は同+2.8%と、ピークの7-9月期の同+11.0%から2四半期連続で減速した。また輸入物価指数は、12月時点で前年比-5.5%と2009年10月以来の大幅なマイナスの伸び、石油関連を除く輸入物価の伸び率も前年比横ばいにまで低下している。これに対して輸出物価指数は前年比-3.2%と輸入物価に比べて相対的には緩やかな低下にとどまっている。ドル高や原油安による輸入物価下落が内需拡大と相まって輸入の拡大を促した可能性が高いと推測できる。

[第3図]
20150201図3

[第4図]
20150201図4

[第5図]
20150201図5

企業景況感は1月にかけ低下傾向にある

次にいくつかの米国企業景況感調査の動きを概観する。まずISM製造業指数(総合DI)はその水準は極めて高いもののすでに昨年10月をピークに下降サイクルに入っているように見え、直近の昨年12月は2ヶ月連続の低下となる55.5%(前月比-3.2%ポイント)であった。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数は10月以降も上昇を続けたが、12月、1月に大幅低下し、1月の総合DIは6.3ポイント(同-18.0ポイント)だった。NY連銀製造業指数も9月をピークに年末にかけ大幅に低下している。1月の総合DIは9.95と前月の-1.23のマイナスからプラス転化したものの、水準的にはかなり低い位置にある。企業景況感は調査によりばらつきがあるものの、これらの短期トレンドを見てみると9月から11月をピークに下降に転じている傾向はほぼ共通しているといえる([第6図])。

企業の設備投資意欲を示すフィラデルフィア連銀製造業景況観調査の設備投資DI(6ヶ月後)は昨年末までは比較的高水準で推移しており、当レポ―トでも今後の米国の設備投資が緩やかな拡大を続ける根拠としていた。しかしながら同DIは1月に13.2ポイント(前月比-11.6ポイント)と大幅に低下し、5ヶ月ぶりに20ポイントを下回った([第7図])。今後もこの傾向が続くようであれば、企業設備投資は当レポートの今年の予想よりも更に下振れる可能性が出てくる。

ドル高による交易条件への影響はどうか。12月時点の輸入・輸出物価統計では上記の通り輸入物価下落が輸出物価下落ペースを上回り、交易条件の好転を示唆する状況である。しかし、直近の企業景況感調査ではやや異なる結果になっている。フィラデルフィア連銀調査では、1月の受取価格DIと支払価格DIのいずれもが低下する傾向は原油価格下落開始後同様の傾向であるものの、1月になり受取価格DI低下が急加速し、結果1月には交易条件がやや悪化に転じている([第8図])。原油価格やドル高による価格調整のタイムラグにより、交易条件の好転も一方向にとはいかず、企業景況感に一時的にマイナスの影響を与えている可能性もある。

[第6図]
20150201図6

[第7図]
20150201図7

[第8図]
20150201図8

エネルギー下落は米企業にポジティブ:企業部門の緩やかな拡大は続こう

しかしながら、これら企業景況感の悪化はまだ循環的な変動のレンジの範囲内であり、大きなトレンドの変化は見られない。また、企業の景気の先行きに対する見通しは依然として明るい。フィラデルフィア連銀指数の先行き総合DIは1月時点で50.9ポイント(前月比+0.5ポイント)と前月比上昇、8か月連続で50ポイント以上を維持している。その意味では、2日に公表予定のISM製造業指数は1月の全米の景況感を知るうえで一つの鍵となる指標である。海外経済の減速についてはこれを企業設備投資抑制要因とする明示的な証跡は多くはない。たとえば米大企業の業界団体であるビジネスラウンドテーブルが12月に実施した四半期CEOビジネスアウトルックサーベイにおいて、「設備投資拡大を抑制する可能性のある要因」として、38%が「グローバルな需要と経済の減速」と回答し第3位となっている(1位は「米国税制」63%、2位は「当局規制」46%)。

ここで、フィラデルフィア連銀が1月の製造業景況感指数調査における特別調査として実施した「エネルギー価格下落の事業への影響」サーベイを見ておく([第9図])。これによれば、製造業の54.5%がエネルギー価格下落の事業への影響を「ポジティブ」と回答し、「ネガティブ」との回答9.1%を大きく上回った。非製造業に対する同じ調査では62.9%が「ポジティブ」、15.7%が「ネガティブ」と回答している。非製造業に対しては更に影響の内容についても調査がなされている。最も多かった回答はポジティブ影響で、57.1%の企業が「企業の生産コスト低下」をあげており、「販売利鞘の拡大」22.9%がこれに続いている。一方ネガティブ要因としては「エネルギー生産関連取引先からの需要減少」が32.9%と最も多かったが、「企業の利益低下」は10.0%、「販売マージン低下」は5.7%にとどまった。この調査は、原油価格下落がネットで米企業業績に好影響を与えるとの当レポートの見方と整合する。

以上より、現在の企業設備投資の減速は一時的なものであり、2015年には前年同様に前年比+6%レベルの拡大を実現するとの個人予想を維持する。その背景は現在のドル高・原油安が内需拡大や仕入価格低下を通じて米企業の収益にネットでプラスの効果をもたらす可能性が高いことである。海外景気減速の影響は明示的な証跡はないものの潜在的には主に輸出や海外生産関連の設備投資を抑制する要因になるだろう。一方で企業収益の好転と設備稼働率の低下は設備投資が今後も持続的ペースで拡大する決定要因である。総じて企業部門を取り巻く環境は複雑ではあるが、緩やかな拡大は維持できると見る。財・サービス収支は、当面輸入の増加により赤字拡大となろうが、年後半にはFRB利上げ開始により内需拡大ペースがやや鈍化しそうだ。結果2015年通年では純輸出は成長にほぼ中立の寄与となると見る。

[第9図]
20150201図9

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