FC2ブログ

<経済レポート> 3%台へ上伸と見る:FRB利上げ開始後の長期金利

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
FRBの利上げ開始が近いと見られているにも拘わらず米国の長期金利は低位で安定している。筆者個人は年末に3%台への長期金利上昇を予想している。成長率・FF金利誘導目標・長期期待インフレ率を決定要因とする分析は筆者個人予想を支持する結果になっている。しかしFRBバランスシート規模のストック効果が今後も長期金利抑制効果を維持する可能性は、筆者の見方に対するリスク要因である。

米国債10年物利回りを再度要因分析

FRBが年内に利上げを開始すると見られている(筆者個人の予想は9月定例FOMCで利上げ開始、年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%)にも拘わらず、米長期金利はまだ低水準に抑制されている。28日現在で米国債10年物利回りは2%近辺にあり、年初来ピークである3月の2.2%レベルを依然下回っている。筆者個人は年末の米国債10年物利回りを3%台半ばと個人予想している(4月7日付当レポート参照)。この個人予想は、米国の成長率が2%台で堅調に推移しかつインフレ期待が大きく低下しないとの前提に上記のFF金利誘導目標予想を加味したものである。以下では、過去の2014年10月5日付当レポートの手法に基づき、改めて長期金利の要因分析と予測を行う。

長期金利の決定要因としてまず、実質GDP成長率、FF金利誘導目標、長期期待インフレ率の3つを考える。実質GDP成長率は2014年まで3年連続で前年比2%台半ばの成長を維持しており、中期的には極めて安定的に推移している。ここでは四半期毎の前年同期比の伸び率を成長率指標として用いる([第1図])。FF金利誘導目標は金融危機後の2008年12月に現在の0-0.25%レンジに引き下げられて以来今日までこの実質ゼロ水準が維持されている([第2図])。今後年末にかけて同目標レンジは0.75-1.00に上昇し、長期金利押し上げ要因となると考えられる。

期待インフレ率としては、フィラデルフィア連銀が四半期毎に実施する”Survey of Professional Forecasters“における民間エコノミストによる10年後のインフレ率予想を用いる。同調査によれば、2015年第1四半期時点の民間エコノミストによる10年後のインフレ率予想の中央値は2.1%と、前四半期の2.2%からわずかに低下している。しかし原油価格下落による足元インフレ率の大幅低下に比べて相対的に安定している([第3図])。FOMCが声明文で「調査ベースのインフレ期待は安定している」と述べているのも、長期的インフレ期待のこの安定を指しているものと思われる。

[第1図]
20150429図1

[第2図]
20150429図2

[第3図]
20150429図3

成長率・FF金利・長期インフレ期待による回帰では現状の長期金利は低すぎる

これら3つの決定要因を外生変数とし、1992年から2007年(2008年のFRBによる量的緩和開始直前)までの64四半期を観測期間として回帰分析を行った結果が末尾の[第1表]の①、この回帰式をもとに推計した長期金利とその実績値を2014年末まで比較したのが[第4図]である。回帰式①による現在の長期金利の推計値は約3.2%となり、実績値である2%に比べて1%以上も上回っている。この回帰分析による限りでは、現在の長期金利は理論値よりもかなり低いところにあることになる。更に、2015年についてこの回帰式①に実質GDP(筆者個人予想)、FF金利誘導目標(同)、長期期待インフレ率(2.2%で推移と想定)を代入すると、2015年末の長期金利は約3.5%と、筆者個人予想とほぼ同じレベルの結果が得られる。

もっともこの推計式①には一つの難点がある。観測期間をFRBの量的緩和以前に限っているため、量的緩和開始後の長期金利の動きをうまく説明できない点である。実際、観測期間を1992年から2014年の92四半期に拡大すると、実質GDP成長率が統計的に有意な変数とならないという不具合が生じる([第1表]の①’)。

そこで、FRBの量的緩和が長期金利に与える影響を考察するために、FRBのバランスシートを外生変数に加えてみる。FRBのバランスシートは、FRB資金循環統計における「通貨当局の金融資産」額を名目GDPで除したものを用いる。FRBバランスシートの対GDP比率は2008年の量的緩和以前は約5%レベルで推移していたが、量的緩和拡大とともに上昇し、2014年に25%を超える水準となった。その後2014年10月に資産購入が停止されたことで、現在この比率は25%レベルで安定推移している([第5図])。今後は名目GDPの拡大に対してFRBバランスシートがほぼ横ばいで推移、また利上げ開始後いずれかの時点で償還金再投資が停止される(2014年9月17日FRBプレスリリース「金融政策正常化の原則と計画」)ことから、この比率は徐々に低下すると考えられる。

[第4図]
20150429図4

[第5図]
20150429図5

FRBバランスシートを決定要因に加えるとほぼ現状金利は適正

成長率、FF金利誘導目標、長期期待インフレ率及びFRBバランスシートの4変数による回帰分析(1992年~2014年の92四半期)の結果が[第1表]の②’である。これによれば、FRBのバランスシート規模は統計的に有意な変数となり、FRBの量的緩和が長期金利抑制要因になっていたことが推測される結果になった。もっともここでもGDP成長率は有意な変数とならない。そこで成長率を除いた3つの変数で回帰を行った結果が[第1表]②である。この回帰式②による2014年までの長期金利の推計結果が[第6図]である。

この回帰式②によれば、現在の長期金利水準は約2%と推計され、現在の実績値に極めて近い結果を表している。また、上記前提に基づく2015年末の長期金利水準は約2.4%と推計される。外生変数にFRBバランスシート規模を加えた推計式の方が当てはまりもよく、現在の金利水準をよく推計している。さらにFRB量的緩和が長期金利を抑制する効果があったことはありそうなことである。

しかし、この回帰式②にも難点がある。実質GDP成長率が長期金利の決定要因から外れるというのは一般的な金利水準決定の論理からはかなり乖離している。また、実際に量的緩和が開始されて以降の期間においてはこの推計値②でも実績値から大幅に乖離する場面がある。ちなみに2008年から2014年までだけの期間を観測期間としてみると、回帰式②は実績長期金利をほとんど説明できていないとの結果になった。

[第6図]
20150429図6

今後は緩和開始以前の回帰式をもとに予想するのが妥当と見たい

さて、回帰式①と回帰式②による今後の長期金利予想の推計値を並べたのが[第7図]である。量的緩和の時期とFRBバランスシート拡大を勘案しない回帰式①による今年末長期金利推計値は3.5%、量的緩和とFRBバランスシートを勘案するが成長率を勘案しない回帰式②による今年末長期金利推計値は2.4%である。1%以上も乖離のあること2つの推計値のいずれをとるべきかは難問であるが、筆者個人は回帰式①の方をとりたい。FRBの量的緩和はそのバランスシート残高によるストック効果で長期金利を押し下げたというよりも、そのアナウンスメント効果がより長期金利を押し下げる効果を示した可能性が高いことが、量的緩和開始後の回帰式の当てはまりの悪さからは憶測できるからである。

従って現在の長期金利水準は成長率・FF金利・長期期待インフレ率を決定要因と見た場合に均衡水準よりも大幅に低い位置にあり、この乖離は資産購入停止により徐々に解消されていくはずだと考えたい。さらにFOMCが9月以降に継続的に利上げを実施すれば、長期金利は3%台に向けて徐々に上昇しているこの見方を維持する。

この見方に対するリスクシナリオは、拡大したFRBのバランスシートのストック効果が長期金利を抑制する効果を維持すること、つまり回帰式②に示されるごとく成長安定を凌駕する量的緩和ストック効果が継続することである。足元の長期金利低位安定はこのリスクが示現する可能性が相応にあることを示唆していると言わざるを得ないものの、いったん利上げが開始されて後は長期国債の流動性が確保されている限り、金利上昇ペースは今の市場期待以上に早いと見ておきたい。

[第7図]
20150429図7

[第1表]
20150429表1

スポンサーサイト

<経済指標コメント> 米3月中古住宅販売は前月比+6.1%

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[米国]

中古住宅販売戸数(3月)は年率5190千戸(前月比+6.1%)、在庫期間は4.6ヶ月

3月の中古住宅販売戸数は年率5190千戸(前月比+6.1%)と2ヶ月連続増加かつ大幅な増加となった。販売戸数は2013年9月以来の高水準。3ヶ月移動平均も4967千戸と5ヶ月ぶりに上昇に転じた。中央販売価格は前年比+7.8%と前月の同+7.2%に続き2ヶ月連続の上昇加速。販売在庫は2000千戸(前月比+5.3%)と2ヶ月連続の増加、結果在庫期間は4.6ヶ月と販売増を反映して低水準ながら前月の4.7ヶ月からわずかな短縮にとどまっている。中古住宅販売は昨年10月をピークに減少傾向が続いていたが、3月の販売増で数字の上ではこれを解消している。天候要因等の一時要因が剥落して本格的な販売増に回帰する兆しである。公表元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「年初の静かなスタートの後、販売活動は全国を通じて大きく拡大」「低金利と雇用市場の安定が消費者信頼感を改善させ、ここ何年かの大きな積み上がり需要の一部がいよいよ顕在化している」と述べている。

20150426図1

新築住宅販売戸数(3月)は年率481千戸(前月比-11.4%)、在庫期間は5.3ヶ月

3月の新築住宅販売戸数は年率481千戸(前月比-11.4%)と4ヶ月ぶりとなる大幅減少。もっとも過去数ヶ月の大幅な増加基調からの一時的な反動減と見られ、6ヶ月移動平均は491.8千戸と4ヶ月連続で上昇している。販売在庫は213千戸(同+1.9%)と増加し、在庫期間は5.3ヶ月と前月の4.6ヶ月から長期化した。住宅市場は中古・新築とも一時要因で振れが大きくなっているが、総じてまだ需給がややタイトであり、供給の増加がむしろ販売増加につながる可能性が高い。中期的には住宅販売は個人所得増加と相対的に低い金利水準を背景に堅調に増加基調を維持すると見る。

20150426図2

耐久財受注(3月)は前月比+4.0%、除く運輸関連は同-0.2%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同-0.5%、同出荷同-0.4%

3月の耐久財受注は前月比+4.0%と強めの伸び。もっとも振れの大きい航空機関連の受注増が主な増加要因で、運輸関連を除くベースでは同-0.2%と減少。民間設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は同-0.5%と実に7ヶ月連続の減少となった。またGDP統計上の民間設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同-0.4%、1-3月期の同出荷は前期比-2.2%のマイナスとなり、1-3月期GDP統計での民間機器投資はマイナス成長となる可能性が高くなった。一方、民間設備投資(構造物投資)の基礎統計となる建設支出(民間非住宅)も2月までで10-12月期を下回る水準となっており、1-3月期GDP統計の民間設備投資は知的財産投資のプラスのみで前期比ほぼ横ばい程度にとどまる可能性がでてきた。1-3月期実質GDP成長率を筆者は前期比年率+1.0%と個人予想しているがこれに対する下方リスクである。企業部門は引き続き指標の軟化が継続しており、西海岸港湾問題など一時要因剥落後も緩やかな拡大に留まると見る。

20150426図3

<経済指標コメント> 米3月小売売上高は前月比+0.9%

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件

[日本]

機械受注(2月、船舶・電力を除く民需)は前月比-0.4%(前年比+5.9%)

2月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-0.4%と前月の同-1.7%に続き2ヶ月連続減少、ただし前年比の伸び率は+5.9%と前月の同+1.9%を上回った。また2月までの1-3月期受注は前期比+3.8%とプラスの伸びを保っている。総じて企業部門の回復は家計消費に比べてまだ遅い。公表元の内閣府は基調判断を「緩やかな持ち直しの動きがみられる」に据え置いている。

20150419図1

[米国]

小売売上高(3月)は前月比+0.9%、除く自動車同+0.4%

3月の小売売上高は前月比+0.9%と4ヶ月ぶりの前月比増加、自動車を除く売上高も同+0.4%と4ヶ月ぶりに増加した。業種別内訳は自動車及び同部品ディーラーが新車販売の増加を反映して同+2.7%と大幅増、家具店(同+1.4%)、建設資材店(同+2.1%)、衣服店(同+1.2%)、百貨店(同+1.4%)などが売上を増加させた。ガソリンスタンドは同-0.6%と、前月の同+2.3%からわずかに減少に転じた。総じて単月では好調な売上増で、年初来の消費低迷が天候要因等の一時要因であったことを示唆する結果だった。しかし過去3ヶ月の減少を回復するには至らず、小売売上高全体の水準はまだ12月の水準を下回っている。GDP統計上の1-3月期の実質個人消費は前期比年率+2%強に減速する(10-12月期は同+4.4%)となると見る当レポートの見方に沿った動きである。

20150419図2

企業在庫(2月)は前月比+0.3%、企業売上高は同横ばい、在庫売上高比率は1.36倍

2月の企業在庫は前月比+0.3%の増加、企業売上高は前月まで4ヶ月連続の減少ののち横ばいとなった。在庫売上高比率は1.36倍と前月比横ばいにとどまったものの依然2009年以来の高水準になっている。企業売上減少により在庫循環は意図せざる在庫増から在庫調整局面に入っている。今年前半は在庫調整が成長を押し下げることになると見る。

20150419図3

鉱工業生産指数(3月)は前月比-0.6%、設備稼働率は78.4%(前月比-0.6%ポイント)

3月の鉱工業生産指数は前月比-0.6%と大幅低下、過去4ヶ月で3回目の低下となっている。内訳は振れの大きい公益事業が同-5.9%と全体を押し下げたほか、エネルギーや商品需給の悪化を反映して鉱業が同-0.7%と3ヶ月連続の低下となった。製造業は同+0.1%と3ヶ月ぶりの小幅上昇。設備稼働率は78.4%(同-0.6%ポイント)と4ヶ月連続の低下で昨年2月以来の低水準。一方自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率11.41百万台(同+6.9%)と4ヶ月ぶり増加に転じた。総じて鉱工業生産は昨年末をピークに低下に転じており、米企業部門の減速を表す他の指標と整合している。背景にはエネルギー価格低下、天候要因、西海岸港湾スト等の一時要因も含まれると考えられ、4月以降は再び生産は増加に転じると見る。

20150419図4

住宅着工戸数(3月)は年率926千戸(前月比+2.0%)、着工許可件数は同1039千件(同-5.7%)

3月の住宅着工戸数は926千戸(前月比+2.0%)と3ヶ月ぶりに増加したものの、過去2ヶ月特に2月の同-15.3%の大幅減をカバーできない低水準にとどまる結果となった。2月の大幅減は一時要因とみていたが、3月の増加幅が+2%にとどまったことは住宅市場が本格的に減速しているリスクをも示唆するものである。結果1-3月期の住宅着工戸数は前期比-8.8%と4四半期ぶりに前期比減少となった。GDP統計上の住宅投資は前期比横ばいを見込んでいるがこれに更に下方リスクが出てきている。住宅着工許可件数は1036千件(同-5.7%)と大幅減、1-3月期は許可件数も前期を下回る結果となった。住宅市場が今後底堅い動きを示すとの見方は不変であるが、2-3月の不振が一時要因かどうかは4月統計を待って見ることにしたい。

20150419図5

消費者物価指数(3月)は前月比+0.2%(前年比-0.1%)、同コア指数は前月比+0.2%(同+1.8%)

3月の消費者物価指数は前月比+0.2%と2ヶ月連続の前月比上昇、ガソリンなどのエネルギーが同+1.1%と2ヶ月連続上昇となったことが指数を押し上げている。前年比では-0.1%と前月の同横ばいからやや伸び率が低下したもののここ2ヶ月間は下げ止まりの兆しが見える。食品及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.2%と堅調な上昇を続けており、前年比では+1.8%と昨年7月以来の伸び率に上昇した。総じてエネルギー価格の下げとまりが総合インフレ率をゼロ近辺で落ち着かせる兆しがあり、またコアインフレ率は総合インフレ率低下にも拘わらず堅調に推移している。

20150419図6

<経済レポート> 9月利上げ開始予想に整合:3月FOMC議事要旨

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
3月分のFOMC議事要旨からは、利上げ開始時期を巡って意見がいくつかに分かれたことが読み取れる。もっとも今年の6月や2016年の利上げ開始を主張する意見は相対的に少数で、当レポートの見る9月利上げ開始に整合する意見が相対的に多数であったと推測できる。9月FOMC会合での利上げ開始、年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%との筆者個人予想を維持する。

FOMC議事要旨は9月利上げ開始シナリオに整合

8日に公表された3月17-18日のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の内容は、筆者個人の修正後の金融政策予想である、9月定例会合での利上げ開始と整合するものであった。

去る3月17-18日の定例FOMC会合声明文では、予想通り従前のフォワードガイダンス「忍耐強くいられる」が削除され、「前回の声明文と整合的に、委員会はFF金利誘導目標レンジの4月FOMC会合での引上げの可能性は依然低いと判断する」「「労働市場の更なる改善が見られ、インフレが2%の中期目標に回帰すると合理的に確信したときに、FF金利誘導目標レンジを引き上げるのが適切と委員会は予想する」に変更された。しかし、あわせて公表されたFOMC委員の経済予測では、2015年の実質GDP成長率予測と適切な政策金利予測が昨年12月予測から大幅に下方シフトした。2015年末のFF金利誘導目標レンジ中心値を0.625%(レンジ0.5%-0.75%に相当)と予測する委員が7名と最も多く、17人の委員の予測中央値も0.625%となった(3月22日付当レポート参照)。

このFOMC委員予測下方シフトと、その後の1-3月期米経済指標の軟化、特に企業設備投資と住宅投資の悪化を背景に、筆者は利上げ開始時期予想を9月定例会合に後倒しし、年末のFF金利誘導目標レンジを0.75-1.00%に引き下げて現在に至っている(4月7日付当レポート参照)。

成長の減速は一時要因:ドル高による輸出減速は継続の可能性

3月FOMC議事要旨の注目ポイントは大きく3点ある。まずFOMCが米経済見通し引下げの背景の議論、次にフォワードガイダンスの変更の議論、最後に利上げの時期についての議論である。以下この3点につき検討を試みる。

まず、経済成長については、個人消費がいくぶん減速しているもののいくらかの参加者は「一部には一部地域の寒波という一時的要因である可能性が高い」とし、またいくらかの参加者は「中期的な個人消費は強い労働市場、所得上昇、資産拡大、家計バランスシート改善、及びガソリン価格低下により支えられる」と見ている。企業部門については、成長が減速しているがこれも「寒波や西海岸の労働争議」などの一時要因と報告されているとされた。原油価格下落はエネルギーセクターの設備投資を抑制しているとされた。製造業は輸出の減速を報告しているものの、非製造業についてはガソリン価格低下などによる消費者の購買力拡大が今後自動車等の小売売上を押し上げるとされている。

なおドル高について、数人の参加者は「米ドルの更なる上昇が米国の純輸出と経済成長を当面の間抑制する可能性が高い」と述べ、また何人かの参加者は「海外中銀の緩和政策行動がさらなる米ドル上昇につながる可能性」を示唆した。

個人消費と設備投資の減速が、悪天候や西海岸問題による一時的なものであるとのFOMC委員の見方は、当レポートの見方とも整合している。特に企業部門については、設備投資の先行指標の悪化で1-3月期はGDP統計上の設備投資がほぼゼロ成長になると筆者は見ている。しかしISM指数によれば、議事録に見られる通り製造業の景況感悪化が目立つものの非製造業は相対的に高水準の景況感である(4月11日付<経済指標コメント>参照)。米国の輸出は昨年9月をピークに伸び率が低下を続けており、同時に輸入の伸びが昨年9月をボトムに上昇に転じている。結果、昨年10-12月期のGDP統計では、実質ベースの財・サービス輸入の伸びが同輸出の伸びを大きく上回り、純輸出が成長率を-1%以上押し下げた。1-3月期においてもこの傾向は不変で、筆者個人は純輸出が1-3月期成長率を約-0.5%押し下げると見ている。筆者個人は1-3月期の成長率が、主に設備投資の減速により1-3月期に前期比年率+1%に減速するものの、その後は2-3%成長に回帰すると見ている。

新たなフォワードガイダンスは金融政策の「柔軟性」を確保するもの

次にフォワードガイダンス変更に関する議論を見る。ほとんどすべての参加者は「委員会が金融政策正常化開始に忍耐強くいられるとの示唆を声明文から削除すること」を選好した。これらの参加者は「会合毎にFF金利誘導目標レンジを調整する柔軟性を委員会に付与する」文言を選好したとされた。また、総じて参加者は「利上げの適正な時期は、労働市場の更なる改善についての評価と、インフレが委員会の2%目標に中期的に回帰するとの確信の程度」に依存するとし、金融政策がデータ依存であることを市場に伝えるのがよいとした。この議論の結果、3月声明文のフォワードガイダンスは上記の通り、労働市場の改善ならびにインフレ率上昇に対する合理的確信を条件としたものになった。

議事要旨において、新たなフォワードガイダンスが金融政策の「柔軟性」を確保するとの参加者の意向が示されている。これは、新たなフォワードガイダンスが金融政策の「フリーハンド」を残そうとするものと見る当レポートの見方と整合している。利上げ時期のみならず、利上げペースを「会合毎に(meeting-by-meeting basis)」決定するフリーハンドは特にハト派の委員にとっては重要なことであろう。

筆者個人は、金融政策の柔軟性はむしろ利上げ開始時期について適用されるもので、現実には利上げは市場の期待が形成しやすい一定のペースで実施されるのが委員会の信認の観点からは望ましいと考える。議事録によれば多くの参加者は「金融政策正常化開始後に委員会の金融政策戦略について追加的情報を市場に提供するのが望ましい」と述べている。現実にはFOMCは会合毎に一定のペースで利上げを継続することで市場の期待形成を容易にするものと個人的に予想し、9月利上げ開始後会合毎に0.25%のペースで利上げが継続されると考えている。

FOMC参加者の相対的多数は年後半の利上げ開始可能性を示唆

最後に、利上げ開始時期に関する議論を見る。「(委員会が)いかにしてインフレ見通しを評価し、いつ金融緩和政策解除開始を適切と見做すか」について参加者は「広範囲な見方を示した」、つまり利上げ開始時期については意見が分かれたとされた。「金融政策正常化はコアインフレ率の上昇や賃金インフレが観察される以前に」実施しうるとされ、「労働市場の更なる改善、原油価格の安定、米ドル為替レートのピークアウト」が有用な指標とされた。ここで、数人の(several)参加者は「経済データと見通しは6月会合での金融正常化開始を正当化する可能性が高いと判断」した。しかし、他の参加者(others)は「原油価格下落とドル上昇の効果は短期的にはインフレの重石となり続け、年後半まで利上げ開始は適切とならない可能性が高い」と予想した。また2-3人の(a couple of)参加者は「経済見通しは利上げを2016年まで正当化しない」ことを示唆した、とされた。

この議論からは次のことが読み取れる。6月利上げを主張する参加者は数人にとどまり、他の(過半数の)参加者は利上げ開始が年後半になると見ていること。もっとも利上げ開始はインフレ率実績が上昇するまでまつ必要はなく、労働市場の改善、原油価格の安定、米ドルレートのピークアウトをもって先行指標とし得ること、である。

利上げ開始時期が年後半になるとの見方がFOMC内で優勢であることは、利上げ開始時期を9月とする当レポートの見方に整合している。また、労働市場、原油価格、米ドルを先行指標としてみた場合、これも9月利上げ開始を支持する材料になる可能性が高いと見る。労働市場は引き続き堅調に拡大している。1月の非農業部門雇用者数は前月比+126千人の増加にとどまったが、これは統計上の一時要因と見るのが自然である。原油価格は今年に入りWTI原油先物が50ドル/バレル割れを何度か試したものの現在では50ドル台を回復しており、昨年からの急激な下げは少なくとも解消している。為替は依然値動きが大きいものの、ECBの金融緩和政策の方向性が明らかになった時期からむしろドル高は一服している。FRBの公表する貿易加重平均米ドルレート(広域通貨)は3月半ばをピークにいったん下降に転じる兆しが見られる。なお、経済成長については、1-3月期に減速ののち、4-6月期以降は2-3%成長に回帰すると筆者個人は見ており、4-6月期のGDP統計確報と7-9月期の基礎統計の途中経過が基礎統計で判明する9月定例会合は、利上げ判断にも適切な時期といえるだろう。テイラー・ルールに基づく適切な政策金利推計値が9月利上げ開始と年末FF金利誘導目標0.75-1.00%を概ね正当化することは4月7日付当レポートで見た通りである。以上より、9月FOMC会合での利上げ開始、年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%との筆者個人予想を維持する。


<経済指標コメント> 日本の3月景気ウォッチャー調査(現状判断DI)は前月比+2.1ポイント

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[日本]

景気ウォッチャー調査(3月):現状判断DIは52.2(前月比+2.1ポイント)、先行き判断DIは53.4(同+0.4ポイント)

3月の内閣府景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは52.2(前月比+2.1ポイント)と4ヶ月連続の上昇かつ2ヶ月連続で横ばいを示す50を上回った。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは53.4(同+0.2ポイント)とこれも4ヶ月連続の上昇かつ2ヶ月連続で50を上回った。景気ウォッチャー調査の回復は実質GDPのプラス転化にくらべて四半期ほど遅れている。また3月29日付<経済レポート>でみたように日本のGDPはまだトレンドから大幅下方乖離している。しかしながら景気ウォッチャー調査の改善は、景気回復がようやく街角にも浸透しつつあることの証左といえる。

20150411図1

[米国]

ISM非製造業指数(3月)は56.5%(前月比-0.4%ポイント)

3月のISM非製造業指数は56.5%(前月比-0.4%ポイント)と3ヶ月ぶりに小幅低下した。総合DIを構成する4つのDIの内訳は事業活動57.5%(同-1.9)、新規受注57.8%(同+1.1)、雇用56.6%(同+0.2)、入荷遅延54.0%(同-1.0)とまちまち。総合DIは小幅低下したものの3ヶ月移動平均は56.7と3ヶ月連続横ばいで相対的に高水準を保っている。製造業の景況感の悪化に比べて非製造業の景況感は好調である。調査対象のコメントには原油価格低下によるコスト低下を好材料として挙げるものが複数みられるなど、総合的に原油安は米経済にプラスの影響をもたらしていることを支持する内容となっている。1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+1%程度の伸びに減速したと見るが(4月7日付<経済レポート>参照)、その後は2~3%レベルの成長に回帰するとの当レポートの見方に整合する結果である。

20150411図2


<経済レポート> 成長一時減速、利上げ後倒しへ:米国経済定点観測

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
1-3月期の米経済成長率は従前の筆者個人予想を大きく下回るペースに減速した可能性が高い。個人消費は物価下落のメリットをとって堅調と見るが、企業部門の設備投資と在庫投資ならびに住宅投資が1-3月期にはほぼゼロ成長に留まる可能性が高い。またインフレ率も従前の筆者個人予想を下回る水準にとどまっている。成長率についての個人予想を下方修正し、合わせてFOMCの金融政策についても利上げ開始時期を後倒し方向に予想を修正する。

米成長率と金融政策の個人予想を下方修正する:今年の成長は2%半ば

米経済は、2014年4-6月期、7-9月期の2四半期連続で前期比年率4%を超える成長加速を見せたのち、10-12月期には+2.2%成長に減速した。ここまでなら高成長の反動という循環的要因による減速と見ることができる。また、西海岸の港湾問題や悪天候などの一時要因も昨年末にかけての成長減速の背景だった模様だ。

しかし一方で、原油価格下落による物価低下のメリットがあまり個人消費の拡大という形で示現していない。また、FRBの利上げ期待によるドル高は純輸出のマイナス幅拡大という形で成長にマイナスの寄与をしているが、輸入増加や個人消費加速という形では表れていない。一方で、企業部門において景況感や生産の減速が顕著になってきている。

これらを合わせて、筆者個人の米経済成長率予想を下方修正し、2015年通年成長率予想を前年比+2.8%とする(1月7日付当レポートにおける従前予想は同+3.3%)。特に直近の指標から減速が顕著な1-3月期を同+1.0%と大幅に引き下げた。しかしその後はインフレ率低下のメリットをとった個人消費が2%台の拡大を継続しGDP全体は2.5~3.5%レベルの成長を続けると見る([第1図])。またFRBの金融政策については、従前の6月利上げ開始予想を後倒しし、9月定例会合で利上げ開始決定、年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%を新たな個人予想とする(従前予想は1.25-1.50%)。以下ではGDPの各需要項目及び物価動向を点検していく。

[第1図]
20150407図1

物価下落と金利抑制は個人消費を回復させる

実質個人消費は2月に前月比-0.1%と10ヶ月ぶりの前月比マイナス成長となった。ガソリン価格の大幅低下にも拘わらず、実質個人消費の拡大ペースは思いのほか伸び悩んでいる(4月5日付<経済指標コメント>参照)。このペースだと3月の実質個人消費が前月比+0.4%の強い伸びを示さない限り、1-3月期の実質個人消費は前期比年率で2%を下回る計算になる。幸いにも3月には新車販売台数が年率17百万台に増加しており、耐久消費財の実質消費は強めの伸びに回帰しそうである。ついては1-3月期実質個人消費の前期比年率+2%強の個人予想は維持することとする。ただし3月に雇用拡大ペースが大幅に減速していることはこれに対する下方リスク要因である。

中期的には個人消費は平均2%強の成長を今年一杯継続できると見る。一つの理由は物価下落による実質所得の増加である。個人所得統計によれば、実質ベース可処分所得は原油価格下落が始まった昨年第4四半期から増加ペースが加速し、2月現在では前年比+4.0%の伸びになっている。これに対し、実質個人消費の拡大ペースは遅く、2月現在で同+3.0%にとどまっている([第2図])。これに伴い、昨年11月に4.4%だった貯蓄率は2月現在で5.8%にまで上昇している。つまり消費者はガソリン等消費者物価下落で余ったお金を現在は貯蓄に回しているということである。しかしながら、消費者センチメントが依然高い水準にあることに鑑みればこの貯蓄は再び消費に回される可能性が高い。ミシガン大学消費者センチメント指数はリーマンショック前の2007年以来の90ポイント台の高水準にある。主に「暮らし向き」についての調査である同指数は、過去約半年の間実質時間当たり賃金上昇とともに上昇してきた([第3図])。この高水準の消費者センチメントが維持できれば、いずれ個人消費はインフレ低下のメリットを生かす形で加速するだろう。

従前筆者個人は年後半の個人消費が利上げによる金利上昇を主因に減速するとみてきた(2014年12月14日付当レポート参照)。しかし今や、インフレ率の低下が消費を当時の想定以上に押し上げる可能性が高く、「インフレ率1%の低下は個人消費を+0.3%押し上げる」との筆者推計(1月12日付当レポート参照)が今後やや遅れて示現すると見る。また、金利上昇による個人消費へのマイナス影響は、のちの述べるように金利上昇ペースが当時の想定よりも遅くなると見る。結果、個人消費については従前の個人予想である年後半の消費減速からやや上方修正し、今年一杯は各四半期に前期比年率約2%強の成長を維持すると見る。

[第2図]
20150407図2

[第3図]
20150407図3

生産軟化の目立つ企業部門を下方修正する

従前予想比大幅に下方修正が必要になるのが設備投資である。総じて企業部門は景況感、生産量ともに精彩を欠く。主要な企業景況感指数は昨年後半をピークに大きく低下する傾向が続いている([第4図])。直近で、は3月ISM製造業指数が51.5%と2013年5月以来の低水準、かつ景気判断の分かれ目を示す50%に近いレベルに低下した。企業景況感の悪化の背景には、西海岸港湾のストライキや悪天候などの一時要因があることが調査結果からわかる。しかし約半年以上にわたる景況感指数の継続的な低下の理由はこれらの一時要因のみとは考えにくい。

実体経済面でも、GDP統計上の機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は、2月までで前期比年率-1.3%と2四半期連続でマイナスの伸びとなっている。GDP統計上の機器投資は1-3月期にほぼゼロ成長かまたはマイナス成長に転化する可能性が高い。先行指標となる同受注も昨年末をピークに急激に伸びを低下させている([第5図])。機器投資のみならず建物等の構造物投資も減速している。建設支出統計によれば、1月の民間非住宅建設支出は10-12月期平均を下回っており、このペースだと構造物投資も1-3月期はほぼゼロ成長かマイナスの伸びに転化する可能性が高い。

以上より、1-3月期のGDP統計上の設備投資を前期比年率+3%程度の低成長(知的財産投資の増加勘案後)に下方修正する。今後を展望しても設備投資の加速は見込みにくい。企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は昨年10-12月期に前年同期比-0.2%のマイナスの伸びに減速した。内訳を見ると、国内非金融機関が同+7.8%の増益なのに対し、海外部門が同-11.6%と大幅な減益に転化しているのが目立つ。海外収益の減少はドル高による収益目減りである可能性がある。ドル高が企業収益にマイナスの影響を与えているとすれば、今後もこの影響は継続する可能性が高い。

[第4図]
20150407図4

[第5図]
20150407図5

[第6図]
20150407図6

在庫調整は想定よりも長期化、ドル高で貿易赤字は拡大の見込み

住宅投資も1-3月期は前期比ほぼゼロ成長にとどまりそうだ。住宅着工戸数は2月に前月比-17.0%と大幅に減少し、このペースだと1-3月期のGDP統計上の住宅投資は4四半期ぶりの前期比マイナスの伸びになる計算になる。もっともこの単月の大幅減少は統計のブレまたは天候等一時要因である可能性が高く、また着工許可件数が着工戸数に比べて安定的に増加していることからは、いずれ住宅着工も巡航速度に戻る可能性が高い。ただ1-3月期についてはGDP統計上の住宅投資をほぼゼロ成長に下方修正せざるを得ない。

在庫調整は従前の想定よりも深くなる可能性が高くなった。在庫循環図によれば企業売上の減少により、在庫は「在庫調整」局面に入っている([第7図])。従前は年後半からの在庫積み増し局面入りを想定していたが、在庫調整はこの想定よりも長引く可能性が今や高いと見る。ついては在庫投資については年後半部分の予想を下方修正する。最後に、貿易収支赤字も財・サービス輸出の減速で拡大し、純輸出は成長に対しマイナスの寄与を今年一杯は継続するとの見方を維持する。

以上より、1-3月期成長率を主に設備投資と住宅投資の下方改訂により前期比年率+1.0%に大幅下方修正する。4-6月期以降については個人消費をインフレ率低下と金利影響の緩和により上方修正、在庫投資は在庫調整の長期化を見込んで下方修正する。結果2015年通年の成長率は前年比+2.6%と、12月に見ていた3%成長を下回る成長率に留まるとする

[第7図]
20150407図7

利上げ個人予想を9月に後倒し修正

物価と金融政策については、原油価格の下落と上記の成長予想下方修正からいずれも下方修正せざるを得ない。まず物価について、FOMCが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は2月時点で前年比+0.3%にまで低下した。これはFOMC委員の1月時点の経済予測の中央値である同+0.7%をまだ大幅に下回っている。相対的に安定しているコアPCEデフレータは前年比+1.4%の水準にある。筆者はコアPCEインフレ率が需給ギャップとインフレ期待から推計される同+1.7%に回帰すると見てきたが、現状ではまだその水準とは相応の乖離がある。原油価格及びガソリン価格は3月にかけ一旦下げ止まりの兆しが見られるため、インフレ率のこれ以上の低下の可能性は低いと見るものの、従前の筆者の見通しに比べて下振れしていると言わざるを得ない。

次に金融政策について、従前は、6月のFOMC定例会合での利上げ開始決定及びその後定例会合毎に0.25%の利上げを見込んで、2015年末のFF金利誘導目標レンジを1.25-1.50%と予想していた。しかし、成長予想の下方修正とインフレ率の低下により、この利上げはもはや正当化されないと言わざるを得ない。PCEインフレ率を+0.7%として、新たな筆者の成長率予想を用いて、テイラー・ルールによる適正な政策金利水準を改めて推計してみると、6月の利上げ開始はもはや正当化されず、年末においても約0.7%の政策金利水準が正当化されるのみである([第8図])。またFF金利先物に見られる市場の利上げ予想も6月利上げの織り込み度合はほぼなくなっており、慎重利上げへのFOMCのスタンス変化(3月FOMC会合後に公表されたFOMC委員経済予測での利上げ予測の後倒しシフト)もほぼ市場にも織り込まれている。そこで、従前の筆者個人の金融政策予想を修正し、利上げ開始決定時期予想を9月のFOMC定例会合に後倒しし、その後10月、12月定例会合でそれぞれ0.25%の利上げが決定されるとして、年末のFF金利誘導目標レンジ予想を0.75-1.00%とする。

この新たな個人予想に対するリスクは下方と言わざるを得ない。まず成長率については、設備投資と住宅投資の下振れリスクがあり、1-3月期の成長率が1%を下回るリスクが依然残っている。また、消費者センチメント指数は高水準にあるとはいえ2-3月に2ヶ月連続で低下している。3月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比+126千人増加にとどまった。この単月の雇用減速が天候等の一時要因でなかった場合、今後実質可処分所得の拡大ペースが減速することになる。だが、それでもなお2%台の成長率は米国の潜在成長率を上回るペースの成長である。過度は悲観には及ばない状況と見ておきたい。

なお、筆者個人の修正後の経済・金融予想を[第1表]にかかげる。

[第8図]
20150407図8

[第1表]
20150407表1

<経済指標コメント> 米3月非農業部門雇用者数は前月比+126千人

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[日本]

鉱工業生産指数(2月)は前月比-3.4%

2月の鉱工業生産指数は前月比-3.4%と、前月の同+3.7%をほぼ打ち消す低下。ただし3ヶ月移動平均は6ヶ月連続で上昇しており、経済産業省の基調判断の通り生産は「緩やかな持ち直しの動き」といってよい。出荷指数は同-3.4%とこれも前月の同+5.6%から反落。在庫指数は同+0.5%、在庫率指数は同+4.3%と出荷減を反映して上昇した。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷指数は同-6.6%と前月の同+8.8%から反落した。2月までの1-3月期資本財出荷は前期比+2.6%と3四半期連続のプラスの伸びを維持するペースであり、GDP統計上の企業設備投資は1-3月期に4四半期ぶりのプラス成長になる可能性が高い。企業部門は引き続き緩やかながら堅調な拡大を続けているといえる。

20150405図1

住宅着工戸数(2月)は前月比+4.7%

2月の住宅着工戸数は67552戸(前年比-3.1%)と昨年3月以来12ヶ月連続の前年比マイナスの伸び。しかし季節調整済年率では905千戸(前月比+4.7%)とやや強めの伸びとなり、昨年4月以来の900千戸台に回復した。住宅着工は引き続き低迷を続けているが、消費税率引上げ後の反動減からは底入れの兆しが見られる。なお、2月までの1-3月期住宅着工戸数は前期比+0.5%と2四半期連続のプラス成長となっており、GDP統計上の住宅投資も1-3月期に4四半期ぶりのプラス成長に回復する可能性が高くなってきた。

20150405図2

日銀短観(3月調査):大企業製造業業況判断DIは12ポイント(12月調査比横ばい)、大企業非製造業は19ポイント(同+3ポイント)

日銀短観(3月調査)、大企業製造業の業況判断(最近)DIは12ポイント(12月調査比横ばい)と、ここ4四半期の間ほぼ横ばいの動きとなった。非製造業の業況判断DI(最近)は19ポイント(同+3ポイント)と2四半期連続上昇した。しかしいずれも直近のピークである昨年3月調査時(消費税率引上げ直前)の水準には回復していない。先行き判断DIは大企業製造業が10ポイント、大企業非製造業が17ポイントといずれも業況判断DI(最近)を下回っている。企業の生産は緩やかな回復基調にあるものの、短観結果から見る限りは加速の兆しは見られないといえる。

20150405図3

[米国]

実質個人消費(2月)は前月比-0.1%、PCEデフレーターは前年比+0.3%、同コアは同+1.4%

2月の実質個人消費は前月比-0.1%と昨年4月以来の前月比マイナスの伸びとなった。内訳は耐久財消費が自動車販売減少を反映して同-1.1%の大幅減、非耐久財消費は同横ばい、サービス消費も同+0.1%にとどまった。2月の名目ベースの小売売上高(自動車・ガソリン・レストランを除く)が同-0.2%と減少したものの物価下落で実質個人消費はプラスとみていたが、サービス消費の伸び悩みが自動車販売の減少をカバーできなかった形。1-3月期の実質個人消費は前期比年率+2%台半ばを見込んでいたが、これが同2%割れになる下方リスクがでてきた。FOMCが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.2%(前年比+0.3%)と、ガソリン価格の底入れを反映してやや持ち直し、食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは前月比+0.1%(前年比+1.4%)と堅調に推移している。

20150405図4

ISM製造業指数(3月)は51.5%(前月比-1.4%ポイント)

3月ISM製造業指数は51.5%(前月比-1.4%ポイント)と5ヶ月連続の低下、2013年5月以来2年弱ぶりの低水準となった。総合DIを構成する5つのDIの内訳は新規受注51.8%(同-0.7)、生産53.8%(同+0.1)、雇用50.0%(同-1.4%)、入荷遅延50.5%(同-3.8%)、在庫51.5%(同-1.0)と、生産DIのわずかな上昇を除きすべてのDIが低下した。特に先行性のある新規受注DIが5ヶ月連続低下しているのは、景気の先行きに下方リスクがあることを示唆している。西海岸港湾問題や天候など一時要因もあるとはいえ、経済指標全体の軟化と企業景況感の悪化は整合している。

20150405図5

新車販売台数(3月)は年率17.1百万台(前月比+0.9%)

3月の新車販売台数は年率17.1百万台(前月比+0.9%)と4ヶ月ぶりの前月比増加かつ4ヶ月ぶりに年率17百万台を回復した。低金利とガソリン価格下落が自動車販売の追い風となっていると考えられ、軟化する個人消費指標の中で一つの朗報である。

20150405図6

雇用統計(3月):非農業部門雇用者数は前月比+126千人、失業率は5.5%(前月比横ばい)

3月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+126千人にとどまり、2013年12月以来の低い伸びとなる下方サプライズであった。また過去1月、2月分いずれも下方改訂された。3月の内訳は民間部門同+129千人、政府部門同-3千人。雇用の伸びを減速させた主な業種は鉱業及び材木業同-11千人(前月同-11千人)、建設業同-1千人(同+29千人)、娯楽及び宿泊業同+13千人(同+70千人)で、いずれも天候の影響を受けやすいか振れの大きい業種であり、3月単月の雇用減速は一時要因ともいえる。しかし他の経済指標の軟化と整合する雇用減速は米経済見通しに対する下方リスクである。家計調査による失業率は5.5%と前月比横ばい。内訳は就業者増加と失業者減少を伴う良い内容である。しかし労働力人口は2ヶ月連続で前月比減少しており、労働参加率は62.7%(前月比-0.1%)と低下基調が続いている。時間当たり賃金は前年比+1.8%と前月並みの相対的に低い伸び。単月の雇用拡大ペース大幅減のみでは労働市場の変調と見るのは尚早であり、これまで強い雇用者数増の反動とも考えられる。新規失業保険申請件数が低位にとどまっている(3月28日〆週の4週移動平均は285.5千件)ことも、労働市場が堅調な拡大を示していることを示唆している。ただし他の経済指標の軟化と合わせると米経済成長見通しには下方リスクの兆しがあると見ざるを得ない。

20150405図7