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<経済レポート> 成長一時減速、利上げ後倒しへ:米国経済定点観測

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1-3月期の米経済成長率は従前の筆者個人予想を大きく下回るペースに減速した可能性が高い。個人消費は物価下落のメリットをとって堅調と見るが、企業部門の設備投資と在庫投資ならびに住宅投資が1-3月期にはほぼゼロ成長に留まる可能性が高い。またインフレ率も従前の筆者個人予想を下回る水準にとどまっている。成長率についての個人予想を下方修正し、合わせてFOMCの金融政策についても利上げ開始時期を後倒し方向に予想を修正する。

米成長率と金融政策の個人予想を下方修正する:今年の成長は2%半ば

米経済は、2014年4-6月期、7-9月期の2四半期連続で前期比年率4%を超える成長加速を見せたのち、10-12月期には+2.2%成長に減速した。ここまでなら高成長の反動という循環的要因による減速と見ることができる。また、西海岸の港湾問題や悪天候などの一時要因も昨年末にかけての成長減速の背景だった模様だ。

しかし一方で、原油価格下落による物価低下のメリットがあまり個人消費の拡大という形で示現していない。また、FRBの利上げ期待によるドル高は純輸出のマイナス幅拡大という形で成長にマイナスの寄与をしているが、輸入増加や個人消費加速という形では表れていない。一方で、企業部門において景況感や生産の減速が顕著になってきている。

これらを合わせて、筆者個人の米経済成長率予想を下方修正し、2015年通年成長率予想を前年比+2.8%とする(1月7日付当レポートにおける従前予想は同+3.3%)。特に直近の指標から減速が顕著な1-3月期を同+1.0%と大幅に引き下げた。しかしその後はインフレ率低下のメリットをとった個人消費が2%台の拡大を継続しGDP全体は2.5~3.5%レベルの成長を続けると見る([第1図])。またFRBの金融政策については、従前の6月利上げ開始予想を後倒しし、9月定例会合で利上げ開始決定、年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%を新たな個人予想とする(従前予想は1.25-1.50%)。以下ではGDPの各需要項目及び物価動向を点検していく。

[第1図]
20150407図1

物価下落と金利抑制は個人消費を回復させる

実質個人消費は2月に前月比-0.1%と10ヶ月ぶりの前月比マイナス成長となった。ガソリン価格の大幅低下にも拘わらず、実質個人消費の拡大ペースは思いのほか伸び悩んでいる(4月5日付<経済指標コメント>参照)。このペースだと3月の実質個人消費が前月比+0.4%の強い伸びを示さない限り、1-3月期の実質個人消費は前期比年率で2%を下回る計算になる。幸いにも3月には新車販売台数が年率17百万台に増加しており、耐久消費財の実質消費は強めの伸びに回帰しそうである。ついては1-3月期実質個人消費の前期比年率+2%強の個人予想は維持することとする。ただし3月に雇用拡大ペースが大幅に減速していることはこれに対する下方リスク要因である。

中期的には個人消費は平均2%強の成長を今年一杯継続できると見る。一つの理由は物価下落による実質所得の増加である。個人所得統計によれば、実質ベース可処分所得は原油価格下落が始まった昨年第4四半期から増加ペースが加速し、2月現在では前年比+4.0%の伸びになっている。これに対し、実質個人消費の拡大ペースは遅く、2月現在で同+3.0%にとどまっている([第2図])。これに伴い、昨年11月に4.4%だった貯蓄率は2月現在で5.8%にまで上昇している。つまり消費者はガソリン等消費者物価下落で余ったお金を現在は貯蓄に回しているということである。しかしながら、消費者センチメントが依然高い水準にあることに鑑みればこの貯蓄は再び消費に回される可能性が高い。ミシガン大学消費者センチメント指数はリーマンショック前の2007年以来の90ポイント台の高水準にある。主に「暮らし向き」についての調査である同指数は、過去約半年の間実質時間当たり賃金上昇とともに上昇してきた([第3図])。この高水準の消費者センチメントが維持できれば、いずれ個人消費はインフレ低下のメリットを生かす形で加速するだろう。

従前筆者個人は年後半の個人消費が利上げによる金利上昇を主因に減速するとみてきた(2014年12月14日付当レポート参照)。しかし今や、インフレ率の低下が消費を当時の想定以上に押し上げる可能性が高く、「インフレ率1%の低下は個人消費を+0.3%押し上げる」との筆者推計(1月12日付当レポート参照)が今後やや遅れて示現すると見る。また、金利上昇による個人消費へのマイナス影響は、のちの述べるように金利上昇ペースが当時の想定よりも遅くなると見る。結果、個人消費については従前の個人予想である年後半の消費減速からやや上方修正し、今年一杯は各四半期に前期比年率約2%強の成長を維持すると見る。

[第2図]
20150407図2

[第3図]
20150407図3

生産軟化の目立つ企業部門を下方修正する

従前予想比大幅に下方修正が必要になるのが設備投資である。総じて企業部門は景況感、生産量ともに精彩を欠く。主要な企業景況感指数は昨年後半をピークに大きく低下する傾向が続いている([第4図])。直近で、は3月ISM製造業指数が51.5%と2013年5月以来の低水準、かつ景気判断の分かれ目を示す50%に近いレベルに低下した。企業景況感の悪化の背景には、西海岸港湾のストライキや悪天候などの一時要因があることが調査結果からわかる。しかし約半年以上にわたる景況感指数の継続的な低下の理由はこれらの一時要因のみとは考えにくい。

実体経済面でも、GDP統計上の機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は、2月までで前期比年率-1.3%と2四半期連続でマイナスの伸びとなっている。GDP統計上の機器投資は1-3月期にほぼゼロ成長かまたはマイナス成長に転化する可能性が高い。先行指標となる同受注も昨年末をピークに急激に伸びを低下させている([第5図])。機器投資のみならず建物等の構造物投資も減速している。建設支出統計によれば、1月の民間非住宅建設支出は10-12月期平均を下回っており、このペースだと構造物投資も1-3月期はほぼゼロ成長かマイナスの伸びに転化する可能性が高い。

以上より、1-3月期のGDP統計上の設備投資を前期比年率+3%程度の低成長(知的財産投資の増加勘案後)に下方修正する。今後を展望しても設備投資の加速は見込みにくい。企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は昨年10-12月期に前年同期比-0.2%のマイナスの伸びに減速した。内訳を見ると、国内非金融機関が同+7.8%の増益なのに対し、海外部門が同-11.6%と大幅な減益に転化しているのが目立つ。海外収益の減少はドル高による収益目減りである可能性がある。ドル高が企業収益にマイナスの影響を与えているとすれば、今後もこの影響は継続する可能性が高い。

[第4図]
20150407図4

[第5図]
20150407図5

[第6図]
20150407図6

在庫調整は想定よりも長期化、ドル高で貿易赤字は拡大の見込み

住宅投資も1-3月期は前期比ほぼゼロ成長にとどまりそうだ。住宅着工戸数は2月に前月比-17.0%と大幅に減少し、このペースだと1-3月期のGDP統計上の住宅投資は4四半期ぶりの前期比マイナスの伸びになる計算になる。もっともこの単月の大幅減少は統計のブレまたは天候等一時要因である可能性が高く、また着工許可件数が着工戸数に比べて安定的に増加していることからは、いずれ住宅着工も巡航速度に戻る可能性が高い。ただ1-3月期についてはGDP統計上の住宅投資をほぼゼロ成長に下方修正せざるを得ない。

在庫調整は従前の想定よりも深くなる可能性が高くなった。在庫循環図によれば企業売上の減少により、在庫は「在庫調整」局面に入っている([第7図])。従前は年後半からの在庫積み増し局面入りを想定していたが、在庫調整はこの想定よりも長引く可能性が今や高いと見る。ついては在庫投資については年後半部分の予想を下方修正する。最後に、貿易収支赤字も財・サービス輸出の減速で拡大し、純輸出は成長に対しマイナスの寄与を今年一杯は継続するとの見方を維持する。

以上より、1-3月期成長率を主に設備投資と住宅投資の下方改訂により前期比年率+1.0%に大幅下方修正する。4-6月期以降については個人消費をインフレ率低下と金利影響の緩和により上方修正、在庫投資は在庫調整の長期化を見込んで下方修正する。結果2015年通年の成長率は前年比+2.6%と、12月に見ていた3%成長を下回る成長率に留まるとする

[第7図]
20150407図7

利上げ個人予想を9月に後倒し修正

物価と金融政策については、原油価格の下落と上記の成長予想下方修正からいずれも下方修正せざるを得ない。まず物価について、FOMCが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は2月時点で前年比+0.3%にまで低下した。これはFOMC委員の1月時点の経済予測の中央値である同+0.7%をまだ大幅に下回っている。相対的に安定しているコアPCEデフレータは前年比+1.4%の水準にある。筆者はコアPCEインフレ率が需給ギャップとインフレ期待から推計される同+1.7%に回帰すると見てきたが、現状ではまだその水準とは相応の乖離がある。原油価格及びガソリン価格は3月にかけ一旦下げ止まりの兆しが見られるため、インフレ率のこれ以上の低下の可能性は低いと見るものの、従前の筆者の見通しに比べて下振れしていると言わざるを得ない。

次に金融政策について、従前は、6月のFOMC定例会合での利上げ開始決定及びその後定例会合毎に0.25%の利上げを見込んで、2015年末のFF金利誘導目標レンジを1.25-1.50%と予想していた。しかし、成長予想の下方修正とインフレ率の低下により、この利上げはもはや正当化されないと言わざるを得ない。PCEインフレ率を+0.7%として、新たな筆者の成長率予想を用いて、テイラー・ルールによる適正な政策金利水準を改めて推計してみると、6月の利上げ開始はもはや正当化されず、年末においても約0.7%の政策金利水準が正当化されるのみである([第8図])。またFF金利先物に見られる市場の利上げ予想も6月利上げの織り込み度合はほぼなくなっており、慎重利上げへのFOMCのスタンス変化(3月FOMC会合後に公表されたFOMC委員経済予測での利上げ予測の後倒しシフト)もほぼ市場にも織り込まれている。そこで、従前の筆者個人の金融政策予想を修正し、利上げ開始決定時期予想を9月のFOMC定例会合に後倒しし、その後10月、12月定例会合でそれぞれ0.25%の利上げが決定されるとして、年末のFF金利誘導目標レンジ予想を0.75-1.00%とする。

この新たな個人予想に対するリスクは下方と言わざるを得ない。まず成長率については、設備投資と住宅投資の下振れリスクがあり、1-3月期の成長率が1%を下回るリスクが依然残っている。また、消費者センチメント指数は高水準にあるとはいえ2-3月に2ヶ月連続で低下している。3月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比+126千人増加にとどまった。この単月の雇用減速が天候等の一時要因でなかった場合、今後実質可処分所得の拡大ペースが減速することになる。だが、それでもなお2%台の成長率は米国の潜在成長率を上回るペースの成長である。過度は悲観には及ばない状況と見ておきたい。

なお、筆者個人の修正後の経済・金融予想を[第1表]にかかげる。

[第8図]
20150407図8

[第1表]
20150407表1

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