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<経済レポート> 跳ぶ前に見る:米経済定点観測

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1-3月期のソフトパッチののち、米経済は4-6月期には3%前後の強い回復に回帰した模様だ。今後も個人消費の加速が成長を牽引、設備投資も緩やかながら回復を続け、2015年通年成長率は2%前半と個人予想する。インフレ率も原油価格下落一服で今年末に1%弱、来年末には2%への回帰が見込めることもあり、FOMCは9月に利上げ開始を決定するとの個人予想は維持する。もっともその後の利上げペースについてはこれを大幅下方修正し、利上げは1定例会合おきに0.25%とのペースに留まるとの見方に修正する。

個人消費の再加速で4-6月期は3%成長を見込む

1-3月期成長率がマイナスに終わったことから、2015年通年の成長ペースは筆者個人の4月時点の予想(4月7日付当レポート参照)に比べてやや下振れして推移している。1-3月期のマイナス成長(前期比年率-0.2%)による下振れを反映して、2015年通年の成長率予想を前年比+2.3%に下方修正する(4月時点予想は同+2.6%)。しかしながら、米経済は総じて1-3月期のソフトパッチから脱却して巡航速度の成長ペースを取り戻しつつある。4-6月期の実質GDP成長率は、以下に見るように前期比年率+3.0%の強い伸びを回復すると予想する。年後半は四半期毎に2~3%の成長ペースを維持するだろう。以下需要項目毎に、4-6月期の成長率予想を中心に今後の米経済を占うこととする。

個人消費は4-6月期に大幅に成長ペースを回復したと見る。5月に小売売上高は前月比+1.2%と大幅に増加し、自動車販売も年率17百万台台に急増した。実質個人消費は5月に前月比+0.6%と大幅な伸びを示した。これは、1-3月期の個人消費の減速が天候要因等の一時要因、ならびに昨年末の急激な成長からの反動に過ぎないとの見方に沿った動きである。6月についても個人消費は堅調な伸びが期待できる。6月ミシガン大学消費者センチメント指数は今年に入り低下傾向にあったが、6月に96.1ポイント(前月比6.0ポイント)と今年1月以来の水準に回復した([第1図])。最近の同指数は個人の実質可処分所得の伸び率との相関がみられる。同指数の6月の上伸は6月にも雇用が拡大して個人の購買力が増加していることを示唆している。

実質ベースの可処分所得の拡大に遅行して個人の消費意欲も上昇していると考えられる。原油価格下落開始当初の昨年末はインフレ率低下による実質可処分所得の伸びに比較して実質個人消費の伸びは弱めであり、消費者が余剰購買力を貯蓄に回す傾向も見られた。しかるに5月時点では実質個人消費の伸びが実質所得の伸びに追いついてきている([第2図])。ついては、6月の実質個人消費の同+0.2%の伸びを見込んで、4-6月期のGDP統計上の実質個人消費予想を前期比年率+3%レベルに上方修正する([第3図])。雇用拡大ペースは堅調であり、また時間当たり賃金上昇率も5月に4ヶ月ぶりに前年比2%の伸びを回復するなど、賃金もようやく上昇加速の兆しがみられる。これらの背景から、今後も今年一杯個人消費は2-3%の伸びを続け、通年でも前年比3%の伸びを達成すると見込む。

[第1図]
20150628図1

[第2図]
20150628図2

[第3図]
20150628図3

設備投資拡大ペースは緩やかにとどまる

設備投資は個人消費よりも昨年後半以来の減速が大きく、1-3月期にはGDP統計上の実質設備投資は前期比年率-2.0%のマイナス成長に落ち込んだ。4-6月期に入ってからは、設備投資にも回復の兆しがみられる。GDP統計上の設備投資のうちの機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は、5月までで前期比年率+1.5%と小幅ながら3四半期ぶりのプラス成長に回復している([第4図])。

設備投資のうち建物などの構造物投資は、4-6月期に大幅回復すると見る。GDP統計上の構造物投資は1-3月期に前期比年率-18.8%とやや異常値とも思えるマイナス成長であった。同需要項目の基礎統計となる民間非住宅建設支出統計を見ると、商業施設中心に建設支出が3月、4月に急増している。これは四半期ベースでは前期比+22.7%という大幅な増加になるペースである([第5図])。以上より、機器投資は小幅な伸びに留まるものの、構造物投資が前期の反動で大幅増加すると見て、これに知的財産投資を合わせた実質設備投資は1-3月期のマイナス成長からプラスに転化すると考えられる。4-6月期GDP統計における実質設備投資は前期比年率+8.0%の成長と見込む。

しかしながら中期的には、企業の設備投資意欲はまだ強いとは言えず、設備投資拡大ペースは緩やかになると引き続き見る。原油価格下落とドル高により、石油産業と海外部門の企業収益がそれぞれ鈍化している。4-6月期企業収益統計によれば、企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)のうち国内部門の伸びは前年比+9.0%と前期の同+2.7%から加速したが、うち石油産業は同+8.5%の伸びにとどまっている。またドル高の影響により海外部門企業収益は同-13.1%と2四半期連続のマイナスになっている。これらを合わせた全体の企業ネットキャッシュフローは前年比+3.0%と緩やかな伸びにとどまった。企業設備稼働率も5月時点で78.1%の低水準である。企業設備投資の決定要因と当レポートで見る企業キャッシュフローと設備稼働率は、設備投資の伸びが今後も緩やかにとどまることを示唆している。さらに最新の6月フィラデルフィア連銀製造業景況感調査によれば、6ヶ月先の設備投資見通しを表すDIは8.1ポイント(前月比-8.7ポイント)と、2013年3月以来の低水準に低下した([第6図])。中期的な設備投資拡大ペースは1桁台の緩やかなものに留まるとの見方は維持したい。

[第4図]
20150628図4

[第5図]
20150628図5

[第6図]
20150628図6

住宅投資は伸び加速、在庫調整は継続と見る

住宅投資も4-6月期には成長が加速して前期比年率約+10%の成長に回復すると見る。GDP統計上の住宅投資の基礎統計となる住宅着工戸数は、4-5月までで前期比+12.5%と、前期のマイナスの伸びから大幅に反発している([第7図])。のみならず、5月には住宅着工許可件数が2007年以来の高水準に急増しており、今後も住宅着工戸数は堅調な増加が見込まれる(6月20日付<経済指標コメント>参照)。住宅市場では販売の増加に対する在庫不足から需給が極めてタイトであり、住宅価格上昇率には加速の兆しがみられる。供給の増加は住宅市場の需給緩和にも必要なものであり、需要が牽引する住宅着工増加は今後も継続しそうだ。

企業在庫については、在庫売上高比率の上昇が最近顕著であり、企業は今後在庫調整を余儀なくされるだろう。在庫循環図でも現在は在庫調整局面にあり、今後年末にかけて企業在庫は成長にマイナスの寄与をすると見る。

輸出の減少と輸入増加で大幅に1-3月期に成長率を押し下げた純輸出も、4-6月期はその反動でわずかに成長を押し上げると見る。貿易収支統計によれば、4月には実質ベースの財輸出が前月比+2.4%増加、同輸入は同-3.4%減少しており、1-3月期に比べて実質ベースの財収支赤字は縮小している([第7図])。もっとも、海外景気の減速やドル高といった輸出抑制要因は今後安定しつつも継続し、内需拡大により輸出には増加圧力がかかることから、中期的には財・サービス収支赤字の拡大基調は継続すると見る。

[第7図]
20150628図7

[第8図]
20150628図8

FRBの9月利上げ開始予想は維持するもその後のペースは下方修正

雇用は今後も堅調な拡大を続けると見る。5月の非農業部門雇用者数は前月比+280千人と増加ペースを加速させた。新規失業保険申請件数の4週移動平均は6月20日時点で273.35千件と、先月の同時期(272.0千件)と概ね同水準で低位安定している。従って非農業部門雇用者数は6月も+200千人を超える増加を見せると見る。中期的にも堅調な雇用拡大ペース継続を支持する材料がある。米労働省の求人労働異動調査(JOLTS)によれば、4月の欠員率(Job Openings Rate)は3.7%と、現行統計が開始された2000年12月以来最高の水準にまで上昇した。6ヶ月移動平均をとってみても、現在の欠員率は金融危機前のピークを超える水準にある([第9図])。これは、米労働市場の需給が金融危機以前の成長期よりもタイトになっていることを示唆している。5月時点で前年比の雇用増加ペースは+2.2%と金融危機前のピークである2006年の水準に既に回帰しているため、増加ペースのこれ以上の加速は見込みにくいものの、雇用市場は2%前後の拡大ペースで消費者購買力の拡大を支えると見る。

インフレ率については、原油価格下落の一服で今後来年2016年末にかけて徐々にFRB公開市場委員会(FOMC)の目標である2%に回帰していくと見る。総合個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)と同コア指数が今後毎月+0.1%のペースで上昇すると、今年末にPCEインフレ率は前年比+0.7%、同コアインフレ率は同+1.2%となる計算である。2016年に月次の伸び率が+0.15%に加速すれば2016年末にはPCEインフレ率、同コアインフレ率はいずれも同+1.8%に回帰する計算になる。

FRBの金融政策については、9月のFOMC定例会合で+0.25%の利上げ開始が決定されるとの個人予想を維持する。FOMCは年内の利上げ決定にあたっては「跳ぶ前に見る」慎重姿勢を基本的には維持しているが、上記の経済指標及び見通しは、9月に跳ぶことを十分に正当化しうるものである。しかしながら、その後の利上げペースについてはこれまでの予想を下方修正せざるを得ない。最近の当レポートで見てきたように、定例会合毎に0.25%という従前の利上げ予想に対しては次のような背景から下方リスクが高まっていた。一つは、FOMC委員経済予測による適正なFF金利水準予測が6月予測にかけて下方シフトし、6月時点ではFF金利レンジ中間値の委員予測中央値が今年末0.625%、2016年末1.625%となっていることである。これらの予測は今年末のFF金利誘導目標レンジが0.50-0.75%、2016年末で1.50-1.75%であることを示唆している。これはほぼ1会合おきに0.25%の利上げペースに相当する。もう一つは、テイラー・ルールによる適正FF金利水準推計結果も同様に、2016年初の適正FF金利水準を1%強、2016年末の同水準を約2%と示唆していることである(6月21日付当レポート参照)。以上より、今年末のFF金利目標レンジについての筆者予想を0.50-0.75%に下方修正する(4月時点の予想は0.75-1.00%)。来年については、8回のFOMC定例会合のうち4回の会合での利上げを見込み、2016年末の同レンジを1.50-1.75%と予想する。

[第9図]
20150628図9

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<経済指標コメント> 米5月実質個人消費は前月比+0.6%

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[日本]

全国消費者物価指数(5月)は前月比+0.3%(前年比+0.5%)、生鮮食品を除く総合指数前月比+0.2%(前年比+0.1%)

5月の全国消費者物価指数は前月比+0.3%と3ヶ月連続の前月比上昇、生鮮果物(同+7.3%)、テレビ(同+5.6%)、ガソリン(同+1.8%)などが指数上昇に寄与している。生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は前月比+0.2%とこれも3ヶ月連続の上昇、しかし前年比では+0.1%と前月の同+0.3%から伸び率が低下した。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は前月比+0.1%と4ヶ月連続の前月比上昇、前年比では+0.4%と前月並みの上昇率を維持した。総じて消費税影響を除くベースでのコアインフレ率は原油価格の低下を主因に前年比ゼロ近辺での推移が続いている。しかし、コアコアインフレ率は4月、5月に上昇の兆しを見せている。2%のインフレ率目標達成はまだ遠い状況は不変である一方で、成長と雇用拡大による需給ギャップの低下が徐々にデフレ圧力を後退させている可能性は否定できない。

20150627図1

完全失業率(5月)は3.3%(前月比横ばい)

5月の完全失業率は3.3%と前月比横ばい、引き続き1997年以来の低水準にある。しかし、労働力人口の伸びは前年比-0.2%と2ヶ月連続のマイナス、就業者数の伸びも同横ばいにまで低下しており、労働市場拡大ペースは飽和状態にあるといえる。筆者試算による労働力化率は59.4%と前月比+0.2%ポイント上昇したものの、中期的には頭打ちの傾向がみられる。労働市場は引き続きタイトな需給にあるといえる。

20150627図2

実質家計消費支出(5月、2人以上の世帯)は前月比+2.4%(前年比+4.8%)

5月の実質家計消費支出は前月比+2.4%と前月の同-5.5%から反発した。前年比でも+4.8%と2014年3月以来のプラス成長に回帰した。もっとも前月比の上昇幅は前月の大幅減少をカバーできておらず、実質消費指数の水準は今年の2月をも下回っている。前年比の大幅な増加は、消費税率引上げ直後の反動減のあった昨年5月との比較である要因が大きい。実質消費の水準はまだ消費税率引上げ前の水準には回帰していない。なお、内閣府の消費総合指数は4月時点で前月比-1.1%と大幅に減少しているが、5月はわずかに反発が予想される。GDP統計上では1-3月期の実質家計消費は前期比年率+1.6%と3四半期連続で1%台半ばの増加を示しており、景気回復の牽引役となっている。4-6月期はこれに比べるとやや減速と見ざるを得ない。4-6月期の実質家計消費が前期比でプラスになるには、5月、6月の消費総合指数が前月比+0.5%の強い伸びを続ける必要がある計算になる。

20150627図3

[米国]

中古住宅販売(5月)は年率5350千戸(前月比+5.1%)、在庫期間は5.1ヶ月

5月の中古住宅販売戸数は年率5350千戸(前月比+5.1%)と前月の同-2.3%から反発、2013年7月以来の高水準となった。中古住宅販売は引き続き増加トレンドを保っている。販売在庫も2290千戸(同+3.2%)と増加したが、在庫期間は5.1ヶ月と引き続き短く、中古住宅販売市場の需給は引き続きタイトである。中央販売価格は前年比+7.9%と4ヶ月連続で5%を超える伸びになっている。中央販売価格上昇率の地域別内訳は北東部同+4.8%、中西部同+9.4%、南部同+8.2%、西部同+10.2%と西部地区の住宅価格上昇が目立つ。タイトな需給で住宅価格上昇が加速しつつある点には注目しておきたい。公表元の全米不動産業協会は「多くの消費者が住宅を販売に出し購入者の選択肢が増えた」「しかしながら総じて供給はタイトで、販売ペースは速く、多くの地域で価格上昇率が2桁になっている」「新築住宅建設の堅固な増加がなければ、住宅ローン金利が4%を超えても住宅価格は高いままであろう」と述べ、供給不足による住宅価格高騰にも懸念を示している。

20150627図4

新築住宅販売(5月)は年率546千戸(前月比+2.2%)、在庫期間は4.5ヶ月

5月の新築住宅販売戸数は年率546千戸(前月比+2.2%)と2ヶ月連続の増加、販売戸数は2008年2月以来の高水準となった。販売在庫は206千戸(同横ばい)にとどまり、結果在庫期間は4.5ヶ月と前月の4.6ヶ月から更に短期化している。新築住宅市場でも販売の増加に比して在庫不足が鮮明である。新築住宅の供給を表す住宅着工戸数は5月に大幅減少したが、一方で着工許可件数が2007年以来の高水準に増加しており、住宅供給にも明るさが見え始めている(6月20日付<経済指標コメント>参照)。

20150627図5

耐久財受注(5月)は前月比-1.8%、除く運輸関連同+0.5%、非国防資本財(航空機関連を除く)受注同+0.4%、同出荷同+0.3%

5月の耐久財受注は前月比-1.8%と2ヶ月連続の減少、ただしこれは振れの大きい民間航空機の受注減によるもので、運輸関連を除く受注は同+0.5%と前月の同-0.3%から反発した。民間設備投資の先行指標となる非国防資本財(航空機関連を除く)受注は同+0.4%と前月の同-0.3%から反発した。しかし、前月分の下方改訂で4-6月期の同受注は5月までで同-3.2%と3四半期連続のマイナスになるペースである。前期比年率GDP統計上の機器投資の基礎統計となる同出荷も+0.3%と2ヶ月連続の増加。4-6月期の同出荷は5月までで前期比年率+1.5%と3四半期ぶりのプラス成長になるペースで、昨年後半以来減速していた企業部門の回復を示唆している。しかしながら、同出荷も前月比が下方改訂されており、先月の同指標公表時に期待された大幅な企業部門の反発力を鈍化している。前年比の伸び率の推移をみても、同受注は依然前年比マイナス圏、同出荷も回復ペースは鈍い。企業設備投資は4-6月期以降回復するもののその拡大ペースは依然緩やかなものにとどまりそうだ。

20150627図6

実質GDP成長率(1-3月期、確報値)は前期比年率-0.2%

1-3月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率-0.2%と、改定値の同-0.7%から上方改訂となった。需要項目別内訳は、個人消費同+2.1%(改訂値同+1.8%)、設備投資同-2.0%(同-2.8%)、住宅投資同+6.5%(同+4.9%)、政府支出同-0.6%(同-1.1%)、在庫投資寄与度+0.45%(同+0.33%)、純輸出寄与度-1.89%(同-1.9%)。個人消費の拡大が2%を維持したのが目立つほか、設備投資、住宅投資の内需項目がいずれも上方改訂された。4-6月期は個人消費が2%台から3%の伸び、設備投資もプラス成長に転ずることで、実質GDP成長率はプラス成長への回帰を予想している。2015年通年では前年比+2%台前半の成長が見込める。1-3月期は天候要因や西海岸港湾スト等の一時要因でマイナス成長となったが、今後経済は堅調な拡大への回復を見込む。

20150627図7

実質個人消費(5月)は前月比+0.6%、PCEデフレーターは前月比+0.3%(前年比+0.2%)同コアは前月比+0.1%(前年比+1.2%)

5月の実質個人消費は前月比+0.6%の強い伸び。新車販売の急増を反映し耐久消費財消費が同+2.3%と急拡大、非耐久消費財消費同+0.9%、サービス消費も同+0.2%といずれも堅調。昨年末からの個人消費の減速が一時要因に過ぎなかったとの見方を支持する内容である。雇用拡大・賃金上昇・インフレ率低下で個人の購買力の伸びは高い。4-6月期GDP統計上の実質個人消費は前期比年率+3%台も可能なペースであり、筆者個人の予想から上ぶれて推移している。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.3%(前年比+0.2%)、同コアは前月比+0.1%(同+1.2%)と引き続きコア指数の推移は堅調。今後、10月以降は原油価格下落要因が剥落して年末に総合PCEインフレ率は同+0.7%に上伸、コアPCEインフレ率は同+1.2%と堅調に推移すると個人的に見込んでいる(6月21日付<経済レポート>参照)。

20150627図8

<経済レポート> ペースは「徐々に」:6月FOMC声明文と経済予測

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6月FOMC声明文とともに公表されたFOMC委員経済予測では、今年の経済成長率と利上げペース予測が下方シフトした。筆者個人の9月定例会合での利上げ開始予想は維持できるものの、その後年内の利上げは2回に留まり、来年も1会合おきとなるリスクが高まったと言わざるを得ない。もっとも、4-6月期以降は米経済の拡大ペースは回復、インフレ率も来年初には1%台への回復が見込まれることから、FOMCは9月以降整斉と金融政策の正常化を継続するとの基本的な見方は不変である。

6月声明文はフォワードガイダンス維持

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は16、17日の定例会合で金融政策の現状維持を決定した。17日の声明文では「労働市場の更なる改善が見られ、インフレが2%の中期目標に回帰すると合理的に確信したときに、FF金利誘導目標レンジを引き上げるのが適切と委員会は予想する」とのフォワードガイダンスが3会合連続で維持された([第1表])。また声明文と同時に公表された四半期毎のFOMC委員経済予測では、2015年の成長率予測が大幅に下方シフトした。また適正なFF金利誘導目標予測もやや下方シフトしている。以下では、声明文・経済予測・イエレンFRB議長の定例記者会見の内容から今後のFOMC金融政策予想を点検する。

6月声明文における経済活動についての前回4月定例会合後の基調判断は「第1四半期でほぼ横ばいのあと緩やかに拡大した」とされ、1-3月期の前期比年率-0.7%成長を「ほぼ不変」と評している。イエレン議長は会合後の記者会見冒頭発言で1-3月期の「ソフトパッチ」につき「一部は一時的な要因」「家計消費のファンダメンタルズは良好で消費者センチメントは堅調」として、1-3月期の経済減速が一時的な要因であるとの見方を維持した。

インフレについて声明文は従前通り、短期的には2%を下回るものの「中期的には2%へ回帰する」との見方を維持している。イエレン議長は記者会見冒頭発言で「エネルギー価格は最近安定した」ことを挙げてインフレ率の上昇期待を示唆したほか、質疑応答では「ドルは総じて安定したように見える」こともインフレ率低下要因の逓減要因であることを示唆している。

労働市場について声明文は「雇用拡大ペースが加速した」と基調判断を引上げ、議長記者会見冒頭発言も「就業意思があるが就職活動を行っていない者」「経済的理由によるパートタイマー」の状況は「改善した」と述べている。しかしながら議長は「低い労働参加率」「非自主的パートタイム雇用の高さ」を労働市場の「循環的な弱さ」位置づけている。

[第1表]
20150621表1

FOMC委員の成長予測は大幅下方シフト、利上げペース予測も後ずれ

四半期毎のFOMC委員による経済予測の中心傾向を見ると、2015年の成長率予測が大幅に下方シフトして+1.8~+2.0%(第4四半期前年同期比)となり、3月予測に続き2回連続の下方シフトとなった。PCEインフレ率は同+0.6~+0.8%と3月比不変、コアPCEインフレ率予測も同+1.3~+1.4%と3月予測比不変である。なお、筆者個人は、2015年の成長率を同+2.1%と暫定予想しており、FOMC委員予測中心傾向はこれよりもやや下方ではあるものの大きな乖離はないといえる。

成長率予測の下方シフトとともに、適正FF金利水準予測もやや下方シフトしている([第1図])。3月予測では2015年末のFF金利誘導目標レンジの中間値を1%以上と予測する委員が4名いたが、6月予測では1%以上の年末FF金利誘導目標を予測する委員はゼロとなった。2015年末のFF金利誘導目標レンジ中間値については、0.375%、0.625%、0.875%を予測する委員の数がそれぞれ5人で最大となった。大多数の委員は年末のFF金利誘導目標レンジを0.25-0.5%乃至0.75-1%と見ていることになる。なお全体の予測の中央値は0.625%と3月時点予測と不変である。

また、2016年以降の利上げペース予測も3月予測比で下方にシフトしている。3月時点予測では2016年末、2017年末のFF金利誘導目標レンジ中間値の予測中央値はそれぞれ1.875%、3.125%であったが、6月予測ではこれらがそれぞれ1.625%、2.875%に下方シフトしている。なお、長期的なFF金利誘導目標レンジ中間値予測の中央値は3.75%と不変である([第2図])。

[第2表]
20150621表2

[第1図]
20150621図1

[第2図]
20150621図2

利上げ開始後のペースは1会合おきになるリスクが高まった

以上をもとに、FOMCの利上げ開始時期とその後の利上げペースについての筆者個人予想を点検する。筆者個人は9月定例FOMCでの利上げ開始、その後会合毎に0.25%ずつの利上げを実施して年末のFF金利誘導目標レンジを0.75%-1.00%と予想している。ただし9月利上げ開始後の利上げペースについては下方リスクを認識している(5月26日付当レポート参照)。今回のFOMC委員経済予測とイエレン議長記者会見の内容は、9月利上げ開始予想を支持する内容ではあるものの、利上げペースは年内2回に留まるリスクが更に高まったことを示唆するものだったと言わざるをえない。

まず、年末のFF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%(またはそれ以上)を予測する委員の数が3月時点の7人から5人に減少している。今や0.75-1.00%の年末レンジはFOMC内で最もタカ派に属する5名の委員によってのみ支持されているに過ぎない。次に、来年以降にかけての利上げペースは、会合毎に0.25%の利上げではなく、概ね1会合おきに0.25%利上げのペースになる可能性が高いことをFOMC委員予測が示唆している。2016年末のFF金利誘導目標レンジ中間値予測の中央値1.625%(1.5%-1.75%レンジ)は、9月の利上げ開始を含め年内2回、2016年中に4回の利上げを実施するペースに相当する。これは、0.25%の利上げが1会合おきに実施されるペースである([第3表])。

また、イエレン議長は、記者会見において利上げペースが「徐々にgradual」実施されることを強調している。記者会見の冒頭発言で議長は「雇用とインフレが委員会の使命と整合的な水準に近づいた後も、経済条件はしばらくの間FF金利誘導目標を委員会が長期的に正常と見る水準よりも低く維持することを正当化するかもしれない」との従前からの声明文文言を引用したのち「別な言い方でいえば、、、FF金利目標引上げは徐々に行われることが正当化されるのみである」と述べ、2017年末のFF金利のFOMC委員予測は、長期的なFF金利予測水準を下回っていることをも引用している。また質疑応答で議長は、「徐々に」の文言が利上げペースの新たなフォワードガイダンスとなり得ることを示唆する発言をしており、また「利上げ開始時期よりもその後のペースが重要」とも述べている。

[第3表]
20150621表3

9月利上げ開始予想は維持できる:テイラー・ルールは来年初1%台のFF金利を正当化

以上より、利上げ開始後の利上げペースは概ね1会合おきに0.25%というペースになるリスクがかなり高まったと言わざるを得ない。一方で9月の利上げ開始個人予想はこのまま維持したい。1-3月期の実質GDPマイナス成長は天候や西海岸港湾スト等の一時要因だとFOMCは見ている。また4月FOMC時点で懸念事項とされた原油価格下落とドル高進行はイエレン議長も記者会見で述べている通り安定化しつつある。更に、4月以降の経済指標はそれまでの経済ソフトパッチからの米経済の回復を示唆するものが続いている。4月分の非国防資本財出荷及び同受注の力強い回復と過去分の上方改訂は、企業部門が昨年後半以来の低迷を脱して、4-6月期のGDP統計上の設備投資の拡大ペースが加速するとことを示唆している。個人消費については、5月の新車販売台数と小売売上高の増加は、個人消費が1-3月期の一時的減速から4-6月期に再び拡大ペースを加速させることを示唆している。非農業部門雇用者数は4月、5月と続けて200千人を超える増加、特に5月は前月比+280千人の急増となった。

インフレ率についても、概ねFOMC委員の予測に沿った回帰が期待できる。FOMCがインフレ指標として用いる個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、4月時点で前年比+0.1%にまで低下している。一方食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは前年比+1.2%と相対的に堅調である。原油価格が現在の1バレル=60ドル前後で今後も安定するとして、PCEデフレーターと同コアが今後前月比+0.1%の上昇を継続すると、年末にPCEデフレーターは前年比+0.7%、同コアは同+1.2%となる計算になる。また2016年に入り昨年末の原油価格下落要因が剥落し、更に需給ギャップの縮小により月次の伸び率が+0.15%に加速する仮定すると、2016年末にPCEインフレ率、コアPCEインフレ率はいずれも前年比+1.8%になる計算になる([第3図])。これはFOMC委員の経済予測の中央値とほぼ一致する。

これらのインフレ指標をテイラー・ルール公式(99年版)に代入して今後の適正FF金利水準を試算すると[第4図]のようになる(GDP成長率は筆者個人予想を使用)。総合PCEデフレーターに基づく試算とコアPCEデフレーターに基づく試算には年内は大きな乖離があり、総合PCEインフレ率では年末の適正FF金利は-0.25%、コアPCEインフレ率では年末の適正FF金利は1%弱との結果になった。しかし2016年に入るとその乖離は解消し、2016年1-3月期の適正FF金利は総合PCEで1.27%、コアPCEで1.4%と試算された([第4図])。つまり、このまま原油価格が安定推移すれば、来年初には1%台のFF金利誘導目標水準が正当化される計算になる。また、この試算では2016年末の適正FF金利水準は2-2.5%レベルを正当化する結果となった。これはFOMC委員の予測中央値を0.5%ほど上回るものの、長期的なFF金利均衡水準を下回る点では整合している。

[第3図]
20150621図3

[第4図]
20150621図4

<経済指標コメント> 米5月消費者物価指数は前月比+0.4%

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[米国]

鉱工業生産指数(5月)は前月比-0.2%、設備稼働率は78.1%(前月比-0.2%ポイント)

5月の鉱工業生産指数は前月比-0.2%と2ヶ月連続の低下、6ヶ月連続で横ばいまたは低下が続いている。内訳は製造業同-0.2%、鉱業同-0.3%、公益事業同+0.2%。原油価格下落の影響を受ける鉱業が5ヶ月連続低下しているほか、製造業も過去6ヶ月で4回目の前月比指数低下と生産が伸び悩んでいる。企業部門の景況感や資本財出荷に見られる設備投資拡大への回帰にくらべて鉱工業生産指数はやや弱めであることは否めない。設備稼働率は78.1%(同-0.2%ポイント)と6ヶ月連続の低下。1972-2014年の平均である80.1%からさらに下方に乖離している。総じて鉱工業生産指数はさえない内容といってよい。朗報は自動車生産(乗用車及び軽トラック)が年率12.09百万台(同+2.3%)と3ヶ月連続で増加していること。4-6月期の個人消費の回復と、企業設備投資の拡大により、鉱工業生産も今後緩やかに回復に向かうと見たい。

20150620図1

住宅着工戸数(5月)は年率1036千戸(前月比-11.1%)、着工許可件数は同1275千件(同+11.8%)

5月の住宅着工戸数は年率1036千戸(前月比-11.1%)と3ヶ月ぶりかつ大幅な減少となった。しかしこれは前月の同+22.1%の大幅増の反動減と見ることができ、着工戸数水準は2ヶ月連続で1000千戸以上を維持、トレンドを示す6ヶ月移動平均も1035.8千戸と2ヶ月連続で上昇している。住宅着工は引き続き増加基調を保っているといえる。四半期ベースでも、5月までの4-6月期着工戸数は前期比+12.5%と前期の同-7.3%から大幅増加に転じており、4-6月期GDP統計上の住宅投資は前期の前期比年率+4.9%から大幅な加速が見込める。また、5月の住宅着工許可件数は同1275千件(同+11.8%)の急増。単月の許可件数水準は2007年以来の高水準となった。最近の住宅市場では供給不足から需給がタイトになる傾向がある。着工の増加は需給を緩和して住宅価格の上昇を適度なペースに保つことで需要を喚起するという好循環を生む効果が見込める。

20150620図2

消費者物価指数(5月):総合指数は前月比+0.4%(前年比横ばい)、コア指数は前月比+0.1%(前年比+1.7%)

5月の消費者物価指数、総合指数は前月比+0.4%と4ヶ月連続の前月比上昇かつ強い伸びとなった。ガソリン価格の上昇(同+10.4%)上昇加速の主な要因である。総合指数は前年比でも3ヶ月ぶりに横ばいの伸びに回帰した。食品及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.1%と原油価格下落後も引き続き上昇を続けている。コア指数を構成する品目では、運輸サービス(同+0.7%)が燃料価格上昇開始を反映して伸びを強めたのが目立つ。コア指数は前年比でも+1.7%と安定した上昇率を保っている。コア指数の安定からは、原油価格下落の影響拡大が限定的であることが引き続き示唆されている。原油価格の下落一服で総合CPIは前月比で今後も上昇基調を続け、前年比の伸び率は概ねゼロ~1%の間で推移すると見る。コアインフレ率は1.7%前後で安定推移すると見る。

20150620図3

<経済指標コメント> 米5月小売売上高は前月比+1.2%

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[日本]

実質GDP成長率(1-3月期、2次速報値)は前期比年率+3.9%

1-3月期実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率+3.9%と、1次速報値の同+2.4%から更に上方改訂された。需要項目別内訳は家計消費同+1.5%(1次速報値同+1.5%)、住宅投資同+7.0%(同+7.5%)、企業設備投資同+11.0%(同+1.4%)、公的需要同-0.9%(同-0.7%)、民間在庫寄与度同+2.0%(同+1.7%)、純輸出寄与度同-0.1%(同-0.1%)。上方改訂の主因は企業設備投資の大幅上方改訂で同+11.0%の予想外の強い伸び。在庫が成長を+2%と大きく成長を押し上げている状況は不変だが、家計消費・住宅投資・設備投資を合わせた国内最終民間需要は同+3.4%と強い伸びで、内需主導の景気拡大継続中と言える。ここまでの成長ペースは2015年通年成長率前年比+1%(2015年度前年度比+1%台半ば)という筆者個人の成長予想を上回るペースである。

20150615図1

景気ウォッチャー調査(5月):現状判断DIは53.3(前月比-0.3ポイント)、先行き判断DIは54.5(同+0.3ポイント)

5月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは53.3(前月比-0.3ポイント)と6ヶ月ぶりに小幅低下。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは54.5(同+0.3ポイント)と6ヶ月連続の上昇。いずれも4ヶ月連続で横ばいを示す50を上回っており、成長の回復が街角にも浸透している状態が継続していることを示唆している。

20150615図2

機械受注(4月、船舶・電力を除く民需)は前月比+3.8%

4月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+3.8%と2ヶ月連続の増加、季節調整前前年比でも+3.0%と前月の同+2.6%から伸びが加速した。1-3月期に同受注が大幅増加してGDP統計上の企業設備投資も前期比年率+11.0%の大幅増となったが、企業部門の拡大基調は4月に入っても維持されている。家計消費にやや遅れて回復した企業設備投資は今年一杯プラス成長を続けるとの見方を支持する結果である。

20150615図3

[米国]

小売売上高(5月)は前月比+1.2%、除く自動車関連同+1.0%

5月の小売売上高は前月比+1.2%の強い伸び、下方サプライズだった4月分も同+0.2%と上方改訂された(速報は同横ばい)。新車販売増加が小売全体を押し上げたが、自動車を除くベースでも同+1.0%の強い伸び。業種別内訳は自動車及び同部品ディーラー同+2.0%、建設資材同+2.1%、ガソリンスタンド同+3.7%、衣服店同+1.5%などの売上増が目立つ。ガソリン価格上昇を反映したガソリンスタンドと、自動車及びレストランを除くコア小売売上も同+0.8%の強い伸び。5月の小売売上増は雇用統計の小売業雇用増加とも整合している。1-3月期の消費減速が一時的なソフトパッチに過ぎなかったとの見方を支持する結果。4-6月期GDP統計上の個人消費は前期比年率+2%台半ばとの個人予想を維持する。

20150615図4

企業在庫(4月)は前月比+0.4%、企業売上高は同+0.6%、在庫売上高比率は1.36倍

4月の企業在庫は前月比+0.4%と3ヶ月連続増加となるやや強めの伸び。企業売上高も同+0.6%と強めの伸びとなった。いずれも販売価格の下げ止まりを反映したものである可能性が高い。在庫売上高比率は1.36倍と前月比横ばいで相対的には高水準を保っている。在庫循環図上では企業在庫は「在庫調整局面」にあり、今後は在庫調整が成長の押し下げ要因になると見る。

20150615図5

<経済レポート> 収益停滞が抑制要因:米企業設備投資の動向

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米国の企業設備投資は3四半期にわたる減速からは短期的に持ち直しの兆しがみられる。しかし、企業ネットキャッシュフローの伸びが頭打ちになっていることと、設備稼働率が大幅に低下していることが抑制要因となり、その伸びは引き続き緩やかなものに留まると見る。また長期的には、資本生産性の低下が企業の設備投資意欲を低下させている可能性がある。今後の更なる短期的下方リスク要因は海外景気減速とドル高継続である。

減速した企業設備投資は短期的には持ち直すと見る

米国の企業設備投資は昨年後半から減速が続いている。直近のGDP統計によれば、1-3月期の民間設備投資は3四半期連続の減速で、前期比年率-2.8%と16四半期ぶりのマイナス成長に落ち込んだ。もっともこれは構造物投資の大幅マイナス成長(同-20.8%)が主因で、最もおおきな比重を占める機器投資は同+2.7%と前期の同+0.6%からわずかに伸びが加速している([第1図])。

ここ半年ほどの企業設備投資の減速は一時要因によるものである可能性が高いと見る。1-3月期は米国の悪天候や西海岸港湾ストの影響で企業部門の物流や生産が一時的に滞った。また、昨年来のドル高や海外景気の減速が企業設備投資意欲を抑制した可能性が高い。ISM製造業指数はこれらを反映して昨年10月のピーク(57.9%)以降5ヶ月連続で低下し、今年の4月には51.5%にまで低下した。

しかしながら今後については明るい材料が出てきている。悪天候や港湾スト要因は1-3月期で剥落した。ISM製造業指数もこれとともに5月に52.8%と7ヶ月ぶりの上昇に転じ、企業部門景況感の底入れを示唆している。また、企業設備投資の先行指標である非国防資本財受注(航空機関連を除く)及び同出荷は、昨年10-12月期から2四半期連続マイナス成長であったが、3、4月に大幅なプラスの伸びに転じ、4-6月期には3四半期ぶりにプラス成長に回帰する可能性が高い([第2図])。今後年内のGDP統計上の設備投資は前期比年率+6~+8%の成長を続けると引き続き予想する。

[第1図]
20150607図1

[第2図]
20150607図2

企業収益減速、資本ストック余剰、そして資本生産性低下が設備投資抑制要因

中期的な企業の設備投資を決定する要因を考えてみよう。まず、設備投資の源泉となる企業ネットキャッシュフローと設備投資の関係を見る。設備投資を企業ネットキャッシュフローで除した設備投資/キャッシュフロー比率は、景気循環とともに変動しつつも長期的には総じて低下トレンドにある([第3図])。特に2008年の金融危機以降2013年までは設備投資/キャッシュフロー比率は100%を下回っていた、つまり企業はキャッシュフローの範囲内に設備投資を抑制する傾向があったといえる。2014年以降同比率は100%をやや超える水準にまで上昇したが、その水準は金融危機前のボトムに近い水準にようやく達したのみである。逆に長期トレンドからは、同比率が100%を超えてきたことがむしろ設備投資サイクルのピークアウトの可能性を示唆しているともいえる。

次に、資本ストックの積み上がり状況を見る。名目資本ストック(民間非住宅固定資産)を名目GDPで除した資本係数は、2003年以降の景気拡大期に上昇を続け、リーマンショックのあった2008年にピークに達した。この期間には、設備投資の拡大ペースがGDP拡大ペースを大幅に上回っていたことになる。金融危機以降の成長減速により、2003年~2008年の拡大した設備投資が資本ストックの余剰となった可能性が高い。企業はリーマンショック後設備投資を抑制し、かつ設備稼働率を低下させることで余剰資本を調整してきたと考えられる([第4図])。その間GDPに対する資本ストックの比率は低下に転じている。つまり設備稼働率が十分に上昇して資本ストックの余剰が解消されるまでは企業設備投資には抑制圧力が働きそうだということになる。

更に長期的には、資本生産性の低下が設備投資の抑制要因となっている可能性がある。名目GDPを、名目資本ストックと設備稼働率の積で除した資本生産性の伸び率は、金融危機直後の一時的な設備投資縮小と設備稼働率低下の時期を除いて、総じてマイナスの伸びもしくは低い伸びに留まっている([第5図])。これは労働生産性がその伸び率を低下させながらも上昇を続けているのとは対照的である(5月11日付当レポート参照)。労働生産性の伸びが資本生産性の伸びを上回っている状態だと、企業は生産拡大において設備投資よりも労働投入量の拡大を選好することになる。企業設備投資の伸びが長期的に低下傾向にあるのは労働生産性に対する資本生産性の相対的な劣位も一要因と考えられる。

[第3図]
20150607図3

[第4図]
20150607図4

[第5図]
20150607図5

企業キャッシュフローは頭打ち、設備稼働率は低下中

ここで、上記でみた設備投資の源泉となる企業ネットキャッシュフローと企業収益の最近の動向を見る。1-3月期企業収益(税引き前、在庫評価・固定費本減耗調整後、速報値)は前年比+3.7%と前期の同-0.2%からプラス成長に回復した([第6図])。部門別の内訳をみると、国内非金融機関が同+7.5%と継続して安定的な収益拡大を見せたほか、国内金融機関が株式市場の活況を背景に実に5四半期ぶりの前年比プラス成長に回復したのが目立つ。一方で、海外部門は2四半期連続の大幅マイナス成長にとどまっている。海外部門の不振は海外景気の減速にドル高要因が加わりドルベースでの収益圧迫要因となったものと思われる([第7図])。

短期的には回復傾向にある企業収益であるが、中期的にその推移を見ると、企業収益の水準は2013年以降頭打ちの傾向がみられる。また、税引き後企業収益から減価償却費と社外流出を調整した企業ネットキャッシュフローは、2010年あたりから既に伸びが頭打ちになっている([第8図])。企業設備投資の中期的な減速の背景には、こうした企業収益及びネットキャッシュフローの拡大ペースの減速がありそうだ。

また、設備稼働率もここ半年間で急激に低下している。鉱工業設備稼働率は金融危機による大幅低下ののち2009年以降上昇を続け、昨年11月に79.8%にまで上昇した。しかし昨年末からの原油価格の下落の影響を受けた鉱業の稼働率低下を主因として下降に転じ、今年4月時点で78.2%にまで低下している(5月16日付<経済指標コメント>参照)。この稼働率が再び上昇するまでは、設備投資には引き続き抑制圧力がかかると見る。

[第6図]
20150607図6

[第7図]
20150607図7

[第8図]
20150607図8

今年の設備投資拡大は昨年比減速を見込む:ドル高・海外景気もリスク要因

ここで、企業ネットキャッシュフローと設備稼働率とを説明変数とする設備投資の回帰分析をアップデートする(2014年6月9日付当レポート参照)。今回は1992年1-3月期から2015年1-3月期の四半期ベースのデータを用い、説明変数はいずれも4四半期ラグとした。回帰分析の結果は[第1表]の通りで、企業ネットキャッシュフロー及び設備稼働率のいずれもが統計的に有意となった。

またこの回帰式から今後4四半期の名目設備投資の伸びを推計すると、今年の後半に名目ベースの設備投資は年率4~8%の拡大を見せるものの、最近の設備稼働率の低下が主因となって、来年初には再びマイナスの伸びに落ち込むとの計算になった。今年一杯は設備投資が1桁台後半の成長を継続するとの見方を支持する結果であると同時に、引き続き設備投資には抑制圧力がかかり続けることで下方リスクがあることを示唆している。

以上より、短期的に今年の後半にかけて企業設備投資は拡大ペースが回復するものの、中期的な設備稼働率低下や企業ネットキャッシュフローの伸びの制約により、その拡大ペースは緩やかなものに留まると予想する。筆者個人は、2015年通年のGDP統計上の設備投資を前年比+5%弱と予想しており、これは2014年の同+6.3%から伸びが減速することを意味する。また、長期的には資本生産性の低下が労働投入と比較しての設備投資拡大を抑制する要因となり得る。短期的な更なる下方リスク要因は、海外景気の更なる減速やドル高からの為替調整の遅れである。

[第1表]
20150607表1

<経済指標コメント> 米5月非農業部門雇用者数は前月比+280千人

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[米国]

実質個人消費(4月)は前月比横ばい、PCEデフレーターは前年比+0.1%、同コア同+1.2%

4月の実質個人消費は前月比横ばいにとどまった。内訳は耐久消費財消費同+0.1%、非耐久消費財消費同-0.3%、サービス消費同+0.1%といずれも低調。4月は自動車関連を除く名目小売売上高が前月比+0.1%、新車販売も減少していたことからやむを得ない結果ともいえる。今年に入ってからの実質個人消費の前月比の伸び率は+0.1%と、4月までの個人消費拡大ペースは低調といえる。このペースだと、5、6月の実質個人消費が前月比+0.2%の伸びだったとしても4-6月期実質個人消費は前期比年率1%台半ばに留まる計算になり、筆者個人予想の同+2%台半ばに対しては下振れて推移している。しかしながら、5月には新車販売台数が大幅に増加、また雇用拡大ペースも加速している、さらに低インフレ率は実質可処分所得の拡大要因であることなどから、5月以降は個人消費拡大ペースは再び加速すると見たい。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比横ばい(前年比+0.1%)、同コア指数は前月比+0.1%(前年比+1.2%)。総合インフレ率は原油価格低下で依然低水準であるが、コアPCEデフレーターは前年比で相対的に高い伸びを維持しており、原油価格低下の他のインフレ率への波及は限定的といえる。

20150606図1

ISM製造業指数(5月)は52.8%(前月比+1.3%)、非製造業指数は55.7%(同-2.1%)

5月のISM製造業指数は52.8%(前月比+1.3%)と7ヶ月ぶりの上昇。総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注55.8%(同+2.3)、生産54.5%(同-1.5)、雇用51.7%(同+3.4)、入荷遅延50.7%(同+0.6)、在庫51.5%(同+2.0)。先行性のある新規受注DIと雇用DIの上昇は今後の企業部門の回復見通しにとっての朗報である。企業部門特に製造業は昨年末より景況感の悪化が目立っていたが、悪天候や西海岸港湾ストの影響の解消でようやく底入れの兆しがみられる。1-3月期の企業部門の低迷が一時要因であったことを示唆する内容である。ISM非製造業指数は55.7%(同-2.1%)と低下したものの依然高水準を保っている。総合DIを構成する4つのDIの内訳は、事業活動59.5%(同-2.1%)、新規受注57.9%(同-1.3)、雇用55.3%(同-1.4)、入荷遅延50.0(同-3.5)。総じて製造業中心に米国の企業部門は景況観回復とともに4-6月期には設備投資も緩やかながら回復基調をたどると見る。

20150606図2

新車販売台数(5月)は年率17.7百万台(前年比+6.3%)

5月の新車販売台数は年率17.7百万台と前月の同16.5百万台から急増、水準としては実に2005年7月以来約10年ぶりの販売台数となった。ガソリン価格の低下や自動車ローン条件緩和が自動車販売を押し上げる要因となっていると考えられる。個人消費全体も1-3月期は減速したが、4-6月期には再び加速するとの見方を支持する内容である。4月までの実質個人消費は筆者個人の予想より下振れているものの、5、6月での反発で4-6月期の実質個人消費の前期比年率2%成長は十分可能である。

20150606図3

雇用統計(5月):非農業部門雇用者数は前月比+280千人、失業率は5.5%

米5月雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+280千人と予想を上回る増加となった。これは2ヶ月連続の増加加速かつ今年最大の増加幅である。不振だった3月分)も同+119千人に上方再改訂され、結果非農業部門雇用者数の伸びの3ヶ月移動平均は+207千人と2ヶ月連続上昇かつ2ヶ月連続で+200千人以上を維持した。業種別では小売業(同+31.4千人)の雇用が加速しており、4月まで不振だった小売売上が5月に回復した可能性を示唆している。また景気敏感な娯楽・宿泊業(同+57千人)の雇用拡大も個人消費の回復を示唆している。1-3月期の景気減速はソフトパッチに過ぎないとの見方に整合している。もっとも原油価格下落の影響で鉱業(同-18千人)の雇用減少は継続している。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.0%と4ヶ月ぶりに2%の伸びを回復。非農業部門雇用者数の伸び(前年比+2.2%)と合わせ名目ベースで4%以上、現状の低インフレ下では実質ベースでもほぼ4%の購買力の伸びが確保されている。家計調査による失業率は5.5%(前月比+0.1%)と小幅上昇したものの、労働力人口・就業者数いずれもが前月比で増加しており、労働市場の拡大を伴うよい失業率上昇といえる。なお労働参加率は依然低位なるも62.9%(同+0.1%)と2ヶ月連続で上昇した。自動車販売増加、企業景況感回復、資本財受注増加など5月に入ってからの米経済指標には回復が目立ち、1-3月期のマイナス成長がソフトパッチに過ぎないとの見方を支持している。2015年通年の成長率は前年比+2%台は確保可能である。FOMCが9月に利上げ開始を決定するとの個人予想も維持する。

20150606図4