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<経済レポート> 9月に照準:FOMC展望

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米4-6月期実質GDP成長率、7月雇用統計はいずれも堅調な結果だった。インフレ指標もほぼFOMC委員の予測通りの推移になる見込みだ。イエレン議長が重視する労働市場の余剰に関する指標もここ数ヶ月で急改善している。これらはいずれも、9月定例FOMC会合で利上げ開始という当レポート予想を支持するものである。

成長率・失業率・インフレ率はFOMC予測通りの進捗

米4-6月期の実質GDP(速報)と7月雇用統計が公表された時点で、9月16、17日開催予定のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合での金融政策判断材料は事実上出そろった。今後は8月27日公表予定の同GDP統計改訂値、そして9月4日公表予定の8月分雇用統計が最終的な判断材料となる。しかし、GDP改訂値と8月雇用統計が想定外の下振れを示さない限り、既報指標で金融政策判断をなすことは可能と考えてよいだろう。

筆者個人は従前より、9月FOMC定例会合で利上げ開始が決定されると予想してきた。4-6月期実質GDP統計と7月雇用統計はいずれもこの予想を支持する結果だったといえる。4-6月期実質GDPは前期比年率+2.3%の拡大を見せた。このペースだと、2015年10-12月期の成長率(前年同期比)は、+1.9%程度に着地すると筆者は試算している。これは6月時点のFOMC委員経済予測の中心傾向である同+1.8~+2.0%の範囲内である。また、非農業部門雇用者数は7月に前月比+215千人の堅調な増加、失業率も5.3%とFOMC委員予測中心傾向の範囲内となっている(8月1日付8月8日付<経済指標コメント>参照)。インフレ指標も同様に、FOMC委員の予測に沿ったものになっている。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は7月時点で前年比+0.3%とわずかなプラスの伸びに留まっているが、10-12月期には昨年末からの原油価格急落要因が剥落することから、PCEインフレ率は同+0.8%レベルに上昇すると見る。これは6月時点のFOMC委員経済予測の中心傾向同+0.6~0.8%の上方に位置する。

6月FOMC委員経済予測では、年末のFF金利誘導目標レンジ予測の中央値が0.50-0.75%となっており、これは年内に0.25%ずつ2回の利上げが行われることを示唆している。成長率・失業率・インフレ率が委員予測通りであることは、9月に初回+0.25%の利上げが決定され、その後1会合おきに0.25%ずつの利上げが行われ、年末のFF金利誘導目標レンジは0.5-0.75%となる可能性が高いことを示唆している。

「労働市場の余剰」指標も急改善している

上記の経済予測対象指標のほかに、イエレンFRB議長が重視するとされる雇用市場関連の指標を見てみよう。イエレン議長は従前より「労働市場の余剰を表す指標」、またそのうちの「循環的要因」を重視してきた。7月29日のFOMC定例会合声明文では、労働市場に更に「いくらかの」改善が見られることを利上げ開始の条件として示した(「いくらかの」は7月声明文で新たに追加)。7月会合以降にいくらかの労働市場の改善が見られたとするためには、これらの労働市場余剰関連指標も改善していることがイエレン議長の認識からは必要であろう。

7月10日のオハイオ州クリーブランド市での講演、及び7月15日の半期議会宛金融政策報告でイエレン議長が取り上げた労働市場の余剰を示す指標を以下の通り検証すると、労働市場の余剰もここ数ヶ月で急速に縮小したことがわかる。

まず、求職意欲喪失者の推移を見る。求職意欲喪失者(非労働力人口のうち、自分に見合う職がないとの考えから現在求職活動を行っていない者)は過去2ヶ月間で大幅減少している。振れの大きい指標であることからその3ヶ月移動平均をとってみると、5月時点で747千だった求職意欲喪失者は7月時点で608千人と、2ヶ月で実に-18.6%の減少となっている([第1図])。また、求職意欲喪失者を含む縁辺労働者(非労働力人口のうち、職に就くことが可能で過去12ヶ月以内に求職活動を行ったが過去4週間以内に求職活動を行わなかったために労働力人口に計上されない者)も、過去6ヶ月で-13.6%減少している([第2図])。また、経済的理由でパートタイマーとして働いているが、本来はフルタイムの職を希望する者の数も、過去1年間ほぼ一貫して減少トレンドを保っている([第3図])。

[第1図]
20150811図1

[第2図]
20150811図2

[第3図]
20150811図3

賃金上昇率は低迷も今後急上昇の可能性がある

次に、これもイエレン議長がほぼ常に引用する(直近の7月15日議会証言でも触れられた)労働参加率を見る。労働参加率は中期的に継続的下降トレンドにあり、これは上記の求職意欲喪失者などを含む非労働力人口が増加し、労働力人口(現在職に就いているかまたは過去4週間以内に求職活動をした者)の人口に対する割合が低下していることを表している。しかしながら、直近の1年間は労働参加率が低下から横ばいに転じる傾向が明らかである([第4図])。これは労働力化率に表象される労働市場の余剰のうち循環要因による余剰がほぼ解消されつつある可能性を示唆している。

もっとも筆者自身は、労働参加率の低下は主に構造要因によるものであり、中長期的には引き続き労働参加率は低下すると見ている。その背景は、人口動態に加え、高等教育の充実により最初の就職の年齢が上昇していること、男女別では、男性の労働参加率がこの高等教育充実により継続的低下をしているのに加え、女性の労働参加率が2000年のIT革命のピーク時をピークに低下に転じていることがある。女性の社会進出は、2000年をピークにその後のITバブル崩壊を機に低下に転じている。これは女性の家庭復帰がITバブル崩壊でより強く志向されるようになったことが背景と憶測できる。

最後に、時間当たり賃金の伸び率は、イエレン議長が7月15日付議会証言で述べたように7月時点でも前年比+1.8%とまだ低い。これは唯一イエレン議長の条件を満たしていないともいえる労働市場指標である。MUFGの賃金版のフィリップス曲線([第5図])を見ると、確かに7月時点の時間当たり賃金上昇率(生産及び非監督労働者)は、失業率が同レベルだった2004年時点と比べても低めの位置にある。しかし、失業率が今後5%を下回って改善すると、時間当たり賃金上昇ペースは急激に加速する可能性がある。失業率実績が自然失業率を下回ると賃金上昇率が高まる効果(フィリップス曲線のフラット化)を勘案すれば、今後インフレ率も上昇ペースを加速する可能性が高いと見る。

[第4図]
20150811図4

[第5図]
20150811図5

9月利上げ開始予想を維持する:中立派委員の一人は利上げに回った

最後に、実質GDP成長率に表象される経済活動全体の拡大状況を見てみよう。実質GDP成長率は前期比年率で見るとここ数四半期の間かなりの振れがみられる。しかし、これを前年同期比で見ると、5四半期連続で同+2%台の安定した拡大を継続している([第6図])。これは米国経済が潜在成長率をやや上回るペースで持続的な成長を継続していること、これに伴い経済の余剰(マイナスの需給ギャップ)が着実に縮小していることを示唆している。

適正な政策金利を推計するテイラー・ルールによっても、年内2回の利上げが正当化できる。これは6月21日付当レポートで見た通りである。なお、GDP統計の年次改訂により現時点の需給ギャップの推計はやや困難になっており、正確に見積もることは難しいが、筆者は2015年4-6月期時点のマイナスの需給ギャップを約-2%と推測している。

以上より、9月のFOMC定例会合で0.25%の利上げが決定され、その後10月の定例会合を挟んで12月に2回目の利上げが行われるとの筆者個人の予想を維持する。リスク要因は経済指標というよりもFOMC内のハト・タカ派のバランスに依存する可能性が高い。しかし、中立派とされるアトランタ連銀ロックハート総裁(今年のFOMC投票メンバー)が9月の利上げを個人的に支持する旨を表明したこと(8月4日付WSJ紙インタヴュー)は、このバランスがより利上げ方向に傾きつつあることの証左といえるだろう。

[第6図]
20150811図6

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