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<経済指標コメント> 米9月住宅着工戸数は前月比+6.5%

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[米国]

住宅着工戸数(9月)は年率1206千戸(前月比+6.5%)、住宅着工許可件数は同1103千件(同-5.0%)

9月の住宅着工戸数は年率1206千戸(前月比+6.5%)と3ヶ月ぶりの増加、水準は6月の同1211千戸に次ぐ高水準となり、住宅建設市場の活況を示すものとなった。着工戸数の6ヶ月移動平均は1160.5千戸で、金融危機前の2008年1月以来の高水準である。結果7-9月期の着工戸数は前期比+0.5%と、4-6月期の急増の反動で増加ペースは減速したもののプラスを確保。過去の着工分と合わせ7-9月期GDP統計上の住宅投資は前期比プラスの伸びが維持できると見る。住宅着工許可件数は年率1103千件(前月比-5.0%)と前月比減少。しかし着工許可件数の6ヶ月移動平均も同1186.8千件と2008年1月以来の高水準にあり、今後も住宅着工が堅調に拡大するに十分な需要があることを示唆している。

20151024図1

中古住宅販売戸数(9月)は年率5550千戸(前月比+4.7%)、在庫期間は4.8ヶ月

9月の中古住宅販売戸数は年率5550千戸(前月比+4.7%)と反発、7月の同5580千戸に次ぐ販売戸数となった。中古住宅販売戸数の3ヶ月移動平均は5476.7千戸と2007年4月以来の高水準であり、住宅販売市場は金融危機前以来の活況となっている。販売増加に伴い在庫期間は4.8ヶ月と前月の5.1ヶ月から短期化、販売市場の需給は依然タイトである。ただ中央販売価格は前年比+6.1%と適度な上昇ペースを維持しているといえる。公表元の全米不動産業協会(NAR)は「在庫不足継続にも拘わらず住宅市場は今年大きく前進した」とし、その背景として「住宅価格上昇によるエクイティの増加に気が付いた保有者が、買い替えや小さい家への住み替えにこれを利用した」としている。つまり住宅価格上昇により、住宅価格から住宅ローン借入残高を差し引いた価値(エクイティ)が増加し、持家保有者にとっては家を売りやすくなっているというわけだ。一方でNARは「初めて住宅を購入する者は残念ながら購入に十分に成功していない」としている。これは住宅ローン借入を必要とする初回購入者にとってはまだ、信用条件の厳格さが依然住宅購入へのハードルとなっていることを示唆している。

20151024図2

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<経済レポート> 株安から立ち直り:米消費者センチメントと企業景況感

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NYダウは8月下旬の同時株安から反発し、株安開始直前の水準近くにまで回復した。これに伴い消費者センチメントや企業景況感も10月に持ち直している。これらの先行指標を見る限り世界同時株安の実体経済への影響は一時的なものにとどまっている。9月に軟化した経済指標は10月には回復すると見たい。米経済成長と金融政策の個人予想は維持する。なお、最近のFRB高官のハト派発言が報道されているが、これらは9月定例会合以降のFOMC内の勢力図の変動を示唆するものとはいえないと見る。

株式市場は同時株安から一旦持ち直した

8月下旬の世界同時株安からほぼ2ヶ月が経過した。株式市場は8月末をボトムに反発し、NYダウは16日時点で17215ドルと、8月25日の安値15666ドルから大幅に値を戻した。現在の株価は同時株安が始まった17500ドルレベルを概ね回復しつつある水準だ。テクニカルには株価指数は再び上昇トレンドに回帰する可能性が高いと見る。もっとも同時株安開始時水準かつそれまで約1ヶ月間揉み合った17500ドルレベルではいったん頭を抑えられる可能性が高い。ついては、引き続き年末のNYダウは17500ドルレベルに落ち着くと見たい。

一方で、8月株安及びその後の反発が実体経済に与えた影響を確認できるのはこれからである。これまでに公表された9月分経済指標はやや弱めだったと言わざるを得ない。9月ISM製造業指数は50.2%と3ヶ月連続の低下で、景気判断の分かれ目を示す50%に接近した。9月小売売上高は前月比+0.1%の伸びに留まる予想外の不振であった。

しかし、9月の経済指標は多分に8月の株安の心理的影響を一時的に受けていると考えられる。その後の株価反発も含めた影響を見極めるには10月の指標を見る必要がある。筆者個人は、9月でいったん軟化した経済指標も10月分では持ち直す可能性が高いと見ている。以下では、消費者センチメント、企業景況感といった先行指標をもとに、年末にかけての米経済が同時株安から持ち直すと見られる材料を見ていく。

消費者センチメントは10月に反発した:ミシガン大消費者センチメン

まず、消費者センチメントを表すミシガン大学消費者センチメント指数を見る。同指数は9月に87.2ポイント(前月比-5.1ポイント)と同時株安の影響とみられる大幅低下だった。しかしながら、16日に公表された10月分速報は92.1ポイント(同+5.6ポイント)と前月の低下を上回る反発を示した([第1図])。同指数は一般に雇用や可処分所得との連関が大きいと見ているが、9月の低下と10月の反発は同時期の株価の下落と反発の影響も受けていると見るのが自然であろう。

消費者センチメント指数と実質個人消費の前年比の伸び率の相関([第2図])から10月のGDP統計上の実質個人消費の伸びを推計すると、前年比+3.0%との結果になる。これは9月、10月にそれぞれ実質個人消費が約+0.2%の伸びを続けることを意味している。これは従前からの筆者個人の成長予想の前提とほぼ同じ拡大ペースである。

以上から、株安が一時的なものに終わりその後ほぼ下落前の水準にまで反発したことで、結果的に個人消費への影響は限定的にとどまることが推測される。9月の小売売上高は予想外の不振だったが、10月17日付<経済指標コメント>でも見た通り、9月に大きなトレンド転換があったとは言いにくい。自動車・ガソリン・レストランを除くいわゆるコアの小売売上高の前年比の伸び率は+3.0%程度で安定推移している([第3図])。昨年の同+4%レベルの伸びからの減速は消費者物価上昇率の低下でほぼ説明可能である。また、雇用統計における非農業部門雇用者のうちの小売業雇用者が9月時点でも前月比+24千人と、過去12ヶ月平均の同+26千人にほぼ匹敵する安定した伸びを見せたことも、小売業が特に売上の先行きに不安を抱いていないことを示唆している。

[第1図]
20151019図1

[第2図]
20151019図2

[第3図]
20151019図3

企業景況感も好転の兆しがみられる:NY連銀、フィラデルフィア連銀指数

次に、企業景況感を表す指標を見る。ここでは既に10月分が公表されたNY連銀製造業指数とフィラデルフィア連銀製造業指数を取り上げてみよう。いずれの指数も9月にかけて景気判断の分かれ目を示すゼロを下回る水準に低下していたが、10月にはいずれもゼロを下回りつつも指数はやや持ち直している。10月のNY連銀製造業指数は-11.36ポイント(前月比+3.31ポイント)、フィラデルフィア連銀製造業指数は-4.5ポイント(同+1.5ポイント)であった。この動きからは、9月に50%に接近したISM製造業指数も10月には持ち直しに転じる可能性が高い([第4図])。

フィラデルフィア連銀調査からは他の企業取引条件の改善もみられる。10月調査によれば、受取価格DIから支払価格DIを差し引いた交易条件が5ヶ月ぶりにプラスに転じている([第5図])。これは、ドル高が総じて米企業収益にはプラスの効果をもたらす可能性を示唆している。これらの指標からは、企業景況感も9月には一時的に悪化したものの、その後株価回復もうけて回復しつつあることが推測できる。

もっとも企業部門については、株安の影響如何にかかわらずその拡大ペースは緩やかなものになるとの見方は従前と不変である。鉱工業生産指数は今年に入り9ヶ月中7ヶ月で前月比低下している。設備投資の先行指標となる非国防資本財(航空機関連を除く)の出荷・受注はいずれも8月時点で前年比マイナスの伸びになっており、そのトレンドは下降局面にある([第6図])。ISM製造業指数調査の調査対象先のコメントからは、原油価格低下や中国等海外経済の減速懸念は株価にかかわらず企業景況感を押し下げていることがうかがわれる(10月3日付<経済指標コメント>参照)。年後半のGDP統計上の設備投資は年率+7%弱を見込んでいるが、受注統計等からはこの予測は下方リスクを孕んでいる。

[第4図]
20151019図4

[第5図]
20151019図5

[第6図]
20151019図6

年内利上げ個人予想維持:FRB高官発言も従前のFOMCスタンスと矛盾せず

以上を総合すると、世界同時株安から株価が回復したことで年末にかけての米景気の急激な変動はみられず、成長予想も現状維持が可能といえる。金融政策についても年内利上げ開始との見方も維持したい。12月15-16日のFOMC定例会合時点では10月分の経済指標は出そろっており、更に11月分雇用統計と同小売売上高も公表済の予定である。9月に一旦軟化した経済指標が10月、11月で好転していれば、FOMCのいわゆる「追加情報」は十分に得られたと考えることができるはずだ。

なお、金融政策に関しては、年内利上げに消極的なFRB高官発言が報道されている。まずFRBブレイナード理事は、12日の講演で「(利上げまで)注視して待つ場合」があると述べ、これが年内利上げ見送りを示唆したものと一部市場には受け止められたようだ。実際同氏は講演テキストで、インフレ率の下方リスクや中国経済等新興国経済減速の影響拡大に懸念を示し、またこれらのリスクが顕在化した場合にとりうる金融政策手段が限定的であると述べている。同氏はよって、これらのリスクが逓減するまで「待って注視する」ことがリスク管理上望ましいと結論している。しかしながら、同氏はテキストの中で利上げ時期を(「年内」など)一切示唆していない。また元来ブレイナード氏は民主党クリントン政権の国家経済諮問委員であったこともあり、FRB理事の中ではハト派色の強い経歴である。

また、FRBタルーロ理事は13日のCNBCのインタヴューで「金利を引き上げることが適切になるとは期待していない」旨の発言をしている。タルーロ氏も同様に従前よりハト派と見られていたFOMC委員であり、この発言がこれまでの同氏のスタンスを変更したものとは見られない。9月FOMC委員経済予測によれば、合計4名の委員が適切な利上げ時期を2016年以降と予想しており、FOMC内に年内利上げを否定する委員がいることは公知である。ブレイナード理事、タルーロ理事いずれの発言も、これらがイエレン議長の「FOMCの多くの委員は年内利上げを予想している」との見方と矛盾するものではないだろう。

<経済指標コメント> 米9月小売売上高は前月比+0.1%

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[米国]

小売売上高(9月)は前月比+0.1%、除く自動車同-0.3%

9月の小売売上高は前月比+0.1%と弱めの伸びに留まった。自動車関連を除く売上高は同-0.3%、自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く売上高は同-0.1%といずれもマイナスの伸びとなった。新車販売増で自動車及び同部品ディラーが同+1.7%と増加したことが全体の売上を押し上げたが、自動車を除く売上高は減少。ガソリンスタンド同-3.2%の減少はガソリン価格低下によるものだが、自動車・ガソリンを除く売上もマイナス。家電店同-0.2%、建設資材店同‐0.3%、無店舗小売店同-0.2%などで売上が減少した。もっとも8月同時株安の影響で小売売上のトレンドが変化したという証跡はない。前年比の伸び率の推移をみると、自動車・ガソリン・レストランを除く売上高は9月で+3.0%と3ヶ月連続で3%台の伸びを維持。また前月比で衣服店同+0.9%、百貨店同+0.4%などが売上を増やしていることからも、消費の堅調な基調は不変と見たい。

20151017図1

企業在庫(8月)は前月比横ばい、在庫売上高比率は1.37倍

8月の企業在庫は2ヶ月連続で前月比横ばいにとどまり、企業の在庫調整が進行しているとの結果になった。一方で企業売上高は同-0.6%と大幅減少、結果在庫売上高比率は1.37倍と2009年以来の高水準に上昇した。在庫循環図上は「在庫調整」局面に入っており、企業売上の減少に伴い今後は在庫調整が成長を押し下げる要因になると見る。

20151017図2

消費者物価指数(9月)は前月比-0.2%(前年比横ばい)、同コア指数は前月比+0.2%(前年比+1.9%)

9月の消費者物価指数は前月比-0.2%と2ヶ月連続の低下。ガソリン価格の低下(同-9.0%)などエネルギー関連費目の低下が全体を押し下げ、前年比の伸び率は横ばいに低下した。一方で、食品及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.2%と上昇を継続、前年比伸び率は+1.9%と昨年7月以来の水準に上昇した。エネルギー価格低下のコア指数への波及は限定的といえる。内訳では、住居家賃(前年比+3.7%)、運輸サービス(同+2.2%)などがコア指数の前年比の上昇に寄与している。総じてエネルギー価格下落の一時要因を除いてインフレ率は堅調に上昇しているといえる。原油価格が、1バレル=40ドル台でこのまま推移すれば、総合指数も来年初には前年比+1%台後半に回復する計算になる。

20151017図3

鉱工業生産指数(9月)は前月比-0.2%、設備稼働率は77.5%

9月の鉱工業生産指数は2ヶ月連続の低下となる前月比-0.2%。内訳は製造業同-0.1%、鉱業同-2.0%、公益事業同+1.3%。原油価格低下の影響を受ける鉱業が大幅低下したほか、製造業も2ヶ月連続の低下。全体の指数の前年比伸び率は+0.4%にまで低下した。鉱工業生産は昨年末をピークに減少が続いている。背景としてはエネルギー価格低下、海外景気減速による輸出減少、設備投資意欲の減速、そして在庫調整が考えられる。設備稼働率は77.5%(前月比-0.3%ポイント)と2ヶ月連続の低下。鉱工業生産の減少と設備稼働率低下は企業部門の生産活動の減速を表象しており、個人消費が牽引する米経済の拡大抑制要因となっている。在庫循環や企業景況感、ドル高の状況からはこの傾向は年末にかけても継続しそうだ。

20151017図4

<経済レポート> 待てば海路の。。:9月FOMC議事要旨

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9月FOMCの議事要旨からは、FOMCの経済・インフレ見通しは基本的に維持され、ただ世界同時株安や中国経済減速懸念が見通しに与える影響がないことを見極める追加情報を待つために利上げが見送られたにすぎないことが読み取れる。筆者個人の年内利上げ開始予想を維持しておきたい。金融市場は安定を取り戻しつつあることから、注目は12月FOMCまでに公表される実体経済指標となる。

「労働市場は著しく改善」

先月9月16、17日に開催されたFRB連邦公開市場委員会(FOMC)では、FF金利誘導目標レンジ引上げの開始が見送られた。声明文では「市場ベースのインフレ予想は低下」「最近のグローバルな経済と金融動向は経済活動を幾分抑制するかもしれず、短期的にインフレに更なる下方圧力をもたらす可能性が高い」と、8月のいわゆる世界同時株安の動向に関する1文が挿入された(9月21日付当レポート参照)。本レポートでは、8日に公表された同会合の議事要旨を分析し、利上げ見送りの背景と今後の金融政策を探る。

まず経済条件と見通しに関する議論を見ると、FOMC参加者は総じて米経済が個人消費を牽引役として適度なペースで拡大していると見ている。「個人消費は強いペースで上昇している」とされ、小売や自動車販売などのコンタクト先も「総じて見通しに楽観的」とされた。住宅セクターについては、最近の住宅販売増加や着工増加を反映して「改善している」とされた。一方で企業部門については「まちまち」とされた。「自動車産業は好調」だが「ドル高が輸出財生産を抑制している」、さらに「エネルギーセクターの見通しは悪化している」とされた。強い個人消費に加え、ここ数ヶ月の間に住宅市場の基調判断は改善している一方で、為替レートや海外景気の影響を受ける企業部門はまだ回復が遅めとの見方で、これは当レポートの見方とも同じである。

労働市場についても改善が進んだと判断されている。労働市場条件は「今年前半から著しく改善した」とされ、失業率は「ほとんどの参加者が長期均衡水準と見るレベルにまで低下した」「求職意欲喪失者や経済的理由によるパートタイマー数は減少した」と認識されている([第1図]、[第2図])。さらに、「ほとんど」の参加者が「労働資源の余剰は相当に縮小した」と見ておりそのうちの「何人か(a few)は余剰が完全に解消した」と述べた。一方で「いくらかの(some)」参加者は「失業率計測される以上の市場ののりしろが依然残っている」と考えており、その根拠として「労働参加率の低さ(特に働き盛りの世代)」と「経済的理由によるパートタイマー」数が依然高いことを挙げている。全体としてみれば、労働市場ののりしろがほぼ解消しつつあるとの見方の参加者の方が数の上では優勢である。

[第1図]
20151011図1

[第2図]
20151011図2

「株安の米経済への影響は小さい」

賃金については「広範囲な加速は見られない」と、従前通り賃金上昇率が低位にとどまっているとしたうえで、その背景について議論がなされている。「いくらかの(some)参加者」はこれを「労働市場の使用率の水準からくる上方インフレ圧力の欠如の証跡」とし、低い賃金上昇率は労働市場の余剰の証だとした。一方で「数人の(several)参加者」は「低い生産性と低いインフレ率が緩やかな賃金上昇に寄与している」と述べている。ここでも、賃金上昇率の低迷を労働市場の余剰に帰する意見は相対的には少数にとどまっており、利上げの条件としての労働市場余剰の解消はほぼ達成されたと見る参加者の方が多数だといえるだろう。なお、筆者個人は上記のうちの後者の考え方に近く、現在の米国の賃金上昇率は主に低い労働生産性と低インフレにより抑制されていると考えている([第3図]及び5月11日付当レポート参照)。

消費者インフレ率について参加者は「インフレ率の(2%目標からの)下方乖離の相当の部分は原油と商品価格下落による一時的な効果の結果」と判断したとされ、インフレ率低下が一時的なものとの従前からの見方を維持している。なお、「何人か」の参加者は原油価格の低下一服後「1月以降コアPCEインフレ率は委員会の目標に近い年率1.7%のペースで上昇している」ことを指摘している([第4図])。

利上げ見送りの大きな要因と考えられる8月の世界同時株安や中国経済減速懸念拡大についても議論がなされている。「中国経済の減速の顕在化とその他国経済への潜在的な波及は米国の輸出をある程度抑制する可能性がある」とされ、さらに中国や他の新興国経済への懸念はドル高と原油価格下落につながり、短期的には米国の消費者インフレ率を抑制する可能性があるともされた。しかし、米国株価の下落については「著しい市場変動をともなう株価下落とリスクスプレッド拡大」を認識したものの「多くの参加者はかかる動向の国内経済活動への影響は小さい可能性が高いと判断した」とされ、株価下落の米経済への影響を限定的と判断している。さらに「いくらかの参加者」は「これまで相対的に高かった株価のバリュエーションとの関連の中でみられるべきである」と述べ、株価下落がバリュエーション調整に過ぎないとの見方を示している。当レポートでもほぼ同様の見方をとっている(8月27日付当レポート参照)。

[第3図]
20151011図3

[第4図]
20151011図4

「追加的情報を待つのが賢明」として利上げ開始を見送り

経済条件と金融政策に関する議論においては「多くの参加者」が「最近の(株価下落等の)動向が経済活動とインフレに与える影響は小さいかまたは一時的」と見ており、「ほとんどの(most)参加者は、現状の経済条件と経済活動見通し、労働市場、そしてインフレに関する彼らの評価に基づけば、金融引締めの条件は満たされているかまたは年末までに満たされると引き続き予想した」とされ、世界同時株安等が金融政策見通しに大きな影響を与えていないことが示唆されている。もっとも、「いくらかの(some)」参加者はインフレと経済の下方リスクが上昇したと判断し、また何人かの(a few)参加者は、賃金上昇率が高まるまで労働市場余剰は解消されていないとの見方を示したが、相対的には少数派にとどまっている。

しかしながら、利上げ開始のタイミングについては「多数のリスクが強調された」とされ、9月の利上げ開始に限っては慎重な意見が多かったと見られる。いくらかの(some)参加者は「経済成長がトレンド以上のペースを維持しかつインフレの下方圧力が後退することが明瞭になる前にFF金利誘導目標レンジを引き上げた場合、インフレの下方リスクが顕在化することを懸念」し、また「インフレ率が2%を下回る期間が長期化した場合、時期尚早な利上げは委員会の信頼を損なう可能性がある」と述べた。

参加者によるここまでの議論を踏まえた投票メンバーによる議論では、最終的に「一人(利上げを主張し決定に反対票を投じたリッチモンド連銀ラッカー総裁)を除くすべてのメンバーは、米国経済は強さを増し労働市場の余剰は減少したものの、経済条件はFF金利誘導目標レンジを本会合で引き上げることを正当化しないと結論付けた」「彼らは前回会合から本会合までの間の動向は委員会の経済見通しを本質的に変更するものではないと合意した」「しかしながら、一部には経済とインフレ見通しへのリスクを理由に、経済見通しが悪化しておらずまたまた中期的にインフレ率が2%にむけ徐々に上昇するとのメンバーの確信を支持する追加的情報を待つのが賢明と委員会は決定した」として、本会合における利上げ決定を見送る判断をした。なお、投票メンバーの利上げ開始時期に関する見方は「多くの(many)メンバーは(労働市場とインフレの)条件が年後半に満たされる」と予想しているのに対し、経済活動とインフレへ見通しへの下方リスクを懸念したメンバーは数人(several)にとどまった。

年内利上げ開始の個人予想は維持:今後の雇用・小売・インフレ指標に注目

以上の議事要旨の議論を要約すると次のようになる。すなわち、①総じてFOMC委員は8月世界同時株安や中国経済減速懸念に拘わらず米経済とインフレ見通し並びに年内利上げ開始見通しを変更していない、②9月の利上げ見送りは、これらの見通し変更が不要であることを今後の経済指標等で確認するための期間を置くために過ぎない、ということである。ここからは、利上げ開始を来年以降に後送りする意図が大きく高まった証跡はなく、これは声明文と同時に公表されたFOMC委員経済予測でも確認されている(17人中13人の委員が年内利上げ開始を予測)。従って、年内にFF金利誘導目標レンジが1回0.25%引き上げられるとの筆者個人予想を変更する材料は議事要旨には見当たらないといえるだろう。9月FOMCの議事要旨は、市場の反応のほどにはハト派ではないと見たい。

FOMCのいわゆる「追加的情報」について、金融市場と実体経済という2つの観点から見てみたい。まず金融市場については、9月会合以降概ね落ち着きを取り戻したといっていいだろう。NYダウは8月下旬の同時株安で直前の17500ドルレベルから一時15300ドル台にまで下落したが、10月9日現在で17084ドルにまで回復している。テクニカルには、3番底を付けた後に9月の戻り高値を上回っており、今後は上昇に転ずることを示唆する形状である([第5図])。筆者個人は年末にNYダウは同時株安開始直前の水準である17500ドルレベルにまで上昇すると見ている。

次に実体経済については、9月FOMC会合以降の経済指標は現在のところやや軟化していると言わざるを得ない。8月の実質個人消費は前月比+0.4%と力強い伸びを示した。しかし9月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+142千人の伸びにとどまり、また9月ISM指数は製造業・非製造業ともに連続で低下した。ただ、9月指標はある程度世界同時株安を契機とした市場センチメントの悪化の影響を受けていると考えられることから、市場センチメントに起因する経済指標悪化は早晩回復すると見たい。年内に利上げ開始が決定されるためには、遅くとも12月13、14日のFOMC定例会合までに公表される経済指標が、これまでのFOMCの経済・インフレ予測を支持するものである必要がある。今後の実体経済指標で注目するべきは、まず10月、11月の雇用統計である。失業率には大幅な変動はないと考えられることから、非農業部門雇用者数の伸びが現状以上の大幅減速をしないこと、具体的には前月比+150千人前後を維持することが利上げ開始の条件の目途と見る。同じく10、11月に小売売上高が大幅減少しなければ、株安の消費者センチメントへの波及が限定的と見ることができる。インフレ指標では、コア消費者物価指数が大幅に低下に転じなければ、インフレ見通しは維持できると見たい。

一方で、中国をはじめとする新興国経済の減速が為替レートや実体経済を通じて米経済に与える影響の確認には時間を要する上不確実要因も多い。貿易収支統計によれば、米国に対外輸出は8月にかけても継続的に減速を続けている([第6図])。海外経済減速とドル高への影響の見極めには厳密には数ヶ月単位での確認を要すると考えられることから、この点は上記予想に対するリスク要因といえる。なお、個人的には利上げ開始は年内に行うことが賢明と見る。金融危機に端を発する景気後退が2007年12月に始まったことを考えれば、景気循環を10年とすると次の景気のピークは2017年頃つまり約2年後に訪れる可能性がある。次の景気後退開始時に十分な金融緩和余地を残すためには、2017年時点でFF金利誘導目標を2%~3%にまで引き上げておくのが得策である。

[第5図]
20151011図5

[第6図]
20151011図6

<経済指標コメント> 日本の8月機械受注は前月比-5.7%

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[日本]

機械受注(8月、船舶・電力を除く民需)は前月比-5.7%(前年比-3.5%)

8月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-5.7%と3ヶ月連続の減少、季節調整前前年比
も-3.5%と9ヶ月ぶりにマイナスの伸びに転じた。7-9月期の機械受注は8月までで前期比-11.3%と前期の同+2.9%から大幅なマイナスに転じている。機械受注の減少は企業設備投資が今後減速する可能性を示唆している。鉱工業生産統計における7-9資本財出荷は、8月までで前期比+0.3%とわずかにプラスになっていることから、GDP統計上の7-9月期企業設備投資は前期比年率+1%程度のプラス成長を個人予想している。しかし機械受注の減少からは、10-12月期以降は設備投資が再びマイナスに転じるリスクがでてきているといえる。

20151010図1

景気ウォッチャー調査(9月):現状判断DIは47.5(前月比-1.8ポイント)、先行き判断DIは49.1(同+0.9ポイント)

9月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは47.5(前月比-1.8ポイント)と2ヶ月連続の低下、かつ横ばいを示す50を2ヶ月連続で下回った。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連DIのいずれもが前月比低下した。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは49.1(同+0.9ポイント)と4ヶ月ぶりに上昇したが、これも横ばいを示す50を2ヶ月連続で下回っている。先行き判断DIでは家計動向関連DIが上昇したが企業動向・雇用関連DIはいずれも低下。総じて街角景気は依然弱含みであり、他の経済指標同様に10-12月期の日本経済の拡大ペースが更に減速するリスクを示唆していると言わざるを得ない。調査対象先の景気判断理由には「中国の経済状態の悪化に伴い株価が日米共にさがっているため、その影響で客が神経質になっている(家計動向)」「中国の景気後退の影響を受け、海外向けの受注が減っている(企業動向関連)」など、株価下落による家計消費の減速と中国景気減速による企業部門の減速に関連するものがみられる。もっとも世界同時株安の影響が剥落すれば、消費者心理は改善に今後向かう可能性は依然としてあると見たい。

20151010図2

[米国]

ISM非製造業指数(9月)は56.9%(前月比-2.1%ポイント)

9月のISM非製造業指数は56.9%(前月比-2.1%ポイント)と2ヶ月連続の低下。総合DIを構成する4つのDIの内訳は事業活動60.2%(同-3.7)、新規受注56.7%(同-6.7)、雇用58.3%(同+2.3)、入荷遅延52.5%(同横ばい)。ISM製造業指数の低下と合わせ、米企業景況感の減速を示唆する結果となった。業種別では鉱業、小売業などが事業活動の低下を報告している。しかし非製造業指数は今年前半の水準を維持しており、今回の低下は7月の大幅上昇の反動とも見ることができる。また、先行性のある新規受注DIの大幅低下が目立っている一方で、雇用DIは反転上昇するなど内容はまちまち。調査対象先のコメントも総じてポジティブである。株安の影響を受けやすい小売業も「最近の経済混乱は売上低下をもたらしたが、株式市場が正常化すれば売上低下も一時的なものに過ぎなくなると感じる」との回答も見られた。8月の世界同時株安が消費関連に景況感に悪影響を与えていることは確かだが今後その要因は徐々に剥落すると見たい。

20151010図3

<経済レポート> 長く穏やかに:日本経済定点観測

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日本経済は4-6月期にマイナス成長に転化したが、7-9月期はプラス成長に回復すると見る。もっともその反発力は強くはないだろう。企業部門は引き続き緩やかな成長にとどまり、輸出の伸びには期待しづらいことから、日本経済成長率の牽引役として鍵を握るのは家計になりそうだ。なお、4-6月期実績と直近の経済指標に基づく短期的見通しから、筆者個人の成長予想を大幅に下方修正する。

GDPはほぼトレンド水準、需給ギャップは縮小

まず、現在の日本の実質GDPの立ち位置を見てみよう。[第1図]は、2012年10-12月期から2015年4-6月期までの実質GDP(対数値)と、その長期トレンド(1994-2015年の四半期データをHPフィルターで平滑化したもの)を示したものである。この図からは次のことが読み取れる。第1に、現在2015年4-6月期の実質GDP(529.0兆円)は、消費税率引上げ前の駆け込み需要発生直前(2013年10-12月期)の水準(529.1兆円)にほぼ等しい。つまり、日本経済は反動減から消費税率引上げ前の水準にまで回復したものの、当時から現在までほぼゼロ成長にとどまっていることになる。第2に、1994年からの長期トレンド値(4-6月期時点で530.6兆円)との比較では、ほぼ現在の実質GDPはトレンドに沿っている。ここから算出されるトレンドと実績の乖離(需給ギャップ)は約-0.3%となる。第3にしかしながら、2012年10-12月期を起点として年率+2%の成長を示すラインを引いてみると、そのライン(4-6月期時点で543.4兆円)からは大きな乖離がある。政府が掲げる「実質+2%」の持続的成長目標との関係からは依然経済成長ペースは大きく劣後していることになる。

HPフィルターを用いたトレンド抽出の場合、直近のサンプルの変動がトレンドにより大きく反映される。そのため、同方式では消費税引上げに伴うGDP低下が反映され、トレンドGDPが低めに出ている可能性がある。上記の筆者推計のトレンドGDPとのギャップ-0.3%に対し、内閣府は4-6月期時点のGDPギャップを-1.6%と推計している(ここから計算される潜在GDPは約537.6兆円)。ただいずれにおいても、マイナスの需給ギャップはかなり縮小しており、今後年率1%の成長ができれば需給ギャップは解消すると見られる。一方、上記のHPフィルター推計による4-6月期時点の潜在成長率は年率約+0.8%と推計される([第2図])。これは内閣府の推計する同+0.5%よりもやや高めであるが、2012年以降現在までほぼ横ばいで推移している。つまり、日本の潜在成長率は金融危機からの回復に伴う上昇以降ほとんど伸長していないとの結果になる。

上記より、①日本経済は長期的な成長トレンドにほぼ沿った水準に回帰しつつある、②しかしその成長トレンドは消費税率引上げによる成長ペース下方シフトを織り込んだものであり、持続的2%成長からは相当に下方乖離している、③日本の潜在成長率は金融危機からの回復要因を除いてほぼ横ばいにとどまっている、ことが推測できる。一方で、④日本経済ののりしろは相当程度に縮小しており、需給のタイト化が進んでいることも推察できる。

[第1図]
20151004図1

[第2図]
20151004図2

家計消費の目先の反発は弱め:中期的には2%成長可能

以下では、直近の経済指標をもとに主に7-9月期の実質GDP成長率の個人予想を見直すことで日本経済の定点観測を行う。まず、消費税率引上げ後の反動減から比較的好調に回復してきた家計消費から見る。GDP統計上の実質家計消費は消費税率引上げ直後の2014年4-6月期に大幅マイナスとなったが、その後3四半期連続前期比プラス成長で日本経済の成長回復を牽引していた。しかしながら家計消費は今年の4-6月期に急減速し、GDP統計上の実質個人消費は前期比年率-2.8%のマイナス成長となった。

7、8月の家計消費はやや回復している。総務省家計調査による家計消費支出実質指数(二人以上の世帯)は2ヶ月連続で前月比増加した。8月までの7-9月期同指数は前期比+0.6%と、前期の同-3.2%からわずかにプラス転化している。同指標との相関をもとに7-9月期GDP統計上の実質家計消費の伸び率を推計すると前期比+0.3%(同年率+1.0%)との計算になる。ついては、7-9月期GDP統計上の実質家計消費を前期比年率+1%レベルの伸びと新たに個人予想することとする。

それでもなお、実質家計消費の水準(7-9月期予想値年率約299.4兆円)は、消費税率引上げ駆け込み需要前の水準(2013年10-12月期で307.5兆円)を約-2.6%下回っている。この差分は概ね3%の消費税率引上げ幅に等しい。消費税率引上げに伴う反動減が駆け込み需要を上回り、引き上げ分だけ実質家計消費の押し下げ効果をもたらしたことは、現時点ではもはや概ね認めざるを得ないところである。一方で、家計消費を巡る環境は決して悪くはなく、年末にかけては再び拡大ペースを加速させる可能性が高いと見る。総務省家計調査における勤労者世帯の実収入(名目)は4月以降前年比でプラスの伸びを継続しており、8月時点で前年比+2.2%となっている。可処分所得(名目)も8月時点で同+1.8%の水準にある。家計所得の伸びからは、今後家計消費が2%レベルの拡大に近々回帰する可能性が高いと考えられる。

[第3図]
20151004図3

貿易赤字は拡大基調で成長にマイナス寄与を見込む

企業設備投資は過去4四半期のうち3四半期において前期比マイナス成長を記録するなど、家計消費に比較するとその回復ベースは引き続き鈍い。企業設備投資低迷の継続的な要因としては、設備稼働率の低さが考えられる。製造工業設備稼働率指数は7月時点で96.9(2010年=100)と、2010年の水準を下回っており、製造工業にはまだ過剰設備が存在することを示唆している。これに加えて海外景気減速懸念が設備投資の抑制要因となっていると考えられる。経済産業省鉱工業生産指数統計によれば、8月までの7-9月期資本財出荷は前期比+0.3%と前期のマイナス成長からわずかにプラス転化している([第4図])。7月までの資本財出荷との相関からは、7-9月期のGDP統計上の実質企業設備は前期比年率+1%台半ばのプラス成長転化と推計できる。

住宅投資はその水準はまだ低いものの、過去2四半期連続でプラス成長を続けている。7-9月期にも同レベルのプラス成長が期待できる。先行指標となる住宅着工戸数統計は、7-9月期の住宅着工戸数は前期比で大幅なマイナスの伸びとなる見込みである([第5図])。しかしながら、この落ち込みは6月の一時的な着工戸数の急増(分譲住宅着工の大幅増加)からの反動であり、着工の積み上げのGDP統計への計上ペースのラグを勘案すれば、前期の着工が7-9月期にも継続計上される可能性が高いと見る。

純輸出は前期に続き7-9月期にも成長にマイナスの寄与となりそうだ。8月の貿易統計によれば、数量ベースの輸出は前年比-4.2%と2ヶ月連続の減少、同輸入も4ヶ月連続マイナスの伸び乍らそのマイナス幅は-0.7%にとどまっている。特に対中国の輸出が前年比-4.2%と2月以来のマイナスに転化している。季節調整済の名目貿易収支は8月にかけて赤字拡大傾向にあり、引き続き貿易赤字が成長を押し下げる要因になりそうだ([第6図])。企業在庫は7-9月期にも3四半期連続となる成長へのプラス寄与を見込む。経済産業省鉱工業生産指数統計によれば引き続き企業在庫は高水準にあり、在庫調整ペースは緩慢である。

[第4図]
20151004図4

[第5図]
20151004図5

[第6図]
20151004図6

個人予想は下方修正:2015年暦年成長率は1%を割り込む見込み

以上より、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.8%程度の弱い反発に留まると見たい。その後10-12月期には家計消費を中心にやや成長が加速して2%台の成長を実現、来年1-3月期は再び巡航速度の成長に回帰して+1%弱の成長になると見る。結果、2015年暦年の成長率は前年比+0.7%、2015年度成長率は前年度比+1%強を見込み、これを筆者個人の新たな成長予想とする。これは、7月時点の個人予想(7月5日付当レポート参照)で前者を+1%強、後者を+2%弱と見ていたことからは大幅な下方修正となる。

インフレについて、原油価格低下の影響で引き続き消費者物価指数の前年比伸び率は低迷している。コアインフレ率(生鮮食品を除く総合指数)の前年比伸び率は前年比ゼロ近辺にあるものの、来年半ばには原油下落要因が剥落して同+1%まで伸び率が上昇すると見る。一方で、コアコアインフレ率(食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数)の前年比の伸び率は8月時点で+0.8%と、1998年以来の高水準にまで上昇している(消費税影響を除く)。これは日本経済全体ののりしろの縮小に伴う需給のタイト化が徐々にインフレ圧力として示現しつつある可能性を示唆している。コアインフレ率の2%目標達成はまだ困難であるものの、それは必ずしも日本経済のデフレ圧力が拡大していることを意味することにはならないだろう。

上記の個人予想に対するリスクは下方である。中国経済の減速はすでに企業設備投資の低迷や輸出の減速に織り込まれているとの見方を基本的には上記ではとっている。日本の中国の成長の間には、過去20年間はそれ以前にくらべてやや相関が見え始めている([第7図])が、中国経済成長が6%レベルにまで減速する分にはこれを要因として日本がリセッションに陥るリスクは小さいと見てよいだろう。年末にかけての日本経済の短期的な下方リスク要因はむしろ、世界同時株安にともなう景況感の悪化とこれによる家計消費の更なる減速である。また中国経済のファンダメンタルズが想定以上に悪化していた場合やその懸念が他のアジア各国経済の想定以上の減速をもたらした場合、輸出の減少を通じた成長押し下げの可能性がある。

[第7図]
20151004図7

[第1表]
20151004表1

<経済指標コメント> 米9月非農業部門雇用者数は前月比+142千人

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[日本]

鉱工業生産指数(8月)は前月比-0.5%

8月の鉱工業生産指数は前月比-0.5%と前月の同-0.8%につづき2ヶ月連続の低下。出荷指数も同-0.5%と前月の同-0.4%に続き2ヶ月連続低下した。在庫指数は同+0.4%、在庫率指数は同+6.1%といずれも反発した。生産指数、出荷指数の3ヶ月移動平均は4月以降5ヶ月連続で低下しており、鉱工業生産が低下基調にあることを示唆している。一方で在庫率指数は急上昇かつ高水準にあり、在庫の積み上がり継続していることを示唆している。在庫循環図は「意図せざる在庫増」から「在庫調整」局面への移行期を指しており、今後も鉱工業は在庫調整が継続する可能性が高い。公表元の経済産業省は鉱工業生産の基調判断を「弱含み」とし、前月までの「一進一退」から下方修正した。なお、企業設備投資の先行指標となる資本財出荷指数は前月比-0.7%と前月の同+2.2%から反落。しかし8月までの7-9月期同指数は前期比+0.3%と前月のマイナスからわずかに上昇に転じており、4-6月期にマイナス成長に終わったGDP統計上の企業設備投資が7-9月期にやや持ち直す可能性を示唆している。

20151003図1

住宅着工戸数(8月)は年率931千戸(前月比+1.8%)

8月の住宅着工戸数は年率931千戸(前月比+1.8%)と前月7月の一時要因による大幅減(6月の分譲住宅着工の大幅増加)から持ち直した。総じて住宅着工戸数は、消費税率引上げ後の大幅な反動減から回復したとは言えないものの、堅調な増加基調をたどっている。8月までの7-9月期住宅着工戸数は前期の大幅増からの反動で前期比-3.1%とマイナス成長圏にあるが、過去の着工積み上げ分の統計計上で7-9月期のGDP統計上の住宅投資は引き続きプラス成長が続く可能性が高いと見る。

20151003図2

日銀短観(9月調査):大企業製造業業況判断DIは12ポイント(6月調査比-3ポイント)

日銀短観(6月調査)、大企業製造業の業況判断DIは12ポイント(6月調査比-3ポイント)と3四半期ぶりに低下に転じた。大企業非製造業の業況判断DIは25ポイント(同+2ポイント)と4四半期連続の上昇。製造業の景況感悪化は8月の世界同時株安を契機とした世界経済減速懸念の反映と見ることもできる。しかし製造業・非製造業ともに景況感の水準はまだ高い。

20151003図3

実質家計消費支出(8月、2人以上の世帯)は前月比+2.5%(前年比+2.9%)

8月の実質家計消費支出(2人以上の世帯)は前月比+2.5%と2ヶ月連続の増加、前年比でも+2.9%と3ヶ月ぶりのプラス成長に回帰した。しかし実質家計消費支出の水準は消費税率引上げ前の2013年の水準にも回復しておらず、また前年比のプラス転化も昨年の反動減継続時期との比較であり、家計消費はまだ低迷しているといってよい。8月までの7-9月期実質家計消費支出は前期比+0.6%と前期の同-3.2%の大幅減からやや持ち直しているものの、4-6月期の落ち込みを回復するには至っていない。なお、内閣府の消費総合指数は7月までで前期比ほぼ横ばいで、7-9月期GDP統計上の家計消費は前期比わずかなプラス成長への回復にとどまる可能性が高い。

20151003図4

完全失業率(8月)は3.4%(前月比+0.1%)

8月の完全失業率は3.4%(前月比+0.1%)とわずかに上昇したが、引き続き1997年並の低水準にある。就業者数は前年比+0.3%と増加を継続、労働力人口は同+0.1%とここ数ヶ月はほぼ横ばいの動きが続いている。結果労働参加率は59.6%とやや伸び悩んでいる。労働市場は依然需給がタイトな状況にあると見る。

20151003図5

[米国]

実質個人消費(8月)は前月比+0.4%、個人消費支出価格指数は前年比+0.3%、同コア指数は同+1.3%

8月の実質個人消費は前月比+0.4%と力強い伸び。内訳は自動車販売の増加を反映した耐久財消費が同+1.2%、非耐久消費財消費が同+0.6%、サービス消費が同+0.3%と押しなべて強い伸びとなった。過去分も上方改訂され、結果4-6月期のGDP統計(確報値)上の実質個人消費は前期比年率+3.6%に上方改訂されている。7-9月期も、実質個人消費は筆者予想である同+3%を上回るペースに加速している。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比横ばい、前年比の伸び率も+0.3%と引続き低位にある。しかしながら、食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは前月比+0.1%と堅調な伸び、前年比伸び率も+1.3%と相対的に高水準にあり、伸び率も前月の同+1.2%から加速した。総じて雇用拡大を背景に個人消費は力強く筆者個人予想を上回るペース、PCEインフレ率もコアPCEベースでは堅調に上昇しているといえる。

20151003図9

ISM製造業指数(9月)は50.2%(前月比-0.9%ポイント)

9月のISM製造業指数は50.2%(前月比-0.9%ポイント)と3ヶ月連続の低下、2013年5月以来の低水準となり、景気判断の分かれ目となる50%に接近した(直近の直前で同指数が50%を下回ったのは2012年11月)。総合DIを構成する5つのDIの内訳は新規受注50.1%(前月比-1.6%ポイント)、生産51.8%(同-1.8)、雇用50.5%(同-0.7)、入荷遅延50.2%(同-0.5)、在庫48.5%(同横ばい)と在庫を除く4つのDIが前月比低下。先行性のある新規受注DIの2ヶ月連続の低下が目立つほか、一致指標である生産も2ヶ月連続、また雇用指数は3ヶ月連続で低下している。ISM指数の低下は昨年の原油価格下落とドル高開始とほぼ同時に低下に転じており、これが資源価格と外需に依存する製造業景況感に影響を与えていると見る。調査先の回答には「原油とガス価格低下が収益に悪影響(石油・石炭産業)」「ドル高が価格設定に影響(コンピューター産業)」などがみられる。「中国懸念が需要者の信頼感に悪影響を与えている(金属製品工業)」と、中国経済減速の影響もみられる。8月の同時株安の直接の影響は見られないものの、来月以降の同指標には注目したい。企業景況感の悪化はISM、フィラデルフィア連銀、NY連銀指数に共通した動きで、米企業部門特に外需に依存する製造業への影響は相応にありそうだ。

20151003図6

新車販売台数(8月、乗用車及び軽トラック)は年率18.2百万台(前月比+0.3%)

8月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率18.2百万台(前月比+0.3%)と、実に2005年7月以来の水準に増加した。報道によればレーバーデー(9月7日)の販売増が全体を押し上げたとのこと。低ガソリン価格、低金利、そして自動車ローンの信用条件緩和が自動車販売を引き続き押し上げている継続的要因とみられる。自動車販売は引き続き好調であるが、年率17百万台を超える販売は経験則的にはやや過熱感があり、今後の金利上昇の可能性を勘案すると増加ペースは減速していかざるを得ないと見る。

20151003図7

雇用統計(9月):非農業部門雇用者数は前月比+142千人、失業率は5.1%(前月比横ばい)

9月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+142千人の増加にとどまった。8月分も同+136千人に大幅下方改訂され(速報は同+173千人)、結果非農業部門雇用者数前月比増加幅の3ヶ月移動平均は同+167千人と4ヶ月ぶりに200千人を割り込んだ。業種別では、鉱業(同-12千人)、製造業(同-9千人)の雇用が減少したほか、専門ビジネスサービス(同+31千人)、教育・医療業(同+29千人)といった雇用増の中心業種の増加ペースが低下した。一方で小売業(同+23.7千人)は相対的には堅調な雇用増が続いている。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+1.9%と4ヶ月連続横ばいの伸びで、まだ賃金上昇の加速は見られない。原油価格低下の影響を受ける鉱業や、外需の影響を受ける製造業の雇用減の背景は明らかであるが、教育・医療関連の減速は一時要因である可能性もある。一方で景気敏感業種である専門ビジネスサービス業の減速が今後も継続するかに注目したい。家計調査による失業率は5.1%と前月比横ばいで、FOMC委員の経済予測による長期均衡失業率(9月時点予測で4.9%)に近い低水準にある。もっとも内訳をみると、労働力人口、就業者数のいずれもが前月比減少しており、労働参加率は62.4%と90年代以降の最低水準を更新した。イエレンFRB議長が引用する労働市場ののりしろを表す指標としては、経済的理由によるパートタイマーが前月比減少(改善)しているものの、自発的離職者数は減少、求職意欲喪失者は増加しており、単月では悪化方向にある。総じて米雇用市場は8月以降やや軟化していると言わざるを得ない。原油安やドル高という外的要因はここ1年来不変である一方、小売業などの内需業種の雇用は堅調に増加していることから、この軟化が持続的なものとはまだ判断しがたいところである。金融政策については、FOMCが年内に利上げ開始を決定するとの個人予想は維持しておきたい。

20151003図8