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<経済レポート> 中期の循環に留意:米企業収益と設備投資

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7-9月期の米企業収益は6四半期ぶりに前年同期比減益となった。合わせて企業設備投資の実績も伸びが減速する傾向が続いている。海外景気減速、ドル高、原油価格低下等がこの背景にあると考えられる。短期的には企業の設備投資意欲回復の証跡もあるものの、中期的設備投資サイクルも勘案すれば、来年の米企業設備投資も緩やかな拡大にとどまりそうだ。

米7-9月期企業収益は6四半期ぶりの前年比マイナス

米7-9月期の企業収益(速報)が24日に公表された。企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は前年比-4.7%と6四半期ぶりの前年同期比減益に転じた。また総じて企業収益は2012年以降伸びが減速する傾向が続いている([第1図])。7-9月期企業収益の部門別内訳をみると、国内非金融機関が同-2.2%、国内金融機関が同-4.9%、海外部門が同-12.2%と、3部門すべてが減益に転じた([第2図])。これら3部門がそろって減益となるのはリーマンショック直後の2008年10-12月期以来のことである。

企業部門の収益悪化には、低金利継続による債券市場取引の縮小(国内金融機関)、海外景気減速による輸出低迷とドル高による海外収益縮小(国内非金融機関、海外部門)、があると考えられる。国内非金融機関の業種別内訳は12月の改訂値公表を待たねばならないが、引続き石油や公益事業が減益を続けていると見られる。一方で自動車販売の増加を中心とする内需は、一部に減速が見られるものの相対的に好調な収益を保っていると憶測できる。

企業収益の伸び悩みで、企業ネット・キャッシュフロー(税引後利益‐ネット配当支払+固定資本減耗)の伸びも減速している。7-9月期の企業ネット・キャッシュフローは前年比-4.6%とこれも6四半期ぶり前年比マイナスの伸びに転じた。中期的に見ても、企業収益、同ネット・キャッシュフローのいずれもが2012年以降総じて伸び悩んでいる([第3図])。

[第1図]
20151129図1

[第2図]
20151129図2

[第3図]
20151129図3

企業キャッシュフロー伸び悩み、設備投資循環はピーク接近の可能性

企業部門収益が伸び悩むのに合わせて、企業設備投資も減速傾向が続いている。GDP統計上の7-9月期の実質設備投資(構造物投資・機器投資・知的財産投資の合計)は前期比年率+2.4%と前期の同+4.0%から伸びが減速、前年比では+2.2%と4四半期連続で伸び率が低下している([第4図])。2015年通年の設備投資は前年比+3%台の伸びに留まる見通しで、これは昨年の同+6.2%から大幅な減速となる。

設備投資の長期的な循環を見ると[第5図]のようになる。設備投資の対GDP比率は概ね10年弱の周期で循環している。直近の同比率のピークは2008年1-3月期(13.5%)、その前のピークは2000年7-9月期(14.6%)である。現状は2014年後半から今年前半にかけて12.9%に達したのち、今年の7-9期には12.8%となっているが、明確なピークアウトの兆しはまだ見られない。しかし、直近の設備投資循環が8年であったことを勘案すれば、2008年にピークアウトした設備投資循環が今後1~2年の間に次のピークアウトを迎える可能性はそれなりに想定できる。

また中期的に見ると、GDPに対する設備投資の比率は依然低下傾向にある。設備投資が成長に占める割合の長期的低下の背景には、資本生産性の低下という構造要因があることは、8月2日付当レポートでも見た通りである。資本生産性〔=GDP/(ネット資本ストック*設備稼働率)〕は2014年時点で前年比-1.3%の低下、過去5年のうち4年間で前年比低下を続けている([第6図])。

[第4図]
20151129図4

[第5図]
20151129図5

[第6図]
20151129図6

設備稼働率の回復遅れもあり、今後も設備投資は緩やかに

さらに、2008年の金融危機以降大幅に低下した設備稼働率がいまだ危機前の水準に回帰していない、つまり余剰生産設備の存在も設備投資抑制要因となっている。10月時点の鉱工業設備稼働率は77.5%で、直近のピークである昨年11月の79.0%から1年間で約-1.5%も低下している(11月22日付<経済指標コメント>参照)。過去1年に鉱工業設備稼働率の急低下には、原油価格下落で鉱業及び公益事業の設備稼働率が大幅低下したことが寄与している。これに対し製造業の設備稼働率は上昇基調を保っているものの、金融危機前の2007年の水準にいまだ回帰していない([第7図])。

ここで、企業ネット・キャッシュフロー、鉱工業設備稼働率を外生変数とする企業設備投資の回帰分析をアップデートする(6月7日付当レポート参照)。企業ネット・キャッシュフローと設備稼働率はいずれも設備投資に4四半期先行させ、1992年1-3月期から今年の7-9月期までの91四半期のデータで推計した結果が[第8図]、[第1表]である。ここからは、来年2016年の企業設備投資は、今年の企業ネット・キャッシュフローの伸び減速と設備稼働率の大幅低下により、前年比マイナスの伸びに転化する計算になる。

こうした環境からは、依然として企業設備投資が急激に拡大する可能性は低いと考えられる。資本生産性低下、企業収益の伸び減速、余剰生産設備の存在という要因が今後も企業設備投資の伸びを抑制するだろう。2016年のGDP統計上の設備投資は今年の見通しである前年比+3%を大きく上まわらず、今年の反動要因を勘案しても前年比+3~+5%程度の伸びに留まると見ておきたい。

[第7図]
20151129図7

[第8図]
20151129図8

[第1表]
20151129表1

短期的には企業設備投資意欲拡大の証跡もある:中期的サイクルには留意

もっとも短期的には企業設備投資に対する明るい材料もある。一つは、設備投資の先行指標となる資本財の受注の回復である。10月の非国防資本財受注(除く航空機関連)前月比+1.4%の強めの伸びで2ヶ月連続の増加、また前年比では+0.4%と9ヶ月ぶりにプラスの伸びに転じた(11月28日付<経済指標コメント>参照)。

またサーベイによる企業の設備投資意欲は決して悪化はしていない。フィラデルフィア連銀製造業景況感調査における、設備投資DI(6ヶ月先)は11月時点で25.9ポイントと比較的高水準にある。中期的な同DIの動きを見ても、設備投資実績の低迷に比較して企業の設備投資意欲は持続的な水準を保っている([第9図])。これは、企業は潜在的には設備投資拡大の意欲を持っているにも関わらず、海外景気減速懸念やドル高などの想定外の要因がその実行の妨げになっている可能性を示唆している。少なくとも同時株安や原油安などの一時要因が剥落すれば企業設備投資が実施に移される潜在的な環境はあるといえる。

ともあれ、2015年を含め3年連続で前年比+2%台の成長を継続した米経済が循環的な減速サイクルに入る可能性を今後1、2年の間には見ておく必要があるだろう。足元の雇用拡大と労働市場の余剰解消は、これまでの米経済に対するデフレ圧力を後退させ、経済を上方スパイラルに入らせる契機である。その意味でFOMCが12月の利上げをはじめとする金融政策正常化を開始する見通しは理に適っている。しかしながら、8月の世界同時株安による一時見合わせにより利上げ開始がやや遅くなった可能性は否定できない。次回の景気減速局面までに金融政策ののりしろを積み上げるために残された時間はさほど多くはない。

[第9図]
20151129図9

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<経済指標コメント> 日本の10月実質家計消費支出は前年比-2.4%

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[日本]

家計調査(10月):実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比-0.7%(前年比-2.4%)

10月の家計調査、実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比-0.7%と2ヶ月連続の減少。前年比でも-2.4%と2ヶ月連続でマイナスの伸びとなった。実質消費水準指数(二人以上の世帯、季節調整済、2010年=100)は93.9と、消費税引上げ前の2013年の水準である99~100レベルを大幅に下回っている。10月の同指数は7-9月期平均を-0.8%下回っており、7-9月期に前期比プラスの伸びに回復したGDP統計上の実質家計支出が10-12月期に再びマイナスの伸びに転化する可能性を示唆している。勤労者世帯の実収入は前年比-0.9%、可処分所得は同-0.3%といずれも2ヶ月連続でマイナスの伸びとなり、所得増加ペースも減速している。7-9月期まで2四半期連続マイナス成長となった日本経済の今後の回復ペースが緩やかなものに留まる可能性を示唆する指標である。

20151128図1

全国消費者物価指数(10月、生鮮食品を除く総合指数)は前月比+0.1%(前年比-0.1%)

10月の全国消費者物価指数、生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコア指数)は前月比+0.1%と、前月まで4ヶ月連続横ばいののちわずかに上昇。しかし前年比では-0.1%と3ヶ月連続のマイナス伸び率となった。前年比の伸び率では、電気代(同-5.7%)、ガソリン(同-19.2%)などの価格が引き続き低下しており、エネルギーが指数の前年比の伸び率を-1.11%押し下げている。指数を押し上げているのは食料(同+15.9%)、テレビ(同+20.4%)など。一方で、食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比+0.1%と4ヶ月連続の上昇、前年比では+0.7%と前月の同+0.9%からやや伸び率を低下させたものの相対的には堅調な伸びである。コアコア指数の堅調な伸びは、失業率低下など需給の引き締まりによるインフレ圧力が潜在的には存在していることを示唆している。原油価格が現在の1バレル=40ドル台で推移すれば、昨年末の原油価格下落要因が剥落する来年には、コア指数は前年比+1%台半ば、コアコア指数は同+1%台後半に上昇すると筆者は試算している。コア指数2%台の目標はまだ先だが、デフレ圧力の後退は徐々に目に見えてきている。

20151128図2

完全失業率(10月)は3.1%(前月比-0.3%ポイント)

10月の完全失業率は3.1%(前月比-0.3%ポイント)と、1995年7月以来の低水準に低下した。完全失業者数が206千人(前月比-9.6%)と大幅減少したのが主因。筆者試算の労働参加率は59.6%(同-0.3%ポイント)と前月比でやや低下したものの、6ヶ月移動平均は中期的に上昇傾向を取り戻している。コアインフレ率を変化させない失業率として筆者が試算した日本の自然失業率は4%弱となる。すでに日本雇用市場は完全雇用以上の需要超過にあるといえる。

20151128図3

[米国]

中古住宅販売戸数(10月)は年率5360千戸(前月比-3.4%)、在庫期間は4.8ヶ月

10月の中古住宅販売戸数は年率5360千戸(前月比-3.4%)と、今年4月以来の水準に減少した。3ヶ月移動平均も同5403千戸(前月比-1.3%)低下しており、中古住宅販売戸数の伸びにはやや頭打ち感も見られる。一方、在庫期間は4.8ヶ月と前月の4.7ヶ月からやや長期化したものの依然として低位にあり、需給はまだタイトである。中央販売価格は前年比+5.8%と適正な上昇ペースにある。公表元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「10月の減少は過去2、3ヶ月の販売増加の反動」「在庫供給は中古・新築ともに今秋まで改善が見られず、消費者の選択肢の狭さが市場にとっての懸念」と述べている。

20151128図4

実質GDP成長率(7-9月期、改定値)は前期比年率+2.1%

7-9月期の実質GDP成長率(改訂値)は前期比年率+2.1%と、速報値の同+1.5%から上方改訂。需要項目別内訳は、個人消費同3.0%(速報値同+3.2%)、設備投資同+2.4%(同同+2.1%)、住宅投資同+9.5%(同同+6.1%)、政府支出同1.7%(同同+1.7%)、在庫投資寄与度同-0.59%(同同-1.44%)、純輸出寄与度同-0.22%(同同-0.03%)。上方改訂の主因は在庫投資の大幅上方改訂であり、これが成長率を速報値比+0.85%押し上げている。その他には、財・サービス輸出が同+0.9%と速報値の同+1.9%から下方改訂されているのが目立つ。個人消費・住宅投資・設備投資を合わせた国内最終民間需要は同+3.1%と、速報値の同+3.2%からほぼ不変。総じて内需項目には大きな改訂はなく、経済見通しに対する影響も限定的な改訂といえる。米経済は引き続き堅調な拡大を続けており、10-12月期にも2%台の成長持続を見込む。

20151128図5

耐久財受注(10月)は前月比+3.0%、除く運輸関連同+0.5%、非国防資本財受注(航空機関連を除く)同+1.3%、同出荷同-0.4%

10月の耐久財受注は前月比+3.0%の大幅増、変動の大きい運輸関連を除くベースでも+0.5%の増加。設備投資の先行指標となる非国防資本財出荷は同+1.3%と強めの伸びで2ヶ月連続の増加、前年比でも同+0.4%と9ヶ月ぶりにわずかにプラスの伸びに転じた。企業部門の受注は低迷から底入れの兆しが見られる。GDP統計上の機器投資の基礎統計となる同出荷は前月比-0.4%と減少、10月の同出荷は7-9月平均を下回るスタートとなった。海外景気減速やドル高で設備投資は依然緩やかな拡大ペースにとどまっているが、受注ペースの回復は今後にとっての朗報である。

20151128図6

新築住宅販売戸数(10月)は年率495千戸(前月比+10.7%)、在庫期間は5.5ヶ月

10月の新築住宅販売戸数は年率495千戸(前月比+10.7%)と、前月の同447千戸(同-12.9%)の反動で大幅増加した。ただし、販売戸数の6ヶ月移動平均は489.5千戸と5ヶ月連続低下しており、中古同様に住宅販売戸数の頭打ち感を示唆する結果となっている。一方在庫期間は5.5ヶ月と標準とされる6ヶ月を下回っているものの今年に入り長期化傾向にある。11月8日付<経済レポート>で見たようにマクロでの住宅需要はまだ拡大していると考えられることから、住宅販売は引き続き堅調な拡大を続けると見る。新築・中古ともに在庫不足が販売ペース減速の要因と考えられる。

20151128図7

実質個人消費(10月)は前月比+0.1%、個人消費支出価格指数は前年比+0.2%、同コア指数は同+1.3%

10月の実質個人消費は前月比+0.1%と弱めの伸びに留まった。内訳は、自動車販売増加を反映した耐久財消費が同+0.2%の伸びだったが、非耐久財消費が同+0.1%と小売売上の回復の遅れを反映して弱めの伸び、またサービス消費が同横ばいにとどまったことも全体の数字の抑制要因となった。実質個人消費の前年比の伸び率は+2.7%と15ヶ月ぶりに+3%を割り込んでおり、個人消費拡大ペースには減速感もある。しかしながら、8月の同時株安が消費者センチメントに与えた悪影響はほぼ現状では剥落しており、10月の強い雇用の伸び回復と賃金上昇加速で、今後再び個人消費は拡大ペースを加速させると見たい。10-12月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+2%台の伸びを引き続き見込む。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.1%(前年比+0.2%)、同コア指数は前月比横ばい(前年比+1.3%)。コアPCEインフレ率は依然相対的に高めの安定した前年比上昇率を維持している。原油価格が現状水準で推移すれば来年にはPCEデフレーター、同コアともに前年比+1%台後半の伸びに回復すると筆者は試算している。コアPCEの安定推移は原油価格下落によるインフレへの下方圧力が一時的なものであったことの証跡であり、12月のFOMC利上げ開始予想を支持する結果である。

20151128図8


<経済レポート> 対話の言葉は「次回会合」:10月FOMC議事要旨

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10月FOMC定例会合の議事要旨からは、投票メンバーが12月利上げ開始を適切と見る強い意図をもって声明文を変更したことが読み取れる。筆者個人の12月利上げ開始予想と整合的な内容であるとともに、その後に公表された経済指標もこの個人予想を更に支持するものである。12月15-16日のFOMCで0.25%の利上げ、その後1会合おきに利上げが実施され、2016年末のFF金利誘導目標レンジを1.25-1.50%とする個人予想を維持する。

労働市場の累積的改善を評価する意見が優勢:10月に雇用は改善済

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は10月27、28日の定例会合でFF金利誘導目標レンジ引上げを見送ったが、声明文には「次の会合で(FF金利)誘導目標レンジを引き上げることが適切かどうかを決定するにあたり、、」との文言を新たに採用、12月利上げ開始の可能性を示唆した(11月1日付当レポート参照)。18日に公表された同会合の議事要旨からは、労働市場、インフレ率、金融市場変動の影響、そして適切な利上げ開始時期とその後のペースについての議論の経緯が読み取れる。本レポートではこれらの項目に沿って、12月利上げ開始との個人予想の点検を行う。

まず、労働市場と賃金について。10月定例会合時点で雇用統計は9月分まで公表済で、公表時点では同月の非農業部門雇用者数が前月比+142千人に減速していた。これを踏まえた10月FOMCの議論では、多数の(a number of)参加者が「最大雇用と完全に整合する労働条件には更なる進捗が必要」と述べ、10月利上げは時期尚早との意見で概ね一致している。ハト派的意見として数人の(several)参加者から「最近の労働市場統計は労働市場見通しの不確実性を増した」との慎重な見方もあった。しかしながら、他の(others)参加者は「最近の広範囲な労働市場指標は余剰の更なる縮小を示唆していると見ており、また今年初めからの労働市場の著しい累積的改善の重要性を強調した」とされた。またいくらかの(some)参加者は「労働市場の余剰は無いか僅少と判断」したと述べた。また「9月の雇用増ペースは労働市場余剰の安定か縮小を示すペースを上回っている」「雇用増加の減速は労働市場のタイト化の証跡」として、9月雇用統計結果をも労働市場余剰縮小の証と見做す意見もあった。数の上では(つまり数名のseveral参加者を除いては)、9月雇用統計時点でもなお労働市場は改善しているとの意見が優勢だったといえる。また賃金上昇率については、多数の(a number of)参加者が「緩やかな賃金上昇率は、、生産性上昇率の低下が労働市場余剰による賃金上昇圧力を相殺したことの反映」と、当レポート同様の意見(5月11日付当レポート参照)を述べているほか、「企業コンタクト先のいくらかは、採用の困難さが増して賃金上昇圧力になっている」ことが多数の参加者から報告された。

10月会合時点で一部に見られた労働市場余剰と賃金についての懸念は、その後公表された10月雇用統計でほぼ払しょくされたといえる。11月6日に公表された10月非農業部門雇用者数は前月比+271千人に急増した。また、心強いのは賃金上昇率の加速である。10月の時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)の前年比上昇率は+2.2%と、コア消費者物価指数の上昇率に歩調を合わせる形で昨年11月以来の水準に上昇した([第1図])。これは、失業率(10月時点で5%)が自然失業率(FOMC委員の9月時点の経済予測による長期均衡失業率中央値は4.9%)に接近したことで、賃金上昇率が加速を始めたことの証と見ることができる。

[第1図]
20151123図1

代替的インフレ指標は2%レベルの高水準を維持:原油価格・ドル高要因は一時的

次に、インフレ率についての議論を見る。議事要旨によれば、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)、コアPCEデフレーターのいずれもが現状では2%のFOMCインフレ目標を下回っているとしながらも、「Trimmed mean PCE、同CPIのいずれもが、コアPCEインフレを上回って推移している」との指摘がされた。“Trimmed mean PCE”はダラス連銀が公表する指数で、PCEデフレーター構成費目のうち変動の大きい費目上位と小さい費目上位を除いて作成された指標である。同指標は9月時点で前年比+1.9%と推計されている([第2図])。同指標はかつてタカ派の代表であったダラス連銀フィッシャー前総裁(本年9月で退任、キャプラン現総裁と交代)がしばしば引用していた指標であり、今回の指摘も同連銀のキャプラン総裁、ないし同様にTrimmed mean CPIを公表しているクリーブランド連銀のこれもタカ派とされるメスター総裁によるものと想像される。また、何人かの(a few)参加者は「9月の消費者物価指数(CPI)データはインフレ率のいくぶんの強まりと整合的」とのべた。さらに参加者は、エネルギー価格下落やドル高によるインフレ率低下は「一時的」と見る点で一致している。総じてインフレ率についてもタカ派的見方が優勢だった模様だ。一方で、数人の(several)参加者からは、市場ベースのインフレ期待低下から「インフレの下方リスク」を見るハト派的意見もあったとされた。

更に、グローバルな金融市場の変動については「前回のFOMC会合以降後退した」とされ、8月の世界同時株安に端を発する金融市場変動は一旦終了したとの見方をFOMCはとっている。更に、信用スプレッド拡大、レバレッジドローンや不動産価格上昇、さらにプエルト・リコの財政問題も金融システムへの課題として議論されたが、いずれも金融市場へのシステミックリスクは限定的と評価されている。

これらの見方が現状でも妥当することは、10月FOMC会合後の指標等からも明らかである。会合後に公表された10月分コアCPIは前年比+1.9%と相対的に高水準の上昇率で推移しており、エネルギー価格等の一時的下落要因を除けばインフレ率はFOMCの目標である2%に近い水準で推移しているといえる(11月22日付<経済指標コメント>参照)。また、原油価格が1バレル=40ドルを超える水準が維持できれば、総合PCEデフレーターの伸びも来年には2%水準にまで上昇すると筆者は試算している。この観点からは、インフレ見通しはほぼ利上げ開始を正当化できるところにまで安定しているということができるだろう。金融市場については、NYダウは11月20日時点で17823ドルと、同時株安開始直前を上回る水準にまで回復している。小売売上はこの影響からか8、9月に一時低迷したが、10月にはわずかながら増加に転じており、またミシガン大学消費者信頼感指数も10月、11月と連続して上昇に転じている。これらは株価下落による消費マインドへの影響が一時的であったことを示唆している。

[第2図]
20151123図2

「次回会合」文言は12月利上げ開始示唆の意図で挿入された

最後に、利上げ開始時期とその後の利上げペースについての議論を見る。議事要旨によれば、ほとんどの(most)参加者は「彼らの現状の経済状況評価と経済活動及び労働市場の見通しによれば、(金融政策正常化開始の)条件は次回会合までに十分に満たされるだろうと予想した」とされている。この議事要旨においてはこの文言が12月利上げ開始を強く示唆するものの一つである。ただしその後に続けて、他の幾人かの(some)参加者は「12月までの情報ではFF金利誘導目標レンジ引上げを正当化する可能性は低いと判断した」と慎重な意見が記され、利上げ積極派と慎重派の意見が相応の紙数を割いて記されている。

早期利上げ積極派の意見として、多数の(a number of)参加者が、利上げ開始の遅れにつき「市場参加者にとっての不確実性を増す」「長期にわたる低金利政策後の金融市場の不均衡を更に増長する」リスクがあるとされたほか、「委員会の目的に向けた(利上げ条件に対する)進捗の評価はこれまの累積的な改善に照らして評価されるべきで、月次変動に重きを置きすぎるべきでない」との意見が出された。一方で、利上げ慎重派の意見として数人の(several)参加が「経済活動とインフレの明らかな下方リスクが残存している」「インフレ率が2%以下に長期間とどまった場合、時期尚早な利上げが委員会のインフレ目標への信頼を損なう可能性がある」と述べた。さらに「追加緩和の選択肢を示す」ことが健全との意見までもが数人の参加者から出されている。

しかしながら、声明文に「次回会合において利上げ判断」との文言を追加することについて議事要旨は「投票メンバーは、この文言変更が、決定はされていないものの次回会合において正常化プロセスを開始することが適切になるであろうとの意味を持たせるものであることを強調した」とした。声明文文言が単に利上げ開始判断に中立な意図でなく、12月利上げ開始を強く示唆する意図をもって挿入されたことがここから明らかである(もっともこの文言に対しても2、3名のa couple of投票メンバーから12月利上げを強く示唆しすぎるものとして懸念が表明された)。この議事要旨の記述こそが、投票メンバーの大半による12月利上げ予想を市場に発信する強い意図を反映したものと見たい。

12月FOMCでの利上げ開始予想を維持:一部ハト派メンバーは反対の可能性も

以上より、12月15、16日の定例会合でFOMCが0.25%の利上げを実施するとの従前の筆者個人予想を維持する。また議事要旨内で、その後の利上げペースは従前通り「徐々に」とされていることからも、来年以降の利上げは0.25%ずつ1会合おきに実施され、2016年末のFF金利誘導目標レンジは1.25-1.50%と引き続き予想する。また、「次回会合」文言挿入は、今後も会合毎の利上げ実施如何につき市場期待を適切に形成するための、いわば新たな対話文言といえよう。「次回会合」または「次々回会合」文言は今後も声明文で期待形成の文言として使用される可能性がある。

12月利上げ開始を主張する意見についていくらかコメントしよう。議事要旨によれば、利上げ開始時期の遅れによるリスクとして市場期待に対するFOMCの信頼低下や、緩和政策による不均衡是正の遅れを挙げる意見が見られた。筆者個人は、これに加えて提出された「(利上げ条件に対する)進捗の評価はこれまの累積的な改善に照らして評価されるべきで、月次変動に重きを置きすぎるべきでない」との意見に重きを置きたい。金融政策は何年かの周期において実施されるものであり、単月の指標に左右されるべきではない。その意味では、失業率の低下は既に労働市場の余剰がほぼ解消されたことを示唆するものであり、この静態は多少の景気ノイズでは変動しにくい。更に、利上げ開始からその効果が発言するまでのラグを考えれば、ゼロ金利政策からの正常化開始は労働市場等の完全正常化に先んじて実施されるのが適切である、また、今後の景気循環で次の景気減速局面が来た際に、利下げの余地を残すためにはある程度の政策金利の水準が必要である(いわゆる「政策金利ののりしろ」)。

議事要旨の内容から、12月利上げ開始に対する慎重な意見が相応にあったこと(利上げ時期とペースの議論において1パラグラフを割いて数人の(several)参加者の意見が議事要旨に記されたこと)、また「労働市場の“更なる改善”の程度について投票メンバーが異なる見方を示した」ことから、12月会合の利上げは全会一致にならない可能性を見ておくべきであろう。本議事要旨に頻繁に登場するこの数人の(several)参加者(おそらくそのうちの2、3名a couple ofは投票メンバー)に含まれるのは、従来からハト派の代表とされるシカゴ連銀エバンス総裁、また10月に利上げに消極的ともとれる発言をしたタルーロ理事やブレイナード理事(10月19日付当レポート参照)だろうと推測できる。

なお、2014年にFRBが公表した「金融政策正常化の原則と計画」によれば、FF金利誘導目標レンジの引上げは、一義的には超過準備預金付利金利(IOER)の調整により行われ、オーバーナイトリバースレポ(RRP)はこの補完手段として用いられる予定である。またFRBの保有証券の償還金再投資停止および売却開始は上記レンジの引上げ後に実施される予定である([第1表]、またIOERとRRPがFF金利誘導目標レンジを形成するメカニズムにつき2014年8月24日付当レポート参照)。今後は利上げペースとともに、保有証券の償還金再投資停止や、売却開始のタイミングとペースも、FRB金融政策手段としてより複雑な評価と判断が必要になるだろう。

[第1表]
20151123図3

<経済指標コメント> 日本の7-9月期実質GDP成長率は前期比年率-0.8%

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[日本]

実質GDP成長率(7-9月期、1次速報値)は前期比年率-0.8%

7-9月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率-0.8%と、前期の同-0.7%に続き2四半期連続のマイナス成長となった。需要項目別内訳は、家計消費同+2.1%、住宅投資同+8.0%、企業設備同-5.0%、公的需要同+0.7%、純輸出寄与度同+0.8%、企業在庫寄与度同-1.9%。成長を押し下げたのは企業設備と企業在庫増加幅の大幅な低下で、この2項目で成長率を合計同-2.6%押し下げている。特に企業設備投資が2四半期連続のマイナス成長となったのが目立つ。一方で他の需要項目はすべて成長率を押し上げており、内容的には見かけほどは悪くない数字である。筆者個人の予想比でも、家計消費、住宅投資、純輸出の3需要項目が上ぶれ、企業設備と企業在庫が下振れと、主に企業部門の減速が予想比大きかったことが成長悪化の主因である。家計消費、企業設備、住宅投資を合わせた国内最終民間需要は同+0.9%と、前期の同-3.4%からプラス成長に転じた。しかしながら、中期的には日本の経済成長ペースは順調とはいえない。2012年10-12月期から今年の7-9月期までの12四半期の成長率は年率換算で+0.4%にとどまっている計算になり、これは潜在成長率(内閣府推計では年率+0.5%)をやや下回る水準にまで低下したことになる。消費税引上げ前の駆け込み需要期である2014年1-3月期に一時解消したマイナスの需給ギャップも、筆者試算では7-9月期には約-1.9%にまで拡大した計算になる。10-12月期は、企業在庫調整ペースが減速することを主因に同+0.8%レベルのプラス成長への転化を見込んでいるが、機械受注の低迷など企業部門は引き続き下方リスクを孕んでいる。現状の試算では2015年暦年成長率は前年比+0.6%、2015年度は前年度比+1.0%程度の成長になる計算である。

20151122図1

[米国]

消費者物価指数(10月)は前月比+0.2%(前年比+0.2%)、同コア指数は前月比+0.2%(前年比+1.9%)

10月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.2%と3ヶ月ぶりの前月比上昇、前年比でも+0.2%と前月の同横ばいからわずかに上昇率を高めた。食料及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.2%と上昇が継続、前年比では+1.9%と3ヶ月連続で横ばいの伸び、相対的に高水準の上昇率を維持した。品目別内訳では、ガソリンが前月比+0.4%と3ヶ月ぶり前月比上昇に転じたほか、運輸サービス同+0.2%、医療サービス同+0.8%などが前月比上昇、中古車同-0.3%、衣服同-0.8%などが下落した。前年比の伸び率では、住居家賃(前年比+3.7%)、帰属家賃(同+3.1%)がコアCPIを押し上げている構造は変わらない。しかし総合的には、前年比のコアCPIインフレ率+1.9%は、FRBが目標とするPCEインフレ率2%にほぼ近い水準で推移しており、また総合CPIインフレ率も昨年末の原油価格急落要因が剥落する来年初には同1%台後半に上昇すると筆者は試算している。インフレ率の観点からは、12月のFF金利誘導目標レンジ引上げの条件は整っていると見る。

20151122図2

鉱工業生産指数(10月)は前月比-0.2%、設備稼働率は77.5%

10月の鉱工業生産指数は前月比-0.2%と2ヶ月連続の低下。内訳は製造業同+0.4%、鉱業同-1.5%、公益事業同-2.5%。原油価格低下の影響を受ける鉱業と、振れの大きい公益事業の低下が全体指数を押し下げた一方、製造業は3ヶ月ぶりの上昇に転じており、単月の数字としては見かけほど悪くはない。しかしながら、鉱工業生産全体のトレンドを表す前年比の伸び率は+0.3%にまで低下している。製造業は同+1.9%と相対的に高い伸びを維持しかつ底入れの兆しもみられるものの、生産は依然低迷といってよい。背景としては、海外経済減速と国内設備稼働率低下による設備投資意欲の低下、在庫調整に伴う生産調整が考えられる。これらの要因から、鉱工業生産の伸びは今後年末にかけても急拡大は考えにくい。設備稼働率は77.5%(前月比-0.2%ポイント)と2ヶ月連続の低下、今年6月以来の低水準に低迷している。

20151122図3

住宅着工戸数(10月)は年率1060千戸(前月比-11.0%)、着工許可件数は同1150千戸(同+4.1%)

10月の住宅着工戸数は年率1060千戸(前月比-11.0%)と大幅に減少、今年3月以来の低水準となった。6ヶ月移動平均も同1133.7千戸(同-1.9%)と7ヶ月ぶりに低下に転じた。地域別内訳では、北東部同+10.2%、中西部同+15.0%、南部同-18.6%、西部同-16.2%とばらつきが見られ、単月の指標としては悪化したものの一時要因である可能性が高い。住宅市場の需給は依然タイトであり、住宅需要が今後も堅調な住宅着工を支えると見たい。着工許可件数は同1150千戸(同+4.1%)と堅調な増加となった。

20151122図4


<経済レポート> 慎重に楽観的:米ホリデー商戦予想

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今年のホリデー商戦売上高を前年比+3.2%と個人予想する。今年の商戦は昨年の前年比+4%台好調な伸びの反動もあり、前年比+3%前半に減速せざるを得ない。しかしこの数字は堅調な個人消費の拡大を表象するものである。ホリデー商戦売上の原資となる個人所得は雇用増と賃金上昇により再拡大し商戦を支えるだろう。もっとも米経済全体が昨年同時期に比べると相対的に加速度が低下していることから、予想に対するリスクはやや下方と言わざるを得ない。

今年のホリデー商戦売上高は前年比+3.2%を個人予想する

10月の米小売売上高は前月比+0.1%と、8、9月の2ヶ月連続横ばいからわずかながら回復し、8月の世界同時株安による米個人消費の減速が一時的なものであったことが示唆された。11月に入り、米国はホリデー商戦(クリスマス商戦)のシーズンに入った。当レポートでは、同時株安の影響から回復したあとの、今年のホリデー商戦の動向を占う。

ホリデー商戦は通常、感謝祭翌日の金曜日(=ブラックフライデー、今年は11月27日)からクリスマス前日まで(12月24日)までの期間を指す。今年の場合この期間は昨年より1日多い28日間であるが、ホリデー商戦の期間としてはやや短い方に属する。しかし、ここ数年の継続的傾向としてホリデー商戦期間が分散化している、すなわち、小売業による販促はブラックフライデー以前に開始され、クリスマス以降も継続する傾向があるとされている。全米小売業連盟(NRF)は13日のプレスリリースで「感謝祭週末の買い物はここ数年で大きく変化し、もはやホリデーシーズンの“開始”とは見なせない」と述べている。筆者は、ホリデー商戦期間売上として「自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く小売売上高の11月、12月合計」という定義を用いている。また後に述べる米小売業界団体もそれぞれやや異なる小売売上の範囲による11月、12月売上合計をホリデー商戦売上としている。

筆者の定義による今年のホリデー商戦売上高を、筆者個人は前年比+3.2%程度と予想する([第1図])。これは数字上、好調だった昨年の同+4.4%の伸びからは大幅に売上が減速となる一方で、米個人消費が堅調に拡大を継続しているとの見方に基づくものである。以下では、この個人予想の背景となる小売売上や個人所得の動向を見ていく。

[第1図]
20151115図1

賃金上昇で今後可処分所得の伸びは加速へ

今年のホリデー商戦売上の伸び予想が昨年よりも-1%以上低下することは、この一年間に個人消費の拡大ペースが減速することを必ずしも意味しない。昨年11月、12月時点(原油価格急落の時期)の消費者物価上昇率は前年比+0.8~1.3%のレベルにあった。現在のそれは原油価格下落の影響で前年比ほぼゼロ%である。つまり小売売上高が前年比-1%強の減少を示したとしてもそれは物価要因で説明でき、実質ベースの個人消費は昨年同様の拡大を続けているといえる。実際、直近の個人所得統計によれば、9月時点の実質ベース個人消費支出は前年比+3.2%と、減速の兆しを見せながらも昨年同時期の同+3.0%を上回っている([第2図])。

世界同時株安後の小売売上の拡大ペースも、トレンド的には大きな減速は見られない。10月の小売売上高(自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く)は前年比+2.9%と、4月、6月のボトムから反発ののちこのボトムをまだ下回っていない([第3図])。また、昨年同時期の同売上の伸び率は同+3.8%であり、これと比較した今年10月売上の伸び減速はちょうどインフレ率低下幅に相当する。

小売売上を支える個人所得の伸びも堅調といえる。2015年7-9月期の名目可処分所得は前年比+3.6%と、4-6月期の同+3.4%から伸びが加速している([第4図])。もっともこれは、昨年7-9月期の同+4.2%と比べると減速感は否めない。減速の主因は個人所得のうちの雇用者報酬である。雇用者報酬の伸び減速は、昨年の時間当たり賃金の伸び率が前年比+2%台にまで高まったのに対し、今年に入り同-2%割れにまで減速したことが主因である。しかしながら直近の雇用統計によれば、10月の時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.2%と昨年11月以来の水準に伸び率が加速している。労働資源余剰の低減により時間当たり賃金伸び率は今後も本格的に上昇すると見る。更に、株価上昇等により金利・配当所得の増加ペースが加速している。以上より個人所得の伸びは11月以降さらに加速して、ホリデー商戦を押し上げる可能性が高い。

[第2図]
20151115図2

[第3図]
20151115図3

[第4図]
20151115図4

個人の消費傾向も高水準

可処分所得のうち個人消費に回されず貯蓄に回される比率を表す貯蓄率は低位で安定推移しており、同時株安後も貯蓄率が上昇した形跡は見られない([第5図])。これはまず、インフレ率低下により得られた追加的な実質所得を消費者は貯蓄に回さずに消費に振り向けていることを表している。また、消費者の将来への懸念の度合いを表すともいえる貯蓄率が、同時株安前後も低位安定している」ことは、家計の消費意欲が同時株安にも拘わらず安定していることを示唆している。

追加的な1単位の所得を消費に振り向ける割合を示す限界消費性向も高水準にある。個人所得を可処分所得の変数と見る消費関数から、比較的短期の8四半期ローリング回帰による限界消費性向を推計すると、7-9月期時点で0.89と昨年同時期の0.76を大幅に上回っている。また長期の20四半期ローリング回帰による限界消費性向は7-9月期時点で1.0と、金融危機直前の2007年以来の高水準にある([第6図])。

消費者サーベイによる消費者センチメントも同時株安の一時的軟化のあとすぐに回復している。11月ミシガン大学消費者センチメント指数(速報)は93.1(前月比+3.4%)と2ヶ月連続の上昇([第7図])。これは実質個人消費との相関からは前年比+3.1%の強い実質個人消費の伸びに相当する(10月19日付当レポート参照)。

[第5図]
20151115図5

[第6図]
20151115図6

[第7図]
20151115図7

個人予想へのリスクはやや下方:米小売業界団体は強気の予想

月次小売売上高統計からのボトムアップ推計では、自動車・ガソリン・レストランを除く小売売上高が11月、12月にそれぞれ前月比+0.4%の伸びを実現すれば、筆者個人予想のホリデー商戦売上前年比+3.2%が達成できる計算になる。10月の自動車・ガソリン・レストラン除きの小売売上は前月比+0.3%の伸びであった。上記の個人消費動向を表す諸指標や、10月に雇用統計において非農業部門雇用者数増加と時間当たり賃金の伸びが加速していたこと等から、年末にかけてこの伸びが+0.4%に加速していく可能性が高いと見る。

この個人予想に対するリスクはしかし、やや下方にあると言わざるを得ない。まず昨年においては、実質個人消費、限界消費性向、消費者センチメントのいずれもが一部低位ながら上昇加速局面にあったのに対し、今年のそれは相対的に高位ながら8月の一時軟化も含め横ばい傾向局面にあると言わざるを得ない。また、中国の景気減速懸念や種々の地政学リスクが急激に変動すれば、消費者センチメントが急激に悪化しこれがホリデー商戦売上を抑制するリスクがあることである。これらのリスクが示現した場合、ホリデー商戦売上は同+3.0%位にまで下振れする可能性があることを認識し、慎重に楽観的な見方をしておきたい。

なお、米小売業界団体の今年のホリデー商戦予想は筆者個人予想比強気である。全米小売業連盟(NRF)は今年のホリデー商戦売上を前年比+3.7%と予想している(10月8日鵜付NRFプレスリリース)。国際ショッピングセンター評議会(ICSC)も同+3.4%とこれに次ぐ強めの予想を出している(10月13日付ICSCプレスリリース)。これらの予想は同時株安後に小売売上が8、9月と不振だった時点での予想であり、その意味でも業界団体は今年の商戦にかなり高い期待を持っているといえる(なお、NRF、ICSCいずれも10月分小売売上高統計が公表前される前の予想である)。

(訂正) 11月23日、ホリデー商戦期間に関する記述を次のように訂正しました。「今年の場合この期間は昨年より1日多い28日間であるが、」

<経済指標コメント> 米10月小売売上高は前月比+0.1%

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[日本]

景気ウォッチャー調査(10月):現状判断DIは48.2(前月比+0.7ポイント)、先行き判断DIは49.1(同横ばい)

10月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは48.2(前月比+0.7ポイント)と3ヶ月ぶりの上昇。内訳は家計動向関連DIと企業動向関連DIが上昇し、雇用動向関連は低下だった。しかし、総合DIの上昇幅は過去2ヶ月の低下をカバーできず、3ヶ月連続で横ばいを示す50を下回った。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは49.1(同横ばい)、こちらも3ヶ月連続で50を下回っている。家計動向関連DIが上昇するも企業動向関連・雇用関連DIが低下した。総じて街角景気は依然景気の減速を示唆している。7-9月期の実質GDP成長率は2四半期連続のマイナス成長になるリスクが出てきているが、この傾向は10月に入っても大きな好転は見られない。

20151114図1

機械受注(9月、船舶・電力を除く民需)は前月比+7.5%(前年比-1.7%)

9月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+7.5%と4ヶ月ぶりかつ大幅に増加した。しかしながら過去3ヶ月の減少をカバーできず、前年比では-1.7%と2ヶ月連続のマイナス。結果7-9月期の同受注は前期比-10.0%の大幅マイナス成長となった。7-9月期のGDP統計上の企業設備投資は4-6月期のマイナス成長に続き前期比横ばい程度を見込んでいるが、この傾向は10-12月期にも尾を引きそうだ。総じて企業部門は海外景気減速の影響を受けて今後も緩やかな拡大にとどまりそうだ。

20151114図2

[米国]

企業在庫(9月)は前月比+0.3%、企業売上高は同横ばい

9月の企業在庫は前月比+0.3%と強めの伸びだったが、過去2ヶ月の積み上げペース減速により、3ヶ月前対比の伸びは3ヶ月連続で低下した。7-9月期のGDP統計(速報値)では企業在庫が成長を前期比年率-1.44%と大幅に押し下げたがこれと概ね整合する結果である。企業売上高は前月比横ばいと前月の同-0.6%の大幅減少からの回復は見られなかった。結果在庫売上高比率は1.38倍と2009年6月以来の高水準に上昇した。在庫循環図は現在在庫調整局面にあり、在庫積み上げペースは確実に減速している。しかし企業売上の不振で売上対比の在庫水準は依然高水準にある。10月以降も在庫調整が生産と成長の抑制要因となりそうだ。

20151114図3

小売売上高(10月)は前月比+0.1%、除く自動車関連同+0.2%

10月の小売売上高は前月比+0.1%と前月の同横ばいからわずかに持ち直し、除く自動車関連も同+0.2%と前月の同-0.4%から3ヶ月ぶりにプラスの伸びに回復した。業種別内訳は、自動車及び同部品ディーラーが新車販売増加にも拘わらず予想外の同-0.5%の減少。家具店同+0.4%、建設資材店同+0.9%、薬局同+0.7%などが売上増、一方で家電店同-0.4%、ガソリンスタンド同-0.9%などが売上減少で、内容はまちまちである。個人消費は総じて自動車販売中心に堅調であり、また自動車を除くベースでも3ヶ月ぶりに売上増加したことで、8、9月の個人消費の不振が一時的だったとの結果になった。10-12月期のGDP統計上の実質個人消費は筆者個人予想である前期比年率+2%台後半を達成できるペースである。なお、11月のミシガン大学消費者センチメント指数は93.1(前月比+3.4%)と、7月以降3ヶ月連続低下ののち2ヶ月連続上昇した。消費者センチメントの低下も一時的であり、10月雇用統計で確認された雇用拡大ペースの再加速と合わせ、今後の堅調な消費拡大を示唆している。10月分雇用統計と合わせ、12月のFOMC利上げ開始個人予想を支持する結果といえる。

20151114図4


<経済レポート> 需要はまだある:米住宅市場需給

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米住宅市場が販売・着工ともに活況である。金融危機後数年間の住宅着工減少と、ここ数年間の世帯増加ペースの再加速もあり、潜在的には住宅市場の需給はタイトな状況にある。一方で、持家比率の低下とその背景と考えられる厳格な住宅ローン信用条件が住宅需要を出口で抑制する要因となっている。ただ、信用条件には緩和の兆しも見られることから、今後も米住宅市場は堅調な拡大を継続すると見る。

住宅市場は販売・着工ともに好調

米住宅市場関連指標の改善が目立っている。販売市場では、7-9月期の中古住宅販売戸数が年率5477千戸と、2007年1-3月期以来8年半ぶりの高水準になった。中古住宅の在庫期間は、標準的とされる6ヶ月を下回る状態が続いており、需給はかなりタイトだといえる。しかしながら一方で住宅価格の上昇ペースは適度である。S&Pケース・シラー住宅価格指数(20都市)は8月時点で前年比+5.1%の伸びに留まっており、中古住宅在庫期間との相関から推計される上昇率(筆者推計では同+11%レベル)をかなり下回っている。これは消費者にとっては住宅を購入しやすい環境であるとともに、住宅市場の需給タイト感にも拘わらずバブルの兆候はないことの証跡と見ることができる。

需給がタイトな中、住宅の供給すなわち住宅着工戸数も好調に増加している。7-9月期の着工戸数は年率1163千戸と、2007年10-12月期以来の高水準に回帰している。GDP統計上の実質住宅投資は7-9月期に前年比+8.9%の伸び、4四半期連続で+8%台の安定した拡大を続けている。しかしこの伸び率は2004年頃の住宅バブル期の+10%を超える伸びに比して緩やかである。

これらの状況から、住宅市場は今後も安定的な拡大を続ける可能性が高いと見ることができる。以下では、マクロ環境も含めた住宅需要の状況を見ていくこととする。

[第1図]
20151108図1

住宅資本のネットストックは金融危機以降頭打ち状態

[第2図]は米国の世帯増加数と住宅着工戸数の関係を見たものである。これによれば、2000年代前半頃までは世帯増加数と住宅着工戸数がほぼ見合っていたが、2006年頃の住宅バブル最盛期には世帯増加数の減速にも拘わらず住宅着工がこれを上回って増加していた。住宅バブル崩壊から金融危機の間は世帯増加数が減速する伴い住宅着工も減少したが、総じて着工が世帯増加数を上回っていた。しかしながら、2010年以降世帯増加数が再び加速すると今度は住宅着工が世帯増加数を下回り、そのまま現在に至っている。2014年時点の5年移動平均は、世帯増加数が前年比+1209千世帯、住宅着工戸数が同+782千戸、差引-428千戸の着工戸数過小になっている。少なくとも過去5年間においては、住宅着工戸数が世帯数の増加に追いついていない、つまり住宅建設市場が需要超過になっている可能性が憶測できる。

次に、GDP統計上の住宅投資のストックの推移を見る。[第3図]は住宅資産ネットストックとその対GDP比率の推移である。住宅資産ネットストックは2000年代前半には前年比+2~3%のペースで増加していたが、住宅バブル崩壊後の2000年代後半からほぼ横ばいに転じた。2013~2014年にはやや持ち直して同+0.6~0.7%の伸びになっている。住宅資産ネットストックの対GDP比率は2009年の109.5%をピークに低下を続け、2014年時点では2000年代以降最低の100.5%にまで低下している。住宅資産のストックは2000年時点と比較しても低位にあり、潜在的な供給が過小である可能性を示唆している。なお米国勢調査局によれば、2014年時点の全米の世帯数は1億2323万世帯、住宅戸数は1億3396万戸であり、数の上では住宅戸数が世帯数を約8.7%上回っているが、この住宅戸数余剰幅は2010年時点の12.1%を下回るものである。

住宅着工が2010年代以降増加しているにもかかわらずネットストックが増加しないのは、統計上常に住宅の資本減耗がストックのマイナス要因として計上されているからである。GDP統計上、毎期住宅ネットストックの約-2.4%が資本減耗計上されており、グロス住宅投資から資本減耗を差し引いたネット住宅投資は2009~2011年の間はほぼゼロに近い。ネット住宅投資は2014年時点で1066億ドルと、2005年のピークの約5分の1にとどまっている([第4図])。以上から、米国では世帯数増加ペースや経済規模に比して住宅建設や住宅資本が過小で、潜在的には住宅需要は供給よりも大きいと考えられる。

[第2図]
20151108図2

[第3図]
20151108図3

[第4図]
20151108図4

住宅市場の需給を表す指標は需給の引き締まりを示唆している

住宅需給を決定する他の要因は次の通りである。まず、持家比率(占有住宅総数のうち持家保有者により占有されている住宅の割合)は2004~2005年の69%台をピークに一貫して低下傾向を辿っており、今年の7-9月には63.5%と90年代以降で最低の水準にある([第5図])。持家比率の低下は、消費者の住宅購入意欲の低下の反映ともいえ、結果的に住宅着工戸数を抑制する要因になる。

持家保有が拡大しない要因として、住宅ローンの残高の伸び悩みがある。FRBの資金循環統計によれば、2015年4-6月期時点の住宅ローン残高は88.7兆ドルで、2013年以降ほぼ横ばいにとどまっている([第6図])。金融危機以降減少の一途をたどった住宅ローン残高は、底入れしたとはいえまだ増加には転じていない。銀行の信用条件がまだ相対的に厳格であることが住宅ローンの伸びを抑制している要因であると推測できる。

次に、持家と賃貸住宅それぞれの需給を示す空室率の状況を見る。空室率は持家・貸家いずれも2010年以降一貫して低下傾向にあり、住宅市場の需給が持家・賃貸いずれもタイト化を続けていることが示唆されている。特に貸家空室率は今年の4-6月期に6.8%、7-9月期に7.3%と、90年代の標準である8%を下回るレベルにまで低下しており、賃貸市場においてより需給がタイトであることが示唆されている([第7図])。また、住宅売買市場の需給を表す在庫期間も、売買市場の9割を占める中古住宅市場において9月時点で4.9ヶ月と、標準とされる6ヶ月を大幅に下回っている。住宅販売市場の需給も極めてタイトだといえる。

[第5図]
20151108図5

[第6図]
20151108図6

[第7図]
20151108図7

持家比率低下が住宅投資の抑制要因:信用条件は緩和の兆し

ここで、人口要因、持家比率要因、賃貸需給要因(貸家空室率)、販売需給要因(中古住宅販売在庫期間)の4つの決定要因を外生変数として、GDP統計上の実質住宅投資の要因分解を試みる。結果は[第8図]、[第1表]の通りである。ここからは、持家比率が住宅投資の重要な決定要因となっていて、同比率の低下が住宅投資の押し下げ要因となっていることがわかる、一方販売需給、賃貸需給は、上記の通りまだタイトな状況であるが、2015年に入ってからタイト化ペースが減速した(在庫期間は低位ながら2012年以降はほぼ横ばい、貸家空室率は7-9月期に+0.5%の大幅な上昇を示した)ことから、実質住宅投資押し上げ効果は直近では低減している。

上記の要因分解からは、今後の米住宅市場はタイトな需給を反映して今後も堅調に拡大するものの、持家比率の低下を主因として、過度な増加ペースになることはなさそうだといえる。背景として、住宅ローン残高の増加の兆しが見られないことが、持家保有を通じた住宅投資に対する抑制要因となると考えられる。米住宅市場は潜在的な需要に牽引されて拡大を続けているが、今のところバブルな要素は数値上も状況証拠上もなく、適度な拡大スパイラルを描きつつあるといえるだろう。

なお、住宅ローンの信用条件については一部にこれを緩和する動きも見られる。10月時点のFRBシニア・ローンオフィサー・サーベイによれば、住宅公社保証適格の住宅ローンの信用条件を過去3ヶ月間に緩和したとする回答が全体の12.1%を占め、この割合は前回7月調査の11.3%を上回っている。住宅価格の回復と個人所得の増加に伴い、住宅ローンの信用条件はこれまでの厳格化方向から徐々に緩和方向に転じつつある。この傾向が適度に継続すれば、消費者の持家保有意欲が上昇し、住宅市場はより加速したペースでの拡大も可能である。2015年通年のGDP統計上の住宅投資は前年比+8%強の伸びとなり、昨年の同+1.8%の不振から大幅に加速する結果になる見込みである。2016年については、2015年の加速の反動による減速を見込んでも、信用条件の緩和により住宅投資はほぼ同じく、10%をやや下回るペースでの拡大を続けると個人的には見ている。こうして住宅供給が拡大すれば、住宅価格の伸び率も前年比+10%を下回る適度なペースでの上昇に留まると見たい。

[第8図]
20151108図8

[第1表]
20151108表1


<経済指標コメント> 米10月非農業部門雇用者数は前月比+271千人

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[米国]

ISM製造業指数(10月)は50.1%(前月比-0.1%ポイント)、非製造業指数は59.1%(同+2.2%ポイント)

10月のISM製造業指数は50.1%(前月比-0.1%ポイント)と4ヶ月連続の低下で、景気判断の分かれ目を示す50%に接近した。総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注52.9%(同+2.8)、生産52.9%(同+1.1)、雇用47.6%(同-2.9)、入荷遅延50.4%(同+0.2)、在庫46.5%(同-2.0)。雇用DIが大幅低下して6ヶ月ぶりに50%を割り込んだのが目立つ。しかし総合DIを押し下げたのはこの雇用DIと在庫DIのみで、先行性のある新規受注DIや一致指標である生産DIはいずれも上昇しており、見かけほどには悪い数字ではないと見たい。調査先のコメントからは「為替が業績に大きなインパクトを与えている(化学製品)」「エネルギー市場の継続低迷が他の領域に波及している(コンピューター製品)」と米ドル為替レート上昇や原油価格低下が悪影響を与えている様子が見てとれる一方「総じて業績は上向き(輸送部品)」「いくらか減速だが受容可能(機械)」など、総じて景気悪化は安定しつつあるコメントも見られる。一方、非製造業指数は59.1%(同+2.2%)と3ヶ月ぶりの上昇。総合DIを構成する4つのDIの内訳は事業活動63.0%(同+2.8)、新規受注62.0%(同+5.3%)、雇用59.2%(同+0.9)、入荷遅延52.0%(同-0.5)と、入荷遅延を除く3つのDIがいずれも上昇した。調査先のコメントには「経済は安定している(金融)」「売上全体は強い(小売)」などポジティブなものが散見される。全体を通じて、製造業指数の低迷と非製造業指数の好調さの格差が目立つが、これは輸出や原油の影響を受けやすい製造業と、堅調な内需に押し上げられる非製造業の近いと見ておきたい。

20151107図1

新車販売台数(10月、乗用車及び軽トラック)は年率18.1百万台(前月比+0.1%)

10月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率18.1百万台(前月比+0.1%)と4ヶ月連続の増加、水準は2005年7月以来10年以上ぶりの売上台数となった。低ガソリン価格と自動車ローンの信用条件緩和に雇用拡大が押し上げ要因となっていると考えられる。また報道によれば、値引き等のインセンティブも販売押し上げ要因であるが、消費者需要増で値引き水準はここ3ヶ月ほど横ばいにとどまっている(11月3日付WSJ紙)。2015年1月~10月の新車販売台数は年率17.41百万台で、これは2000年の同17.34百万台を超える過去最高の売上となるペースである。米国の個人消費が引き続き堅調といえるが、年率18百万台を超える自動車販売はかなり飽和状態に近いと憶測できることから、今後増加ペースは減速せざるを得ないと見たい。

20151107図2

雇用統計(10月):非農業部門雇用者数は前月比+271千人、失業率は5.0%(前月比-0.1%ポイント)

米10月雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+271千人と前月の同+137千人から急加速。3ヶ月ぶりに同+200千人を超え、かつ予想を大幅上回る増加ペースとなった。非農業部門雇用者数の増加幅の3ヶ月移動平均も同+187.0千人と3ヶ月ぶりに上昇に転じた。雇用拡大が加速した業種は、建設業同+31千人、小売業同+43.8千人、専門ビジネスサービス同+78千人など。建設業の雇用加速が住宅建設の拡大を、小売業が個人消費の加速を、専門ビジネスサービスが景気敏感セクターの景気の加速を示唆している。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.2%と前月の同+2.0%から上昇ペース加速、今年2月の同+1.7%のボトム以降賃金上昇率が上昇基調に転じつつある状況が明らかになっている。家計調査による失業率は5.0%(前月比-0.1%ポイント)と2008年4月以来の水準に低下、米議会予算局が推計する自然失業率(5.1%)を下回り、労働市場が需要超に転じてきていることを示唆している(FOMC委員が予測する長期均衡失業率は4.9%)。内容も、前月比で労働力人口及び就業者の増加と失業者の減少を伴うよい失業率低下である。その他労働資源余剰を表象する指標としては、労働参加率が62.4%と依然低位で前月比横ばいにとどまったが、10月は。「経済的理由によるパートタイマー」数は5767千人(前月比-269千人)の大幅減だった。総じて単月の雇用増加ペースは回復、労働資源余剰も解消しつつある指標だといえる。これらは、世界同時株安の悪影響を見るために9、10月に利上げを見送ったFOMCにとり、利上げの条件が再びほぼ満たされたと評価できる。FOMCが12月定例会合で利上げ開始を決定するとの個人予想を維持する。

20151107図3

<経済レポート> 12月利上げ予想を維持:10月FOMC声明文

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FOMCは10月の定例会合で利上げ開始を見送ったが、声明文では12月会合の利上げ判断の可能性を強く示唆する文言を挿入した。他の経済指標の状況も合わせて、12月利上げ開始との個人予想を維持する。今後の注目指標は引き続き10月、11月分の雇用統計である。

9月FOMCは利上げ見送り:雇用拡大ペースの減速を認識

10月27、28日のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合で、FOMCはFF金利誘導目標レンジ引上げを見送った(投票メンバーのうちリッチモンド連銀ラッカー総裁は0.25%の利上げを主張して決定に反対)。28日に公表されたFOMC声明文のポイントは大きく3つある。①雇用拡大ペース減速の認識、②世界経済減速と市場混乱へのリスク認識後退、③12月定例会合での利上げ判断示唆、である。特に次回12月定例会合での利上げ決定を示唆する文言が声明文に挿入されたことは、引続きFOMC投票メンバーの過半数が12月利上げを志向していることが示唆されている。これは、これまでの当レポートの見方を支持する結果である。本レポートでは10月声明文をもとにFRB金融政策の今後を占うこととする。

まず、雇用減速について。28日FOMC声明文では基調判断として「経済活動は適度なペースで拡大した」と従前通り経済拡大ペースが適度であることを確認した。しかし、雇用については「雇用増加のペースは減速し、失業率は横ばいのままだった」と、直近の雇用統計の軟化を反映した新たな文言が挿入された。前回9月会合以降に公表された9月分雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比+142千人増にとどまり、かつ8月分も下方改訂されて同+136千人と、2ヶ月連続で+200千人を下回った。失業率は8月、9月ともに5.1%で、低位ながら横ばいにとどまっている(10月3日付<経済指標コメント>参照)。

もっとも上記文言の後には、従前からの文言「労働市場指標は総じて労働資源の余剰が今年初めから減退したことを示唆している」を存置している。ここからは、FOMCが8、9月単月の雇用統計の悪化を労働市場の基調判断の材料とはしているものの、労働市場の余剰についてはほぼ利上げ条件を満たしつつあるとの判断を維持していることがうかがわれる。つまり今後の雇用指標改善次第では労働市場の観点からの利上げ条件は整いうると引き続き考えられる。

同時株安のリスクは後退したとの認識を示唆

次に、8月の世界同時株安を契機とした海外景気減速懸念と市場混乱について。前回9月会合声明文で挿入された「最近の世界の経済金融の動向は経済活動をいくぶん抑制するかもしれず、短期的なインフレに下方圧力をかける可能性がある」との文言は10月声明文では削除された。代りに、「委員会は、、世界の経済と金融の動向を監視している」との文言が新たに付け加えられた。

この文言変更は、海外景気減速懸念と市場混乱が米経済とインフレに与える下方リスクにつきFOMCがリスク認識を後退させたことを示唆している。前回9月会合時点では、8月同時株安の米経済への影響を見極めるには至らなかったが、10月会合時点ではNYダウは同時株安直前の水準である17500ドル台を回復して金融市場の混乱は一旦収拾されていたといえる。マクロ経済への影響については上記の9月雇用統計の軟化や9月小売売上の軟化が見られたものの、急激な経済活動の減速は確認されていない。FOMCとしては状況を引き続き「監視」するものの、そのリスクを経済見通しに織り込むことは一旦取りさげたと見ることができる。

この声明文の内容は、これまでの当レポートの見方とも一致している。10月11日付当レポートでも見たように、株価はテクニカルには今後上昇方向を示唆する形を形成している。中国をはじめとする海外景気の減速やドル高は、輸出の鈍化を通じて米経済に今後も抑制要因となることは考えられる。しかし、内需中心の米経済は中国等の経済減速の影響は相対的には受けにくい位置にある。ドル高による輸出の減速は統計上も確認されているところではあるが、7-9月期GDP統計からは、純輸出の成長率への寄与度はほぼゼロであり、成長を悪化させるには至っていない。7-9月期にも国内最終民間需要が3%台の成長を示現したことは、外需の悪化を内需が十分にカバーできることの証左である([第1図])。

[第1図]
20151101b図1

「12月会合での利上げ判断」を声明文に明記した

最後に、利上げの判断につきFOMCは「次の会合で(FF金利)誘導目標レンジを引き上げることが適切かどうかを決定するにあたり、、」との文言を10月声明文に新たに採用した(従前の文言は「この誘導目標をどれくらいの期間維持するかを決定するにあたり」)。ここには、依然年内利上げ実施を適切と見るFOMCの見通しが強く表明されている。年内利上げは9月のFOMC委員経済予測において、17人中13人が予測していたことであり、声明文の内容はこの予測と整合させたものに過ぎないとの見方もできよう。しかしながら、声明文が利上げ決定の可能性のある時期(「次回会合」)を具体的に示すのは異例のことである。10月に入り、FRBのブレイナード理事、同タルーロ理事の発言を年内利上げに消極的と受け取る報道がなされた(10月19日付当レポート参照)が、声明文を見る限りでは、FRB理事を含む投票メンバーの過半数は年内利上げを志向していると考えられる。この文言挿入の経緯については3週間後に公表予定の議事要旨で確認したい。

ちなみに「委員会は、労働市場に更にいくらかの改善が見られ、インフレが中期的に2%の目標に回帰するとの合理的確信を持った時点で」利上げを開始するのが適切とする従来の文言は維持されている。ここからは、今後12月会合までに公表される10月、11月分の雇用統計が9月までに比べて改善していることと、消費者物価指数などのインフレ指標がこれまで以上に低下しないことが12月利上げ判断の大きなポイントになるといえる。

なお、経済指標の多くは、FOMC委員が年内利上げの前提とする予測にほぼ整合しているといってよい。2015年の実質GDP成長率(委員予測中央値は10-12月期前年同期比+2.1%)は、7-9月期に前期比年率+1.5%に減速したものの、10―12月期に同+2%台に回復すれば、同期の前年同期比成長率は委員予測通り+2.1%に着地すると筆者は試算している。失業率(委員予測中央値は10-12月期平均5.0%)も現在の5.1%からの更なる改善は十分に可能で、委員予測の5.0%は射程内である。PCEインフレ率(同+0.4%)の10-12月期平均は前年同期比+0.5%程度と筆者は試算しており、これも委員予測に整合するものである。なお、昨年末の原油価格急落要因が剥落する来年初からは、PCEインフレ率は総合、コアともに前年比+1%台後半に上昇すると筆者は試算している([第2図])。

[第2図]
20151101b図2

12月利上げ開始の個人予想を維持する

以上より、FOMCが12月定例会合でFF金利誘導目標レンジを0.25%引上げるとの従前からの当レポートの予想を維持することとする。10月声明文の文言は12月利上げの意図を強く示唆するものであったし、世界同時株安の米経済やインフレに与える下方リスクは現状限定的と見られる。経済指標も利上げの条件をほぼ満たすものとなっている。9月に軟化の見られた雇用や小売売上も、消費者センチメントの改善や企業景況感の底入れの兆しからは、10月以降再び巡航速度に回帰すると見たい(10月19日付当レポート参照)。

FOMCが12月に0.25%の利上げを実施したあとは、1会合おきに利上げを実施して2016年末のFF金利誘導目標レンジを1.25-1.50%となるという従前からの筆者個人予想も維持する。9月FOMC委員経済予測からは、初回利上げ後の利上げペースは概ね1会合おきに0.25%との予測がコンセンサスであることが読み取れる。7-9月期までの実質GDP及びPCEデフレーター実績を反映したテイラー・ルール推計によれば、2016年10-12月期の適正FF金利は1.25%と推計できる([第3図])。

年内利上げが適切との9月時点のFOMC委員の大多数の予測を覆して12月利上げを見送ることは、中銀の金融政策への信頼維持の観点からは相応のリスクがある。仮に12月利上げを見送る場合には確固たる理由が説明できることが必要であろう。同時株安を契機とした金融市場の混乱が継続していた場合や、経済指標の急激な悪化が顕著な場合でなければ、9月時点のFOMC委員予測をたやすく変更することはとるべき政策とは考えにくい。

[第3図]
20151101b図3

リスク要因は雇用統計とドル高

上記の個人予想に対するリスクシナリオは、まず10、11月の雇用統計が予想に反して悪化してFOMCが12月利上げを見送るシナリオである。しかし、新規失業保険申請件数が継続的に減少していること(10月17日〆週時点の4週移動平均263.25千件)、ISM非製造業指数の雇用DIが引き続き高位にあること(9月時点3ヶ月移動平均は57.2%)などからは、雇用が8月以降急激に減速したという背景は読み取れない。10、11月の非農業部門雇用者数がいずれも前月比+200千人を上回れば12月利上げは確実とみたいが、逆にいずれも+200千人を下回った場合、利上げ判断は微妙になるリスクがある。

次に、海外中銀の金融政策との協調性の問題が考えられる。欧州中央銀行(ECB)ドラギ総裁は22日のECB理事会会合後の記者会見冒頭声明で「金融緩和政策の水準は、12月の金融政策会合において再検証される必要がある」と述べ、12月の追加緩和の可能性を強く示唆した。日銀は30日の金融政策決定会合で追加緩和を見送ったものの、「経済・物価情勢の展望」において2%インフレ率達成時期見通しを2016年度から2017年度に後倒しており、追加緩和の可能性は排除できない状況だ。しかし、FRBが海外中銀金融政策とのデカップリング回避を主たる理由として利上げを見送ることは考えにくい。これまでのイエレン議長発言からは米国利上げの海外経済への影響の可能性への言及は殆ど見られない。配慮するとすれば、利上げによるドル高進行が米経済に与える悪影響である。ECBの追加緩和観測で22日以降ユーロは米ドルに対し更に急落している。

なお、総合的に雇用・インフレのいずれもがゼロ金利維持を正当化しにくい状況にある中、利上げ開始は早期に行うのが妥当と個人的には考える。市場が利上げを相応に織り込んだ環境では利上げを早めに実施し、今後景気サイクルが下向いた場合に利下げの余地を残しておくことは中期的な金融政策戦略としても有効だからである。

[第4図]
20151101b図4

<経済指標コメント> 米7-9月期実質GDP成長率は前期比年率+1.5%

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[日本]

鉱工業生産指数(9月)は前月比+1.0%

9月の鉱工業生産指数は前月比+1.0%と3ヶ月ぶりの上昇。出荷指数も同+1.3%と上昇し、結果在庫指数は同-0.4%、在庫率指数は同-2.9%と低下した。全体では単月の出荷増で在庫調整が進んだ形。公表元の経済産業省は基調判断を「一進一退」とし、前月の「弱含み」への引き下げから1ヶ月で上方修正した。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷指数は同-1.9%と2ヶ月連続の低下、結果7-9月期の資本財出荷指数は前期比-0.4%と3四半期連続のマイナスの伸びとなった。7-9月期GDP統計上の企業設備は2四半期連続のマイナス成長に下振れするリスクが出てきている。7-9月期の在庫指数は前期比横ばいとなり、予想以上に在庫調整が進んだことから、GDP統計上の企業在庫は成長にほぼゼロの寄与に下振れする可能性が出てきた。

20151101図1

家計調査(9月):実質家計消費支出(2人以上の世帯)は前月比-1.3%(前年比-0.4%)

9月の家計調査、実質家計消費支出は前月比-1.3%と3ヶ月ぶりに低下した。季節調整前前年比では-0.4%と2ヶ月ぶりに低下。実質消費支出指数は94.6と、消費税率引上げ前の2013年の水準(年間平均=100)をも下回っており、家計消費が中期的に低迷していることを示唆している。7-9月期の実質家計消費支出指数は前期比+0.6%と前期の同-3.2%からプラスに転化しており、GDP統計上の7-9月期実質家計消費はプラスに転化する可能性がまだ高い。なお、内閣府の消費総合指数は8月までで前期比年率+2.1%とプラス成長に転化しているが、9月分が-1.3%低下すると同+0.9%となり、筆者個人予想同+1.0%とほぼ同じレベルに着地する見込みである。上記の資本財出荷と企業在庫の下振れ、及び9月までの貿易収支統計における7-9月期貿易赤字の拡大状況から、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率-0.4%と2四半期連続のマイナス成長に下振れするリスクが高くなっている(10月4日付け当レポートにおける筆者個人予想は同+0.8%のプラス成長)。

20151101図2

全国消費者物価指数(9月、生鮮食品を除く総合)は前月比横ばい(前年比-0.1%)

9月の全国消費者物価指数、生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は4ヶ月連続となる前月比横ばい。衣料(同+6.9%)等が前月比での指数を押しあげ、電気代(同-1.8%)等が指数を押し下げた。前年比では-0.1%と2ヶ月連続でマイナスの伸び。エネルギーが引き続き前年比の伸びを-1.13%と大きく押し下げている。一方、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は前月比+0.1%、前年比+0.9%と、4ヶ月連続で前年比の伸びを上昇させている。エネルギー価格低下でコア指数の前年比伸び率は低迷しているものの、コアコア指数の上昇率は着実に加速しており、労働市場を中心とする需給の引き締まりがデフレ圧力を後退させている可能性は今年に入って継続している。なお、原油価格が現在の1バレル=40ドル台を維持すれば、昨年末からの原油価格下落要因は間もなく剥落し、来年初にはコア指数の前年比伸び率も+1%に上昇する計算になる。ただし、日本のフィリプス曲線の形状からは、失業率が2%レベルにまで低下しなければ2%コアインフレ率は達成できない計算になる。2%コアインフレ率の達成は引き続き困難と見たい。なお、日本銀行は10月30日の「経済・物価情勢の展望」で示した政策委員の大勢見通しで、コアインフレ率が2%に近づく時期を、7月時点見通しの2016年度から2017年度に後倒しした。

20151101図3

完全失業率(9月)は3.4%(前月比横ばい)

9月の完全失業率は3.4%と前月比横ばい。引き続き97年以来の低水準にある。就業者数は前年比+0.6%と4ヶ月連続の増加、労働力人口も同+0.5%と2ヶ月連続の増加で、労働市場の拡大をともなう失業率の低位安定である。労働参加率は59.9%(前月比+0.3%ポイント)と2010年1月以来の水準に上昇した。労働市場は依然タイトな需給にあるが、労働力人口の増加がこれを緩和する方向に働いている。

20151101図4

住宅着工戸数(9月)は年率900千戸(前月比-3.3%)

9月の住宅着工戸数は年率900千戸(前月比-3.3%)と減少。3ヶ月移動平均は915千戸と今年5月の水準に低下しており、昨年末以来に順調に増加してきた住宅着工の増加ペースにやや頭打ち感もみられる。7-9月期の住宅着工戸数は前期比-3.9%と前期の一時的急増の反動で大幅減少となったが、7-9月期のGDP統計上の住宅投資はこれまでの着工の積み上げで前期比プラスの伸びを継続すると見る。

20151101図5

[米国]

新築住宅販売戸数(9月)は年率468千戸(前月比-11.5%)、在庫期間は5.8ヶ月

9月の新築住宅販売戸数は年率468千戸(前月比-11.5%)と3ヶ月ぶりかつ大幅な減少。地域別には北東部(同-61.8%)の急減をはじめ、中西部・南部・西部のすべての地域で販売戸数が減少した。これにより在庫期間は5.8ヶ月と前月の4.9ヶ月から大幅長期化した。販売戸数の単月の急減の要因は定かではないが、今年に入り3、6、9月の四半期末月にいずれも季節調整済の新築住宅販売戸数が一時的に減少しており、季節調整による統計の歪みである可能性もある。一方で中古住宅販売は9月に大幅増加しており、現状では住宅販売市場の堅調な拡大は継続していると見たい。

20151101図6

耐久財受注(9月)は前月比-1.2%、除く運輸関連同-0.4%、非国防資本財(航空機関連を除く)受注同-0.3%、同出荷同+0.5%

9月の耐久財受注は前月比-1.2%と2ヶ月連続で減少、運輸関連を除くベースでも同-0.4%と2ヶ月連続の減少となった。設備投資の先行指標となる非国防資本財(航空機関連を除く)受注も同-0.3%と2ヶ月連続減少。GDP統計上の機器投資の基礎統計となる同出荷は同+0.5%、7-9月期の同出荷は前期比年率+2.2%と2四半期連続のプラス成長となった。なお、この後に公表された7-9月期GDP統計では機器投資が同+5.3%と前期の同+0.3%から成長が加速したとの結果になった。総じて企業設備投資は昨年末のマイナス成長から回復しているものの、そのペースは依然緩やかなものにとどまっている。先行性のある受注の伸び悩みは今後も設備投資拡大ペースが緩やかにとどまる可能性を示唆している。海外経済減速やドル高が企業設備投資意欲を抑制していると考えられる状況は不変である。

20151101図7

実質GDP成長率(7-9月期、速報値)は前期比年率+1.5%

米7-9月期実質GDP成長率は前期比年率+1.5%と、前期の同+3.9%から減速した。需要項目別内訳は、個人消費同+3.2%、設備投資同+2.1%、住宅投資同+6.1%、政府支出同+1.7%、企業在庫寄与度同-1.44%、純輸出寄与度同-0.03%。筆者個人予想同+2%台半ばに比べて結果は下振れたが、企業在庫が予想以上に成長を大きく-1.44%押し下げたのが下振れの主因で、個人消費や住宅投資は予想通り堅調な拡大。設備投資は予想比やや弱めだったが、振れの大きい構造物投資(同-4.0%)が要因、機器投資は同+5.3%と成長ペースが加速した。在庫調整の加速も在庫循環の状況と整合している。個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要は同+3.2%と2四半期連続の3%台成長で、内需は引き続き堅調である。一方で財・サービス輸出は同+1.9%と前期の同+5.1%から伸びが減速している。在庫調整で一時的に7-9月期の成長は減速したものの、10-12月期には再び2%台の成長に回帰すると見る。

20151101図8

実質個人消費(9月)は前月比+0.2%、個人消費支出価格指数は前年比+0.2%、同コア指数は同+1.3%

9月の実質個人消費は前月比+0.2%と、前月の同+0.4%からやや減速したものの堅調な伸び。自動車販売増加を反映して耐久財消費が同+0.6%の増加、一方で小売売上の不振を反映して非耐久財消費は同-0.3%と5ヶ月ぶりに減少、サービス消費は同+0.3%と堅調な拡大だった。結果7-9月期の実質個人消費は前期比年率+3.2%と2四半期連続+3%台の好調な拡大を維持した。10-12月期はやや伸びが減速して同+2%台後半の伸びを見込んでいるが、今後も個人消費が米経済を牽引する構造は不変と見る。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比-0.1%、前年比+0.2%とゼロ近辺の伸びに留まっているが、食品及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.1%、前年比+1.3%と相対的に安定推移している。原油価格が現状の1バレル=40ドル台を維持できれば、昨年末からの原油価格下落要因が剥落して来年初には総合PCE、コアPCEいずれも前年比+1.5%レベルの伸びを回復する見込みである。

20151101図9