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<経済レポート> 緩やかに減速へ:米経済定点観測

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米経済は年末にかけやや減速した模様だが、今年2015年通年の成長率は潜在成長率を上回る前年比+2.4%は確保できたと予想する。来年2016年は循環的な景気減速局面に入る可能性が高く、またFRBの利上げが個人消費を幾分抑抑制しよう。来年の成長率は同+2.0%と今年に比べやや低下すると見る。もっともこれも潜在成長率を上回る成長であり、国内にバブル要素が見られないことから景気急悪化の懸念はない。下方リスク要因はエネルギー価格の更なる低下と、海外景気急減速のショックである。

10-12月期は+1.2%に減速の見込み

米経済は雇用拡大と賃金上昇を背景に個人消費を牽引役として堅調な拡大を続けている。一方で海外景気減速とドル高による輸出の低迷は景気抑制要因となっている。来年2016年は、これらに加えてFRBの継続的な(ただし漸進的な)利上げが景気拡大ペースをいくぶん減速させることになると見る。本レポートでは、需要項目毎に今年の10-12月期及び来年2016年の米経済成長率を占うこととする。

今年の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.2%程度に減速すると見る。実質個人消費は11月に前月比+0.3%の強い伸びを示したが、10月分が下方改訂されたことで、12月が同+0.3%の伸びとなっても10-12月期は前期比年率+2.2%レベルの成長にとどまり、前期の同+3.0%から大きく減速する計算になる。設備投資(機器投資)の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機を除く)は11月までで前期比年率-4.4%と3四半期ぶりのマイナス成長となっている。12月に前月比+0.5%の反発を見込んでも、GDP統計上の機器投資は前期比年率-3%のマイナス成長になる見込みだ(以上、12月26日付<経済指標コメント>参照)。設備投資(構造物投資)は同+1.0%レベルのプラス成長を見込む。基礎統計となる民間非住宅建設支出は10月時点で前期比プラスの伸びを確保しており、これまでの建設支出の積み上がりのGDPへの反映ラグを考えれば、10-12月期もプラス成長を見込める([第1図])。住宅投資の基礎統計となる住宅着工戸数は11月までで前期比-3.5%のマイナス圏にある。しかしながらこれも過去の住宅着工増の積みあがりを勘案すれば、10-12月期にも住宅投資は前期比年率+7.0%の伸びが可能である([第2図])。

在庫投資は在庫調整の継続により成長にマイナスの寄与を見込む。企業在庫統計によれば、10月時点で企業在庫の3ヶ月前対比の伸びは4ヶ月連続で縮小しており、在庫循環図上は在庫調整局面にある。純輸出は依然輸出の減速を主因として成長にマイナス寄与となると見る。10月までの10-12月期実質ベースの財の貿易収支赤字は3四半期連続の拡大となるペースである。以上、個人消費の循環的な減速と設備投資の減少を主因として、2015年10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+1.2%、2015年通年の成長率を前年比+2.4%と個人予想する。なお、通年成長率+2.4%は昨年2014年の通年成長率と横ばいの伸び率である。

[第1図]
20151230図1

[第2図]
20151230図2

来年2016年は+2.0%成長を予想:循環的減速局面へ

来年2016年については、通年成長率を前年比+2.0%と個人予想する。これは今年の予想値同+2.4%からやや減速となる。その背景として、のちに述べるFRB利上げに伴う個人消費等へのマイナス効果に加え、米経済サイクルが減速局面に入る可能性が高いことがあげられる。

現在の米経済の中期的な立ち位置を見てみよう。[第3図]は年次の実質GDP実績とそれをHPフィルターで平滑化(1980-2015年)したトレンドGDPである。これによれば、2015年の実質GDP(筆者予想)は7年ぶりにトレンドGDPを上回る計算になる。[第4図]はこれらを前年比の成長率に引き直したものである。これによれば、実質GDPは2015年まで6年連続でトレンド成長率かそれを上回る成長を続けている。仮にこのトレンドGDPを潜在GDPと見做すならば、米経済は既に需要超過の状態にありかつ5年連続で潜在的成長率を超えるペースの成長を続けていることになる。実績GDPがトレンドGDPを上回った場合の過去の成長の動向を見ると、いずれもその時点から成長率が低下する傾向が見られる([第5図])。この経験則に照らすならば、2016年以降米経済の成長率は徐々に減速する可能性が高いことになる。全米経済研究所(NBER)の認定による直近の米国のリセッション始期(景気のピーク)を遡ると、2007年12月、2001年3月、1990年7月、1981年7月と、概ね10年周期の景気サイクルになっている。直前の景気のピークの2007年12月から数えて現在は既に8年が経過していることから、そろそろ次の景気のピークが訪れてもよい時期である。2016年の成長ペースが減速局面に入るであろうとの見方は、この経験的な景気サイクルとも整合的である。

なお、米議会予算局(CBO)の推計する潜在GDP(2015年8月「財政・経済見通し」による)は依然実質GDPの実績を上回っており、2015年現在で約-3.2%のマイナスの需給ギャップ(需要不足)が存在する計算になる。ただ、CBO推計でも2015年の潜在成長率は前年比+1.7%とされており、米経済は2015年まで6年連続で潜在成長率を上回る成長を続けたことになる。

[第3図]
20151230図3

[第4図]
20151230図4

[第5図]
20151230図5

金利上昇が個人消費を抑制、設備投資は低迷が続こう

以下では、需要項目毎に来年2016年の成長率を予想していく。2016年の個人消費は前年比+2.5%と、今年の予想値同+3.1%から大きく減速すると予想する。個人消費減速の要因は主にFRBの利上げによる個人消費抑制効果である(12月13日付当レポート参照)。雇用と賃金がそれぞれ前年比約+2%の増加・上昇を続けることで名目の消費者購買力は約+4%が確保できるが、インフレ率が年末にかけ約+1.7%に上昇することで実質購買力は同+2~+3%に留まる。さらに2016年の間に合計+1%の利上げが行われることにより、個人消費が2016年10-12月期には前年比約-0.7%押し下げられる計算になる。最近の動向を見ても、実質個人消費の前年比の伸び率は2015年1-3月期をピークに減速傾向にある([第6図])。原油価格下落によるインフレ率低下にも拘わらず実質ベースの消費の伸びが減速していることは、個人消費が循環的な減速に入っていることを示唆している。結果、2016年の実質個人消費の伸びは当初+2%台から10-12月期には+2%割れにまで減速すると見る([第7図])。もっとも、個人消費は巡航速度の2%台の拡大で堅調な経済拡大を支え続けることに変わりはない。

設備投資は2016年も緩やかな拡大にとどまらざるを得ない。設備投資の先行性ある決定要因である企業ネット・キャッシュフローと設備稼働率がいずれも低下していることは、今後1年の企業設備投資拡大ペースが現状よりも減速することを示唆している(11月29日付当レポート参照)。企業ネット・キャッシュフローは7-9月期に前年比-4.7%と6四半期ぶりのマイナスの伸びに転化した。設備稼働率は11月時点で77.0%と、昨年11月の79.0%をピークに原油価格下落とともに低下を続けて低水準にある。直近の設備投資の伸び率の推移を見ても、2012年のピーク以降減速傾向が継続している([第8図])。2016年の設備投資は通年で前年比+3%台と、今年並みの低成長に留まると予想する。住宅投資は今年の同+8%台の成長からわずかに減速するも、同+7%台の伸びは維持できると見る。11月8日付当レポートでみたように、中期的な米国の住宅需要はまだ相応にある。最近の住宅販売の減速は、むしろ住宅投資の伸び悩みによる在庫不足という供給側の要因にあると考える。需要側では引き続きタイトな信用条件が住宅ローンの伸びを抑制していることも供給側の要因として存在する。

企業在庫は、在庫循環図が依然在庫調整局面にあることから、来年前半は成長にマイナスの寄与を続けると見る。海外景気の減速やエネルギー産業の稼働率低下等により、企業在庫は調整をつづけながらも相対的には高水準にある。特に企業の在庫売上高比率が10月現在で1.38倍と2009年以来の高水準にあることから、厳しい在庫調整の成長へのマイナス寄与は無視しえない可能性がある。純輸出は、海外景気減速とドル高の影響による輸出減速が続くことから、来年一杯成長にマイナス寄与すると見る。米ドルの上昇と輸出の減速にはここ1年あまりの間顕著な連関性が見られる([第9図])。ドル高傾向は来年のFRB利上げ継続による金利差拡大で、来年一杯も継続するだろう。

[第6図]
20151230図6

[第7図]
20151230図7

[第8図]
20151230図8

[第9図]
20151230図9

リスク要因はエネルギー価格と海外からのショック

以上、2016年の米成長率の個人予想を四半期ベースで示すと[第10図]のようになる。2016年通年の成長率は前年比+2.0%とやや減速するものの直ちに悲観するには及ばない。FRBの利上げによるマイナス要因にも拘わらず、この成長率は依然潜在成長率を上回っている。また、(自動車ローンや非投資適格債など一部を除いて)米経済にバブルの兆候が見られないことは、持続的成長が通常より長めに続く可能性を示唆している。その意味では、2010年代後半のどこかで訪れる可能性がある景気後退局面に必要な利下げの余地(いわゆる「金融政策ののりしろ」)を確保しておくために、今年12月に実施されたFRBによる利上げは妥当な判断だったといえる。

これらの予想に対する下方リスクシナリオは大きく二つある。一つは、原油をはじめとするエネルギー価格の低下が想定以上に進行するケースである。エネルギー価格低下は米国のエネルギー産業の収益を圧迫し設備稼働率の低下を通じて設備投資を予想以上に減速させる可能性がある。7-9月期には米企業収益(資本減耗・在庫評価調整後)が前年比-5.1%と6四半期ぶりの前年比マイナスに転じている。内訳をみると新車販売の増加を反映した自動車製造業(同+86.7%)や小売、運輸といった内需関連企業は増益を続けているが、石油・石炭製品製造業(同-12.8%)や公益事業(同-42.9%)及び海外部門(同-10.6%)がマイナス成長を続けている。外需やエネルギー需要の減速がその他財・サービスの内需の伸びを上回るペースになると、米経済全体にこの減速が波及する可能性なしとしない。

もう一つは、海外景気の更なる急減速である。中国経済は新常態のソフトランディング的な成長率調整を現状は継続しているが、信用バブルの崩壊が米国にとっての外的ショックになるリスクはある。広く新興国経済についても、これまでの先進国低金利環境で流入したマネーが逆流出することで、主に株価下落等を通じて新興国発の景気悪化の伝染を引き起こすリスクも依然残っている。米国の内需が持続的に成長を支えることをメインシナリオとするものの、予想しがたい外的ショックのリスクに今後何年かは常に留意しておく必要があるだろう。

[第10図]
20151230図10

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<経済指標コメント> 日本の11月実質消費支出(二人以上の世帯)は前年比-2.9%

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[日本]

家計調査(11月):実質消費支出(二人以上の世帯)は前月比-2.2%(前年比-2.9%)

11月の家計調査、実質消費支出(二人以上の世帯)は前月比-2.2%と3ヶ月連続の前月比減少、消費水準指数(季節調整済)は91.8と2014年4月の消費税率引上げ前の水準(約99~100)を大幅に下回っている。前年比の伸びも-2.9%と3ヶ月連続のマイナスとなった。前年比の増減率に寄与した主な減少項目は、交際費(寄与度-1.16%)、自動車関係費(同-0.76%)、教育娯楽用耐久財(同-0.37%)など、交際・娯楽などの嗜好品目や自動車など高額品目ついての消費手控えが目立つ。勤労者世帯の可処分所得は前年比-2.5%と3ヶ月連続でマイナスの伸びとなっており、所得減少がそのまま消費手控えにつながっている。家計消費は引続き減速を続けていると言わざるを得ず、7-9月期に前期比年率+1.4%とプラス成長に転化したGDP統計上の実質家計消費も10-12月に再びマイナス転化するリスクが出てきている。なお、内閣府の消費総合指数(10月)は前月比-0.2%と、7-9月期平均を下回るスタートとなっている。

20151226図1

全国消費者物価指数(11月、生鮮食品を除く総合)は前月比横ばい(前年比+0.1%)

11月の全国消費者物価指数は前月比-0.3%(前年比+0.3%)。生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコア指数)は前月比横ばい、前年比+0.1%と4ヶ月ぶりにわずかに前年比プラスの伸びに回帰したものの低調な伸びにとどまっている。前年比の伸び率上昇に寄与した費目は生鮮野菜(前年比+8.3%)など、伸び率低下に寄与した費目は電気代(同-5.6%)など。引き続きエネルギーが前年比の伸びを-1.03%押し下げている。一方、食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比横ばい(前年比+0.9%)と前年比の伸び率をじりじり上昇させている。エネルギー価格低下により総合指数、コア指数の伸び率は低下しているが、失業率低下に伴う需給の引き締まりがコアコアのインフレ率を上昇させる傾向は不変である。原油価格の再下落が1バレル=35ドルレベルに留まれば、来年半ばにコア指数は前年比+1%レベル、コアコア指数は同+1%台半ばに上昇率を加速させる計算になる。

20151226図2

完全失業率(11月)は3.3%(前月比+0.2%ポイント)

11月の完全失業率は3.3%(前月比+0.2%ポイント)とわずかに上昇したが、引き続き低水準にある。内訳をみると、就業者数が前月比-0.6%、完全失業者数が同+5.3%と、完全失業者数が前月の大幅減(同-9.6%)の反動で増加しているのが目立つ。中期的に見ると、就業者数の前年比伸び率が+0.1%に減速、労働力人口の伸びも4ヶ月ぶりに前年比横ばいにまで低下している。筆者試算の労働力化率は59.4%(前月比-0.2%)と今年5月以来の低水準に低下している。タイト感のある労働市場だが、11月や拡大やや一服といったところである。

20151226図3

住宅着工戸数(11月)は年率886千戸(前月比+2.8%)

11月の住宅着工戸数は年率886千戸(前月比+2.8%)と3ヶ月ぶりの前月比増加、持家・貸家・分譲住宅のいずれもが前月比で増加した。季節調整前前年比の伸び率も+1.7%と2ヶ月ぶりにプラスの伸びに回帰した。しかしながら着工戸数の3ヶ月移動平均は882.9千戸(前月比-1.7%)と3ヶ月連続の低下、また11月までの10-12月期の着工戸数は前期比-4.5%と、2四半期連続マイナスの伸びになるペースである。総じて住宅着工の伸びは減速していると言わざるを得ず、10-12月期GDP統計上の実質住宅投資は4四半期ぶりのマイナス成長に転化するリスクが出てきている。

20151226図4

[米国]

実質GDP成長率(7-9月期、確報値)は前期比年率+2.0%

7-9月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率+2.0%と、改定値の同+2.1%から小幅改訂にとどまった。需要項目別内訳は、個人消費同+3.0%(改訂値同+3.0%)、設備投資同+2.6%(同同+2.4%)、住宅投資同+9.9%(同同+9.5%)、政府支出同1.8%(同同+1.7%)、在庫投資寄与度同-0.71%(同同-0.59%)、純輸出寄与度同-0.26%(同同-0.22%)。本改訂の経済見通しに対する影響は限定的であり、10-12月期の実質GDP成長率は同+2%台を見込んでいる。ただし、10-12月期については直近の個人消費、企業部門の指標が下振れていることから、2%を割り込むリスクがでてきていると言わざるを得ない。

20151226図5

中古住宅販売戸数(11月)は年率4760千戸(前月比-10.5%)、在庫期間は5.1ヶ月

11月の中古住宅販売戸数は年率4760千戸(前月比-10.5%)と大幅減少、水準は2014年4月以来の低水準となった。地域別にも、北東部(同-9.2%)、中西部(同-15.4%)、南部(同-6.2%)、西部(同-13.9%)とすべての地域で販売が大幅減少している。売上急減の要因について公表元の全米不動産業協会(NAR)は「”Know Before You Owe“ルール(10月に発効した米消費者金融保護局による、不動産販売時におけるより広範な開示を求めるルール)による一時的なもの」としている。また「在庫不足と価格が消費者の購買力を制約している」がしかし「契約済販売件数は安定して」おり「販売減少は需要急減によるものではない」としている。11月の販売急減が販売ルール改正による一時的要因であれば今後中古住宅販売は再び増加基調に転ずるはずであるが、これが一時要因であるかどうかは今後の販売動向を見て判断する必要があろう。なお、在庫期間は販売減少を反映して5.1ヶ月と長期化、中央販売価格は前年比+6.3%と適度な上昇の範囲内である。

20151226図6

新築住宅販売戸数(11月)は年率490千戸(前月比+4.3%)、在庫期間は5.7ヶ月

11月の新築住宅販売は年率490千戸(前月比+4.3%)と2ヶ月連続の増加、Know Before You Oweルールの顕かな影響は新築住宅販売には見られない。もっとも販売戸数の6ヶ月移動平均は同479.7千戸(同-0.8%)と6ヶ月連続で低下しており、新築住宅販売も緩やかな減速基調にあると言わざるを得ない。一方販売在庫は232千戸(同+2.2%)と4ヶ月連続増加、結果在庫期間は5.7ヶ月とほぼ適切とされる6ヶ月に近い水準にある。

20151226図7

耐久財受注(11月)は前月比横ばい、除く運輸関連同-0.1%、非国防資本財受注(航空機を除く)同-0.4%、同出荷同-0.5%

11月の耐久財受注は前月比横ばい、運輸関連を除くベースでは同-0.1%。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機を除く)は前月比-0.4%と3ヶ月ぶりに減少。GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同-0.5%と、前月の同-1.0%に続き2ヶ月連続の減少となった。企業部門の設備投資関連指標としてのこれらの指標は減速傾向にあると言わざるを得ない。11月までの10-12月期同受注は前期比+1.1%と前期の同+7.7%から大幅減速、同出荷は同-4.4%と3四半期ぶりのマイナスの伸びとなっている。海外景気減速やドル高の影響で企業設備投資は減速していると考えられる。10-12月期のGDP統計では設備投資のうちの機器投資が4四半期ぶりのマイナス成長になるリスクが出てきた。

20151226図8

実質個人消費(11月)は前月比+0.3%、PCEデフレーターは前月比横ばい(前年比+0.4%)、同コアは前月比+0.1%(前年比+1.3%)

11月の実質個人消費は前月比+0.3%の強めの伸びとなった。内訳は、耐久財消費同+1.1%、非耐久財消費同+0.9%、サービス消費同横ばいと、財消費が好調であり、好調なホリデー商戦を示唆する結果である。ただ10月分の下方改訂(同+0.1%から同横ばいに下方改訂)により、10-12月期GDP統計上の実質個人消費は前期比年率+2%レベルの伸びに留まり、前期の同+3.0%から大幅減速となる計算になる。実質個人消費の前年比の伸び率も+2.5%と2ヶ月連続の減速で、中期的には個人消費が減速しつつある局面にあると言わざるを得ない。今後FRB利上げに伴う金利影響で、個人消費は今年の3%台の拡大から2%台への減速を見込む。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比横ばい(前年比+0.4%)、食品及びエネルギーを除く同コア指数は前月比+0.1%(前年比+1.3%)。昨年10月からの原油価格急落要因が剥落を初めて総合指数の前年比の伸び率は2ヶ月連続で上昇、コア指数の前年比伸び率は安定を保っている。今後は総合指数、コア指数ともに来年2016年末には約+1.7%の伸びを回復すると見ている。12月からの原油価格再下落はこれに対する下方リスク要因であるが、原油先物価格が1バレル=35ドルレベルまでの下落に留まればその影響は限定的と見る。

20151226図9

<経済レポート> 0.25%利上げ決定:12月FOMC

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FRBは15-16日のFOMC定例会合で、予想通り+0.25%の利上げを決定した。声明文では今後の利上げペースは「漸進的(gradual)」とされ、FOMC委員予測ではFF金利が来年末に1.4%にまで引き上げられることが示唆された。これらも筆者個人予想を支持しており、FOMCが来年3月の定例会合で2回目の利上げ、その後1会合おきに来年は4回の利上げを決定し、来年末のFF金利誘導目標は1.25-1.50%となるとの予想を維持する。

FOMCは0.25%の利上げを決定

FRBは15-16日の連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合で、FF金利誘導目標レンジを+0.25%引上げ、0.25-0.50%とすることを決定した。FF金利誘導目標が0-0.25%を上回るのは2008年12月以来7年ぶり、FRBがFF金利誘導目標を引き上げるのは2006年6月以来9年半ぶりである([第1図])。本レポートでは12月FOMC声明文、FOMC委員経済予測、イエレンFRB議長記者会見の内容を点検し、今後の金融政策の動向を見ていく。

16日に公表されたFOMC声明文の基調判断部分では「経済活動は適度なペースで拡大してきた」と従前の判断を維持。労働市場については「最近の労働市場指標は、、更なる改善を見せ、労働資源の余剰が目に見えて減少したことを確認した」として、前回声明文よりも判断を引き上げている。一方でインフレについては「委員会の2%目標を下回って推移を続けている」と従前の判断を据え置き、かつ「調査ベースの長期インフレ期待は低下した」としている。そのうえで「委員会は、金融政策スタンスの漸進的な(gradual)調整により経済活動は適度なペースで拡大し労働市場指標は強化を続けると現状予想している」とした。

そして金融政策につき「委員会は今年労働市場が著しい改善をしたと判断し、インフレは中期的に委員会の2%目標に上昇すると合理的に確信している」「経済見通しと政策行動が将来の経済結果に影響する時間を認識したうえで、委員会はFF金利誘導目標レンジを0.25-0.50%に引き上げることを決定した」とされた。今後の金融政策については「委員会は経済条件の進展が漸進的なFF金利の上昇を正当化するのみであると予想する」「FF金利は長期的に維持されると予想される水準を当面の間下回り続ける可能性が高い」として、今後の利上げペースが漸進的(徐々に)であると予想している。更に「FF金利の実際の行程は経済見通しに依存する」として今後の利上げ決定が指標依存であることが新たに表明された。なお、FRBの保有資産の償還金の再投資は従前通り継続されることも決定された。

[第1図]
20151220図1

利上げペースは「徐々に」:政策効果波及のラグを考慮して利上げ開始

声明文と同時に公表された四半期毎のFOMC委員経済予測の内容は[第1表][第2図]の通りである。結果は9月時点の予測と大きな変化はない。来年2016年についての各項目の予測中央値は、実質GDP成長率が+2.4%、失業率が4.7%、PCEインフレ率が1.6%、コアPCEインフレ率が1.6%と、いずれも筆者個人の見通しと同様の結果である。また適切なFF金利予測の中央値は2016年末が1.4%すなわち1.25-1.50%のレンジという筆者予想に整合している。また、長期的な(均衡的な)FF金利の中央値は3.5%となっている。

イエレンFRB議長は、声明文公表後の定例記者会見の冒頭発言で声明文に対するいくつかの補足的コメントをしている。「インフレ率が依然低いにも関わらずなぜ利上げをするのか」につき「最近のインフレ率低下の多くはいずれ解消する一時要因である」「労働市場と生産市場の余剰の解消がインフレ上昇圧力をもたらす」「金融政策が将来の経済に与えるには時間がかかる」ことを理由として挙げている。また議長は今回の利上げにもかかわらず金融政策は依然緩和的であること、また今後の利上げペースが「漸進的」であり、FF金利は長期的な均衡水準を下回る水準に当面留まる可能性が高いことも改めて強調した。質疑応答では、今後の利上げペースがデータ依存的であること、「漸進的な」の文言は一定ペースの利上げを意味しないことも述べた。

FF金利誘導目標の引上げは具体的には超過準備預金付利金利(IOER)の引上げ(FF金利レンジの上限)と、オーバーナイトリバースレポ(RRP)金利の設定(同レンジの下限)によって行われる。FRBは同日、上記FOMCの指示に則り、IOER及び所要準備預金付利金利(IORR)を現状の0.25%から0.5%に引き上げること、並びに0.25%でのオーバーナイトリバースレポの開始を公表した。

[第1表]
20151220表1

[第2図]
20151220図2

次回利上げは3月定例会合を予想:2016年末のFF金利は1.25-1.50%予想

今回のFOMCの利上げ決定並びにその経緯は、筆者個人の予想と整合的であるとともに、これまでFOMCが利上げの条件としてきた「労働市場の更なる改善」と「インフレ率が2%に上昇することへの合理的確信」、及び前回10月声明文で「次回会合での利上げ判断」の強く示唆したこととも整合的である。現在の失業率5.0%はFOMC委員の長期的な均衡失業率予測中央値である4.9%にほぼ近く(米議会予算局の推計する自然失業率は5%)、労働市場の余剰がほぼ解消されたとの判断は合理的である。イエレン議長が記者会見で述べているように、非農業部門雇用者数が11月時点の過去3ヶ月平均で+218千人の増加となったこと労働市場の改善を示している(もっともイエレン議長は記者会見で「(失業率に表れない)循環的労働市場の弱さは残っている」と述べている)。またインフレ率についても、PCEインフレ率が来年2016年1%台後半、2017年に2%に上昇するとのFOMC委員予測は合理的な確信に足るものといえる。

今後の金融政策についても、FOMC委員のFF金利予測が示す通り、2016年に4回の利上げが実施される可能性が高い。引き続き筆者は、今後1会合おきに+0.25%の利上げ(次回利上げは3月定例会合)が決定され、2016年末のFF金利誘導目標レンジは1.25-1.50%となるとの予想を維持する。来年のFOMC定例会合の日程([第2表])に照らし、2016年には3月、6月、9月、12月にそれぞれ+0.25%の利上げが決定されるとすると予想する。

来年の米経済についての筆者個人の予想は改めて今後のレポートで提示する予定であるが、概ねFOMC委員の予測と同様、前年比2%半ばの成長が可能であると見る。ただし、成長ペースはやや減速するリスクがある。12月13日付当レポートで見たように、FF金利引上げによる長期金利の上昇が個人消費の拡大ペースを幾分減速させると見るからである。今年2015年のGDP統計上の実質個人消費は前年比+3%を見込んでいるが、来年はこれが+2%台に減速すると現在では試算している。一方でインフレ率は昨年末の原油価格急落の影響が剥落する来年初から上昇をはじめ、総合PCE、コアPCEいずれも来年末は前年比+1.7%レベルで推移すると筆者は個人予想している。これらの指標をテイラー・ルールに当てはめると、2016年末のFF金利は約1.25%が正当化される([第3図])。もっとも、12月のOPECによる原油減産見送り決定を契機に原油価格は再び下落しており、18日現在でWTI原油先物価格は1バレル=35ドル近辺にある。原油価格の再下落は上記予想に対する下方リスクともいえるが、これまで通り原油価格下落のコアインフレ率への波及は限定的にとどまると見ることから、ここではリスク要因と認識するにとどめておきたい。

[第2表]
20151220表2

[第3図]
20151220図3

市場対話文言と再投資停止時期が今後の注目

FRB金融政策にかかる今後の他の注目ポイントの一つは、今後の利上げ決定に関する市場との対話文言である。12月声明文では次回の利上げ決定時期について何らの具体的な示唆はなく、FOMC委員予測やイエレン議長記者会見の中で2016年末のFF金利水準を1.4%と見ていることが表明されたのみであった。筆者個人は、次回1月の定例会合の声明文では3月会合で利上げの判断をすることが示唆される文言が挿入され、これが1会合おきに使用されるのではないかと見ている。前回10月声明文では「次の会合で(FF金利)誘導目標レンジを引き上げることが適切かどうかを決定するにあたり、、」との文言が使用され、これが12月会合での利上げを強く示唆するものとされた。今後も同様の文言が利上げ判断会合の直前の声明文では使用されるのではないか。

二つめは、FF金利引上げ後に実施されるとされている保有資産償還金の再投資停止の時期である(FRB「金融政策正常化の原則と計画」2014年9月、及び11月23日付当レポート参照)。再投資停止の時期についてFOMCはこれまで何らの示唆をしていない。イエレン議長は16日の記者会見で今後のFRBバランスシート政策についての質問に対し「未決定」「極めて早期に再投資を停止するとは期待していない」旨答えたのみである。再投資停止は基本的には長期金利の上昇を促す可能性があることからは、FF金利引上げを行っても長期金利上昇ペースが急激に加速しないことを見極められることが再投資停止判断のポイントとなるだろう。そのためには少なくともあと1回のFF金利誘導目標引上げとその後の金利市場動向を見極める必要がある。この観点からは、再投資停止の決定は早くとも来年半ばになりそうだ。

10年ぶりの利上げという歴史的な決定は、事前のFOMCによる市場対話の効果で現状市場には冷静に受け止められている。筆者個人にとってもこれは想定通りの金融政策正常化のプロセスであり、今後もこれを整斉と実施することが妥当と見る。ただし市場への下方リスク要因として、現状の長期金利が理論値に比べて相当に低水準にあることを勘案すれば、今後の長期金利上昇ペースは筆者予想である2016年末の3%台半ばに向けてある程度加速せざるを得ない点には留意が必要だろう(12月13日付当レポート参照)。また、米経済が今後1~2年の間に景気循環のピークを迎える可能性も見ておきたい。全米経済研究所(NBER)による前回のリセッション終期(景気の谷)は2009年6月であったから、既に景気拡大局面は6年以上継続していることになる。景気サイクルを約10年(景気の山と谷の間は約5年)とした場合、2016年には少なくとも景気拡大ペースが減速するリスクがある。その場合、FOMCが見るFF金利の長期均衡水準である3.5%までの利上げの実現可能性(委員予測によれば2017年末においてもなおFF金利は2%台半ばまでしか引きあげられないとされている)にはやや留保が必要である。更に、景気減速が来年に前倒しになるリスクも見込んでおく必要はあるだろう。

<経済指標コメント> 米11月住宅着工戸数は年率1173千戸(前月比+10.5%)

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[日本]

日銀短観(12月調査):大企業製造業業況判断DIは12ポイント(9月調査比横ばい)

日銀短観(12月調査)、大企業製造業の業況判断DIは12ポイントと9月調査比横ばい、大企業非製造業の業況判断DIは25ポイントとこれも9月調査比横ばいだった。先行き判断DIは大企業製造業が7ポイント、大企業非製造業が18ポイントといずれも現況からの低下を示している。企業景況感は今年に入り製造業が総じて横ばい、非製造業は上昇基調にあるが、先行きについてはやや悲観的である。日本経済は2四半期連続マイナス成長を回避したものの、今後の成長ペースも緩やかにとどまる可能性を示唆している。

20151219図1

[米国]

消費者物価指数(11月)は前月比横ばい(前年比+0.5%)、同コア指数は前月比+0.2%(前年比+2.0%)

11月の消費者物価指数は前月比横ばい、食品(同-0.1%)、ガソリン(同-2.4%)が前月比低下した一方で、運輸サービス(同+0.6%)、医療サービス(同+0.4%)などが上昇した。総合指数の前年比の伸び率は+0.5%と2ヶ月連続で加速、1年前の原油価格急落の影響が剥落を始めている。食品及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.2%と上昇を継続、前年比では同+2.0%と昨年5月以来の2%の伸びに回復した。総じて、昨年の原油価格急落の影響剥落で総合指数の前年比の伸びが上昇していることに加え、労働市場などの需給タイト化でコアインフレ率は心地よい2%水準で横ばいから上昇基調に入る兆しが見られる。昨年の原油価格急落やドル高によるインフレ率低下圧力は一旦終了したといえる。今後2016年には総合インフレ率、コアインフレ率ともに前年比+1.7%レベルで推移すると見る。もっとも12月から、OPECの原油増産見送り決定を契機に原油価格が再び下落しており、従前の1バレル=40ドル台から現在では35ドルレベルになっている。原油価格が40ドル台に回復しなければ総合インフレ率はこの見通しより下振れるリスクが出てきている。ただし、需給ギャップ縮小により原油価格下落のコア指数への波及は依然限定的にとどまると見たい。

20151219図2

住宅着工戸数(11月)は年率1173千戸(前月比+10.5%)、着工許可件数は同1289千件(同+11.0%)

11月の住宅着工戸数は年率1173千戸(前月比+10.5%)と前月の同-12.0%から反発した。着工戸数の6ヶ月移動平均も同1153.5千戸(同+1.5%)と2ヶ月ぶりに上昇に転じた。住宅着工の増加ペースは月次の振れが大きいものの総じて堅調さを保っていると。住宅着工許可件数も同1289件(同+11.0%)と2ヶ月連続の増加で、今後の住宅着工が増加ペースを維持することを示唆している。もっとも、10-11月の住宅着工戸数平均は7-9月期をまだ-1.5%下回っており、GDP統計上の10-12月期住宅投資は前期比わずかな増加に留まるか一時的なマイナス成長になる可能性も出てきている。

20151219図3

鉱工業生産指数(11月)は前月比-0.6%、設備稼働率は77.0%(前月比-0.5%ポイント)

11月の鉱工業生産指数は前月比-0.6%と3ヶ月連続の低下、前年比では-1.2%と2009年12月以来のマイナス成長となった。内訳は、製造業前月比横ばい(前年比+0.9%)、鉱業同-1.1%(前年比-8.2%)、公益事業同-4.3%(前年比-7.6%)と、引き続きエネルギー価格低下の影響を受ける鉱業と公益事業が指数を押し下げている。ただ製造業も過去4ヶ月で指数が前月比で上昇したのは10月のみであり、前年比の伸び率も1%を割り込むなど減速の度合いは高まっている。製造業の生産減速は依然海外景気減速とドル高に伴う在庫調整が主因と考えられる。なお、自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率11.80百万台(前月比-2.0%)と7月の13百万台台をピークにやや減速感も見られる。鉱工業設備稼働率は77.0%(前月比-0.5%ポイント)と4ヶ月連続の低下。

20151219図4

<経済レポート> 来年も2%拡大可能:利上げの米個人消費への影響

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堅調に拡大する米個人消費も、来年はFRB利上げによる長期金利上昇の影響を受けざるを得ない。雇用、賃金、金利等6つの決定要因を外生変数とする分析によれば、来年の実質個人消費は今年の3%成長から2%成長に減速するとの結果になった。それでも、2%の個人消費の伸びは米国経済の堅調な拡大を維持するには十分なペースである。成長ペースはピークアウトの可能性があるが、来年時点ではまだ米個人消費がこれを底支えしよう。

FRB利上げの来年の個人消費への影響を推計する

米個人消費は、8、9月に同時株安の影響で一時減速したものの、その後11月にかけては堅調に回復している。8月の世界同時株安の個人消費への影響は一時的なものであったといえる。自動車・ガソリン・レストランを除く小売売上高は、9月に前月比横ばいにまで減速したが、その後10月同+0.3%、11月同+0.5%と伸びを再加速させている。11月の小売売上高の結果は、今年のホリデー商戦売上高についての筆者個人予想(前年比+3.2%)を強く支持する内容だった。

個人消費の拡大を牽引しているのは、雇用と賃金上昇、それに原油安によるインフレ率低下である。時間当たり賃金の伸びから消費者物価指数の伸び率を差し引いた実質賃金の伸び率は10月時点で前年比+2.1%、非農業部門雇用者数の増加率は10月時点で同+2.0%の水準にある。これらに週平均労働時間の伸びを加えた実質購買力は、10月時点で同+4.1%となり、雇用と賃金の伸びだけで4%台の実質個人消費が確保できる状態にある([第1図])。

雇用、賃金、インフレ率のほかにも、金利、住宅価格、株価が個人消費を決定する要因となる。1992年1-3月期から今年の7-9月期までのデータをもとに、雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格の6つを決定要因とする実質個人消費の要因分解を行った結果が[第1表]である。これによれば、実質個人消費の各決定要因に対する弾性値は、雇用、賃金、物価に対して最も大きく、金利・株価・住宅価格に対しては相対的に小さい。しかしながら、今後FRBの利上げによりFF金利誘導目標レンジが筆者個人予想通りに来年末に1.25-1.50%にまで引き上げられた場合、金利の上昇率は相応に大きくなり、個人消費への影響は無視しえないだろう。以下、決定要因毎の来年2016年の動向を前提として立て、それらをもとに来年の実質個人消費の伸びを推計していく。

[第1図]
20151213図1

[第1表]
20151213表1

来年の雇用拡大ペースはやや減速、賃金上昇率は加速と前提

雇用要因である非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は11月現在で前年比+1.9%と、今年前半の同+2.3%をピークにやや減速している。長期的に見ると、過去の非農業部門雇用者数増加率のピークは、1994年の同+3.4%、1997年の同+2.7%、2006年の同+2.1%と低下傾向にある。米労働市場の構造的要因から労働参加率が低下しているため、労働力人口増加率は長期的に低下傾向にあり、11月時点ではわずかに前年比+0.6%である([第1図])。労働力人口が伸び悩んでいる現状からは、今後雇用拡大ペースが来年にかけて再加速する可能性は低い。循環的な雇用拡大ペースは今年前半の2.3%で一旦ピークアウトした可能性が高いといえるだろう。ついては、来年2016年の雇用増加ペースは前年比+2%で推移すると前提しておく。

賃金要因である時間あたり賃金上昇率は現在、失業率の低下に比較して相対的に低位にある。11月の時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)上昇率は前年比+2.0%にとどまっており、失業率が現在(11月時点で5.0%)とほぼ同水準だった2005年の賃金上昇率同+2.6%を大幅に下回っている([第3図])。現在の失業率がほぼ自然失業率に近い水準であることを考えれば、失業率低下ペースは今後減速する可能性が高い。一方で賃金上昇率は、失業率が自然失業率を下回るとペースが加速することも経験則である。これらの要因を総合的に勘案して、2016年の賃金上昇ペースは徐々に加速し、2016年末に前年比+2.5%にまで上昇すると前提しておく。

物価要因である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率は、昨年末の原油価格急落の影響が剥落する2016年初から来年末にかけて、1%台後半に上昇すると筆者は従前から予想しており(11月1日付当レポート参照)、本レポートでもこれを前提とする(2016年平均同+1.6%)。もっともこの予想は、原油価格が1バレル=40ドル台で安定的に推移することが前提となっていた。しかるに、4日のOPEC総会で原油の減産が見送られたことを契機に、原油先物価格は再び下落し、11日現在で1バレル=約35ドルとなっている。原油価格がこのまま回復しなければインフレ率も筆者予想を下回るリスクが出てきている。ただ、本推計においてはインフレ率の前提に対する下振れは消費の上ブレ要因として見ておくこととしたい。

[第2図]
20151213図2

[第3図]
20151213図3

FRB利上げにより来年末の長期金利は3.6%に上昇と前提する

金利要因である30年物住宅ローン金利は、来年2016年に利上げとともに上昇し消費を抑制する可能性がある。30年物住宅ローン金利は11月現在で3.94%と、今年一杯概ね4%を下回る低水準で推移してきた。米国債10年物利回りは現在2%台前半であり、30年物住宅ローン金利のスプレッドは、1992年から現在までの平均で1.66%である。ここでは、来年の米国債10年物利回り推移を推計することで30年年物住宅ローン金利の来年の動向を推計することとする。

米国債10年物利回りの推計に当たっては、FRBが量的緩和を実施する以前のデータ(1992年1-3月期~2007年10-12月期の64四半期)をもとに、実質GDP成長率、FF金利誘導目標、長期期待インフレ率を外生変数として推計した回帰式を用いる。長期金利推計に当たりFRBの量的緩和要因(FRBのバランスシート)を外生変数に含めない理由は、量的緩和要因を回帰式に含めることが推計式の妥当性を低下させる可能性があるからである(4月29日付当レポート参照)。そこで、量的緩和開始前の64四半期のデータをもとに推計した[第2表]の回帰式を用いて、FF金利誘導目標レンジが12月FOMC会合で引き上げ開始され2016年末に1.25-1.50%となるとの筆者個人予想に基づき米国債10年物利回り推移を推計した(なお、長期期待インフレ率は2.2%で不変、実質GDP成長率は2016年の各四半期に前期比年率+2%台半ばで推移すると前提した)。

上記の前提で推計した米国債10年物利回りの推移が[第5図]である。これによれば、米国債10年物利回りの推計値は現在でも約3.3%と、実績値の2%台より約1%高くなる。また筆者のFF金利誘導目標レンジ予想に基づく2016年末の米国債10年物利回りの推計値は約3.6%との結果になった。FRBは既に資産購入を停止しており、またFF金利誘導目標レンジを引上げ後まもなく保有資産の償還金の再投資を停止する予定である(2014年9月17日FRBプレスリリース「金融政策正常化の原則と計画」による)。量的緩和の長期金利への影響がFRBバランスシート残高よりも、バランスシート拡大というアナウンスメント効果に依存する可能性が高いとすれば、来年の再投資停止以降量的緩和効果は徐々に剥落すると見るのが自然であろう。ついては、本レポートでは2016年末の米国債10年物利回りを3.6%とし、これに過去のスプレッドの平均値を上乗せして30年物住宅ローン金利を5.5%と前提することとする。

[第4図]
20151213図4

[第2表]
20151213表2

[第5図]
20151213図5

金利上昇が個人消費を約-0.8%押し下げるも2%の拡大ペース確保

住宅価格要因であるS&Pケース・シラー住宅価格指数(20都市)は9月現在で前年比+5.5%と、比較的緩やかな上昇ペースにとどまっている。中古住宅販売の在庫期間との相関から推計される現在の住宅価格上昇率は同+10%レベルであり、現在の住宅価格は理論値に比して穏やかな上昇ペースにとどまっているといえる([第6図])。来年2016年については、現状と同じペースの前年比+5%の価格上昇が継続すると本試算では前提しておく。住宅市場は依然タイトな需給にあり、今後上昇ペースが加速する可能性がないわけではないが、在庫不足で消費者の選択の余地が狭いことがむしろ価格上昇を抑制する要因であり続け、かつ利上げにともなう住宅ローン金利の上昇も住宅価格抑制要因となる可能性が高いと見るためである。

株価については、2016年末のNYダウ水準を18500ドルとここでは前提しておく。米経済の拡大が2016年も2%ペースで続けば、利上げにかかわらず株価は堅調に推移するだろう。しかしながら、NYダウが今年5月19日につけた史上最高値18312ドルを来年大幅に上回る可能性は低いと見たい。米国株のバリュエーションは歴史的にやや割高領域にある(12月11日時点のS&P500の株価収益率は22.73倍)うえに、原油価格下落やドル高が来年も企業収益を圧迫する要因になると見るためである。もっとも株価が個人消費に与える影響は他の決定要因に比してかなり小さく、株価前提のブレが個人消費推計には大きく影響しない。

以上の前提をもとに2016年の実質個人消費の伸びを推計した結果が[第7図]である。これによれば、今年の7-9月期現在で5四半期連続前年比+3%台の強い伸びを続けている実質個人消費は、2016年10-12月期には同+2%台前半にまで伸びを減速させるとの結果になった。2016年10-12月期時点の各決定要因の実質個人消費伸び率への寄与度は、雇用要因が前年比+1.22%、賃金要因同+1.94%、物価要因同-0.58%、金利要因同-0.85%、株価要因同+0.03%、住宅価格要因同+0.51%である。つまり、FRBによる利上げが2016年10-12月期においては個人消費を前年比約-0.85%押し下げる効果をもたらすことになる。利上げが個人消費に与えるマイナスの影響は相応に意義のある水準だといってよい。もっともこの結果からは、利上げ開始後も個人消費は2%の堅調な拡大を継続することが可能であり、潜在成長率を上回る米経済の成長が期待できることになる。利上げに拘わらず2%成長が可能な米国経済の拡大ペースは、今年が循環的なピークである可能性があるものの、来年一杯はまだ堅調なペースが維持できることをこの推計は示唆している。

[第6図]
20151213図6

[第7図]
20151213図7

<経済指標コメント> 米11月小売売上高は前月比+0.2%

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[日本]

実質GDP成長率(7-9月期、2次速報値)は前期比年率+1.0%

7-9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率+1.0%と、1次速報値の同-0.8%から一転してプラス成長に上方改訂された。需要項目別内訳は家計消費同+1.4%(1次速報値同+2.1%)、住宅投資同+8.1%(同+8.0%)、企業設備同+2.3%(同-5.0%)、公的需要同-0.3%(同+0.7%)、企業在庫寄与度同-0.7%(同-1.9%)、純輸出寄与度同+0.8%(同+0.8%)。企業設備がマイナス成長からプラス成長に大幅上方改訂されたことと、企業在庫の寄与度のマイナス幅が大幅に縮小方向に改訂されたことが上方改訂の要因。一方で、家計消費は大幅に下方改訂となっている。家計消費・住宅投資・企業設備を合わせた国内最終民間需要は同+1.8%と、1次速報値の同+0.9%から大幅に上方改訂された。現状の試算では2015年暦年成長率は前年比+0.8%、2015年度は前年度比+1.3%程度の成長になる計算である。

20151212図1

景気ウォッチャー調査(11月):現状判断DIは46.1(前月比-2.1ポイント)、先行き判断DIは48.2(同-0.9ポイント)

11月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは46.1(前月比-2.1ポイント)と2ヶ月ぶりに低下、横ばいを示す50を4ヶ月連続で下回った。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは48.2(同-0.9ポイント)と低下、これも4ヶ月連続で50を下回っている。街角景気はひきつづき、今後も日本の経済成長が緩やかなものに留まる可能性を示唆している。

20151212図2

機械受注(10月、船舶・電力を除く民需)は前月比+10.7%

10月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+10.7%と、大幅かつ2ヶ月連続の増加となった。前年比の伸び率も+10.3%と3ヶ月ぶりにプラスに転化した。ここの所低迷が続いていた機械受注に一時的の可能性はあれ反発の兆しが見られる。他の指標をみても、鉱工業生産指数が9、10月と2ヶ月連続で上昇、7-9月期のGDP統計上の企業設備も2次速報で上方改訂された。しかしながら、企業部門ではまだ在庫調整が途上であり、企業部門の回復ペースはまだ緩やかなものに留まると慎重に見ておきたい。

20151212図3

[米国]

小売売上高(11月)は前月比+0.2%、除く自動車関連同+0.4%

11月の小売売上高は前月比+0.2%と前月の同+0.1%に続きやや弱めの伸びに留まったが、自動車販売の減少が全体を押し下げており、自動車関連を除く売上は同+0.4%と前月の同+0.1%から加速している。業種別内訳は、自動車及び同部品ディーラー同-0.4%、ガソリンスタンド同-0.8%、家具店同-0.3%、建設資材店同-0.3%などが売上減少。一方で、家電店同+0.6%、衣服店同+0.8%、玩具店等同+0.8%などホリデー商戦主要業種は売上が増加している。小売売上は業種間のばらつきは依然あるものの、総じて8、9月の減速から堅調な伸びに回復しているといえる。ホリデー商戦売上高のベースとなる「自動車・ガソリン・レストランを除く」売上は同+0.5%と強い伸び。筆者個人の今年のホリデー商戦売上予想(前年比+3.2%)に沿った結果である。

20151212図4

企業在庫(10月)は前月比横ばい、企業売上高は同-0.2%、在庫売上高比率は1.38倍

10月の企業在庫は前月比横ばいにとどまり、在庫調整が継続していることが示唆されている。3ヶ月前対比の企業在庫の伸びは4ヶ月連続で低下した。一方で企業売上高は同-0.2%と引続き低迷しており、結果在庫売上高比率は1.38倍と2009年6月以来の高水準に上昇している。海外景気の減速や原油安、ドル高を背景に企業売上が伸びない中、在庫調整はまだ十分に進んでいない状態だといえる。今後も在庫調整は成長の抑制要因となりそうだ。

20151212図5

<経済指標コメント> 米11月非農業部門雇用者数は前月比+211千人

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[日本]

鉱工業生産指数(10月)は前月比+1.4%

10月の鉱工業生産指数は前月比+1.4%と2ヶ月連続の上昇、出荷指数も同+2.1%と2ヶ月連続上昇。一方で在庫指数同-1.9%、在庫率指数同-3.0%といずれも2ヶ月連続で低下した。鉱工業で出荷が増加に転じたことで在庫調整が進み、生産の回復を促したことが示唆されている。生産指数の3ヶ月移動平均も4ヶ月ぶりに上昇に転じた。鉱工業生産には底入れの兆しは見られ在庫率も上昇が一服した。しかしながら、まだ在庫率の水準は高位にあるほか、在庫循環図は依然として在庫調整局面にある。海外需要の減速を背景に今後も在庫調整が生産と成長を抑制する要因になると見る。公表元の経済産業省は基調判断を「一進一退」に据え置いている。

20151205図1

住宅着工戸数(10月)は年率862千戸(前月比-4.3%)

10月の住宅着工戸数は年率862千戸(前月比-4.3%)と2ヶ月連続の減少。内訳は、分譲住宅の着工が増加したものの持家、貸家の着工がいずれも減少した。季節調整前の10月着工戸数は前年比-2.5%と8ヶ月ぶりにマイナスの伸びに転じた。消費税率引上げ後の変動減から順調に回復して増加を続けていた住宅着工であるが、ここ数ヶ月の間やや頭打ち感が見られる。10月の着工戸数は7-9月期平均を下回っており、10-12月期のGDP統計上の住宅投資が4四半期ぶりにマイナス成長になるリスクが出てきている。

20151205図2

[米国]

ISM製造業指数(11月)は48.6%(前月比-1.5%ポイント)、非製造業指数は55.9%(同-3.2%ポイント)

11月のISM製造業指数は48.6%(前月比-1.5%ポイント)と5ヶ月連続の低下で、2012年11月以来3年ぶりに景気判断の分かれ目を示す50%を下回った。総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注48.9%(前月比-4.0%ポイント)、生産49.2%(同-3.7)、雇用51.3%(同+3.7)、入荷遅延50.6%(同+0.2)、在庫43.0%(同-3.5)。主要DIである新規受注と生産が大幅に低下して50%を割り込んだのが総合DIを押し下げている。調査対象先の回答には「原材料価格の低下が継続(化学工業)」「予約と受注は期待以下(コンピュータ及び電子製品)」「中国と欧州の減速が事業に悪影響(機械)」などのコメントが見られる。製造業景況感の継続的悪化は主に海外景気減速と商品価格低下が背景と考えられる。同非製造業指数は55.9%(同-3.2%ポイント)と過去4ヶ月で3回目の低下。総合DIを構成する4つのDIの内訳は事業活動58.2%(同-4.8)、新規受注57.5%(同-4.5)、雇用55.0%(同-4.2)、入荷遅延53.0%(同+1.0)。非製造業指数も低下傾向にあるが製造業指数に比べて相対的には高水準を保っておりかつ3ヶ月移動平均も57.5%(同+0.2)とわずかに上昇に転じている。外需依存の高い製造業に比べ内需中心の非製造業の景況感はまだ高めといえる。総じて企業景況感の悪化は今後の米経済にとっての下方リスク要因といえるが、実体経済指標にはまだそれが明らかには表れていない。ただ景況感悪化が、来年の米経済の拡大ペースが景気循環的に減速局面に入るリスクを先行的に表象している可能性には留意する必要はあるだろう。

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新車販売台数(11月、乗用車及び軽トラック)は年率18.1百万台(前月比-0.1%)

11月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率18.1百万台(前月比-0.1%)と3ヶ月連続で同18百万台の大台を維持した。しかし販売台数の増加ペースは18百万台を超える水準ではさすがに減速し、ここ2ヶ月の販売台数はほぼ横ばいにとどまっている。自動車ローンの信用条件緩和とガソリン価格低下を背景に増加してきた自動車販売も、FRB金利引上げによる自動車ローン金利上昇等により、今後は徐々に減速していかざるを得ないと見る。

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雇用統計(11月):非農業部門雇用者数は前月比+211千人、失業率は5.0%(前月比横ばい)

11月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+211千人と200千人を超える好調な増加となった。過去2ヶ月分もそれぞれ上方改訂されており、非農業部門雇用者数増加幅の3ヶ月移動平均は+218.0千人と3ヶ月ぶりに200千人台を回復した。業種別では建設業同+46千人、小売同+30.7千人、専門ビジネスサービス同+27千人等景気敏感な業種が堅調に雇用を増やした。小売業の堅調な雇用増はホリデー商戦の好調さも示唆している。一方、時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.0%と前月の同+2.2%から再び伸びが減速した。家計調査による失業率は5.0%(前月比横ばい)。内容は労働力人口、就業者数のいずれもが増加しており、労働参加率は62.5%(前月比+0.1%ポイント)とわずかながら上昇している良い内容である。総じて労働市場は8、9月の一時的な減速から回復して堅調な拡大ペースを取り戻している。「労働市場の更なるいくらかの改善」という10月FOMC声明文に記された条件は満たしたと考えられる。12月15、16日のFOMC定例会合でFF金利誘導目標レンジの+0.25%の引上げが決定されるとの筆者個人の予想を強く支持する結果である。

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