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<経済レポート> 緩やかに減速へ:米経済定点観測

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米経済は年末にかけやや減速した模様だが、今年2015年通年の成長率は潜在成長率を上回る前年比+2.4%は確保できたと予想する。来年2016年は循環的な景気減速局面に入る可能性が高く、またFRBの利上げが個人消費を幾分抑抑制しよう。来年の成長率は同+2.0%と今年に比べやや低下すると見る。もっともこれも潜在成長率を上回る成長であり、国内にバブル要素が見られないことから景気急悪化の懸念はない。下方リスク要因はエネルギー価格の更なる低下と、海外景気急減速のショックである。

10-12月期は+1.2%に減速の見込み

米経済は雇用拡大と賃金上昇を背景に個人消費を牽引役として堅調な拡大を続けている。一方で海外景気減速とドル高による輸出の低迷は景気抑制要因となっている。来年2016年は、これらに加えてFRBの継続的な(ただし漸進的な)利上げが景気拡大ペースをいくぶん減速させることになると見る。本レポートでは、需要項目毎に今年の10-12月期及び来年2016年の米経済成長率を占うこととする。

今年の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.2%程度に減速すると見る。実質個人消費は11月に前月比+0.3%の強い伸びを示したが、10月分が下方改訂されたことで、12月が同+0.3%の伸びとなっても10-12月期は前期比年率+2.2%レベルの成長にとどまり、前期の同+3.0%から大きく減速する計算になる。設備投資(機器投資)の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機を除く)は11月までで前期比年率-4.4%と3四半期ぶりのマイナス成長となっている。12月に前月比+0.5%の反発を見込んでも、GDP統計上の機器投資は前期比年率-3%のマイナス成長になる見込みだ(以上、12月26日付<経済指標コメント>参照)。設備投資(構造物投資)は同+1.0%レベルのプラス成長を見込む。基礎統計となる民間非住宅建設支出は10月時点で前期比プラスの伸びを確保しており、これまでの建設支出の積み上がりのGDPへの反映ラグを考えれば、10-12月期もプラス成長を見込める([第1図])。住宅投資の基礎統計となる住宅着工戸数は11月までで前期比-3.5%のマイナス圏にある。しかしながらこれも過去の住宅着工増の積みあがりを勘案すれば、10-12月期にも住宅投資は前期比年率+7.0%の伸びが可能である([第2図])。

在庫投資は在庫調整の継続により成長にマイナスの寄与を見込む。企業在庫統計によれば、10月時点で企業在庫の3ヶ月前対比の伸びは4ヶ月連続で縮小しており、在庫循環図上は在庫調整局面にある。純輸出は依然輸出の減速を主因として成長にマイナス寄与となると見る。10月までの10-12月期実質ベースの財の貿易収支赤字は3四半期連続の拡大となるペースである。以上、個人消費の循環的な減速と設備投資の減少を主因として、2015年10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+1.2%、2015年通年の成長率を前年比+2.4%と個人予想する。なお、通年成長率+2.4%は昨年2014年の通年成長率と横ばいの伸び率である。

[第1図]
20151230図1

[第2図]
20151230図2

来年2016年は+2.0%成長を予想:循環的減速局面へ

来年2016年については、通年成長率を前年比+2.0%と個人予想する。これは今年の予想値同+2.4%からやや減速となる。その背景として、のちに述べるFRB利上げに伴う個人消費等へのマイナス効果に加え、米経済サイクルが減速局面に入る可能性が高いことがあげられる。

現在の米経済の中期的な立ち位置を見てみよう。[第3図]は年次の実質GDP実績とそれをHPフィルターで平滑化(1980-2015年)したトレンドGDPである。これによれば、2015年の実質GDP(筆者予想)は7年ぶりにトレンドGDPを上回る計算になる。[第4図]はこれらを前年比の成長率に引き直したものである。これによれば、実質GDPは2015年まで6年連続でトレンド成長率かそれを上回る成長を続けている。仮にこのトレンドGDPを潜在GDPと見做すならば、米経済は既に需要超過の状態にありかつ5年連続で潜在的成長率を超えるペースの成長を続けていることになる。実績GDPがトレンドGDPを上回った場合の過去の成長の動向を見ると、いずれもその時点から成長率が低下する傾向が見られる([第5図])。この経験則に照らすならば、2016年以降米経済の成長率は徐々に減速する可能性が高いことになる。全米経済研究所(NBER)の認定による直近の米国のリセッション始期(景気のピーク)を遡ると、2007年12月、2001年3月、1990年7月、1981年7月と、概ね10年周期の景気サイクルになっている。直前の景気のピークの2007年12月から数えて現在は既に8年が経過していることから、そろそろ次の景気のピークが訪れてもよい時期である。2016年の成長ペースが減速局面に入るであろうとの見方は、この経験的な景気サイクルとも整合的である。

なお、米議会予算局(CBO)の推計する潜在GDP(2015年8月「財政・経済見通し」による)は依然実質GDPの実績を上回っており、2015年現在で約-3.2%のマイナスの需給ギャップ(需要不足)が存在する計算になる。ただ、CBO推計でも2015年の潜在成長率は前年比+1.7%とされており、米経済は2015年まで6年連続で潜在成長率を上回る成長を続けたことになる。

[第3図]
20151230図3

[第4図]
20151230図4

[第5図]
20151230図5

金利上昇が個人消費を抑制、設備投資は低迷が続こう

以下では、需要項目毎に来年2016年の成長率を予想していく。2016年の個人消費は前年比+2.5%と、今年の予想値同+3.1%から大きく減速すると予想する。個人消費減速の要因は主にFRBの利上げによる個人消費抑制効果である(12月13日付当レポート参照)。雇用と賃金がそれぞれ前年比約+2%の増加・上昇を続けることで名目の消費者購買力は約+4%が確保できるが、インフレ率が年末にかけ約+1.7%に上昇することで実質購買力は同+2~+3%に留まる。さらに2016年の間に合計+1%の利上げが行われることにより、個人消費が2016年10-12月期には前年比約-0.7%押し下げられる計算になる。最近の動向を見ても、実質個人消費の前年比の伸び率は2015年1-3月期をピークに減速傾向にある([第6図])。原油価格下落によるインフレ率低下にも拘わらず実質ベースの消費の伸びが減速していることは、個人消費が循環的な減速に入っていることを示唆している。結果、2016年の実質個人消費の伸びは当初+2%台から10-12月期には+2%割れにまで減速すると見る([第7図])。もっとも、個人消費は巡航速度の2%台の拡大で堅調な経済拡大を支え続けることに変わりはない。

設備投資は2016年も緩やかな拡大にとどまらざるを得ない。設備投資の先行性ある決定要因である企業ネット・キャッシュフローと設備稼働率がいずれも低下していることは、今後1年の企業設備投資拡大ペースが現状よりも減速することを示唆している(11月29日付当レポート参照)。企業ネット・キャッシュフローは7-9月期に前年比-4.7%と6四半期ぶりのマイナスの伸びに転化した。設備稼働率は11月時点で77.0%と、昨年11月の79.0%をピークに原油価格下落とともに低下を続けて低水準にある。直近の設備投資の伸び率の推移を見ても、2012年のピーク以降減速傾向が継続している([第8図])。2016年の設備投資は通年で前年比+3%台と、今年並みの低成長に留まると予想する。住宅投資は今年の同+8%台の成長からわずかに減速するも、同+7%台の伸びは維持できると見る。11月8日付当レポートでみたように、中期的な米国の住宅需要はまだ相応にある。最近の住宅販売の減速は、むしろ住宅投資の伸び悩みによる在庫不足という供給側の要因にあると考える。需要側では引き続きタイトな信用条件が住宅ローンの伸びを抑制していることも供給側の要因として存在する。

企業在庫は、在庫循環図が依然在庫調整局面にあることから、来年前半は成長にマイナスの寄与を続けると見る。海外景気の減速やエネルギー産業の稼働率低下等により、企業在庫は調整をつづけながらも相対的には高水準にある。特に企業の在庫売上高比率が10月現在で1.38倍と2009年以来の高水準にあることから、厳しい在庫調整の成長へのマイナス寄与は無視しえない可能性がある。純輸出は、海外景気減速とドル高の影響による輸出減速が続くことから、来年一杯成長にマイナス寄与すると見る。米ドルの上昇と輸出の減速にはここ1年あまりの間顕著な連関性が見られる([第9図])。ドル高傾向は来年のFRB利上げ継続による金利差拡大で、来年一杯も継続するだろう。

[第6図]
20151230図6

[第7図]
20151230図7

[第8図]
20151230図8

[第9図]
20151230図9

リスク要因はエネルギー価格と海外からのショック

以上、2016年の米成長率の個人予想を四半期ベースで示すと[第10図]のようになる。2016年通年の成長率は前年比+2.0%とやや減速するものの直ちに悲観するには及ばない。FRBの利上げによるマイナス要因にも拘わらず、この成長率は依然潜在成長率を上回っている。また、(自動車ローンや非投資適格債など一部を除いて)米経済にバブルの兆候が見られないことは、持続的成長が通常より長めに続く可能性を示唆している。その意味では、2010年代後半のどこかで訪れる可能性がある景気後退局面に必要な利下げの余地(いわゆる「金融政策ののりしろ」)を確保しておくために、今年12月に実施されたFRBによる利上げは妥当な判断だったといえる。

これらの予想に対する下方リスクシナリオは大きく二つある。一つは、原油をはじめとするエネルギー価格の低下が想定以上に進行するケースである。エネルギー価格低下は米国のエネルギー産業の収益を圧迫し設備稼働率の低下を通じて設備投資を予想以上に減速させる可能性がある。7-9月期には米企業収益(資本減耗・在庫評価調整後)が前年比-5.1%と6四半期ぶりの前年比マイナスに転じている。内訳をみると新車販売の増加を反映した自動車製造業(同+86.7%)や小売、運輸といった内需関連企業は増益を続けているが、石油・石炭製品製造業(同-12.8%)や公益事業(同-42.9%)及び海外部門(同-10.6%)がマイナス成長を続けている。外需やエネルギー需要の減速がその他財・サービスの内需の伸びを上回るペースになると、米経済全体にこの減速が波及する可能性なしとしない。

もう一つは、海外景気の更なる急減速である。中国経済は新常態のソフトランディング的な成長率調整を現状は継続しているが、信用バブルの崩壊が米国にとっての外的ショックになるリスクはある。広く新興国経済についても、これまでの先進国低金利環境で流入したマネーが逆流出することで、主に株価下落等を通じて新興国発の景気悪化の伝染を引き起こすリスクも依然残っている。米国の内需が持続的に成長を支えることをメインシナリオとするものの、予想しがたい外的ショックのリスクに今後何年かは常に留意しておく必要があるだろう。

[第10図]
20151230図10

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