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<経済レポート> 波及リスクに対処:日銀マイナス金利導入

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日銀によるマイナス金利導入決定は予想外のサプライズだった。当日の市場は乱高下の後、金利低下、株価上昇、円安で反応した。マイナス金利導入による更なる金利低下の実体経済や物価に与える限界的効果は限定的と見るものの、2%物価目標への中銀のコミットメント強化のアナウンスメント効果、及び金融市場混乱抑止を通じたインフレ上昇行程の維持にその意義を認めることができる。なお、目先の環境として10-12月期の日本の成長率は前期比マイナスに転化した可能性があり、その意味でも結果的に今回の追加緩和は適切だったとの評価は可能となりえよう。

不安定な金融市場の物価基調への悪影響リスクに対応してマイナス金利導入

日本銀行は、28-29日の金融政策決定会合で「マイナス金利付き量的・質的緩和」の導入を決定、29日の公表文で決定内容を公表した。日銀当座預金の一部につき従前の付利金利+0.1%を引き下げて-0.1%のマイナス金利を適用するものである。このタイミングでのマイナス金利導入は当レポートでも想定していなかったサプライズだった。本レポートでは、マイナス金利政策の導入経緯とその内容を点検し、今後の日本経済への効果を占うこととする。

まず、日銀公表文によれば、「マイナス金利付き量的・質的緩和」導入の理由として「このところ、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっている」「このため、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大している」とし、このリスクの顕在化を未然に防ぐためにマイナス金利を導入したとされている。マイナス金利の波及経路として「日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく」とし、金利の更なる低下を通じてインフレ目標達成をするという経路を想定している。

追加金融緩和実施の理由として、日銀が昨年末以来の原油価格再下落と今年に入ってからの株価下落に注目していることは明らかである。ただ、金融政策は中期的なインフレ見通しに基づき行われるものであり、目先の金融市場変動に反応すべきではない。あくまでマイナス金利の導入は「物価の基調に悪影響が及ぶリスク」に対応して実施するとされている点で、導入理由の説明は合理的に構成されているといえる。

3階層構造で当初のマイナス金利適用は限定的

次に、「マイナス金利付き量的・質的緩和」のスキームを見る、その概要は[第1表]の通り、すなわち、日銀当座預金を3階層に分けてそれぞれに①従前の付利金利+0.1%、②ゼロ金利、③新たなマイナス金利-0.1%を適用するスキームとなっている。既往の当座預金残高(2015年1月~12月積み期間の平均残高)には従前のプラス金利が適用される。また、貸出支援基金など政策意図のあるファシリティによる中銀借入はマイナス金利適用対象外でゼロ金利となる。これらを超える日銀当座預金残高と新たに増加する限界的残高に対してはマイナス金利が適用される仕組みである。なお、この「金利」の次元の緩和手段導入のほか、「量(マネタリーベース年間約80兆円増)」「質(長期国債保有残高年間約80兆円増等)」の金融調節方針は従前通り維持された。

既に欧州中央銀行(ECB)は、2014年6月に中央銀行預金ファシリティへの付利金利のマイナス金利への引き下げを実施している(2014年6月に預金ファシリティ金利を-0.10%に引き下げ、その後2014年9月に-0.20%、2015年12月に-0.30%へそれぞれ引き下げ、なお2015年3月より国債購入による量的緩和を開始)。ECBの場合、超過準備預金及びこれを預け入れる預金ファシリティにマイナス金利を適用するのに対し、日銀の場合はマイナス金利の適用範囲を当初は狭くすることにより、政策変更によるショックを和らげる意図が読み取れる。

現状の日銀当座預金残高をもとに、マイナス金利適用の金額を試算すると[第2表][第1図]のようになる。1月末現在の日銀当座預金残高は約259.3兆円、ここから2015年1~12月の既往平均残高および貸出支援基金等を差し引くと、マイナス金利が適用される政策金利残高は約8.6兆円と、日銀当座預金残高の約3%強にとどまる計算になる。今後の日銀による国債買入れにより当座預金残高が増加する限界的な部分については-0.1%のマイナス金利が適用されることになる。

[第1表]
20160131表1

[第2表]
20160131表2

[第1図]
20160131図1

マイナス金利適用はアナウンスメント効果に期待

更に、このマイナス金利付き量的・質的緩和の経済・物価への効果を考察しよう。まず、公表後の市場の反応は、直後に市場の乱高下が見られたものの、まずこの政策の意図通りになったといえる。29日の10年物国債利回りは0.10%と前日の0.22%から急低下して市場最低レベルで引けた。日本国債利回りは8年物までがマイナス金利となった。日経平均は前日比+476円高の17518円、ドル円為替レートは前日比2円以上円安の1ドル=121円台で引けた。

日銀の意図する「金利全般により強い下押し圧力を加えていく」ことの限界的な効果については、その直接影響は限定的と見られる。金利のマイナス水準への更なる低下(市場ではすでに29日の決定前から日本国債2年物にまでマイナス金利状態が示現していたことがあった)がインフレ期待や信用増加に働きかける圧力は限定的と見られるからである。マイナス金利導入決定前の日本国債10年物利回りは約0.2%、インフレ率をゼロと見た場合でも実質金利は同じく0.2%であり、日本の潜在成長率とされる+0.5%に比べて十分に低い。この観点からは、追加的な-0.2%の利下げが企業の設備投資意欲を直ちに有意に刺激するとは考えにくい(公表文によれば9人の政策委員のうち4人がマイナス金利導入に反対しているが、うち石田委員はかかる理由からマイナス金利導入に反対していると読める)。

むしろ、これまでの量的・質的緩和と同様、マイナス金利導入はそのアナウンスメント効果に意義を見出すべきであろう。2%インフレ目標への中央銀行のコミットメントを再度確認し市場に伝える手段として追加的緩和政策は相応に効果があろう。金融市場の不安定さが増すなか、金融市場の安定化を通じて、この政策なかりせば顕在化しえたであろう実体経済とインフレ基調への悪影響を未然防止して従前のインフレへの行程を維持することが可能になりうる。

超過準備へのディスインセンティブとしては市場金利と整合的

また、信用緩和の補完策として日銀当座預金へのマイナス金利適用は、金融機関が日銀当座預金に資金を存置することへのディスインセンティブの意義を持つ。ECBの場合、銀行が超過準備預金を預け入れる預金ファシリティへの付利金利(現在-0.30%)は市場金利のフロアを、緊急貸出ファシリティ金利(現在+0.30%)は市場金利の天井を形成する(コリドー効果)。また事実上の銀行の中銀からの調達レートである政策金利(固定金利リファイナンス金利=現在0.05%)と預金ファシリティ金利の差分(-0.35%)は、金融機関の超過準備保有に対するペナルティの意味を持つ。現在事実上マイナス金利の国債買入れオペで資金供給が行われている日銀の金融調節において、超過準備預金に対する付利金利をマイナスにしたことは、現状の金利水準と整合性があり、市中への資金回流を促す意味で論理的根拠がある。

ところで、日銀当座預金へのマイナス金利適用が、超過準備預金保有を市中への貸出や債券保有に振り向けさせるインセンティブ効果をもつとすれば、これはマネタリーベースの増加を抑制する効果を同時に持っていることにもなる。限界的な日銀当座預金付利金利引き下げが超過準備預金の市中への運用を促す意図をもつとすれば、マネタリーベースの年間80兆円の増加目標を日銀が今回維持したことはやや整合性を欠くようにも見える。マネタリーベースの増加が日銀当座預金増加にほぼ依存していることから([第2図])、マイナス金利により市中への資金回流をうながす場合、本来マネタリーベース増加ペースは縮小させるのが自然であろう(佐藤政策委員の反対理由はここにあると思われる)。

29日の日銀政策決定会合におけるマイナス金利導入の採決は賛成5、反対4の僅差であった。うち石田委員、佐藤委員は上記の通り長期金利引き下げ効果の観点から、またマネタリーベース増加ペースとの整合性の観点からそれぞれ反対した(木内委員の反対意見もこれと同様と思われる)。これらの見方は本レポートの見方とも整合するものである。また白井委員は主に市場との対話の観点からの反対意見だといえる(ただしECBにおいて現実には、預金ファシリティへのマイナス金利適用にも関わらず、その後の国債購入による量的緩和の導入に伴い、預金ファシリティ残高は、2014年の273億ユーロから2015年には1731億ユーロに増加している)。

[第2図]
20160131図2

インフレ見通し引下げは合理的:Q4成長率はマイナスもあり得る

マネタリーベースの増加がインフレに与える影響については、確たる根拠は見いだせない。2013年4月の量的・質的緩和開始以降、貨幣乗数(マネーストック/マネタリーベース)は低下を続けており、マネタリーベース増加がそのまま市中のマネーサプライ増につながっているとは言いにくい。一方で、2008年の金融危機以降の経験則、特に量的・質的緩和開始後のインフレ率(食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合消費者物価指数=いわゆるコアコアCPI)との間には強い相関ではないがある程度の連関性は認められる([第3図])。2013年4月に開始された量的・質的緩和において、マネタリーベースを金融調節の操作目標としたことは、失業率低下による需給ギャップ縮小によるインフレ圧力と合わせ、ある程度の効果は上げているといえるだろう。もっとも2%のインフレ目標達成のためには、需給ギャップが2%を超える需要超過になる必要がある計算になることから、必ずしも短期的には現実的とは言い切れない。2%インフレ目標達成の手段としてはマネタリーベース増加のみでは足りないと言わざるを得ない。

ここで、29日に公表された「経済・物価情勢の展望(2016年1月)」(展望レポート)における政策委員の経済・インフレ見通しを見てみよう([第3表])。これによれば、2016年度の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合指数=いわゆるコアCPI)見通しの中央値は前年比+0.8%と、昨年10月時点の見通し中央値である同+1.4%から大幅に下方シフトしている。2017年度のそれは+1.8%(消費税影響を除く)と不変であるが、2%のインフレ目標の達成時期は昨年10月時点の見通しであった「2016年度後半頃」から「2017年度前半頃」に後倒しされている。

2016年度のインフレ率を筆者個人が試算したところによれば、原油価格(WTI原油先物価格)が今後1バレル=30~40ドルで安定すると想定した場合(1月24日付当レポート参照)、CPIの前年比上昇率は2017年3月にはコア、コアコアとも+1.2%に上昇するとの計算になる([第4図])。これは2016年度通年度では概ね前年比+0.8%の上昇に相当する。その意味では日銀政策委員の見通しは2016年についてはほぼ現実的なものに改訂されたと見ることができる。もっとも原油価格下落にも拘わらずコアコアCPIの前年比伸び率が+1%近辺にまで上昇していることは、需給の引き締まりがインフレ圧力をもたらしつつあることの一つの証跡である。2013年の量的・質的緩和開始時に比較すれば、2%インフレ目標は理論上やや近くなったといってもよいだろう。

なお、直近の経済指標からは、10-12月期の日本の実質GDP成長率はマイナス成長になるリスクが高まっている。筆者個人は前期比ほぼ横ばいを見込んでいたが(1月3日付当レポート参照)、その後公表された12月分の家計調査、鉱工業生産指数、住宅着工戸数は、11月までの悪化をカバーできておらず、家計消費、企業設備、住宅投資のいずれもが前期比マイナスの伸びになる可能性を示唆している(1月30日付<経済指標コメント>参照)。かかる実体経済の状況に鑑みた場合、今回の追加緩和の判断のタイミングは結果的に適切だったとの評価も可能であろう。最後に、量的・質的緩和導入時からの日銀お金融政策の主な変更経緯を[第4表]に示す。

[第3図]
20160131図3

[第3表]
20160131表3

[第4図]
20160131図4

[第4表]
20160131表4


(訂正)2月1日、日本銀行「経済・物価情勢の展望」における、消費者物価上昇率が2%に達する時期に関する記述を訂正しました。
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<経済指標コメント> 米10-12月期実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+0.7%

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[日本]

実質家計消費支出(12月、二人以上の世帯)は前月比+1.0%(前年比-4.4%)

12月の実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比+1.0%と4ヶ月ぶりの前月比小幅増加。しかしながら、前年比では-4.4%と4ヶ月連続の減少かつマイナスの伸びが拡大した。前年比の減少に寄与した項目は光熱・水道(寄与度-0.84%)、被服及び履物(同-0.72%)など暖冬の影響と思われるものも見られるが、教養・娯楽(同-0.37%)、交通・通信のうちの自動車関係費(同-0.63%)など、景気の影響を受ける項目も含まれている。家計消費が依然減速局面にあることを示唆している。雇用拡大、低インフレ率の元での家計消費の低迷の要因は定かではない。12月の二人以上の勤労者世帯の可処分所得は前年比-3.1%と4ヶ月連続でマイナスの伸びとなっており、所得の伸び悩みがその一因とも見ることができる。なお、10-12月期の実質家計消費は前期比-1.9%と2四半期ぶりに前期比マイナスの伸びに転化した。10-12月期のGDP統計上の家計消費はマイナス成長に戻る可能性が高くなっている。内閣府の消費総合指数は11月までで前期比年率-2.2%と、この見方に整合する動きとなっている。

20160130図1

全国消費者物価指数(12月、生鮮食品を除く総合指数)は前月比-0.2%(前年比+0.1%)

12月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、いわゆるコアCPI)は前月比-0.2%と10ヶ月ぶりの前月比低下。ガソリン(同-4.0%)価格の低下等が前月比の指数低下に寄与した。前年比の伸びは+0.1%と2ヶ月連続でプラスの伸びを維持したものの、依然ゼロ近辺の上昇率にとどまっている。12月の原油価格再下落で、エネルギー価格中心にインフレ抑制圧力が再び高まっており、エネルギーは前月比-1.3%(前年比-11.0%)と引続き2桁の下落率でコアCPIの前年比の伸びを-1.01%押し下げている。食品(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比-0.1%と11カ月ぶりの前月比マイナスの伸び、しかし前年比では+0.8%と相対的に高い上昇率を保っている。コアコア指数の上昇基調からは、需給のタイト化でインフレに上昇圧力がかかっていることが引き続きうかがわれる。なお、今後原油価格が安定して毎月前月比+0.1%のCPI上昇が継続すると仮定すると、2016年12月にコアCPI、コアコアCPIともに前年比+1.2%に上昇する計算になる。2016年通年度では概ね前年度比+0.8%の上昇に相当する。日本銀行は29日に「マイナス金利付き量的・質的緩和」の導入の決定を公表したが、同時に公表された「経済・物価情勢の展望」レポートにおける「政策委員の大勢見通し」で、2016年度のコアCPI上昇率を前年度比+0.8%と、10月時点の見通し同+1.4%から引き下げている(政策委員見通しの中央値)が、これは当レポートの見方とも整合的である。

20160130図2

完全失業率(12月)は3.3%

3月の完全失業率は3.3%と前月比横ばいで引き続き低位にある。内訳をみると、就業者数が前年比+0.4%、労働力人口同+0.3%、完全失業者数同-2.9%と、労働力人口と就業者数の増加を伴って失業率が低下傾向を続けている。筆者試算による労働力化率は59.9%(前月比+0.5%ポイント)と上昇、6ヶ月移動平均も59.7%(同+0.1%ポイント)と上昇基調にある。総じて労働市場は、失業率低下に見られるようにタイトな需給が続いている一方で、労働力人口への流入が継続してほぼ適正にバランスを保っている状況といえる。

20160130図3

鉱工業生産指数(12月)は前月比-1.4%(前年比-0.9%)

12月の鉱工業生産指数は前月比-1.4%と2ヶ月連続の低下、水準的には今年8月以来の低水準となった。前年比でも-1.6%と過去5ヶ月で4回目のマイナスの伸びになっている。出荷指数は前月比-1.7%、在庫指数同+0.4%、在庫率指数同+0.4%と、2ヶ月連続の出荷の減少で在庫、在庫率ずれも2ヶ月連続の上昇。一旦進行した在庫調整ペースが再び低下しつつある。資本財出荷指数は同-3.6%と2ヶ月連続かつ大幅な減少で、10-12月期の同指数は前期比-1.7%と4四半期連続かつ大幅な低下となった。10-12月期GDP統計上の企業設備はマイナス成長に転化するリスクが高くなっている。公表元の経済産業省は「生産は一進一退」と基調判断している。海外経済の減速による輸出伸び悩みや原油価格の下落が企業部門の生産活動を抑制する構造は当面続く可能性がある。

20160130図4

住宅着工戸数(12月)は年率860千戸(前月比-2.2%)

12月の住宅着工戸数は年率860千戸(前月比-2.2%)と減少、結果10-12月期の着工戸数は前期比-5.3%と2四半期連続の減少となった。4-6月期の着工急増分の統計への計上で10-12月期GDP統計上の住宅投資はまだプラス成長を維持する可能性はのこっている。しかし総じて最近の住宅着工の減速感は否めない。

20160130図5

[米国]

新築住宅販売戸数(12月)は年率544千戸(前月比+10.8%)、在庫期間は5.2ヶ月

12月の新築住宅販売戸数は年率544千戸(前月比+10.8%)と3ヶ月連続かつ大幅な増加、2015年2月以来の高水準となった。12月の暖冬が例年比の売上急増に寄与したと考えられる。中古住宅販売の12月の急増(同+14.7%)とも整合する結果である。販売在庫は237千戸(同+2.6%)と依然小幅な増加にとどまり、結果在庫期間は5.2ヶ月と前月の5.6ヶ月から大幅短期化した。総じて住宅販売市場はタイトな需給が続いている。しかし住宅着工戸数が高水準を保っていることからも、今後も住宅市場は堅調な拡大を続けると見る。

20160130図6

耐久財受注(12月)は前月比-5.1%、同除く運輸関連同-1.2%、非国防資本財受注(除く航空機)同-4.3%、同出荷同-0.2%

12月の耐久財受注は前月比-5.1%と2ヶ月連続かつ大幅な減少、除く運輸関連も同-1.2%と2ヶ月連続で減少した。企業設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(除く航空機)も同-4.3%と2ヶ月連続かつ大幅な減少となった。GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷も同-0.2%と3ヶ月連続の減少、10-12月期の同出荷は前期比年率-5.8%と3四半期ぶりのマイナス成長となった。のちに公表された10-12月期GDP統計では、機器投資が同-2.5%と4四半期ぶりのマイナス成長に転じた。総じて企業部門の設備投資は低迷が続いている。今後をみても、10-12月期の同受注が前期比年率-6.9%と減少していることから、企業設備投資の伸びは抑制されたものになりそうだ。

20160130図7

実質GDP成長率(10-12月期、速報値)は前期比年率+0.7%

10-12月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+0.7%と、前期の同+2.0%から大幅減速した。結果は1月公表の経済指標の悪化に整合し筆者個人の直近の見通しにほぼ近い。需要項目別内訳は個人消費同+2.2%、設備投資同-1.8%、住宅投資同+8.1%、政府支出同+0.7%、企業在庫寄与度同-0.45%、純輸出寄与度同-0.47%。個人消費が2四半期連続+3%台の成長から2%台に減速したこと、設備投資が13四半期ぶりのマイナス成長になったこと、純輸出が2四半期連続のマイナス寄与になったことが目立つ。個人消費は暖冬や小売売上の不振にも拘わらず予想以上に12月に+0.3%程度の増加を示した計算になる。設備投資の内訳は、構造物投資同-5.3%、機器投資同-2.5%、知的財産投資同+1.6%と、構造物投資が2四半期連続、機器投資が4四半期ぶりのマイナス成長となった。基礎統計となる非国防資本財出荷の減少と整合しているが、構造物投資のマイナス成長はやや予想外。企業在庫は在庫調整の進行を反映して2四半期連続の成長マイナス寄与。純輸出の内訳は、財・サービス輸出同-2.5%(うち財輸出同-5.4%)、同輸入同+1.1%と引続き輸出の伸び悩みが目立っている。総じて、個人消費・設備投資・輸出の減速と在庫調整が経済拡大ペースを抑制している形は、循環的景気減速に原油安やドル高といった外部ショックがこれを加速しているといえる。2016年は、原油価格の低下とドル上昇が一段落すれば、再び米経済は潜在成長率をやや上回るペースの拡大に回帰すると見る。しかしながら、2016年初からの金融市場の変動や、海外景気減速による輸出及び設備投資の抑制、在庫調整の継続等は依然下方リスク要因である。経済の先行きについては慎重な見方を継続する。なお、本指標の2016年通年成長率筆者個人予想(前年比+2.0%)への影響は限定的で、この予想は維持したい。

20160130図8

<経済レポート> 慎重姿勢を維持:金融市場変動と米実体経済

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年初来の株価急落や原油価格下落で、金融市場や景気見通しに不確実性が出てきている。しかし、直近の市場動向からは株価は一旦底入れすると想定し、また原油安も今後は30ドル台で安定との米政府機関予測を採用するならば、経済見通しの大幅な変更は現状では不要と考える。ただし、短期的には10-12月期の成長率が年初の筆者個人予想より更に下振れる可能性が高くなってきたこと、また年初予想時のリスク要因がいまだ存在することには留意すべきであろう。

NY株は昨年の同時株安水準まで一旦下落した

2016年の金融市場は波乱の開始となった。昨年末に17425ドルで終了したNYダウは、20日に終値ベースで15766ドルの年初来安値にまで下落した。今回の株価下落のきっかけは4日の中国株と人民元の急落だった。また、上海・深圳両証券取引所で今年初から導入されたサーキットブレーカー制度が取引開始直後に発動される事態がつづき、7日に取引所が同制度の停止を行ったことも混乱に拍車をかけたと見られる。さらに、原油先物価格が昨年末からの再下落を続け、WTI原油先物価格が1月半ばには一時1バレル=30ドルを割り込んだことも株安加速の要因と見られる。21日の欧州中央銀行(ECB)理事会後の定例記者会見冒頭声明でドラギ総裁が「金融政策スタンスを次回3月上旬の理事会でおそらく見直す」と述べて追加緩和を強く示唆したことで株価は反発し22日には16093ドルで引けている([第1図])。本レポートでは株価、原油価格の動向を確認するとともに、短期的な実体経済指標を見ていくこととする。

株価動向についての材料はまちまちと言わざるを得ない。今回の株価下落を昨年8月の世界同時株安と比較してみよう。昨年8月の世界同時株安は、中国人民元の連続切り下げを一つのきっかけとして中国経済減速懸念等が要因だったといえる。昨年8月の場合、NYダウは下落開始前の17600ドルレベルから、終値ベースで15666ドル(8月25日終値)にまで下落ののち、10月に急反発してほぼ元の水準を回復した。今回の下落のきっかけも中国株と人民元であり、下落開始の水準もほぼ同じである。

22日までの株価推移を見ると、終値ベースでの安値は20日の15766ドルであり、8月同時株安の安値にはまだ達していない。テクニカルにはこのままNYダウが反発を継続すれば再び上昇基調に回帰することは可能ということになる。しかしながら、S&P500、ナスダックはいずれも18日の週に昨年の安値を下回る終値をつけている。テクニカルには、仮に株価が上昇に転じたとしても、昨年の年初来高値を上回る上昇基調に転ずるかどうかはやや不確実になってきたといえる。

[第1図]
20160124図1

昨年末レベルへの株価回復シナリオは描ける

一方で、バリュエーション的には株価はほぼ調整されたとみていいだろう。S&P500の昨年12月31日時点での株価収益率は19.40倍で、これは90年代後半から2000年にかけてのバブル期や2008年からの金融危機時の企業収益急悪化時を除いて概ね過去の天井圏であった。21日時点の株価収益率は17.52倍にまで低下しており(S&P資料による)、例えば2000年代前半の同比率の安定推移期の水準である。しかし、今後の米企業収益の見通しは明るいとは言えない。原油価格下落でエネルギーセクターの収益は今後も悪化しそうである。ドル高と海外景気減速で海外部門収益減少が引き続き予想される。堅調な内需で内需関連部門は増益も期待できる一方、自動車販売が年率18百万台とほぼ飽和状態にある可能性があることから、これまで内需の牽引役だった自動車関連セクターは今後伸び悩むだろう。結果、エネルギーや公益事業を除いた国内非金融機関部門の企業収益の伸びもすでにピークアウトしている可能性がある([第2図])。

なお、S&P500のセクター別の年初来騰落率(15日まで)をみると、最も大きく下げたのが素材(-11.9%)、次いで金融(-10.3%)、情報技術(-9.0%)、エネルギー(-8.8%)の順となっている。セクター別には必ずしもエネルギーが最大の下げではなく、いわゆる景気敏感セクターが率先して下げている構造は、これらのセクターが上昇率上位にあった昨年とは逆のパタンであり(昨年の情報技術セクターは年間+4.3%上昇)、今回の株価下落が経済実体に比して買われすぎていた可能性を示唆している([第3図])。

筆者個人は2016年末のNYダウを18000ドル(2015年末比約+3%の上昇)と予想している(1月3日付当レポート参照)。年初の動きからは既にこの予想には下方リスクが出てきているとも見ることができる。予想が経済全体の減速を同時に見込んでいることからは、この予想はやや強気なものともいえるだろう。ただ、ドル高・原油安が総合的には米経済にプラスの影響をもたらすと考えれば、企業収益全体が2016年中にはプラスの伸びに転じ、これに合わせて株価が巡航速度の上昇に回帰することはあり得るとみて、現状ではこの予想は維持したい。

[第2図]
20160124図2

[第3図]
20160124図3

原油価格は30~40ドルで今後安定と想定したい

原油価格の見通しも不確実と言わざるを得ない。WTI原油先物価格は昨年12月のOPECによる増産見送り決定を契機に、それまでの1バレル=40ドル台から再び下落、1月には一時30ドルを割り込み、その後22日には30ドル台を回復している([第4図])。原油価格下落は、インフレ率低下により内需拡大を促す一方で世界経済減速懸念を助長し、またエネルギー産業や輸出産業の収益悪化や設備投資抑制につながり得る。米エネルギー情報局(EIA)は1月20日付「短期エネルギー見通し」において、2016年のWTI原油先物価格平均を38.54ドルと予想している(2015年平均は48.67ドル)。また、2016年の世界の原油需給については、2016年通年では供給増加が需要増加をわずかに上回り、0.74百万バレル/日の在庫増と予想している。供給の増加要因は主にOPECによる生産維持とイランの核開発に係る制裁解除に伴う原油輸出開始である。

原油価格についてはその予想は困難であるものの、1バレル=30ドル割れで一旦底入れし、その後は30~40ドルのレンジで推移すると一旦見ておきたい。この場合、原油価格は2016年一杯ほぼ前年比でマイナスの伸びとなり、インフレ率に対してはマイナスの寄与を継続することになる。

この結果、エネルギーや素材を中心とした産業の企業収益はマイナスとならざるを得ないものの、内需関連セクターの収益がインフレ率低下の恩恵でプラス成長を保ち、結果企業収益は全体でプラスの伸びに回帰すると見ておく。インフレ率に対しては、1月までの原油価格下落で個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は12月、1月に前月比低下するだろう。その後の原油価格安定を見込んでも2016年末のPCEデフレーターの前年比の伸びは+1.5%程度に留まる計算にならざるを得ない。しかしながら、コアPCEへの波及が限定的とのこれまでの実績が継続するならば、コアPCEデフレーターの前年比の伸びは2016年間末で+1.8%まで上昇することが可能である。上記の前提に従うならば、年初の原油価格下落はFRB金融政策予想に影響を与えないとのシナリオを十分に成り立つ。

[第4図]
20160124図4

成長予想は維持するも、慎重姿勢崩さず

金融市場変動が近々収拾されるとしても、短期的に米経済ファンダメンタルズ指標が軟化している点には留意が必要である。筆者は10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+1.2%と、前期の同+2.0%から大幅減速と個人予想しているが、この予想に更に下方リスクが出てきている。まず、12月の小売売上高は前月比-0.1%と3ヶ月ぶりの減少、自動車・ガソリン・レストランを除くベースでも同-0.2%と8ヶ月ぶりの減少となった。結果、2015年のホリデー商戦売上高は前年比+2.7%と、2009年以来の低い伸びに留まった([第5図])。12月の小売売上の不振の原因は、暖冬で冬物消費が鈍ったことと、ドル高で観光客宛売上が伸びなかったこととされている(1月16日付<経済指標コメント>参照)。この結果、12月の実質個人消費は前月比横ばい程度の伸びに留まる可能性が高く(暖冬による電力・ガス消費の伸び悩みも勘案すればマイナスの伸びもありうる)、10-12月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+1.8%に急減速する計算になる(現状の筆者の個人予想は同+2.2%)。さらに、企業在庫調整の深さや住宅着工の減少を勘案すると、10-12月期の成長率は同+1%を割り込む可能性が高くなっていると言わざるを得ない(10-12月期GDP統計は29日公表予定)。

しかし、今後米国の個人消費がこのまま失速する可能性は低い。雇用拡大と賃金上昇と低インフレ率で、個人の実質可処分所得は11月時点で前年比+3.5%の強い伸びを続けている([第6図])。これに対する実質個人消費の伸び同+2.5%は、まだ個人の所得に今後消費を拡大する十分な余裕があることを示唆するものである。また、株価下落にも拘わらず、消費者センチメントは低下の兆しもなく、高水準を保っている([第7図])。消費者センチメントが維持されているのは、主に雇用環境の良好さとインフレ率低下による消費者心理の好転が、株価下落等の悪化によるそれを上回っているためと考えられる。

以上から、現状では今年の米経済の見通しの変更を考慮する必要はないと考える。もっとも、2016年の米経済につき当レポートではやや減速方向を既に予想していること、またこの予想に対するリスクは下方であると見ていることには留意すべきである(2015年12月30日付当レポート参照)。リスクシナリオとして筆者は、原油価格の更なる下落と、海外景気の更なる減速を想定しているが、このリスクの存在する状況は現在でも変わっていない。経済見通しについては引き続き慎重な姿勢を維持しておく。

[第5図]
20160124図5

[第6図]
20160124図6

[第7図]
20160124図7

<経済指標コメント> 米12月消費者物価指数は前月比-0.1%

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[米国]

消費者物価指数(12月)は前月比-0.1%(前年比+0.7%)、同コア指数は前月比+0.1%(前年比+2.1%)

12月の消費者物価指数(CPI)は前月比-0.1%と3ヶ月ぶりの前月比低下。12月に始まった原油先物価格の1バレル=40ドル台から同30ドル台への再下落の結果、ガソリン(同-3.9%)、暖房油(同-7.8%)などエネルギー価格の低下が指数を押し下げた。しかしながら一方で食品及びエネルギーを除くコア指数は同+0.1%と上昇を継続している。住居費(同+0.2%)、運輸サービス(同+0.3%)、医療サービス(同+0.1%)などサービス費目の価格上昇が指数を押し上げており、原油価格のコア指数への波及はまだ限定的である。前年比の伸びは総合指数+0.7%、コア指数+2.1%。コア指数は2012年以来の+2%超えで想定通りの上昇を継続している。原油価格の再下落にも拘わらず、経済ののりしろの縮小でインフレ圧力は継続していると考えられる。1月に一時1バレル=30ドルを割り込んだ原油価格は、総合CPIの伸びをやや軟化させる可能性が高い。しかし、コアインフレ率の継続的上昇は、今後のFRBの利上げ継続(個人予想は今年4回の利上げ)をインフレ面からは十分に正当化している。

20160123図1

住宅着工戸数(12月)は年率1149千戸(前月比-2.5%)、着工許可件数は同1232千件(同-3.9%)

12月の住宅着工戸数は年率1149千戸(前月比-2.5%)と減少。6ヶ月移動平均も同1145.7千戸(同-0.9%)と低下に転じた。しかし、水準的には2ヶ月連続で同1100千戸台を維持しており、米住宅着工は堅調に推移しているといえる。10-12月期の着工戸数は年率1133千戸(前期比-2.2%)と3四半期ぶりにマイナスの伸びに転じたが、10-12月期のGDP統計上の住宅投資はこれまでの着工の積み上げから何とか前期比プラス成長を維持できると見たい。住宅着工許可件数は同1232千件(同-3.9%)と減少したものの、引き続き高水準を保っており、今後の住宅着工が堅調に推移することを示唆している。

20160123図2

中古住宅販売戸数(12月)は年率5460千戸(前月比+14.7%)、在庫期間は3.9ヶ月

12月の中古住宅販売戸数は年率5460千戸(前月比+14.7%)と、前月の同-10.5%の急減から大きく回復した。ほぼ巡航速度に回復したペースといえる。先月の販売の大幅減は「”Know Before You Owe“ルール(10月に発効した米消費者金融保護局による、不動産販売時におけるより広範な開示を求めるルール)による一時的なもの」とされていた(全米不動産業協会の12月プレスリリース)が、その通り販売急減は一時要因であったとの結果になった。公表元の全米不動産業協会(NAR)は「11月の取引遅延の積み残しが12月の急増に寄与した」と述べている。中央販売価格は販売在庫の減少(前月比-12.3%)とこれに伴う在庫期間の急短縮(3.9ヶ月)から前年比+7.6%とやや加速が見られる。総じて住宅販売市場は依然タイトであり、今後住宅販売は堅調に増加すると見る。

20160123図3

<経済指標コメント> 米12月小売売上高は前月比-0.1%

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[日本]

景気ウォッチャー調査(12月):現状判断DIは48.7(前月比+2.6ポイント)、先行き判断DIは48.2(同横ばい)

12月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは48.7(前月比+2.6ポイント)と2ヶ月ぶりの上昇。しかしながら、横ばいを示す50を5ヶ月連続で下回っており、街角景気がいまだ減速していることを示唆している。内訳は、家計動向関連47.7、企業動向関連48.9、雇用関連55.1と、雇用のみが増加基調にあることを示唆している。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは48.2(同横ばい)、これも5ヶ月連続で50を下回った。内訳は家計動向関連47.2、企業動向関連48.2、雇用関連55.2。調査先の回答の中には「11月と同様、12月も非常に気温が高く、冬物の売上が低迷している(現状判断:スーパー)」など暖冬の売上への悪影響や「中国経済が減速しているなか、米国の利上げもあり、景気の先行きも不透明と言わざるを得ない(先行き判断:金融業)」など海外景気への懸念を示すものが見られる。総じて景況感は、海外景気減速懸念に暖冬の一時要因が加わっている模様だ。2015年10-12月期の成長率は前期比横ばいにとどまると筆者個人は見ているがこれを支持する結果であり、さらに2016年の成長回復ペースが想定よりも緩やかになるリスクを示唆していると言わざるを得ない。

20160116図1

機械受注(11月、船舶・電力を除く民需)は前月比-14.4%(前年比+1.2%)

11月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-14.4%と、9、10月の大幅増(それぞれ同+7.5%、+10.7%)から反落した。前年比の伸びは+1.2%と2ヶ月連続でプラスの伸びを維持したものの、前月の同+10.3%から大幅に伸びを縮めた。11月までの10-12月期同受注は前期比+5.7%と前期の同-10.0%から回復しており、2016年初の生産が徐々に回復することを示唆しているが、まだ持続的な受注拡大とは言えない。企業部門の回復は依然緩やかなものに留まると見る。

20160116図2

[米国]

企業在庫(11月)は前月比-0.2%、企業売上高は同-0.2%、在庫売上高比率は1.38倍

11月の企業在庫は前月比-0.2%と2ヶ月連続の減少。企業売上高は同-0.2%とこれも2ヶ月連続で減少。在庫売上高比率は1.38倍と前月比横ばいながら2009年以来の高水準に上昇したままである。企業在庫の3ヶ月前対比の伸び率は-0.1%と2009年10月以来のマイナスの伸びで、企業の在庫調整ペースが加速していることを示唆している。在庫調整が短期的に加速していることは10-12月期成長率の抑制要因となる。筆者個人は在庫調整が10-12月期の成長率を-0.1~-0.2%押し下げると予想しているが、さらに在庫の成長押し下げ効果は大きくなるリスクも出てきている。また、在庫売上高比率が高水準にあることからは、この在庫調整が少なくとも年前半の間続く可能性が高いと見る。

20160116図3

小売売上高(12月)は前月比-0.1%、除く自動車関連同-0.1%

12月の小売売上高は前月比-0.1%と3ヶ月ぶりの前月比減少。除く自動車関連でも同-0.1%と3ヶ月ぶりのマイナスの伸びとなった。新車販売減少を反映した自動車及び同部品ディーラー(同-0.2%)、ガソリン価格低下を反映したガソリンスタンド(同-1.1%)の売上減少は想定内。しかしさらに、家電店同-0.2%、食品店同-0.3%、衣服店同-0.9%、総合商店同-1.0%などが売上減となった。一方家具店同+0.9%、建設資材店同+0.7%等は売上増加した。内容にはばらつきはあるものの、総じて12月の売上には失望感があると言わざるを得ない。ホリデー商戦売上のベースとなる、自動車・ガソリン・レストランを除く売上は予想に反し前月比-0.2%と前月の同+0.4%からマイナスの伸びに転じた。結果、2015年のホリデー商戦売上高(自動車・ガソリン・レストランを除く小売売上の11月・12月合計、季節調整済)は前年比+2.7%と、筆者個人予想の同+3.2%から大幅に下振れ、2009年以来の低調な伸びとなった。報道によれば、暖冬の影響による冬物商品売上減やドル高による観光客宛売上減が低調な商戦の要因とされている(1月15日付WSJ)。家電店・衣服店・総合商店の12月の売上減はこうした要因で説明できそうだ。しかしながら、米経済を牽引してきた個人消費が減速の兆しを見せているのは今後の米経済予想にとっては悪材料である。10-12月期の実質GDP成長率を筆者は前期比年率+1.2%と予想しているが、在庫調整の加速と合わせ個人消費の減速で、これが下振れるリスクが出てきている。

20160116図4

鉱工業生産指数(12月)は前月比-1.4%、設備稼働率は76.5%

12月の鉱工業生産指数は前月比-1.4%と3ヶ月連続の低下。内訳は製造業同-0.1%(2ヶ月連続低下)、鉱業同-0.8%(4ヶ月連続低下)、公益事業同-2.0%(3ヶ月連続低下)とすべての業種で生産が連続して低下している。外需減速に伴う在庫調整、原油価格低下、暖冬による電力・ガス消費低迷が重なって生産指数が低下していると考えられる。設備稼働率は76.5%(前月比-0.4%ポイント)と4ヶ月連続の低下で、2013年7月以来の低水準となった。自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率11.83百万台(同-1.3%)と、自動車販売の飽和感による減少を反映して2ヶ月連続の減少となった。総じて、暖冬は一時要因としても、高水準にある在庫売上高比率からは在庫調整は当面続くと考えられ、生産指数の低下は今年前半の間継続する可能性が高いと見る。

20160116図5

<経済レポート> インフレが鍵:12月FOMC議事要旨

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昨年12月のFOMC定例会合議事要旨からは、今後のインフレ率動向が利上げペースを決定する大きな判断要因となる可能性が読み取れる。更に今年初からの株価下落が利上げにとっての新たなリスク要因となる可能性がでてきた。FOMCが2016年に+0.25%の利上げを4回実施という筆者個人予想は維持するが、こうしたリスク要因も同時に認識しておく必要はあるだろう。

インフレと金融市場が今後の利上げ判断の要素

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)が9年半ぶりの利上げを決定した昨年12月15-16日の定例会合の議事要旨が6日に公表された。委員会の政策行動に関する審議では、「10月会合以降の情報は経済活動が適度なペースで拡大していることを示唆している」「最近の労働市場指標は更なる改善を示し、労働資源の余剰は年初以来明白に減退したことを確認した」「インフレは、エネルギー価格と非エネルギー輸入価格低下の影響で委員会の長期目標である2%を下回って推移しつづけている」ものの「中期的にはエネルギー価格と非エネルギー輸入価格の安定と労働市場の強まりで徐々に上昇すると予想する」「委員会は今やインフレ率が中期的に2%目標に上昇するとの予想を合理的に確信している」として、全会一致で+0.25%の利上げが決定されている。

筆者個人は、今年の3月、6月、9月、12月の定例会合でそれぞれ+0.25%の利上げが実施され、年末のFF金利誘導目標レンジは1.25-1.50%となると個人予想している。12月定例会合議事要旨の内容はこの予想を変更する新たな材料を提供するものではなく、この個人予想は維持する。

しかしながら議事要旨においては、インフレ率についての懸念が相応に提出されており、インフレ動向が今後の利上げ判断に相応の影響を与えることが推測できる。また、12月会合以降の後発事象として、米経済指標の軟化、そして年初来の株価下落が発生している。以下では12月会合議事要旨におけるインフレ率に関する議論をもとに、今後の利上げ判断に影響を与えると考えられる要インフレ率の動向、ならびに現在の株安の動向を見ることとする。

12月FOMCではインフレ見通しに対する懸念が表明された

12月FOMC議事要旨ではインフレに関する議論に相応の時間が割かれたことが読み取れる。経済条件と見通しに関する参加者の議論の部分では「前回会合との間に原油価格が更に下落」したことで参加者の多くは短期的インフレ予測を下方修正したものの「ほとんどすべての参加者が中期的にはインフレ率が2%に接近すると予想し続けた」とされている。更に「資源余剰ののりしろは明白に減退し長期インフレ期待が相応に安定していることから、ほとんどの参加者はタイト化する資源利用が来年のインフレ上昇に寄与すると予想した」とされている。原油価格再下落は一時的、かつ需給ギャップ縮小がインフレ率上昇を促進すると参加者のほとんどは考えていることになる。

一方で、今後のインフレ率上昇に対する悲観的な見方もいくつか提出されている。「多くの(many)参加者は、最近の原油価格下落により総合インフレ率は従前予想より長くインフレ率を押し下げると判断した」とされ、「数人の(several)参加者は、米ドルの更なる上昇が輸入価格を抑制し続けると見た」とされた。そして「多くの参加者は価格の継続的な軟化がインフレ見通しに不確実性または重大な下方リスクをもたらしている」と述べている。政策行動に関する投票メンバーの議論でも「幾人かの(some)メンバーは、彼らのインフレ予測に対するリスクは重大だ」とのべ「原油や他の商品への更なる下方価格ショックや、米ドル為替価値上昇の継続は、インフレ率の反転上昇を遅らせるか減退させる可能性がある」と述べている。また「2、3人の(a couple of)参加者は、労働市場の更なる強化はグローバルなディスインフレ圧力を相殺するに十分でないかもしれない」また「数人のメンバーはインフレ期待の低下に懸念」を表明した。結果声明文にある通りインフレ率を「慎重に監視していく」ことが合意された。

インフレ率について当レポートでは、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が総合、コアともに2016年末にかけて前年比+1.7%レベルにまで上昇すると予想している([第1図])。しかしながらこの予想は、WTI原油先物価格が11月時点の1バレル=40ドルレベルで安定し、PCEデフレーターが毎月前月比+0.15%程度の上昇を続けるとの前提に基づいている。昨年12月初のOPECによる減産見送り決定を契機として、原油先物価格はそれまでの1バレル=40ドル台から急落して、1月8日時点では同32ドルレベルにある。この原油価格再下落は当レポートの想定以上の下落である。仮に原油価格が1バレル=30ドルにまで低下してその後横ばいになったとして、12月及び1月のPCEデフレーターが同-0.2%の低下となった場合、2016年末のPCEデフレーターの前年比の伸び率は+1.5に下方シフトする計算になる。12月FOMC議事録にもあるように、原油価格下落やドル高という変動の大きい要因で、これらのファンダメンタルズに基づくインフレ見通しが下振れするリスクはまだ残っていると言わざるを得ないだろう。

[第1図]
20160111図1

需給とインフレ期待からは2%のインフレ目標達成は合理的に確信できる

もっとも筆者個人は、原油価格以外の要因がインフレ率低下に与える影響については比較的限定的と見ている。12月FOMC声明文及び議事要旨からは、FOMCが市場ベースと調査ベースの期待インフレ率が低いことに関心を示していることがうかがわれる。[第2図]は、米国債と物価連動国債の利回りから算出される市場の期待インフレ率の推移である。これによれば12月時点で5年後の期待インフレ率は約1.2%、5年先5年後の期待インフレ率は約1.8%といずれも2%を下回りかつ低下傾向にある。一方、調査ベースのインフレ予想として、12月のミシガン大学消費者センチメント調査による期待インフレ率を見ると、12ヶ月後期待インフレ率、5年後期待インフレ率いずれも2.6%と、2%を上回っており、かつその低下傾向も市場ベースほど明確ではない。市場ベースの期待インフレ率は国債の需給に左右されやすく、また調査ベースでも短期のインフレ期待は目先の原油価格等の動きに左右されやすい。一方で、フィラデルフィア連銀による2015年第4四半期(11月時点)のSurvey of Professional Forecasters 調査では、10年後の消費者物価インフレ率予想は2.15%と第3四半期と横ばい、2015年第1四半期の2.10%のボトムからわずかながら上昇している。これらを総合すると、比較的長期の期待インフレ率は相対的に安定しているといってよいと見る。

需給ギャップとインフレ期待を変数とする推計でも、現在のコアインフレ率は前年比+1.7%レベルが適正との結果が引続き出ている。[第4図][第1表]は、米国の需給ギャップ(米議会予算局推計値をもとに筆者試算)と期待インフレ率(ミシガン大消費者センチメント調査12ヶ月期待インフレ率)とを外生変数としたコアPCEデフレーターの推計値と実績値である。これによれば、現在前年比+1.3%にあるコアPCEデフレーターの伸び率は、理論的には+1.7%レベルにあるのが適正であることになる。さらに今後潜在成長率を超える米経済成長でマイナスの需給ギャップが縮小し、またこれに伴いインフレ期待が上昇する見通しからは、2%インフレ目標への中期的な到達は「合理的な確信」の範囲内だといえる(上記推計によれば2%のコアインフレ率達成のためには、期待インフレ率が現状の2.6%の場合、需給ギャップがほぼゼロになる必要があり、これは今後の米経済成長減速見通しからは今後2~3年の間には困難な数字であるが、実績値が理論値から+0.3%上方へぶれることは現実的には十分考えられる)。

さらに、需給の引き締まりがインフレ圧力を高めつつある証跡が賃金にも見られる。12月雇用統計によれば、時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)の伸び率は前年比+2.4%と2014年8月以来の伸びに回復した([第5図])。12月FOMC議事要旨にもみられるように、労働市場や経済全体の需給の引き締まりがインフレ圧力を高めていくことは十分に考えられる。

[第2図]
20160111図2

[第3図]
20160111図3

[第4図]
20160111図4

[第1表]
20160111表1

[第5図]
20160111図5

金融市場混乱はダークホース

最後に、年初から続いている株価下落について概観する。1月4日の中国株と人民元の下落を発端に世界の株価は大幅下落で始まり、8日終値時点でNYダウは16346ドルと、昨年末終値17425ドルから約-6.2%下落した([第6図])。また、上海・深圳両証券取引所で今年初から導入されたサーキットブレーカー制度が取引開始直後に発動される事態がつづき、7日に取引所が同制度の停止を行ったことも混乱に拍車をかけたと見られる。今回の株価下落は、中国人民元の連続切り下げを一つのきっかけとして中国経済減速懸念等から世界株価が同時安となった昨年8月と類似した契機、かつ同水準からの下落開始である。昨年8月の場合、終値ベースでNYダウは15666ドル(8月25日終値)にまで下落ののち、10月に急反発してほぼ元の水準を回復した。今回の場合、8日現在のNYダウはまだ8月の安値水準には達しておらず、このレベルで反発すれば再び上昇基調に回帰できるとテクニカルには見ることができる。また今回の株価下落も、米国株については下落前の水準がバリュエーション的にやや割高だったことが一つの背景といえる。S&P500の昨年12月31日時点での株価収益率は19.40倍で、これは90年代後半から2000年にかけてのバブル期や2008年からの金融危機時の企業収益急悪化時を除いて概ね過去の天井圏である([第7図])。その意味ではこの株価下落は一時的調整ともいえ、現状では過度な悲観は不要と考えている。

しかし、海外特に中国経済減速懸念は持続的に今後も続く可能性が高い。また、原油価格下落や輸出減速で米国の企業収益は苦戦がつづいている。2015年7-9月期の企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)はエネルギーセクターと海外部門の悪化で前年比-5.1%と6四半期ぶりの減益に転じた。したがって2016年の株価に対しては弱気基調が継続せざるを得ないだろう。筆者個人は2016年末のNYダウを18000ドルと昨年末から概ね横ばい(年間上昇率+2.8%)と個人的に見ている(1月3日付当レポート参照)。これは、昨年2015年の同-1.8%下落からはやや持ちなおすものの、2014年の同+7.5%上昇にくらべると2年連続で減速することになる。

FRBの金融政策において、金融市場の動向は一つの判断要因である。短期的な株価水準のみが利上げ判断の大きな障害になるとは考えにくいが、これが景況感を通じて米国ファンダメンタルズに影響を与えると見なされた場合、また新興国からの資金流出が新興国経済の更なる悪化につながると見做された場合などは、上記の利上げ予想に対する下方リスク要因とならざるを得ない。

[第6図]
20160111図6

[第7図]
20160111図7



<経済指標コメント> 米12月非農業部門雇用者数は前月比+292千人

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[米国]

ISM製造業指数(12月)は48.2%(前月比-0.4%ポイント)、非製造業指数は55.3%(同-0.6%ポイント)

12月のISM製造業指数は48.2%(前月比-0.4%ポイント)と実に6ヶ月連続の低下、景気判断の分かれ目を示す50%を2ヶ月連続で下回った。ISM製造業指数が2ヶ月以上連続で50%を下回るのは2009年7月以来のことである。総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注49.2%(同+0.3)、生産49.8%(同+0.6)、雇用48.1%(同-3.2)、入荷遅延50.3%(同-0.3)、在庫43.5%(同+0.5)。雇用DIの低下が全体を押し下げており、先行性のある新規受注と生産DIはいずれも小幅上昇したものの、いずれも50%を2ヶ月連続で下回った。調査対象先の回答には「原油価格低下が掘削活動に影響(石油石炭製品)」「12月の利益は前月比横ばい(コンピューター及び電気製品)」「売上は好調、低燃料価格がSUVとトラック売上を維持(プラスチック及び革製品)」など、原油価格低下の影響がまちまちであることを示唆している。非製造業指数は55.3%(同-0.6%ポイント)と2ヶ月連続の低下、相対的には高水準を保っているものの2014年4月以来の水準にまで低下した。総合DIを構成する4つのDIの内訳は事業活動58.7%(同+0.5)、新規受注58.2%(同+0.7)、雇用55.7%(同+0.7)、入荷遅延48.5%(同-4.5%)と、入荷遅延以外のDIはすべて前月比上昇している。総じて年末にかけて原油価格再下落やドル高影響と思われる要因で企業景況感の軟化は継続している。他の経済指標と合わせても10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1%レベルに減速したとの見方に整合している。

20160109図1

新車販売台数(12月)は年率17.2百万台(前月比-0.8%)

12月の新車販売台数は年率17.2百万台(前月比-0.8%)と2ヶ月連続の減少、4ヶ月ぶりに年率18百万台を下回った。年率18百万台の自動車販売は米国においてほぼ飽和状態に近いとみられることから、この減速はある程度想定されたものである。ただし減少幅は想定よりも大きく、12月の実質個人消費はこの自動車販売減少で筆者予想(前月比+0.3%)よりも下振れるリスクが出てきた。

20160109図2

雇用統計(12月):非農業部門雇用者数は前月比+292千人、失業率は5.0%(前月比横ばい)

12月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+292千人と強い伸び。業種別では、専門ビジネスサービス(同+73千人)の大幅増加が目立つほか、建設(同+45千人)、教育及び医療サービス(同+59千人)など、景気敏感業種とディフェンシブ業種のいずれでも雇用が増加している。過去2ヶ月分も上昇改訂され、非農業部門雇用者数の前月比増加数の3ヶ月移動平均は+283.7千人と3ヶ月連続の増加数加速となった。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)も前年比+2.4%と前月の同+2.1%から伸び率が急上昇しており、再び賃金上昇ペースが加速を始めたことを示唆している(季節調整済データによる)。家計調査による失業率は5.0%(前月比横ばい)と、米議会予算局推計の自然失業率5.1%を下回っている。内容を見ると、労働力人口と就業者数のいずれもが増加しており、労働市場の拡大を伴う失業率の安定である。労働参加率は62.6%(同+0.1%)とわずかに上昇した。総じて米雇用市場は堅調な拡大を続けており、今後は賃金上昇率も加速することが見込まれるといえる。ただし、現在の米雇用市場がほぼ完全雇用に近い状態にあることから、今後雇用増加と失業率低下ペースは徐々に減速せざるを得ないと見る。

20160109図3

<経済レポート> 堅調な拡大継続:日本経済定点観測

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日本経済は実質GDPの水準も成長ペースもほぼ中期トレンドに一致しており、現状の経済拡大はほぼ巡航速度の均衡水準に近いといえる。2016年も潜在成長率をやや上回るペースの成長が可能と見る。2016暦年の成長率は前年比+1.0%、2016年度は前年度比+1.2%の成長を個人予想する。

日本の実質GDPはほぼトレンド上にある

2016年の成長予想の前に、2015年10-12月期の成長率見通しを点検する。2015年11月までの経済統計からは、10-12月期の日本の実質GDP成長率は前期比ほぼ横ばいに留まると見る。実質消費支出(二人以上の世帯)は11月時点で3ヶ月連続前月比マイナスの伸びで、10-11月平均は7-9月期比-1.9%の大幅マイナスとなっている。このペースだと10-12月期での前期比マイナス成長は数字上避けられない計算になる。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷も、10-11月平均は前期比-0.7%のマイナス成長。11月までの10-12月期住宅着工戸数も前期比-4.4%の大幅マイナスとなっている。企業在庫も11月時点で過去3ヶ月のうち2ヶ月で減少しており、成長への寄与度はマイナスとならざるを得ない。12月分の指標での回復を見込んでも10-12月期の成長率は前期比横ばいか、マイナス成長になるリスクも出てきている。結果2015暦年の実質GDP成長率は前年比+0.6%になると見る。

中期的トレンドの観点も含めて2016年の成長率を占うために、日本経済の中期的なトレンドに照らした現在の立ち位置を見る。[第1図]は統計の連続性のある1994年1-3月期から2015年7-9月期までの実質GDPをHPフィルターで平滑化したトレンドGDPと、実質GDP実績との比較である。これによれば、7-9月期現在の実質GDPはそのトレンドにほぼ近いところに位置している。トレンドGDPを潜在GDPと見做すならば現在の日本経済はほぼ完全雇用を実現する潜在GDPレベルの位置にあることになる。

トレンドGDPから算出したトレンド成長率の推移をみたのが[第2図]である。これによれば、7-9月期時点の日本のトレンド成長率は約+0.7%と計算される。上記でみた2015年暦年成長率予想である前年比+0.6%はほぼトレンド成長率に近い成長ペースであるといえる。以上から、現在の日本の実質GDPはその水準もほぼ中期トレンドにあり、成長ペースもトレンド成長に沿ったものということができる。いいかえれば(トレンドGDPを潜在GDPと見做した場合)、日本経済はほぼ需要と供給が均衡しかつその成長ペースも潜在成長率にあるという、極めて安定した立ち位置にあるといえる(なお、内閣府は7-9月期時点のGDPギャップを-1.3%、潜在成長率を+0.4%と推計している)。

[第1図]
20160103b図1
[第2図]
20160103b図2

2016年は前年比+0.8%成長を予想:家計消費はプラスの伸びに転化を見込む

こうした熱すぎず冷めすぎない日本経済も、直近の経済指標を見るとやや減速の状況が見られる。しかし2016暦年はこの巡航速度の成長を維持し、2016暦年成長率を前年比+0.8%とこれもほぼトレンド成長率に近いペースと個人予想する。なお、本レポートでは2017年4月に消費税率が現行の8%から10%に引き上げられることを前提に個人予想を行うこととする。2017年1-3月期には駆け込み需要により一時的に成長ペースが拡大する結果、2016年度の実質GDP成長率は前年度比+1.2%の強めの伸びになると見る。以下、需要項目毎にこの予想の内訳を見ていく。

まず、家計消費は2014年4月の消費税率引上げ(5%→8%)以降不振が続いている。総務省家計調査における実質家計支出水準指数は11月時点で91.8ポイント(2010年=100)と、消費税率引上げ前の水準(2013年は99~100)を-8%近く下回って推移している(12月26日付<経済指標コメント>参照)。今後の個人消費の動向を占うために、労働市場と賃金市場の状況を見てみよう。雇用市場では失業率が3.2%(11月までの10-12月期平均)と、1995年7-9月期以来の低水準にまで低下している。上記のトレンドGDPとの関係からも、雇用市場はタイトな状況にあり、場合によっては完全雇用を達成している可能性もある。その場合、今後は就業者数の増加ペースは徐々に減速していくことが考えられる。実際、就業者数と労働力人口の伸びの推移を見ると、両者の拡大ペースは2013年をピークに減速局面にある([第3図])。10-12月期時点の就業者数の伸び率は前年比+0.3%程度であり、これが今後顕著に加速する可能性は低いと見たい。

賃金動向は消費にとっての好材料である。[第4図]に見られるように、10月時点での現金給与総額(きまって支給する給与)は前年比+0.4%と、2015年に入り前年比プラスの伸びが定着しつつある。この賃金上昇には政策的な背景によるベア等も含まれているものの、労働市場の需給からみても賃金の上昇は妥当な結果である。就業者数の拡大ペースの減速に代わり賃金が遅行的に上昇ペースを速めることで、雇用の伸びと賃金の伸びを合わせて約+1%レベルの購買力が維持されると見たい。

これに対してインフレ率(生鮮食品を除く総合指数=コアCPI)は11月現在で現在前年比横ばいとなっているが、2014年末の原油価格急落の影響が剥落する今年のコアCPIは年央にかけて前年比+1%前後に上昇、2016年平均では前年比+0.6%レベルの上昇を見込む。このインフレ率上昇は消費の抑制要因とならざるを得ず、下方リスク要因ではあるものの、総じてこれまでの家計消費が環境に比して抑制的であったことを勘案、今後は巡航速度の拡大ペースへの回帰を見ておきたい。2016年の家計消費は前年比+1%前後の拡大を見込む。これは2015年の見込み同-0.9%からの大幅好転であり、3年ぶりのプラス成長である。2014年4月の消費税率引上げ後1年半以上にわたり低迷した家計消費もようやく安定拡大に入ることを意味する。なお、2017年1-3月期には、2017年4月予定の消費税率引上げ前の駆け込み需要で家計消費が一時的に前期比年率+6%程度の急拡大を見せると見込んでおく。

[第3図]
20160103b図3
[第4図]
20160103b図4

企業設備投資は緩やかな拡大:在庫調整は年前半のマイナス要因

次に、企業部門である。企業設備投資は2016年も緩やかな拡大にとどまらざるを得ないだろう。短期的な先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)の11月時点での3ヶ月移動平均は前年比+1.7%と低水準にあり、今後の資本財生産の伸びが低位にとどまることを示唆している([第5図])。製造工業の稼働率も相対的には低位である。経済産業省の製造工業稼働率指数(2010年=100)は10月現在で98.7と、2015年1月のピーク104.3から-5.4%低下している。ただし、2016年後半にかけては、2017年4月に予定されている消費税率引上げ前の追加設備投資が見込まれることから、2016年通年の企業設備投資は現在の2015年見込み(前年比+1.2%)よりやや強めの同+4%レベルを見込むこととする。

企業在庫は成長にマイナス寄与する基調と見る。在庫循環図は依然在庫調整局面にあり([第6図])、企業の在庫率指数も高水準にあることから、2016年7-9月期までは企業在庫調整が成長の押し下げ要因となるだろう。10-12月期には2017年1-3月期の駆け込み需要を見込んだ在庫積み増しが行われて成長にプラス寄与に転化すると見る。

財貨・サービスの輸出入はいずれも国内外の景気減速を反映して伸び率が低下している([第7図])。2016年も同様の傾向が続くと見て、純輸出は成長に3年ぶりにマイナス寄与になると見る。米国でFRBが利上げを継続することで、為替レートがやや円安方向に向かうと個人的に見ているが、これは輸出の押し上げ要因となるだろう。ただ、総合的には為替影響は海外経済の減速要因にくらべて限定的と見ておきたい。

[第5図]
20160103b図5
[第6図]
20160103b図6
[第7図]
20160103b図7

リスクは下方:家計消費下振れと外部要因

以上の個人予想を四半期毎の成長率にしたものが[第8図]である。実質GDP成長率は2016年7-9月期までは前期比年率+1%前後で推移、10-12月期から消費税率引上げ前の駆け込み需要の先取りで成長は加速し、2017年1-3月期は駆け込み需要が本格化することで成長率は+5%レベルに一時的に加速すると見る。結果2016年暦年成長率は前年比+1.0%、2016年度は前年度比+1.2%を見込む。日本経済は2016年に前年を上回る成長ペースに加速し、かつ潜在成長率を上回る堅調な成長は維持することになる。内閣府推計による潜在GDPに基づいた場合も、マイナスのGDP2017年1-3月期には解消する計算になる。

一方で、この予想に対するリスクは下方と言わざるを得ない。まず、家計消費の予想以上の減速が考えられる。2015年にインフレ率の低下、家計所得の増加(総務省家計調査においても2015年央)にかけては勤労者世帯の実収入は前年比+5%を超える増加を示していた)にも拘わらず2015年通年の家計消費が前年比マイナスの伸びに留まった要因は定かではない。この傾向が2016年も継続する場合は上記予想を下振れさせる要因となり得る。

また、世界の経済成長は2016年に想定以上の減速になるリスクがある。筆者個人は2016年の米国経済成長率を前年比+2.0%と2015年に比べやや減速と見ている(2015年12月30日付当レポート参照)。欧州については2015年よりいくぶん成長の加速を見込んでいる。しかし、新興国中心に成長の下方リスクはあり、また一旦下げ止まった資源価格の更なる下落は上記予想に対する下方リスクであり続けるだろう(なお、世界全体について例えばIMFは2015年10月時点の「世界経済見通し」で2016年の世界経済成長率を同+3.6%と、2015年見通し同+3.1%から加速を予測している)。

なお、筆者個人の経済・金融予想のアップデートを[第1表]に示す。

[第8図]
20160103b図8

[第1表]
20160103b表1

<経済指標コメント> 日本の11月鉱工業生産指数は前月比-1.0%

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[日本]

鉱工業生産指数(11月)は前月比-1.0%

11月の鉱工業生産指数は前月比-1.0%と3ヶ月ぶりの低下。出荷指数も同-2.5%と3ヶ月ぶりに低下した。出荷の大幅減を背景に在庫指数は同+0.4%と3月ぶり上昇、在庫率指数は同+2.9%と3ヶ月ぶりに上昇した。11月は出荷の減少が在庫調整にともなう生産縮小を上回り在庫が再び積み上がり始めた形である。生産指数の3ヶ月移動平均はかろうじて2ヶ月連続上昇しており、中期的には2015年年央をボトムに底入れの兆しもみえつつある。ただ、在庫率は依然高水準にあり、在庫循環図もまだ在庫調整局面にあるため、生産の回復には在庫調整が一巡する2016年半ばまでかかりそうだ。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷指数は同-2.5%と前月の同+2.0から反落。11月までの10-12月期資本財出荷は前期比-0.7%と4四半期連続のマイナスの伸びとなっている。10-12月期のGDP統計上の企業設備投資はマイナス成長に転化するリスクが出てきている。なお、公表元の経済産業省は鉱工業生産の基調につき「一進一退」との判断を据え置いている。

20160103図1
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