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<経済レポート> 消費は再び堅調に:米4月FOMCとGDP統計

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4月FOMCでは追加利上げが見送られたものの、声明文の微妙なバランスからはFOMC内でも今後の金融政策の行程につき引き続き広範囲な意見があったと憶測できる。米経済成長率は3月時点の見通しよりもやや下振れているものの、個人消費を牽引役に堅調な拡大に回帰、インフレ率も年末にかけて上昇するとの当レポートの見方は不変である。年内+0.25%の利上げが2回実施されるとの個人予想を維持したい。

4月FOMCは利上げ見送り:米経済は減速するも労働市場は改善

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)は、4月26-27日の定例会合で予想通りFF金利誘導目標レンジの引上げを見送り、現状の0.25-0.50%に維持することを決定した。会合後に公表された声明文のポイントは大きく3点ある。まず、基調判断において経済成長の減速が認識されたが労働市場については改善が認識されていること、次に、世界経済動向が米国経済に与えるリスクについての言及が削除されたこと、最後に、しかしながら声明文に次回利上げ時期を示唆する文言は挿入されなかったこと、である。

まず、基調判断では「労働市場は更に改善された」とされたが「経済活動は減速したようだ」「家計消費は軟化した」とされ、会合ののちに公表された1-3月期GDP統計とほぼ整合する判断が示されている。しかし「家計の実質所得は堅調なペースで増加し消費者センチメントは引き続き高い」と個人消費の決定要因が強い環境にあると判断されている。「企業設備投資と純輸出は弱い」と前回同様の判断、インフレについても従前同様「一部に原油価格下落とエネルギー以外の輸入価格下落で委員会の2%の長期目標を下回って推移」とされた。

これらの基調判断は、会合以降に公表された1-3月期GDP統計や、これまでの当レポートの見方ともほぼ整合するものである。当レポートでも、1-3月期に個人消費は一時的に減速(前期比年率+1.9%と前期の同+2.4%から減速)したものの、実質可処分所得は3月時点で前年比+3.1%と強い伸びとなっていることから、今後個人消費は堅調な拡大をすると見ている([第1図])。インフレ率については、個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率は今年末に+1.5%、同コア指数は同+1.9%にまで上昇すると見ている(4月30日付<経済指標コメント>参照)。

[第1図]
20160501図1

グローバル経済金融のリスク文言は削除、次回利上げ示唆文言はなし

次に、FOMCの金融政策スタンスに関する記述では、前回声明文で挿入された「グローバルな経済と金融の動向が(米国経済に)リスクを引続きもたらしている」との文言が削除され、代わりに「委員会はインフレ指標とグローバル経済及び金融動向を引き続き注意深く監視する」と、従前のインフレに加えてこれを注意深い監視の対象とする文言に置き換えられた。

これは、3月会合時点に比べ世界経済が米国に与えるリスクがいくぶん軽減したとのFOMCの判断の反映とも考えられる。しかしながら、委員会の経済見通しに対するリスクのバランスは今回も記載されなかった。見通しに対するリスク判断が声明文に記載されなかったのは、1月定例会合声明文で「リスクはほぼバランス」との文言が削除されて以来3会合連続となる。

最後に、4月の声明文でも次回の利上げについて示唆する文言は挿入されなかった。12月にFOMCが利上げを実施した際にはその前の10月会合声明文で「次の会合で(FF金利)誘導目標レンジを引き上げることが適切かどうかを決定するにあたり、、」との文言を採用し、次回会合での利上げの可能性を示唆していた。その意味では今回の声明文は、次回6月会合での利上げ予想を確固たるものにする内容ではなかったことになる。一方で、FOMCは今後の金融政策正常化の行程につき引き続きフリーハンドを残したといえる。なお、金融政策維持についてはカンサスシティ連銀のジョージ総裁が前回3月会合に続き反対票を投じた。基調判断から投票に至るまでの議論の過程には、これまで同様にタカ派・ハト派間に広範囲な意見が見られたと憶測する。これについては3週間後の議事要旨で確認したい。

消費を牽引役に今後成長は堅調に回復

1-3月期のGDP統計を受けた米経済見通しについては、筆者個人はこれまでの個人予想を大きく変更することなく、2016年通年で前年比+1.7%の成長を引き続き見ている。成長の牽引役は依然個人消費と見る。4月時点での非農業部門雇用者数は前年比+2.0%、時間当たり賃金上昇率(生産及び非監督労働者)は同+2.3%である。これらを合わせた雇用者所得の伸びは約+4%強であり、今後2%にむけてインフレ率が上昇しても2%を超える実質購買力の維持が可能である。上記で見たように、3月時点で家計は前年比+3.1%の実質可処分所得の伸びをたもっている。

FOMC声明文が指摘するように、消費者センチメントも高水準にある。4月のミシガン大学消費者センチメント指数は89.0ポイント(前月比-2.0ポイント)と4ヶ月連続の低下となった。しかしこの水準は、過去の相関からは実質個人消費約+2.7%の伸びに相当する高水準である([第2図])。今後は雇用の伸びが循環的な減速局面に入ると見られる(4月25日付当レポート参照)ことから、個人消費の伸びも昨年のように3%台は期待できず(2016年通年の実質個人消費は前年比+3.1%)、今年は同+2%台半ばに留まると見ているが、それでも経済の潜在成長率を超えるペースの拡大を支えるには十分である。

一方で、企業部門の設備投資や企業在庫、そして純輸出は成長抑制要因とならざるを得ない。企業設備投資の先行指標である非国防資本財受注は1-3月期に2四半期連続マイナスとなる前期比-4.9%だった。鉱工業の設備稼働率は3月時点で74.83%と2010年以来の低水準にある。企業ネットキャッシュフローは10-12月期に前年比-10.0%と2四半期連続のマイナスの伸びとなった。企業在庫期間は2009年以来の高水準にあり、在庫調整が今後も成長を抑制しよう。それでも、個人消費の拡大や企業部門の減速反動が4-6月期以降に見こめば、今後2%レベルの成長継続は十分に可能である。

[第2図]
20160501図2

年内2回利上げ予想を維持する

以上4月FOMC声明文の内容と、今後の米経済見通しを合わせて、筆者個人の金融政策予想を点検してみる。まず、経済成長見通しは、3月時点のFOMC委員経済予測よりも下振れしていると言わざるを得ない。3月時点のFOMC委員見通し中央値は2016年成長率が+2.2%(第4四半期前年同期比)だった。これに対し、1-3月期GDP統計後の筆者の見通しは+1.7%程度である。一方で、2016年PCEインフレ率は3月FOMC委員予測中央値+1.2%(同)に対し、3月実績を踏まえた筆者個人の見通しは+1.3%とわずかにFOMC予測を上回っている。現時点での筆者個人見通しをもとにテイラー・ルールによる2016年10-12月期の適正FF金利を試算すると0.88%となり、従前の1%超よりも下振れている。しかしながらこの水準でも、年内+0.25%の利上げを6月、12月の2回実施(年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%)との予想が正当化できることになる。

従って、筆者個人の金融政策予想である上記の予想は現時点では維持しておきたい。FOMCが3月定例会合で利上げを見送った際にも、その理由は「海外経済・金融の米経済への影響」が主なもので、その定量的な根拠は明示的なものではなかった。海外経済は中国を中心に確かに減速はしているものの、一方で金融市場はいまのところ安定を取り戻し、原油価格も1バレル=40ドル台にまで回復している。1月に見られたような市場混乱は既に収拾されているといっていいだろう。

以上の見方に対するリスク要因は以下である。第1に、FOMC内では依然としてハト派の投票メンバーが相対的には多いこと。4月定例会合ではカンサスシティ連銀のジョージ総裁が3月定例会合に続いて+0.25%の利上げを主張して金融政策維持に反対票を投じた。投票メンバーの中ではタカ派よりと見られるセントルイス連銀のブラード総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁は4月会合では金融政策維持に投票した。これら3名のタカ派に加えて今後早期の利上げを支持する可能性のあるのはフィッシャーFRB副議長かパウエル理事と憶測できるが、これでもまだ過半数には至らない状況である。また、市場が年内2回の利上げを必ずしも織り込んでいないことに対し、サプライズを避ける配慮をハト派が重視する可能性もある。第2に、FOMCのリスク認識通り海外経済の悪化が米経済の成長を更に下押しするリスクが考えられる。筆者自身は海外経済の急減速は強くは想定していないが、例えば中国経済に加えて欧州金融システムや新興国信用リスク問題が顕在化することで、経済・金融が再び1月のような混乱になるリスクはなしとしない。特に株価が年間でピークアウトしやすいとされる5月を経て夏場にかけての金融市場の動向には、経験則からも留意はしておくことが妥当であろう。また、海外経済減速が企業収益を通じて更なる生産の減速やこれに伴う株価低下をもたらすシナリオもリスクとしては見ておく必要があろう。

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