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<経済レポート> 6月利上げ予想に整合:4月FOMC議事要旨

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4月FOMC議事要旨は思いのほかタカ派な内容であり、筆者個人の6月追加利上げ実施予想を支持するものであった。また4月分の米経済指標も4-6月期の成長ペース回復予想に沿ったものである。6月、12月にそれぞれ+0.25%の利上げ実施との個人予想を維持する。

4月FOMCは利上げ見送り:利上げ主張する参加者もいた

FRBは、先月4月26、27日の連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合で追加利上げを見送った。その議事要旨が18日に公表されている。結論的にはその内容は思いのほかタカ派的であった。本レポートでは、4月FOMC定例会合議事要旨の内容から今後の金融政策を占うとともに、FOMCにおける経済見通しの議論、そして生産性の議論をみていく。

まず、議事要旨の中からFF金利誘導目標の引上げに関する参加者の議論をみていく。FF金利を本会合(4月)で引き上げることが正当化されるかとの議論において、ほとんどの(most of)参加者は「国内消費の減速は一時的なもの」と判断した。しかしながら、多数の(a number of)参加者は「インフレ見通しへのリスクは下方」と判断、また多くの(many)参加者は「海外動向からくる下方リスクは後退したものの注意深い監視が必要」と述べた。こうして参加者は総じてFF金利誘導目標を本会合では据え置くことが妥当とみたとされている。

一方で、2、3名の(a couple of)参加者は「更なるFF金利引き上げ行動の延期は、市場を混乱させ、委員会の政策決定に影響を与える経済判断につき市場を混乱させ、潜在的に委員会の信用を悪化させるかもしれないことを懸念」した。また、何人か(a few)の参加者は本会合でFF金利誘導目標を引き上げることが適切と判断した。これらよい、投票メンバー以外の参加者を含む議論では、何人かの参加者が利上げを適切とみるなど、結果的に利上げは見送ったものの、FOMC内では利上げ積極派も相応に存在したことがわかる。

ほとんどの参加者が6月利上げの可能性をみている

次に、次回利上げのタイミングについては、ほとんどの(most of)参加者が「今後入手されるデータが、経済成長の第2四半期の加速、労働市場の強まりの継続、インフレの委員会の2%目標への進捗と整合的ならば、委員会が6月の会合でFF金利誘導目標レンジを引き上げるのが適切になる可能性が高い」と判断したとされた。これは、3月時点のFOMC委員の経済予測における適切なFF金利予測と整合的であり、また当レポートの見方とも一致する内容である。

4月FOMC会合以降の米経済指標をみると、これまでのところ6月定例会合での利上げを支持する状況といえる。4月非農業部門雇用者数は前月比+160千人にとどまったが、失業率は5%の低位にあり、時間当たり賃金上昇率は加速した。また4月小売売上高は前月比+1.3%の強い伸びを示し、4-6月期に個人消費が前期比年率+2%台に再加速するとの筆者個人の見方を支持する結果となっている([第1図])。

インフレについては、4月会合の議事要旨では数人の(several)参加者が、ここ1、2年の調査ベースの長期インフレ期待の低下をインフレへの下方リスク要因としてあげている。ミシガン大学消費者センチメント調査によれば、確かに5年先の期待インフレ率はじりじりと低下傾向にあるものの、一方で短期の12ヶ月先の期待インフレ率は3月、4月に上昇に転じており、原油価格の持ち直しとあいまって、インフレ率が今後上昇に転じる要因となりうることを示唆している([第2図])。4月の消費者物価指数は前年比+1.1%、同コア指数は同+2.1と、コア指数は2%以上の上昇率を維持している。また、筆者個人は個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比の伸びが今年末には+1.5%、コアPCEデフレーターが同+1.9%に上昇すると見ている。

[第1図]
20160525図1

[第2図]
20160525図2

6月利上げ予想を維持する

世界金融市場も現在は安定している。年初に始まった株価の大幅下落から、現在では米株価はほぼ昨年末の水準に回復している。3月の利上げ見送りの背景となった世界金融経済動向について議事要旨では「参加者は総じてグローバルな経済と金融の動向からくるリスクは後退した」とみているとされた。またこれらからくる経済見通しに対する下方リスクも後退したと見ている。

これらの状況証拠から判断して、6月、12月にそれぞれ+0.25%の利上げが行われるとの筆者の従前からの個人予想を維持することとする。米経済は年初の金融変動や天候要因により、1-3月期に一時的に減速したものの、雇用の堅調な伸びと賃金上昇による購買力の拡大で個人消費を中心に再加速するだろう。また、労働市場ののりしろの縮小によりインフレ圧力はじりじり高まっていくはずである。これらはFOMC委員がみる利上げの条件を満たす方向である。

ところで、4月FOMC議事要旨からは、参加者が生産性の動向について議論したことが読み取れる。議事要旨によれば「雇用と総労働時間は相対的に強いが、産出の拡大は適度であり、結果生産性の伸びは年率平均+0.5%をやや下回っている」「多くの参加者は、予測比低い生産性の伸びがもたらす結果につき様々な可能性を述べた」とされた。「幾人かの参加者は、実質GDP成長が相対的に緩やかにとどまっても、生産性上昇率が今後数四半期の間雇用拡大にもかかわらず失望的でありつづけるならば、失業率がより早く低下しインフレがより早く上昇する可能性」があるとのべた。一方で、「低い生産性の上昇はかえって予想より低い家計所得及び企業売上の伸びにつながり、結果失業率とFF金利は現状予想とほぼ不変になる」ともされた。さらに「数人の参加者は、生産性上昇の趨勢が恒常的に低下するならば、数四半期の間動向把握が困難になり、金融政策への示唆はより長期均衡FF金利の低下となる」と述べた。

労働生産性上昇率低下のインプリケーション

米国の労働生産性の推移は[第3図]の通りであり、米労働省統計によれば、今年の1-3月期を含む過去3四半期の間、労働生産性上昇率(非農業企業部門)は前年比+0.6%と低位横ばいにとどまっている。労働生産性上昇率低下の背景は、90年代後半のIT革命期に見られた技術革新がその後みられないこと、また2007-8年の景気後退期の雇用削減による一時的な見かけの労働生産性向上要因が剥落したことが考えられる。労働生産性上昇率低下の成長への示唆としては、筆者個人は成長率及びインフレ率の下押し要因とみている。[第4図]のとおり、産出量を労働生産性と労働投入量に分解した場合、生産性の伸び率低下は産出の押し下げ要因となる。さらに、今後雇用拡大ペースが徐々に減速すれば、更なる生産低下要因になる。また労働生産性の低下は時間当たり賃金上昇率の抑制要因ともなる(2015年5月11日付当レポート参照)。

別な観点からは、以下の点が指摘されうる。すなわち、今後2,3年にわたり失業率が-0.2%ポイントの低下(労働投入量にして約+0.2%の増加)にとどまりながら、いかにして+2%台の成長を継続しうるか([第1表])。労働投入量が1%を割る成長だった場合、+1%を超える生産性上昇率がなければ+2%成長は困難となる計算になる。

筆者個人も失業率低下ペースは今後減速するにも関わらず、成長率は概ね+2%を維持できると考えている。一方で上記の通り労働生産性上昇率の急な加速は見込みにくい。それでもなお成長率維持が可能とみる背景は2つある。まず、企業の設備稼働率に余裕があることである。産出量を決定する要因には、労働投入量と生産性のほか資本蓄積(稼働率勘案後)がある。現在の鉱工業設備稼働率は75%台の低位にあり、標準的な80%レベルに稼働率を上げれば産出量は数%上昇可能である。次に、失業率低下を起因とする賃金圧力の遅効的な上昇圧力の高まりが見込まれることである。これは労働力人口への再流入につながり、結果失業率は横ばいでも実際の就業者数の増加は前年比+2%弱を確保できうる。結果、生産性上昇率の低下にかかわらず、今後+2%レベルの成長は可能である。結果FRBの金融政策が予想比緩和的になる可能性は低いということになる。

[第3図]
20160525図3

[第4図]
20160525図4

[第1表]
20160525表1

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