FC2ブログ

<経済レポート> バランスにはあと一歩:7月FOMC

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
FOMCは7月定例会合で予想通り追加利上げを見送った。労働市場への基調判断は改善、経済見通しへの「短期的」リスクは後退したとされた。しかし、利上げ時期の前倒しを示唆する文言はなく、4-6月期GDP成長率の下振れや自然利子率低下論はハト派の利上げ慎重論の支持材料である。年内1回12月に追加利上げが決定されるとの個人予想は維持する。

7月FOMCは利上げ見送り:基調判断は改善した

26-27日の定例会合で、FRB公開市場委員会(FOMC)は予想通りFF金利誘導目標レンジを0.25-0.50%に据え置くことを決定した。声明文の従前文言からの変更は比較的シンプルなものであった。今回の声明文のポイントは大きく3つある。労働市場に関する基調判断が上方修正されたこと、経済見通しへのリスク減退が明記されたこと、にもかかわらず次回利上げに関する示唆文言が挿入されなかったことである。

まず、冒頭の基調判断のパラグラフでは「労働市場は強まった」「5月の弱い増加ののちに6月の雇用増加は強いものになった」とされ、前回6月定例会合声明文の「労働市場の改善は減速した」から判断が改善した。また経済拡大は「適度なペース」、家計消費は「力強い」とされた。前回6月定例会合時点で4-5月の雇用統計の軟化が利上げ見送りの判断材料の一つだったことが議事要旨からも判明していたが、6月雇用統計の回復により、この軟化が一時的なものだったとの判断がFOMC内でもなされたことがうかがわれる。

第2に、金融政策のスタンスを示すパラグラフで、「経済見通しに対する短期的なリスクは減退した」との一文が新たに声明文に挿入された。FOMCが声明文で経済見通しに対するリスクに言及するのは3会合ぶりであり、FOMCの判断の大幅改善を示唆するものである。経済見通しに対するリスクバランスが記載されるこのパラグラフには、昨年12月定例会合までは「概ねバランスしている」という文言だったが、今年初の金融市場変動を受けて1月声明文で同文言が削除されリスクバランスへの言及がなくなった。さらに3月声明文では「グローバルな経済と金融動向はリスクをもたらし続けている」との下方リスク文言が挿入された。この文言は4月声明文では削除され、再びリスクバランス文言なしの状態が6月声明文までつづいていた。今回7月声明文の文言は、前回まで潜在的にFOMCが見通しに対する下方リスクを依然見ていたこと、今回それが明かに後退したことを示唆している。ただし、のちに述べるようにこの文言は「概ねバランスしている」までには改善していない。したがって本文言は見かけの判断改善にかかわらず、従前のバランス文言に比べれば依然ハト派的な文言だと言わざるを得ないだろう。

「リスク減退」は短期的なものに限定された

前回6月定例会合での利上げ見送り判断の材料は、雇用市場の悪化、英国EU離脱リスク、中立金利の低下、の3点であった。今回の7月会合声明文で示された「経済見通しに対する短期的リスクの減退」がいずれのリスクを指すのかは声明文だけからは判然としない。雇用市場については6月単月の指標が労働市場の改善を示唆した。英国EU離脱は前回6月会合以降の国民投票で選択された直後に金融市場の一時的悪化がみられたが、7月定例会合時点ではほぼ国民投票前の状態に回帰している。この状態をもって6月会合での利上げ見送りの要因の少なくとも2つが解消されたと見ることも可能ではある。

しかし現時点の情報からは、このリスク後退は主に、年初の市場変動にくわえ、4-5月の雇用指標悪化、英国EU離脱後の短期的な金融市場変動のリスクに限定したものとみるべきであろう。英国EU離脱選択のファンダメンタルズへの中長期的影響は現状入手可能な6月指標には反映されているとは言えず、少なくとも9月頃までの指標の確認が必要といえるからである。雇用市場についても、本来は6月単月指標の改善のみならずその後の動向も踏まえて、特に英国EU離脱選択を受けた雇用への影響まで見極めるのがFOMCのスタンスとより整合的である。米供給管理協会(ISM)の調査によれば、英国EU離脱選択の米雇用への影響は限定的と当レポートでは見ている(7月3日付<経済指標コメント>参照)。FOMCとしては(特にハト派の観点からは)中長期的な見通しに対する判断をバランスさせるには、また次回利上げ時期の判断までには、更なる情報の蓄積が必要とみるのが自然であろう。このリスク判断改善の背景については、今後公表される議事要旨で確認したい。

最後に、上記のリスク後退認識にも拘わらず、7月声明文には次回9月会合での利上げ判断の可能性を示唆する文言は挿入されなかった。今後の金融政策についての文言は「委員会は、経済条件はFF金利の徐々の引き上げのみを正当化する形で推移すると予想する」と従来の文言から不変であり、年内の金融政策行動に関する新たな材料は提供されなかった。経済見通しに対するリスクの減退が短期的なものにとどまっていることからは、今後の金融政策について3月のFOMC委員経済見通しから大幅な変更がないことや、新たに利上げを前倒しする材料に乏しいことから、はこのコミュニケーションは自然なものといえるだろう。

12月利上げ予想は維持:GDP下振れは年内利上げを妨げない

7月FOMCの声明文は、当レポートの「12月定例会合で+0.25%の追加利上げ決定」との個人予想とその前提に概ね整合する内容であった、一方で声明文自体からは、6月のFOMC委員の経済予測(年内1回の利上げが予測中央値)から利上げを前倒しする材料があった形跡は読み取れない。ついては、FOMCの金融政策に関する上記の筆者個人予想を維持することとする。

以下では、直近のGDP統計の金融政策予想への影響と、FOMCでの金融政策に関する議論でしばしば言及される中立金利につき補足を試みる。まず、7月FOMC定例会合後の29日に公表された4-6月期GDP統計では、実質GDP成長率が前期比年率+1.2%にとどまり、筆者個人予想を大幅に下回った(7月30日付<経済指標コメント>参照)。年後半の個人消費の減速を勘案すると、2016年の成長率は、6月時点のFOMC委員予測中央値である前年比+2.0%から大幅に下振れ、同+1%台前半~半ばにとどまる計算になる。これは、利上げに慎重なハト派のFOMC委員にとっては利上げ見送り主張の好材料となりうる。

しかしながら、テイラー・ルール公式によれば、この下振れが年内の利上げ実施の妨げにはならないことがわかる。4-6月期の実質GDPが予想比下振れしたことにより、テイラー・ルール公式による年末の適正FF金利水準は従前の当レポート予想比約-0.3%程度下方シフトした計算になる。しかしそれでも、年末の適正FF金利水準は約1%となり([第1図]、自然利子率=2%の場合)、年内1回の利上げは十分に正当化されることになる。GDP統計の下振れは、12月利上げ予想に対する下方リスクというより、利上げ前倒し可能性の後退とみるのが適切であろう。

[第1図]
20160731図1

長期金利からみた自然利子率は1%台なかば

次に、自然利子率(実質中立金利)の低下に関して補足しておく。従前の当レポートでは、①米議会予算局推計による潜在成長率、②実質GDP実績のHPフィルター平滑化による潜在成長率、の2つを自然利子率とみなし、これらの水準からは現在の米国の自然利子率は低く見積もっても1%台半ばにあると見るのが適切であること、したがって自然利子率が仮に2%を下回っているとしても年内の利上げはテイラー・ルール公式上年内の利上げは正当化できること、を見てきた(参照)。したがって、一部FOMC委員の見解から憶測される「自然利子率がほぼゼロ」という前提で年内利上げを見送ることは慎重すぎるとの立場をとってきた。ここでは上記の2つの自然利子率推計に加え、③実質長期金利実績のHPフィルター平滑化による自然利子率、を試算してさらに考察を進める。

長期金利(10年物米国債利回り)からインフレ率(消費者物価指数前年比伸び率)を差し引いた実質長期金利の推移は[第2図]の通りである。ここからHPフィルター平滑化により抽出されるトレンドを自然利子率とみなすと、現在の自然利子率は約1.4%と推計される。上記を合わせた3通りの自然利子率を一つのグラフ上で比較したものが[第3図]である。これによれば、②実質GDP実績から推計される自然利子率は約2%、①CBO推計及び③実質長期金利からの推計による自然利子率はいずれも約1.4%との結果になった。実質長期金利はFRBの金融緩和政策でやや低めに抑制されてきた可能性があることを勘案すれば、③が相対的に低い水準にあることは首肯できる結果である。

上記からも、米国の自然利子率は低めに見積もっても1%台半ばにあること依然言ってよく、自然利子率がゼロに近づいているという結果は導出されない。もっとも、自然利子率を1.5%とした場合のテイラー・ルール公式による年末の適正FF金利は、4-6月期GDP統計を勘案するといまや約0.5%にまで低下している。その意味で自然利子率の低下は前提とした場合には年内追加利上げの正当化はギリギリの状況にはあることは認めざるを得ない(上記[第1図])。ついては、FOMCにおける自然利子率低下の議論は、金融政策見通しに対する潜在的な下方リスク要因として引き続き認識はしておきたい。

[第2図]
20160731図2

[第3図]
20160731図3
スポンサーサイト

<経済指標コメント> 米4-6月期実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+1.2%

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[日本]

実質家計消費支出(6月、二人以上の世帯)は前月比-1.1%(前年比-2.2%)

6月の実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比-1.1%と2ヶ月連続の前月比減少、前年比でも-2.2%と4ヶ月連続の減少となった。前年比での実質消費支出の減少に寄与したのは、住居(寄与度-1.55%)、交通・通信(同-0.53%)など。結果、4-6月期の実質家計消費支出は前期比-0.2%とマイナス域に転化し、4-6月期実質GDP成長率の個人予想に対する下振れリスクがでてきた。勤労者世帯の実質実収入は前年比+0.2%とわずかにプラスの伸びを保っている。また5月時点の厚生労働省「毎月勤労統計」による実質賃金(きまって支給する給与)も前年比+0.4%とプラスの伸びにある。雇用拡大と合わせて家計消費を取り巻く環境は悪くはない。また内閣府消費者態度指数も6月まで2ヶ月連続で上昇するなど消費者センチメントも堅調である。家計消費支出の統計上の不振要因はあきらかではなく、今後の推移を注視したい。

20160730図1

全国消費者物価指数(6月、生鮮食品を除く総合)は前月比-0.1%(前年比-0.5%)、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は前月比-0.2%(前年比+0.4%)

6月の全国消費者物価指数、生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコア指数)は前月比-0.1%、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比-0.2%と、いずれも前月比で低下。コアコア指数の前月比低下は4ヶ月ぶり。前月比の指数低下に寄与した費目は電気代(寄与度-0.06%)、教育娯楽用品(同-0.03%)など。一方原油価格の上昇でガソリンは同+0.09%とプラス寄与している。前年比の伸びはコア指数が-0.5%とマイナス幅を拡大、コアコア指数が同+0.4%と相対的には安定しているものの伸び率は昨年末をピークに低下傾向にある。前年比伸び率には電気代(寄与度-0.37%)、ガソリン(同-0.33%)などエネルギー関連が依然マイナス寄与している。ただコアコア指数の伸び率が低減していることは、経済ののりしろの縮小によるデフレ圧力後退というこれまでの当レポートの見方に対するリスクの兆しと言わざるを得ない。もっとも、原油価格が現状の1バレル=40ドル台で安定推移すれば、2017年3月にはコア指数。コアコア指数とも前年比+1%台半ばの伸びに回帰するとの見方は不変である。

20160730図2

完全失業率(6月)は3.1%

6月の完全失業率は3.1%と1995年7月以来およそ20年ぶりの低水準に低下した。内訳をみると、労働力人口前年比+0.9%、就業者数同+1.1%と、労働市場の拡大を伴う失業率低下である。筆者試算の労働力化率は60.2%と上昇基調を保っている。失業率低下は労働市場需給のタイト化を示唆しているが、労働力人口への流入による労働市場拡大でタイト化のペースはやや緩和されている模様だ。

20160730図3

鉱工業生産指数(6月)は前月比+1.9%(前年比-1.9%)

6月の鉱工業生産指数は前月比+1.9%と前月の同-2.6%から反転上昇し、過去4ヶ月で3回目の上昇となった。3ヶ月移動平均はわずかに低下に転じたものの、4月をボトムに底入れの兆しもみられる。出荷指数は同+1.2%とこれも反転、在庫指数は同横ばい、在庫率指数は同-1.4%と低下した。単月指標としては生産・出荷増、在庫調整進捗の良い形で、公表元の経済産業省も「生産は一進一退だが、一部に持ち直し」と基調判断を引き上げた。しかし、在庫循環図は依然在庫調整局面にあり、海外景気減速を英国のEU離脱選択がさらに助長する可能性もあり、この傾向の持続性には疑問がある。なお、設備投資の先行指標となる資本財出荷指数は前月比-1.0%と4ヶ月ぶりに低下したが、4-6月期の同出荷は前期比+4.2%と4四半期ぶりに増加に転じており、4-6月期GDP統計上の企業設備のプラス成長転化という予想を支持する結果である。

20160730図4

住宅着工戸数(6月)は年率1004千戸(前月比-1.3%)

6月の住宅着工戸数は年率1004千戸(前月比-1.3%)と6ヶ月ぶりの減少。内訳は持家同+2.9%、貸家同-2.3%、分譲住宅同-6.2%(うち分譲マンション同-28.1%)。住宅着工は引き続き高水準にあるが、これまでのピークにほぼ近い水準であり今後やや減速の可能性がある。

20160730図5

[米国]

新築住宅販売(6月)は年率592千戸(前月比+3.5%)、在庫期間は4.9ヶ月

6月の新築住宅販売は年率592千戸(前月比+3.5%)と過去4ヶ月で3回目の増加、水準は2008年2月以来の高水準となった。販売在庫は244千戸(同+1.2%)と増加したが、在庫期間は4.9ヶ月とやや短期化した。中古住宅の増加とあわせ住宅販売市場の活況は継続している。住宅ローン金利の低位安定と雇用拡大が背景にあると見られる。住宅供給は需要に比べて増加ペースが遅く需給は依然タイトであるが、総じて住宅市場は拡大スパイラルにあると見て良いだろう。

20160730図6

耐久財受注(6月)は前月比-4.0%、除く運輸関連同-0.5%、非国防資本財受注(航空機を除く)同+0.2%、同出荷同-0.4%

6月の耐久財受注は前月比-4.0%、除く運輸関連では同-0.5%。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機を除く)は同+0.2%と3ヶ月ぶりに増加した。しかし、GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同-0.4%と2ヶ月連続の減少で、4-6月期の同出荷は前期比-1.7%と3四半期連続のマイナス成長となった。今後についても、4-6月期の受注が前期比-6.6%と大幅マイナス成長に終わっていることから、設備投資は引き続き不振が予想される。なお、その後公表された4-6月期GDP統計で設備投資(機器投資)は前期比年率-3.5%と3四半期連続のマイナス成長に終わった。

20160730図7

実質GDP成長率(4-6月期、速報値)は前期比年率+1.2%

4-6月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+1.2%と、筆者個人予想の同+2.8%を大幅に下回った(なお、GDP統計は年次改訂により2013年に遡って改訂されており、2015年通年成長率は前年比+2.4%から同+2.6%に上方改訂、2016年1-3月期成長率は前期比年率+1.1%から同+0.8%に下方改訂された)。需要項目別内訳は個人消費前期比年率+4.2%、設備投資同-2.2%、住宅投資同-6.1%、政府支出同-0.9%、在庫投資寄与度同-1.16%、純輸出寄与度同+0.23%。個人消費は予想通り同+4%台の強い伸びを示した一方、設備投資、住宅投資がいずれも予想を下回るマイナス成長となった形。しかし下振れの主要因は、在庫投資が予想外に大幅に成長に-1%以上の大幅マイナス寄与したことである。一方で、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内民間最終需要は同+2.7%と、個人消費の加速を主因に前期の同+1.1%から加速した。もっとも数字の上では、2016年通年の成長率は+1%台にとどまる計算になり、筆者個人の同+1.8%予想に対する下方リスクがでてきている。総じて企業部門の後退が予想以上に大きいとの結果である。海外景気の減速により企業部門は今後大きな反発は見込めず、個人消費も今後は加速ペースを低下させると見ざるを得ない。なお、本統計が公表される直前にFOMCは7月定例会合で追加利上げを見送ったが、本統計は次回9月会合でも利上げ慎重なハト派の考えを支持する材料とならざるを得ないだろう。

20160730図8

<経済指標コメント> 米6月住宅着工戸数は前月比+4.8%

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[米国]

住宅着工戸数(6月)は年率1189千戸(前月比+4.8%)、住宅着工許可件数は同1153千戸(同+1.5%)

6月の住宅着工戸数は年率1189千戸(前月比+4.8%)と反発。6ヶ月移動平均は同1155.5千戸(同+0.4%)と上向きに転じた。住宅着工は昨年末以来増加ペースを落として横ばいに転じつつも堅調に推移している。住宅着工許可件数は同1153千戸(同+1.5%)と3ヶ月連続増加しており、今後も住宅着工が堅調に推移することを示唆している。もっとも、前年比の伸びは住宅着工が同-2.0%、着工許可件数が同-13.6%とマイナス域にあり、特に先行指標となる着工許可件数の減速が著しい。住宅市場の需給はまだタイトであり需要は堅調とみるが、供給力の課題が残存している可能性がある。なお、4-6月期の着工戸数は前期比+0.7%と2四半期連続のプラスとなり、4-6月期GDP統計上の住宅投資は成長にプラス寄与するとの見方を支持する結果である。

20160724図1

中古住宅販売戸数(6月)は年率5570千戸(前月比+1.1%)、在庫期間は4.6ヶ月

6月の中古住宅販売戸数は年率5570千戸(前月比+1.1%)と4ヶ月連続の増加で、単月販売戸数としては金融危機前の2007年2月以来の水準となった。中央販売価格は前年比+4.8%と適度な上昇率にとどまっている。販売在庫は2120千戸(同-0.9%)と減少に転じ、結果在庫期間は4.6ヶ月と前月の4.7ヶ月から短期化した。総じて住宅販売市場は供給不足からタイトな需給が続いている。公表元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「持続的雇用増加と低金利が住宅販売を押し上げている」としつつも将来については「販売在庫不足と価格上昇」が向かい風になりこの拡大ペースが持続するかは不確実、と述べている。

20160724図2

<経済レポート> 本来の均衡に:日本経済定点観測

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
日本経済は年前半に想定以上の成長加速を見せたが、後半は潜在成長率レベルに減速すると見る。家計消費は減速しつつもプラスの成長を続けるものの、企業部門の設備投資は年後半にはゼロ成長程度にとどまりそうだ。一方で経済全体ののりしろの縮小でデフレ圧力は中期的に後退しつつある。総じて経済サイクルは減速局面入りの可能性が高く、これを持続的に押し上げるには経済政策の真水と乗数効果が必要だろう。

Brexit影響を勘案し年後半の成長予想を引き下げ

日本経済に関する筆者個人の予想を7月10日付で改訂した(予想値は7月10日付当レポートの[第3表]を参照)。前回4月時点の予想以来、日本経済は年前半に2月の閏年効果もあり予想外に成長が加速した。しかし、今後年後半には英国EU離脱選択(Brexit)による英国・欧州景気の減速と円高の進行により、成長ペースは潜在成長率並みに減速すると見る([第1図])。結果、新たな2016年暦年の成長率予想は前年比+0.5%とする。これは4月時点予想に比べていくぶんの上方修正となる。背景は年前半の成長率上振れであるが、年後半の成長率はBrexit影響によりやや下方修正する。一方、消費税率の再引き上げ延期が決定したことで、2017年1-3月期に見込んでいた駆け込み需要による成長押し上げは見こめなくなった。そこで2016年度の成長率は前年度比+0.6%と、4月時点予想比大幅に下方修正する。

上記予想の結果として、日本経済はほぼ潜在成長率に近いかややこれを上回るペースの成長をここ1年間継続することになる。しかし、経済需給が大幅にタイト化することはなく、結果的にインフレが急加速することもない状態である。内閣府推計によれば、2016年1-3月期のGDPギャップは-1.1%、潜在成長率は+0.3%とされている(2016年6月14日内閣府)。上記筆者個人予想を基に、潜在成長率+0.3%の元での今後のGDPギャップを推計すると、2016年度末(2017年1-3月期)で-0.9%と、現在からはわずかにマイナス幅が縮小するものの、ほぼ横ばいに近いギャップが残存する計算になる([第2図])。

かかるGDPギャップ環境下においては、金融政策は現状の緩和政策を少なくとも維持するのが適切と一般的にはいうことができる。失業率の低位安定や、いわゆるコアコアCPI(食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合消費者物価指数)の前年比の伸び率の上昇は、日本経済ののりしろが徐々に縮小していることを示唆している。しかし、成長ペースがほぼ潜在成長率にとどまっている限りこの縮小は大きく加速することはない。さらに、英国EU離脱選択を契機とした円高進行や景況観悪化が成長ペースを上記個人予想以上に抑制するリスクは残っている。政府の経済対策がこれをどれほど押し上げられるかが今後の日本経済の需給動向に影響するだろう。

[第1図]
20160719図1

[第2図]
20160719図2

家計、企業とも年後半には減速を見込む

以下では、需要項目ごとに4-6月期の成長動向と今後の見通しを点検する。まず家計消費は、1-3月期に閏年の効果もあり前期比年率+2.6%の予想外の強い伸びに回復したのち、4-6月期もプラス成長を維持した模様である。総務省家計調査によれば、5月までの4-6月期実質家計消費支出(2人以上の世帯)は前期比+0.4%と、前期の同+0.6%に続いてプラス成長を維持するペースだ([第3図])。勤労者世帯の実質実収入の3ヶ月移動平均は5月時点で前年比+0.4%と8ヶ月ぶりのプラスの伸びに転じた。GDP統計上の実質家計支出は4-6に前期比年率+1.5%程度の伸び、その後年内はやや減速して同+1%程度の伸びを継続すると見たい。

企業部門は一進一退である。1-3月期にGDP統計上の企業設備投資は前期比年率-2.6%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じた。4-6月期の同項目の先行指標となる資本財出荷は、5月までで前期比+3.8%と大幅なプラスの伸びに転じている([第4図])。ここからは4-6月期のGDP統計上の企業設備投資は再びプラス成長に回帰すると見ることができる。しかしながら、その後の見通しは明るくはない。機械受注(船舶・電力を除く民需)は、5月までで前期比-11.4%と大幅なマイナスの伸びに転じており、今後の設備投資が再び減速することを示唆している(7月16日付<経済指標コメント>参照)。年後半の企業設備投資は成長にほぼゼロの寄与になると見る。

純輸出は今後年内において成長のほぼゼロまたはわずかにプラスの寄与になると見る。5月までの国際収支統計によれば、4-6月期の財・サービス収支は前期に比べてわずかに黒字幅が拡大しており、成長にプラス寄与することが期待できる([第5図])。しかしながら、6月の英国EU離脱選択以降為替市場では円高が進行しており、これが輸出拡大の重石になることが見通せる。

[第3図]
20160719図3

[第4図]
20160719図4

[第5図]
20160719図5

先行指標も年後半の減速を示唆、インフレは年度末に+1%台に上昇

年後半の日本の経済成長が4月見通しに比べ下ブレするとの見方は、一部の先行指標によっても支持されている。内閣府景気ウォッチャー調査では、現状判断DI、先行き判断DIのいずれもが中立を示す50ポイントを下回って下降基調にある。6月の同調査ではBrexitが街角景気に相応に悪影響を与えていることも判明している([第6図])。

内閣府の景気先行指数は昨年後半から低下に転じている([第7図])。3月以降同指数はやや下げ止まりがみられ、3ヶ月移動平均は5月時点でやや上向きに転じている。内訳をみると、新規求人数といった雇用関連指数、新規住宅着工床面積といった住宅関連指数が全体の指数を押し上げている。しかしながら上記の景気ウォッチャー調査にも見られる通り、英国EU離脱選択の影響が雇用に対する悪影響を今後見せる可能性はある。住宅着工戸数は依然強い伸びを見せているが、経験則からは四半期ごとの反動減が今後出てくる可能性がたかい。

インフレ率はいまだ2%のインフレ目標から遠いところにあるが、年後半から来年にかけてはようやく2%インフレ率に接近する兆しがみられそうだ。消費者物価指数(CPI)の動向を見ると、5月時点で生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は前年比-0.4%とマイナス圏にある。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は同+0.7%と相対的には堅調に推移している。今後、原油価格が現在の1バレル=40~50ドルの水準を維持することができれば、年末にコアCPIは前年比+0.4%、コアコアCPIは同+0.9%にまで上昇する計算になる。昨年の原油価格急落要因が剥落する来年初からは上昇率は加速し、年度末(2017年3月)にはコアCPI同+1.3%、コアコアCPI同+1.5%にまでの上昇が可能である([第8図])。上記の通り経済全体の需給ギャップの縮小ペースはやや低下しているものの、失業率の低位安定に見られる一部の需給の引き締まりがデフレ圧力を徐々に後退させていることは間違いない。

[第6図]
20160719図6

[第7図]
20160719図7

[第8図]
20160719図8

政府対策の寄与度合は未確定

安倍首相は去る6月1日の記者会見で、「世界経済は、この1年余りの間に想像を超えるスピードで変化し、不透明感を増してい」ること、伊勢志摩サミットでG7首脳と「“新たに危機に陥ることを回避するため”、“適時に全ての政策対応を行う”ことで合意し、首脳宣言に明記」したこと「内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきである」と判断したと述べ、消費税率の8%から10%への引き上げを2017年4月から2019年10月まで再延期することを表明した。6月1日時点に入手可能であった経済指標は、1-3月期成長率が閏年の効果もあり前期比年率+1.7%(1次速報値、のちに同+1.9%に上方改訂済)プラス成長に転じていたが、閏年効果を除くと前期比年率+0.5%程度の伸びにとどまっていたといえる。実質GDP成長率が過去5四半期中2四半期においてマイナス成長であったこと、また2014年4月の消費税率の8%への引き上げ後の家計消費支出が、引き上げ前と比べて依然数%も低い水準にあること、を勘案すれば、消費税率の追加引き上げの再延期はやむを得ない判断といえるだろう。

一方で、安倍首相は12日、7月10日の参議院議員選挙での勝利を踏まえ、10兆円規模の経済対策の月内策定を指示した(報道による)。10兆円はGDPの約2%に相当するが、この追加的経済対策が年後半から来年にかけての成長押し上げ効果は、同対策の「真水」の水準及びその内容による乗数効果次第である。対策の内容を点検ののちにその効果を見積もりたい。

日本経済は世界経済に先駆けて昨年よりすでに減速サイクル入りしていた可能性があると当レポートでは見ている。減速後も短期的には年率+0.5~0.6%の成長を継続している状況であるが、Brexitや円高加速、また海外経済の減速がこのサイクルの加速要因となる可能性は否定できない。一方で緩やかながら縮小する需給ギャップの状況は、日本経済がアベノミクスによる押し上げから本来の巡航速度にちょうど減速した均衡状態にある可能性を示唆している。


<経済指標コメント> 米6月小売売上高は前月比+0.6%

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[日本]

機械受注(5月、船舶・電力を除く民需)は前月比-1.4%(前年比-11.7%)

5月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-1.4%(前年比-11.7%)と2ヶ月連続の減少、内訳は製造業同-6.4%、非製造業同-0.3%。中期的には、前年比の伸びの3ヶ月移動平均は-5.5%と2ヶ月連続のマイナスの伸びに転じた。5月までの4-6月期の同受注は前期比-11.4%と前期の同+6.7%から3四半期ぶりの大幅マイナスに転じるペースである。企業部門の設備投資は昨年後半に一時持ち直したかに見えたが、再び減速に回帰しつつあると言わざるを得ない。1-3月期までの受注積み上げで、4-6月期のGDP統計上の企業設備投資は2四半期連続のプラス成長を見込むものの、年後半は再び横ばいに減速すると個人予想する。

20160716図1

[米国]

企業在庫(5月)は前月比+0.2%、企業売上高は同+0.2%、在庫売上高比率は1.40倍

5月の企業在庫は前月比+0.2%と3ヶ月連続の増加、企業売上高は同+0.2%と3ヶ月連続増加。在庫売上高比率は1.40倍と前月比横ばいで、引き続き高水準を保っている。在庫循環図は依然在庫調整局面にある。企業在庫の3ヶ月前対比の増加幅は3ヶ月連続で拡大している。企業在庫水準は依然高水準にあり、在庫調整の進捗ペースは遅いといえる。今後も在庫調整が生産抑制要因になると見る。

20160716図2

小売売上高(6月)は前月比+0.6%、除く自動車関連同+0.7%

6月の小売売上高は前月比+0.6%と昨年7月以来の強い伸び。自動車関連を除くベースでも同+0.7%と同じく昨年7月以来の強い伸びだった。業種別内訳は自動車及び同部品ディーラー同+0.1%、建設資材店同+3.9%、ガソリンスタンド同+1.2%、百貨店同+0.7%など、幅広い業種が売上を増加させた。GDP統計上の個人消費の基礎統計となる「自動車・建設資材・ガソリンスタンド・レストランを除く」4-6月期売上高は前期比+1.9%と前期の同+0.7%から急加速した。4-6月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+4%台の強い伸びへの回復になるとの見方に沿った結果である。雇用拡大と賃金上昇により米個人消費が堅調な拡大を継続するとの見方を支持する内容といえる。もっとも、自動車販売が飽和状態にあり今後強い伸びが見込みにくいこと、また英国国民投票によるEU離脱選択の個人消費への影響には留意したい。なお、英国国民投票後に実施されたミシガン大学調査による消費者センチメント指数は89.5ポイント(前月比-4.0ポイント)と、大きめの低下を示している。

20160716図3

消費者物価指数(6月)は前月比+0.2%(前年比+1.0%)、同コア指数は前月比+0.2%(前年比+2.3%)

6月の消費者物価指数は前月比+0.2%(前年比+1.0%)、同コア指数は前月比+0.2%(前年比+2.3%)といずれも前月比上昇。原油価格の持ち直しでガソリンが前月比+3.3%上昇したことが総合指数を押し上げた。しかしコア指数を構成する品目も、家賃・宿泊費(同+3.3%)、運輸サービス(同+3.0%)、医療サービス(同+3.8%)などサービス価格中心に上昇している。原油価格の持ち直しで総合指数が上昇基調を維持、経済全体ののりしろの縮小を反映したコア指数が前年比+2%を超える高めの上昇率を維持している状況が続いている。今年末のインフレ率は総合指数が前年比+1.7%、コア指数が同+2%強になるペースであり、これまでの筆者個人予想に沿った動きである。インフレ率の上昇は確実に継続しており、FRBが追加利上げを実施する条件はインフレ面からは整っている。

20160716図4

鉱工業生産指数(6月)は前月比+0.6%、設備稼働率は75.4%

6月の鉱工業生産指数は前月比+0.6%と前月の同-0.3%から反発。内訳は製造業同+0.4%、鉱業同+0.2%、公益事業同+2.4%。振れの大きい公益事業の上昇が全体を押し上げているが、原油価格持ち直しにより鉱業が2ヶ月連続の上昇に転じたほか、製造業も強めの伸びであり、単月指標としては良好といえる。中期的に見ても、原油価格下落と海外景気減速で低下が続いていた同指数の推移は低下から横ばいに転じている。しかし、企業在庫が依然高水準にあること、英国EU離脱選択による景況観への影響から、鉱工業生産の急激な反発は見込みにくい。設備稼働率は75.4%と前月比+0.5%ポイント上昇したものの、中期的な低下傾向は不変である。一方で、自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率12.18百万台(前月比+9.9%)と増加に転じたことは、減速を見込む自動車販売が予想以上に増加する可能性をも示唆している朗報である。

20160716図5

<経済レポート> 雇用と英国と中立金利:米経済定点観測

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
6月雇用統計の結果は米労働市場の悪化懸念を一部払拭した。英国のEU離脱選択は米経済見通しに大きな影響は与えないと考える。ついては年内の米経済成長予想は従前予想をほぼ踏襲する。しかしながら、FOMCのスタンスなどの状況証拠からFRBの金融政策については従前の個人予想を下方修正し、利上げは年内1回にとどまると今や見ざるを得ない。利上げペースの低下の背景は、いうまでもなく雇用とBrexit、さらにこれらに加えて中立金利の低下認識が重要な要素となりつつある。

Brexitの米経済への影響は限定的

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)の6月定例会合、英国のEU離脱選択、6月雇用統計というイベントが終了したところで、当レポートの米経済・金融政策見通しを点検し、筆者の個人予想の見直しを行う。過去の当レポートで述べたように、これらの事象は米国の実質GDP成長率やインフレ率に関する予想に大きな影響を与えるものではない。一方で、FRB金融政策予想については、利上げペースを下方に修正せざるを得ない。6月定例会合でFOMCが追加利上げを見送りかつFOMC委員経済予測の利上げペースが下方にシフトしたこと、また6月23日の国民投票で英国がEU離脱を選択したこと、が下方修正の背景である。6日に公表された6月FOMCの議事要旨もこうした見方を支持するものであった。

成長率予想の点検の前に、英国EU離脱選択(Brexit)が米経済に与えうる影響について見ておこう。6月26日付当レポートでみたように、筆者個人はBrexitが米経済予想に与える影響は限定的とみている。その後米供給管理協会(ISM)が米企業を対象に実施した影響調査でも同様の結果がみられた。同調査は毎月の製造業・非製造業指数調査に加えて米企業を対象にISMが7月1日に追加実施した特別調査である。同調査によれば、Brexitが企業の財務、設備投資、雇用に与える影響は極めて限定的との結果になった。企業財務への影響は「ほとんどなし」が回答の61%、設備投資への影響も「ほとんどなし」が81%、雇用削減の可能性は「なし」が81%を占めている[第1表]。

実体経済の観点からも同様に、Brexitの米経済への影響は限定的と筆者個人も見ている。6月26日付当レポートでみたように、2015年の米国の名目輸出額(2兆2612億ドル)に占める対EU輸出(5007億ドル)の割合は約22.1%、対英国輸出(1235億ドル)の割合は約5.5%程度である。対EU輸出が仮に-5%減少した場合でも、名目GDPに与える影響は-0.15%程度にとどまる計算になる。また、為替市場では英国民投票後にユーロ安と円高が進行しており、米ドルはその間でほぼ中立の立場にある。直近では、FRBの広域通貨米ドルインデックスは7月1日現在で121.1ポイントと、6月23日時点の119.9ポイントよりもドル高となったものの、Brexit前のレンジの範囲内にとどまっている。

[第1表]
20160710表1

個人消費はやや減速を見込む

以下では、年内の米実質GDP成長率に関する個人予想を需要項目ごとに点検する。まず、個人消費については引続き雇用拡大と賃金上昇により堅調な成長を維持すると見る。6月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比+287千人の大幅増加となり、4,5月の統計悪化が一時要因であったことが確認できた。6月時点の非農業部門雇用者数の増加ペースは前年比+1.7%、時間当たり賃金上昇率は同+2.4%であり、名目ベースで+4.1%の購買力拡大が続いている。インフレ率を差し引いた実質ベースでも+3.2%の個人消費の成長が可能な所得増ペースである[第1図]。

もっとも今後については、個人消費は昨年の3%成長からやや減速し、前年比+2%の巡航速度の持続的拡大になると見る。まず雇用拡大ペースは2015年の前年比+2%から同+1%台後半にすでに減速している。雇用市場がほぼ完全雇用状態にあることを勘案すれば、雇用拡大のペースは今後2%を大きく超えることは考えにくい。時間当たり賃金は失業率の低下により今後上昇率が加速すると見る。インフレ率は現状の前年比+1%から、年末には同+1.6%に上昇すると見込んでいる。これらの結果、インフレ率を差し引いた実質ベースの購買力の伸びは今後3%をやや割り込むペースの伸びに減速すると見る。また、個人消費の牽引役である自動車販売の伸びが今後減速すると見込まれる。一般に自動車販売台数(乗用車及び軽トラック)が年率17百万台を超えるとそこで販売が飽和状態になることが経験則である。直近では2015年10-12期に同販売台数は同17.8百万台のピークをつけたあと減少に転じており、ピークアウト感がみられる([第2図])。自動車販売の減速は統計上個人消費の減速につながる。

もっとも、1-3月期の反動もあり主に4月の実質個人消費が急増したことから、4-6月期GDP統計上の実質個人消費は前期比年年率+4%の強い伸びになるペースだ。5月までの個人消費統計によれば、6月の実質個人消費の伸びが前月比-0.1%のマイナス(自動車販売は6月に減少した)でも、4-6月期実質個人消費は前期比年率+4.1%を確保できる計算になる。年後半以降は上記の理由から個人消費の伸びはやや減速し、通年で前年比+2.4%の伸びを見込む([第3図])。

[第1図]
20160710図1
[第2図]
20160710図2
[第3図]
20160710図3

設備投資は今後も緩やかな拡大にとどまる:企業収益頭打ちも一因

次に、企業部門は依然緩やかな拡大にとどまりそうだ。GDP統計上の実質設備投資は1-3月期まで2四半期連続マイナス成長に低迷している。海外経済の減速による外需の減速、原油安による石油関連設備投資の減少、在庫調整による生産抑制が企業の設備投資意欲を後退させている。原油価格は持ち直したものの、在庫売上高比率が1.4倍という歴史的高水準にあることに見られるように、企業の庫調整は十分に進んでいない。また鉱工業の設備稼働率も74.9%と依然低位にある。こうした環境からは今後も設備投資の力強い回復は見込みにくい。

これらに加え、企業収益が依然頭打ち傾向にあることも企業設備投資の抑制要因である。1-3月期の企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は前年比-4.3%と3四半期連続のマイナス成長だった。内訳は国内金融機関同+0.3%、国内非金融機関同-3.5%、海外部門同-11.4%と、海外景気減速が依然収益の足を引っ張っている。収益減にともない、企業ネットキャッシュフローも前年比-2.6%と3四半期連続マイナスの伸びとなっており、中期的にも企業収益の頭打ち傾向がみられる([第4図])。なお、企業収益のうち、原油価格の影響を受ける石油関連と公益事業を除く企業収益は同+1.0%とかろうじてプラス成長を保っているが、2015年1-3月期のピーク(同+24.8%)以降4四半期連続で伸び率が低下している。

もっとも足元では、GDP統計上の設備投資のうちの機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)が5月までで前期比-0.5%とほぼ横ばいにまで回復している。また同構造物投資の基礎統計となる民間非住宅建設支出が5月までで2四半期連続のプラスの伸びに位置につけている。よって、4-6月期のGDP統計上の設備投資は3四半期ぶりのプラス成長に回復すると見る。その後は、企業景況観の回復にともない、緩やかに設備投資は再拡大を継続すると見る([第5図])。

[第4図]
20160710図4
[第5図]
20160710図5

ドル高安定で輸出は抑制が続こう

住宅投資は今後も成長にプラスの寄与をするものの、その伸びは従来の前期比年率2桁の伸びから1桁成長に減速しそうだ。住宅着工統計によれば、5月までの4-6月期住宅着工戸数は前期比+1.2%と2四半期連続でプラス成長となるペースである。しかしながら中期的には、昨年以降住宅着工戸数の伸びが増加から横ばいに転じる傾向がみられる。住宅市場は依然タイトな需給にあり住宅市場は今後も拡大を続けるものの、供給側の資源不足等により、拡大ペースはやや減速せざるを得ないだろう。

純輸出は、ドル高による輸出抑制が継続してわずかながら成長へのマイナスの寄与が年内継続すると見る。過去2年間の実質ベースの財輸出は米ドル為替レートとの逆相関が極めて高い([第6図])。Brexit後ややドル高にシフトした米ドル為替が今後この水準で安定推移するならば、米国の輸出は前年比横ばいかわずかにマイナスの伸びを年内は継続すると見ざるを得ず、内需拡大による輸出増と合わせて、成長の抑制要因となると見る。

結果、2016年通年の米実質GDP成長率の個人予想は前年比+1.8%と、従前の4月時点予想である同+1.7%(3月30日付4月3日付当レポート参照)とほぼ不変の水準を維持する。わずかな上方改訂の要因は4-6月期の個人消費の想定以上の上ブレであり、全体としてこの個人予想はBrexitにかかわらず従前の見方、つまり米経済は堅調な拡大を維持するものの、景気循環上の要因からその拡大ペースはやや低下する、との見方を維持するものといってよい。

[第6図]
20160710図6

FRBの利上げ予想は年内1回に下方修正する:6月議事要旨は雇用・英国・中立金利に言及

一方で、FRBの金融政策については、4月時点の個人予想(年内6月、12月の2回利上げ)を下方修正せざるを得ない。FOMCは年内1回+0.25%の利上げを12月FOMC定例会合で実施し、年末のFF金利誘導目標レンジは0.50-0.75%とするのを新たな個人予想とする。背景は、以下に述べる雇用市場及びBrexit影響についての不確実性に対するFOMCの慎重なスタンスと、自然利子率低下に関するFOMCのスタンスである。

6日に公表された6月14-15日のFOMC議事要旨によれば、利上げ見送りの判断の主因は、5月の雇用統計の悪化要因の見極めと、6月23日に予定されていた英国国民投票結果の見極めが必要とされたことだったことがうかがわれる。議事要旨によれば、労働市場については「ほとんどの参加者は、5月の驚くべき雇用統計の悪化は労働市場の見通しの不確実性を増した」「ほとんどの参加者は、労働市場、生産、消費についての追加的な情報を蓄積することが必要」と述べている。また英国EU離脱国民投票については「ほとんどの参加者は来る英国EU離脱に関する国民投票は金融市場を通じて国内経済に悪影響を及ぼしうる」「参加者は総じて、英国EU離脱に関する国民投票の結果を待つのが金融市場と米経済への影響を評価するためには適切と考えた」とされた。労働市場については6月FOMC後に公表された6月雇用統計でいったんは悪化懸念が後退したといえるが、Brexitについては逆にFOMCの懸念が示現したといえる。いずれも今後の影響を適切に判断するには、今後何ヶ月かの指標を確認する必要があるだろう。

筆者個人は、労働市場、Brexitともに、年内2回の利上げ実施を否定する要因とは考えておらず、その影響見極めには8月分までの指標を確認すれば足りると見ている。その場合、次回利上げは9月定例会合においても可能なはずである。さらに9月以降も労働市場とインフレ率がFOMC委員経済予測通りであれば12月定例会合で2回目の利上げも可能なはずだ。にもかかわらず、筆者個人予想を12月の1回にとどめたのは、中立金利の低下をFOMCの一部委員が重視していると見られるからである。

[第2表]
20160710表2

自然利子率低下の認識は利上げペースを低下させる:テイラー・ルール公式による推計

6月15日にFOMC定例会合声明文と同時に公表されたFOMC委員経済予測によれば、長期的な適切なFF金利水準の中央値は3.0%とされており、これは3月時点予測の3.3%から-0.3%、1年前の2015年6月時点の同3.8%から-0.8%低下している。長期的な適切なFF金利水準が3%ということは、長期インフレ率目標である2%をここから差し引いた中立実質金利(自然利子率)が1%だとFOMCがみていることを示唆している。中立金利の低下については、6月FOMC会合後の定例記者会見でイエレン議長が利上げ見送り判断の1要素として挙げたほか、3月、6月のFOMC議事要旨にもこれへの言及がみられた。直近の6月議事要旨によれば「多くの参加者は、経済成長トレンド維持と整合的なFF金利水準―いわゆる中立金利―は長期的に見て従前の推計よりも低いか今後低くなる可能性が高い」と述べている。

自然利子率低下が適正なFF金利水準に与える影響を、テイラー・ルール公式に即して見てみよう。適正なFF金利水準を推計するテイラー・ルールの一般的公式は以下である。

      it=i*+πt+α(πt-π*)+β(yt-yt*)

itは適切な政策金利、i*は自然利子率、πtはインフレ率実績、π*はインフレ率目標、ytはGDP実績、yt*は潜在GDPである。通常i*の自然利子率には「2%」が用いられており、当レポートでも2%の自然利子率を前提に適正なFF金利水準を推計してきた。しかし、この自然利子率が1%程度とFOMCが認識しているとすると、適正なFF金利水準は自然利子率2%前提のそれよりも-1%低下することになる。自然利子率2%で推計した年末の適正FF金利は1.3%、自然利子率1%で推計したそれは0.3%となる(第7図)。自然利子率1%の世界ではもはや年内の追加利上げさえ正当化が困難になるということである(なお、上記式で係数をα=0.5、β=0.5とするのが1993年テイラー・ルール、α=0.5、β=1.0とするのが1999年テイラー・ルールであり、当レポートではイエレン議長の採用する1999年ルールを用いている)。かかる状況は、現実的にはハト派勢力が9月時点で6月以降の経済指標動向を確認してもなお、利上げ実施に消極的であり続ける理由になる。

6月19日付当レポートで見たように、筆者個人はオークンの法則から推計される現状の米自然利子率(潜在成長率)を+1.5%、HPフィルター推計による自然利子率は+2%程度とみている。自然利子率を低めの1.5%とした場合年末の適正FF金利は0.8%と推計され、つまり年内1回の利上げは正当化可能である。労働市場、経済成長、インフレ率の動向に加え、長期的な自然利子率の低下が利上げペースを決める重要な要素となりつつあることを先取りして、金融政策に関する個人予想はやや保守的にしておくこととしたい。ただし、長期的な自然利子率の推計判断は拙速に行われるべきものではなく、自然利子率低下を理由に金融政策の行程を変更する場合は、相応の時間をかけた議論と市場への説明が必要であろう。

なお、日米他の経済・金融個人予想のアップデートを[第3表]に示す。


[第7図]
20160710図7
[第3表]
20160710表3

(訂正)7月10日、[第3表]の数値を訂正しました。

<経済指標コメント> 米6月非農業部門雇用者数は前月比+287千人

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[日本]

景気ウォッチャー調査(6月):現状判断DIは41.2(前月比-1.8ポイント)、先行き判断DIは41.5(同-5.8ポイント)

6月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは41.2(前月比-1.8ポイント)と3ヶ月連続の低下、横ばいを示す50を11ヶ月連続で下回った。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは41.5(同-5.8ポイント)と反落、横ばいを示す50を11ヶ月連続で下回った。いずれのDIでも、家計動向関連・企業動向関連・雇用関連のすべてのDIが低下した。景気ウォッチャー調査の調査期間は25日から月末であり、23日の英EU離脱国民投票結果が反映されている。現状判断に関する調査先の回答には、「円高」による「外国人観光客売上減」「輸出業績への影響」や「中国の景気減速」を挙げるものが多く、先行き判断に関する回答には「英国のEU離脱問題」による「経済の先行き」不安や同じくこれによる「円高進行」「消費者マインドへの影響」を懸念する回答が多数みられる。円高と英国のEU離脱問題は相応に街角景気に悪影響を与えているとの結果になった。英国のEU離脱問題が円高を通じて日本経済に影響を与えるとの当レポートの見方に沿った結果である。

20160709図1

[米国]

ISM非製造業指数(6月)は56.5%(前月比+3.6%ポイント)

6月のISM非製造業指数は56.5%(前月比+3.6%ポイント)と前月の同-2.8%ポイントから反発。総合DIを構成する4つのDIの内訳は事業活動59.5%(同+4.4)、新規受注59.9(同+5.7)、雇用52.7%(同+3.0)、入荷遅延54.0%(同+1.5)とすべてのDIが上昇かつ判断の分かれ目を示す50%を超えた。前週公表済の6月ISM製造業指数の回復と合わせ、米企業景況観は回復方向にあり、4,5月の雇用の一時的な悪化にかかわらず米経済が堅調な拡大を続けるとの見方に沿った結果である。なお、公表元の米供給管理協会(ISM)は、英国のEU離脱(Brexit)に関する特別調査を実施した。これによれば、Brexitの財務影響は、「ネガティブ」6%、「ややネガティブ」27%、「影響僅少」61%、などとなっており(製造業・非製造業合計)、調査先米企業の過半数はBrexitの影響を限定的とみているとの結果になっている。

20160709図2

雇用統計(6月):非農業部門雇用者数は前月比+287千人、失業率は4.9%(前月比+0.2%ポイント)

6月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+287千人と、前月5月の同+11千人の不振から大幅に増加幅が回復した。米大手通信会社のストライキ終了によるプラス影響(ストによる5月雇用へのマイナス影響は約-35千人-米労働省による)を除いても大幅な増加となった。業種別には、製造業同+14千人(前月同-16千人)、小売業同+29.9千人(同+3.0千人)、情報業同+44千人(同-39千人)、娯楽・宿泊業同+59千人(同-3千人)などが雇用増を加速させた(ストの影響は情報業に反映)。非農業部門雇用者数伸びの3ヶ月移動平均は前月比+147千人と、前月の同+114千人から上向きに転じた。前月5月の雇用の伸び同+11千人(速報値同+38千人からさらに下方改訂)は、ストの影響を除いても数万人の増加と経験則的には例外的に低く、統計のブレなどによる一時要因ではないかとみる。結果的には4、5月の雇用の悪化は一時的だったとの内容と言える。もっとも、非農業部門雇用者数の伸びの3ヶ月移動平均+147千人は年初の同+200千人台からは明かに減速、前年比の伸び率も+1.7%と昨年の+2%台からは低下しており、雇用増加ペースが完全に回復したとは言えない。また6月雇用には、6月23日に実施された英国EU離脱に関する国民投票結果の影響は反映されていない。したがって、雇用市場の堅調な持続的拡大を確認するには、7月、8月分の統計を見る必要がある。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.4%と前月の同+2.3%からやや伸びを加速させた。家計調査による失業率は4.9%(前月比+0.2%ポイント)に上昇した。しかし内容を見ると、労働力人口、雇用者数のいずれもが増加し、労働参加率は62.7%(前月比+0.1%ポイント)に上昇しており、労働市場の拡大を伴うよい失業率上昇といえる。総じて、米雇用市場はややペースを減速させながらも拡大基調にあるといえ、インフレ率の上昇ペースと合わせればFRBによる追加利上げは正当化できる環境である。今後も米雇用は前年比+2%に近いペースで増加するとの見方は基本的には維持したい。しかしながら上記の通り、労働市場の持続的拡大や英国EU離脱選択の影響の見極めには7、8月指標の確認が必要であり、それまでFOMCは利上げに慎重なスタンスを維持すると見る。

20160709図3

<経済指標コメント> 米5月実質個人消費は前月比+0.3%

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
[日本]

鉱工業生産指数(5月)は前月比-2.3%(前年比-0.1%)

5月の鉱工業生産指数は前月比-2.3%と前月の同+0.5%から大幅反落。電子部品・デバイス(同-3.2%)、電気機械(同-3.2%)などの業種が生産を低下させた。出荷指数は同-2.3%、在庫指数同+0.3%、在庫率指数同+1.3%。出荷の減少で在庫及び在庫指数は上昇した。総じて鉱工業生産は「一進一退(経済産業省)」ともいえるが、その基調は弱含みと言わざるを得ない。在庫循環図は依然在庫調整局面にあり、今後も外需減速と在庫調整が生産抑制要因となりそうだ。なお、企業設備投資の先行指標となる資本財出荷は同+0.4%と3ヶ月連続の増加、5月までの4-6月期資本財出荷は前期比+3.8%と4四半期ぶりのプラス成長になるペースであり、企業部門の一部底入れの可能性を示唆する朗報である。

20160703図1

住宅着工戸数(5月)は年率1017千戸(前月比+2.3%)

5月の住宅着工戸数は年率1017千戸(前月比+2.3%)と5ヶ月連続の増加で、水準も昨年7月以来の高水準にある。5月までの4-6月期着工戸数は前期比+6.2%と2四半期連続プラス成長のペース。4-6月期のGDP統計上の住宅投資は3四半期ぶりプラス成長が期待できる。

20160703図2

日銀短観(6月調査):大企業製造業業況判断DIは6ポイント(3月調査比横ばい)

日銀短観(6月調査9、大企業製造業の業況判断(最近)は6ポイントと、3月調査から横ばい。大企業非製造業の業況判断(最近)は19ポイントと3月調査の22ポイントから-3ポイント低下した。先行き判断DIは大企業製造業が6ポイント、大企業非製造業が17ポイントと、製造業は横ばい、非製造業は低下見通しとなっている。

20160703図3

完全失業率(5月)は3.2%

5月の完全失業率は3.2%(前月比横ばい)と低水準を維持している。内訳は就業者数が前年比+0.7%、労働力人口同+0.6%、完全失業者数同-3.6%と、労働力人口の増加を伴う失業率の低位安定が続いている。筆者試算の労働力化率の6ヶ月移動平均は59.8%と2010年2月以来の高水準にある。失業率低下は労働需給のタイト化を示唆しているが、労働市場の拡大により緩和圧力も同時に働いているといえる。

20160703図4

全国消費者物価指数(5月、生鮮食品を除く総合指数)は前月比+0.1%(前年比-0.4%)

5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数=いわゆるコア指数)は前月比+0.1%(前年比-0.4%)と、前月比では3ヶ月連続の上昇、ただし前年比では3ヶ月連続のマイナスの伸びとなった。前年比の伸び率では、電気代(同-9.6%)、ガソリン(同-16.1%)などエネルギー関連が全体の伸びを押し下げており、エネルギーの前年比の伸びへの寄与度は-1.11%となっている。一方、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコア指数)は前月比+0.1%(前年比+0.6%)と相対的に堅調である。総じてコア指数とコアコア指数の前年比の伸びの推移はこれまでの予想に沿ったものであり、今後、エネルギー価格が引き続き安定推移すれば、年末にはコア指数前年比+0.4%、コアコア指数同+0.9%レベルまでインフレは率上昇すると見ている。その後2017年度にはようやく2%のインフレ達成も視野に入ってくる。

20160703図5

実質家計消費支出(5月)は前月比-1.5%(前年比-1.1%)

5月の実質家計消費支出は前月比-1.5%と4ヶ月ぶりの減少、前年比では-1.1%とマイナスが継続している。2014年4月の消費税率引上げ以来の個人消費の低迷は継続している。もっとも5月までの4-6月期実質家計消費は前期比+0.4%と2四半期連続のプラス成長となるペースであり、家計消費にもやや底入れ感が出つつあると見ることもできる。

20160703図6

[米国]

実質GDP成長率(1-3月期、確報値)は前期比年率+1.1%

1-3月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率+1.1%と、改定値の同+0.8%から上方改訂された。需要項目別内訳は、個人消費同+1.5%(改定値同+1.9%)、設備投資同-4.5%(同-6.2%)、住宅投資同+15.6%(同+17.2%)、政府支出同+1.3%(同+1.2%)、在庫投資寄与度同-0.23%(同-0.20%)、純輸出寄与度同+0.12%(同-0.21%)。財・サービス輸出の前期比年率+0.3%(改定値同‐2.0)への大幅上方改訂が全体の数字を押し上げる要因となった。内需項目はむしろ下方改訂されており、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内民間最終需要は同+1.1%と、改定値の同+1.2%から下方改訂、昨年10-12月期の同+2.0%から大幅減速となった。数字上は今回の改訂の米経済成長率個人予想への影響は限定的で、2016年通年成長率前年比+1.7%との予想に整合する内容である。

20160703図7

実質個人消費(5月)は前月比+0.3%、個人消費支出価格指数は前月比+0.2%(前年比+0.9%)、同コア指数前月比+0.2%(前年比+1.6%)

5月の実質個人消費は前月比+0.3%と堅調な伸び、内訳は耐久財消費同+0.6%、非耐久財消費同+0.5%、サービス消費同+0.1%と押しなべて堅調。なお4月分は上方改訂で同+0.8%となり、4-6月期の実質個人消費は同+4%を超える急回復(1-3月期は同+1.5%)となるペースである。4、5月の強い個人消費から逆に推すと、4、5月の雇用統計悪化は一時要因だった可能性が高い。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.2%(前年比+0.9%)、同コア指数前月比+0.2%(前年比+1.6%)と、ほぼ筆者個人予想に沿った動きで、筆者試算では、年末のPCEデフレーター前年比伸び率は+1.6%、コアPCEデフレーターは同+1.9%にまで上昇する計算になる。

20160703図8

ISM製造業指数(6月)は53.2%(前月比+1.9%ポイント)

6月のISM製造業指数は53.2%(前月比+1.9%ポイント)と2ヶ月連続の上昇、4ヶ月連続で景気判断の分かれ目を示す50%を上回った。総合DIを構成する5つのDIの内訳は、新規受注57.0%(前月比+1.3%ポイント)、生産54.7%(同+2.1)、雇用50.4%(同+1.2)、入荷遅延55.4%(同+1.3)、在庫48.5%(同+3.5)とすべてのDIが上昇した。昨年初の金融市場変動と原油価格下落以来低下傾向にあった製造業景況感に底入れ感がみられる。調査先の回答には「事業環境は堅調(コンピューター及び電子製品)」「非常によい夏の事業水準・受注スタート(非鉄金属)」など総じて堅調な事業状況を示すものが多いが、一部に「やや減速(運輸製品)」なども見られる。総じて、原油価格低下に伴う景況観悪化からの脱却と、中期的景気サイクルの減速局面入りの双方を示唆する内容である。また雇用DIは3ヶ月連続で上昇しており、上記個人消費の活況と合わせ、4、5月の雇用統計悪化が一時的なものであったことを示唆している。なお、公表元の米供給管理協会(ISM)は、英国のEU離脱(Brexit)に関する特別調査を実施した。これによれば、Brexitの財務影響は、「ネガティブ」6%、「ややネガティブ」27%、「影響僅少」61%、などとなっており、調査先米企業の過半数はBrexitの影響を限定的とみているとの結果になっている。

20160703図9

新車販売台数(6月、乗用車及び軽トラック)は年率16.7百万台(前月比-0.7%)

6月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率16.7百万台(前月比-0.7%)と3ヶ月ぶりの前月比減少。前年比でも-1.5%と2ヶ月連続のマイナスの伸びとなった。販売台数が同17百万台を割り込むのは3ヶ月ぶりとなる。年率17百万台を超える販売台数はやや飽和感あり、今後も自動車販売は堅調ながら増加ペースは一進一退となりそうだ。

20160703図10