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<経済指標コメント> 米7-9月期実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+2.9%

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[日本]

実質家計消費(二人以上の世帯、9月)は前月比+2.8%(前年比-2.1%)

9月の実質家計消費(二人以上の世帯)は前月比+2.8%と前月の同-3.7%から反転増加。しかし前年比では-2.1%と7ヶ月連続のマイナスの伸びとなった。前年比の減少に寄与した項目は、設備修繕・維持(寄与度同-1.02%)、交際費(同-0.56%)など、増加に寄与した項目は家庭用耐久財(同+0.38%)、通信(同+0.35%)、電気代(同+0.23%)など。結果、7-9月期の実質家計消費は前期比-0.5%と2四半期連続のマイナス成長となり、7-9月期GDP統計上の実質家計消費は3四半期ぶりのマイナス成長に転化する下方リスクが出てきた。一方で、勤労者世帯の実質実収入は前年比+2.7%と2ヶ月連続のプラスの伸びになっており、今後の消費の持ち直しを示唆している。

20161030図1

完全失業率(9月)は3.0%

9月の完全失業率は3.0%と前月比-0.1%ポイントの低下で、依然1995年以来の低水準にある。内訳は、就業者数前年比+0.9%、労働力人口同+0.5%、完全失業者数同-10.1%と、労働市場の拡大を伴う失業率低位安定となっている。筆者試算の労働参加率は60.1%と4ヶ月連続で60%を超える水準を維持、同3ヶ月移動平均も60.1%と上昇基調を保っている、労働市場はタイトであるが、労働人口への流入によりこれが一部緩和される構造になっている。

20161030図2

全国消費者物価指数(9月、生鮮食品を除く総合)は前月比横ばい(前年比-0.5%)

9月の全国消費者物価指数、生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコアCPI)は2ヶ月連続となる前月比横ばい、前年比では-0.5%と前月比横ばいのマイナス幅。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコアCPI)は前月比横ばい、前年比では2014年12月以来の横ばいに低下した(消費税影響を除く)。前月比の低下に寄与した費目は航空運賃(前月比-16.3%)、宿泊料(同-5.7%)など。前年同月比では、エネルギー(同-8.4%)、家庭用耐久財(同-7.8%)などが指数の低下に寄与している。総じて、コアCPI、コアコアCPIともに上昇ペースは当レポートの想定よりやや弱含んでいる。昨年末の原油価格急落要因が剥落する今年末から前年比のCPI上昇率は上昇し、2016年度末(2017年3月)のインフレ率はコアCPIが前年比+0.7%、コアコアCPIが+0.8%となる計算である。しかしながら、この見通しは徐々に下方にシフトしている。

20161030図3

[米国]

新築住宅販売戸数(9月)は年率593千戸(前月比+3.1%)、在庫期間は4.8ヶ月

9月の新築住宅販売戸数は年率593千戸(前月比+3.1%)と前月の同-8.6%から反発。同指数はここ数ヶ月振れが大きくなっているが、6ヶ月移動平均は同581.8千戸(同+1.6%)と10ヶ月連続で上昇しており、新築住宅販売が増加基調を保っていることを示唆している。一方販売在庫は235千戸(同-0.4%)と減少、結果在庫期間は4.8ヶ月と前月比-0.1ヶ月短期化し、依然として新築住宅市場の需給がタイトであることを示唆している。住宅着工戸数の伸びが横ばいから弱含みになっていることからは、このタイトな需給は当面継続しそうだ。今後、供給不足が販売抑制要因になるリスクには留意したい。

20161030図4

耐久財受注(9月)は前月比-0.1%、除く運輸関連同+0.2%、非国防資本財受注(除く航空機)は同-1.2%、同出荷同+0.3%


9月の耐久財受注は前月比-0.1%、除く運輸関連同+0.2%。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(除く航空機)は同-1.2%と4ヶ月ぶりの減少。GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同+0.3%と6ヶ月ぶりの増加となったものの、7-9月期の同出荷は前期比年率-4.4%と4四半期連続のマイナスの伸びに終わった。これと整合する形で、のちに公表されたGDP統計では、機器投資が前期比年率-2.7%と4四半期連続のマイナス成長となった。原油価格低下の影響、海外需要の減速、低い設備稼働率を背景に、企業設備投資は依然低迷が続いている。もっとも7-9月期の同受注が前期比年率+5.2%と3四半期ぶりのプラスの伸びに転じたことは、今後設備投資がやや持ち直す可能性を示唆している。

20161030図5

実質GDP成長率(7-9月期、速報値)は前期比年率+2.9%

7-9月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+2.9%と、直前の個人予想通り2%台の強い伸びとなった。個人消費が前期比大幅減速した一方で、輸出の増加と企業在庫の増加が成長を押し上げ、成長率は前期の同+1.4%から加速した。需要項目別内訳は個人消費同+2.1%、設備投資同+1.2%、住宅投資同-6.2%、政府支出同+0.5%、在庫投資寄与度同+0.61%、純輸出寄与度同+0.83%。個人消費は前期の同+4.3%から減速したが、在庫調整の終了を反映して在庫投資が6四半期ぶりに成長にプラス寄与、また輸出の増加(前期比年率+10.0%)が成長を大きく押し上げているのが目立つ。一方で、設備投資の内機器投資は同-2.7%と4四半期連続のマイナス、住宅投資も2四半期連続のマイナス成長となった。輸出と在庫主導の成長加速を反映して、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要は同+1.6%と前期の同+3.2%から減速した。総じて今回の結果は直前の見通しと整合的である。また、減速したとはいえ堅調な個人消費と輸出の回復は、FRBが12月に追加利上げを決定するとの当レポートの予想を支持する結果でもある。10-12月期については、引き続き+2%の成長を見込み、2016年通年成長率は前年比+1.7%レベルを見込む。

20161030図6

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<経済指標コメント> 米9月消費者物価指数は前年比+1.5%

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[米国]

鉱工業生産指数(9月)は前月比+0.1%、設備稼働率は75.4%

9月の鉱工業生産指数は前月比+0.1%と小幅上昇。内訳は製造業同+0.2%、鉱業同+0.4%、公益事業同-1.0%。設備稼働率は75.4%(前月比+0.1%)と小幅上昇。鉱工業生産指数の前年比の伸び率はマイナス幅が徐々に縮小しているものの、企業部門はまだ減速が続いているといえる。もっとも、原油価格の反転上昇に伴う鉱業の底入れ、及び企業在庫調整が進捗しつつあることで、来年にかけては鉱工業生産も徐々に底入れするものとみる。自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率12.04百万台(同+0.1%)と2ヶ月連続の増加。自動車販売はほぼ飽和状態になっているが、自動車生産台数の増加からはまだ大幅な減少への転換の兆しは見られない。

20161023図1

消費者物価指数(9月)は前月比+0.3%(前年比+1.5%)、同コア指数は前月比+0.1%(前年比+2.2%)

9月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%と強めの伸び、原油価格上昇に伴いガソリン(同+5.8%)などエネルギー価格が前月比上昇したことが指数を押し上げた。前年比の伸び率も+1.5%と、前月の同+1.1%から上昇して2014年10月以来の高い伸び率となった。食品及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.1%(前年比+2.2%)と堅調。6ヶ月前対比の伸び率は総合CPIが年率+2.6%、コアCPIが同+2.1%といずれも2%を上回って加速している。CPIインフレ率の上昇ペースは概ね当レポートの想定通りである。年末の総合CPIは前年比+1.7%、コアCPIは同+2.1%レベルになると見る。インフレ動向は、12月のFOMC追加利上げ予想を支持する内容である。

20161023図2

住宅着工戸数(9月)は年率1047千戸(前月比-9.0%)、住宅着工許可件数は同1225千戸(同+6.3%)

9月の住宅着工戸数は年率1047千戸(前月比-9.0%)と2ヶ月連続かつ大幅な減少となった。6ヶ月移動平均は1148.8千戸(同-0.9%)と2ヶ月連続の低下。もっとも9月の減少は振れの大きい集合住宅の大幅減が主因で、1戸建て住宅着工戸数は同783千戸(同+8.1%)と大幅に増加に転じて2月以来の高水準に回復している。また、住宅着工許可件数も同1225千戸(同+6.3%)と2ヶ月連続の増加で、今後も住宅着工が堅調に増加することを示唆している。総じて、集合住宅着工減少という一時要因で9月住宅着工は減少したものの、住宅着工は堅調な増加基調を維持しているといえる。ただし、7-9月期の住宅着工戸数は前期比-1.8%と3四半期ぶりのマイナスに転じている。7-9月期GDP統計上の住宅投資は、前期の前期比年率-7.8%に続き2四半期連続のマイナス成長となる可能性が出てきた。

20161023図3

中古住宅販売戸数(9月)は年率5470千戸(前月比+3.2%)、在庫期間は4.5ヶ月

9月の中古住宅販売戸数は年率5470千戸(前月比+3.2%)と3ヶ月ぶりの増加。3ヶ月移動平均は5383千戸(同-0.6%)と3ヶ月連続低下したもののその低下幅は縮小した。販売在庫は2040千戸(同+1.5%)と増加したものの販売増をカバーできず、結果在庫期間は4.5ヶ月と前月の4.6ヶ月から短期化した。総じて増加ペースを減速させつつも中古住宅販売戸数の水準は高く、需給はタイトである。中央販売価格は前年比+5.6%と、今年に入りほぼ5%を挟んだ安定的な上昇となっている。公表元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「特に初回購入者が購入手続きに通常以上に時間がかかったのが過去2ヶ月の不振要因」「年末にかけて市場が減速する前の駆け込み購入があった」と述べている。また需給については「住宅着工の状況からは、在庫の急激な増加は望みにくい」として、タイトな需給が当面継続するとの見方をとっている。

20161023図4

<経済レポート> NAIRU探訪:9月FOMC議事要旨

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9月FOMC議事要旨のポイントのひとつは「自然失業率の低下」に関する議論、もう一つは、「中立実質金利の低下」に関する議論である。いずれも利上げペース抑制方向の材料である。自然失業率についてはこれが従前推計以上に低下している証跡はいまのところ見つけにくい。一方、中立実質金利は潜在成長率の低下などを背景に90年代に比べて低下していると言わざるを得ない。中立実質金利低下がFOMC内のコンセンサスとなっている模様であることは、来年の利上げ幅が+0.5%程度にとどまることを支持する状況証拠であると言わざるを得ない。

9月FOMC議事要旨は「自然失業率」と「中立金利」の議論がポイント

9月20-21日のFRB公開市場委員会(FOMC)定例会合の議事要旨が12日に公表された。9月定例会合では追加利上げ見送りが決定、また同時に公表されたFOMC委員の四半期経済予測では、2016年内に+0.25%利上げが示唆されたものの、来年2017年の追加利上げ予測は+0.50%レベルに下方シフトしていた。これは、12月のFOMC定例会合で+0.25%の追加利上げが決定されるとの当レポート予想を支持する一方、来年2017年の利上げペースは従前の見方の下方修正を考慮せざるを得ない内容だった(10月2日付当レポート参照)。本レポートでは、9月FOMCの議事要旨の内容から、今後のFRB利上げペースに係る材料を点検していく。

9月FOMC議事要旨のポイントは2つある。ひとつは、「自然失業率の低下」に関する議論、もう一つは、「中立実質金利の低下」に関する議論である。後者は従前のFOMC議事要旨やイエレンFRB議長の発言でもしばしば言及されていた。しかしながら、前者はこれまでのFOMC議事要旨や議長発言ではあまり言及された形跡はなく、新たにハト派が慎重は利上げ判断の材料として提出したものと憶測できる。

まず、自然失業率に関する議論を見る。議事要旨によれば、「参加者は、長期的な失業率が現在の予測以上に低下する可能性とその費用・便益について考慮した」とされ「多数の(a number of)参加者は、失業率が長期的均衡水準をいくぶん下回り推移すると予想し、今後数年間での金融政策引き締めが適切と見た」とされた。また「何人か(a few)の参加者は、失業率が長期的均衡失業率推計値を大幅に下回ったと見られる過去の例に言及し、かかる時期の金融引き締めは景気後退と失業率上昇につながったと見た」とされた。これは、失業率が自然失業率を大幅に下回らないうちに金融引き締めを実施するのが適切との意見である。失業率が自然失業率を大幅に下回った状態はすでに景気過熱状態に近く、その後の景気サイクル反転が近いことから新たな引き締めは回避すべきとの見方である。これらは、目先の利上げを早期に実施するべきとのいわばタカ派の意見といえる。

失業率低下ペース減速は労働参加率上昇が要因

これに対し、「いくらかの(some)参加者は、かかる過去の経験は現状の環境には適用しにくいと判断した」「なぜなら、経済はトレンドをわずかに上回って成長しているにすぎず、インフレ率は委員会の2%目標を下回りまたインフレ期待は低い、これらは過去の事例と大きく異なっているからである」さらに「ここ1年で労働人口への参加率が上昇していることは、労働市場に過度な圧力を与えずにより強い経済拡大が可能であることを示唆している」「長期的均衡失業率は従前に考えられていたよりも低下している可能性がある」と述べたとされた。これらは、労働参加率が上昇していることで、経済が拡大して雇用が増加しても労働市場はタイト化しない(失業率が低下しない)こと、または自然失業率が現在の予想(FOMC委員予測中央値は4.8%)よりも低下している可能性から、現在の労働市場の余剰は見かけよりも大きいとの意見で、いわば利上げに慎重なハト派の意見といえる。

かかる議論に照らして、現在の失業率と自然失業率の関係を点検してみる。米国の失業率は9月現在で5%であり、FOMC委員予測による長期均衡失業率4.8%や、米議会予算局の推計する自然失業率(4.7%)にほぼ近いところにあり、この数値からは米労働市場はほぼ完全雇用にあるといえる([第1図])。一方で、失業率が自然失業率を大きく下回っていないということは、労働市場に過熱感はないことを表す。例えば直近では、2006年から2007年にかけて失業率は4.4%レベルにまで低下し、当時の自然失業率5%を-0.5%以上下回っていた。かかる状態は労働市場がやや過熱していることを示唆している。当時のFRBは失業率が自然失業率を下回っている状態において利上げを継続し、2006年6月にはFF金利誘導目標を5.25%に引き上げた。その後、2007年のいわゆるパリバショックを契機に、米経済は2007年12月から景気後退に入った。この事例は、外形的には9月FOMC議事要旨にいうタカ派の意見である「労働市場が過熱してからの利上げは景気後退を招く」との見解を裏付けるものである。この見解はこれまでの当レポートの見方(利上げは早期に実施するのが望ましい)と類似した見方といえる。

一方で、ハト派の見解も相応に指標により裏付けられている。失業率は2016年に入ってから明かに低下ペースを弱めており、年初来ほぼ4.9~5.0%の水準で横ばい推移している。同時に労働参加率は年初の62.7%から9月時点で62.9%に上昇している([第2図])。失業率の前年比変化の要因を「生産年齢人口要因」「就業者数要因」「労働参加率要因」に要因分解してみると、今年にはいってから、労働参加率上昇が失業率低下を抑制する大きな要因となっていることがわかる([第3図])。つまり、雇用が拡大し就業者数が増加しても、労働力人口に労働力が流入することで新たな見かけの失業者が増加し、結果失業率が低下しない仕組みになっているわけだ。労働市場に新たに流入した失業者増加は将来の就業者予備軍として労働市場のタイト化を緩和する役割を果たす。労働参加率が今後も上昇すれば失業率はこのまま横ばい推移し、したがって利上げを急ぐ必要性は薄れるというわけだ。しかしながら、労働参加率が今後継続的に上昇するとの根拠はなく、就業者数が労働力人口増加ペース(過去1年平均で前年比+1.2%、月間約180千人)を超えて増加継続すれば、計算上失業率はさらに低下しうる。

[第1図]
20161018図1

[第2図]
20161018図2

[第3図]
20161018図3

ハト派の自然失業率低下論

自然失業率が現在予測されている4.8%よりも低下する可能性については、FOMCの審議ではこれまで大きく取り上げられた形跡はないようである。もっともブレイナードFRB理事は、9月12日の講演で自然失業率の低下の可能性に言及している。自然失業率が4.8%よりも低い水準にあるならば、現在の労働市場はまだ余剰があることになり、利上げを急ぐ必要はないということになる。この意見は、FOMCにおいては、同理事に代表される利上げに慎重なハト派の意見だといえる。

しかし、9月19日付当レポートでみたように、コアインフレ率変化と失業率との関係から推計される米国の自然失業率は現在5%水準にあり、これが低下しているとの証跡は現状見当たらない([第4図])。また、自然失業率が5%よりも相当低い水準にあるならば、現在の失業率は自然失業率(インフレを加速も減速もさせない失業率=NAIRU)を相応に上回っている状態で、したがってインフレ率はまだ低下傾向にあるはずである。しかるに、食品及びエネルギーを除くコアインフレ率は過去1年ほぼ横ばいで堅調に推移している。インフレ率が横ばいであることは、現在の失業率が自然失業率に近い水準にあることを示唆している。

当レポートではしたがって、自然失業率が現在4.7~5.0%であるとの見方から、自然失業率の低下を理由に利上げを先延ばしする必要性は薄いと見ておきたい。

[第4図]
20161018図4

中立実質金利の低下は来年の利上げペース抑制要因

最後に、中立実質金利低下の議論を見る。議事要旨からはFOMC内では中立実質金利が低下していることがほぼコンセンサスとなっていることがうかがわれる。議事要旨によれば、「参加者はここ何年かの中立実質金利の低下の理由を議論した」「その理由としては、生産性上昇率の低下、人口動態のシフト、世界の過剰貯蓄があげられた」としている。「数人の(several)参加者は、低位な中立実質金利がどの程度長く続くかは不確実」「一人は、、、中立実質金利の低位は当面続くと示唆した」「多数の参加者は経済予測において長期中立実質金利予測を下方改訂した」とされた。

筆者個人も、米国の中立実質金利が長期的に低下傾向にあると見ている。[第5図]は、中立実質金利を3通りの方法で推計したものである(①CBO推計の潜在成長率、②実質GDP実績の平滑化、③実質長期金利実績の平滑化)。これによれば、現在の中立実質金利は1.5~2.0%の水準にあることになる。

中立実質金利低下は来年の利上げペースの低下を示唆する。テイラー・ルールによれば、適正なFF金利の水準は中立実質金利とパラレルに上下する。たとえば、中立実質金利が従前よりも-0.5%低下すれば、適正なFF金利水準は-0.5%低下する。通常用いられるテイラー・ルール公式は、中立実質金利を2%と想定していることが多い。しかし、実際の中立実質金利が1.5%だった場合、適正なFF金利水準は従前の(中立実質金利2%の)公式から導かれる水準よりも-0.5%低いことになる。実際、実質中立金利を+1.5%、2017年末のインフレ率を1.9%、2017年の実質GDP成長率を前年比+1.5%と置いた場合、2017年末の適正FF金利は1.2~1.3%となる計算になる。これは9月FOMC委員のFF金利予測中央値に近い数値である。これはこれまでの筆者個人の想定よりペースダウンであり、この点については見通しの修正を考慮せざるを得ない(10月2日付当レポート参照)。

[第5図]
20161018図5

<経済指標コメント> 米9月小売売上高は前月比+0.6%

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[日本]

景気ウォッチャー調査(9月):現状判断DIは44.8(前月比-0.8ポイント)、先行き判断DIは48.5(同+1.1ポイント)

9月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは44.8(前月比-0.8ポイント)と3ヶ月ぶりの低下、横ばいを示す50を14ヶ月連続で下回った。企業動向、雇用関連のDIは上昇したものの家計動向関連が低下して全体を押し下げた。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは48.5(同+1.1ポイント)と3ヶ月連続の上昇、家計動向・企業動向・雇用関連の3つのDIがいずれも上昇した。しかし先行き判断DIも横ばいを示す50を14ヶ月連続で下回っている。総じて街角景気は6月をボトムに底入れの兆しがみられるものの、横ばいを下回る水準が続いている。景気判断理由としては「熊本地震の被害が大きかったが落ち着いたことで新規開店の花が多く出た(一般小売店)」「天候の影響もあり、秋冬物の動きがよくない」「補正予算の執行による工事は台風による復旧工事が増加(建設機械リース)」など、地震や台風の復興需要と財政出動の上方効果がみられる一方で、猛暑や台風影響によるマイナス効果がありまちまちである。

20161016図1

機械受注(船舶・電力を除く民需、8月)は前月比-2.2%(前年比+11.6%)

8月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-2.2%と、3ヶ月ぶりの減少となったが、前年比では+11.6%と2ヶ月連続のプラスの伸び。前年比の伸びの3ヶ月移動平均も+6.8%と5ヶ月ぶりにプラスに転じた。8月までの7-9月期同受注は前期比+8.9%と前期の同-9.2%から大幅プラス転化のペースである。鉱工業生産指数の持ち直しの動きと合わせ、企業部門の減速には底入れの傾向がみられる。7-9月期のGDP統計上の設備投資は3四半期連続のマイナス成長の可能性が高いものの、受注の増加からその後は持ち直しが視野にはいってきた。

20161016図2

[米国]

企業在庫(8月)は前月比+0.2%、企業売上高は同+0.2%、在庫売上高比率は1.39倍

8月の企業在庫は前月比+0.2%の増加、企業売上高も同+0.2%の増加で、在庫売上高比率は前月比横ばいの1.39倍。企業売上高は実に21ヶ月ぶりに前年比で横ばいにまで回復している。在庫循環図は「意図せざる在庫減」局面にはいりつつある。企業の在庫調整は相応に進行してきた様子が見て取れる。在庫売上高比率がいま一歩の低下を見せれば、在庫調整による生産抑制は徐々に解消していく兆しがみられる。

20161016図3

小売売上高(9月)は前月比+0.6%、除く自動車関連同+0.5%

9月の小売売上高は前月比+0.6%と強めの伸びで前月の同-0.2%から反発した。自動車関連を除く売上高も同+0.5%と堅調、3ヶ月ぶりの増加に転じた。内訳は、新車販売の増加を反映した自動車及び同部品ディーラーが同+1.1%、ガソリン価格上昇を反映したガソリンスタンド同+2.4%、他は建設資材店同+1.4%、スポーツ用品店等同+1.4%などが売上を増加させた。GDP統計上の個人消費の基礎統計となる「自動車・建設資材・ガソリン・レストランを除く」売上高は同+0.1%と3ヶ月ぶりの増加に転じた。総じて個人消費は7、8月の一時減速からは持ち直したといえる。しかし、7-9月期の小売売上高は前期比+0.7%と前期の同+1.5%から減速した。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+2%台半ばと、前期の同+4.3%の大幅増からの減速を見込む。

20161016図4

<経済レポート> Mind the Gap:米国のインフレ率

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米経済成長率が3四半期連続で潜在成長率を下回ったことで、米経済のマイナスの需給ギャップは拡大に転じている。今後米経済が潜在成長率を上回る成長を続けない限り需給ギャップは縮小せず、結果インフレ率も現状レベルにとどまる可能性がある。これは従前の当レポートの見方に対する下方リスクである。もっとも、就業者数が労働力人口増加を超えるペースで増加すれば失業率は自然失業率を下回る水準に低下し、賃金上昇が加速しうる。来年中の2%インフレ目標達成の可能性はまだ残っていると見る。

FOMCは来年の利上げペース低下を予測

現在、米国のインフレ率は2%の政策目標に向かって上昇しつつある。8月現在で、FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前年比+1.0%、同コア指数は同+1.7%となっている。2014年末の原油価格急落によるエネルギー価格下落の影響で、総合PCEインフレ率は1%にとどまっているが、食品及びエネルギーを除くコアPCEインフレ率は1%台後半で堅調にじり高推移している([第1図])。エネルギー価格という外的ショックを除いた米国のインフレ率は、FRBの目標とする2%に向けて上昇しているといえる。

この状況から筆者個人は、FRBが現在0.25-0.50%であるFF金利誘導目標レンジを追加引き上げする条件は整っていると見ている。FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は、12月の定例会合でFF金利誘導目標レンジを+0.25%引き上げると個人予想する。

一方で、来年2017年の利上げペースは、筆者が年初に想定していたよりも遅くなるリスクが高まっている。9月のFOMC定例会合後に公表されたFOMC委員の四半期経済予測(中央値)によれば、2017年末のFF金利誘導目標は1.1%とされている。これは、12月に+0.25%の利上げがあったとして、2017年の利上げは合計+0.50%(+0.25%の利上げを2回)にとどまることを示唆している(10月2日付当レポート参照)。年初時点で当レポートは、FRBの利上げペースを、追加利上げ開始後1会合毎に+0.25%の利上げ、つまり1年で+1.0%の利上げ実施とみていたが、この見方に下方リスクが高まってきている。本レポートでは、このリスクの高まりの背景を主に米経済の需給ギャップとインフレ率の関係から見ていく。

[第1図]
20161012図1

需給ギャップは約-2%で横ばい推移しそう

FRB利上げペースが当初想定より減速するリスクが高まったと見る理由は、以下の3点である。すなわち①FOMC委員予測の下方シフト(上記)、②自然利子率の低下(7月31日付当レポート参照)、そして、③マイナスの需給ギャップの縮小ペース低下である。①、②については過去の当レポートで論じたものであるが、③は、直近までの米実質GDP成長率減速に伴う新たなリスク要因といえる。以下では、インフレ率を決定する要因として「需給ギャップ」と「期待インフレ率」を採り上げ、これらのアップデートを通じて、今後の米インフレ率の上昇ペースが減速するリスクを見ていく。

まず、米経済の需給ギャップの状況をみる。米議会予算局(CBO)の推計する米潜在実質GDP(CBO「財政経済見通し」2016年8月による)と、実質GDPの実績から、米経済の需給ギャップを計算した結果が[第2図]である。米国経済のマイナスの需給ギャップは4-6月期時点で約-1.9%と計算できる。2015年7-9月期にマイナスの需給ギャップが-1.5%にまで縮小して以来、3四半期連続でギャップが拡大した。マイナスの需給ギャップが拡大するのは、その間の実質GDP成長率が潜在成長率を下回っていることによる。

CBOによれば、2015~2016年の米経済の潜在成長率は約+1.5~+1.6%とされている。これに対し、2015年10-12月期から3四半期の実質GDP成長率はそれぞれ、前期比年率+0.9%、同+0.8%、同+1.4%と、いずれも潜在成長率を下回っている。結果、4-6月期にかけてマイナスのk需給ギャップが拡大に転じたわけだ。今後、マイナスの需給ギャップが縮小に向かうためには、年後半から来年にかけて、年率+1.6%を上回る成長が実現することが必要になる。

[第2図]
20161012図2

期待インフレ率は中期的な低下トレンドにある

次に、期待インフレ率の動向をみる。調査ベースの短期の期待インフレ率指標の代表として、ミシガン大学の消費者センチメント調査を採り上げる。同調査における期待インフレ率(12ヶ月)の推移は[第3図]の通りである。これによれば、消費者の予想する12ヶ月後のインフレ率は2011年をピークのほぼ一貫して低下傾向にある。

市場ベースの期待インフレ率の代表として、5年物、及び5年先5年物のTIPSスプレッドの過去3年の推移をみたのが[第4図]である。市場ベースの期待インフレ率も同様に低下傾向にあるが、直近ではやや底入れ感もみられる。

市場の期待インフレ率は、調査ベース、市場ベースともに低下傾向または低位にとどまる傾向にある。これは将来のインフレ実績にも影響を与えると考えられる。米国債及び米インフレ連動国債の利回り差から導出されるTIPSスプレッドは、市場の国債需給の変動の影響を受けやすいことから、以下の分析ではミシガン大調査による期待インフレ率を用いることとする。

[第3図]
20161012図3

[第4図]
20161012図4

コアPCEインフレ率は1.7%で推移する計算

コアPCEインフレ率(前年比%)を被説明変数、需給ギャップとインフレ期待(上記ミシガン大調査)を説明変数とする回帰分析をアップデートした結果が[第1表]、[第5図]である。これによれば、需給ギャップとインフレ期待から推計した7-9月期現在のコアPCEインフレ率は前年比約+1.7%と推計される。現在のコアPCEインフレ率は、ほぼこの推計による理論値に近い水準にあるといえる。

一方で、今後のPCEインフレ率の推移をこれら2つの説明変数から推計すると、現在の筆者個人の予想に従う限りは、コアPCEインフレ率は今後ほぼ横ばいで推移し、来年1年では2%への上昇は見こめないとの計算になった。まず、期待インフレ率は現状と横ばいとする。また来年の成長率を四半期ごとに前期比年率+1.5%とする。これは、今後米国の成長率が2015年以前の+2%成長から、1%台に減速するとの筆者個人の見通しに沿ったものである。潜在成長率+1.5%に対しで来年の成長予想を+1.5%とおく結果、来年の間に需給ギャップは現状の-1.9%から縮小しない計算になる。結果、来年1年の間、コアPCEインフレ率(の理論値)は現状の水準で横ばい推移することになる。

これは、上記の①、②と合わせ、来年のFRBによる利上げペース減速を支持する結果と言わざるを得ない。実際、テイラー・ルール公式によれば、インフレ実績を+1.7%、需給ギャップを-2%とした場合の適正FF金利(自然利子率=1.5%とする)は、約+1.0%と計算される。これはすなわち、来年末にかけてインフレ実績と需給ギャップが横ばい推移した場合、FF金利引上げは高々1%レベルまでにとどまる可能性を示唆している。

もっとも、今後需給ギャップや期待インフレ率以外の要因でインフレ率が上昇する可能性はある。失業率と時間当たり賃金上昇率との関係を示すシンプルなフィリップス曲線を描いてみると、失業率が自然失業率(約5%)を下回ると賃金上昇ペースが加速する経験則がある([第6図])。現在の失業率はほぼ自然失業率レベルにあり、雇用市場はほぼ均衡している。しかし、今後就業者数が月間約+180千人を超えて増加すれば、失業率が今後も低下する余地はある。その場合は賃金上昇率の加速でインフレ圧力が高まることでインフレ実績が2%に達する可能性はまだ十分にあると見たい。

[第1表]
20161012表1

[第5図]
20161012図5

[第6図]
20161012図6


<経済指標コメント> 米9月非農業部門雇用者数は前月比+156千人

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[日本]

日銀短観(9月調査):大企業製造業業況判断DIは6ポイント(6月調査比横ばい)

9月の日銀短観、大企業製造業の業況判断(最近)は6ポイント(6月調査比横ばい)と2四半期連続の横ばい。大企業非製造業の業況判断(最近)は18ポイント(同-1ポイント)と低下した。先行き判断は製造業6ポイント、非製造業16ポイントと横ばいないし低下が予想されている。企業景況観は依然減速傾向で、海外景気減速や円高の影響がみられる。

20161009図1

[米国]

ISM製造業指数(9月)は51.5%(前月比+2.1%ポイント)、非製造業指数は57.1%(同+5.7%ポイント)

9月のISM製造業指数は51.5%(前月比+2.1%ポイント)と3ヶ月ぶりに上昇。前月の50%割れ(49.4%)は1ヶ月で解消した。総合DIを構成する5つのDIの内訳は新規受注55.1%(同+6.0)、生産52.8%(同+3.2)、雇用49.7%(同+1.4)、入荷遅延50.3%(同-0.6%)、在庫49.5%(同+0.5)と、入荷遅延を除く4つのDIが上昇、雇用と在庫を除く3つのDIが50%を超えた。特に主要DIである新規受注と生産DIが大幅上昇して50%を回復したのは朗報である。調査先の回答は「国内・海外売上はやや増加(化学製品)」「事業は依然強いが一部消費関連製品に反落がみられる(金属製品)」「原油価格は依然収益に影響(石油・石炭製品)」など、一部に事業回復の動きがみられる。前月の50%割れは一時要因だったと見たい。ただ総合DIの3ヶ月移動平均は51.2%(同-0.5)と2ヶ月連続の低下で、製造業景況感は軟化からまだ底入れしていないといえる。非製造業指数は57.1%(同+5.7%ポイント)とこれも3ヶ月ぶりかつ大幅な上昇。総合DIを構成する4つのDIの内訳は事業活動60.3%(同+8.5)、新規受注60.0(同+8.6)、雇用57.2%(同+6.5)、入荷遅延51.0%(同-0.5)。3ヶ月移動平均も54.7%(同+0.2)と上向きに転じた。総じて企業景況観は海外景気減速や原油安の影響を受けており、また業種によるばらつきがみられる状況で、力強い回復は見えにくい。

20161009図2

新車販売台数(乗用車及び軽トラック、9月)は年率17.65百万台(前月比+0.7%)

9月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率17.65百万台(前月比+0.7%)と反発。低金利、自動車ローン信用条件緩和、ガソリン価格の低位安定で自動車販売は依然好調である。しかしながら、前年との比較では、今年に入り9ヶ月中5ヶ月で前年の売り上げ台数を下回っている。四半期ベースでは、4-6月期、7-9月期と2四半期連続で前年同期を下回った。2四半期連続の前年比マイナスの伸びは2009年以来である。販売台数がほぼ過去の最高水準に達していることで、今後の自動車販売の伸びは減速を余儀なくされると見る。

20161009図3

雇用統計(9月):非農業部門雇用者数は前月比+156千人、失業率は5.0%

9月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+156千人と、上方改訂された前月の同+167千人から2ヶ月連続となる減速となった。3ヶ月移動平均は同+191.7千人と前月の同+230.0千人から低下した。しかしながら3ヶ月移動平均は+200千人に近い増加であり、雇用拡大ペースの基調は堅調といえる。また9月の民間部門は同+167千人と前月の同+144千人から伸びが加速した。業種別には建設業同+23千人、製造業同-13千人、小売業同+22.0千人、専門ビジネスサービス同+67千人、教育・医療業同+29千人。雇用増加を加速させたのは専門ビジネスサービス、減速させたのは教育・医療と内容はまちまちである。時間当たり賃金(生産及び非監督労働者)は前年比+2.7%と2010年1月以来の強い伸び。雇用増加が遅効的に賃金上昇圧力になってきている。家計調査による失業率は5.0%と3ヶ月ぶりに小幅上昇。しかし、労働力人口、就業者数のいずれもが増加しており、労働参加率は62.9%と3月以来の水準に上昇した。総じて雇用市場は依然堅調に拡大しており、12月のFRB追加利上げ予想を支持する内容である。もっとも中期的な観点からは雇用拡大ペースは減速していると言わざるを得ない。失業率は今年に入りほぼ5%レベルの横ばい推移で、低下ペースは弱まっている。非農業部門雇用者数の前年比の伸びは9月時点で+1.7%と昨年の同+2%から減速している。先行指標となる週労働時間(生産及び非監督労働者、33.5時間)が今年に入り低減しているのも、中期的な雇用拡大ペースの減速を示唆する指標である。

20161009図4

<経済レポート> さらにペースダウン:9月FOMC

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先月9月のFOMC定例会合では、「労働市場余剰の縮小ペース減速」「金融政策に非対称性」を理由に追加利上げが見送られた。しかしFOMC委員予測は年内1回の追加利上げを支持している。12月定例会合で追加利上げ実施との筆者個人予想は維持する。一方で「中立金利低下」を理由に、来年2017年の利上げペースダウンが委員予測で示唆されている。これは従前の当レポートの見方に下方修正を考慮せざるを得ない材料である。

9月FOMCは追加利上げ見送り

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)は、去る9月20-21日の定例会合で、FF金利誘導目標レンジの据置き(0.25-0.50%)を決定した。声明文及びFOMC委員経済予測、並びにイエレンFRB議長の定例記者会見のポイントは以下の通りである。うち、①、③、④は年内利上げ予想を支持する要素、一方⑤、⑥は来年以降の利上げペース減速を示唆するハト派的要素である。

①声明文で「経済見通しのリスクは概ねバランス」の文言が復活
②声明文の利上げ見送り理由「FF金利引上げの根拠は強まったと判断するが、目標への進捗継続の更なる証左を当面待つことに決定した」
③3人の投票メンバーが利上げを主張し決定に反対
④FOMC委員経済予測では14人の委員が年内追加利上げを予測
⑤来年2017年末の適正FF金利予測中央値は1.1%に低下(6月予測は1.6%)
⑥イエレン議長は記者会見で利上げ見送り理由として「労働市場余剰縮小ペース低下」「金融政策の非対称性」をあげるとともに「中立利子率低下」に改めて言及

本レポートでは、上記の内容を、9月FOMC声明文、FOMC委員経済予測、イエレンFRB議長の定例記者会見から確認していく。

声明文はタカ派にシフト:3メンバーが利上げ見送りに反対票

まず、9月21日のFOMC声明文の基調判断は「労働市場は強まりを続け、経済活動の成長は加速した」とされ、経済活動に関する判断が7月声明文の「適度なペースで拡大している」から上方改訂された。インフレについては「一部にエネルギー価格の下落と非エネルギーの輸入価格低下を反映して委員会の2%の長期目標を下回って推移している」と従前の判断が維持された。今後の予想についてのパラグラフでは、「短期的な経済見通しへのリスクはほぼバランスしている」と、経済見通しへのバランスに関する文言が新たに挿入された(上記①)。経済見通しへのリスクバランスに関する文言は今年1月声明文で削除されて以来、6会合ぶりの復活ということになる。「見通しへのバランス」文言の復活は、FOMCが経済拡大の持続につき、英国のEU離脱選択や年前半の雇用に一時的軟化を克服して、相応の自信を持つに至ったことを示唆している。

一方で、利上げを見送る理由として声明文は「委員会は、FF金利引き上げの根拠は強まったと判断するが、当面の間〔雇用・インフレ〕目標に向けての進捗の証左を当面の間待つことを決定した」と述べている(上記②)。決定の背景の説明としてはこの声明文の文言はあまり明示的とは言いにくい。その背景はのちに述べるイエレンFRB議長の記者会見でより詳細に説明される。

この決定については3人の投票メンバー(カンザスシティ連銀ジョージ総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、ボストン連銀ローゼングレン総裁)が+0.25%の利上げを主張して反対票を投じている(上記③)。FOMCの決定について3票の反対票が投じられたのは2014年12月会合以来、3名がいずれも金融緩和継続反対を主張して反対票を投じたのは2011年9月会合以来である。今回反対票を投じた3名のうち、ジョージ総裁とメスター総裁はいずれも当レポートでタカ派とみていたメンバー。ローゼングレン総裁は本来ハト派とみていたが会合直前の9月9日の講演で利上げ支持を示唆する発言を行ったメンバーである(8月29日付9月11日付当レポート参照)。結果的に、一部のタカ派が利上げを主張するもののイエレン議長とFRB理事からなる執行部が利上げ見送りで一致することで利上げは決定されない、との当レポートの従前の見方に沿った結果となった。

FOMC委員予測は年内利上げを支持:来年の利上げペースは低下

次に、声明文と同時に公表されたFOMC委員の四半期経済予測の9月時点の内容をみる([第1表])。同経済予測によれば、実質GDP成長率・失業率・インフレ率についての予測中央値は前回6月時点の予測とほぼ不変である。一方で、適切なFF金利予測の中央値は大きく下方シフトした。2016年末のFF金利については、6月時点では予測中央値0.9%(年内+0.50%利上げ)だったのが、9月時点の中央値は0.6%に下方シフトした(上記④)。これは年内に+0.25%の利上げ実施を示唆する予測である。一方、9月時点の予測では、17人の委員中14人が年内1回以上の利上げを予測している(上記⑤)。これは、年内追加利上げ実施を予測する委員が全体の過半数以上を占めていることを表している([第1図][第2図])。

一方で、来年2017年末の適正FF金利予測中央値も、6月時点の1.6%から1.1%に下方シフトしている。これは2017年の利上げペース予測が+0.50%(+0.25%の利上げを2回)に減速したことを示唆している。筆者個人は、2017年の利上げペースを定例会合1回おきに+0.25%ずつ合計4回+1.0%と想定、2017年末とFF金利誘導目標レンジを1.50-1.75%と想定していた。今回の委員予測はこの見方につき修正の考慮を迫る内容だといわざるを得ない。

さらに、9月時点予測では、長期的な適切FF金利水準予測中央値も6月時点の3%から9月には2.9%に下方シフトしている。これはFOMC委員のみる中立FF金利水準がさらに低下したことを表している。

[第1表]
20161002表1

[第1図]
20161002図1

[第2図]
20161002図2

イエレン議長は「労働余剰縮小ペース低下」「金融政策の非対称性」「中立利子率低下」に言及

声明文公表後の定例記者会見におけるイエレンFRB議長発言の注目点は、今回の利上げ見送りの判断理由である(上記⑥)。イエレン議長は「なぜ我々はFF金利を今日の会合で引き上げなかったのか?」として、まず「労働市場ののりしろ(slack)の解消が昨年よりも遅いペースになっている」ことが、労働市場と低インフレ率の改善の余地があることを示唆していると述べた。労働市場の改善ペースは確かに減速している。失業率は昨年2015年の1年間で5.7%から4.9%へと約-0.8%低下したが、今年に入ってからはほぼ4.9%で横ばい推移している。非農業部門雇用者数の前月比増加ペースも、2015年は平均+228.7千人だったが、2016年は9月までで同+185.0千人となっている。しかしながら、この労働市場拡大ペースの減速は、労働市場が完全雇用に近づいたことによる減速であって、労働市場の改善に対するリスクを表象するものではないと個人的には見たい。

次にイエレン議長は「金融政策のサポートを解除することにおけるこの慎重なアプローチは、短期金利が依然ゼロ近辺にあることを勘案すればきわめて適切である」「将来予想外に強いインフレ圧力に対する利上げによる対処は、労働市場の軟化とインフレ低下へ利下げで対処するよりも効果的である」と述べた。これは、金融政策の「非対称性」とされるもので、3月FOMC定例会合、3月20日イエレン議長講演、9月12日ブレイナードFRB理事講演で取り上げられた議論である(4月17日付9月19日付当レポート参照)。しかし、過去の当レポートでも述べたように、8月の一連のFRB高官発言及び9月のFOMC委員経済予測が年内利上げ開始を支持する内容にシフトしていることからは、この非対称性を克服しうるだけの利上げ正当化根拠がFOMC内に相当に根付いていることが推測できる。また、当レポートではむしろ、利上げは早期に実施し、将来の金融再緩和実施に備えて金融政策ののりしろを維持しておくのが有効だと考えている。

また、イエレン議長は、利上げペースを徐々にすべきとの背景として「これは、現在の名目中立FF金利、、が過去に比べきわめて低いとの我々の見方に基づいている」「FF金利が中立金利に比べてやや低い水準にとどまっていることから、現在の金融政策はやや緩和的であるにすぎないといえる」と述べた。中立利子率が低いということは、過去の高い中立利子率時に比べ、同じ政策金利でも緩和の程度は弱い、ということである。実際に、筆者個人の推計する中立実質金利は過去に比べて低くなっており、現在では約1.5%とみられる。これは今後の利上げペースが、中立実質金利をやや高め(2%など)とみる前提にくらべ、適正なFF金利水準は低下していると言わざるを得ない。もっとも実質中立金利を+1.5%とし、2017年末のインフレ率を1.9%、2017年の実質GDP成長率を前年比2%(いずれもFOMC委員予測中央値)とした場合、テイラー・ルールでは2017年末に約1.8%のFF金利水準が正当化される計算になる([第3図])。一方2017年の成長率を前年比+1.5%と低めに見積もった場合は2017年末の適正FF金利は1.2~1.3%に低下する計算になる。後者の方が9月FOMC委員のFF金利予測中央値に近い数値である。

総じて、9月FOMCの結果は、利上げ見送り支持が利上げ支持を票読みで上回るとの筆者個人の予想に沿ったものであり、次回利上げは12月との個人予想を維持する。一方、来年の利上げペースについては、FOMC委員の予測中央値が+0.50%(+0.25%の利上げを2回)に下方シフトしている。これはこれまでの筆者個人の想定よりペースダウンであり、この点については見通しの修正を考慮せざるを得ない。

[第3図]
20161002図3

<経済指標コメント> 米8月実質個人消費は前月比-0.1%

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[日本]

実質家計消費支出(二人以上の世帯、8月)は前月比-3.7%(前年比-4.6%)

8月の実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比-3.7%(前年比-4.6%)と大幅減少。前年比の減少に寄与した項目は、自動車購入・ガソリン(前年比寄与度-1.42%)、設備修繕・維持(同-0.71%)、交際費(同-0.58%)、など多岐にわたる。8月までの7-9月期実質家計消費支出は前期比-0.8%と2四半期連続のマイナスの伸びとなるペースである。7-9月期以降の実質GDP成長率は前期比年率+0.4%、うち家計消費は同+1.0%程度の巡航速度の成長を見込んでいたが、これに対する下方リスクがでてきた。一方で、勤労者世帯の実収入も実質ベースで前年比+1.5%と増加に転じており、今後家計消費の持ち直しの可能性はまだあるといえる。

20161001図1

全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、8月)は前月比横ばい(前年比-0.5%)

8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPI)は前月比横ばい。前年比では-0.5%と6ヶ月連続のマイナスの伸びとなった。前年比の伸び率の下落に寄与したのは電気代(寄与度-0.26%)、ガソリン(同-0.26%)など、エネルギー関連の価格下落が全体を押し下げている。さらに、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコアCPI)は前月比+0.1%のとどまり、前年比の伸び率は+0.2%と昨年12月の同+0.8%をピークに低下に転じている。需給ギャップの縮小によりコアコアCPIインフレ率は上昇基調継続とみていたが、ここにきて下方に転じている。試算では2016 年度末(2017年3月)のインフレ率はコアCPIが前年比+0.8%、コアコアCPIが同+0.9%となる見通しで、2018年にかけての2%インフレ率達成の可能性ありとの見方は維持しておきたい。

20161001図2

完全失業率(8月)は3.1%

8月の完全失業率は3.1%と前月比+0.1%ポイント上昇。完全失業者数が2100千人(前月比+4.5%)と3ヶ月ぶりに増加に転じたのが主因。ただし失業率は1995年以来の低水準であり、労働市場はタイトである状況に変わりはない。一方、筆者試算の労働参加率は60.3%と3ヶ月連続で60%を上回っており、労働力人口の増加が市場の緩和要因にもなっている。

20161001図3

鉱工業生産指数(8月)は前月比+1.5%(前年比+4.6%)

8月の鉱工業生産指数は前月比+1.5%と反発。前年比では+4.6%と5ヶ月ぶりのプラスの伸びに転化した。電子部品・デバイス工業(前月比+6.3%、前年比+3.7%)、情報通信機械工業(同+14.0%、同+17.1%)などの生産増が全体を押し上げた。生産指数の3ヶ月移動平均も4月をボトムに上昇に転じている。公表元の経済産業省は「生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」と基調判断を引き上げた。8月の出荷指数は前月比-1.3%、在庫指数は同+0.1%、在庫率指数は同-3.5%。在庫循環図は依然在庫調整局面にあるが、在庫指数、在庫率指数ともにここ2ヶ月で大幅低下している。在庫調整が終了すれば今後は生産の本格的持ち直しに期待できる。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷は前月比-1.2%と3ヶ月連続の低下。8月までの7-9月期同指数は前期比-1.3%とマイナスの伸びに転化しており、GDP統計上の企業設備投資は3四半期連続のマイナス成長になるリスクが高まってきた。総じて企業部門の指標は底入れの兆しがみられるもののまだまちまちといえる。

20161001図4

住宅着工戸数(8月)は年率956千戸(前月比-4.9%)

8月の住宅着工戸数は年率956千戸(前月比-4.9%)と反落。持家・貸家・分譲住宅のいずれもが減少した。住宅着工戸数の水準は依然高いものの、5月をピークに減少に転じており、循環的な減少サイクルに入った可能性がある。

20161001図5

[米国]

新築住宅販売(8月)は年率609千戸(前月比-7.6%)、在庫期間は4.3ヶ月

8月の新築住宅販売は年率609千戸(前月比-7.6%)と大幅減。ただしこれは前月の同+13.8%の急増の反動とみられる。在庫期間は4.3ヶ月と前月比横ばいで、新築住宅販売市場の需給は依然タイトである。住宅着工が横ばい推移を続けていることから、供給不足によるタイト化は当面継続しそうだ。8月は新築・中古ともに販売が減少したが、雇用拡大と賃金上昇を背景に住宅需要は依然堅調とみたい。

20161001図6

耐久財受注(8月)は前月比横ばい、除く運輸関連同-0.4%、非国防資本財受注(除く航空機)は同+0.6%、同出荷同-0.4%

8月の耐久財受注は前月比横ばい、除く運輸関連同-0.4%。企業設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(除く航空機)は同+0.6%と3ヶ月連続の増加。一方で、GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同-0.4%と4ヶ月連続減少した。8月までの7-9月期の同出荷は前期比-5.5%と、GDP統計上の設備投資(機器投資)が4四半期連続マイナス成長となるペースであることを示唆している。一方で、同受注は3ヶ月連続で増加し、前期比の伸び率がプラスに転化している。企業部門指標は総じて弱い状態が続いているが、資本財受注の増加は一時的な朗報である。

20161001図7

実質GDP成長率(4-6月期、確報値)は前期比年率+1.4%

4-6月期の実質GDP成長率(改定値)は前期比年率+1.4%と、改訂値の同+1.1%から上方改訂。需要項目別内訳は、個人消費同+4.3%(改訂値同+4.4%)、設備投資同+1.0%(同-0.9%)、住宅投資同-7.7%(同-7.7%)、政府支出同-1.7%(同-1.5%)、在庫投資寄与度同-1.16%(同-1.26%)、純輸出寄与度同+0.18%(同+0.10%)。設備投資の大幅上方改訂が全体の上方改訂の主要因である。現在の筆者の試算では、2016年通年成長率は前年比+1.3%程度となる計算であり、通年同+1.8%との7月時点の筆者個人予想に下方リスクがある状況は不変である。

20161001図8

実質個人消費(8月)は前月比-0.1%、PCEデフレーターは前年比+1.0%、同コア同+1.7%

8月の実質個人消費は前月比-0.1%と7ヶ月ぶりの減少。内訳は自動車販売の減少を反映した耐久財消費が同-1.3%、小売売上の減少を反映した非耐久財消費が同-0.3%、サービス消費が同+0.1%。4月をピークに実質個人消費の伸びは減速してはいるものの、8月までの7-9月期実質個人消費は前期比年率+2%台半ばを確保できるペースであり、これは筆者個人予想をむしろ上回っている。個人消費は依然堅調とみたい。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.1%(前年比+1.0%)、同コア指数は前月比+0.2%(前年比+1.7%)といずれも前年比の伸び率を高めている。コアPCEインフレ率はFRBのインフレ目標である前年比+2%に接近しており、総合PCEインフレ率も年末には同+1.5%に上昇すると筆者は試算している。インフレ率の観点からはFRBの追加利上げの条件はほぼ整っているといえる。

20161001図9