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<経済指標コメント> 米5月中古住宅販売戸数は年率5620千戸(前月比+1.1%)

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[日本]

実質GDP成長率(1-3月期、2次速報値)は前期比年率+1.0%

1-3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率+1.0%と、1次速報値の同+2.2%から大幅下方改訂された。需要項目別内訳は家計消費同+1.1%(1次速報値同+1.4%)、住宅投資同+1.1%(同+3.0%)、設備投資同+2.5%(同+0.9%)、公的需要同-0.2%(同+0.4%)、在庫投資寄与度同-0.6%(同+0.5%)、純輸出寄与度同+0.5%(同+0.5%)。在庫投資の大幅下方改訂が成長率を1次速報値比-1.1%押し下げたのが下振れの主因。家計消費・住宅投資・設備投資を合わせた国内最終民間需要は同+1.4%と1次速報値比不変。今回の下方改訂は在庫投資が主因であり、実体経済見通しに対する影響は限定的といえる。ただし数字上は2017暦年成長率、年度成長率とも+1%前後になる計算であり、筆者個人予想に対しやや下振れリスク要因となる。

20170627図1

景気ウォッチャー調査(5月):現状判断DIは48.6(前月比+0.5ポイント)、先行き判断DIは49.6(同+0.8ポイント)

5月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは48.6(前月比+0.5ポイント)と2ヶ月連続上昇、2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは49.6(同+0.8ポイント)とこれも2ヶ月連続上昇。景気判断理由には「アジア圏からの観光客が好調(観光型ホテル)」「業務用や輸出用商材は好調(食料品製造業)」「東京オリンピックに向けて、インバウンド客も増えており、来客数はまだのびそう(一般レストラン)」などインバウンド消費が好調な一方「北朝鮮情勢の不透明感、欧州の相次ぐテロ事件で海外旅行の需要の低迷が懸念される(旅行代理店)」といった地政学リスクの影響を懸念するものがみられる。総じて年初からの街角景気低下は底入れしたが、方向感は出ず玉虫色といえる。

20170627図2

機械受注(4月、船舶・電力を除く民需)は前月比-3.1%(前年比+2.7%)

4月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-3.1%と3ヶ月ぶりの減少、前年比では+2.7%のプラス。前年比伸び率の3ヶ月移動平均は同+2.5%と前月の同-1.1%からプラスに転じた。設備投資の先行指標となる機械受注は1-3月期に前期比でマイナスに転じたが、4-6月期のスタートはやや持ち直しの兆しがある。

20170627図3

[米国]

企業在庫(4月)は前月比-0.2%、企業売上高は同横ばい、在庫売上高比率は1.37倍

4月の企業在庫は前月比-0.2%と6ヶ月ぶりの減少、企業売上高は同横ばい、在庫売上高比率は1.37倍と4ヶ月連続横ばいで推移している。在庫循環図は在庫積み増し局面にあるが、積み増しペースがいったん後退した形である。4月の在庫減は一時要因とみて、今後年内は再び在庫が成長押し上げ要因になると見る。もっとも、在庫売上高比率は2016年の1.4倍超をピークに低下に転じているものの金融危機前の1.2倍に比べるとまだ高く、構造的には在庫圧縮はまだ可能な環境にある。

20170627図4

消費者物価指数(5月)は前月比-0.1%(前年比+1.9%)、同コア指数は前月比+0.1%(同+1.7%)

5月の消費者物価指数は前月比-0.1%(前年比+1.9%)、食品及びエネルギーを除くコア指数は前月比+0.1%(同+1.7%)。いずれも前年比の伸び率を低下させた。前月比の費目別伸び率は、ガソリン同-6.4%、衣服同-0.8%など原油価格低下によるエネルギー価格低下が目立つ一方、家賃・宿泊費同+0.2%、運輸サービス同+0.3%などは上昇した。総じてエネルギー価格がやや低下に転じたことでインフレ率上昇ペースは一服しているが、FRBの目標である2%に近いところで推移している。FOMCの年内合計+1%利上げ予想を支持する内容といえる。なお、FOMCは本指標公表と同時の14日に+0.25%の追加利上げを決定した。

20170627図5

小売売上高(5月)は前月比-0.3%、除く自動車関連同-0.2%

5月の小売売上高は前月比-0.3%と3ヶ月ぶりの減少、除く自動車関連でも同-0.2%と減少した。業種別内訳は新車販売の減少を反映した自動車及び同部品ディーラー同-0.2%、原油価格低下を反映したガソリンスタンド同-2.4%、家電店同-2.8%、百貨店同-1.0%など広い業種で売上が低下した。自動車・ガソリン・レストランを除く小売売上高は同横ばいにとどまった。総じて、自動車販売減とガソリン価格低下の影響に加えてコアの売上も減少した形で、単月の指標としてはやや失望感がある。自動車販売のピークアウトや雇用増加ペースの減速もあり、中期的には個人消費の拡大ペースは減速しそうだ。もっとも短期的には、5月の売上減は4月の増加の反動ともいえ、年内個人消費は堅調な拡大を維持すると見る。

20170627図6

鉱工業生産指数(5月)は前月比横ばい、設備稼働率は76.6%

5月の鉱工業生産指数は前月比横ばい、内訳は製造業同-0.4%、鉱業同+1.6%、公益事業同+0.4%。設備稼働率は76.6%と前月比-0.1%ポイント低下。鉱工業生産は総じて昨年末以来回復基調を維持しているが、そのペースにはやや減速感がみられる。自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率11.29百万台(前月比-1.7%)と減少、前年比でも-0.4%と5ヶ月連続マイナスの伸びとなっている。

20170627図7


中古住宅販売戸数(5月)は年率5620千戸(前月比+1.1%)、在庫期間は4.2ヶ月

5月の中古住宅販売戸数は年率5620千戸(前月比+1.1%)と反転増加。3ヶ月移動平均は同5627千戸(同+0.9%)と上昇に転じた。中央販売価格は前年比+5.8%と適度な上昇となっている。在庫期間は4.2ヶ月と2ヶ月連続で長期化しているが、依然適正とされる6ヶ月を下回っている。公表元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで、「健全な雇用市場と住宅ローン金利の低下」が販売を加速したとし「販売在庫は希少」としている。中古住宅市場の需給は依然タイトで、販売は堅調な増加を続けるものの供給不足からその増加ペースは抑制的になると見る。

20170627図8


新築住宅販売戸数(5月)は年率610千戸(前月比+2.9%)、在庫期間は5.3ヶ月

5月の新築住宅販売戸数は年率610千戸(前月比+2.9%)と反転増加。在庫期間は5.3ヶ月と前月比横ばい。新築住宅販売市場も堅調な増加を継続しており、住宅着工増加を反映して需給はほぼ適正である。中古住宅市場とともに今後も新築住宅販売は堅調な増加を続けると見る。

20170627図9

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<経済指標コメント> 米5月非農業部門雇用者数は前月比+138千人

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[日本]

実質家計消費支出(4月、二人以上の世帯)は前月比+0.5%(前年比-1.4%)

4月の実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比+0.5%と過去4ヶ月で3回目の前月比増加。3ヶ月移動平均は同+0.3%と3ヶ月連続で上昇した。前年比の伸びは-1.4%と依然マイナスが続いているが、短期的には家計消費に底入れの兆しもみられる。一方、勤労者世帯の実収入(実質ベース)は前年比-0.9%と2ヶ月連続のマイナスとなった。家計消費は依然低迷は続いているものの、失業率の低下や賃金上昇の可能性から、今後底入れが見込まれると見たい。

20170604b図1

完全失業率(4月)は2.8%

4月の完全失業率は2.8%と前月比横ばい、1994年6月以来の低水準を3ヶ月連続で維持した。筆者試算の労働力化率は60.4%と2ヶ月連続で上昇し、2016年12月以来の水準に回帰した。労働市場の拡大を伴う失業率低位安定が続いている。労働市場は依然タイトであり完全雇用状態にあるといえる一方、労働力人口の拡大がこれを緩和している。

20170604b図2

鉱工業生産指数(4月)は前月比+4.0%(前年比+5.7%)

4月の鉱工業生産指数は前月比+4.0%と前月の同-1.9%から反発、前年比では+5.7%と前月の同+3.5%から伸びが加速した。出荷指数は前月比+2.7%、在庫指数同+1.5%、在庫率指数同+2.9%と、生産、出荷、在庫積み増しのいずれもが増加する生産拡大を単月では示している。在庫循環図は在庫積み増し局面に入っており、生産拡大が当面継続することを示唆している。GDP統計上の設備投資の先行指標となる資本財出荷は前月比+5.5%と3ヶ月ぶりかつ大幅な増加。4-6月期にはGDP統計上の設備投資がプラス成長に回帰することを示唆している。公表元の経済産業省は「生産は持ち直しの動き」と従前の基調判断を維持している。企業部門の回復ペースは1-3月期に一時一服したが、4月以降再び堅調な拡大に戻りそうだ。

20170604b図3

住宅着工戸数(4月)は年率1004千戸(前月比+2.0%)

4月の住宅着工戸数は年率1004千戸(前月比+2.0%)と2ヶ月連続の増加、着工戸数は2015年6月以来の高水準となった。前年比でも+2.0%とプラスの伸びを維持しており、住宅着工戸数は減速しつつも増加基調にある。内訳は持家前月比+1.6%、貸家同-2.4%、分譲住宅同+9.9%と、分譲住宅が全体を押し上げているが、持家も堅調な増加を見せている。総じて住宅着工戸数は増加ペースに減速感はあるものの、依然高水準で推移しそうだ。

20170604b図4

[米国]

実質個人消費(4月)は前月比+0.2%、PCEデフレーター前年比+1.7%、同コア前年比+1.5%

4月の実質個人消費は前月比+0.2%と堅調な拡大。内訳は自動車販売の増加を反映した耐久財消費が同+1.1%の大幅増、非耐久財消費が同+0.5%と、財消費の増加が全体を押し上げた。サービス消費は同横ばい。なお、前月5月分が同+0.5%に大幅上方改訂され、1-3月期のGDP統計上の実質個人消費(改定値)は前期比年率+0.6%に上方改訂された。1-3月期の上方改訂により、4-6月期の実質個人消費は前期比年率+2%を超える拡大になる可能性が出てきており、これは筆者個人予想に対する上振れ要因である。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.2%(前年比+1.7%)、同コア指数は前月比+0.2%(前年比+1.5%)といずれも堅調、前年比の伸び率は総合PCE、コアPCEとも前月よりやや低下したものの、2017年末には総合、コアともに前年比+1.7%程度のインフレ率になるとの見方に沿った結果である。

20170604b図5

新車販売台数(5月、乗用車及び軽トラック)は年率16.58百万台(前月比-1.4%、前年比-3.1%)

5月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率16.58百万台(前月比-1.4%、前年比-3.1%)と、前月比で反落、また5ヶ月連続で前年同月の売上を下回った。昨年末の同18百万台台をピークに自動車販売台数にはやや頭打ち感があり、今後も増加ペースは緩やかにとどまると見る。

20170604b図6

雇用統計(5月):非農業部門雇用者数は前月比+138千人、失業率は4.3%

5月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+138千人にとどまった。また、3月分(同+79千人→+50千人)、4月分(同+211千人→174千人)もそれぞれ下方改訂され、非農業部門雇用者数前月比増加の3ヶ月移動平均は+120.7千人と、3ヶ月連続で低下かつ+200千人を下回った。5月の業種別内訳は、製造業同-1千人、小売業同-6.1千人などの雇用減少が目立つ。専門ビジネスサービス同+38千人、教育・医療同+47千人などは巡航速度の雇用増を維持している。非農業部門雇用者数増加幅はここ3ヶ月については期待を下回ったといわざるを得ない。時間当たり賃金(生産及び非監督雇用者)は前年比+2.4%と前月並みの伸び率。一方、家計調査による失業率は4.3%(前月比-0.1%ポイント)と、実に2000年8月以来の水準に低下した。ただし、労働力人口、就業者数ともに前月比で減少しており、単月では労働市場の縮小を伴う失業率低下である。総じて雇用者数増加幅の減速は期待を下回ったが、前年比の非農業部門雇用者数の伸び率は+1.6%と、ほぼ今年に入ってからの巡航速度を維持しており、増加幅の縮小は中期的な循環的減速といえる。失業率は自然失業率(米議会予算局推計では4.7%)を-0.3%下回っており、労働市場は需要超過状態にあるといえる。今後も雇用増加ペースは循環的な減速局面で、中期的な個人消費の減速がつづきそうだ。一方で雇用市場の過熱や雇用の余剰などの証跡はなく、今後も雇用は堅調に拡大すると見る。PCEインフレ率の推移と合わせて、FOMCが6月FOMCで追加利上げを決定するとの個人予想は維持する。

20170604b図7

<経済レポート> フル稼働状態:日本経済定点観測

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日本経済は家計消費と輸出増を背景に成長が加速している。今後年内はややペースを落として潜在成長率程度の成長を維持し、通年成長率は+1%程度になると個人予想する。日本経済は完全雇用状態にあり、マイナス需給ギャップもほぼ解消したフル稼働状態にあるといえる。もっともインフレ率2%の達成には構造的な政策が必要で、日本銀行は年内量的・質的緩和政策を現状維持すると見る。

家計消費が堅調に成長をけん引

5月18日に公表された1-3月期の日本の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率+2.2%と予想以上の拡大となった。結果日本経済は5四半期連続で潜在成長率(内閣府推計では同+0.8%)を超える成長となった。1-3月期の成長をけん引したのはまず家計消費である。GDP統計上の実質家計消費は同+1.4%と前期の同+0.1%から大幅に回復し、成長率を+0.8%押し上げた。総務省家計調査によれば、4月に入っても実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比+0.5%とまずまずのスタートとなっている([第1図])。

今後も年内の個人消費は前期比年率+0.5%程度の安定した拡大を続けると見る。中期的に見ると個人消費は、2014年4月の消費税率引上げ以後現在までの3年間ほぼ一貫して前年比マイナスの伸びが続いており、低迷が続いていると言わざるを得ない。しかし今後については徐々に持ち直しが期待できる兆候がみられる。現金給与総額(所定内給与)は名目ベースで概ね前年比+0.3~0.4%の伸びを維持している([第2図])。失業率と名目賃金の関係を示すシンプルなフィリップス曲線によれば、4月現在の失業率(2.8%)に相当する賃金上昇率は前年比+1.2%と推計される([第3図])。今後も現在の低失業率が継続すれば、賃金上昇ペースは加速する可能性がある。インフレ率は2017年末にかけて前年比約+0.7%程度の上昇にとどまると見ることから、実質ベースでの家計消費の約+0.5%程度の成長維持が理論上は可能ということになる。

労働市場と家計消費を取り巻く環境は一進一退ではあるものの、今後の悪化が見込まれる状況ではない。労働市場はほぼ完全雇用状態にあり、人手不足がますます明かになっている。社会的には、同一労働・同一賃金など賃金格差是正の動きが広がっている。企業のベースアップも引き続き期待できる。街角景気を表す内閣府の景気ウォッチャー調査は横ばいを示す50ポイントをやや割り込む水準にあるが、昨年春以降はほぼ一貫して上昇基調が続いている。

[第1図]
20170604図1

[第2図]
20170604図2

[第3図]
20170604図3

企業部門の回復は一服感

企業部門は昨年来の回復基調にやや一服感がみられる。資本財出荷は1-3月期に4四半期ぶりに前期比減少し、1-3月期のGDP統計上の実質設備投資は前期比年率+0.1%の伸びにとどまった([第4図])。しかし前年比の伸び率は+3.2%と2四半期連続で伸びを加速させている。企業部門の回復の背景には、海外景気回復による輸出増加と在庫調整の終了がある。在庫循環図は在庫積み増し局面に入りつつあり、今後企業の生産が増加して設備投資が堅調に拡大する可能性を示唆している([第5図])。設備投資は今後も年内に前期比年率+2~3%の成長を維持すると見る。日銀短観3月調査によれば、2017年度の設備投資計画(除く土地投資額)は前年度比+3.1%と、2016年度の修正計画同-1.5%からプラスに転じている。企業部門は回復しているものの、今後の見通しについては、地政学リスクや欧米政治などに不確実性が高く、為替相場変動も見通しが立てにくい状態にある。その為、設備投資はプラス成長を維持するもののその拡大ペースは緩やかなものにとどまると見ておきたい。

財・サービス収支は、2016年度に輸出の大幅な拡大により成長にプラス寄与した([第6図])。海外景気の回復がその主な背景といえる。今後も輸出は堅調に拡大して、純輸出が成長にプラスの寄与を続けると見る。しかしながら一方で昨年11月の米大統領選以降急激に進んだ円安が、1月をピークに円高方向に転じていることは、輸出に対する下方リスク要因である。

以上から、今後年度内において実質GDP成長率は潜在成長率に近い+0.8%程度の成長を維持すると見る。1-3月期の成長加速は、家計消費と純輸出がけん引したが、在庫投資も+0.5%の寄与度を占めている。家計消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要は前期比年率+1.4%と+1%台の成長である。4-6月期以降は家計消費が減速することを勘案すれば、持続可能な成長ペースは同+1%弱とみるのが妥当であろう。結果2017暦年成長率は前年比+1.3%、2017年度成長率は前年度比+1.1%と個人予想する。これらは、1月時点の当レポートでの個人予想比若干の上方修正となる(1月15日付当レポート参照)。上方修正の主要因は、主に1-3月期の成長実績が予想を上回ったことである。

[第4図]
20170604図4

[第5図]
20170604図5

[第6図]
20170604図6

経済は完全雇用でフル稼働状態

マクロ的に見ると、現在の日本経済はほぼその供給力一杯の状態で稼働しているといえる。コアインフレ率(生鮮食品を除く総合消費者物価指数)の変化と失業率実績との関係からの筆者個人の推計によれば、2017年1-3月期時点の自然失業率は約3.6%となる。現在の失業率2.8%はこれを-0.8%も下回る水準であり、労働市場は完全雇用から需要超過にあるといえる([第7図])。内閣府の推計する潜在GDPと潜在成長率をもとにした試算では、日本のGDPギャップは1-3月期時点で-0.1%とマイナス需給ギャップがほぼ解消した計算になる。今後年内に日本経済が潜在成長率(内閣府推計では+0.8%)を維持すれば、日本の需給はほぼ均衡した状態で推移することになる([第8図])。

しかしながら、マイナスの需給ギャップの解消だけではインフレ率の急上昇は見込みにくい。需給ギャップとインフレ率との相関からは、需給ギャップ0%に相当するコアインフレ率は前年比約+0.4%と計算される([第9図])。これまでの消費者物価指数の推移からは実際には2017年末にコアインフレ率は同+0.7%程度には上昇すると個人的には見ている。しかし日本銀行の目標とする2%インフレ率の実現には+5%を超える大幅な供給超過が必要になる計算になる。これは現実的には考えにくい数字であり、2%インフレ達成のためには、労働市場の流動化によるフィリップス曲線の上方シフト政策などが必要である状況は従前と変わらない。

もっとも、需給ギャップとインフレ率の関係を示す曲線の形状からは、需要超過状態になるとインフレ率の上昇ペースが加速する傾向が見て取れる。今後仮に日本が潜在成長率を超えるペースで拡大を継続すれば、需給ギャップが2%程度の需要超過になったところで2%インフレ率を実現する蓋然性はあるといえる。ちなみに、日本経済は金融危機直前の2007年頃に+1%半ばの供給超過状態にあり、そのごややラグを置いて2008年には一時的に2%台のインフレ率を実現したことがある。

[第7図]
20170604図7

[第8図]
20170604図8

[第9図]
20170604図9

金融政策は現状維持と見る

日本銀行の金融政策については、年内は現状の金融政策すなわち「長短金利操作付き量的・質的緩和」を維持すると見る。日銀当座預金の政策金利残高への-0.1%のマイナス金利付利、10年物日本国債金利をゼロ%程度への誘導という操作目標も、おそらく年内は維持されるだろう。上記の通り成長率は潜在成長率を超え、インフレ率も名目上は今後プラス圏を維持して上昇していくと筆者個人は見ている。この予想の下では、追加的な金融緩和を正当化する材料は見当たらない。一方で日銀の「オーバーシュート型コミットメント」では「マネタリーベースを消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続する」(2016年9月21日付日本銀行公表文)とされており、+0.7%程度のインフレ率では量的・質的緩和の出口戦略を議論するには時期尚早といえるだろう。

なお、4月27日の日銀「経済・物価情勢の展望」(「展望レポート」)での「政策委員の大勢見通し」によれば、2017年度の実質GDP成長率見通しの中央値は前年比+1.6%、コアインフレ率見通しの中央値は前年度比+1.6%となっている。これらの見通しは筆者個人の予想にくらべていずれもかなり強気といえる。

上記の個人予想に対するリスクはやや下方と見ておきたい。個人消費については賃金上昇率の加速には常に下方リスクがつきまとう。輸出においては、円高の進行が下方リスクとなる。そのほかに、北朝鮮情勢や米国政治など、日本経済に直接影響を与えうる政治的・地政学的要因にも留意する必要がある。

なお、現状での筆者個人の経済・金融予想を[第1表]に示す。

[第1表]
20170604表1