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<経済レポート> 上昇環境不変:米賃金とインフレ率

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7月FOMC議事要旨によれば、今後のインフレ見通しについてハト派とタカ派の意見が分かれた模様だ。失業率低下にも拘わらず上昇しない賃金上昇率の理由についても多くの見解が出された。労働生産性の短期的上昇や雇用ミスマッチ状態における雇用確保への過程で賃金上昇ペースは今後加速し、インフレ率も2%に向け上昇するとの当レポートの見方は維持する。しかしながら、FOMCの追加利上げペースについては、議事要旨や市場期待などの状況証拠から、従前予想よりペースダウンのリスクが高まっていると言わざるを得ない。

7月FOMC議事要旨:FF金利誘導目標据置はスムーズに決定

16日に公表された7月25‐26日のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合の議事要旨によれば、同会合でのFF金利誘導目標レンジの据置はスムーズに合意された模様だ。ただし、参加者による経済見通しに関する審議では、3つの論点すなわち「インフレ率」「賃金上昇率」「株式市場のバリュエーション」が議論の対象となった。また参加者による金融政策の審議では「金融政策正常化ペースとインフレ見通し」「FRBのバランスシート縮小行程」が議論となった。本レポートでは、これらの論点を概観し、その上で各論点につき点検をしていく。

7月議事要旨では「最近の軟化したインフレ率」につき、多くの(many)参加者は「最近のインフレ率低下はおそらく固有の(idiosyncratic)要因を反映したものだろう」と述べた。さらに、多くの参加者は「インフレ率が今後2、3年の間に上昇し、中期的には委員会の2%目標で安定する」と示唆した。しかしながら、同様に「多くの」参加者が「インフレ率が現状予想よりも長期にわたり2%を下回り続ける可能性」を見ていた。また数人の(several)参加者はインフレ見通しのリスクが下方に傾く可能性を示唆した。

賃金上昇率の停滞について、多数の(a number of)参加者は「金融政策に使用される多くの分析は、期待インフレ率一定のもとで物価と賃金への上方圧力が、財・サービスの総需要と雇用が長期持続的水準を上回って上昇するに伴い上昇するという枠組みに依存している」と述べた。何人か(a few)参加者は「この枠組みはインフレ予想に特段有用ではない」と述べたが、ほとんどの(most)参加者は「この枠組みは依然妥当である」と考えた。また参加者は、低インフレ率と低失業率が共存している理由について議論した。この理由として、「資源圧力に対する物価の反応度低下」「自然失業率の低下」「労働市場余剰が失業率以外の指標でよりよく計測できる可能性」「労働市場のタイト化に対する賃金上昇とインフレの反応のラグ」「グローバルな技術革新等による価格決定力への制約」などが含まれた。2,3名の参加者は資源利用率に対するインフレ率の反応が、産出と雇用が明かに完全雇用を超えてくればより強まるだろうと述べた。一方他の参加者はその非線形な応答の仮設は実証的な支持があまりないと述べた。

インフレ見通しについてはFOMC内の見方が分かれた

金融市場のバリュエーションにつき、2~3人の参加者は「好調なマクロ経済要因が現在の株価バリュエーションの背景であり、株価上昇は投資家のレバレッジ利用によるものには見えないことから、株価上昇は金融安定に明かなリスクをもたらしているとは言えない」と述べた。一方で参加者は「信用条件緩和や安定的でない資金調達への依存など、金融機関の行動を監視する必要」を議論した。

金融政策に関する議論では、ほとんどの参加者が「中期的にはインフレ率は委員会の2%目標水準に安定化する」とみていた。しかし、幾人かの(some)参加者は「最近のインフレ率低下は資源利用率がタイト化したのちにも示現しており、インフレ率見通しの不確実性が高まっているとの懸念を表明」した。彼らは「現在の環境下では、現在の低インフレ率の持続の可能性が低いという追加情報が入手されるまで、委員会はFF金利誘導目標の追加引き上げ時期の決定に忍耐強くいるべき」と述べた。これと対照的に、幾人かの他の参加者は「労働市場が既に完全雇用に達していてさらにタイト化するリスク、もしくは金融条件が2015年12月の金融政策正常化以降緩和されていることによるリスクをより懸念」した。彼らは金融緩和政策解除の遅れが委員会のインフレ目標からのオーバーシュートをもたらし、その解消にコストがかかること、もしくは緩和解除の遅れが金融安定リスクの高まりや回復困難な不均衡をもたらすことを警戒した。

FRBのバランスシート縮小の適切な時期につき、参加者は総じて、バランンスシート縮小計画の実施は「比較的早期に」開始するのが適切だとした。数人の(several)参加者は今回の7月会合で縮小計画実施時期を公表する準備があるとしたが、ほとんどの参加者は、経済見通しと金融市場に潜在的に影響する動向についての追加的情報を蓄積するため今後の会合まで決定を遅らせることを選好した。

労働生産性は短期的には上昇している

以上の7月FOMC議事要旨からは、インフレ見通しの下方リスクをみている参加者が相応の人数に達していたこと、また今後の利上げのペースにつきいずれも「幾人か」の参加者がハト派・タカ派的観点から対照的な考えを述べていたことがわかる。また、失業率低下にも拘わらず賃金が上昇しない理由についても様々な見解が述べられたことがわかる。以下ではこれらの論点につき点検を試みる。

まず、現在の賃金と失業率の関係を表すシンプルな賃金版フィリップス曲線の形状を確認する([第1図])。これによれば、時間当たり賃金(生産及び非監督雇用者、季節調整済)の前年比伸び率は7月時点で+2.4%と、ここ数四半期で回帰曲線から下方乖離する方向に低下している。失業率と賃金上昇率との逆相関関係は近年妥当しなくなっているようにも見える。しかしながら、同曲線の過去2005年~2007年の動きをみると、失業率が5%を割り込んだ時点で賃金上昇率が急上昇している。今後失業率が更に自然失業率から下方乖離する形で低下すれば、(議事要旨では否定的見解があった模様だが)今後賃金上昇が加速する可能性はあるといえる。

賃金上昇率が低下している要因として、労働生産性上昇率の低下が考えられる。米国の労働生産性上昇率(非農業企業部門)は近年低下傾向をたどっており、2016年には前年比横ばいにまで低下した([第2図])。労働生産性の低下は企業において賃金引き上げの抑制要因となることから、近年の賃金上昇率低下の要因の一つが労働生産性上昇率低下にあることが考えられる。しかしながら、ここ3四半期の間に、労働生産性が底入れして上昇に転じる兆しがみられる。2017年4-6月期の労働生産性は前年比+1.2%と、2016年7-9月期までの3四半期連続マイナスの伸びから、3四半期連続でプラスの伸びに転じている([第3図])。非農業部門雇用者数(民間部門)の伸びが前年比+1.7%程度にまで減速しているのに対し、非農業企業部門の産出は4-6月期現在で前年比+2.7%に加速していることが数字上の労働生産性上昇加速の要因である。労働市場がタイトな中、労働投入量拡大に対する制約の中で生産拡大を加速している企業行動が見て取れる。祖の中で労働生産性が上昇していることは、少なくとも短期的には企業にとり賃金引き上げを加速できる環境にあることを意味する。

[第1図]
20170827図1
[第2図]
20170827図2
[第3図]
20170827図3

自然失業率低下の証跡はない:雇用ミスマッチが賃金抑制要因

次に、自然失業率の低下の可能性について見る。[第4図]は、賃金上昇率の前年比変化がゼロ(賃金上昇ペースが加速も減速もしない)に相当する失業率を自然失業率とみなし、過去データから自然失業率を推計した結果である。これによれば、金融危機前の1995年から2007年までの四半期実績に基づく自然失業率は約5.0%、金融危機以降の2008年~2017年実績に基づくそれは約6.8%と推計される。ただし、近年の実績値は金融危機以前の回帰曲線に再び戻りつつある。金融危機前の米国の自然失業率が5%レベルにあり、これが金融危機を機に一時上昇したものの、近年は再び5%レベルに低下していることを示唆している(なお、米議会予算局が推計する2017年現在の自然失業率は4.8%、FOMC委員経済予測における長期均衡失業率は4.6%である)。しかしながら、自然失業率が金融危機以前の水準よりもさらに低下している証跡はここにはない。当レポートでは、FOMC議事要旨に見られる、自然失業率の低下が賃金上昇率低下の理由はここには見当たらない。

失業率と欠員率の関係を示すUV曲線は、金融危機以降右上方にシフトしており、自然失業率が金融危機以降むしろ上昇している可能性を示唆している([第5図])。一方、2017年現在の状況を見ると、欠員率は2002年以降で最大の水準(7月現在で4.0%)にあるのに対し、失業率は2005年時点とほぼ同じ4%台半ばにある。つまり、同じ失業率でも雇用のミスマッチにより必要な採用が進まないことにより、より多くの欠員が残っている状態である。高スキル職種の人材不足により、かかる職種の新規雇用が進まないことで、本来実現すべき賃金上昇が実現していない状態にあることが推測できる。賃金上昇率の伸び悩みは、雇用ミスマッチにより適正な賃金上昇が実現していないことが背景と考えられる。

もっとも、雇用ミスマッチがこれ以上拡大せず、欠員率上昇がこれ以上加速しなければ、失業率の低下とともにUV曲線は徐々に金融危機以前の状態に回帰していくはずである。もしくは、雇用ミスマッチにより人材不足になっているスキルの人材につき今後さらに賃金引き上げによる新規雇用または雇用確保が行われれば、今後賃金上昇率が上昇することは十分に考えうる。

[第4図]
20170827図4

[第5図]
20170827図5

インフレ率は2%にむけ上昇との予想維持:利上げペース予想には下方リスク

最後に、需給ギャップ及び期待インフレ率と、インフレ率実績との関係をアップデートしておく。米議会予算局(CBO)推計の潜在GDPに基づく需給ギャップと、ミシガン大消費者センチメント調査における12ヶ月の期待インフレ率とを外生変数とし、食品及びエネルギーを除く個人消費支出価格指数(コアPCEデフレーター)によるインフレ率実績を回帰した結果が[第6図][第1表]である。これによれば、同回帰式に基づく現在の推計コアPCEインフレ率は前年比約+1.8%と計算される。これは、6月現在の同実績である同+1.5%より幾分高い位置にある。今後コアPCEインフレ率が推計値に向けて回帰していくとすれば、年末にはインフレ率は+1.8%程度までの上昇が期待できることになる。以上より、現在の米国の低インフレ率はいずれ解消し、FOMC委員の多くの意見の通り、中期的には2%に向けて上昇していくと引き続き見ておく。

しかしながら、FRBの金融政策については、当レポートの従前予想に下方リスクが出てきている。7月FOMC議事要旨によれば、バランスシート縮小計画の実施を「比較的早期に」行うことについてはほぼ委員会内のコンセンサスができているといえるため、次回9月定例会合でバランスシート縮小開始の決定がなされるとの個人予想は維持する。しかしながらFF金利誘導目標引き上げについては、これまで当レポートで予想していた年内あと2回の利上げの可能性は後退したと言わざるを得ない。7月FOMC議事要旨によれば、「多くの」参加者が2%以下のインフレ率の長期化の可能性を見ていた。また、新たなインフレ指標が相応に上昇するまで追加利上げに慎重でいるべきとの意見が複数の参加者から出されていた。7月FOMC会合以降に公表されたインフレ指標は、6月PCEデフレーターが前年比+1.4%と前月比上昇率低下、7月消費者物価指数が同+1.7%と前月比上昇率がわずかに上昇、との結果であり、ハト派にとっては不十分な結果と言わざるを得ない。また、FF金利先物に見られる市場の利上げ期待は、9月定例会合がほぼゼロ、12月定例会合も40%以下に低下している。25日のジャクソンホールにおけるイエレンFRB議長講演でも、かかる市場期待を修正する意図の発言は見られなかった。ついては年内の追加利上げ回数については下方への修正を考慮せざるを得ない。

現在のインフレ率水準と需給ギャップからテイラー・ルールで推計されるFF金利水準が現状でも2%半ばにあること、また景気循環に基づく今後の米経済減速局面入りの可能性を勘案すれば、将来の金融政策ののりしろ確保のために、FF金利誘導目標引き上げは早期に実施することが望ましいとの当レポートの見方は不変である。しかしながら、議事要旨等に見る状況証拠は、次回9月会合ではバランスシート縮小を事実上の公約通りの決定が優先され、追加利上げ決定は見送ることがFOMC内の多数の見方である可能性を示唆していると言わざるを得ない。さらに、9月から10月にかけて到来する、連邦政府予算と連邦債務上限引き上げについて、現状目途がたっていないことも、潜在的にはFOMCの利上げペースの調整の根拠となる可能性もある。

[第6図]
20170827図6

[第1表]
20170827表1



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<経済指標コメント> 日本の4-6月期実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率+4.0%

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[日本]

実質GDP成長率(4-6月期、1次速報値)は前期比年率+4.0%

4-6月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率+4.0%と、前期の同+1.5%から急加速し、2015年1-3月期以来の高成長となった。前年比の伸び率は+2.1%と前期の同+1.4%から加速、これも2015年1-3月期以来の2%成長となった。需要項目別内訳は、家計消費が前期比年率+3.7%、住宅投資同+6.0%、設備投資同+9.9%、公的需要同+5.1%、在庫投資寄与度同+0.2%、純輸出寄与度同-1.2%。家計消費・住宅投資・設備投資を合わせた国内最終民間需要は同+5.1%と、消費税率引き上げ前の駆け込み需要のあった2014年1-3月期以来の強い伸びとなり、内需主導の成長である。いずれも家計調査、住宅着工戸数、資本財出荷といった先行指標が4-6月期にプラスの伸びだったことと整合するかそれを上回る結果である。純輸出は、財・サービス輸入の増加によりマイナス寄与となった。4-6月期の成長率は、特に家計消費の急回復が牽引して、当レポート予想を上回る結果となった。このペースだと、2017暦年成長率は前年比+1.8%、2017年度成長率も前年度比+1.8%と、予想を大きく上回る計算になる。

20170820図1

[米国]

企業在庫(6月)は前月比+0.5%、企業売上高は同+0.3%、在庫売上高比率は1.38倍

6月の企業在庫は前月比+0.5%と強めの伸び、企業売上高は同+0.3%、結果在庫売上高比率は1.38倍と7ヶ月ぶりに上昇した。6月企業在庫の3ヶ月前対比の伸びは3月のそれを下回っており、4-6月期GDP統計で在庫投資が成長にマイナス寄与したことと整合している。もっとも在庫循環図は依然在庫積み増し局面にあり、今後は再び在庫積み増しが成長にプラス寄与していくと見たい。

20170820図2

小売売上高(7月)は前月比+0.6%、除く自動車関連同+0.5%

7月の小売売上高は前月比+0.6%と昨年12月以来の強い伸び、除く自動車関連でも同+0.5%と今年1月以来の強いのびだった。内訳は、新車販売増加を反映した自動車及び同部品ディーラーが同+1.2%、家具店同+0.4%、建設資材店同+1.2%、百貨店同+1.0%などが販売を増加させた。一方、ガソリン価格低下の影響でガソリンスタンドが同-0.4%と減少したほか、家電店同-0.5%、衣服店同-0.2%などが売上を減少させた。自動車・ガソリン・レストランを除くコア小売売上高も同+0.6%と強い伸びであった。総じて個人消費は堅調な拡大に回帰しており、5月の不振が一時的なものであったことを示唆している。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+1.6%程度を予想しているが、7月小売売上高はややこれを上回るペースである。

20170820図3

住宅着工戸数(7月)は年率1155千戸(前月比-4.8%)、着工許可件数は同1223千戸(同-4.1%)

7月の住宅着工戸数は年率1155千戸(前月比-4.8%)と反落、過去6ヶ月で4回目の前月比減少となった。6ヶ月移動平均は同1188.0千戸(同-1.1%)と4ヶ月連続の低下で、住宅着工は2月のピーク以降減速傾向が続いている。4-6月期のGDP統計上の住宅投資は前期比年率-6.8%と3四半期ぶりのマイナス成長に転化したが、7月のスタートもマイナスとなった。先行指標となる住宅着工許可件数も同1223千戸(同-4.1%)と反落、6ヶ月移動平均も同1228.8千戸(同-1.0%)と下降に転じた。総じて住宅着工は供給力不足もあってか減速が続いているといえる。

20170820図4

鉱工業生産指数(7月)は前月比+0.2%、設備稼働率は76.7%

7月の鉱工業生産指数は前月比+0.2%と、5月の同横ばいを除くと5ヶ月連続の上昇。内訳は製造業同-0.1%、鉱業同+0.5%、公益事業同+1.6%。前年比伸び率は鉱工業全体が+2.2%、うち製造業同+1.2%、鉱業同+10.2%と、原油価格回復による鉱業生産の回復で総じて鉱工業生産は増加基調にある。設備稼働率は76.7%(前月比横ばい)。

20170820図5

<経済レポート> バブル予防策稼働中:米自動車ローン動向

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自動車ローンの残高や延滞の増加がバブルのリスクを孕んでいるとの見方があるが、自動車ローン市場の規模や、家計所得に対する借入負担全体の比率は極めて低位に抑制されており、バブルやその崩壊のリスクは低いと見たい。むしろ、金融機関が適切に信用条件の厳格化を実施していることが、米経済の循環的な景気減速局面入りを示唆する材料であることに留意したい。

自動車ローンの延滞率は上昇中

米国で消費者ローン、特に自動車ローンと学生ローンのバブル崩壊リスクが高まっているとの見方が、各種報道で市場に広がっている。実際、NY連銀が四半期毎に公表している「家計負債信用報告(2017年5月)」によれば、2017年1-3月期時点の自動車ローンの延滞率(90日以上)は3.82%と、2013年1-3月期以来の高水準に上昇した。また学生ローンの延滞率は10.98%と、2012年7-9月期以来現在まで10%を超える高水準にある([第1図])。また、2010年以降消費者ローン残高は早いペースで増加している。住宅ローン残高が金融危機以降減少を続けて、いまだ金融危機直前の2007年時点の残高に回帰していないのに対し、消費者ローンは2017年1-3月期時点で2007年に比べ約+44%増加している([第2図])。

2008年の金融危機は、急増していたサブプライム住宅ローンの延滞がその引き金の一つとなった。結果住宅価格が下落し住宅純資産額(住宅価格‐住宅ローン残高)は急減した。金融危機後に金融機関はサブプライム住宅ローンほか住宅ローンの審査を厳格化した。結果住宅ローン残高は2015年頃までほぼ一貫して減少傾向をたどった。現在では、住宅価格回復と住宅ローン残高減少で住宅純資産額は回復している。2017年1-3月期には持家純資産額は約13.1兆ドル、持家純資産の持家価格に対する比率は58.3%と、金融危機前のピーク水準に回復している。今後住宅ローンも緩やかな増加に転じると見る。

一方、自動車ローンや学生ローンなどの消費者ローンは金融危機後も上記の制約がなく、住宅ローンに代わり金融機関の主要なローン商品として増加したと考えられる。新車販売台数は2015~2016年に年間17百万台台のピークに達した。自動車販売増加の背景には自動車ローンの拡販、特にサブプライム自動車ローンと言われる信用度の低い債務者宛のローン供与の拡大があったといわれている。

[第1図]
20170814図1

[第2図]
20170814図2

自動車ローン市場規模は住宅ローンの10分の1

しかしながら、自動車ローンが新たな金融危機をもたらす大きなリスクを孕んでいるとは考えにくい。以下に見るように、サブプライム住宅ローンに比べて自動車ローンなどの消費者ローン市場規模ははるかに小さく、またすでに金融機関は審査厳格化などの対応策をとっていると見ることができるからである。自動車ローンについては2年半前にそのバブル懸念はないとの見方を当レポートで示していた(2015年2月11日付当レポート参照)。以下では、その後の消費者ローンの状況を点検しつつ、自動車ローンをはじめとする消費者ローンの状況と経済への影響につき見ていく。

自動車ローン・学生ローン・クレジットカード等の消費者ローンの合計残高は2017年1-3月期現在で約3.8兆円。うち自動車ローンが1.1兆円、学生ローンが1.4兆円、クレジットカード等のリボルビングローンが約1.0兆円となっている([第3図])。これは、住宅ローン残高の9.8兆円に比べるとその約3分の1の規模である。うち自動車ローンの残高規模は住宅ローンの約10分の1にすぎない。

住宅ローンと消費者ローンを合わせた家計のローン借入残高の可処分所得に対する比率は、金融危機前の2007年の120%超をピークに低下を続けており、現在では100%を割り込む低水準になっている([第4図])。ローンの返済額の可処分所得に対する比率を表すデット・サービス・レシオも、同じく2007年をピークに現在に至るまで低下を続けている。もっともその内訳は、住宅ローン返済額の減少が大きく寄与しており、消費者ローン返済額についてのデット・サービス・レシオは2013年をボトムに上昇している([第5図])。だが、消費者にとって住宅ローンや消費者ローンを合わせた返済負担率は、金融危機以降確実に軽減が続いていることになる。

[第3図]
20170814図3

[第4図]
20170814図4

[第5図]
20170814図5

金融機関も信用条件を厳格化している

信用度の低いいわゆるサブプライム自動車ローンの規模も、自動車ローン全体の1.1兆ドルのうち2130億ドル程度とされている(7月7日付CNBC報道)。これは金融危機前のサブプライム住宅ローンは(住宅ローン残高約10兆円の15%程度の約1.5兆ドルと推測される)の約7分の1の規模である。また、自動車ローン証券化商品の残高は1923億ドル程度(4月27日付Bloomberg社報道)とされており、住宅ローン証券化商品(住宅ローン残高の約半分以上が住宅公社またはABS発行体により証券化されている)に比べきわめて小さい。仮に自動車ローン延滞が証券化商品の価格下落を通じて金融機関や投資家に損失を与えたとしても、その影響は限定的といえるだろう。

金融機関側の対処も適切に行われている。FRBのシニアローンオフィサー・サーベイによる、自動車ローンとクレジットカードローンの信用条件厳格化DIの推移が[第6図]である。これによれば、金融機関は自動車ローンとクレジットカードローンの審査基準を昨年後半から厳格化している傾向が明らかである。自動車ローンの延滞率上昇に伴い、金融機関側も審査厳格化で不良債権増加を抑制する対応を実施していることがわかる。また、ローンの需要自体も減少傾向にある([第7図])。自動車についていえば、昨年の年間17百万台という販売台数は経験側的にはほぼ販売飽和状態に近く、今後販売台数は減速すると当レポートでは見ていた。今年に入ってからの新車販売台数の減少と、本サーベイによる需要減少はこの見方と整合している。

家計バランスシート全体も健全である。2017年1-3月期現在で、家計負債の対GDP比率は79.5%と、金融危機前の99%台をピークに現在まで一貫して低下傾向にある([第8図])。家計全体で見れば現在の借入残高は過大ではないといえる。所得に対する返済額も歴史的には低水準にあることも上記で見た通りである。

[第6図]
20170814図6

[第7図]
20170814図7

[第8図]
20170814図8

バブルの懸念なくソフトランディング可能

以上から、自動車ローンを含む消費者ローン市場は決してバブル状態にあるとは言えず、これが崩壊して金融システムに悪影響を与える可能性は低いと見ておきたい。一時急速に拡大した自動車ローンが適度なペースの増加に調整されつつあることは、金融危機の反省が金融機関においても生かされていることの反映であろう。

むしろ、自動車販売の減速や信用条件の厳格化は、中期的な信用サイクルの観点から、今後米経済が循環的な減速に向かうことを示唆する材料であることに留意したい。昨年まで個人消費拡大のけん引役だった自動車販売は、今後は個人消費拡大の足かせ要因になりうる。バブル時代であればかかる環境下ではサブプライム自動車ローン拡販が消費を強引に押し上げるところ、今回は既に適度な歯止めがかかっている。自動車ローンのみならず米経済全体もほぼ需給均衡状態にあり、ここから緩やかに成長が減速するというのが当レポートの見方である。バブル崩壊に至る前に適度な成長減速により経済がソフトランディングすることは、経済の急悪化を回避するためにも望ましいことである。また、その為には金融政策においても今の段階から漸進的な金融緩和解除を継続してバブル発生を未然に防ぐのが適切といえよう。

上記の見方に対するリスクシナリオは、学生ローンも含めた消費者ローン延滞が予想に反して金融システムに波及するシナリオである。もう一つは、FRBの金融緩和解除にかかわらず経済が過熱してその反動によるバブル崩壊が起きるシナリオである。現在NYダウは22000ドル台の史上最高値を更新たが、水準的には高値警戒感を持ってしかるべきレベルである。S&P500の株価収益率は21倍を超え、90年代後半のITバブル期の水準に近づいている。

<経済指標コメント> 米7月消費者物価指数は前年比+1.7%

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[日本]

景気ウォッチャー調査(7月):現状判断DIは49.7(前月比-0.3ポイント)、先行き判断DIは50.3(同-0.2ポイント)

7月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは49.7(前月比-0.3ポイント)と4ヶ月ぶりの低下。家計動向関連DIは横ばいだったが、企業動向関連、雇用関連が低下した。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは50.3(同-0.2ポイント)と反落。雇用関連DIが上昇したが、家計動向関連・企業動向関連が低下した。総じて街角景気は、年初からも持ち直しが続いているもののここ2、3ヶ月は一服感があるといえる。景気判断理由としては「気温の上昇に伴いエアコンを中心とした季節商材の販売が伸びている(家電量販店)」「宿泊については、インバウンドは引き続き好調(都市型ホテル)」などの良い要因の一方、「製品単価の値上げや工法によるコストアップ、人件費の高騰(建設業)」「人手不足(同)」などコスト増による先行き懸念を示すものがみられる。

20170812b図1

機械受注(6月、船舶・電力を除く民需)は前月比-1.9%(前年比-5.2%)

6月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比-1.9%(前年比-5.2%)と前月比で3ヶ月連続減少、前年比でも3ヶ月ぶりのマイナスとなった。結果4-6月期の同受注は前期比-4.7%と2四半期連続のマイナスとなった。経済産業省鉱工業生産指数統計による4-6月期の資本財受注は前期比プラスを確保しており、4-6月期GDP統計における設備投資は3四半期連続のプラス成長になりそうだが、受注の減少はその後の持続性に対する下方リスク要因である。

20170812b図2

[米国]

消費者物価指数(7月)は前月比+0.1%(前年比+1.7%)、同コア指数は前月比+0.1%(前年比+1.7%)

7月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.1%(前年比+1.7%)と3ヶ月ぶりの前月比上昇で、前年比上昇率も5ヶ月ぶりに上昇に転じた。前月比では、前月まで2ヶ月連続低下していたガソリンが7月は横ばい、衣服(同+0.3%)、医療財(同+1.0%)、医療サービス(同+0.3%)などが上昇した。一方で新車(同-0.5%)、中古車(同-0.5%)などが下落した。食品及びエネルギーを除くコアCPIは前月比+0.1%(前年比+1.7%)と4ヶ月連続上昇、前年比伸び率は横ばいだった。年初から低下傾向にあるCPIインフレ率は7月単月ではいったん低下に歯止めがかかった形である。今後原油価格が安定推移すれば、年末の総合CPIインフレ率は前年比+1.3%、コアCPIインフレ率は+1.5%程度になると見ている。これは当レポートの想定を下回るペースであるが、FOMCの金融緩和政策解除を妨げる要因にはならないと見る(8月12日付<経済レポート>参照)。

20170812b図3



<経済レポート> 需要超過に備えよ:FRB金融政策見通し

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米インフレ率は今年に入り低下傾向が続き、7月FOMCでは利上げが見送られた。しかしながら、現在のインフレ率は金融緩和解除継続を正当化するに十分な水準にある。また景気サイクルがまもなく転換する可能性を勘案すれば、金融政策ののりしろ確保のために利上げは早期に実施するのが望ましいと引き続き見ておく。

7月FOMCではインフレ基調判断が下方修正

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)は7月25-26日の定例会合で、FF金利誘導目標レンジを1.00-1.25%に据え置くことを決定した。会合後の声明文の内容は前回6月会合と本質的に変更はない。ただし、直近のインフレ率につき、前回声明文では「2%を幾分下回って推移している」とされていたのが、7月声明文では「いくぶん」が削除され、基調判断が下方に修正された。前回6月会合時点で判明していた個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率は4月分の+1.7%、7月会合時点で判明していたそれは5月分の+1.5%であった。この実績値からは、声明文のインフレに関する基調判断がやや後退したのは自然なことといえるだろう。

また、バランスシート縮小に関するパラグラフでは、委員会がバランスシート正常化を「相対的に早期に」開始すると予想している、とされた(前回声明文では「年内に」)。これは、イエレンFRB議長が7月12日下院金融サービス委員会での半期金融政策報告の質疑で「バランスシートの正常化は相対的に早期に開始すべき」と発言した(報道による)ことと整合している。7月FOMC声明文の内容はこれ以外にこれまでの金融政策予想に影響を与える材料はない。FOMCが今後9月、12月の定例会合でそれぞれ+0.25%の利上げを決定、また9月会合ではバランスシート正常化の決定がなされるとの個人予想を維持する。

7月声明文でインフレに関する判断が下方に微修正されたこと、また遡って7月12日の半期議会証言でイエレンFRB議長が「インフレは委員会の長期目標2%を下回って推移し続けている」と証言していたことは、FOMCがハト派方向にシフトしつつある材料と市場の一部では受け取られた模様だ。結果いずれのイベントにおいても、直後に長期金利は低下、株価は上昇した。しかしながら筆者個人は、現在のインフレ率は現在の金融緩和解除を継続するに十分な水準であり、かつ今後もインフレ率はほぼ安定的に推移すると見ている。さらに、今後の景気循環見通しを勘案すれば、利上げは早期に実施したうえで将来の金融政策ののりしろを確保することが適切であると見る。

需給ギャップ縮小によりインフレ率は2%を目指す

まず、低下傾向にあるインフレ率の今後の見通しと金融政策の関係を見ていく。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、6月時点で総合指数が前年比+1.4%、食品及びエネルギーを除くコア指数が同+1.5%で、いずれも年初をピークに今年に入り低下傾向にある。今年に入ってからのインフレ率低下要因の一つは、2015年の原油価格急落要因が2016年に剥落して前年比インフレ率を押し上げていた効果の剥落である。今後原油価格が1バレル=50ドル前後で安定推移した場合、年末のPCEインフレ率は同+1.4~+1.6%と、現状比横ばいからやや強含み推移する計算になる。なお、消費者物価指数(CPI)は7月時点で総合指数、コア指数ともに同+1.7%だった。総合CPIインフレ率は5ヶ月ぶりの上昇であり、CPIについてはインフレ率低下に一時的には歯止めがかかった形だ。

インフレ率と需給ギャップの関係からは、インフレ率は今後、FOMCが予測するとおり約2%に向けて上昇していく可能性が読み取れる。米議会予算局(CBO)の6月「財政・経済見通しアップデート」における推計潜在GDPをもとに現在の米経済のマイナス需給ギャップを計算してみると、2017年4-6月期現在で-0.3%にまで縮小している。今後仮に米経済が2%ペースで成長した場合、2018年にはマイナスの需給ギャップは完全に解消する計算になる([第2図])。なお、CBOは6月の「見通しアップデート」において潜在GDP推計値を前回1月時点の推計値にくらべ下方改訂している。米経済のマイナスの需給ギャップは従前の認識よりもさらに縮小していることになる。

コアPCEインフレ率と需給ギャップの関係を示すシンプルなフィリップス曲線を描いてみると、需給ギャップゼロ(需給均衡)状態に対応するインフレ率は約+1.8%と推計できる([第3図])。なお、需給均衡状態に対応するインフレ率の過去の推移を40四半期ローリング回帰で推計してみると、2002年以降の平均値は約+1.9%となった。現在の均衡インフレ率+1.8%は、2014年をピークに低下局面に位置しているものの、過去に比べて大きく低下しているものではない([第4図])。

[第1図]
20170812図1

[第2図]
20170812図2

[第3図]
20170812図3

[第4図]
20170812図4

テイラー・ルールは2%以上のFF金利を示唆している

テイラー・ルールによる推計では、現在のインフレ率と需給ギャップから推計される適正FF金利は2%を超える位置にある。CBOの6月時点の潜在GDP推計値と、2017年4-6月期までのGDP統計とPCEインフレ率とをもとに適正FF金利を推計してみると、2017年4-6月期の適正FF金利は2.51%(自然利子率=1.5%とした場合)、2017年10-12月期のそれは2.83%となった([第5図])。CBOによる潜在GDP推計値の下方改訂により、適正FF金利水準推計値も従前に比べて高い結果となっている。

以上より、今後米国のインフレ率は年内ほぼ現状と横ばいの水準で推移、また中期的にはFOMCの2%目標値に向かって上昇していくと見る。さらに米経済のマイナス需給ギャップ縮小により、適正なFF金利水準は今や2%を超える水準にある。したがって、FOMCが現在のインフレ率が2%を下回って推移していることを理由に、利上げペースを減速させる必要はないことになる。

なお、上記テイラー・ルール公式において、自然利子率(実質中立金利)を1.5%としている背景は以下である。実質中立金利を、①GDP実績のHPフィルター平滑化、②CBO推計の潜在成長率、③米国債10年物利回りとCPIインフレ率実績値から算出した実質長期金利実績のHPフィルター平滑化、の3通りの方法で推計すると、それぞれ①2.1%、②1.6%、③0.8%と大きなばらつきができる。ここでは、3つの推計値の中央に位置する1.5%を実質中立金利とみなしている。イエレンFRB議長の発言(7月12日議会証言など)やFOMC議事要旨からは、FOMCが現在の中立実質金利を「歴史的基準に比して極めて低い」とみている。FOMCが想定する実質中立金利水準は定かではないが「極めて低い」との語感からはおそらく1%前後とみていると憶測できる。仮に中立実質金利が1%であったとしても、現在の適正FF金利は2%水準にある計算になる。この場合実質中立金利水準の低下もFOMCが金融緩和解除を停止する材料にはならないといえる。

[第5図]
20170812図5

[第6図]
20170812図6

景気循環はまもなく下降サイクル入りの可能性がある

次に、米国の景気循環の状況を見る。景気が1、2年の間に転換する可能性を勘案すると、FF金利誘導目標は早めに引き上げておき、金融政策ののりしろを確保しておくのが妥当であることは従前より当レポートで述べてきたところである(3月5日付当レポートなど)。上述のCBO推計潜在GDPに基づけば、マイナス需給ギャップはほぼ解消しており、このまま2%程度の成長が継続すれば、2018年に米経済は需要超過状態になる。直近の直前で米経済が需要超過状態だったのは2006-2007年の2年間だけである。この間、四半期ベースでの米経済の最大のプラス需給ギャップは2006年1-3月期の+0.5%だった。米経済において需要超過状態は需要不足状態にくらべて短期間にとどまる傾向がある。つまり需要超過状態になった時点で次の景気循環の転換が1-2年以内に訪れることを想定しておく必要がある。

米経済のトレンドとサイクルを別な方法で抽出してみる。1992年~2017年の四半期実質GDPデータをHPフィルターで平滑化した結果が[第7図]である。この推計値を経済のトレンドとみなして、GDP実績値のトレンドからの乖離を需給ギャップとみなすと、米経済は既に2015年に需要超過がピークアウトしている。2017年4-6月期現在は下降サイクルにあって需給ギャップは-0.1%のマイナスとなっている([第8図])。

HPフィルターで抽出したトレンドに照らした景気サイクルは既に下降局面にあると考えると、米経済成長ペースは今後1、2年の間に減速していき、ここでも1、2年の間にマイナス成長に陥る可能性もあることになる。なお、失業率は7月現在で4.3%と、CBO推計による自然失業率4.7%をすでに大幅に下回っている。

米経済は現在決して過熱しているとは言えず、ほぼ需給均衡の心地よい状態にあるといえる。しかし、今後株価上昇等を背景に経済が潜在成長率を超えるペースの拡大を継続すれば、1、2念の間には需要超過状態になり、景気サイクルが転換する可能性がある。その際に、FF金利誘導目標引き下げによる金融緩和実施を可能にするためには、FF金利誘導目標水準を相応に高めておくことが必要となる。

[第7図]
20170812図7

[第8図]
20170812図8

[第1表]
20170812表1

<経済指標コメント> 米7月非農業部門雇用者数は前月比+209千人

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[日本]

鉱工業生産指数(6月)は前月比+1.6%(前年比+4.9%)

6月の鉱工業生産指数は前月比+1.6%と反転上昇、前年比でも+4.9%と高水準の伸びとなった。出荷指数は前月比+2.3%、在庫指数同-2.2%、在庫率指数同-2.1と、出荷増により在庫が減少した形。生産指数の3ヶ月移動平均の前年比伸び率は+5.6%と高水準かつ上昇基調を保っており、昨年後半以来の鉱工業生産の持ち直し継続を示唆している。在庫循環図は在庫積み増し局面にあり、今後企業在庫が成長にプラス寄与する可能性を示唆している。企業設備投資の先行指標となる資本財出荷指数は同+0.8%と反転上昇。4-6月期の同指数は前期比+2.9%と前期の同-0.2%から大幅プラス成長に転じた。4-6月期GDP統計における設備投資が3四半期連続のプラス成長を維持する可能性を示唆する結果である。公表元の経済産業省は「生産は持ち直しの動き」との基調判断を維持している。

20170806図1

住宅着工戸数(6月)は年率1003千戸(前月比+0.6%)

6月の住宅着工戸数は年率1003千戸(前月比+0.6%)と反転増加、前年比でも+1.7%と増加に転じた。住宅着工戸数は引き続き高水準で増加傾向を維持している。また4-6月期の着工戸数は前期比+2.7%と、2四半期連続のプラスかつ伸びが加速した。4-6月期GDP統計では住宅投資が前期に続きプラス成長となる可能性を示唆する結果である。

20170806図2

[米国]

実質個人消費(6月)は前月比横ばい、PCEデフレーターは前年比+1.4%、同コア同+1.5%

6月の実質個人消費は前月比横ばい。内訳は耐久消費財同-0.1%、非耐久消費財同-0.2%、サービス同+0.1%とすべての項目がほぼ横ばいにとどまった。自動車販売の減速と、小売売上高の伸び悩みという先行指標と概ね整合する結果である。しかしながら、3月の急増による発射台上昇で、数字上4-6月期の実質個人消費は前期比年率+2.8%と、前期の同+1.9%から大幅加速した。このペースだと7-9月期にも同+2%レベルの消費拡大は十分に期待できる。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比横ばい(前年比+1.4%)、食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは前月比+0.1%(前年比+1.5%)。いずれもFRBが目標とする2%を下回って推移している。原油価格が今後1バレル=50ドル前後で安定推移した場合年末のPCEインフレ率は前年比+1.5%、コアPCEインフレ率は同+1.6%程度と試算できる。インフレ率は当レポートの見通しをやや下回って推移していると言わざるを得ないが、+1%台半ばのインフレ率は、FOMCの継続的な利上げを妨げるものではない。なお、テイラールールによる推計では、現在のインフレ率と需給ギャップに対応する適正FF金利水準は約2%強と計算される。

20170806図3

新車販売台数(7月、乗用車及び軽トラック)は年率16.69百万台(前月比+0.6%、前年比-6.0%)

7月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率16.69百万台(前月比+0.6%、前年比-6.0%)と、前月比では3ヶ月ぶりに増加に転じたものの、前年比では-6.0%と7ヶ月連続で前年同月を下回り、かつマイナス幅は拡大した。昨年末の年率18百万台台をピークに飽和状態になったと見られる新車販売は減速が続いている。今後も自動車販売は横ばい程度の推移にとどまりそうだ。

20170806図4

雇用統計(7月):非農業部門雇用者数は前月比+209千人、失業率は4.3%

7月雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+209千人と強い伸び、上方改訂された6月同+231千人に続き2ヶ月連続で同+200千人を超える増加となった。3ヶ月移動平均は同+195.0千人と200千人に接近して上向きになっている。非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は+1.5%と概ね当レポートの見通しに沿った推移である。業種別内訳は、鉱業同+6千人、製造業同+16千人、小売業同+0.9千人、専門ビジネスサービス同+49千人、教育・医療業同+54千人と広い業種で雇用が増加、雇用増加業種の割合を示すディフュージョンインデックスは63.2と2月以来の高水準となった。ただし、小売業の雇用が相対的伸び悩んでしているのは個人消費の更なる減速の可能性を示唆している可能性があり留意したい。また、時間当たり賃金(生産及び非監督雇用者)は前年比+2.4%と依然伸び悩んでいる。家計調査による失業率は4.3%と、前月比-0.1%ポイントの低下。内訳は労働力人口と就業者数のいずれもが増加しており、労働市場の拡大を伴う良い失業率低下といえる。総じて米雇用市場は、中期循環的な減速を伴いつつも堅調な拡大を維持している。時間当たり賃金、週平均労働時間、非農業部門雇用者数の前年比の伸びを合わせた名目購買力は前年比+3.9%と、1%台半ばのインフレ率を差し引いても、実質ベースで同+2%台の個人消費の拡大が維持できる計算になる。FOMCが年内に+0.25%づつあと2回の利上げを決定するとの個人予想を支持する結果である。

20170806図5