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<経済レポート> 需要超過に転換:米経済定点観測

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米経済は7-9月期にも+3%の強い成長を見せた。これにより米経済のマイナスの需給ギャップは解消し、需要超過に転じた模様である。需給のタイト化はインフレ圧力をもたらし、FRBの継続的な利上げを促すだろう。もっとも米経済が中期循環的な減速にまもなく入るとの見方は不変である。

マイナスの需給ギャップは解消した

米7-9月期実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+3.0%と、2四半期連続の3%成長となった。当レポートでは、米経済は中期の循環的減速局面に入っていると見ているが、こうした見方を上回る拡大ペースである。もっとも、2017年は1-3月期に大幅に成長が減速(同+1.2%)したため、4-6月期以降の反動によっても2017年通年の成長率は前年比+2%台前半と、6月時点の筆者個人予想(前年比+2.1%)からわずかな上ブレにとどまる見込みである。

一方で、潜在成長率を超える成長の継続により、米経済のマイナスの需給ギャップは7-9月期で解消したと見られる。米議会予算局(CBO)推計による2017年7-9月の潜在実質GDPは17兆1260億ドル(2017年6月「CBO財政経済見通し」による)、これに対し7-9月期GDP統計上の実質GDPは17157億ドルと、2007年10-12月期以来約10年ぶりに潜在GDPを上回った。10年来の米経済のマイナスの需給ギャップは解消して、わずかながら需要超過(約+0.2%)に転じたことになる。今後米経済が年率+2%の成長を継続すれば、2018年末には米経済の需給は約+0.6%の需要超過になる計算になる。金融危機直前の最大の需要超過幅は2016年1-3月期の+0.5%であった。米経済は近々、金融危機前を上回る需要超過になる可能性がある。

需給の引き締まりはインフレ圧力の高まりにつながる。[第2図]は、需給ギャップとコア個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率との相関をみたものである。この回帰式によれば、需給ギャップゼロ(需給均衡)状態に対応するコアPCEインフレ率は約+1.8%となる。FRBの目標とする2%インフレ率は需給ギャップが解消した状態で概ね達成できることになる。もっとも、本回帰式によれば、2%のインフレ率を実現するには需給ギャップが+2%の需要超過になる必要がある。90年代以降の最大の需要超過は2000年1-3月期の+2.0%である。つまり2%のインフレ率達成には相当な景気過熱が必要になる計算となる。ここからは、米国の持続的なインフレ率は2%をやや下回る水準とみておくのが妥当であろう(8月12日付当レポート参照)。ともあれ、今回のGDP統計は、FRBが今後もFF金利誘導目標の引上げを継続することを支持する結果といえる。

[第1図]
20171030図1

[第2図]
20171030図2

個人消費は反動でやや減速へ

以下、需要項目ごとに米経済に現状を点検し10-12月期の動向を占う。個人消費は7-9月期にも前期比年率+2.4%の堅調な拡大を見せた。しかし10-12月期はさらに減速して同+2%レベルの成長になると見る([第3図])。7-9月期の個人消費の拡大は、9月の新車販売の急増に押し上げられた要因が大きい。9月の新車販売台数は年率18.5百万台(前月比+15.3%)と、ハリケーンの影響と見られる8月の減少と自動車の棄損分をカバーして余りある増加となった。今後自動車販売台数は再び年率17百万台前後の巡航速度に減速していくと見る。

また、雇用増加ペースの中期循環的な減速も引き続き中期的な個人消費の抑制要因となろう。ハリケーンの影響で非農業部門雇用者数は9月に減少に転じたが、それ以前から非農業部門雇用者数の前年比の伸び率は8月時点で+1.4%と、2016年平均の同+1.8%から大幅に減速している。失業率は既にほぼ1年間自然失業率を下回っており、労働市場は既に需要超過状態にある。この状態からは、雇用増加ペースは今後も減速していくと見られる。賃金上昇率は雇用市場のタイト化に遅行して伸び悩んでいる。一方でインフレ率は原油価格の持ち直しで7月辺あたりをボトムに上昇に転じている。

結果、家計の実質可処分所得の伸び率は前年比+1%強にとどまっている。現在の実質個人消費の伸び率は、可処分所得の伸びを大幅に上回るペースとなっている。可処分所得の伸びに比して大幅な個人消費の伸びは今後持続的とは言いにくいであろう。

[第3図]
20171030図3

[第4図]
20171030図4

設備投資拡大は続こう

設備投資は、昨年の不振から脱却して2017年は拡大が続いている。7-9月期のGDP統計上の設備投資は、構造物投資の同-5.2%マイナス転化により前期比年率+3.9%と減速したが、機器投資は同+8.6%と2四半期連続で+8%台の強い伸びを維持した。10-12月期GDP統計上の設備投資は再び同+6%程度の強い伸びが続くと見る([第5図])。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機を除く)が、7-9月期に前期比+11.6%と2014年7-9月期以来の強い伸びとなっていることが、9月以降の設備投資の持続的拡大を示唆している。

企業収益動向も設備投資の追い風となりそうだ。4-6月期の企業収益(在庫評価及び資本減耗調整後)は前年比+6.4%と堅調な伸び、うち原油価格下落の影響を受けた石油と公益事業を除く非金融機関の収益は同+5.9%と5四半期ぶりにプラス成長に転じた([第6図])。また、企業ネットキャッシュフローは企業収益を上回る増加を見せており、7-9月期時点で4四半期連続の前年比プラスの伸びを維持している([第7図])。

設備投資を抑制する要因は設備稼働率の低さである。当レポートでは、設備投資は企業ネットキャッシュフローと設備稼働率を決定要因として説明できると見ている([第1表]、及び1月9日付当レポート参照)。同回帰分析によれば、2016年以来の設備稼働率低下が向こう半年ほどは設備投資を押し下げる要因になると見ざるを得ない。しかしながら設備稼働率も今年の4月頃から上昇に転じ始めていることから、来年には再び設備投資を押し上げる要因となるだろう。

[第5図]
20171030図5

[第6図]
20171030図6

[第7図]
20171030図7

[第1表]
20171030表1

FRBの利上げは継続を見込む

住宅投資は、GDP統計上7-9月期まで2四半期連続のマイナス成長となった([第8図])。住宅着工戸数は9月まで3ヶ月連続で減少するなどやや減速状況にある。しかしながら、住宅販売在庫は中古住宅を中心に低位にあり、住宅市場の需給は依然タイトである。今後住宅供給力が確保できれば、10-12月期にはこれまでの反動で再び住宅投資はプラス成長に転じると見たい。財・サービス輸出入は、今年に入りいずれも増加ペースを速めたが、7-9月期にやや一服感がみられた。しかし、欧州・アジア等の海外景気は依然堅調でありまた今年に入ってからのドル安傾向は輸出増加に寄与すると見る。純輸出は10-12月期にも成長にプラスの寄与をすると見る。

以上から、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率約+2%強、2017年通年の成長率は前年比+2%強と見ておきたい。ハリケーン影響にも関わらず潜在成長率を上回る成長を続けている米経済であるが、中期的には今後減速局面に入っていかざるを得ないと引き続き見る。

FRBの金融政策については、12月のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)会合で+0.25%の追加利上げが決定されると個人予想する。その後来年については、2月で任期満了となるイエレンFRB議長の後任人事に左右されるところもある。しかしながら、上記の米経済の需給タイト化、インフレ率の持続的上昇見通しからは、9月時点のFOMC委員経済予測中央値で示されたように2018年には3回の利上げ、もしくはそれ以上の利上げが実施されると見ておく。

[第8図]
20171030図8

[第9図]
20171030図9

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<経済指標コメント> 米7-9月期実質GDP成長率は前期比年率+3.0%

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[日本]

全国消費者物価指数(9月、生鮮食品を除く総合)は前月比横ばい(前年比+0.7%)

9月の全国消費者物価指数、生鮮食品を除く総合(いわゆるコアCPI)は前月比横ばい、前年比では+0.7%と前月並みの伸び率。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(いわゆる新コアコアCPI)は前月比横ばい、前年比+0.2%とこれも前月並みの伸び率。ガソリン(前年比+7.1%)、電気代(同+7.9%)などエネルギー関連が前年比上昇率に寄与。エネルギー全体は前月比+0.2%(前年比+7.6%)と、前年比伸び率に+0.52%寄与した。引き続きエネルギーがCPIインフレ率を底支えしているものの、CPIインフレ率の年初からの上昇基調を継続している。今後原油価格が安定推移すれば2018年にはコアCPIインフレ率は前年比+1%台に加速する計算になる。経済ののりしろの縮小でインフレ圧力は徐々に高まりの兆しを見せている。

20171029図1

[米国]

新築住宅販売戸数(9月)は年率667千戸(前月比+18.9%)、在庫期間は5.0ヶ月

9月の新築住宅販売戸数は年率667千戸(前月比+18.9%)の大幅増、単月の販売戸数は2007年10月以来の水準となった。地域別内訳は、北東部同+33.3%、中西部同+10.6%、南部同+25.8%、西部同+2.9%とすべての地区で販売が増加した。販売増加に伴い在庫期間は5.0ヶ月と前月の6.0ヶ月から大幅短期化した。9月の販売急増の背景は定かではないが、一部にハリケーン被害からの復興需要があると考えられる。結果新築住宅販売戸数のトレンドは再び上昇基調に回帰、6ヶ月移動平均は同604.2千戸(同+0.8%)と3ヶ月ぶりに上昇に転じた。中古住宅販売が相対的に減速しているのに対し、新築住宅販売の増加基調が持続するかは来月以降の指標で注視したい。

20171029図2

耐久財受注(9月)は前月比+2.2%、除く運輸関連同+0.7%、非国防資本財受注(航空機を除く)同+1.3%、同出荷同+0.7%

9月の耐久財受注は前月比+2.2%、除く運輸関連同+0.7%。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機を除く)は同+1.3%と3ヶ月連続で増加、GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同+0.7%と強めかつ8ヶ月連続の増加。結果7-9月期の同受注は前期比+11.6%、同出荷は同+10.6%といずれも2桁の強い伸びとなった。企業部門の設備投資拡大基調が今年の初めころから持続的になっていることを示唆している。なおこの後公表された7-9月期GDP統計では、設備投資(機器投資)は前期比年率+8.6%と強い伸びかつ4四半期連続のプラス成長となった。受注の増加からみて、10-12月期の設備投資も強めの伸びとなりそうだ。

20171029図3

実質GDP成長率(7-9月期、速報値)は前期比年率+3.0%

7-9月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+3.0%と予想以上の成長ペースとなり、前期の同+3.1%に続き2四半期連続の+3%成長となった。需要項目別内訳は個人消費同+2.4%、設備投資同+3.9%、住宅投資同-6.0%、政府支出同-0.1%、在庫投資寄与度同+0.73%、純輸出寄与度同+0.41%。個人消費の減速(前期同+3.3%)、設備投資のプラス成長、住宅投資のマイナス成長はいずれもほぼ予想通り。在庫の増加ペース拡大が上ブレ要因である。個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要は同+2.2%と前期の同+3.3%から減速した。
総じて米経済は強い拡大を続けているものの内需部分は前期の反動でやや減速しているというほぼ想定通りの内容となった。8月末から9月にかけて米国を襲ったハリケーンの影響も限定的である。米議会予算局(CBO)推計による米潜在GDPに照らせば、米国のマイナスの需給ギャップは解消して、わずかな需要超過(筆者試算では同+0.1%)に転じた計算になる。米経済需給はタイト化が進んでおり、これに伴うインフレ圧力が徐々に高まっていくと見たい。

20171029図4

<経済指標コメント> 米9月住宅着工戸数は年率1127千戸(前月比-4.7%)

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[米国]

鉱工業生産指数(9月)は前月比+0.3%、設備稼働率は76.0%

9月の鉱工業生産指数は前月比+0.3%と3ヶ月ぶりの上昇。内訳は製造業同+0.1%、鉱業同+0.4%、公益事業同+1.5%。設備稼働率は76.0%(同+0.1%ポイント)とこれも3ヶ月ぶりに上昇した。8月末~9月に米国南部を襲ったハリケーンの影響は鉱工業生産には見られない。自動車生産台数(乗用車及び軽トラック)は年率10.56百万台(同+2.2%)と2ヶ月連続の増加となったが、前年比では-11.5%と、2017年に入ってから前年比の生産減少がつづいている。

20171022図1

住宅着工戸数(9月)は年率1127千戸(前月比-4.7%)、着工許可件数は同1215千戸(同-4.5%)

9月の住宅着工戸数は年率1127千戸(前月比-4.7%)と3ヶ月連続の減少。内訳は北東部同-6.2%、中西部同-20.2%、南部同-9.3%、西部同+15.7%。と4地区中3地区で着工が減少。南部の着工減少にはハリケーンの影響もあると見られる。住宅着工全体の6ヶ月移動平均は同1165.8千戸(同-0.9%)と4月以来6ヶ月連続の低下で、住宅着工は年半ば以来減少基調にあるといえる。7-9月期の住宅着工戸数は前期比-0.1%と3四半期連続のマイナスとなった。4-6月期に3四半期ぶりにマイナス成長となったGDP統計上の住宅投資は、7-9月期にも連続のマイナス成長となるリスクが高まっている。住宅着工許可件数は同1215千戸(同-4.5%)と減少。6月移動平均は同1231.3千戸(同-0.6%)とこれも弱含みである。

20171022図2

中古住宅販売戸数(9月)は年率5390千戸(前月比+0.7%)、在庫期間は4.2ヶ月

9月の中古住宅販売戸数は年率5390千戸(前月比+0.7%)と4ヶ月ぶりの小幅増加。内訳は北東部同横ばい、中西部同+1.6%、南部同-0.9%、西部同+3.3%。ハリケーンの影響と見られる南部の減少を除く3地区で販売が増加した。しかし、年初辺りをピークとする販売の減少基調は不変で、前年比の伸びは-1.5%と14ヶ月ぶりのマイナスとなった。在庫期間は4.2ヶ月と前月比横ばいで、依然需給はタイトといえる。中央販売価格は+4.2%と、堅調な価格上昇が継続している。公表元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「国内のほとんどの地域での消費者の強い購入意欲にも拘わらず中古住宅販売は今年の最低水準から抜け出せていない」として「特に低価格帯の在庫不足と価格上昇」をその理由に挙げている。

20171022図3

<経済レポート> 年内追加利上げを支持:9月FOMC議事要旨

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9月FOMC議事要旨の内容は、年内の追加利上げ予想を支持するものであった。もっとも来年以降の中期的なFF金利引き上げペースについては慎重な意見が意外に多く、ややハト派的内容だったと言わざるを得ない。しかし、テイラー・ルールは既に現状においても2%台半ばの適正FF金利を示唆している。また今後のFRB人事によってはよりタカ派な執行部形成の可能性もある。来年の利上げペースは少なくとも3回、FF金利2%台への引き上げを見ておきたい。

多くの参加者は2%インフレへの回帰を支持した

FRBのバランスシート縮小開始を決定した9月19-20日のFRB公開市場委員会(FOMC)議事要旨が11日に公表された。議事要旨によれば、バランスシート縮小自体は大きな議論の余地なく全会一致で決定された模様である。9月FOMC議事要旨の他のポイントは大きく2点あると見る。一つは賃金やインフレ見通しに係る議論、もう一つは今後のFF金利誘導目標引き上げペースに係る議論である。

まず、賃金とインフレに係る議論について。議事要旨では賃金とインフレに係る参加者の議論に相当の紙数が割かれている。まず賃金について「ほとんどの時間当たり賃金と労働報酬指標の上昇率は抑制されている」と認識された。「数人の(several)参加者は、広範囲な賃金上昇圧力の欠如は、失業率の持続的な水準が現在推計されているよりも低いことを示唆している」として、自然失業率の低下の可能性を挙げた。また他に賃金上昇率の抑制要因として「生産性上昇率の低下」「労働力の構成要素の変化」「企業の競争によるコスト抑制圧力」があげられた。一方で、コンタクト企業によれば、需要が強く人材の少ない業種では賃金上昇がみられることが報告された。ほとんどの(most)参加者は、賃金上昇は労働市場が更に強まるにつれて加速すると予想したとされた。

インフレ率については現状の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)ベースのインフレ率が委員会の2%目標を下回っていることが確認されたうえで、低インフレ率の背景について議論がなされた。タカ派的見方としては「多くの(many)参加者は依然タイト化しつつある労働市場や、潜在生産力以上の水準で推移する経済にかかる循環的圧力が、中期的には高いインフレ率を通じて顕在化すると引き続き考えた」とされた。さらに、「多くの参加者は少なくとも今年のインフレ率の低下の一部は、固有な(idiosyncratic)または一時的な要因の結果」と述べた。一方で、ハト派的意見も提出された。政府健康保険プログラム変更による医療費抑制などは当面の間インフレ押し下げ要因になる可能性があるとされた。またいく人かの(some)参加者は「技術革新の報酬や企業価格設定への影響などの長期トレンドがインフレ圧力を抑制している」可能性を論じた。かように、低インフレ率の今後の継続如何については、タカ・ハト両方の意見が出されたが、人数の上では経済の需給の引き締まりを背景に今後インフレ率が上昇するとの見方が多数派だったといえる。

今後の利上げペースについてはむしろ慎重な意見が優勢

次に、今後のFF金利誘導目標引き上げペースについての議論では必ずしもタカ派優勢とは言えなかったようだ。金融政策に関する議論の中で「多くの参加者」が「今年の低インフレ率が一時的なものでなくより継続的要因である可能性があり、金融緩和政策解除にはいくらかの忍耐強さ(patience)」が必要と述べたとされた。これらのうち何人かは「短期的にはこれ以上のFF金利の引き上げは不要であるかまたは適切な引き上げ幅は極めて小さい」と述べた。これらは、多くの参加者が2%インフレ率回帰を予測しているにもかかわらず、「多くの」参加者が今後の利上げペースについてかなり慎重な見方をしているという点で、9月議事要旨のハト派的側面を表象する内容といえる。

もっとも「いく人かの」(タカ派的な)参加者は「既に完全雇用に達して更にタイト化が予測されている労働市場からくるインフレの上方リスクをより懸念」していた。彼らは「金融緩和政策解除ペースが必要以上に遅いことが委員会のインフレ目標をオーバーシュートし」「これを反転することはコストが高く」また「解消が困難な不均衡」につながると警告した。しかし、インフレのオーバーシュートを警告する参加者の数は全体からみると多数派ではないようだ。

なお、低インフレ率がFF金利の中期的行程に与える意味についてもハト派・タカ派双方より多数の意見がだされた。数人の参加者は「継続的な低インフレでインフレ率の基調トレンドが2%を下回り続けると、インフレ期待が低下するリスクがあり」「その場合、適切な金融政策の行程においてはインフレ期待を引き上げる必要性を考慮する必要がある」とハト派的意見を述べた。しかしながら、何人かの(a few)参加者は「資源利用率のタイト化に対するインフレ率の反応のラグを考慮する必要性と、労働市場の更なるタイト化に伴うインフレの上方リスクを考慮する必要性」を論じたとされた。

年内追加利上げは多くが支持したが慎重派意見も

年内の追加利上げの是非についても明示的に議論がされた。「多くの」参加者は年内のもう一回の利上げが正当化される可能性が高い」として年内利上げを支持した。9月定例会合では多数派の参加者が、年内追加利上げを支持しており、9月時点のFOMC委員経済予測とも整合する内容である。

しかし「数人の」参加者は「インフレ見通しの不確実性に照らし、(追加利上げという)政策行動についての決定は今後数ヶ月に入手される経済データが、インフレ率が委員会の目標に向けて上昇するとの彼らの確信を強めるかどうかに強く依存する」として現状での判断を避けた。また「何人か」の参加者は「FF金利の追加引き上げは、入手される情報が今年の低インフレ率が継続せず委員会の2%目標に中期的に向かう行程にあることが明瞭になるまで先延ばしされるべき」と述べた。

9月定例会合後に公表されたFOMC委員経済予測によれば、年内追加利上げを予測する委員は16人中11人であった。年内利上げを支持する「多くの」参加者はこの11人のうちの多くと見られる。11人のうちでも「数人」の参加者はやや慎重な「数人」に相当すると見られる。

年内あと1回の追加利上げ予想を維持

当レポートでは、年内あと1回の追加利上げを個人予想している。9月FOMC議事要旨の内容はこれを支持するものであった。9月会合後に公表されたインフレ指標(8月はいずれもインフレの加速を示唆するものであった。8月PCEデフレーターは前年比+1.4%と前月比横ばいの伸び率で、年初から低下基調にあったインフレ率が下げ止まりつつあることを示唆している。今年末時点でのPCEインフレ率は同+1.4%程度に着地しそうだ([第1図])。9月の消費者物価指数(CPI)も、エネルギー中心とはいえ前月比の伸びが加速し、総合CPIインフレ率は5ヶ月ぶりに同+2%台を回復した(10月15日付<経済指標コメント>参照)。

来年以降の中期的なFF金利引き上げペースについては、上記の通り9月定例会合議事要旨を見る限りではややハト派的内容だったと言わざるを得ない。しかし、9月会合後に公表されたFOMC委員経済予測によれば、2018年末の適正FF金利予測中央値は2.1%で、この予測水準は昨年12月予測以来不変である。議事要旨は来年以降の利上げペースにつきハト派意見が多数都との内容ではあったが、その程度は委員のFF金利予測を大きく変更させるほどの内容ではなかったとの憶測が成り立つ。また、テイラー・ルール公式は現状においてさえすでに2%台半ばの適正FF金利を示唆している。FOMC委員予測通りに来年も3回程度の利上げは実施されると見ておきたい。

なお、現在のイエレン氏のFRB議長としての任期は2018年2月に満了となる。後任候補人事について、トランプ大統領は「今月中に」決定するとの意向のようだ(各種報道による)。現在報道等で取りざたされている時期FRB議長候補は、現FRB理事のパウエル氏、元FRB理事のウォーシュ氏、またイエレン議長の再任の可能性も残っているとされる(一時最有力候補とされたコーン国家経済会議委員長はトランプ氏の意向で候補から外れたとされる)。このうちで、最もタカ派と目されるのがウォーシュ氏、中立と目されるのがパウエル氏、イエレン氏は従来からハト派の代表である。来年以降の利上げペースはこのFRB議長人事に大きく左右されよう。タカ派のウォーシュ氏や中立のパウエル氏が議長に就任した場合、利上げペースは現状予測より加速の可能性がある。また空席だった金融監督担当副議長ポストにはトランプ政権に近いクォールズ氏が13日に正式に就任した。一方、先月辞任を公表したフィッシャーFRB副議長の後任もおそらくトランプ政権に近い人物が選任されるであろう。政権交代に伴うFRB人事交代は、これまでの雇用重視ハト派路線からの転換の契機となりうる。

[第1図]
20171015b図1

<経済指標コメント> 米9月小売売上高は前月比+1.6%

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[日本]

景気ウォッチャー調査(9月):現状判断DIは51.3(前月比+1.6ポイント)、先行き判断DIは51.0(同-0.1%)

5月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは51.3(前月比+1.6)ポイントと3ヶ月ぶりの上昇、かつ9ヶ月ぶりに横ばいを示す50を上回った。雇用関連DIは低下したものの、家計動向・企業動向関連DIは上昇、かつすべてのDIが50を上回った。2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは51.0(同-0.1%)と小幅低下したが、上昇基調はまだ保っている。先行き判断の企業関連DIは上昇、雇用関連は横ばい、家計動向関連は低下と内訳はまちまち。景気判断理由には「訪日外国人客は富裕層を差し引いても、好調(百貨店)」「衆議院選挙が終わるまでは、客の動きや売上が鈍る」「人手不足でコストがかさむ(化学工業)」などがみられた。総じて街角景気の基調は堅調で、家計動向ではインバウンド消費のみならず国内消費が景気を押し上げているものの、企業では人手不足やコスト上昇が景気抑制要因になっていることが示唆されている。

20171015図1

機械受注(8月、船舶・電力を除く民需)は前月比+3.4%(前年比+4.4%)

8月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+3.4%(前年比+4.4%)と前月比で2ヶ月連続の増加、前年比でも3ヶ月ぶりにプラスの伸びに転じた。8月までの7-9月期同受注は前期比+7.1%と3四半期ぶりかつ大幅な増加に転じるペースである。経済産業省鉱工業生産統計の資本財出荷の動向からは、GDP統計上の企業設備は7-9月期に4四半期連続のプラス成長を実現する見通しであるうえ、機械受注の増加は今後も設備投資増加が持続する可能性を示唆している。

20171015図2

[米国]

企業在庫(8月)は前月比+0.7%、企業売上高は同+0.7%、在庫売上高比率は1.38倍

8月の企業在庫は前月比+0.7%、企業売上高は同+0.7%といずれも強めの伸び、在庫売上高比率は1.38倍と前月比横ばいだった。企業在庫の3ヶ月前対比の増加幅は4ヶ月連続で拡大しており、在庫積み増しが加速していることを示唆している。在庫循環図は依然在庫積み増し局面にある。GDP統計上の在庫投資は7-9月期も4-6月期に続き成長にプラス寄与すると見る。

20171015図3

小売売上高(9月)は前月比+1.6%、除く自動車関連同+1.0%

9月の小売売上高は前月比+1.6%と前月の同-0.1%から反転増加、自動車関連を除くベースでも同+1.0%と前月の同+0.5%から伸びが加速した。自動車・ガソリン・レストランを除くコア小売売上高も同+0.5%と前月の同+0.1%から加速した。8月末から9月にかけて米国南部を襲ったハリケーン・ハーヴェイ、イルマの悪影響は思いのほか限定的である。公表元の米商務省は、統計データ収集事態にハリケーンの影響はみられないとしたうえで、「ハリケーンは小売売上に上方と下方の双方の影響をもたらした」「いくらかの小売企業は店舗閉鎖や営業縮小、物流の遅れなどを報告した」としている。総じて本統計はハリケーン影響も適切に反映したうえでなお、小売売上が堅調であることを示唆している。ハリケーンによる小売営業や物流の悪化によるマイナス影響が、復興のための需要というプラス影響でほぼ相殺されていることが憶測できる。業種別内訳は、新車販売の急増を反映した自動車及び同部品ディーラーが同+3.6%の急増、ガソリン価格上昇を反映したガソリンスタンド(同+5.8%)、建設資材店(同+2.1%)などが売上増をけん引、他にも衣服店(同+0.4%)、食料品店(同+0.8%)などが売上を増やした、一方で家電店(同-1.1%)、薬局(同-0.4%)、百貨店(同-0.4%)は売上減とまちまちな内容である。総じてハリケーンの個人消費への影響はネットでは限定的で、米個人消費は堅調に拡大しつつあるとみたい。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は、4-6月期の前期比年率+3.3%の強い伸びの反動で減速するものの、同+2%前後の成長は可能なペースだ。

20171015図4

消費者物価指数(9月)は前月比+0.5%(前年比+2.2%)、同コア指数前月比+0.1%(前年比+1.7%)

9月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.5%の強い伸び、前年比では+2.2%と5ヶ月ぶりに2%台の伸びに回帰した。食品及びエネルギーを除くコアCPIは前月比+0.1%(前年比+1.7%)と前年比伸び率は前月並みで堅調さを保っている。前月比の伸び率はガソリン(同+13.1%)などエネルギー価格の上昇が全体を押し上げているほか、運輸サービス(同+0.3%)、家賃・宿泊(同+0.3%)などが上昇。一方、新車(同-0.4%)、中古車(同-0.2%)、衣服(同-0.1%)などの価格が低下した。総合CPIインフレ率の上昇は主にガソリン価格など一時的ともみられるエネルギー価格上昇が牽引、コアCPIも家賃等の上昇が寄与している構造は不変である。しかし、中期的には経済ののりしろの縮小により米国のインフレが1.5―2%レベルで持続的に上昇する見通しは維持したい。

20171015図5

<経済レポート> 減税案が再浮上:トランプ政権税制改革案

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米トランプ政権が9月27日に公表した税制改革案は、減税効果だけを見れば米GDPを+1%押し上げる効果がある計算になる。米議会下院は本改革を盛り込んだ予算決議案を可決したが、上院での可決如何はまだ不確定である。また、減税効果を歳出抑制で相殺して財政赤字拡大を回避する本案では、結果成長への寄与は認めにくくなる。現状では、米成長予想に対する上方リスク要因が再浮上してきたとの認識にとどめておきたい。

トランプ政権の税制改革「フレームワーク」公表

9月27日、米ホワイトハウス・米議会下院歳入委員会・同上院財政委員会は米税制改革案「破綻した我々の税制の立直しのための統合的フレームワーク(Unified Framework for Fixing Our Broken Tax Code)」を公表した。トランプ政権による本格的な税制改革案の公表は、4月27日にホワイトハウスが公表した「経済成長と米国雇用のための2017年税制改革(2017 Tax Reform for Economic Growth and American Jobs)」以来である(4月30日付当レポート参照)。本レポートでは、トランプ大統領と共和党の税制改革「フレームワーク」の内容を概観し、米経済成長への影響を点検する。

本「フレームワーク」は、トランプ大統領の選挙戦時からの税制改革公約に概ね沿ったものであるが、4月27日の税制改革案と比較すると若干の違いがみられる([第1表])。まず、個人所得税と法人税率は4月案に比してやや高めになっている。個人所得税率区分は、4月案では10%、25%、35%だったのが、「フレームワーク」では12%、25%、35%に、法人税率は4月案の15%から今回は20%に、それぞれ引き上げられた。また、4月案に含まれていたオバマケア課税廃止といわゆる国境税導入は提案が見送られた。また、米企業海外現地法人収益の本国還流非課税措置は、4月案では一時的措置とされていたが、今回は恒久措置とされた。

報道等によれば、本「フレームワーク」による減税効果は10年間で約1.5兆ドルとされているようだ。一方、米調査機関Committee for Responsible Federal Budget(CRFB)の試算によれば、「フレームワーク」実施による財政赤字拡大効果は2018会計年度までの10年間で約2.2兆ドルとされている([第2表])。これは1年度当たり0.22兆ドルの減税効果、米国の名目GDP(4-6月期で約19.25兆ドル)の約1.1%に相当する。

[第1表]
20171009表1

[第2表]
20171009表2

減税効果はGDPの1%に達する

本税制改革が実施された場合、米経済押し上げ効果は相応のものになる。CRFBの試算を基にすると、米国GDPは約1.1%押し上げられ、現在の巡航速度の成長率とみられる約+2%の成長率が、2018年度には約+3.1%に押し上げられる計算になる。これは、トランプ大統領が公約した4%成長には及ばずとも、少なくとも税制改革初年度には3%成長が実現しうることを意味する。1月22日付当レポートでみたように、トランプ政権の各種成長拡大政策の中でも、税制改革による減税効果は、他の政策(雇用拡大、インフラ投資など)に比べて各段に大きいことには変わりない。

米議会下院は5日、本フレームワークの要素を組み込んだ2018会計年度予算決議案(H Con Res 71)を219対206の僅差で可決した。採決に当たっては、共和党議員のうち18名が本決議案に反対票を投じた。上院共和党は、民主党による議事妨害(フィリバスター)を回避するため、予算和解制度(reconciliation)を活用して、上院での審議打切りに通常必要な60票の賛成ではなく51票の賛成をもって可能とする方式の採用を意図しているとされる。

仮に本「フレームワーク」が米議会の可決を経て実施された場合、トランプ政権のプロ・ビジネス政策による米経済成長上ブレ要因が実現することになる。主要閣僚等の更迭や、オバマケア代替法案の議会共和党からの反対などにより、トランプ政権の政策執行能力は大幅に後退し、税制改革やインフラ投資等の成長拡大政策の実現性は大幅に後退したと当レポートでは見てきた。しかしながら、本「フレームワーク」の下院通過により、米経済成長の上ブレ要因が再び持ち上がってきたといえる。もっともオバマケア代替法案も下院では可決したものの上院共和党議員の反対で店晒しになった経緯にある。税制改革案も、共和党上院議員の出方がその成否を左右しそうだ(報道では、マケイン、コリンズ、ポールの3名がその鍵を握っているとされている)。

財政赤字は拡大の方向とみたい

一方で本フレームワークは米政府財政赤字を同額拡大する効果をもたらしうる。米予算管理局(OMB)によれば、2017会計年度の米連邦財政赤字は約-0.6兆ドルと予想されている([第1図])。CRFBの試算を基にして今後年度毎に-0.22兆ドルの財政赤字が拡大した場合、2019年度には財政赤字が1兆ドルを超える計算になる。米連邦財政赤字が1兆ドルを超えるのは、リーマンショック後に当時のオバマ政権が財政出動を実施した2009~2012会計年度以来のこととなる。

一方で、5日に米議会下院が可決した2018会計年度予算に係る決議案では、2018会計年度の連邦政府歳入(予算ベース)は約2.7兆ドルと、2017年度OMB見通しの約2.6兆ドルからわずかに増加することとなっている。一方で同決議案では、2018年度の歳出を約3.2兆ドル(2017年度同見通し同3.3兆ドル)に抑制することにより、2018会計年度の財政赤字は-0.5兆ドルに縮小することとなっている。

米財政赤字については、やや楽観的に見える米議会下院の予算措置ベースよりも、民間調査機関の見方が現実に近いと見たい。本税制改革は、減税により経済成長を押し上げる効果がある一方で、財政赤字の拡大を促す政策と現状では見ておきたい。

[第1図]
20171009図1

経済見通しへの上方リスク要因だが不確実性はある

トランプ大統領の税制改革案は、米議会下院を通過したとはいえ、上院での成立如何はまだ不確実である。また減税面のみを見ると本改革は米成長率を大幅に押し上げる効果があることになる。最終的な成長への効果を見るには本改革に伴う連邦政府歳出抑制のレベルが鍵となる。筆者個人は本改革がネットで成長押し上げ効果をもたらすと見ているが、現状ではまだ不確実要素が多いことから、本改革を成長予想に対する上方リスク要因として、従前よりやや実現可能性が高まったものとして見ておくことにとどめたい。

米財政に係るもう一つのポイントは、12月に到来する政府債務上限問題である。9月の「2018年歳出継続法及び2017年災害救済要請のための補正歳出法」成立により、12月9日までの政府債務上限不適用が決定された。しかし、12月9日以降は、その時点での政府債務が新たな上限となり、それ以上の政府債務増加が不可能になる。

米財務省のDaily Budget Statementによれば、10月5日現在の政府債務は20.3兆ドルで、9月の上限適用停止前の水準である18.9兆ドルからすでに0.4兆ドルの債務が増加している。上記米議会下院の予算決議案によれば、2018会計年度の政府債務は約21.1兆ドル。その後2017年度には23.5兆ドルに拡大することとなっている。2018会計年度予算案の執行のためには、12月時点で政府債務上限の再引き上げが必要となることになる。

<経済指標コメント> 米9月非農業部門雇用者数は前月比-33千人

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[日本]

日銀短観(9月調査):大企業製造業業況判断DIは22ポイント(6月調査比+5ポイント)

9月の日銀短観、大企業製造業の業況判断DIは22ポイント(6月調査比+5ポイント)と4四半期連続かつ大幅な上昇。大企業非製造業の業況判断DIは23ポイント(同横ばい)。引続き企業景況観は好転が続いている。もっとも先行き判断DIは大企業製造業が19ポイント、大企業非製造業が19ポイントと現状判断比低下している状態も不変で、景況観の持続性はまだ不確実である。

20171008図1

[米国]

新車販売台数(9月、乗用車及び軽トラック)は年率18.47百万台(前月比+15.3%、前年比+4.6%)

9月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は18.47百万台(前月比+15.3%、前年比+4.6%)と急増。前月8月の販売減(同16.02百万台、前月比-4.0%)をカバーする以上の増加となった。8月末から9月初にかけ米国南部を襲ったハリケーン・ハーヴェイ、イルマの影響が販売増減に反映されているが、9月の販売台数は、8月の販売減少の反動やハリケーンよる新規買換え需要以上の要因が含まれていると思われる。米調査会社Cox Automotiveによれば、ハリケーンによりテキサス、フロリダ両州で合計約600千台の買い替え需要が発生したとされる(Bloomberg報道による)。ハリケーン前7月までの新車販売台数トレンド(3ヶ月移動平均)は同16.7百万台であり、これにハリケーン買替需要を上乗せすると約同17.3百万台となる。9月の販売増はこれらの復興需要を上回る水準であり、ハリケーン以外の一時需要も含まれている可能性が高い。ハリケーン需要が一段落すれば、再び自動車販売台数は年率17百万台前後のトレンドに回帰すると見る。

20171008図2

雇用統計(9月):非農業部門雇用者数(9月)は前月比-33千人、失業率は4.2%

9月雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比-33千人と、2010年9月以来の前月比減少。家計調査による失業率は4.2%と前月の4.4%から低下した。8月末から9月上旬に米国南部を襲ったハリケーン・ハーヴェイ、イルマの影響について米労働省は「9月調査期間中に雇用者への給与支払がなかった場合、事業所調査(非農業部門雇用者数の基礎調査)の雇用者数には計上されないが、家計調査(失業率の基礎調査)の就業者には計上されている」としている。事業所調査は単月のハリケーン影響を反映、家計調査はこれを勘案しない基調を反映しているといえる。事業所調査による非農業部門雇用者数の業種別内訳では、娯楽・宿泊業(同-111千人)が大幅雇用を減少させたほか、製造業(同-1千人)、小売業(同-2.9千人)の雇用が減少。天候影響を受けやすい鉱業(同+2千人)、建設業(同+8千人)は意外にも影響は限定的だった。時間当たり賃金(生産及び非監督雇用者)は前年比+2.5%と、前月の同+2.4%からわずかに上昇した。家計調査による失業率の内訳をみると、労働力人口(前月比+575千人)、就業者数(同+906千人)のいずれもが増加、労働参加率は63.1%(前月比+0.2%ポイント)と上昇している。ハリケーン影響で非農業部門雇用者数は減少したが、影響を反映しない家計調査によれば米雇用の基調は堅調とみたい。2005年のハリケーン・カトリーナの事例では、非農業部門雇用者数の伸びが10、11月に大幅減速したが、12月には反動増に転じている。今回のハリケーン・ハーヴェイ、イルマ影響も10月頃までは雇用者数の伸び減速が続くものの、11月頃には非農業部門雇用者数は反動増となり、その後は巡航速度の同+100千人後半の増加ペースに回帰するとみる。ハリケーンの影響は一時的なものと引き続き見たい。

20171008図3

<経済指標コメント> 日本の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年比+0.7%

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[日本]

実質家計消費(8月、二人以上の世帯)は前月比+0.2%(前年比+0.6%)

8月の実質家計消費(二人以上の世帯)は前月比+0.2%と過去5ヶ月で4回目の前月比増加、前年比でも+0.6%と過去3ヶ月で2回目のプラスの伸びとなった。実質消費水準指数の3ヶ月移動平均の前年比の伸びは+1.3%と潜在成長率を超える伸び、かつ5ヶ月連続でプラスを維持している。家計消費は昨年末あたりをボトムに回復に転じているといえる。ただし、8月までの7-9月期実質家計消費は7月の大幅減の影響で前期比-0.6%とマイナスの位置にある。4-6月期に前期比年率+3.4%の強い伸びとなったGDP統計上の実質家計消費は7-9月期には反動で減速になりそうだ。勤労世帯の実質実収入は前年比+0.2%と3ヶ月連続でプラスの伸びを維持していることも家計消費拡大のプラス材料である。

20171001図1

全国消費者物価指数(8月、生鮮食品を除く総合)は前月比+0.1%(前年比+0.7%)

8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、いわゆるコアCPI)は前月比+0.1%と7ヶ月ぶりの上昇、前年比では+0.7%と2015年4月以来の伸び率となった(消費税影響除く)。前年比の伸びに寄与した品目はガソリン(寄与度+0.14%)、電気代(同+0.23%)などエネルギー関連である。エネルギーは前年比+7.0%と、原油価格上昇によるエネルギー関連の価格上昇が全体のコアCPIインフレ率を+0.49%押し上げている。生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(いわゆる新コアコアCPI)も前月比+0.1%(前年比+0.2%)と、3ヶ月ぶりの前月比上昇かつ前年比伸び率もわずかながら上昇した。総じて、エネルギーが牽引する形でコアCPIインフレ率は上昇、新コアコアCPIインフレ率も本年前半をボトムに底入れの兆しがみられる。タイトな経済需給を背景に、今後インフレ率は徐々に上昇していくと見る。なお原油価格が現状の1バレル=50ドル前後で推移すれば、年末のコアCPIインフレ率は前年比+0.9%程度に上昇する計算になる。

20171001図2

完全失業率(8月)は2.8%

8月の完全失業率は2.8%と前月比横ばいで、依然1994年以来の低水準にある。筆者試算の労働力化率は60.8%と実に2003年以来の水準に上昇した。労働需給は依然タイトであるが、労働力化率の上昇がこれを緩和している状況は不変である。

20171001図3

鉱工業生産指数(8月)は前月比+2.1%(前年比+5.4%)

8月の鉱工業生産指数は前月比+2.1%(前年比-0.8%)と反転上昇、前年比では+5.4%と、昨年半ば頃にプラスに転じて以来伸び率の上昇基調が続いている。出荷指数は前月比+1.8%、在庫指数同-0.6%、在庫率指数同-4.3%。総じて出荷の増加で在庫と在庫率が低下した形だ。在庫循環図は依然在庫積み増し局面にあり、今後も生産が拡大することを示唆している。設備投資の先行指標となる資本財出荷は前月比+4.2%と大幅増加。8月までの7-9月期資本財出荷は前期比プラスの伸びに位置しており、7-9月期GDP統計上の設備投資が6四半期連続のプラス成長になるとの見方を支持している。公表元の経済産業省は「生産は持ち直しの動き」と基調判断を維持している。

20171001図4

住宅着工戸数(8月)は年率942千戸(前月比-3.2%)

8月の住宅着工戸数は年率942千戸(前月比-3.2%)と2ヶ月連続の減少。持家、貸家、分譲住宅のいずれもが前月比で減少した。季節調整前の前年比の伸び率は-2.0%と2ヶ月連続のマイナス。住宅着工戸数は依然高水準にあるものの、総じて振れの大きい推移となっている。8月までの7-9月期住宅着工戸数は前期比でマイナスの位置にあり、7-9月期GDP統計上の住宅投資が9四半期ぶりのマイナス成長に転じるリスクが出てきている。

20171001図5

[米国]

耐久財受注(8月)は前月比+1.7%、除く運輸関連同+0.2%、非国防資本財受注(除く航空機)同+0.9%、同出荷同+0.7%

8月の耐久財受注は前月比+1.7%、除く運輸関連同+0.2%。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(除く航空機)同+0.9%と強いのび。GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同+0.7%とこれも強い伸び。8月までの7-9月期の非国防資本財受注、出荷はいずれも前期比+7%台の大幅プラスの伸びの位置にある。7-9月期GDP統計、またその後も設備投資は堅調に拡大することを示唆している。

20171001図6

実質GDP成長率(4-6月期、確報値)は前期比年率+3.1%

4-6月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率+3.1%と、改定値の同+3.0%からわずかに上方改訂、米経済成長が引き続き加速しているとの結果になった。需要項目別内訳は、個人消費同+3.3%(改定値同+3.3%)、設備投資同+6.7%(同+6.9%)、住宅投資同-7.3%(同-6.5%)、政府支出同-0.2%(同-0.3%)、在庫投資寄与度同+0.12%(同+0.02%)、純輸出寄与度同+0.42%(同+0.21%)と、いずれも小幅な改訂にとどまった。7-9月期は自動車販売の減少やハリケーンの影響で一時的に成長は大幅減速すると見るが、10-12月期にはその反動増で解消されると見る。結果2017年通年成長率は前年比+2%台前半を確保するとの見方を維持する。

20171001図7

実質個人消費(8月)は前月比-0.1%、PCEデフレーターは前月比+0.2%(前年比+1.4%)、同コア前月比+0.1%(前年比+1.3%)

8月の実質個人消費は前月比-0.1%と7ヶ月ぶりの前月比減少。内訳は、自動車販売の大幅減少を反映した耐久財消費が同-1.0%の大幅減、小売売上の減少で非耐久財消費も同-0.2%の減少、サービス消費は同+0.1%。8月の個人消費は8月末に米国南部を襲ったハリケーン・ハーヴェイの一時的悪影響が反映されているといえる。9月もハリケーン・イルマ、マリアの影響で個人消費は一時減速を続けそうだ。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+1%台に減速するリスクがある。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.2%(前年比+1.4%)、同コアは前月比+0.1%(前年比+1.3%)と堅調な上昇を続けている。年末の総合PCEインフレ率は前年比+1.4%レベルに着地しそうだ。FRBの目標2%は下回っているものの、米インフレ率は堅調な動きとなっている。12月FOMC定例会合で+0.25%の追加利上げが決定されるとの見方を支持する結果である。

20171001図8