FC2ブログ

<経済レポート> 需給タイト化が進む:日本経済定点観測

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
2018年の日本経済成長率は、2017年からやや減速して潜在成長率に近いペースになると個人予想する。しかしその間プラスの需給ギャップは拡大し、コアインフレ率は+1%台に上昇すると見る。経済が需要超過になったことで、次の景気サイクルの転換期を見極める時期に来ている。経験則からは今後2年以内にその転換が来る可能性が高いと見ておきたい。

10-12月期は+1%割れに減速した模様

2017年に+2%に迫る成長に回復した日本経済は、2018年にはやや減速して+1%台前半の潜在成長率に近い成長に減速していくと見る。2017年10-12月期は、過去2四半期の強い成長率の反動で+1%割れの成長にいったん減速するも、2018年1-3月期には再び+2%台の成長に再加速しそうだ。しかしながら、プラスの需給ギャップの拡大と中期的な景気循環は、日本経済の循環的転換前の減速局面入りが近いことを示唆している。2018年後半には再び成長ペースはやや鈍化し、通年の成長率は前年比+1.5%になると見る([第1図])。本レポートでは、2017年10-12月期、及び2018年にかけての日本経済の状況を展望し、筆者個人の予想を立てていく。

2017年の日本の実質GDP成長率は前年比+1.7%程度に着地したと見る。4-6月期に前期比年率+2.9%、7-9月期に同+2.5%と、2四半期連続で+2%台に成長を実現した。しかし、これまでの基礎統計や先行指標によれば、10-12月期の成長率は同+1%割れにまでいったん減速した模様である。総務省家計調査による10-12月期の実質家計消費(二人以上の世帯)は11月までで前期比-0.3%と2四半期連続のマイナスの伸び。経済産業省鉱工業生産指数統計による資本財出荷は同じく前期比-0.3%。住宅着工戸数も同じく-同1.4%と、内需関連指標がいずれも前期を下回っている。

企業在庫指数は11月時点で9月に比べ、3ヶ月前対比の上昇ペースが加速しており、また在庫循環図は在庫積み増し局面にある。国際収支統計によれば、10月時点で輸出の伸び拡大により財・サービス収支黒字が前期比拡大している。在庫投資と純輸出は10-12月期にも成長にプラス寄与しそうだ。ただ上記の内需の低迷により10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1%弱に減速すると見る。

[第1図]
20180102図1

2018年は1.5%成長を見る:経済は需要超過が進む

次に、2018年の日本経済を占っていく。2018年暦年成長率は、2017年の成長からやや減速して前年比+1.5%、2018年度は前年度比+1.3%を筆者個人予想とする。最初に、需給ギャップの状況から見た現在の日本経済の立ち位置をみる。内閣府推計によれば、2017年7-9月期時点での日本経済の需給ギャップは+0.7%で、2四半期連続の需要超過となっている。内閣府推計の現状の潜在成長率は+1.1%である。上記の筆者個人の2018年成長予想をこれらに当てはめると、2018年度末時点の日本経済の需給ギャップは+0.9%の需要超過になる計算になる([第2図])。ところで、GDP統計の連続性のある1994年以降で、需給ギャップが最も長く連続してプラス(需要超過)となったのは、2006年10-12月期~2008年1-3月期の8四半期である。経験則的には日本経済(先進国経済)は需要不足状態にあることが多く、需要超過はむしろ例外的な状況である。日本経済も今後2年以内に景気サイクルの転換点が来る可能性が高いと見たい。

実質GDPのトレンドをHPフィルターで抽出し、トレンドと実績値の乖離状況を見たのが[第3図]である。これによっても、現在の日本の実質GDPはトレンドを上回る水準にあることがわかる。このトレンドを潜在GDPとみなした場合、やはり日本経済は需要超過の状態にある。

内閣府は、現在の日本の潜在成長率を+1.1%としている。上記HPフィルターによるトレンドから算出したトレンド成長率(潜在成長率)は現状で約+1.25%と計算される。HPフィルターの特性から、直近の成長加速がトレンドに反映しやすいため、HPフィルター推計による潜在成長率の方が現状ではやや高めに出ている。いずれにしても日本の潜在成長率は現在+1.1%前後にあり、これを上回る成長が続けばプラスの需給ギャップ(需要超過)は拡大していくと考えられる。

[第2図]
20180102図2

[第3図]
20180102図3

[第4図]
20180102図4

限界消費性向の低下で家計消費はやや減速へ

家計消費は2018年も堅調に拡大するものの、その拡大ペースはやや鈍化すると見る。2017年にGDP統計上の実質家計消費は前年比約+1%の拡大で、成長を約+0.6%押し上げる見通しで、内需項目としては成長の牽引役となった。家計消費の源泉である雇用者報酬(実質)はこれを上回る約+1.5%の拡大となる見込みだ。家計所得の増加ペースが家計消費増加ペースを上回っている環境は家計消費にとって不悪といっていい。

しかしながら、2014年の消費税率引き上げ以降、家計の限界消費性向が低下する傾向にある。[第5図]によれば、2014年以降、実質雇用者報酬の増加に対して、実質家計消費支出がほぼ横ばいの動きに転じているのがわかる。実質雇用者報酬と実質家計消費支出の関係から限界消費性向をローリング回帰した結果が[第6図]である。これによれば、現状において家計の限界消費性向は0.16にまで低下している。つまり、所得の増加に比べて消費拡大ペースはわずかなものにとどっているということである。

2017年現在で、総務省労働力調査による就業者数は前年比約+1%増加している。今後もこの拡大が続くとして、2018年も家計消費支出の伸びは+1%程度を見込むことができる。しかしながら、賃金上昇による限界的な所得増加分の家計消費への効果は見込みにくい。そこで、2018年の実質家計消費支出拡大ペースは毎四半期毎に前期比年率+1%程度を見込むこととする。2017年後半の消費減速による発射台の低下で、2018年の実質家計消費は前年比で+0.6%レベルに減速すると見たい。

[第5図]
20180102図5

[第6図]
20180102図6

2018年後半は在庫調整局面へ

企業部門は設備投資と輸出の堅調な拡大が成長を底支えするが、年後半には在庫調整が成長を抑制しそうだ。設備投資は2017年に前年比+3%弱の成長で、成長率を+0.4%程度押し上げる見通しである。先行指標である機械受注は循環的な減速から底入れの兆しがみられる。また、企業部門では引き続き生産能力拡大が抑制されており、余剰設備の解消が進んでいる。結果、製造工業稼働率は金融危機以降の期間の中では比較的高水準に維持されている([第7図])。こうした環境は、今後も堅調な設備投資の拡大ペースが維持されることを示唆している。これらより、2018年において設備投資は前期比年率+2%台半ばの成長を見込む。

鉱工業の在庫循環は現在「在庫積み増し」局面にあり、2018年前半は引き続き成長にプラス寄与すると見る([第8図])。海外景気の回復による輸出の拡大が鉱工業出荷を押し上げており、在庫積み増しのための鉱工業生産が持ち直している。しかし、年後半に在庫循環は「意図せざる在庫増」から「在庫調整」局面入りする可能性が高く、年後半には在庫調整が成長を抑制する要因になると見る。

海外景気の好調な拡大を背景に、純輸出は引続き成長にプラス寄与すると見る。輸出にとっての好材料は、米国経済、欧州経済が2018年も強い成長を実現するであろうこと、また中国を除くアジアの成長率も極めて堅調な状況が続いていること、また今後日米金利差の拡大により為替レートが再び円安に転じる可能性が高いことである。輸出によっての悪材料は、中国が2018年に本格的に資本ストック調整やシャドーバンキング規制強化による経済成長ペースの調整を実施するであろうことである。総じて輸出と輸入がこれまでのトレンドの延長上の拡大をつづけることができれば、2018年の成長率へのプラス成長が可能である。本レポートではこの見方をメインシナリオとしておく。

[第7図]
20180102図7

[第8図]
20180102図8

コアインフレ率は+1%台に上昇を見込む:日銀金融政策はステルス調整へ

インフレ率については、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPI)の前年比伸び率が前年比+%台前半に上昇すると見る([第8図])。11月現在でコアCPIは前年比+0.9%の位置にある。今後原油価格が安定推移し、前月比+0.1%程度のインフレ率の上昇が続けば、2018年は概ね+1%台のコアCPIインフレ率維持が可能である。

経済のプラスの需給ギャップ拡大もインフレ率押し上げ要因である。上記で見たように、今後日本経済は需要超過が進むと見られる。需給ギャップと失業率との相関からは、需給ギャップ1%の需給ギャップ拡大(需要超過進行)は、失業率を約-0.3%押し下げる。2018年の需給ギャップ拡大は約+0.2%と見ているから、2018年中の失業率低下幅は高々-0.1%程度となる計算になる。11月現在の完全失業率は2.7%であるから、2018年末の失業率は約2.6%と見る。失業率とコアCPIインフレ率の関係を示すシンプルなフィリップス曲線によれば、2.6%の失業率に対応するインフレ率は約+0.8%と計算される([第10図])。ただし、失業率が自然失業率を下回って推移した場合のインフレ率上昇加速、また現在の失業率が需給ギャップとの関係から推計されるよりもさらに加速して低下している状況を勘案し、2018年のインフレ率は推計値よりもやや高めに推移すると見たい(需給ギャップとコアインフレ率との関係については2017年12月3日付当レポート参照)。

日本銀行の金融政策はしたがって、インフレ率の上昇とともに緩和ペースの調整を必要とすることになろう(本件については2017年12月3日付当レポートでも論じたがここに再度整理する)。現在の「長短金利操作付き量的・質的緩和」は、日銀当座預金マイナス金利付与、10年物国債金利ゼロ%への操作、長期国債買入れによる保有残高増加額年間80兆円、を掲げている。さらに日銀は「オーバーシュート型コミットメント」として「マネタリーベースを消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続する」ことをコミットしている(2016年9月21日付日本銀行「金融緩和強化のための新しい枠組み」、2016年9月25日付当レポート参照)。同緩和政策導入前にはマネタリーベース年間80兆円増加が数値目標であったが、2016年9月の同緩和政策導入時に数値目標を廃止し、長期国債の保有残高増加額年間約80兆円をもってこれに代えている。オーバーシュート型コミットメントの内容からは、インフレ率が「安定的に2%台を超える」以前においても、インフレ率実績や見通しの上昇に合わせて長短金利操作の水準を引き上げるか、資産買入れペースを減速させることで、徐々に金融緩和の水準と規模を縮小していくことが可能である。

今年4月に任期を迎える黒田日銀総裁は、次期も続投することの市場の見方が強い。もし黒田総裁が続投となった場合、「長短金利操作」と「量的・質的緩和」自体を2%インフレ率達成前に解除することは、市場との対話の観点から日本銀行のコミットメント低下のいう逆アナウンスメント効果を生む可能性があり、早期の実施は困難であろう。その場合、同操作と緩和の政策や操作水準自体は維持した上で、実際の国債購入額の減額を実施するいわゆる「ステルス・テーパリング」による可能性が高いと見る。10年物国債金利の操作目標水準の明示的な変更(引き上げ)も国債市場に予期せぬ影響を与える可能性があるために採用には十分な慎重さが必要になることから、何等かのステルス的な手法が用いられる可能性が高いと見ておきたい。

[第9図]
20180102図9

[第10図]
20180102図10

スポンサーサイト