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<経済レポート> 緩和の終わりと引き締めの始まり:9月FOMC

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FOMCは9月25-26日の定例会合で、予想通りFF金利誘導目標レンジを+0.25%引き上げ2.00-2.25%とすることを決定した。FOMC委員経済予測では、2018年にFF金利は中立水準を超える3%台半ばにまで引き上げられることが示唆されている。米経済が今後需要超過になり、インフレ率が2%水準で推移するとの見方に整合的な内容である。来年にかけFF金利誘導目標が3%台に引き上げられるとの筆者の個人予想を維持する。

FOMCは+0.25%の利上げを決定した:来年の利上げ回数予測は不変

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は9月25-26日の定例会合で、予想通りFF金利誘導目標レンジを+0.25%引き上げ2.00-2.25%とすることを決定した([第1図])。会合後に公表された声明文では、従前の「金融政策のスタンスは緩和的であり続け、強い労働市場条件と2%インフレ率の持続的回帰を支持する」との文言が削除された。声明文のその他の文言は、前回8月1日声明文の文言とほぼ不変であった。「委員会は、FF金利誘導目標の漸進的な引き上げが、持続的経済拡大、強い労働市場条件、そして委員会の対照的な2%中期目標近辺のインフレ率と整合的であると予想する」との文言は存置された。

声明文と同時に公表されたFOMC委員の四半期経済予測では、2018年末の適正FF金利予測中央値は2.4%(2.25-2.50%レンジ)、2019年末のそれは3.1%(同3.00-3.25%)と前回6月予測と不変で、2018年内にあと1回、2019年内に3回の利上げを予測する内容となっている。2020年のFF金利予測中央値は3.4%(同3.25-3.50%)これも6月予測と不変で、2020年内にさらに1回の利上げ(同3.00-3.25%)を実施し、2021年までこの水準が維持されることが示唆されている([第1表])。

パウエルFRB議長は会合後の定例記者会見の冒頭発言で「“金融政策のスタンスは緩和的であり続ける”文言の削除は金融政策の工程の変更の証左ではなく、金融政策が我々の予想通りに進んでいることの証左である」「声明文の通り、我々は漸進的なFF金利誘導目標引き上げを依然予想しておりこの予想は委員予測に反映されている」とのべ、今後も段階的な利上げを継続していく意図を示唆した。

[第1図]
20180930図1

[第1表]
20180930表1

FOMCは2%インフレ持続、需給ギャップは需要超過を予測している

9月FOMCの結果は当レポート予想及び市場の期待とほぼ整合的で、特段のサプライズはなかったといえる。注目されていた2019年の利上げ回数の予測中央値も6月時点予測から不変であり、FOMCの今後の金融政策に対するスタンスが過去3ヶ月で大きくはシフトしていないことを示唆している。

9月時点のFOMC委員経済予測のポイントは以下である。まず実質GDP成長率の予測中央値を見ると、2018年に前年比(第4四半期前年同期比)+3.1%と減税効果などで大幅に拡大したのち、2019年に同+2.5%、2020年に同+2.0%と徐々に減速していくことが予測されている。一方長期的な均衡成長率(潜在成長率)は同+1.8%とされており、今後約2年にわたり米国経済が潜在成長率を上回る成長を継続することが予測されている。結果米経済の需給ギャップは大幅な需要超過になることが予測されていることになる。失業率についても同様で、長期均衡失業率と予測されている4.5%に対し、今後の失業率は2021年にかけ3.5~3.7%と自然失業率を大幅に下回って推移するとの予測中央値となっている。GDP成長率予測同様に、米経済(労働市場)が大幅な需要超過になることをこの予測中央値は示唆している。

PCEインフレ率の予測中央値は2020年にかけ前年比+2.0~2.1%と、おおむねFRBの目標値(長期均衡水準)に近いところで推移するとされている。これに対してFF金利の長期均衡水準の予測中央値+3.0%とされている。ここからは、FOMCの見る自然利子率がおおむね+1%であることが示唆されている。

FF金利は長期均衡水準以上に引き上げられる

かかる経済予測を前提に、FOMC委員予測中央値ではFF金利誘導目標が2019年以降、長期均衡水準である3%を超えて3.4%引き上げられるとされている。すなわち、インフレ率がほぼ均衡水準で推移、需給ギャップが需要超過で推移することから、適正な政策金利は長期均衡水準(インフレ率+自然利子率=2%+1%=3%)以上に引き上げられるのが適切との考え方である。

これらのFOMC委員予測の内容は、これまでの当レポートでの見方にも整合している。テイラー・ルール公式において適正なFF金利水準は、インフレ率実績と自然利子率の合計に需給ギャップとインフレギャップを加重平均して加味した水準として表される。インフレ率実績=2%、自然利子率=1%とした場合、需給均衡における適正FF金利は3%となる。需給ギャップがプラス(需要超過)である場合適正FF金利は3%よりも上方に位置することになる。テイラー・ルール(1993年版)において、自然利子率を1%とした場合の適正FF金利水準は、2018年1-3月期時点の需給ギャップとインフレ率実績をもとに計算すると+2%台後半と計算される。同じく成長とインフレに関する筆者の個人予想に基づく2018末時点での適正FF金利を計算すると+3%台半ばと推計される([第2図])。2018年後半にインフレ率が2%に上昇してインフレギャップが解消し、潜在成長率を上回る成長継続により需給ギャップが需要超過になることにより、適正FF金利水準が需給均衡における適正水準よりも上方にシフトするためである。2018年の成長加速により既に適正なFF金利水準は現状でも3%レベルにあるといえる。したがって少なくとも3%台半ばの水準に向かって段階的に利上げを継続するというスタンスは妥当と考えられる。

なお、2021年については、FOMC委員経済予測中央値は、成長率+1.8%、PCEインフレ率+2.1%と、成長とインフレがともに均衡レベルに回帰することとなっている。一方失業率予測中央値は3.7%と依然自然失業率4.5%を大幅に下回ることとなっている。つまり2021年において、米経済は需要超過状態のままプラスの需給ギャップ水準は横ばいで推移、またインフレ率は依然均衡水準で推移することとなる。プラスの需給ギャップが一定でインフレ率が一定のもとではFF金利は中立水準を上回るレベルで据え置かれることが適切であることがテイラー・ルール公式からも導かれる。FOMC委員の経済・インフレ予測と、2020年以降FF金利が横ばいで推移するとの予測は整合的である。

[第2図]
20180930図2

2019年に3%台に利上げとの個人予想を維持する

以上から、年内12月FOMC定例会合であと1回の利上げが決定され2019年にはFF金利誘導目標が3%台にまで引き上げられるとの個人予想を維持する。米経済は2018年4-6月期に前期比年率+4.2%の強い拡大を見せ、7-9月期も筆者予想を上回る+3%台の成長となる可能性が出てきている。PCEインフレ率は8月時点で前年比+2.2%と2%を超えて推移している。これらの直近の状況は、筆者個人予想及びFOMC委員の経済予測に沿った動きである。FRBの金融政策スタンスは、これまでの「緩和的」から「中立」へ、さらに来年には「引き締め」スタンスに段階的に移行していくと見る。

一方で、2020年以降の金融政策動向については不確実性があると言わざるを得ない。FOMC委員の経済予測は、今後米経済が2021年にかけて巡航速度の成長に回帰していくことを前提としているように見える。しかしながら、現実的には来年以降2021年にかけて米経済にはどちらかといえば下方のリスクがあると見ておきたい。

まず、中期的な景気循環の観点からは、2018年に需要超過に転化した経済がその後1~3年の間にサイクルの転換期を迎える可能性がある。次に、これまでトランプ政権への期待から上昇を続けてきた株価などのリスク資産価格はバリュエーション的に相当に割高になっている(9月末時点のS&P500の株価収益率は約25倍)。さらに期近なイベントとして、2018年11月には米議会中間選挙が予定されている。米議会下院において共和党が過半数を割り込む状況になった場合、トランプ政権への期待剥落から金融市場の反落の可能性もある。2年後以降の中期的な金融政策見通しについて、FOMC委員予測がこれらを完全に織り込んでいるとは考えにくい。2020年以降の金融政策スタンスについての委員予測はあくまで経済が均衡に回帰するとの前提におけるものに過ぎないと見るべきであろう。

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<経済指標コメント> 米8月PCEデフレーターは前年比+2.2%

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[日本]

完全失業率(8月)は2.4%

8月の完全失業率は2.4%(前月比-0.1%ポイント)と低下した。失業率は依然1993年以来の低水準にある。筆者試算の労働力化率は61.6%(同+0.2%ポイント)と上昇基調を継続している。労働市場の需給は依然タイトであるが、労働力人口の拡大がこれを一部緩和している。

20180929図1

鉱工業生産指数(8月)は前月比+0.7%

8月の鉱工業生産指数は前月比+0.7%と4ヶ月ぶりかつ強めの上昇となった。出荷指数は同+2.1%とこれも強めの伸び。在庫指数同-0.4%、在庫率指数同-2.2%と、出荷増により在庫調整が進んだ形。ただし生産指数の3ヶ月移動平均は3ヶ月連続で低下しており、鉱工業生産には依然減速感がみられる。設備投資の先行指標となる資本財出荷指数は同+5.2%と反転上昇したが、8月までの7-9月期同指数は前期比-1.8%と大幅なマイナスとなっている。7-9月期のGDP統計上の設備投資が8四半期ぶりのマイナス成長に転化するリスクが出てきている。公表元の経済産業省は「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」との基調判断を維持している。

20180929図2

住宅着工戸数(8月)は年率957千戸(前月比横ばい)

8月の住宅着工戸数は年理宇957千戸(前月横ばい)、3ヶ月移動平均は同943.3千戸と低下している。8月までの7-9月期着工戸数は前期比-1.1%とマイナスの伸びのペースであり、GDP統計上の住宅投資もマイナス成長になるリスクがある。

20180929図3

[米国]

新築住宅販売戸数(8月)は年率629千戸(前月比+3.5%)、在庫期間は6.1ヶ月

8月の新築住宅販売戸数は年率629千戸(前月比+3.5%)と3ヶ月ぶりの増加に転じた。しかし6ヶ月移動平均は同635.5千戸(同-0.9%)と4ヶ月連続で低下しており、新築住宅販売の減速感は継続している。在庫期間は6.1ヶ月と前月比-0.1ヶ月短期化してほぼ適正水準にある。ただし在庫期間はここの所長期化傾向にあり、住宅市場の需給が徐々に緩和方向に向かいつつある可能性を示唆している。

20180929図4

実質GDP成長率(4-6月期、確報値)は前期比年率+4.2%

4-6月期の実質GDP成長率(確報値)は前期比年率+4.2%と改定値から不変。需要項目別内訳は、個人消費同+3.8%(改定値同+3.8%)、設備投資同+8.7%(同+8.5%)、住宅投資同-1.3%(同-1.6%)、政府支出同+2.5%(同+2.3%)、在庫投資寄与度同-1.17%(同-0.97%)、純輸出寄与度同+1.22%(同+1.17%)と、改定値とほぼ不変であった。個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要は同+4.4%と2014年10-12月期以来の極めて強い伸びで、減税効果などによる内需主導の経済拡大となっている。7-9月期の実質GDP成長率は同+2%台後半への減速を見込んでいるが、個人消費が予想以上に強い拡大となっており、同+3%台への上振れの可能性が出てきている。

20180929図5

耐久財受注(8月)は+4.5%、除く運輸関連同+0.1%、非国防資本財出荷(除く航空機)同-0.5%、同出荷同+0.1%

8月の耐久財受注は+4.5%、除く運輸関連同+0.1%。設備投資の先行指標となる非国防資本財出荷(除く航空機)同-0.5%のマイナス、GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる同出荷は同+0.1%と弱めの伸びだった。ただし同受注・出荷ともに7月の大幅増により7-9月期は前期比プラスの位置にある。企業部門も年内は堅調な拡大を続けるとの見方を支持する結果である。

20180929図6

実質個人消費(8月)は前月比+0.2%、PCEデフレーターは前月比+0.1%(前年比+2.2%)、同コア前月比横ばい(前年比+2.0%)

8月の実質個人消費は前月比+0.2%と堅調な伸び。前月の同+0.3%の強めの伸びと合わせ、7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+3%台になるペースで、筆者個人予想である同+2%台半ばより上ぶれて推移している。減税効果による個人消費の拡大は継続している。実質可処分所得の伸びは前年比+2.9%と依然+3%レベルの拡大となっており、経済拡大をけん引する個人消費が+3%レベルの増加を継続する可能性を示唆している。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.1%(前年比+2.2%)、食品及びエネルギーを除く同コア指数は前月比横ばい(前年比+2.0%)と、いずれも前年比伸び率+2%台を維持した。今後総合PCEインフレ率、コアPCEインフレ率ともに前年比伸び率をやや低下させて、年末にはいずれも同+1.9%レベルで着地すると見る。もっともインフレ率がFRBの目標である+2%を概ね持続的に維持している状況であり、FF金利誘導目標が来年にかけ3%台に引き上げられるとの個人予想を支持する結果である。

20180929図7



<経済レポート> 目先は好調維持:米企業部門動向

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米企業部門の設備投資は現在強めの拡大を続けており、年内は堅調な拡大を持続すると見る。しかしながら、トランプ政権の政策効果の剥落やこれに伴う企業景況感の悪化、中期的に低い設備稼働率などを背景に来年には拡大ペースを減速させると見る。トランプ政権の対中国を始めとする通商政策の動向は依然波乱要因である。

年内の設備投資は拡大を続けよう

米企業部門の設備投資は強めの拡大を続けている。GDP統計上の設備投資は、2018年1-3月期に前期比年率+11.5%、4-6月期に同+8.5%と2桁前後の拡大を見せた。2015年~16年初にかけて一時マイナス成長に転化した企業部門がここ2年間回復を見せている。企業部門の回復は特に2017年のトランプ政権発足後に顕著である。同政権のプロ・ビジネスな政策が企業部門の設備投資意欲をも刺激した可能性がある。

2018年後半も設備投資は堅調に拡大する可能性が高いことを月次の指標も示唆している。7-9月期の非国防資本財出荷(航空機を除く)は7月までで前期比年率+6.5%とプラス成長かつペースが加速している。同受注も+8.5%と堅調で、この設備投資拡大ペースが年内持続する可能性を示唆している([第1図])。鉱工業生産指数は上昇基調を継続しており、8月現在で前年比+4.9%と実に2010年以来の強い伸びとなっている。うち製造業も同+3.1%と2012年以来の強い伸びを示している([第2図])。企業収益もまず堅調に推移している。4-6月期の企業収益(在庫評価・資本減耗調整後)は前年同期比+7.7%と3四半期連続で伸びが加速した。企業ネットキャッシュフローは、「減税及び雇用法」の法人税支払い額が減少し、2017年の水準(海外収益蓄積に対する2017年末の一時課税影響を除く)から大幅に増加した([第3図])。

こうした短期指標からは、年内いっぱい企業部門が堅調に拡大していく可能性が高いと見る。GDP統計上の設備投資は、2018年通年で前年比+8%レベルの強い伸びを個人予想する。

[第1図]
20180924図1

[第2図]
20180924図2

[第3図]
20180924図3

来年は設備投資拡大ペースは減速すると見る

ただし、かかる企業部門の拡大が今後中期的に持続的とは言いにくい。海外経済の回復と、トランプ政権政策期待という外的要因が、2017年以降の企業部門の回復を支えてきたといえる。IMFによれば、2017年は中国を含むアジア新興国で前年比+6.5%前年並みの高い成長が維持され、ユーロ圏でも同+2.4%と2%台成長に加速した。しかし2018年は、中国経済成長率が前年の同+6.6%から同+6.6%に減速が見込まれるうえ、ユーロ圏も同+2.2%程度の成長に減速の見込みである(IMF「世界経済見通しアップデート」2018年7月による)。トランプ政権の政策については、まず2017年末に成立した「減税及び雇用法」における法人税減税も企業部門拡大要因だったといえる。しかし、同減税効果は主に従業員還元や自社株買いに充てられたと考えられるうえ、来年以降は減税による成長率押し上げ効果は剥落していくだろう。企業部門への活性化策としてトランプ大統領は、1月の一般教書演説で10年間1.5兆ドルのインフラ投資計画を表明したが、政府財源の根拠が希薄であることなどから議会の同意が得られておらずこれまでに実態的な進展は見られない。

企業景況感も低下傾向にある。フィラデルフィア連銀製造業景況感調査における設備投資DI(6ヶ月後)は2017年半ばをピークに現在にかけて低下傾向にあり、今後設備投資の伸び率が低減していく可能性を示唆している([第4図])。鉱工業の設備稼働率は8月現在で78.1%と、1972-2017年平均の79.8%に回復していない。設備稼働率の相対的な低さは、設備投資がやや過大に拡大していることをも示唆しており、今後設備投資の拡大ペースが持続的でなくなる可能性を示唆する材料である。

在庫循環図は現在「在庫積み増し」局面から「意図せざる在庫増」局面に移行しつつある([第5図])。年内いっぱいは在庫積み上げが成長を押し上げる要因になると見るが、来年以降は在庫調整が成長にマイナス寄与する局面に入る可能性が高いと見る。

[第4図]
20180924図4

[第5図]
20180924図5

対中貿易戦争は本格化:2000億ドル相当に10%の追加関税

トランプ大統領は9月17日の声明で、米通商代表(USTR)宛に通商法301条に基づき中国からの輸入約2000億ドルに対する追加輸入関税賦課を指示した旨表明した、追加関税は24日から発効し年末までは10%とし、2019年1月1日から25%とするとされた。さらに中国が米国からの農産物輸入に対し報復を実施した場合、さらに2670億ドル相当の中国からの輸入製品に対する追加関税実施をただちに実施するとした。USTRは同日、同追加関税の実施と対象となる5745品目のリストを公表した。米国の対中財サービス輸入は2017年で約5055億ドル、財・サービス収支赤字は約-3756億ドルとなっている([第6図])。7月6日に340億ドル相当、8月23日に160億ドル相当の品目につきすでに実施された追加関税と合わせ、すべての追加関税が実施されれば、中国からの輸入額のほぼすべてに相当する金額が追加関税の対象となることになる。

現在のところ、中国に対する貿易戦争は米国の輸出入全体に対して大きな影響は見られない。また、企業の受け取り価格と支払い価格の差額である交易条件は2016年後半以降悪化傾向にあるが、これはむしろドル安傾向が企業の支払い価格を押し上げている要因が大きいとみられる([第7図][第8図])。

その他の国に対する通商政策は、欧州連合との間では関税ゼロの方向で合意を見た(9月10日USTR公表)。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉については、メキシコとの間で調達比率・数量制限・為替条項を含む合意内定に達したもののカナダとの交渉は前進がみられず、NAFTA再交渉が米国メキシコ間でのみ実施される可能性も示唆されている(各種報道による)。日本に対しては、24日に日米通商協議(FFR)、26日に日米首脳会談が実施される予定である。対日輸入については自動車・農産物がその焦点となろう。

[第6図]
20180924図6

[第7図]
20180924図7

[第8図]
20180924図8


貿易戦争は引き続き不確実要因

今後トランプ大統領がどこまで貿易戦争を拡大させるか、またその米経済への影響は不確実と言わざるを得ない。トランプ大統領の仕掛けている「貿易戦争」は当初の市場の想定以上に具体化している。当レポートでは、貿易戦争は11月の米議会中間選挙までには収束し、米中間に何等かの貿易に関する合意がなされるとの想定で、米経済成長への影響は限定的になると見たい。リスクシナリオとして、この制裁関税及び報復関税が長期化した場合には米国消費や生産に与えるマイナスの影響を見ておく必要があるだろう。


以上、米企業部門の設備投資については、年内は堅調な拡大維持を見込むものの、トランプ政権の景気刺激策効果の剥落、低い設備稼働率、在庫循環を背景に来年以降は減速を見ておきたい。トランプ大統領の通商政策は依然として波乱要因である。企業部門に係る月次統計は依然高等、雇用市場も堅調に拡大し、株価は9月に史上最高値を更新するなど引き続き好調である。これらの好調な指標が現状の企業や消費者の景況感を支えている可能性が高い。ただ、中期的なファンダメンタルズがそろそろ過熱から調整局面に入りつつあることは常に留意しておくべきであろう。

<経済指標コメント> 日本の8月全国コア消費者物価指数は前年比+0.9%

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[日本]

全国消費者物価指数(8月、生鮮食品を除く総合)は前月比+0.3%(前年比+0.9%)

8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPI)は前月比+0.3%と強めの伸び、前年比では+0.9%と前月の同+0.8%から伸び率を上昇させた。食品及びエネルギーを除く総合指数(いわゆるコアコアCPI)は前月比+0.2%(前年比+0.4%)とこれも前年比伸び率を2ヶ月連続で上昇させた。ガソリン、宿泊代などが前年比の伸び率上昇に寄与している。5月あたりをボトムにCPIインフレ率が持ち直し始めている。日本経済は需要超過状態にあり物価には潜在的に上昇圧力が継続していると見たい。コアCPI、コアコアCPIともに前年比上昇率が年末から来年初にかけて前年比+1%レベルに上昇するとの見方を維持する。

20180922図1

[米国]

住宅着工戸数(8月)は年率1282千戸(前月比+9.2%)、着工許可件数は同1229千件(同-5.7%)

8月の住宅着工戸数は年率1282千戸(前月比+9.2%)と3ヶ月ぶりかつ大幅な増加、6ヶ月移動平均も同1260.8千戸(同-0.1%)とほぼ横ばいにまで回復した。一方で住宅着工許可件数は同1229千件(同-5.7%)と過去5ヶ月で4回目の減少、6ヶ月移動平均は同1311.0千件(同-1.2%)と4ヶ月連続で低下している。先行指標となる着工の減少は、米国住宅市場が今後減速局面に入るリスクを示唆する材料である可能性がある。

20180922図2

中古住宅販売戸数(8月)は年率5340千戸(前月比横ばい)、在庫期間は4.3ヶ月

8月の中古住宅販売戸数は年率5340千戸(前月比横ばい)、在庫期間は4.3ヶ月と前月比横ばい。中古住宅販売の3ヶ月移動平均は4ヶ月連続で低下しており、依然中古住宅販売市場には減速感がある。ただし公表元の全米不動産業協会(NAR)はプレスリリースで「在庫が安定からやや増加に向かう中、消費者が住宅市場に回帰する環境が整った」とやや強気な見方を述べている。

20180922図3

<経済レポート> 消費が牽引:日本経済定点観測

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日本経済は4-6月期に強い拡大ペースに回復し、引続き需要超過状態が続いている。雇用の拡大と賃金上昇を背景に家計消費が今後も経済をけん引しよう。2018年通年では前年比+1%前後の成長を個人予想する。インフレ率は日銀目標に照らせば低位であるものの、今後コアインフレ率は前年比+1%レベルに上昇して推移すると見る。もっとも日銀の金融政策は、新たなフォワードガイダンスのもと、来年の消費税率引き上げ効果の確認までは現状のスタンスを維持せざるを得ない可能性が高い。また、自然災害の影響やトランプ政権の通商政策は上記シナリオに対するリスク要因である。

経済は需要超過状態が続く

日本経済は、需要超過の中引続き潜在成長率を上回るペースで拡大している。内閣府推計によれば、4-6月期の日本のGDPギャップ(GDP統計1次速報値時点)は+0.3%の需要超過となっている([第1図])。同推計によれば日本経済は2017年1-3月期以来6四半期連続の需要超過である。その後4-6月期実質GDP成長率の2次速報値は前期比年率+3.0%と大幅に上方改訂された。結果4-6月期現在の経済のプラスの需給ギャップ(需要超過)幅は+0.6%レベルに拡大している可能性が高い。筆者個人は今後年後半も潜在成長率(内閣府推計では2018年4-6月期現在で前期比年率+1.1%)並みの成長を予想している。1-3月期のマイナス成長の影響で通年の成長率は4月時点の当レポートの予想からやや下振れするものの、2018年暦年、年度成長率いずれも前年(度)比+1%レベルに着地すると個人予想する(9月9日付当レポート参照)。結果日本経済の需要超過状態は少なくとも、来年2019年10月に予定されている消費税率引き上げまでは継続しよう。

経済が需要超過であることは、インフレ上昇圧力が今後も継続することを示唆する材料である。現在の日本のコアインフレ率(生鮮食品を除く総合消費者物価指数)は7月時点で前年比+0.8%の伸びにとどまっており、日本銀行の目標とする2%にはまだ遠いところにある。しかし後述の通り、今後日本経済の需要超過状態が継続して現状の物価上昇の趨勢が維持されれば、来年には+1%台前半のインフレ率が実現する可能性は十分にある(消費税影響を除く)。

短期的には、7月から9月にかけての自然災害が、年後半に一時的な生産の低下をもたらす可能性がある。一方で復興需要による生産回復が見込めることから、中期的な経済見通しへの影響は大きくはないと見ておきたい。以下では、需要項目ごとに現状の日本経済の状況を点検して、年内の動向を占っていく。

[第1図]
20180917図1

所得拡大で家計消費は経済をけん引する

家計消費は堅調な拡大で経済をけん引している。直近では、4-6月期GDP統計上の実質家計消費は前期比年率+2.9%と2017年4-6月期以来の強い伸びだった。もっともGDP統計上の家計消費の伸びはここ数四半期の間プラス成長とマイナス成長の間を行き来しており、短期的には安定的とは言いにくい。しかし、総務省の実質総消費動向指数(マクロCTI)の動きからは、今年に入り家計消費の総額の伸びが加速している状況が読み取れる([第2図])。また景気ウォッチャー調査においても、今年の夏の猛暑が消費の拡大というプラスの効果をもたらしたことが読み取れる。

中期的にみても、雇用や賃金の状況から家計所得は十分な購買力の伸びを維持している。労働力調査による2018年4-6月期時点の就業者数の伸びは前年比+2.2%となる([第3図])。現金給与総額(所定内給与)も、企業の賃金引上げ(ベア)などの効果で今年に入り上昇率を高め、7月時点で前年比+1.0%の伸びとなっている([第4図])。インフレ率(7月時点で同+0.9%)を差し引いても、家計の購買力は前年比約+2%台半ばの伸びがある計算になる。この所得の伸びは、潜在成長率を上回る成長を支えるに十分な拡大ペースである。

短期的には、7月の豪雨、9月の台風21号や北海道地震といった自然災害が生産や物流に悪影響をもたらしていることから、今後当面は家計消費の動きも不確実にならざるを得ない。しかし中期的には来年にかけて家計消費が経済をけん引する環境は整っているといえるだろう。

[第2図]
20180917図2

[第3図]
20180917図3

[第4図]
20180917図4

企業部門は今後拡大ペース調整へ

企業部門も現状は好調である。4-6月期のGDP統計上の設備投資は前期比年率+12.8%と、2015年1-3月期以来の2桁成長となった。その後の月次指標も堅調である。7-9月期の機械受注(船舶・電力を除く民需)は7月までで前期比+2.2%とプラスの位置につけており、今後の企業の設備投資の拡大継続を示唆している。

しかしながら、鉱工業生産指数は7月まで3ヶ月連続して低下、やや頭打ちの傾向にある。また在庫循環図は「意図せざる在庫増」局面に入っており、今後在庫調整が生産の抑制要因となることが考えられる([第5図])。企業部門のベースラインの拡大ペースは現状に比べより巡航速度に近いペースに減速しそうだ。自然災害による企業部門の生産低下が今後の統計に顕在化する可能性もある。短期的には企業部門の生産と設備投資も災害影響で変動の可能性はあると言わざるを得ない。ただし、「景気ウォッチャー調査」によれば7月豪雨からの復興需要がすでに企業部門に見られるなど、生産回復の動きも顕在化しつつある。自然災害は中期的な経済見通しには大きな影響を与えないと見ておきたい。

さらに、トランプ大統領の通商政策の影響も不確実性要因である。米トランプ政権は日本車に愛する輸入関税引き上げの可能性を依然示唆している。9月下旬開催の方向で調整中の第2回日米貿易協議及び日米首脳会談において本件協議がなされる模様だ。仮に関税引き上げや輸入制限が実現した場合、日本から米国への自動車輸出及び自動車生産には相応の悪影響があると言わざるを得ない。

[第5図]
20180917図5

インフレ率は来年にかけて1%台へ:金融政策は消費税率引き上げまで様子見

コアインフレ率は来年にかけて、前年比+1%前後に上昇して推移すると見る。生鮮食品を除く総合消費者物価指数(いわゆるコアCPI)は7月現在で前年比+0.8%と、2月の同+1.0%をピークにやや伸び率が低下している。しかし、今後コアCPIが前月比+0.1%の伸びを継続すれば、来年にかけてコアCPIインフレ率は上昇率をやや高め、前年比+1%強の伸びに上昇する計算となる([第6図]、消費税影響を除く)。一方で、需給ギャップとコアインフレ率のインプルな相関からは、+1%のインフレ率が維持されるには需給ギャップが約+0.9%の需要超過となる必要がある([第7図])。現在の需給ギャップを約+0.6%とした場合、今後潜在成長率を上回る成長が継続すれば、需給との関係からも1%台のインフレ率維持は可能な範囲にある。また、失業率と賃金上昇率の関係を示すシンプルなフィリップス曲線からは、現状の失業率(7月現在で2.5%)に相当する賃金上昇率は約+1.4%と計算される([第8図])。需給の引き締まりは、今後もインフレ率に上昇圧力を継続すると見ておく。

日本銀行の金融政策は、2019年10月の消費税率引き上げの影響見極めまでは、現状の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みを維持すると今や見ざるを得ない。日銀は7月30-31日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の事実上の柔軟化を決定した。そこでは、日本銀行当座預金のうちマイナス金利が適用される政策金利残高を従前の10兆円程度)から減少させること、また10年物国債金利をゼロ%で推移するようコントロールすることを維持しつつその水準を「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるもの」することなどが決定された。新たな長期金利の変動幅は現状の概ね±0.1%の幅から「上下その倍程度に変動し得る(7月31日黒田総裁記者会見)」とされた。長期金利はこの日銀決定以降今日まで概ね0.10%前後で推移しているが、最大0.20%レベルまでの上昇は許容しうることになる。

7月31日の金融市場調節方針に関する公表文に追加された「フォワードガイダンス」では「2019 年10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定」しているとされた。このフォワードガイダンスから推すに、大幅な景気の加速やインフレ率上昇がない限り、消費税率引き上げ前の金融緩和政策の調整は困難ということにならざるを得ない。1%のインフレ率とプラスの需給ギャップからは、非伝統的金融政策を継続する意義は薄れつつあると考える。しかし、消費税率引き上げによる一時的な景気下振れの可能性のあるタイミングでは緩和政策の解除は現実的には取りにくい手段と言わざるを得ない。

[第6図]
20180917図6

[第7図]
20180917図7

[第8図]
20180917図8

<経済指標コメント> 米8月小売売上高は前月比+0.1%

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[日本]

実質GDP成長率(4-6月期、2次速報値)は前期比年率+3.0%

4-6月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率+3.0%と、1次速報値の同+1.9%から大幅上方改訂となった。需要項目別内訳は、家計消費同+2.9%(1次速報値同+2.8%)、住宅投資同-9.3%(同-10.3%)、設備投資同+12.8%(同+5.2%)、公的需要同+0.7%(同+0.7%)、企業在庫寄与度同横ばい(同+0.2%)、純輸出寄与度同-0.5%(同-0.5%)。設備投資の大幅上方改訂が上ぶれの主因。家計消費・住宅投資・設備投資を合わせた国内最終民間需要は同+4.5%と、成長率は前期の同-0.9%のマイナスからGDP統計上は大幅に回復したとの結果になった。計算上は、2018年通年成長率は前年比+1%前後を維持できる計算になる。

20180916図1

景気ウォッチャー調査(8月):現状判断DIは48.7(前月比+2.1ポイント)、先行き判断DIは51.4(同+1.4ポイント)

8月の景気ウォッチャー調査、3ヶ月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは48.7(前月比+2.1ポイント)、2~3ヶ月先の景気の先行きに対する判断DIは51.4(同+1.4ポイント)といずれも反転上昇した。景気の判断理由として「暑い日が続いたせいか、ドリンクやデザートがよく動いた(一般レストラン)」「猛暑を受けて夏物衣料やUVケア用品等が好調に推移した(百貨店)」など猛暑によるプラス効果のほか、「7月豪雨等を踏まえた災害対策工事の発注がかなり出てきた(建設業)」など豪雨の復興需要効果もみられる。4-6月期の成長加速後も、災害にかかわらず街角景気は堅調である。もっとも9月にも、台風21号や北海道地震と自然災害が続き、一部の生産や物流に影響がでていることから、9月調査ではいったん街角景気も悪化の可能性がある。

20180916図2

機械受注(7月、船舶・電力を除く民需)は前月比+11.0%(前年比+13.9%)

7月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+11.0%と3ヶ月ぶりかつ大幅な増加。7月までの7-9月期同受注は前期比+2.9%とプラスの位置につけている。4-6月期に続き7-9月期以降も堅調な設備投資拡大を示唆する結果である。

20180916図3

[米国]

消費者物価指数(8月)は前月比+0.2%(前年比+2.7%)、同コア前月比+0.1%(前年比+2.2%)

8月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.2%(前年比+2.7%)、食品及びエネルギーを除くコアCPIは前月比+0.1%(前年比+2.2%)と、いずれも前年比の伸び率を前月比縮小させた(前月はそれぞれ+2.9%、+2.4%)。しかし昨年の8、9月は総合CPIが強めの伸びを示しており、これらとの対比で今年の8月以降CPIインフレ率が低下することは想定通りである。年末には総合CPI、コアCPIともに前年比+2%強に着地するとの見方を維持する。

20180916図4

企業在庫(7月)は前月比+0.6%、企業売上高は同+0.2%、在庫売上高比率は1.34倍

7月の企業在庫は前月比+0.6%と強めの伸び。企業売上高は同+0.2%、結果在庫売上高比率は1.34倍と6ヶ月ぶりに長期化した。ここ半年ほど企業売上の増加を主因に在庫の伸びが低減していたが、在庫循環図は依然「在庫積み増し」局面にある。年後半は在庫投資が成長の押し上げ要因になると見る。

20180916図5

小売売上高(8月)は前月比+0.1%(除く自動車関連同+0.3%

8月の小売売上高は前月比+0.1%と弱めの伸びにとどまった。もっとも前月の同+0.7%の大幅増の反動もあり、また自動車販売の減少が全体を押し下げており、自動車及び同部品ディーラーを除く売上は同+0.3%と堅調。自動車・ガソリン・レストランを除くコアの小売売上高も+0.2%とまずますであった。業種別内訳は、自動車及び同部品ディーラー同-0.8%、家電店同+0.4%、ガソリンスタンド同+1.7%、衣服店同-1.7%などばらつきがみられた。なお、小売売上高全体の前年比伸び率は+6.7%と2012年以来の高水準にある。総じて個人消費は依然強い拡大ペースを維持していると見る。

20180916図6

<経済レポート> 好調の行く末に:米経済定点観測

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米国経済は個人消費を中心に好調な拡大を続けている。2018年通年の成長率は前年比+2.8%との個人予想を維持する。インフレ率もFRBの目標とする2%水準で今後推移し、FOMCは年内にあと2回の利上げを決定すると個人予想する。一方で企業景況感や住宅市場には減速の兆しがみられることにも留意が必要である。また、トランプ大統領の対中輸入関税政策等の影響はまだ統計で顕在化しておらず、不確実性要因である。

個人消費は年内成長の牽引役

米国経済は好調に拡大し、4-6月期は前期比年率+4.2%(改定値)の極めて強い成長だった。なかでも個人消費は所得税減税の効果もあり成長の牽引役となっている。4-6月期のGDP統計上の実質個人消費は前期比年率+3.8%(改定値)と2014年10-12月期以来の強い伸びとなった。7月に入っても、実質個人消費は前月比+0.2%と堅調である。7-9月期のGDP統計上の実質個人消費は前期よりは減速するものの、前期比年率+2%台後半の堅調な拡大を維持すると見る。

昨年末のトランプ政権税制改革に伴う個人の購買力は確実に拡大している。個人の名目可処分所得は7月現在で前年比+5.3%と、昨年の同+4%台半ばから伸びが拡大している。名目可処分所得の伸び率上昇には税金の可処分所得へのマイナス寄与縮小が大きな要因となっている([第1図])。減税による名目可処分所得の伸びへの寄与度はおおむね+0.5%レベルと計算される。一方でインフレ率が上昇したことで、実質可処分所得の伸び率は今年に入り前年と概ね横ばいの前年比+3%前後で推移している([第2図])。とはいえ、+3%台の実質可処分所得の伸びは潜在成長率を超える経済成長を十分に支えうる伸びである。

雇用市場の状況からも個人所得の堅調な拡大が確認できる。雇用市場では、非農業部門雇用者数が7月現在で前年比+1.6%の増加、時間当たり賃金が同+2.7%の上昇ペースとなっている。これに週平均労働時間の伸び同+0.3%を加えると、雇用者所得は同+4.6%の伸びを維持している計算になる。インフレ率2%を差し引いても、個人の購買力は+2%台後半のペースで拡大していることになる。

[第1図]
20180909図1

[第2図]
20180909図2

企業部門の景況感は軟化しつつある

企業部門は2018年に入り拡大ペースを強めている。GDP統計上の設備投資は1-3月期に前期比年率+11.5%、4-6月期に同+8.5%と成長を加速させた。GDP統計上の設備投資(機器投資)の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機を除く)は7月に前月比+0.9%と強い伸びを示した。7-9月期の設備投資も前期比年率+8%レベルの拡大が期待できるペースである。

一方で、企業景況観や設備投資意欲がここにきてやや減速していることには留意が必要である。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数は、直近の高値である5月の+34.4ポイントから8月にかけ+11.9ポイントに急落した([第3図])。また同調査による6ヶ月先の設備投資DIも、昨年7-9月期をピークに低下に転じている([第4図])。

企業景況観はトランプ大統領就任後かなり過熱気味に好転した。上記フィラデルフィア連銀製造業景況感指数の水準は金融危機直前の2004年の水準を超えていた。同大統領のプロ・ビジネスな政策が企業部門に好感されたためと思われる。しかしながら、最近のトランプ氏の保護主義的通商政策は、当初想定以上に攻撃的なものとなっている。鉄鋼・アルミへ輸入制限、対中国の関税引き上げなど、当初は交渉カードとみていた保護主義的通商政策を現実に実施している。こうした動きが米企業からも懸念が持ち上がっていることが推測される。過熱感のある企業部門の成長が今後循環的な減速に入る可能性を見ておく必要があろう。

[第3図]
20180909図3

[第4図]
20180909図4

住宅投資は減速を見込む

住宅市場はここ数ヶ月間減速が目立っている。住宅着工戸数は今年の6月に前月比-12.9%と急減し、7月も同+0.9%の増加にとどまった。住宅着工戸数は4-6月期に続き7-9月期にも前期比マイナスの伸びになるペースである。住宅着工の減少の要因の一つは、輸入制限による原材料価格上昇にあるとも考えられる。また労働市場のタイト化により労働力供給に制約が生じている可能性がある。

住宅販売市場では、中古住宅販売戸数が4月から7月まで4ヶ月連続で減少している。全米不動産業協会(NAR)は、住宅価格上昇や在庫不足を販売減少の要因としている。全米建設業協会(NAHB)の住宅市場指数は引き続き高水準にあるものの、昨年12月をピークに緩やかに低下傾向にある([第5図])。同指数は来店客数などの傾向から住宅市場の主に需要の強さを表す指数である。同指数の減速は、住宅市場が供給面のみならず需要面からも減速を始めていることを示唆している。背景には住宅ローン金利上昇が考えられる。

供給面、需要面の双方から住宅市場が減速しているとすれば、年内住宅投資が成長を押し上げる要因になるとは考えにくい。住宅投資は成長率に対する下方リスク要因といえる。

[第5図]
20180909図5

輸入関税政策の影響は不確実性が高い

トランプ政権の保護主義的通商政策の影響は輸出入統計には顕著には表れていない([第6図])。同政権は鉄鋼・アルミ輸入関税引き上げを選択的に3月より実施した。また対中国の制裁輸入関税引き上げを、7月6日に340億ドル相当、8月23日に160億ドル相当の品目につき実施、中国はそれぞれに対し即時に報復輸入関税引き上げを実施した。米国はさらに2000億ドルの追加制裁を準備している。今後対中国を中心に輸出入の減速が考えられるが、中国側が報復措置を実施していることから、対中の貿易赤字が即座に縮小するかは不確実である。8月以降の統計で対中貿易戦争の影響を確認することとしたい。

在庫循環は依然在庫積み増し局面にあり、今後年内は成長率にプラスの寄与をすると見る。在庫投資は4-6月期には予想外の在庫縮小で成長を-1%近く押し下げる要因なったが、7-9月期はその反動で大幅プラス寄与を見込む。

以上から、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+2%台後半、10-12月期も同+3%レベルの成長となり、2018年通年の成長率は前年比+2.8%との予想を維持する。ただし、企業景況感の減速や住宅市場の軟化は、景気の循環的な減速の兆しである可能性には留意が必要である。米経済はすでに需要超過で、中立から過熱領域に入っている。2018年は減税効果で一時的に成長加速するものの、2019年には効果剥落で+2%前半に成長は減速しよう。さらに景気サイクルの転換がここ2年以内には訪れる可能性を見ておく必要があろう。

[第6図]
20180909図6

FF金利誘導目標は来年3%台へ

インフレ率は今後来年にかけてFRBが目標とする2%水準で推移すると見る。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は7月現在で前年比+2.3%、食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは同+2.0%となっており、3月以降概ね持続的に2%レベルで推移している。年末にはPCEインフレ率、コアPCEインフレ率のいずれもが同+2%水準に着地すると見る([第7図])。雇用市場では、時間当たり賃金上昇率(生産及び非監督雇用者)が8月時点で前年比+2.8%と、失業率低下に遅行してようやく上昇を始めた([第8図])。労働市場や生産市場の需給の引き締まりは、インフレに今後も上昇圧力を継続すると考えられる。

こうした背景から、FRBは今後も利上げを継続すると見る。FOMCは9月、12月の定例会合でそれぞれ+0.25%の利上げを決定し、2018年末のFF金利誘導目標は2.25-2.50%になると個人予想する。また2019年にも2回以上の利上げが実施され、FF金利誘導目標レンジは+3%台に上昇すると見る。現状ではインフレ実績は目標インフレ率とほぼ同じレベルにあり、需給ギャップは需要超過と考えられる。テイラー・ルール公式において、仮にインフレギャップと需給ギャップがゼロとした場合、インフレ実績=2%、自然利子率=1.5%における適正FF金利水準は3.5%と計算される。

FOMC委員の四半期ごとの経済予測の中央値(6月現在)に基づけば、長期的な均衡インフレ率は+2%、FF金利水準は2.9%とされている([第1表])。これは、FOMCが自然利子率を約+0.9%とみていることを示唆している。自然利子率が+0.9%程度であった場合でも適正FF金利は2.9%であり、さらに実際には需給ギャップが需要超過であることから、現状でも事実上3%台のFF金利誘導目標が正当化される。

[第7図]
20180909図7

[第8図]
20180909図8

[第1表]
20180909表1

[第2表]
20180909表2


<経済指標コメント> 米8月非農業部門雇用者数は前月比+201千人

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[日本]

実質家計消費支出(7月、二人以上の世帯)は前月比-1.1%(前年比+0.1%)

7月の実質家計消費支出(二人以上の世帯)は前月比-1.1%と前月の同+2.9%の大幅増から反落した。しかし、3ヶ月移動平均は同+0.5%と2ヶ月連続の上昇。猛暑の影響は、前月6月はエアコン売上増などに表れていた。7月の実質家計消費前年比の伸びには自動車(寄与度同+1.17%)、移動電話通信料(同+0.48%)などが寄与した。実質総消費動向指数は前月比+0.1%と5ヶ月連続の上昇、4-6月期比では+0.4%と、7-9月期の実質家計消費も2四半期連続のプラス成長になるペースである。

20180908図1

[米国]

新車販売台数(8月、乗用車及び軽トラック)は年率16.6百万台(前月比-0.6%)

8月の新車販売台数(乗用車及び軽トラック)は年率16.6百万台(前月比-0.6%)と2ヶ月連続の減少。自動車販売には減速傾向がみられる。自動車販売台数は昨年にいったん飽和状態になったこと、自動車ローン金利上昇やガソリン価格上昇がその一因である可能性がある。

20180908図2

雇用統計(8月):非農業部門雇用者数は前月比+201千人、失業率は3.9%

8月の雇用統計、事業所調査による非農業部門雇用者数は前月比+201千人と前月の同+147千人から増加ペースが加速した。ただし3ヶ月移動平均は同+185.3千人と3ヶ月ぶりに+200千人を割り込んだ。業種別内訳は建設業同+23千人、専門ビジネスサービス業同+53千人、教育・医療業同+53千人などが雇用を増加させた一方、製造業同-3千人、小売業同-5.9千人などは雇用が減少し内容はまちまちだった。時間当たり賃金(生産及び非監督雇用者)は前年比+2.8%と今年に入り最も高い伸び率に回復した。家計調査による失業率は3.9%と前月並み。労働参加率は62.7%と前月比-0.2%ポイント低下した。総じて米雇用市場はタイトでありまた雇用者数は堅調な拡大を続けているといえる。時間当たり賃金上昇率も失業率低下に遅行して上昇方向にある。ただ、中期的には循環的な減速局面に入っているとの見方も不変である。

20180908図3

<経済指標コメント> 米7月実質個人消費は前月比+0.2%

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[日本]

完全失業率(7月)は2.5%

7月の完全失業率は2.5%(前月比+0.1%ポイント)と2ヶ月連続の上昇。もっとも、就業者数は前月比+0.1%、労働力人口は同+0.1%といずれも4ヶ月ぶりに増加に転じており、労働市場の一時的縮小からの転換の兆しがみられる。労働参加率も61.4%(同+0.1%)と上昇に転じた。2.5%の失業率は1993年以来の低水準であり労働市場は依然タイトである。一方で労働参加率の6ヶ月移動平均は61.5%と2002年以来の高水準にある。労働市場の需給の引き締まりは一部労働市場の拡大で緩和されている。

20180902図1

鉱工業生産指数(7月)は前月比-0.1%

7月の鉱工業生産指数は前月比-0.1%と3ヶ月連続の低下。出荷指数は同-1.9%、在庫指数同-0.2%、在庫率指数同+0.4%。生産指数の3ヶ月移動平均は2ヶ月連続で低下に転じた。資本財出荷指数は同-4.9%と低下。7月までの7-9月期同出荷は前期比-4.3%とマイナススタートになった。ここのところ鉱工業生産指数はやや頭うち感がみられる。公表元の経済産業省は基調判断を「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に下方修正した。

20180902図2

住宅着工戸数(7月)は年率958千戸(前月比+4.7%)

7月の住宅着工戸数は年率958千戸(前月比+4.7%)と増加に転じたが、前月の同-8.2%の大幅減をカバーできなかった。3ヶ月移動平均も同956.2千戸(同-1.2%)と4ヶ月ぶりに低下に転じた。

20180902図3

[米国]

実質GDP成長率(4-6月期、改定値)は前期比年率+4.2%

4-6月期の実質GDP成長率(改定値)は前期比+4.2%と速報値の同+4.1%から更に上方改訂され、強い成長となった。需要項目別内訳は、個人消費同+3.8%(速報値同+4.0%)、設備投資同+6.2%(同+7.3%)、住宅投資同-1.6%(同-1.1%)、政府支出同+2.3%(同+2.1%)、在庫投資寄与度同-0.97%(同-1.00%)、純輸出寄与度同+1.17%(同+1.06%)。速報値と比べて本質的に大きな改訂ではなく、成長見通しへの影響は限定的である。2018年通年の成長率個人予想を前年比+2.8%に維持する。

20180902図4

実質個人消費(7月)は前月比+0.2%、PCEデフレーターは前月比+0.1%(前年比+2.3%)、同コア前月比+0.2%(前年比+2.0%)

7月の実質個人消費は前月比+0.2%と堅調な伸び。内訳は、自動車販売の減少を反映して耐久消費財消費が同-0.5%と低下、小売売上高の増加を反映して非耐久消費財消費が同+0.6%の大幅増、サービス消費は同+0.2%だった。4-6月期に前期比年率+3.8%と大幅な拡大を見せた実質個人消費は7-9月期も同+2%台後半の強い伸びとなると見る。FRBが参照するインフレ指標である個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は前月比+0.1%(前年比+2.3%)、同コア前月比+0.2%(前年比+2.0%)と、いずれも+2%台を維持し、FRBのインフレ目標付近で推移している。今後年末にかけてPCEデフレーター、同コアいずれも前年比+2%の伸びで推移する見通しが維持できる。FRBが9月、12月のFOMC定例会合でいずれも利上げを決定するとの見方に整合する結果である。

20180902図5