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<経済レポート> 陽あたり良好~米国経済定点観測

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個人消費を中心に米国経済は拡大ペースを取り戻している。企業部門も企業業績の回復を背景に設備投資意欲は高水準にある。2014年通年では2%の成長を達成し、失業率低下やインフレ率上昇と合わせて、来年半ばの利上げが開始できる良好な経済状態と見る。リスク要因は史上最高値にある株価の調整と地政学リスクである。

自動車販売が好調:個人消費は急回復中

米国経済は悪天候を主因とする年初の一時的落ち込みからの回復が加速している。実質GDP成長率は4-6月期に前期比年率+4.2%(改定値)と大幅な拡大ののち、7-9月期は企業在庫積み上げペース軟化を主因に2%台前半に一旦減速すると見る。しかし個人消費ほかの内需は堅調な拡大となり、10-12月期に3%台に再加速すると見る([第1図])。結果筆者個人の2014年通年成長率予想を前年比+2.0%とする。9月時点のFOMC委員経済予測をこれと比較すると[第2図]の通り、筆者個人予想はFOMC委員予測の中心傾向の下限かわずかに下方に位置している。従来FOMC委員の成長率予測は極めて楽観的であり筆者個人予想よりもかなり上方であったが、9月FOMC後に公表された最新の経済予測では、成長率予測が大幅下方シフトしており、従来比現実的な予測になったといえる。

年後半の米国経済で一時懸念されたのが個人消費の失速である。月次の個人消費統計によれば、実質個人消費は3月にいったん回復ののち減速傾向にあり、7月は前月比-0.2%と過去4ヶ月間で2回目のマイナス成長となった(8月31日付<経済指標コメント>参照)。しかし、この懸念を払しょくしたのが8月分小売売上高統計である。8月小売売上高は自動車販売の急増を主因に前月比+0.6%の強い伸び、また速報値で前月比横ばいにとどまっていた7月分も同+0.3%に上方改訂された(9月15日付<経済指標コメント>参照)。これで、7月分の実質個人消費も上方改訂の可能性が出てきたことから、一時マイナス成長の懸念のあった7-9月期実質個人消費は巡航速度といえる前期比年率2%台の成長が視野に入ってきた。

9月以降の個人消費にも期待できる。株価上昇などを背景に消費者センチメントは上昇している。ミシガン大学消費者センチメント指数は9月時点(速報)で84.6ポイントと昨年7月以来の高水準に上昇した。消費者センチメント指数と小売売上高の関係からは、9月にも個人消費拡大のモメンタムが継続していると想像できる([第3図])。中期的にも、雇用拡大ペースと時間当たり賃金上昇が適度なペースを保っていることや、限界消費性向の高さから個人消費は2%台半ばの巡航速度を年末まで保つ可能性が高い。国際ショッピングセンター評議会(ICSC)は、8月には新学期商戦が小売売上高を押し上げチェーンストアセールス売上高は前年比+5.2%となったが、9月も同様に同+4~5%の売上増が見込めるとしている(9月16日付ICSCプレスリリース)。

[第1図]
20140923図1
[第2図]
20140923図2
[第3図]
20140923図3


企業景況感は金融危機後最高水準:設備投資は堅調に拡大しよう

企業部門も堅調な拡大を続けると見る。民間設備投資のうちの機器投資の基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は7月までで前期比年率+8.6%と、前期をやや下回るペースではあるものの堅調な伸び率である。建物などの構造物投資の基礎統計となる民間非住宅建設支出は7月までで前期比年率+11.0%と、前期を上回る伸び率となっている([第4図])。これらに知的財産投資を合わせた民間設備投資は7-9月期に前期比年率+7%強の伸びを見込む。これは前期の同+8.4%からはやや減速するものの持続可能な企業部門の拡大を示すものである。

企業設備投資は今後も堅調な拡大が見込める。設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機関連を除く)は出荷同様7月に入りやや伸びが減速しつつも高水準にある。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数調査における6ヶ月先の設備投資見通しはいまだ高水準にある([第5図])。また企業景況感は極めて良い状態にある。8月ISM製造業指数が2011年来、同非製造業指数が2008年の計測開始以来の高水準に上昇している(9月6日付<経済指標コメント>参照)ほか、9月に入ってもNY連銀製造業指数が27.54ポイントと2009年以来の高水準、同出荷DIも27.08ポイントと3ヶ月連続上昇でこれも2009年以来の水準に上昇している。

民間設備投資拡大に欠かせない企業収益は回復している。4-6月期の企業収益は前年同期比-0.3%と2四半期連続の前年比マイナスだったが、前期の同-4.8%からは大幅にマイナス幅を縮めた。また業種別内訳を見ると、相対的に収益が低迷しているのは株価など金融市場変動の影響を受けやすい金融機関であり、非金融機関の収益は前年比+1.4%とプラスに転じている([第6図])。これに伴い企業ネットキャッシュフローも4-6月期には前年比でプラスに転じている。設備投資の源泉となるネットキャッシュフローの好転は今後の設備投資にとっての大きな好材料である。

[第4図]
20140923図4
[第5図]
20140923図5
[第6図]
20140923図6

内需拡大とドル高で貿易赤字は再拡大を見込む

一方で、企業在庫は7-9月期に成長にマイナス寄与となりそうだ。4-6月期に企業在庫の積み増し加速が成長率を実に+1.39%押し上げたが、その後企業在庫積み増しペースが減速しつつある(9月15日付<経済指標コメント>参照)。7-9月期には逆に企業在庫が成長を-0.5%ほど押し下げると見る。

住宅投資も昨年末から今年初にかけ天候要因などで一時減少したが、4-6月期には前期比年率+7.2%のプラス成長に回帰した。7-9月期の住宅着工件数も振れを伴いながらも総じて増加基調を保っている。7-8月の住宅着工件数平均は4-6月期を+5.2%上回っており、このペースであればGDP統計上の住宅投資も6%台の成長を見込むことができる([第7図])。先行指標となる住宅着工許可件数も8月までで前期を上回る水準にあることから、その後も住宅投資は堅調な拡大を続けると予想する。住宅市場における需要は、新築住宅販売戸数が引き続き月次では振れのある推移をしているものの総じて高水準にある。建設業などの供給能力にむしろ懸念があったが、雇用統計によれば建設業の雇用が7月、8月にそれぞれ+31千人、+20千人増加しており、建設業の供給能力も徐々に回復していることを示唆している。

純輸出は輸入の増加を主因に4-6月期に成長率を-0.43%押し下げたが、7-9月期は輸入の減速で成長にプラス寄与となりそうだ。7月分貿易収支統計によれば、実質ベース財の輸出が前月比+1.3%増加したのに対し、輸入は同+0.5%に留まり、前年比の輸入の伸び率はマイナスに転じている([第8図])。結果、7月時点で財の貿易赤字は前期に比べて大幅に縮小している。7-9月期には財の貿易赤字の縮小により一時的に純輸出が成長にプラス寄与すると見る。もっとも今後は内需拡大加速により輸入が再び増加、また海外経済減速やドル高の影響で輸出が伸び悩むことが予想される。貿易収支赤字の縮小は一時的なものであり、米国経済の拡大加速とともに従来型の貿易赤字状況に回帰すると見る。

[第7図]
20140923図7
[第8図]
20140923図8

失業率は年内6%割れ、インフレ率は来年2%に上昇と見る

失業率は8月現在で6.1%にまで低下しており、今後年末にかけて6%を割り込む水準に低下すると見る。ここ数ヶ月は労働参加率の下げ止まりにより表面上の失業率低下ペースはやや鈍化する傾向があり、また今後労働市場への人口再流入による失業率上昇の可能性がないわけではない。しかしながら、労働参加率低下の多くはスキルミスマッチなどによる構造要因であると筆者個人は考えており、労働参加率は今後も横ばいから低下傾向を辿ると見たい(9月14日付当レポート参照)。一方労働需要は販売が好調な自動車産業などで少なくとも短期的には増加が見込まれるため、年末にかけ非農業部門雇用者数は前年比約2%の伸びを確保し、雇用市場は堅調な拡大を続けると考える。

インフレ率については、PCEデフレーターが年末に前年比+1.7%、来年にはFRBが目標とする同+2%に上昇すると見る。失業率や需給ギャップに表象される経済の「のりしろ」の水準はまだ大きいものの、経済拡大に伴い着実に縮小している。またミシガン大学調査による期待インフレ率(12ヶ月後)は、今年に入り3%台の比較的高い水準で安定推移している。FOMCが9月声明文に謳ったように、インフレ率が継続的に2%を下回るリスクはもはや後退したといえる。インフレ率として振れの少ないコアPCEデフレーターを用い、外生変数として需給ギャップと期待インフレ率を用いた推計式によれば、現在のコアPCEインフレ率推計値は約1.7%と計算できる。7月現在の実績値はPCEデフレーターが前年比+1.5%、コアPCEデフレーターが同+1.4%と、いずれも推計値よりも低めとなっている。今年後半にエネルギー価格の低下でインフレ率は一時的に低下しているが、年末にかけては+1.7%の均衡水準に回帰するとの見方を維持したい。これらより金融政策については、FRBが10月に資産購入停止決定ののち2015年6月に利上げを開始、その後定例会合毎に0.25%ずつ利上げを行い、2015年末にFF金利誘導目標レンジを1.25-1.50%にまで引き上げることを個人予想としている(9月21日付当レポート参照)。

以上のように、米国経済見通しは極めて良好であり、潜在成長率を超える成長を続けることでマイナスの需給ギャップは着実に縮小していくはずだ(8月米議会予算局の推計によれば、2014年の米国の潜在成長率は+1.6~1.7%)。一方で、上記予想に対する当面のリスク要因は株価と地政学リスクである。好調な消費者センチメントや企業景況感の一部は史上最高値水準にある株価により押し上げられていると考えられる。現在S&P500の株価収益率は20倍に接近しているが、低位に抑えられている米国債利回り水準(約2.6%)との関係において割高感はなく、筆者個人も年末にかけ更なる株価上昇を見ている。しかし、今後年末にかけては成長加速と金融引締め期待から長期金利が上昇すると株式の割安感は相対的に後退せざるを得ない。また中東・ロシアなどの地政学リスクはなお断続的に市場混乱要因となりうることには引き続き留意が必要である。なお、経済・金融に関する個人予想のアップデートを[第1表]に示す。

[第9図]
20140923図9
[第1表]
20140923表1

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