FC2ブログ

<経済レポート> それでも時は今。。:日本の消費税率再引上げ見送り

  • カテゴリ:未分類
  • コメント:0件
  • トラックバック:0件
7-9月期成長率が予想外のマイナス成長となり、政府は消費税率再引き上げを見送った。成長の悪化からは見送りはやむなしと考える一方で、中期景気変動からはやはり現在が再引き上げの好機だったとの見方も可能である。今後については、いまや2014年度の経済成長はゼロに留まる可能性が高いものの、来年にかけては個人消費・輸出の増加と財政出動による経済の再加速を見込む。

7-9月期マイナス成長で政府は消費税率再引上げ延期を判断:個人消費の減少

17日に公表された日本の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率-1.6%と予想外の2四半期連続マイナス成長となった(11月22日付<経済指標コメント>参照)。この指標を受けて安倍首相は翌18日の記者会見で「消費税10%への引上げを法定どおり来年10月には行わず、18ヶ月延期すべきとの結論」に至ったことを表明、消費税率再引き上げは2017年4月まで先送りとなった(なお首相は同会見で21日に衆議院を解散することを表明、21日衆議院は解散され12月14日に総選挙が実施されることとなった)。筆者はこれまで当レポートで、7-9月期の成長率が前期比年率約+2.5%となり反動減によるマイナス成長から成長トレンドに回帰することで消費税率再引き上げ判断が可能と予想していた。同-1.6%のマイナス成長と消費税再引き上げ見送りはこの予想を覆す結果である。

まず、7-9月期GDP統計において予想比特に大きく下振れた需要項目が個人消費である。内閣府消費総合指数の9月までの実績から、7-9月期の実質家計消費は前期比年率+2.9%の伸びを実現すると見ていたが、GDP統計の結果はこれを大きく下回る同+1.4%だった。実質家計消費支出の前年比の推移を見ると、消費税引上げ後の2四半期の伸びはいずれも前年比-2.8%となっている([第1図])。これは4月の消費税率引上げ幅3%分だけ実質ベースの個人消費が減少していることを示唆している。消費税率引上げ前の駆け込み需要とその反動減は同額と前提してきた当レポートの考え方は修正を迫られる可能性が出てきている。

政府の消費税率引上げ延期判断も個人消費の低迷が決め手となったようだ。安倍首相は18日記者会見で「現時点では3%の消費税率引上げが個人消費を押し下げる大きな重石となっています」「本年4月の消費税率3%引上げに続き、来年10月から2%引き上げることは、個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなると判断いたしました」と述べている。

[第1図]
20141123図1

GDPはトレンド回帰できず:再引き上げ見送りの判断はやむなし

次に実質GDP全体の推移を見てみる。[第2図]は1994年1-3月期~2014年7-9月期の四半期の実質GDP(対数値)の推移をHPフィルターで平滑化して中期トレンドを抽出したもの、[第3図]はその2012年10-12月期以降部分の拡大図である。これによれば、7-9月期の成長率がマイナスだったことによりGDPのトレンドラインへの回帰が実現できず、4月の消費税率引上げ後の反動減によるGDP押し下げ効果が7-9月期になってもまだ解消されていないことが読み取れる。筆者は当初7-9月期のトレンドライン回帰に必要な成長率(前期比年率+2.5%)が実現可能と見ていたがこれが実現できなかったことになる。

なお、7-9月期実績までを勘案した中期トレンドラインの傾きからは、7-9月期時点のトレンド成長率は前期比年率約+0.9%と試算できる。また10-12月期に中期トレンド回帰するのに必要な成長率は同+4.5%と試算できる。つまり、10-12月期に成長が中期トレンドに回帰するためには前期比年率4~5%の成長が実現されねばならず、7-9月期時点に比べてトレンド回帰へのハードルは更に高くなったといえる。

4月の消費税率引上げの影響が駆け込み需要と反動減で相殺されず、消費税率引上げ分の実質個人消費の減少が継続していること、また消費税率引上げ後2四半期を経てもなおGDP実績がトレンドを下回っていることからは、今回の消費税率再引き上げ見送りの判断はやむを得ないものと言わざるを得ない。

[第2図]
20141123図2
[第3図]
20141123図3

成長トレンドが上向きにある現在が消費税率再引上げの好機だった可能性は残る

しかしそれでもなお、来年10月の消費税率再引き上げが妥当と考えうるいくつかの要因がある。まず、日本経済は2四半期連続のマイナス成長にもかかわらず、中期的な成長トレンドは潜在成長率を上回っており、依然相対的には成長加速期にあることである。まず上記の通りHPフィルターを用いて抽出した中期的な成長トレンドは年率+0.9%レベルを維持しており、これは日本の潜在成長率とされる0.6%(内閣府推計)を上回っている。ちなみに、1994年1-3月期~2014年7-9月期までの四半期GDPを線形回帰した場合の長期トレンド成長率は年率約+0.8%弱と計算される。これと上記のHPフィルターから抽出された中期トレンド成長率+0.9%を比較すると、依然として中期的経済トレンド(長期サイクル)は長期トレンドを上回る位置にあるということができる(各成長トレンドの算出方法については8月31日付当レポート参照)。

これとは別な潜在成長率算出方法で同じ比較を試みてみよう。過去の実質GDP成長率実績と失業率実績をオークンの法則の等式(〔四半期実質GDP成長率前期比年率〕=α×〔失業率前期比変化〕+〔潜在成長率〕)で回帰し、失業率変化ゼロに相当する成長率を潜在成長率とする。この潜在成長率の時系列推移を40四半期ローリング回帰と20四半期ローリング回帰でそれぞれ求めたものが[第3図]である。40四半期回帰による潜在成長率は日本経済の長期トレンド成長率を、20四半期回帰による潜在成長率は中期のトレンドを表すとする。これによれば、長期トレンド(潜在成長率)はほぼ一貫して低下傾向にあり現状で約+0.4%まで低下している。一方中期トレンドは2014年1-3月期に駆け込み需要で+2.4%のピークに達したのち低下しているものの、7-9月期現在で+1.0%と、長期トレンド成長率をまだ上回る水準にある。現在の日本経済は長期トレンドに対してまだ上方の中期トレンド成長(長期トレンドに対する上方サイクル)を維持しているといえるのである。

また、企業の設備投資循環も現在は上昇のピーク近辺にあるということができる。[第4図]は企業設備投資の対GDP比率の四半期推移とその8四半期移動平均である。企業設備投資の対GDP比率は企業の設備投資循環を表す。同比率の8四半期移動平均は現在上昇から横ばいに転じつつある位置にあり、現在が設備投資循環のピークである可能性を示唆している。今後この比率が低下に転じると、丁度次回消費税率引上げ予定時期には設備投資循環が下降局面になっている可能性がある。GDP成長率や設備投資の中期トレンド(長期サイクル)は現在上昇局面からピークに近づきつつあり、今後これが低下局面に転じる可能性があることからは、現在が消費税率再引き上げの適切なタイミングであった可能性は否定できないといえる注1)

[第4図]
20141123図4
[第5図]
20141123図5

今年度はゼロ%成長に終わるも、来年は成長再加速を見込む

ともあれ、7-9月期の実質GDPがマイナス成長だったことで、今年の成長率予想は大きく下方修正せざるを得ない。筆者はこれまで、2014年暦年成長率を前年比+1.0%、2014年度を前年度比+0.4%と見ていたが、7-9月期実績をもとに試算すると、暦年成長率は同+0.6%、年度成長率はほぼゼロになる計算である。

しかしながら、今後来年にかけての日本経済については、今年以上の成長加速を見込みたい。まず、日本経済の中期的な動向を見るために内閣府の景気動向指数を見てみよう。まず景気一致指数は9月現在で109.8ポイントと3月の直近ピーク114.6ポイントを大幅に下回っている。内閣府は基調判断を「下方への局面変化を示している」としており、景気が後退局面入りする可能性を示唆している。しかし景気一致指数の3ヶ月移動平均は9月に109.3ポイント(前月比+0.1ポイント)とわずかながら上昇に転じており、一致指数には下げ止まりの兆しがみられる。景気先行指数は9月時点で105.6ポイントとこれもピークから大幅に低下しているが、3ヶ月移動平均は105.2ポイントと2ヶ月連続の上昇に転じている([第6図])。マクロ景気動向指数からは4月の消費税率引上げによる需要減少は徐々にではあるが解消しているといえるだろう。

金融市場環境や経済政策は今後の需要押し上げを支える要因である。まず、10月31日の日本銀行による追加金融緩和実施以降株価は急伸し、日経平均は17000円を超える水準にある。これは消費者センチメントの好転という形で経済を底支えることになるだろう。特に個人消費は消費税率再引上げに備えた積み上がり需要が蓄積している可能性があり、現金給与の増加とともにこれまでの買い控えからの反動増が期待できる可能性が高い。次に、追加金融緩和以降円安が進行しドル円は1ドル=117円台にまで上昇している。これは輸出の増加という形で成長を押し上げる要因である。さらに、安倍首相は消費税率再引き上げ延期とともに2~3兆円の経済対策を指示した。この規模の経済政策はGDPを約+0.5%押し上げる効果を見込むことができる。これらの要因を勘案して試算したところ、2015年暦年では前年比+2%台前半、2015年度は前年度比約+3%の成長が可能との結果になった。当面はこれを筆者の暫定予想としておくこととしたい([第7図])。

[第6図]
20141123図6
[第7図]
20141123図7

注1)もっとも、2020年の東京オリンピック需要で、2017年頃には一時的な設備投資拡大局面が示現している可能性はあり、結果的に2017年10月の消費税率再引上げによる需要押し下げ効果がオリンピック前需要で相殺されることも考えられる。
スポンサーサイト



コメント

トラックバック