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<経済レポート> 利上げ影響の見積もり:来年の米個人消費

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米国のホリデー商戦は予想以上に好調である。雇用拡大やガソリン安が消費者の購買意欲を刺激していると考えられる。11月小売売上高統計の結果、今年のホリデー商戦売上についての筆者個人の予想を上方修正する。一方で、来年2015年はFRBの利上げによる金利上昇の影響で個人消費の伸びはやや減速すると見る。

ガソリン安と雇用拡大でホリデー商戦は予想以上に好調

米国の個人消費は年末にかけ加速している。11月の小売売上高は前月比+0.7%と今年3月以来の高い伸び、前年比の伸び率は+5.1%と昨年7月以来の高い伸びとなった(12月13日付<経済指標コメント>参照)。筆者がホリデー商戦売上高のベースとしている「自動車・ガソリンスタンド・レストランを除く」小売売上高の伸び率は、11月時点で前年比+4.3%と2012年5月以来約2年半ぶりの高い伸び率となっている。これは、昨年11月の同+3.7%をはるかに上回るペースでもある([第1図])。

小売売上の急加速の背景にはまず、株価上昇や雇用環境の好転に伴う良好な消費者センチメントがある。ミシガン大学消費者センチメント指数は8月以来12月速報まで5ヶ月連続の上昇、12月速報値は93.8ポイントと2007年1月以来約8年ぶりの高水準に上昇した。消費者センチメント指数の上昇は小売売上高の増加ペースの加速とも軌を一にしている([第2図])。消費者センチメント指数の上昇からは、12月の小売売上高は更なる加速を見込むことができる。

もう一つの要因として、10月以来の原油価格下落によるガソリン価格低下が消費者の購買意欲を高めていると考えられる。米エネルギー情報局(EIA)によれば、11月中旬以降全米のガソリン平均価格は1ガロン=3ドルを割り込んでいる。ガソリン価格が3ドル以下になるのは2010年11月以来約4年ぶりのことである。ガソリン価格低下に自動車ローン条件の良さが加わって11月の新車販売台数は年率17.1百万台(前月比+0.7%)に急増した。ついては、11月の小売売上高実績値とこれらの外部要因を勘案して、筆者個人の今年のホリデー商戦売上高予想を当初の前年比+3.7%(11月9日付当レポート参照)から上方修正して、前年比+4.8%とする([第3図])。

[第1図]
20141214図1
[第2図]
20141214図2
[第3図]
20141214図3

企業収益の改善で賃金の伸びはまだ加速が見込める

好調な個人消費を支える雇用と賃金の状況を改めてみてみよう。11月分雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は3ヶ月連続で前年比+2.0%の伸びを維持している。また時間当たり賃金は同+2.2%、週平均労働時間は同+0.3%の伸びとなっている。これらを合わせ、雇用と賃金で約+4.5%の購買力が生み出されている計算になる([第4図])。個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の10月時点の前年比の伸び率+1.4%を差し引くと、実質ベースで約+3%の個人消費の伸びが期待できる購買力があることになる。

今後の雇用・賃金動向については、失業率が11月時点で5.8%と自然失業率に近いところにまで低下していることから、雇用拡大ペースの大きな加速は考えにくい。また週平均労働時間は11月時点で33.8時間と過去のピークに近いところまで増加していることから、これも今後更なる伸びは期待しにくいといえるだろう。一方で、時間当たり賃金はまだ上昇ペース加速の余地がある。失業率の低下や週平均労働時間の伸びに比べて時間当たり賃金の上昇率ペースはかなり遅行している([第5図])。

賃金上昇ペースの加速が遅いのは今回の景気回復局面における謎のひとつであるが、筆者個人は賃金上昇率が低位にとどまっていることは構造的な要因ではなく、いずれ労働市場の需給タイト化に遅行して賃金上昇ペースが加速すると見ている。賃金上昇ペースが遅い理由の一つに今年前半までの企業収益の低迷が考えられる。企業収益は今年の1-3月期に一時的な成長のマイナス転化により前年比マイナスの伸びになった。これが企業の賃金引上げを抑制したことは考えられることである。しかし、その後非金融機関を中心に7-9月期まで企業収益は前年比でプラスの伸びに回復している([第6図])。非金融機関(事業会社)の時間当たり賃金は、来年には少なくとも前年比+2.5%伸びが期待できるところであろう。

[第4図]
20141214図4
[第5図]
20141214図5
[第6図]
20141214図6

来年はFRB利上げによる金利上昇が消費へのマイナス要因となる

雇用・賃金のほかに、物価・金利・株価・住宅価格も個人消費を決定する要因である。これらのうち来年に最も大きな変動があると考えられるのが金利である。筆者は、2015年6月からFRBの利上げが開始され2015年末にはFF金利誘導目標レンジが1.25-1.50%にまで引き上げられると個人的に予想している。FRBによる米国債購入が10月に停止されたことと、FF金利誘導目標の引上げに伴い、10年物米国債利回りは2015年末には4%レベルにまで上昇すると見る。これにより、現在約4%の低水準にある30年物住宅ローン金利は2015年末には6%レベルにまで上昇することになると見る。

雇用拡大ペースが横ばいにとどまり、時間当たり賃金上昇率も遅い加速に留まるとすれば、金利上昇が消費に与えるマイナス効果がどの程度個人消費を減速させるかが来年の米国の成長率を占うに当たり重要になる。そこで、雇用・賃金のほか物価・金利・株価・住宅価格を外生変数とする実質個人消費の要因分解をアップデートすることにより、来年にかけての個人消費の伸び率を推計することとする(8月15日付当レポート参照)。

雇用・賃金・金利以外の外生変数の今後の推移の前提として、まずインフレ率(PCEデフレーターの前年比伸び率)は2015年を通じて+2%で推移するとした。原油価格下落で現在インフレ率は1%台半ばまで低下している。しかし、原油価格下落が一段落すれば、成長加速による需給ギャップ縮小と消費者インフレ期待の改善により、インフレ率は来年には2%レベルにまで上昇すると個人的には予想している。株価については、NYダウ平均が来年末に19500ドルにまで上昇すると前提した。NYダウは8日に17935ドルと史上最高値を付けたのち一時下落に転じているが、成長率やインフレ率からすると来年末の19500ドルレベルへの程度の上昇は十分に考えられるところである。住宅価格は上昇ペースを減速させており、S&Pケース・シラー住宅価格指数(10都市)の上昇率は9月時点で前年比+4.8%にまで低下している。しかしながら一方で、住宅市場の需給は依然タイトであり、住宅価格上昇率は加速することはないものの現在の+5%程度の上昇は来年も持続すると見たい。

来年の個人消費は年後半に減速を見込む:通年のGDPは3%成長が可能

雇用・賃金・物価・金利・株価・住宅価格を外生変数として、1992年10-12月期から2014年7-9月期までの88四半期の実質個人消費の実績値を回帰した結果が[第1表]である。またこの結果を用いて上記の前提により2015年10-12月期までの実質個人消費の推移を推計したものが[第7図]である。これによれば、来年半ばからの金利上昇が個人消費を-1%ほど押し下げる計算になる。実質個人消費の伸び率は2015年1-3月期には前年比+3%レベルとなるものの、10-12月期には同+2.0%にまで減速するとの結果になった。

因みに、仮にインフレ率が現状のまま前年比+1.4%で推移するとした場合、実質個人消費の伸び率はこの推計値より+0.2%ほど押し上げられる計算になる。また株価が現状水準のまま横ばいで推移するとした場合、個人消費の伸び率はこの推計値より-0.2%ほど押し下げられる計算になる。インフレ率が上記前提に反して上昇しなかった場合は金利上昇も抑制されることで個人消費にはプラス要因となり、その場合株価が前提に反して上昇せずまたは下落することがあっても概ねカバーできると考えられる。

以上より、2015年のGDP統計上の実質個人消費は、現状の前期比年率+2%台半ばの伸びから、2015年後半には同+1.5%レベルにまで減速すると見ておく([第8図])。もとよりこの予想は来年の米国経済全体が減速することを示唆するものではない。この予想においても2015年の実質個人消費は前年比+2.2%と今年とほぼ同じ成長ができる計算である。他には住宅建設の加速と在庫調整の終了により来年の成長率は押し上げられ、2015年通年の実質GDPは前年比約+3%の成長となると個人的には見込んでいる。

[第1表]
20141214表1
[第7図]
20141214図7
[第8図]
20141214図8

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