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<経済レポート> フォワードガイダンス変更:12月FOMC声明文

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FOMCは12月定例会合で声明文のフォワードガイダンスを変更し「委員会は金融正常化開始に忍耐強くいられる」とした。この変更は従前からの筆者個人予想に沿ったものであり、来年6月の利上げ開始、来年末のFF金利誘導目標レンジ1.25-1.50%との個人予想を維持する。もっともインフレ率低下は潜在的な下方リスクでありまた利上げペースもFOMC内で意見が2分化していることには留意が必要である。

フォワードガイダンスを「忍耐強くいられる」に変更

12月16-17日のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合後の声明文、及びFOMC委員経済予測、そして会合後のイエレン議長記者会見には、大きく3つのポイントがある。一つは利上げ時期に関わるフォワードガイダンスの変更、次にインフレ率低下に関するFOMCの評価、最後にこれらを総合した来年の利上げ時期と利上げペースの見通しである。

まず、17日の声明文では、注目のフォワードガイダンスが従来の「0-0.25%のFF金利誘導目標レンジを資産購入終了後相当の期間for a considerable time維持することが適切である可能性が高い」から「現状の評価に基づけば、委員会は金融政策スタンスの正常化開始に忍耐強くいられるcan be patientと判断する」に変更された。「相当の期間」文言のフォワードガイダンスからの削除は筆者個人の予想通りであった。なお声明文では上記文言にすぐに続けて前回のフォワードガイダンス文言をそのまま引用し「このガイダンスは、、、前回の声明と整合的なものと委員会は見做している」と述べる配慮をしている([第1表])。つまり今回の文言変更は利上げ開始までの行程の変更を示唆するものではなく、あくまで時間の経過で利上げが近づくにつれ「相当の期間」が妥当しなくなったことによるものであることの再確認である。イエレン議長も会合後の記者会見の冒頭発言で「フォワードガイダンスの変更は、従前の声明文で公表された委員会の政策意図の如何なる変更をも示唆するものではない」と述べている。

新たなフォワードガイダンスは、従前の「相当の期間」と同様に英イングランド銀行の所謂「オープンエンドガイダンス」に相当すると考えられる。英イングランド銀行の分類では「忍耐強くいられる」とのガイダンスは政策変更までの特定の期間を示唆する「時間条件ガイダンス」には相当しないといえる。しかしながら新たなフォワードガイダンスは、のちに見るように今後3回~4回のFOMC定例会合の期間という短い期間を示唆する文言と見ることができる(2013年8月11日付当レポート参照)。

[第1表]
20141223表1

インフレ率低下には配慮するも経済への影響はプラス

次に、原油価格下落に伴うインフレ率低下を背景にインフレ率についてのFOMCの評価に微妙な変化がみられる。FOMCの使命に照らした今後の雇用と物価見通しの部分で「委員会は、、経済活動が適度なペースで拡大し、雇用市場指標〔とインフレが〕、委員会の2つの使命に整合的な水準に向かって推移すると予想する」との文言から〔 〕内の“インフレ“が削除された。更に「委員会はインフレの動向を引き続き注意深く監視closely monitorしていく」との文言が追加された。これらは、インフレ率低下に関してFOMCが更に注意を払い始めたことを示唆している。

FOMCのインフレ率についての評価の変化は、今回改訂されたFOMC委員の経済予測にも反映されている。2015年のPCEインフレ率(第4四半期前年同期比)予測の中心傾向は1.0-1.6%と、9月時点予測の1.6-1.9%から大幅に下方シフトしている。これは原油価格の急落により総合インフレ率が従前予想よりも低下する見通しの反映である。一方で、食品・エネルギーを除くコアPCEインフレ率予測(2015年)は1.5-1.8%と、9月時点予測の1.6-1.9%からわずかな下方シフトにとどまっている。イエレン議長が会合後の記者会見でも述べている通り、FOMC総合インフレ率は今後更に低下する可能性が高いものの「コアインフレ率は現状の水準で推移すると予想」していることになる。

しかし、総合インフレ率の低下に関しては声明文で「委員会は労働市場の更なる改善と、一時的なエネルギー価格低下や他の要因の後退とともに、インフレ率が2%に向かって徐々に上昇すると予想する」と明記している。またイエレン議長は記者会見の質疑応答で「米国や米国の経済見通しの観点からは、原油価格の低下はネットでプラスだと委員会は判断している」と述べている。インフレ率の低下が金融政策に与える影響は今のところ限定的なようだ。筆者個人は、原油価格低下による総合インフレ率の低下にかかわらず、成長加速による需給ギャップの縮小がインフレ率を底支えると考えている。総合インフレ率について筆者はこれまで来年2%までの上昇を予想していたが、これは下方修正を考慮せざるを得ない。しかし、需給ギャップの縮小と期待インフレ率の安定により、コアインフレ率は来年2015年に1.8%レベルで推移すると想定する。

[第2表]
20141223表2

来年6月の初回利上げ、年末FFレンジ1.25-1.50%の個人予想を維持する

適切な利上げ開始時期に関しては、FOMC委員17人中15人が2015年を予想している(上記[第2表])。イエレン議長は記者会見質疑応答で「多くのa number of 参加者は経済環境が来年半ばまで(金融正常化に)適切になる」と見ていると述べている。2015年の利上げ開始はFOMC内でほぼコンセンサスになっているといえる。なお、イエレン議長は記者会見の質疑応答で「今後2回のcouple of委員会では利上げはない」と発言している。今後のFOMC定例会合の日程に照らせば、利上げ開始は最速でも2015年4月ということになる。ちなみに、2004年1月にグリーンスパン議長時代のFOMCが声明文で「忍耐強くいられる」文言を用いたときは、文言開始後3回目の定例会合で初回の利上げが決定された([第3表])。今回の「忍耐強く」が2001年とまったく同じ時間軸を指すということはできないが、上記のイエレン議長発言と合わせて、「忍耐強く」は来年4月ないし6月の利上げ開始を示唆する文言だということができる。

また、利上げのペースについて、FOMC委員経済予測における2015年末のFF金利誘導目標レンジ中心値の予測の分布は[第1図]の通りである。9月時点予測に比べると予想はいくぶん2分化の傾向があり、また委員予測の中央値は9月時点の1.375%から1.125%へといくぶん下方シフトした。FOMC委員の経済予測をもとに、テイラー・ルールに基づく2015年末の適正FF金利水準を試算したのが[第4表]である。FOMC委員の総合PCEインフレ率予測とコアPCEインフレ率予測に乖離があるため、どちらを用いるかで試算結果がかなり異なってくる。インフレ率として総合PCEインフレ率予測を用いた場合の2015年末の適正FF金利は0.75%、コアPCEインフレ率予測を用いた場合のそれは1.28%との結果になった。また、筆者個人の予想に基づく試算結果は1.55%との結果になった。これらを[第1図]のFOMC委員予測分布と合わせると、FOMC内にはハト派とタカ派が2分化しており(0.875%を予測する委員と1.875%を予測する委員がそれぞれ4名ずつ)、特にタカ派委員はテイラー・ルールによる適正金利よりも高い水準への利上げを志向していることがわかる。

筆者個人は、これまでの「2015年6月利上げ開始、2015年末FF金利誘導目標レンジ1.25-1.50%」を維持する。インフレ率予想をやや下方修正してもなお、成長率の予想以上の加速により需給ギャップの縮小が適正な政策金利水準を押し上げることから、上記テイラー・ルールによる試算の通り来年末1.25-1.5%のFF金利誘導目標レンジは正当化される。また声明文のフォワードガイダンス、FOMC委員経済予測、イエレン議長の記者会見発言内容のいずれもが、筆者個人の予想を支持している。

[第1図]
20141223図1
[第3表]
20141223表3
[第4表]
20141223表4

リスクは下方:来年のFOMC投票メンバーはハト派勢力が拡大する

上記の筆者個人予想に対するリスクはどちらかといえば下方つまり利上げペース後倒し方向である。ひとつのリスクシナリオとして、6月以降の利上げペースが定例会合毎に0.25%でなく、当初は1会合おきに0.25%ずつとなり、年末のFF金利誘導目標レンジが0.75-1.00%に留まるケースが考えられる。2015年末のFF金利誘導目標レンジ中心値を0.875%と予測する4名のFOMC委員は、2015年半ばからの利上げ開始後年内は1回おきになることを想定しているとも考えられる。

次に、来年のFOMC投票メンバーの交替である。来年は、2名のタカ派委員(フィラデルフィア連銀プロッサー総裁、ダラス連銀フィッシャー総裁、この2名は12月FOMCでタカ派的観点から反対票を投じた)と1名のハト派委員(ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁、同氏は12月FOMCでハト派的観点から反対票を投じた)が投票メンバーから外れる。一方新たな投票メンバーには、シカゴ連銀エバンス総裁、サンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁の2名のハト派が含まれるのに対し、投新たに加わるタカ派はリッチモンド連銀ラッカー総裁のみである。差し引きではFOMC内ではややハト派の勢力がやや拡大する見通しである。

また、原油価格の更なる下落は利上げペース鈍化のリスク要因であると言わざるを得ない。現在1バレル=55ドル前後まで下落している原油価格が更に40ドルレベルにまで下落すると、インフレ率は一時的には1%を割り込む可能性なしとしない。原油価格下落はあくまで外的要因によるインフレ率低下であって米国のファンダメンタルズに起因する要因ではないため金融政策への影響は限定的と基本的には見る。しかし原油価格下落が期待インフレ率の低下をという形で顕在化すると、FOMCの政策決定にも直接的な影響を及ぼす可能性がでてくる。

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