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<経済レポート> 10年ぶり3%へ:米経済定点観測

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2014年後半に予想以上の拡大加速を見せた米国経済であるが、今後はその反動や2015年半ばに予想される利上げなどいくつかの向い風要因がある。しかしそれでもなお、2015年の米国経済は10年ぶりの3%成長を達成すると見る。牽引役は引き続き個人消費であるが、設備稼働率上昇などによる需給ギャップ縮小で経済全体の需給がタイト感を増す年になるだろう。リスク要因は株価高値警戒感と新興国リスクである。

2015年は利上げにもかかわらず10年ぶりの高成長へ

米経済は7-9月期まで2四半期連続で前期比年率4%を超える成長加速を見せた。10-12月期はしかしやや減速して同+3.0%の成長に落ち着くと見る。もっとも牽引役の個人消費は11月に前月比+0.7%の大幅な伸びを見せており、前期の前期比年率+3.2%から10-12月期にはさらに加速して同4%台の伸びになると見る。10-12月期の成長減速要因は企業設備投資である。企業設備投資は7-9月期に同+8.9%の強い伸びだったが、10-12月期には同ゼロ成長程度にとどまると見る。設備投資のうちの機器投資の基礎統計である非国防資本財出荷(航空機関連を除く)は11月までで前期比マイナスの伸びに留まっている。

次に、10-12月期成長率を押し下げる要因が純輸出である。ドル高と海外景気の減速で輸出が伸び悩む一方で、内需拡大で輸入の増加ペースが拡大している。10月までの貿易収支統計からは、10-12月期の実質ベースの財の貿易赤字は前期よりも拡大するペースである。また、在庫調整も成長の押し下げ要因となるだろう。企業在庫は依然調整局面にあり、10月までの企業在庫統計でも在庫積み増しペースの鈍化が続いている。企業在庫は10-12月期のGDPにはマイナス寄与となると見る。以上より、2014通年の米実質GDP成長率は前年比+2.4%レベルに着地しそうだ。

2015年は、2014年の景気拡大ペースがさらに加速する可能性が高い。ただし、2015年6月と筆者個人が見ているFRBの利上げ開始は個人消費中心に景気の抑制要因とならざるをえない。その結果成長率は年央でピークに達したあと徐々に減速していくと見る([第1図])。それでも計算上は2015年通年の成長率を前年比+3%台前半と、2005年以来10年ぶりの3%成長を達成すると予想する([第2図])。ちなみに10年ぶりの3%成長は、米国の景気循環のサイクルが概ね10年と見られることとも整合している。以下では需要項目毎の動向を見ることにする。

[第1図]
20141231図1
[第2図]
20141231図2

設備稼働率上昇で企業設備投資意欲は維持される

2015年の個人消費については、概ね12月14日付当レポートで予想した通りであるが、その後公表された11月分実質個人消費が予想以上に強かったため今年の10-12月期の発射台が高くなり、その分2015年の消費の伸びも押し上げられることになる。金利上昇の影響で2015年後半に1%台への減速が見込まれることは上記レポート予想と不変である。2015年通年で実質個人消費は前年比+2%台後半の強い伸びになると見る。

企業設備投資についてはこれまで同様、堅調ながらも緩やかな拡大が続くとの見方は不変である。設備投資の対GDP比率の推移から設備投資循環の状況を見たのが[第3図]である。設備投資循環は現在上昇局面にあり、また同比率の20四半期移動平均も上昇していることから、設備投資の拡大は今しばらく続きそうだ。しかし設備投資/GDP比率のピークの水準がサイクル毎に切り下がっている傾向からはそろそろ今回の循環のピークも近い可能性がある。今後1年程度はややペースを落としながら設備投資が拡大するというのがありそうなシナリオだ。

一方で企業の設備投資意欲はまだ高い。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数における6ヶ月先の設備投資DIは依然高水準にあり、少なくとも現在の設備投資拡大ペースが今後半年は持続する可能性が高いことを示唆している([第4図])。企業の設備投資意欲は主に企業収益と設備の余剰度合が決定すると考えられる。[第5図]は、企業ネットキャッシュフロー及び設備稼働率と、企業設備投資との関係を見たものである。企業ネットキャッシュフローはここ数四半期の間高水準ながら一進一退の動きにとどまっている。一方で鉱工業の設備稼働率は順調に上昇を続け、11月時点で80.1%と、金融危機前の2003年以来の水準かつ1972-2013年の平均値に回帰した。今後更に設備稼働率が上昇すると、鉱工業の生産設備の余剰は更に縮小してタイトな状況になる。以上から2015年の企業設備投資は2014年並みの前年比+6%台の成長を持続すると見る(企業キャッシュフロー・設備稼働率と企業設備投資の関係については6月9日付当レポート参照)。

[第3図]
20141231図3
[第4図]
20141231図4
[第5図]
20141231図5

住宅市場の需給は依然タイト

住宅投資は2014年に前年比2%弱の成長に鈍化した。住宅ローン金利の低位安定にもかかわらず住宅投資が増加しないのは主に住宅ローンの信用条件がいまだタイトであることがあると考えられる。FRBの資金循環統計によれば、家計の住宅ローン借入残高は2014年7-9月期時点で約9.4兆円と引き続き金融危機以後の最低水準に近いところにとどまっている。また持家比率が継続的に低下していることも住宅市場拡大の抑制要因となっている。中期的な住宅投資の循環を見ると、住宅バブル崩壊後に住宅投資が長い下降を辿ったのち、現在は上昇局面にあるものの、その上昇ペースは極めて緩やかなものにとどまっている([第6図])。これらからは住宅投資が経済の牽引役になることは2015年においてもなさそうである。

一方で住宅販売が堅調に推移しているなど需給面では住宅市場は良好な状態にある。住宅市場の需給を表す中古住宅販売在庫期間と貸家空室率はいずれも低下基調にある([第7図])。これらの状況からは、短期的には住宅市場の需給はややタイトであり、2015年においても持続的な投資拡大が期待できると考えられる。2015年通年の実質住宅投資は2014年からやや加速して前年比+5%程度の成長を見込む(持家比率・貸家空室率・中古住宅販売在庫期間を決定要因とする住宅投資の分析については5月22日付当レポート参照)。

企業在庫については[第8図]に見るようにやや長めの在庫調整局面が続いている。海外経済の不透明感から企業が在庫積み増しに消極的であることが推し量られる。しかし、全体的な企業景況感が好調であることから、この調整も2015年半ばには終了し、年後半には再び在庫積み増しペースが加速すると見る。

[第6図]
20141231図6
[第7図]
20141231図7
[第8図]
20141231図8

リスク要因は株価への警戒感と新興国

成長予想に当たってかく乱要因となりそうなのが純輸出である。現状ではドル高と海外景気の減速が輸出の抑制要因、またドル高は内需の拡大と相まって輸入拡大要因となり、少なくとも2015年前半は貿易赤字の拡大が成長抑制要因になるだろう。一方年後半は金利上昇で内需拡大ペースが鈍化することから輸入の伸びがやや減速すると考えられる。海外景気が年後半にかけて回復に向かえば輸出が年後半には回復してくると考えられる。結果純輸出は通年で成長にほぼゼロの寄与度となると見ておきたい。

結果、筆者個人の2015年の通年成長率予想を前年比+3%台前半とする。インフレ率については、原油価格の下落から個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)の前年比伸び率は2015年に1%台前半~半ばで推移する可能性が高い。一方で失業率低下と設備稼働率上昇に伴いマイナスの需給ギャップが縮小することがインフレ圧力となり、食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターの前年比伸び率は1%台後半から2%の心地よい水準で推移すると見る。筆者試算によれば、米国のマイナスの需給ギャップは現在-3.2%、これが2015年末には-2%を割り込む水準に縮小する計算になる([第9図])。この需給ギャップ縮小がインフレ率底支え要因となるとともに賃金上昇率の加速を促し、経済拡大の正のスパイラルを形成することになるだろう。

上記予想に対するリスク要因はいくつかある。まず史上最高値を更新し続ける株価が2015年に予想外に反落することである。筆者は上記予想の前提としてNYダウが2015年末に19500ドルにまで上昇すると想定している。しかしながら現状S&P500指数の株価収益率は20倍にまで上昇しており、一般論としてはやや高値警戒感が出てくる水準である。企業収益の回復が株価に追いつけばこの警戒感は払しょくできるが、現状では収益よりも株価先行感が否めない。次に、原油価格下落やロシアの政治経済リスクが他の新興国に伝染してグローバルな経済悪化をもたらすリスクである。現在のところロシア以外の新興国リスクは顕在化していないが、他のBRICS諸国や産油国への波及リスクは否定しえない。更にギリシャでは年内の議会による大統領選出に失敗したことから1月に総選挙が行われる見込みである。反財政緊縮を唱える急進的左派が政権を握ればIMF/EUによる支援スキームが継続できなくなるリスク顕在化の可能性がある。これはさらに他の欧州周縁国関連の金融市場にも波及する可能性がある。こうしたリスクにかかわらず米国が予想通りの成長を達成すれば米国の復活は本物といえるだろう。

[第9図]
20141231図9

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