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<経済レポート> 巡航速度に回帰へ:日本経済定点観測

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2015年の日本経済は、消費税率引上げ後の反動減が順次解消し、さらに財政出動の効果もありトレンド成長率である1%を上回る成長を実現できると個人的に予想する。その後は持続的成長が十分に可能な環境に回帰できることになる。しかしリスクは下方と言わざるを得ない。短期的には海外の政治経済要因、中期的には景気サイクルがそろそろピーク時期に来ている可能性があることである。

2015年には1%強の成長を見込む

日本の実質GDPは2014年7-9月期、10-12月期の2四半期連続でマイナス成長を記録し、テクニカルなリセッションとなった。しかし10-12月期は、その反動もあり前期比年率+3%台の強めの成長になると見る。ただ2015年には反動要因は徐々に剥落して成長率は徐々に減速するだろう。しかしながら、財政出動がこれを底支えする形で経済は持続的なペースの拡大を維持すると考える([第1図])。結果、2014年暦年の成長率は前年比+0.2%に留まるものの、2015年通年は同+1.4%の成長に回復すると見る([第2図])。

1.4%の成長率は最近の日本の成長トレンドを超えるペースである。オークンの法則を用いて日本の潜在成長率を試算してみると、40四半期の長期推計では潜在成長率は約+0.4%と、内閣府の推計である+0.6%にほぼ近い低い水準となっている。一方、20四半期の中期推計による潜在成長率は+1.0%とやや高めの水準になっている([第3図])。ちなみに、HPフィルターによるトレンド推計では現在の成長トレンドは約+0.9%と、オークンの法則による20四半期推計とほぼ同じ推計値となる(2014年11月23日付当レポート参照)。

のちに述べるように、+1.4%の成長のうち約+0.2%は財政出動の効果によるものであり、これを除いた+1.2%成長は、中期的トレンドをわずかに上回る成長ベースということになる。いずれにせよ、2015年に+1.4%の成長ができれば、内閣府ベースのマイナスの需給ギャップは1年間で確実に縮小し、筆者試算では2015年末には-0.5%と、消費税率引上げ前の駆け込み需要のあった昨年1-3月期とほぼ同じところまで縮小する計算になる。

[第1図]
20150107図1
[第2図]
20150107図2
[第3図]
20150107図3

企業部門が先行、家計消費と住宅がこれに続く

上記の個人予想の背景となる需要項目毎の動きを見てみよう。まず家計消費出は、7-9月期にわずかながら前期比増加に転じた。内閣府消費総合指数の11月までの結果を見ると10-12月期も引き続きプラス成長が維持できる見込みである([第4図])。駆け込み需要反動減が年内に解消することはほぼ確実で、個人消費は底入れ後再び拡大に向かうと考えられる。現金給与の増加ペースが加速していることや、原油価格の下落で物価上昇率が低下していることも家計消費の追い風になる。ただし、消費税率の2%引上げが実質家計消費に影響を与えていることは認めざるを得ない。総務省家計調査による実質家計消費(二人以上の世帯)は11月時点で前年比-2.5%と、丁度消費税率引上げ幅分減少していることになる。従って、家計消費の拡大は経済の拡大を底支えするものの、その水準が駆け込み需要前に戻るには2015年末までかかると見ておきたい。

企業設備投資は今後強めの拡大が期待できる。設備投資は昨年7-9月期まで予想外に2四半期連続のマイナス成長となった。しかし、先行指標となる資本財出荷はすでに7-9月期に前期比でプラス成長に回復している。11月までの資本財出荷は前期を更に上回るペースで増加している([第5図])。機械受注は消費税率引上げ後にいち早く前年比プラスに回復した指標であり、総じて企業部門は家計消費に先んじて経済回復の牽引役となっている。

一方企業在庫は当面成長にマイナス寄与を続けそうだ。在庫循環図によれば現在企業在庫は「意図せざる在庫増」から「在庫調整」局面に入ろうとしている([第6図])。今後数四半期は企業在庫調整が成長を押し下げる要因となりそうだ。企業在庫は消費税率引上げ直後の4-6月期に大幅に積み上がり、その反動で7-9月期には在庫調整がマイナス成長率の大きな要因となった。企業在庫がマイナス成長の要因であることを一時要因と見るむきもあるようだが、中期的在庫循環からはあながち一時要因とは言えないようだ。

[第4図]
20150107図4
[第5図]
20150107図5
[第6図]
20150107図6

緊急経済対策の効果は約0.2%にとどまりそう

住宅投資は回復が最も遅い需要項目であった。しかしこれも設備投資と家計消費に遅れて底入れの兆しがみられる。昨年10-12月期の住宅着工件数は11月期までで4四半期ぶりに前期を上回るペースで、GDP統計上も10-12月期には3四半期ぶりのプラス転化になる計算である([第7図])。住宅の統計計上のラグを見込めば、2014年10-12月期はゼロ成長、今年の1-3月期にはプラス転化を見込む。ただし、現状でも住宅着工件数は前年比大幅マイナスの位置にあり、2015年中には消費税率引き上げ前の水準には回帰できないと見る。

純輸出は2015年の成長にほぼゼロの寄与を見込む。輸出入はいずれも国内・海外それぞれの要因でばらつきの大きい動きが続いている。消費税率引上げ前の駆け込み需要で一時急増した輸入は反動減で伸びが急減速している。海外景気の減速で輸出も一進一退の動きが続いている。今後1年間は内需の安定で輸入がほぼ巡航速度に回帰、一方輸出は海外経済の減速でトレンドをやや下回る伸びに留まると見たい。

公的需要は成長率をトレンド以上に押し上げる底支え要因になるだろう。12月27日に閣議決定された「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」は総額3.5兆円の国費支出を謳っている。これによれば国費による本対策の実質GDP押し上げ効果は概ね0.7%程度と見込まれている。しかし、この国費の規模は2013年初に決定された「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の10.3兆円の約3分の1の規模である。2013年度には、GDPの約2%に相当するこの経済対策にもかかわらず公的需要の実質GDP成長率への寄与度は+0.8%にとどまった。今回の3.5兆円はGDPの約0.7%に相当する規模であるが、その効果は首相官邸試算よりも低めに見積もる必要があるだろう。ここでは、3.5兆円のうち実際に成長に寄与する部分はその約6割とみて、2015年の成長への寄与度を約+0.2%と見積もることにする。

[第7図]
20150107図7

リスク要因は短期的に原油・欧州、中期的には景気サイクル

物価については、2%の物価目標達成は引き続き困難と考える。原油価格下落による総合インフレ率の低下はもとより、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除くいわゆるコアコア指数の伸び率も11月時点で前年比+0.1%とほぼゼロに近いところにまで低下している([第8図])。日本の場合フィリップス曲線が米国に比べて下方にあり、2%のインフレ率に対応する失業率が約1.3%と極めて低い水準にある([第9図])。需給ギャップに換算すると、マイナスの需給ギャップが解消してなお需要超過が5%を超える水準にならねば2%の物価目標は達成できない計算になる。これはかなり非現実的な状況と言わざるを得ない。フィリプス曲線を上方シフトさせるためには労働市場の流動性を高め、労働需給の動きに応じて賃金上昇を促すことが最も理にかなった方法である。現金給与総額は企業のベースアップ復活により2014年に大幅に増加したが、人為的な賃金上昇にはおのずと限界があると見ざるを得ない。今後物価上昇が加速するとすれば、失業率は3%を割り込んだ時点でその可能性がある。フラット化したフィリップス曲線の下では、失業率が自然失業率を下回ったところからインフレ率が急激に高まる可能性があるからである。

以上より、2015年の日本経済は、消費税率引上げによる反動減が企業部門を牽引役として家計消費、住宅投資の順に解消し、短期的な成長トレンドである1%をやや上回る成長に回帰すると見る。上記の通り財政出動の効果が約+0.2%とすれば、ベースラインの成長はほぼトレンド成長率に沿うかこれをやや上回るペースということになる。こうして2015年末にマイナスの需給ギャップがほぼ解消すれば翌年からは本来の持続的成長を継続することは十分に可能である。

この予想に対するリスクはやや下方と見ざるを得ない。一つには短期的に、原油価格下落、ロシア問題、ギリシャ問題、欧州デフレ圧力など主に海外の外的ショックのリスクの示現の兆しが年初からみられることである。もう一つは中期的に、景気サイクルを10年と見た場合2009年の金融危機からかぞえて6年目の2015年はサイクルのピークである可能性があることである。米国について筆者は2015年の成長率を3%超と個人的に予想するとともに、これが直近の2004年のピークから数えて11年目のピークである可能性も認識している(2014年12月31日付当レポート参照)。

なお、筆者個人の2015年の経済・金融予想を[第1表]にまとめる。

[第8図]
20150107図8
[第9図]
20150107図9
[第1表]
20150107表1

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