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<経済レポート> 内「優」外患:米企業景況感の動向

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10-12月期のGDP統計ほかの米国経済指標からは、成長加速する家計部門に比べ、設備投資や輸出等企業部門の成長が減速していることが読み取れる。この背景には、海外景気の減速やドル高による外需の軟化、及び原油価格下落による内需の急拡大があると考えられる。しかしながら、各種企業景況感指数や企業サーベイには企業部門の減速がトレンドの変化である証跡は見られない。原油安の企業へのプラス効果もあり、今後企業設備投資は今年一杯緩やかな拡大基調を維持すると見る。

海外景気が米企業部門を抑制している可能性

30日に公表された米国の2014年10-12月期実質GDP成長率(速報)は前期比年率+2.6%と、筆者個人の予想同+3.0%をやや下回った。ただし主な下ぶれ要因は純輸出と政府支出、及び設備投資の一部であり本質的なサプライズではない。一方成長の牽引役である個人消費は、予想通り同4%を超える成長に加速しており、米国経済が持続的に拡大しているとの見方を支持する結果といえる(1月30日付<経済指標コメント>参照)。また、10-12月期の成長率は前期の同+5.0%との比較では表面上は大幅な減速となるが、個人消費・設備投資・住宅投資を合わせた国内最終民間需要の伸びは同+3.9%と、前期の同+4.1%にほぼ並ぶ高い伸びであり、米国経済の牽引役である内需は極めて強い拡大ペースを維持している([第1図])。

ところで、現在の米国経済は家計部門が牽引する一方で企業部門がやや減速という形になっている。10-12月期の実質GDP成長率の押し下げ要因となった民間部門の需要項目は設備投資と純輸出である([第2図])。個人消費は3四半期連続伸びを加速させて10-12月期の成長を+2.87%押し上げたのに対し、設備投資の成長への寄与度は+0.24%にとどまり、また純輸出は財・サービス収支赤字の拡大で成長率を-1.02%押し下げた。

かかる状況は、米国の内需と外需の拡大ペースの差の反映ともいえる。国内では雇用増加と賃金上昇による家計の購買力拡大で個人消費が拡大し輸入も増加する。一方で欧州・アジアなど海外経済の減速で輸出が伸び悩み企業の設備投資意欲も抑制されるという構図である。また、10月以降のドル高と原油安も内外需のデカップリング要因である。ドル高と原油安は輸入品やガソリン等の価格低下を通じて国内消費拡大を喚起する。一方ドル高は輸出企業にとっては海外景気減速に加え更なる向い風となる。ただし、筆者は海外景気減速・ドル高・原油安が企業景況感に与える影響はネットでは米国経済にプラスであり、悪影響がある場合も一時的と個人的には考えている。以下ではGDP統計や企業景況感動向を示す指標・調査もとにこれを検証する。

[第1図]
20150201図1

[第2図]
20150201図2

資本財の受注は大幅減速、輸出の伸びは頭打ち

まず、10-12月期GDP統計等から企業設備投資と財・サービス収支の動向を見てみよう。設備投資は10-12月期に前期比年率+1.9%と前期の同+8.9%から大幅に伸びが減速した。内訳は建物などの構造物投資が同+2.6%、生産設備やコンピューターなどの機器投資が同-1.9%、知的財産投資が同+7.2%と、機器投資のマイナス転化が目立っている([第3図])。これは基礎統計となる非国防資本財出荷(航空機関連を除く)が10-12月期に前期比マイナスの伸びに転化したことと整合している。

機器投資の先行指標としては、同じく航空機関連を除く非国防資本財の新規受注の伸びが10月以降大幅に減速している([第4図])。特に鉄鋼などの一次金属や生産機械を含む一般機械の受注減少が目立っている。

財。サービス収支においては、10-12月期における輸入の急増と輸出の急減速が顕著である([第5図])。10-12月期に実質ベースの財・サービス輸入は前期比年率+8.9%と前期の同-0.9%から大幅に増加した。一方財・サービス輸出は同+2.8%と、ピークの7-9月期の同+11.0%から2四半期連続で減速した。また輸入物価指数は、12月時点で前年比-5.5%と2009年10月以来の大幅なマイナスの伸び、石油関連を除く輸入物価の伸び率も前年比横ばいにまで低下している。これに対して輸出物価指数は前年比-3.2%と輸入物価に比べて相対的には緩やかな低下にとどまっている。ドル高や原油安による輸入物価下落が内需拡大と相まって輸入の拡大を促した可能性が高いと推測できる。

[第3図]
20150201図3

[第4図]
20150201図4

[第5図]
20150201図5

企業景況感は1月にかけ低下傾向にある

次にいくつかの米国企業景況感調査の動きを概観する。まずISM製造業指数(総合DI)はその水準は極めて高いもののすでに昨年10月をピークに下降サイクルに入っているように見え、直近の昨年12月は2ヶ月連続の低下となる55.5%(前月比-3.2%ポイント)であった。フィラデルフィア連銀製造業景況感指数は10月以降も上昇を続けたが、12月、1月に大幅低下し、1月の総合DIは6.3ポイント(同-18.0ポイント)だった。NY連銀製造業指数も9月をピークに年末にかけ大幅に低下している。1月の総合DIは9.95と前月の-1.23のマイナスからプラス転化したものの、水準的にはかなり低い位置にある。企業景況感は調査によりばらつきがあるものの、これらの短期トレンドを見てみると9月から11月をピークに下降に転じている傾向はほぼ共通しているといえる([第6図])。

企業の設備投資意欲を示すフィラデルフィア連銀製造業景況観調査の設備投資DI(6ヶ月後)は昨年末までは比較的高水準で推移しており、当レポ―トでも今後の米国の設備投資が緩やかな拡大を続ける根拠としていた。しかしながら同DIは1月に13.2ポイント(前月比-11.6ポイント)と大幅に低下し、5ヶ月ぶりに20ポイントを下回った([第7図])。今後もこの傾向が続くようであれば、企業設備投資は当レポートの今年の予想よりも更に下振れる可能性が出てくる。

ドル高による交易条件への影響はどうか。12月時点の輸入・輸出物価統計では上記の通り輸入物価下落が輸出物価下落ペースを上回り、交易条件の好転を示唆する状況である。しかし、直近の企業景況感調査ではやや異なる結果になっている。フィラデルフィア連銀調査では、1月の受取価格DIと支払価格DIのいずれもが低下する傾向は原油価格下落開始後同様の傾向であるものの、1月になり受取価格DI低下が急加速し、結果1月には交易条件がやや悪化に転じている([第8図])。原油価格やドル高による価格調整のタイムラグにより、交易条件の好転も一方向にとはいかず、企業景況感に一時的にマイナスの影響を与えている可能性もある。

[第6図]
20150201図6

[第7図]
20150201図7

[第8図]
20150201図8

エネルギー下落は米企業にポジティブ:企業部門の緩やかな拡大は続こう

しかしながら、これら企業景況感の悪化はまだ循環的な変動のレンジの範囲内であり、大きなトレンドの変化は見られない。また、企業の景気の先行きに対する見通しは依然として明るい。フィラデルフィア連銀指数の先行き総合DIは1月時点で50.9ポイント(前月比+0.5ポイント)と前月比上昇、8か月連続で50ポイント以上を維持している。その意味では、2日に公表予定のISM製造業指数は1月の全米の景況感を知るうえで一つの鍵となる指標である。海外経済の減速についてはこれを企業設備投資抑制要因とする明示的な証跡は多くはない。たとえば米大企業の業界団体であるビジネスラウンドテーブルが12月に実施した四半期CEOビジネスアウトルックサーベイにおいて、「設備投資拡大を抑制する可能性のある要因」として、38%が「グローバルな需要と経済の減速」と回答し第3位となっている(1位は「米国税制」63%、2位は「当局規制」46%)。

ここで、フィラデルフィア連銀が1月の製造業景況感指数調査における特別調査として実施した「エネルギー価格下落の事業への影響」サーベイを見ておく([第9図])。これによれば、製造業の54.5%がエネルギー価格下落の事業への影響を「ポジティブ」と回答し、「ネガティブ」との回答9.1%を大きく上回った。非製造業に対する同じ調査では62.9%が「ポジティブ」、15.7%が「ネガティブ」と回答している。非製造業に対しては更に影響の内容についても調査がなされている。最も多かった回答はポジティブ影響で、57.1%の企業が「企業の生産コスト低下」をあげており、「販売利鞘の拡大」22.9%がこれに続いている。一方ネガティブ要因としては「エネルギー生産関連取引先からの需要減少」が32.9%と最も多かったが、「企業の利益低下」は10.0%、「販売マージン低下」は5.7%にとどまった。この調査は、原油価格下落がネットで米企業業績に好影響を与えるとの当レポートの見方と整合する。

以上より、現在の企業設備投資の減速は一時的なものであり、2015年には前年同様に前年比+6%レベルの拡大を実現するとの個人予想を維持する。その背景は現在のドル高・原油安が内需拡大や仕入価格低下を通じて米企業の収益にネットでプラスの効果をもたらす可能性が高いことである。海外景気減速の影響は明示的な証跡はないものの潜在的には主に輸出や海外生産関連の設備投資を抑制する要因になるだろう。一方で企業収益の好転と設備稼働率の低下は設備投資が今後も持続的ペースで拡大する決定要因である。総じて企業部門を取り巻く環境は複雑ではあるが、緩やかな拡大は維持できると見る。財・サービス収支は、当面輸入の増加により赤字拡大となろうが、年後半にはFRB利上げ開始により内需拡大ペースがやや鈍化しそうだ。結果2015年通年では純輸出は成長にほぼ中立の寄与となると見る。

[第9図]
20150201図9

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