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<経済レポート> マクロでは健全化:米家計バランスシート

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米国では家計バランスシートの健全化が進む一方で、自動車ローンを含む消費者ローン借入増加ペースが高水準にある。さらにサブプライム自動車ローンの延滞増加に対する懸念の論調が増えている。しかし、住宅ローン借入の減少で家計全体の債務返済余力は高まっておりマクロでは信用不安の懸念は現状では低いと見たい。一方で自動車販売台数が飽和状態に近づきつつあることから、今後更なる自動車販促策から信用条件が緩和され続ける可能性はリスクとして留意しておく。

サブプライム自動車ローンの延滞増加への懸念論調

米国のサブプライム自動車ローンが新たなバブルを招くとの論調が米国でみられる。NYT紙は昨年以来、米国で返済能力の低い低所得者に対して自動車ローンが提供されるケースが増加しているとしてこれを「新たなサブプライム・ブーム」と呼んでいる。また同紙は低金利環境で高いリターンを求める投資家向けにサブプライム自動車ローンの証券化商品組成が増加、組成金額は2014年に202億ドルと、2010年の3倍以上に増加していると報じている(2014年7月19日付、2015年1月26日付NYT紙)。またWSJ紙も、2014年1-3月期に実行されたサブプライムローンのうち8.4%が11月までに既に延滞を起こしている等、2014年の自動車販売増の背景にありうべきサブプライム自動車ローン拡大リスクへの懸念を報じている(2015年1月8日付WSJ紙)。

一方、大手自動車ディーラーや大手自動車メーカー系列自動車ローン会社の経営陣は「リスクに見合ったリターンがあれば信用市場のどの領域であれば(サブプライム自動車ローン貸出の)リスクをとることは適切」「金融危機においてもサブプライム自動車ローン証券化商品で損失を被った投資家はいない」「住宅価格上昇を前提にした期間30年の住宅ローンと、自動車価額減価を前提とした6年以内の自動車ローンは異なる」として、自動車ローンバブル懸念に反対の意見を表明している(2月7日付Automotive News誌)。

本レポートでは自動車ローンを含む米国家計のバランスシート状況と各種消費者ローンの延滞状況などから、サブプライム自動車ローンが新たなバブルとその崩壊を招くリスクの程度を占うことにする。

株価上昇と消費者ローン借入で家計バランスシートが拡大中

FRBの資金循環統計によれば、2014年第3四半期時点の家計資産残高は95.4兆ドル、家計負債残高は14.1兆ドル、資産から負債を差し引いた家計純資産は85.3兆ドルである。昨年10月の一時的株価下落で資産残高は約2年ぶりに前期比微減したものの、総じて2010年以降今日まで増加基調を維持しており、家計バランスシートは順調な拡大を続けているといえる([第1図])。一方家計負債残高は全体で金融危機前のピークにまで回復していない。総じて家計はまだデレバレッジングが続いており、バランスシートは健全化が継続しているといえる。

家計資産・負債毎の内訳を見ると、家計バランスシートの拡大には、実物資産よりも金融資産価額上昇が大きく寄与していることがわかる。家計資産のうち不動産価額は金融危機直前の2007年の水準を2014年にようやく上回ったにすぎない。一方で金融資産価額は2007年比+26%にまで増加している([第2図])。住宅価格上昇ペースが適度であるのに対し、株や債券など歴史的な金融資産価格の上昇が家計資産の増加を支えているといえる。負債サイドも同様である。家計の住宅ローン負債残高は金融危機以降現在もなお減少傾向を辿っており、2007年比-11.7%にまで減少している。一方クレジット・カードや自動車ローンなどの消費者ローン残高は2010年頃から増加に転じ、現在では2007年比+24.1%と金融資産とほぼ同じペースで増加している([第3図])。

2007年以降の住宅バブル崩壊とこれに続く金融危機以降、住宅価格は2010年頃から上昇に転じているものの、その上昇ペースは現在では一桁にとどまっており極めて適度である。また金融機関の住宅ローンの信用条件が相対的に厳格であることが住宅ローン残高減少の背景として考えられる。1月のFRBシニア・ローン・オフィサー・サーベイによれば、10-12月の間に住宅ローン(住宅公社保証適格)の信用条件は不変との回答が64行中54行、信用条件をいくぶん緩和したとの回答が9行であった。総じて信用条件は緩和方向にはあるものの、中古住宅販売ペースが適度なものにとどまっていることからは、総じて信用条件は厳格なようだ。

[第1図]
20150211図1

[第2図]
20150211図2

[第3図]
20150211図3

自動車ローン増加ペースは速いが残高は小さい

これに対し、消費者ローンの増加ペースは極めて高水準で、総残高のみならず消費者ローン債務返済支払額の可処分所得に対する割合(デット・サービス・レシオ)も2013年にほぼ8年ぶりに住宅ローンのそれを上回って現在に至っている([第4図])。つまり消費者ローンの支払負担は今や住宅ローン支払負担を上回る状態になっているわけだ。また、ローン残高の可処分所得に対する比率も、2014年9月時点で住宅ローンは71.8%と金融危機前2007年のピーク99.6%から継続的に低下しているのに対し、消費者ローンでは24.9%と既に金融危機前のピーク24.5%を上回るレベルにまで上昇している。

消費者ローンは、クレジット・カード等のリボルビングローンと、学生ローンや自動車ローンなどのノンリボルビングローンに分かれる。FRBの消費者信用残高統計によれば、2014年12月時点の消費者信用(ローン)残高合計約3.3兆ドルのうち、リボルビングローン残高は0.9兆ドル、ノンリボルビングローン残高は2.4兆ドルである。ノンリボルビングローンの内訳は学生ローンが約1.3兆ドル、自動車ローンが1.0兆ドルである([第6図])。これらのうち、継続的に高い伸び率を保っているのがノンリボルビングローンであり、昨年12月現在で前年比+8.3%の高い伸び率を保っている。特に自動車ローン同+8.7%と消費者ローンの中で最も高い伸び率である。これに対しリボルビングローンの前年比伸び率は+3.4%にとどまっている。

自動車ローンの増加ペースは住宅ローンや他の消費者ローンに比べてペースが速いことは確かである。しかしながら一方で、自動車ローンの残高は約1兆ドル弱と、減少してもなお約9.3兆ドルの残高がある住宅ローンに比べて極めて小さい市場である。また、家計全体のデット・サービス・レシオは[第4図]で見た通り極めて低い水準にある。この状況からは、自動車ローンのうちの一部であるサブプライム自動車ローンがバブル崩壊により新たな金融危機をもたらすとは考えにくい。

[第4図]
20150211図4

[第5図]
20150211図5

[第6図]
20150211図6

自動車ローンのリスクは小さい:自動車販売台数飽和後にはリスクシナリオも

自動車ローン等の消費者ローンの伸び率が相対的に強い背景は定かではない。FRBシニア・ローン・オフィサーサーベイによれば、自動車ローンの信用条件は統計開始の2011年以降一貫して緩和傾向が続いている。自動車ローンの信用条件DIは、クレジットカード・ローンや住宅ローンに比べて低い(緩和した銀行の割合が多い)状態が2014年半ばまでは続いていたが、直近の信用条件DIは上昇に転ずる兆しもみられる。むしろ直近では住宅公社保証適格の優良な住宅ローンの方信用条件緩和傾向の方が強いともいえる([第7図])。

自動車ローンを含む消費者ローンの延滞率も依然低水準にある。消費者ローンの延滞率(30日以上)は2.21%と過去20年間で最低水準にある([第8図])。ローン延滞率は失業率と同じ動きをする傾向があり、現状の雇用市場の拡大ペースが持続的であるとの見方からは、消費者ローンの延滞率は当面低位で安定する可能性が高い。もっとも、米調査会社TransUnion社は2014年10-12月期の自動車ローン延滞率(60日以上)の延滞率を1.20%と集計し、2011年1-3月期以来11四半期連続で上昇したとしている。また同社は2015年には自動車ローン延滞率が1.27%にまで上昇すると予想している(2014年12月16日付同社プレスリリース)。しかし、1兆円の自動車ローン市場のうちで1%台の延滞率は金融市場を揺るがすほどのインパクトを持つとは考えにくい。また上記の通り、住宅ローンと自動車ローンはその期間や担保価値算定の前提が異なり、自動車ローンのリスクは住宅ローンに比べて低いといえる。また担保物件が住宅ではなく自動車であることから、担保権実行に伴う社会的な悪影響も相対的に低いといえるだろう。

以上より、自動車ローンの増加に伴うバブル危機の可能性は現状では低いと見たい。一方で、自動車市場では新車販売台数が年率17百万台弱と過去のピークに近いところまで増加しており、今後更なる販売増の余地は限られているといえる。そうした状況において自動車販売促進策や自動車ローン貸出促進策として信用条件の緩和が拡大するとすれば、新たな信用バブルの可能性なしとしない点はリスクとして留意しておきたい。また最近の新車販売の伸びの減速に比べて、自動車ローン残高増加率が依然として高いことは、自動車購入の際に現金でなく借入で購入する消費者が増加している可能性を示唆している([第9図])。

[第7図]
20150211図7

[第8図]
20150211図8

[第9図]
20150211図9

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