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<経済レポート> 9月利上げ開始予想に整合:3月FOMC議事要旨

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3月分のFOMC議事要旨からは、利上げ開始時期を巡って意見がいくつかに分かれたことが読み取れる。もっとも今年の6月や2016年の利上げ開始を主張する意見は相対的に少数で、当レポートの見る9月利上げ開始に整合する意見が相対的に多数であったと推測できる。9月FOMC会合での利上げ開始、年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%との筆者個人予想を維持する。

FOMC議事要旨は9月利上げ開始シナリオに整合

8日に公表された3月17-18日のFRB連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の内容は、筆者個人の修正後の金融政策予想である、9月定例会合での利上げ開始と整合するものであった。

去る3月17-18日の定例FOMC会合声明文では、予想通り従前のフォワードガイダンス「忍耐強くいられる」が削除され、「前回の声明文と整合的に、委員会はFF金利誘導目標レンジの4月FOMC会合での引上げの可能性は依然低いと判断する」「「労働市場の更なる改善が見られ、インフレが2%の中期目標に回帰すると合理的に確信したときに、FF金利誘導目標レンジを引き上げるのが適切と委員会は予想する」に変更された。しかし、あわせて公表されたFOMC委員の経済予測では、2015年の実質GDP成長率予測と適切な政策金利予測が昨年12月予測から大幅に下方シフトした。2015年末のFF金利誘導目標レンジ中心値を0.625%(レンジ0.5%-0.75%に相当)と予測する委員が7名と最も多く、17人の委員の予測中央値も0.625%となった(3月22日付当レポート参照)。

このFOMC委員予測下方シフトと、その後の1-3月期米経済指標の軟化、特に企業設備投資と住宅投資の悪化を背景に、筆者は利上げ開始時期予想を9月定例会合に後倒しし、年末のFF金利誘導目標レンジを0.75-1.00%に引き下げて現在に至っている(4月7日付当レポート参照)。

成長の減速は一時要因:ドル高による輸出減速は継続の可能性

3月FOMC議事要旨の注目ポイントは大きく3点ある。まずFOMCが米経済見通し引下げの背景の議論、次にフォワードガイダンスの変更の議論、最後に利上げの時期についての議論である。以下この3点につき検討を試みる。

まず、経済成長については、個人消費がいくぶん減速しているもののいくらかの参加者は「一部には一部地域の寒波という一時的要因である可能性が高い」とし、またいくらかの参加者は「中期的な個人消費は強い労働市場、所得上昇、資産拡大、家計バランスシート改善、及びガソリン価格低下により支えられる」と見ている。企業部門については、成長が減速しているがこれも「寒波や西海岸の労働争議」などの一時要因と報告されているとされた。原油価格下落はエネルギーセクターの設備投資を抑制しているとされた。製造業は輸出の減速を報告しているものの、非製造業についてはガソリン価格低下などによる消費者の購買力拡大が今後自動車等の小売売上を押し上げるとされている。

なおドル高について、数人の参加者は「米ドルの更なる上昇が米国の純輸出と経済成長を当面の間抑制する可能性が高い」と述べ、また何人かの参加者は「海外中銀の緩和政策行動がさらなる米ドル上昇につながる可能性」を示唆した。

個人消費と設備投資の減速が、悪天候や西海岸問題による一時的なものであるとのFOMC委員の見方は、当レポートの見方とも整合している。特に企業部門については、設備投資の先行指標の悪化で1-3月期はGDP統計上の設備投資がほぼゼロ成長になると筆者は見ている。しかしISM指数によれば、議事録に見られる通り製造業の景況感悪化が目立つものの非製造業は相対的に高水準の景況感である(4月11日付<経済指標コメント>参照)。米国の輸出は昨年9月をピークに伸び率が低下を続けており、同時に輸入の伸びが昨年9月をボトムに上昇に転じている。結果、昨年10-12月期のGDP統計では、実質ベースの財・サービス輸入の伸びが同輸出の伸びを大きく上回り、純輸出が成長率を-1%以上押し下げた。1-3月期においてもこの傾向は不変で、筆者個人は純輸出が1-3月期成長率を約-0.5%押し下げると見ている。筆者個人は1-3月期の成長率が、主に設備投資の減速により1-3月期に前期比年率+1%に減速するものの、その後は2-3%成長に回帰すると見ている。

新たなフォワードガイダンスは金融政策の「柔軟性」を確保するもの

次にフォワードガイダンス変更に関する議論を見る。ほとんどすべての参加者は「委員会が金融政策正常化開始に忍耐強くいられるとの示唆を声明文から削除すること」を選好した。これらの参加者は「会合毎にFF金利誘導目標レンジを調整する柔軟性を委員会に付与する」文言を選好したとされた。また、総じて参加者は「利上げの適正な時期は、労働市場の更なる改善についての評価と、インフレが委員会の2%目標に中期的に回帰するとの確信の程度」に依存するとし、金融政策がデータ依存であることを市場に伝えるのがよいとした。この議論の結果、3月声明文のフォワードガイダンスは上記の通り、労働市場の改善ならびにインフレ率上昇に対する合理的確信を条件としたものになった。

議事要旨において、新たなフォワードガイダンスが金融政策の「柔軟性」を確保するとの参加者の意向が示されている。これは、新たなフォワードガイダンスが金融政策の「フリーハンド」を残そうとするものと見る当レポートの見方と整合している。利上げ時期のみならず、利上げペースを「会合毎に(meeting-by-meeting basis)」決定するフリーハンドは特にハト派の委員にとっては重要なことであろう。

筆者個人は、金融政策の柔軟性はむしろ利上げ開始時期について適用されるもので、現実には利上げは市場の期待が形成しやすい一定のペースで実施されるのが委員会の信認の観点からは望ましいと考える。議事録によれば多くの参加者は「金融政策正常化開始後に委員会の金融政策戦略について追加的情報を市場に提供するのが望ましい」と述べている。現実にはFOMCは会合毎に一定のペースで利上げを継続することで市場の期待形成を容易にするものと個人的に予想し、9月利上げ開始後会合毎に0.25%のペースで利上げが継続されると考えている。

FOMC参加者の相対的多数は年後半の利上げ開始可能性を示唆

最後に、利上げ開始時期に関する議論を見る。「(委員会が)いかにしてインフレ見通しを評価し、いつ金融緩和政策解除開始を適切と見做すか」について参加者は「広範囲な見方を示した」、つまり利上げ開始時期については意見が分かれたとされた。「金融政策正常化はコアインフレ率の上昇や賃金インフレが観察される以前に」実施しうるとされ、「労働市場の更なる改善、原油価格の安定、米ドル為替レートのピークアウト」が有用な指標とされた。ここで、数人の(several)参加者は「経済データと見通しは6月会合での金融正常化開始を正当化する可能性が高いと判断」した。しかし、他の参加者(others)は「原油価格下落とドル上昇の効果は短期的にはインフレの重石となり続け、年後半まで利上げ開始は適切とならない可能性が高い」と予想した。また2-3人の(a couple of)参加者は「経済見通しは利上げを2016年まで正当化しない」ことを示唆した、とされた。

この議論からは次のことが読み取れる。6月利上げを主張する参加者は数人にとどまり、他の(過半数の)参加者は利上げ開始が年後半になると見ていること。もっとも利上げ開始はインフレ率実績が上昇するまでまつ必要はなく、労働市場の改善、原油価格の安定、米ドルレートのピークアウトをもって先行指標とし得ること、である。

利上げ開始時期が年後半になるとの見方がFOMC内で優勢であることは、利上げ開始時期を9月とする当レポートの見方に整合している。また、労働市場、原油価格、米ドルを先行指標としてみた場合、これも9月利上げ開始を支持する材料になる可能性が高いと見る。労働市場は引き続き堅調に拡大している。1月の非農業部門雇用者数は前月比+126千人の増加にとどまったが、これは統計上の一時要因と見るのが自然である。原油価格は今年に入りWTI原油先物が50ドル/バレル割れを何度か試したものの現在では50ドル台を回復しており、昨年からの急激な下げは少なくとも解消している。為替は依然値動きが大きいものの、ECBの金融緩和政策の方向性が明らかになった時期からむしろドル高は一服している。FRBの公表する貿易加重平均米ドルレート(広域通貨)は3月半ばをピークにいったん下降に転じる兆しが見られる。なお、経済成長については、1-3月期に減速ののち、4-6月期以降は2-3%成長に回帰すると筆者個人は見ており、4-6月期のGDP統計確報と7-9月期の基礎統計の途中経過が基礎統計で判明する9月定例会合は、利上げ判断にも適切な時期といえるだろう。テイラー・ルールに基づく適切な政策金利推計値が9月利上げ開始と年末FF金利誘導目標0.75-1.00%を概ね正当化することは4月7日付当レポートで見た通りである。以上より、9月FOMC会合での利上げ開始、年末FF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%との筆者個人予想を維持する。


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