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<経済レポート> 時は間近だが、、:4月FOMC議事要旨とイエレン議長講演

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4月FOMC定例会合の議事要旨と、22日のイエレンFRB議長講演からは、FRBの金融政策についてのいくつかの示唆が読み取れる。総じてFRBの経済に対する見方は筆者個人の見方と整合しており、またイエレン議長の「年内利上げが適切」発言も筆者個人の9月利上げ開始予想をサポートする材料である。一方で利上げペースについてはイエレン議長の「漸進的」発言が下方リスク材料となる。現状の予想は維持するものの、今後の経済指標によっては下方修正をも考慮する必要が出てきている。

1-3月期の景気減速は一時的との見方がFOMCでは支配的

20日に公表された4月28-29日FRB連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合の議事要旨には大きく3つのポイントがあった。まず、1-3月期の米成長率鈍化に関する議論、次に、前回3月会合の議事要旨で示された利上げ開始判断のための3つの指標(労働市場の更なる改善、原油価格の安定、米ドル為替レートのピークアウト)についての評価、そして今後の金融政策に関する示唆である。また22日にはイエレンFRB議長が講演を行い、米国経済見通しについて述べるとともに年内の利上げ開始を強く示唆する発言を行った。本レポートではこれらの内容を分析し筆者個人のFRB金融政策予想を点検する。

まず、1-3月期の成長率鈍化に関するFOMCの議論を見る。4月FOMC時点で判明していた米1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.2%と前期の同+2.2%から大きく減速していた(5月3日付<経済指標コメント>参照)。議事要旨によれば、「参加者は総じて第1四半期の民間消費のデータは失望させるものだったと判断」した。この経済の弱さが一時的なものか長期的な経済モメンタム喪失を示唆するものかについて議論がなされた。まず、第1四半期の経済の弱さは一部にまたは多分に一時的なものであるとの理由が多数提出された。特に悪天候と西海岸港湾ストが経済と供給チェーンに悪影響を及ぼしたとされた。さらに、季節調整後の第1四半期の成長率は軟化する傾向があるとされた。また、多数のファンダメンタルズ要因も個人消費の追い風であるとされ、低金利、高い消費者信頼感、上昇する個人所得などがあげられた。結論としては「ほとんどの参加者は依然経済と労働市場成長に関する見通しは概ねバランスしている」と判断した。

個人消費の1-3月期の減速が一時的であるとのFOMC参加者の見方及びその理由は、筆者の見方と整合的である(5月19日付当レポート参照)。個人消費の伸びが今年に入って減速したのは、主に時間当たり賃金の上昇率低下と、3月の雇用拡大ペースの一時的な鈍化が要因であると見る。また、議事要旨にも述べられているように、雇用拡大により個人所得の伸びは堅調である。インフレ率調整後の実質可処分所得の伸び率はやや低下したとはいえ3月時点で前年比+3.3%の高い水準にある。これに対し実質個人消費の伸びは3月時点で同+2.7%にとどまっている。家計には今後消費を拡大する余力が残っているといえる([第1図])。

[第1図]
20150526図1

ドル高と原油安の影響長期化を懸念する意見がでた

次に、前回3月会合で示された利上げ判断のための3つの指標(4月12日付当レポート参照)に関する4月FOMCの議論を見る。米ドル為替レートと原油価格について「多数の参加者」が「これまでの米ドルの上昇の純輸出に対する悪影響と、これまでの原油価格の低下が企業設備投資に与える悪影響は従前予想されていたよりも大きくまた長期化する可能性があることを示唆」し、ドル高と原油価格下落の米経済に対する影響についての参加者の見方はやや弱気方向にシフトしている。

労働市場については「ほとんどの参加者は労働条件改善のペースは鈍化した」と判断した。これは主に3月の雇用増加幅が期待を下回りかつ失業率がほぼ横ばいにとどまったことが背景にあり、エネルギー関連企業が原油価格下落に対応してレイオフを行ったことが報告されたとされた。しかしながら一方で、コンタクト企業からはよりポジティブな情報もあり、「労働市場のタイト化」「いくらかの地域で賃金の大幅上昇」が報告されたとされた。

米ドル為替レートの純輸出に与える悪影響の拡大と長期化懸念は、指標を見る限りでは首肯しうるものがある。米ドルが上昇を始めた昨年後半から貿易赤字の拡大は顕著で、直近では3月の実質ベース財輸出は前年比+0.3%に減少する一方同輸出は同+10.1%と大幅に伸び、単月の実質貿易赤字は67.2兆ドルと2007年3月以来の水準となった。1-3月期の実質ベースの財・サービス収支赤字は2007年10-12月期以来の高水準に回帰した。1-3月期GDP統計では、財輸出の減速が成長率を-1.26%押し下げており、ドル高が輸出減速を通じて成長抑制要因となっているとの見方はできる。

4月FOMC以降状況は再び改善している

しかしながら個人的には、ドル高は利上げの大きなハードルにはなりにくいと見ておきたい。過去5年の中期的な動きを見ると、四半期ベースの実質財輸出の伸び率は上下動しているのに対し、実質財輸入増加ペースは継続的に加速している([第2図])。前者は主に海外経済変動の影響を受け、後者は内需の継続的拡大の反映とも推測できる。貿易赤字の拡大は輸出減速というよりも輸入の急激な拡大を主因とするものであって、寧ろ内需の拡大を反映した好材料と見るべきであろう。実際に、貿易収支と米ドルレートの間には明確な連関性は見出しにくく、寧ろ輸出は海外経済に、輸入はコ国内経済成長にリンクしているというのが経験則である。貿易加重平均米ドルレート(対広域通貨)は3月をピークにいったん低下に転じており、昨年後半からの急激なドル上昇ペースは一旦収束したといえる([第3図])。

次に、原油価格は3月の1バレル=40ドル台をボトムに底入れして、現在では60ドル近辺にまで上昇していることで、原油価格の安定は概ね示現されたと見たい。原油価格下落によるエネルギー産業の設備投資減速は顕著であり、鉱工業生産指数の5ヶ月連続の低下の主因となっていることは事実である。しかし、のちに述べる22日のイエレンFRB議長の講演での発言にもあるように、米国は原油のネット輸入国であり、原油価格の下落は総合的には米国経済にプラスの影響を与えると見る。

労働市場について、4月FOMC時点で入手可能であった3月分雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが前月比+126千人に急減速しており、労働条件の改善ペースは鈍化していたといえる。しかし、その後の指標では、4月分雇用統計では雇用者数の伸びは同+223千人に改善、3ヶ月移動平均も+191千人と前月比上昇しており、3月の鈍化が一時的なものである可能性が高いことが示唆された。4月FOMC時点よりも現在は労働市場の指標は改善方向に回帰していると見たい。

[第2図]
20150526図2

[第3図]
20150526図3

議事録には9月利上げ開始予想を変更する材料は見当たらない

インフレについて議事要旨では、「ほとんどの参加者は、(原油価格下落という)一時的な要因が剥落して労働市場と経済全体が改善するに伴い、インフレ率は委員会の2%目標に向けて中期的に上昇すると引き続き予想した」とされた。

これらの議論を踏まえ4月FOMCでは、適切な金利引上げの時期について「様々な意見」が出されたとされた。「何人か」の参加者は6月会合時点での情報は利上げを正当化する可能性が高いと述べたものの、「多くの」参加者は「6月に入手可能なデータがFF金利誘導目標レンジを引き上げる条件を満たす十分な確証を供与する可能性は低い」と考えたとされた。結果、4月FOMC声明文ではフォワードガイダンスが実質的には変更されず、「労働市場の更なる改善が見られ、インフレが2%の中期目標に回帰すると合理的に確信したときに、FF金利誘導目標レンジを引き上げるのが適切と委員会は予想する」との文言に据え置かれた。

4月FOMC議事要旨では一部にハト派的な意見は見られたものの、これまでの筆者個人の金融政策予想である9月利上げ開始を変更する材料は見当たらず、この予想を維持することが妥当だと考える。

イエレン議長は年内利上げ開始を明示的に示唆

4月議事要旨公表後の22日に行われたイエレンFRB議長の講演は、上記の個人予想を更に支持する内容であった。「経済の見通し」と題するこの講演でイエレン議長は「表面上の景気減速は主に、、、同時に起きた様々な一時的要因の結果であると推測する」「したがって経済データは改善すると予想する」としたうえで、2つの注目すべき発言を行っている。

ひとつは、「金融政策の経済への効果には相当な時差があることから、我々は金融政策をフォワードルッキングな方式で実施せねばならない」「したがって、経済が私の予想する通りに改善するならば、今年のどこかの時点でFF金利誘導目標を引き上げる最初のステップを踏み、金融政策を正常化する過程を開始することが適切であると考える」との発言。もう一つは「FF金利引上げ開始後も正常化のペースは漸進的であると私は予想する」「FF金利が長期的な正常水準に回帰するには数年を要すると予想する」との発言である。

これらの発言には2つのインプリケーションがある。前者は、筆者個人の9月利上げ開始予想を支持するものである。一方で後者は、初回利上げ後も必ずしも毎回会合毎に利上げが行われない可能性が高いと議長が見ている点で、筆者個人予想への下方リスク要因である。3月時点のFOMC委員経済予測によれば、長期的なFF金利水準の予測中央値は3.75%であり、ここに達するのに数年を要するとすると、1年当たりの利上げは4回程度、つまりほぼ1会合おきに0.25%の利上げ実施、との計算になる。

9月利上げ開始予想は維持するも下方リスク

以上より、筆者個人の9月利上げ開始予想は維持するも、その後の利上げペース予想には下方リスクが出てきたと言わざるを得ない。その他のリスク要因としても次のものが考えられる。まず、議事要旨で支持された「ドル高と原油価格下落の経済への悪影響の長期化」のリスクは否定しえないことである。また、テイラー・ルールによる適正FF金利の水準を1-3月期までの成長率とインフレ率を用いて改めて計算すると、仮に4-6月期以降のPCEインフレ率が前年比+0.7%に上昇したとしても、年末のFF金利は高々0.5%程度が正当化されるのみであることである([第4図])。今後は、1-3月期GDPの改訂状況やインフレ率の推移に留意しつつ、場合によっては利上げ時期や利上げペース予想の後倒しを考慮する必要が出てくる可能性がある。

なお、4月FOMC議事要旨においては、均衡実質金利の低下の可能性の議論が行われた。また22日イエレン議長講演においては生産性向上の必要性が説かれた。今後これらの議論が金融政策予想に影響を与える可能性もあることから最後に付言しておく。

[第4図]
20150526図4


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