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<経済レポート> 収益停滞が抑制要因:米企業設備投資の動向

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米国の企業設備投資は3四半期にわたる減速からは短期的に持ち直しの兆しがみられる。しかし、企業ネットキャッシュフローの伸びが頭打ちになっていることと、設備稼働率が大幅に低下していることが抑制要因となり、その伸びは引き続き緩やかなものに留まると見る。また長期的には、資本生産性の低下が企業の設備投資意欲を低下させている可能性がある。今後の更なる短期的下方リスク要因は海外景気減速とドル高継続である。

減速した企業設備投資は短期的には持ち直すと見る

米国の企業設備投資は昨年後半から減速が続いている。直近のGDP統計によれば、1-3月期の民間設備投資は3四半期連続の減速で、前期比年率-2.8%と16四半期ぶりのマイナス成長に落ち込んだ。もっともこれは構造物投資の大幅マイナス成長(同-20.8%)が主因で、最もおおきな比重を占める機器投資は同+2.7%と前期の同+0.6%からわずかに伸びが加速している([第1図])。

ここ半年ほどの企業設備投資の減速は一時要因によるものである可能性が高いと見る。1-3月期は米国の悪天候や西海岸港湾ストの影響で企業部門の物流や生産が一時的に滞った。また、昨年来のドル高や海外景気の減速が企業設備投資意欲を抑制した可能性が高い。ISM製造業指数はこれらを反映して昨年10月のピーク(57.9%)以降5ヶ月連続で低下し、今年の4月には51.5%にまで低下した。

しかしながら今後については明るい材料が出てきている。悪天候や港湾スト要因は1-3月期で剥落した。ISM製造業指数もこれとともに5月に52.8%と7ヶ月ぶりの上昇に転じ、企業部門景況感の底入れを示唆している。また、企業設備投資の先行指標である非国防資本財受注(航空機関連を除く)及び同出荷は、昨年10-12月期から2四半期連続マイナス成長であったが、3、4月に大幅なプラスの伸びに転じ、4-6月期には3四半期ぶりにプラス成長に回帰する可能性が高い([第2図])。今後年内のGDP統計上の設備投資は前期比年率+6~+8%の成長を続けると引き続き予想する。

[第1図]
20150607図1

[第2図]
20150607図2

企業収益減速、資本ストック余剰、そして資本生産性低下が設備投資抑制要因

中期的な企業の設備投資を決定する要因を考えてみよう。まず、設備投資の源泉となる企業ネットキャッシュフローと設備投資の関係を見る。設備投資を企業ネットキャッシュフローで除した設備投資/キャッシュフロー比率は、景気循環とともに変動しつつも長期的には総じて低下トレンドにある([第3図])。特に2008年の金融危機以降2013年までは設備投資/キャッシュフロー比率は100%を下回っていた、つまり企業はキャッシュフローの範囲内に設備投資を抑制する傾向があったといえる。2014年以降同比率は100%をやや超える水準にまで上昇したが、その水準は金融危機前のボトムに近い水準にようやく達したのみである。逆に長期トレンドからは、同比率が100%を超えてきたことがむしろ設備投資サイクルのピークアウトの可能性を示唆しているともいえる。

次に、資本ストックの積み上がり状況を見る。名目資本ストック(民間非住宅固定資産)を名目GDPで除した資本係数は、2003年以降の景気拡大期に上昇を続け、リーマンショックのあった2008年にピークに達した。この期間には、設備投資の拡大ペースがGDP拡大ペースを大幅に上回っていたことになる。金融危機以降の成長減速により、2003年~2008年の拡大した設備投資が資本ストックの余剰となった可能性が高い。企業はリーマンショック後設備投資を抑制し、かつ設備稼働率を低下させることで余剰資本を調整してきたと考えられる([第4図])。その間GDPに対する資本ストックの比率は低下に転じている。つまり設備稼働率が十分に上昇して資本ストックの余剰が解消されるまでは企業設備投資には抑制圧力が働きそうだということになる。

更に長期的には、資本生産性の低下が設備投資の抑制要因となっている可能性がある。名目GDPを、名目資本ストックと設備稼働率の積で除した資本生産性の伸び率は、金融危機直後の一時的な設備投資縮小と設備稼働率低下の時期を除いて、総じてマイナスの伸びもしくは低い伸びに留まっている([第5図])。これは労働生産性がその伸び率を低下させながらも上昇を続けているのとは対照的である(5月11日付当レポート参照)。労働生産性の伸びが資本生産性の伸びを上回っている状態だと、企業は生産拡大において設備投資よりも労働投入量の拡大を選好することになる。企業設備投資の伸びが長期的に低下傾向にあるのは労働生産性に対する資本生産性の相対的な劣位も一要因と考えられる。

[第3図]
20150607図3

[第4図]
20150607図4

[第5図]
20150607図5

企業キャッシュフローは頭打ち、設備稼働率は低下中

ここで、上記でみた設備投資の源泉となる企業ネットキャッシュフローと企業収益の最近の動向を見る。1-3月期企業収益(税引き前、在庫評価・固定費本減耗調整後、速報値)は前年比+3.7%と前期の同-0.2%からプラス成長に回復した([第6図])。部門別の内訳をみると、国内非金融機関が同+7.5%と継続して安定的な収益拡大を見せたほか、国内金融機関が株式市場の活況を背景に実に5四半期ぶりの前年比プラス成長に回復したのが目立つ。一方で、海外部門は2四半期連続の大幅マイナス成長にとどまっている。海外部門の不振は海外景気の減速にドル高要因が加わりドルベースでの収益圧迫要因となったものと思われる([第7図])。

短期的には回復傾向にある企業収益であるが、中期的にその推移を見ると、企業収益の水準は2013年以降頭打ちの傾向がみられる。また、税引き後企業収益から減価償却費と社外流出を調整した企業ネットキャッシュフローは、2010年あたりから既に伸びが頭打ちになっている([第8図])。企業設備投資の中期的な減速の背景には、こうした企業収益及びネットキャッシュフローの拡大ペースの減速がありそうだ。

また、設備稼働率もここ半年間で急激に低下している。鉱工業設備稼働率は金融危機による大幅低下ののち2009年以降上昇を続け、昨年11月に79.8%にまで上昇した。しかし昨年末からの原油価格の下落の影響を受けた鉱業の稼働率低下を主因として下降に転じ、今年4月時点で78.2%にまで低下している(5月16日付<経済指標コメント>参照)。この稼働率が再び上昇するまでは、設備投資には引き続き抑制圧力がかかると見る。

[第6図]
20150607図6

[第7図]
20150607図7

[第8図]
20150607図8

今年の設備投資拡大は昨年比減速を見込む:ドル高・海外景気もリスク要因

ここで、企業ネットキャッシュフローと設備稼働率とを説明変数とする設備投資の回帰分析をアップデートする(2014年6月9日付当レポート参照)。今回は1992年1-3月期から2015年1-3月期の四半期ベースのデータを用い、説明変数はいずれも4四半期ラグとした。回帰分析の結果は[第1表]の通りで、企業ネットキャッシュフロー及び設備稼働率のいずれもが統計的に有意となった。

またこの回帰式から今後4四半期の名目設備投資の伸びを推計すると、今年の後半に名目ベースの設備投資は年率4~8%の拡大を見せるものの、最近の設備稼働率の低下が主因となって、来年初には再びマイナスの伸びに落ち込むとの計算になった。今年一杯は設備投資が1桁台後半の成長を継続するとの見方を支持する結果であると同時に、引き続き設備投資には抑制圧力がかかり続けることで下方リスクがあることを示唆している。

以上より、短期的に今年の後半にかけて企業設備投資は拡大ペースが回復するものの、中期的な設備稼働率低下や企業ネットキャッシュフローの伸びの制約により、その拡大ペースは緩やかなものに留まると予想する。筆者個人は、2015年通年のGDP統計上の設備投資を前年比+5%弱と予想しており、これは2014年の同+6.3%から伸びが減速することを意味する。また、長期的には資本生産性の低下が労働投入と比較しての設備投資拡大を抑制する要因となり得る。短期的な更なる下方リスク要因は、海外景気の更なる減速やドル高からの為替調整の遅れである。

[第1表]
20150607表1

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