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<経済レポート> ペースは「徐々に」:6月FOMC声明文と経済予測

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6月FOMC声明文とともに公表されたFOMC委員経済予測では、今年の経済成長率と利上げペース予測が下方シフトした。筆者個人の9月定例会合での利上げ開始予想は維持できるものの、その後年内の利上げは2回に留まり、来年も1会合おきとなるリスクが高まったと言わざるを得ない。もっとも、4-6月期以降は米経済の拡大ペースは回復、インフレ率も来年初には1%台への回復が見込まれることから、FOMCは9月以降整斉と金融政策の正常化を継続するとの基本的な見方は不変である。

6月声明文はフォワードガイダンス維持

FRB連邦公開市場委員会(FOMC)は16、17日の定例会合で金融政策の現状維持を決定した。17日の声明文では「労働市場の更なる改善が見られ、インフレが2%の中期目標に回帰すると合理的に確信したときに、FF金利誘導目標レンジを引き上げるのが適切と委員会は予想する」とのフォワードガイダンスが3会合連続で維持された([第1表])。また声明文と同時に公表された四半期毎のFOMC委員経済予測では、2015年の成長率予測が大幅に下方シフトした。また適正なFF金利誘導目標予測もやや下方シフトしている。以下では、声明文・経済予測・イエレンFRB議長の定例記者会見の内容から今後のFOMC金融政策予想を点検する。

6月声明文における経済活動についての前回4月定例会合後の基調判断は「第1四半期でほぼ横ばいのあと緩やかに拡大した」とされ、1-3月期の前期比年率-0.7%成長を「ほぼ不変」と評している。イエレン議長は会合後の記者会見冒頭発言で1-3月期の「ソフトパッチ」につき「一部は一時的な要因」「家計消費のファンダメンタルズは良好で消費者センチメントは堅調」として、1-3月期の経済減速が一時的な要因であるとの見方を維持した。

インフレについて声明文は従前通り、短期的には2%を下回るものの「中期的には2%へ回帰する」との見方を維持している。イエレン議長は記者会見冒頭発言で「エネルギー価格は最近安定した」ことを挙げてインフレ率の上昇期待を示唆したほか、質疑応答では「ドルは総じて安定したように見える」こともインフレ率低下要因の逓減要因であることを示唆している。

労働市場について声明文は「雇用拡大ペースが加速した」と基調判断を引上げ、議長記者会見冒頭発言も「就業意思があるが就職活動を行っていない者」「経済的理由によるパートタイマー」の状況は「改善した」と述べている。しかしながら議長は「低い労働参加率」「非自主的パートタイム雇用の高さ」を労働市場の「循環的な弱さ」位置づけている。

[第1表]
20150621表1

FOMC委員の成長予測は大幅下方シフト、利上げペース予測も後ずれ

四半期毎のFOMC委員による経済予測の中心傾向を見ると、2015年の成長率予測が大幅に下方シフトして+1.8~+2.0%(第4四半期前年同期比)となり、3月予測に続き2回連続の下方シフトとなった。PCEインフレ率は同+0.6~+0.8%と3月比不変、コアPCEインフレ率予測も同+1.3~+1.4%と3月予測比不変である。なお、筆者個人は、2015年の成長率を同+2.1%と暫定予想しており、FOMC委員予測中心傾向はこれよりもやや下方ではあるものの大きな乖離はないといえる。

成長率予測の下方シフトとともに、適正FF金利水準予測もやや下方シフトしている([第1図])。3月予測では2015年末のFF金利誘導目標レンジの中間値を1%以上と予測する委員が4名いたが、6月予測では1%以上の年末FF金利誘導目標を予測する委員はゼロとなった。2015年末のFF金利誘導目標レンジ中間値については、0.375%、0.625%、0.875%を予測する委員の数がそれぞれ5人で最大となった。大多数の委員は年末のFF金利誘導目標レンジを0.25-0.5%乃至0.75-1%と見ていることになる。なお全体の予測の中央値は0.625%と3月時点予測と不変である。

また、2016年以降の利上げペース予測も3月予測比で下方にシフトしている。3月時点予測では2016年末、2017年末のFF金利誘導目標レンジ中間値の予測中央値はそれぞれ1.875%、3.125%であったが、6月予測ではこれらがそれぞれ1.625%、2.875%に下方シフトしている。なお、長期的なFF金利誘導目標レンジ中間値予測の中央値は3.75%と不変である([第2図])。

[第2表]
20150621表2

[第1図]
20150621図1

[第2図]
20150621図2

利上げ開始後のペースは1会合おきになるリスクが高まった

以上をもとに、FOMCの利上げ開始時期とその後の利上げペースについての筆者個人予想を点検する。筆者個人は9月定例FOMCでの利上げ開始、その後会合毎に0.25%ずつの利上げを実施して年末のFF金利誘導目標レンジを0.75%-1.00%と予想している。ただし9月利上げ開始後の利上げペースについては下方リスクを認識している(5月26日付当レポート参照)。今回のFOMC委員経済予測とイエレン議長記者会見の内容は、9月利上げ開始予想を支持する内容ではあるものの、利上げペースは年内2回に留まるリスクが更に高まったことを示唆するものだったと言わざるをえない。

まず、年末のFF金利誘導目標レンジ0.75-1.00%(またはそれ以上)を予測する委員の数が3月時点の7人から5人に減少している。今や0.75-1.00%の年末レンジはFOMC内で最もタカ派に属する5名の委員によってのみ支持されているに過ぎない。次に、来年以降にかけての利上げペースは、会合毎に0.25%の利上げではなく、概ね1会合おきに0.25%利上げのペースになる可能性が高いことをFOMC委員予測が示唆している。2016年末のFF金利誘導目標レンジ中間値予測の中央値1.625%(1.5%-1.75%レンジ)は、9月の利上げ開始を含め年内2回、2016年中に4回の利上げを実施するペースに相当する。これは、0.25%の利上げが1会合おきに実施されるペースである([第3表])。

また、イエレン議長は、記者会見において利上げペースが「徐々にgradual」実施されることを強調している。記者会見の冒頭発言で議長は「雇用とインフレが委員会の使命と整合的な水準に近づいた後も、経済条件はしばらくの間FF金利誘導目標を委員会が長期的に正常と見る水準よりも低く維持することを正当化するかもしれない」との従前からの声明文文言を引用したのち「別な言い方でいえば、、、FF金利目標引上げは徐々に行われることが正当化されるのみである」と述べ、2017年末のFF金利のFOMC委員予測は、長期的なFF金利予測水準を下回っていることをも引用している。また質疑応答で議長は、「徐々に」の文言が利上げペースの新たなフォワードガイダンスとなり得ることを示唆する発言をしており、また「利上げ開始時期よりもその後のペースが重要」とも述べている。

[第3表]
20150621表3

9月利上げ開始予想は維持できる:テイラー・ルールは来年初1%台のFF金利を正当化

以上より、利上げ開始後の利上げペースは概ね1会合おきに0.25%というペースになるリスクがかなり高まったと言わざるを得ない。一方で9月の利上げ開始個人予想はこのまま維持したい。1-3月期の実質GDPマイナス成長は天候や西海岸港湾スト等の一時要因だとFOMCは見ている。また4月FOMC時点で懸念事項とされた原油価格下落とドル高進行はイエレン議長も記者会見で述べている通り安定化しつつある。更に、4月以降の経済指標はそれまでの経済ソフトパッチからの米経済の回復を示唆するものが続いている。4月分の非国防資本財出荷及び同受注の力強い回復と過去分の上方改訂は、企業部門が昨年後半以来の低迷を脱して、4-6月期のGDP統計上の設備投資の拡大ペースが加速するとことを示唆している。個人消費については、5月の新車販売台数と小売売上高の増加は、個人消費が1-3月期の一時的減速から4-6月期に再び拡大ペースを加速させることを示唆している。非農業部門雇用者数は4月、5月と続けて200千人を超える増加、特に5月は前月比+280千人の急増となった。

インフレ率についても、概ねFOMC委員の予測に沿った回帰が期待できる。FOMCがインフレ指標として用いる個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)は、4月時点で前年比+0.1%にまで低下している。一方食品及びエネルギーを除くコアPCEデフレーターは前年比+1.2%と相対的に堅調である。原油価格が現在の1バレル=60ドル前後で今後も安定するとして、PCEデフレーターと同コアが今後前月比+0.1%の上昇を継続すると、年末にPCEデフレーターは前年比+0.7%、同コアは同+1.2%となる計算になる。また2016年に入り昨年末の原油価格下落要因が剥落し、更に需給ギャップの縮小により月次の伸び率が+0.15%に加速する仮定すると、2016年末にPCEインフレ率、コアPCEインフレ率はいずれも前年比+1.8%になる計算になる([第3図])。これはFOMC委員の経済予測の中央値とほぼ一致する。

これらのインフレ指標をテイラー・ルール公式(99年版)に代入して今後の適正FF金利水準を試算すると[第4図]のようになる(GDP成長率は筆者個人予想を使用)。総合PCEデフレーターに基づく試算とコアPCEデフレーターに基づく試算には年内は大きな乖離があり、総合PCEインフレ率では年末の適正FF金利は-0.25%、コアPCEインフレ率では年末の適正FF金利は1%弱との結果になった。しかし2016年に入るとその乖離は解消し、2016年1-3月期の適正FF金利は総合PCEで1.27%、コアPCEで1.4%と試算された([第4図])。つまり、このまま原油価格が安定推移すれば、来年初には1%台のFF金利誘導目標水準が正当化される計算になる。また、この試算では2016年末の適正FF金利水準は2-2.5%レベルを正当化する結果となった。これはFOMC委員の予測中央値を0.5%ほど上回るものの、長期的なFF金利均衡水準を下回る点では整合している。

[第3図]
20150621図3

[第4図]
20150621図4

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